JP2021115574A - セルフピアスリベット接合用金型 - Google Patents
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Abstract
【課題】セルフピアスリベット接合(SPR接合)において金型のキャビティに向かってSPRが打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することによりインターロック量を増大させる。【解決手段】SPR接合において使用される金型のSPRに対向する金型頂面に開口部を有するキャビティの内側面にSPRの脚部の円筒状の形状の軸を通る直線である第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットを設ける。キャビティの内部には、その内底面から開口部側に向かって隆起する凸部が形成されていてもよい。金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域に、第1軸に平行な方向においてキャビティの内底面とは反対側に向かって隆起する環状の突起である環状突起が形成されていてもよい。【選択図】図4
Description
本発明は、セルフピアスリベット接合用金型に関する。
当該技術分野においては、例えば、自動車の車体等における高張力鋼板とアルミニウム合金板との接合等、複数の異種材料からなる被接合部材の接合において、セルフピアスリベット(以降、「SPR」と略称される場合がある)を用いる接合方法が広く採用されている。
当業者に周知であるように、SPRによる複数の被接合部材の接合においては、SPRに対向する面である金型頂面に開口部を有するキャビティが形成された金型とSPRとの間に、互いに重ね合わされた複数の被接合部材が配置され、当該キャビティに向かってSPRが打ち込まれる。その結果、複数の被接合部材のうち金型に最も近い被接合部材である金型側被接合部材がキャビティ内に向かって膨出するように変形し、金型側被接合部材よりもSPR側に位置する被接合部材であるSPR側被接合部材をSPRの脚部が貫通する。その後、SPRの脚部は、金型側被接合部材に食い込むと共に、更に拡径するように変形する。これにより、複数の被接合部材が強固に接合される。
尚、以下の説明においては、上記のような接合方法は「セルフピアスリベット接合(SPR接合)」と称呼される場合がある。また、SPRの脚部と金型側被接合部材とが互いに噛み合っている部分は「インターロック部」と称呼される場合がある。更に、当該インターロック部におけるSPRの脚部と金型側被接合部材との噛み合い(インターロック)の深さは「インターロック量」と称呼される場合がある。
図44は、SPR接合によって接合されたSPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合部分近傍の模式的な断面図である。但し、図44においては、SPR及び金型の共通の軸よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。図44に示すように、SPR300の脚部320がSPR側被接合部材401に貫通して、金型側被接合部材402と脚部320とが互いに噛み合っているインターロック部PLが形成されている。この例におけるインターロック量(金型側被接合部材402と脚部320との噛み合いの深さ)はLによって表されている。
一般に、上記インターロック量が大きいほど、SPR接合によって接合されるSPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合強度が大きくなる。しかしながら、従来技術に係るSPR接合用金型(以降、「従来金型」と称呼される場合がある)を使用するSPR接合においては、金型のキャビティに向かってSPRが打ち込まれる際に、SPRが受ける反力及び打ち抜き荷重が大きい。その結果、例えばSPRの脚部が増肉(厚肉化)したり座屈したりして、十分なインターロックの形成(十分なインターロック量の達成)が困難となり、例えば被接合部材の接合強度の低下等の問題に繋がる虞がある。
上述したように、当該技術分野においては、セルフピアスリベット接合(SPR接合)において金型のキャビティに向かってセルフピアスリベット(SPR)が打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することによりインターロック量を増大させることができる技術が求められている。
上記課題に鑑み、本発明者は、鋭意研究の結果、SPR接合において使用される金型のSPRに対向する面に開口部を有するキャビティの内側面にSPRの脚部の円筒状の形状の軸を通る直線である第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットを設けることにより、上記要求に応えることができることを見出した。
具体的には、本発明に係るSPR接合用金型(以降、「本発明金型」と称呼される場合がある)は、SPR接合において使用される金型である。SPR接合においては、円筒状の脚部を有するSPRと当該脚部に対向する面である金型頂面に開口部を有するキャビティが形成された金型との間に複数の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部を配置する。そして、脚部の円筒状の形状の軸を通る直線である第1軸に平行な方向においてキャビティに向かってSPRを積層部に打ち込むことにより、複数の被接合部材を接合する。
更に、接合開始状態において第1軸に直交する平面によるキャビティの断面がキャビティの内底面から開口部へと向かうほど広くなるようにキャビティが形成されている。接合開始状態とは、SPR接合の開始時点においてSPRと本発明金型とが所定の位置関係に配置された状態である。加えて、接合開始状態において第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されている。
好ましくは、接合開始状態における第1軸に直交する平面への垂直投影図においてダイスポケットの最も深い部分であるポケット最深部がSPRの脚部の外周面よりも外側に位置するようにダイスポケットが形成されている。より好ましくは、第1軸に直交する平面によるダイスポケットの断面がキャビティの内底面側から開口部側へと向かうほど広くなるようにダイスポケットが形成されている。
上記キャビティの内部には、内底面から開口部側に向かって隆起する凸部が形成されていてもよい。この場合、好ましくは、接合開始状態における第1軸に直交する平面への垂直投影図において凸部の頂面である凸部頂面の外縁がSPRの脚部の内周と外周との間に位置するように凸部が形成されている。より好ましくは、凸部頂面が凹面として形成されており、第1軸を含む平面による断面図において凸部頂面の外縁である突出部がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている。
第1軸に平行な方向においてキャビティの内底面とは反対側に向かって隆起する環状の突起である環状突起が金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域に形成されていてもよい。この場合、好ましくは、金型頂面のキャビティに隣接する位置に環状突起が形成されている。
本発明金型においては、上記のように、第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されている。従って、SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料の少なくとも一部をダイスポケットによって受け入れることができる。その結果、本発明金型によれば、SPR接合において金型のキャビティに向かってSPRが打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し、インターロック量を増大させることができる。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第1金型」と称呼される場合がある)について説明する。
以下、本発明の第1実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第1金型」と称呼される場合がある)について説明する。
〈構成〉
第1金型は、セルフピアスリベット接合(SPR接合)において使用される金型である。SPR接合においては、円筒状の脚部を有するセルフピアスリベット(SPR)と当該脚部に対向する面である金型頂面に開口部を有するキャビティが形成された金型との間に複数の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部を配置する。そして、脚部の円筒状の形状の軸を通る直線である第1軸に平行な方向においてキャビティに向かってSPRを積層部に打ち込むことにより、複数の被接合部材を接合する。
第1金型は、セルフピアスリベット接合(SPR接合)において使用される金型である。SPR接合においては、円筒状の脚部を有するセルフピアスリベット(SPR)と当該脚部に対向する面である金型頂面に開口部を有するキャビティが形成された金型との間に複数の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部を配置する。そして、脚部の円筒状の形状の軸を通る直線である第1軸に平行な方向においてキャビティに向かってSPRを積層部に打ち込むことにより、複数の被接合部材を接合する。
積層部を構成する被接合部材の数は、複数(即ち、2つ以上)であれば特に限定されないが、典型的には2つである。また、個々の被接合部材の形状及び材料等についても特に限定されないが、典型的には個々の被接合部材は板状部材又は板状の部分を有する部材であり、より典型的には金属板である。
SPRの形状及び材料等については、例えば、SPR接合に用いられるプレス機等の装置(以降、「SPR接合装置」と総称される場合がある)の設計及び仕様並びに被接合部材の形状及び構造並びに材料等に応じて適宜定められる。図1は、典型的なSPRの構成の一例を示す模式的な(a)等角投影図、(b)平面図(上面図)、(c)正面図、(d)底面図、及び(e)上記(c)に示す線A−Aを含む平面による断面図である。図1に示すSPR301は略円筒状の脚部320及び脚部320の一端に同軸状に形成された略円盤状の頭部310からなる。頂部310の直径は軸部320の直径よりも大きい。また、脚部320の他端(頭部310の反対側の端部)近傍における内径は、当該端部に近くなるほど大きくなるように構成されている。換言すれば、脚部320の他端には、内側から外側に向かって拡がるテーパーが形成されている。
一方、第1金型の形状については、上述した要件及び後述する要件を満足する限り、特に限定されない。第1金型の形状の詳細については後述する。第1金型を構成する材料については、例えば、SPR接合装置の設計及び仕様並びに被接合部材の形状及び構造並びに材料等に応じて適宜定められる。
第1金型においては、接合開始状態において第1軸に直交する平面によるキャビティの断面がキャビティの内底面から開口部へと向かうほど広くなるようにキャビティが形成されている。換言すれば、第1金型に形成されたキャビティは、その内底面よりも開口部の方がより広い。接合開始状態とは、SPR接合の開始時点においてSPRと第1金型とが所定の位置関係に配置された状態である。
更に、第1金型においては、接合開始状態において第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されている。換言すれば、第1金型に形成されたキャビティの内側面には、第1軸と同軸状に形成された環状の溝として、ダイスポケットが形成されている。ダイスポケットの形状(例えば、幅及び深さ等)及び位置等は、例えば、SPR接合におけるSPRの脚部のSPR側被接合部材への貫通及び金型側被接合部材への進入を実質的に妨げず且つSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することが可能である限り、特に限定されない。このようなダイスポケットの形状及び位置は、例えば有限要素法等の流動解析及び予備実験等により適宜定めることができる。前述したように、複数の被接合部材のうち、金型側被接合部材は金型に最も近い被接合部材であり、SPR側被接合部材は金型側被接合部材よりもSPR側に位置する被接合部材である。
尚、ダイスポケットの形状が所謂「アンダーカット」に該当する場合は、例えばスライドコア等のアンダーカット対策が必要となり、第1金型の構造の複雑化及び/又は製造コストの増大を招く虞がある。従って、第1金型が備えるダイスポケットは、アンダーカットに該当しないように形成されることが望ましい。換言すれば、第1金型においては、第1軸に直交する平面によるダイスポケットの断面がキャビティの内底面側から開口部側へと向かうほど広くなるようにダイスポケットが形成されていることが望ましい。
図2は、第1金型の構成の一例を示す模式的な(a)等角投影図、(b)平面図(上面図)、(c)正面図、(d)側面図、(e)上記(d)に示す線B−Bを含む平面による断面図、及び(f)キャビティの開口部近傍の拡大断面図である。図2に例示する第1金型101は、略円柱状の形状を有する軸部120及び軸部120の一端に同軸状に形成され且つ軸部120よりも大きい直径を有する略円柱状の頭部110からなる。軸部120は図示しないSPR接合装置の所定の位置に第1金型101を確実に固定するための部分である。但し、第1金型は必ずしもこのような頭部及び軸部によって構成されている必要は無く、上述した各種要件を満足し且つSPR接合装置の所定の位置に確実に固定することが可能である限り、第1金型の形状及び構造は特に限定されない。
図2に例示するように、第1金型101においては、第1軸に直交する平面によるキャビティ130の断面がキャビティ130の内底面132から開口部へと向かうほど大きくなるようにキャビティ130が形成されている。更に、図2の(f)に例示するように、第1金型101においては、第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケット134がキャビティ130の内側面133に形成されている。尚、図2の(a)乃至(e)においては、ダイスポケット134は省略されている。
〈SPR接合過程〉
ここで、ダイスポケットを備えない従来技術に係るSPR接合用金型(従来金型)を使用するSPR接合過程と対比しながら、第1金型を使用するSPR接合過程について以下に詳しく説明する。
ここで、ダイスポケットを備えない従来技術に係るSPR接合用金型(従来金型)を使用するSPR接合過程と対比しながら、第1金型を使用するSPR接合過程について以下に詳しく説明する。
図3の(a)はダイスポケットを備えない従来金型を使用するSPR接合の接合開始状態において互いに対向しているSPRと金型との位置関係の一例を示す模式的な断面図であり、図3の(b)は当該SPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図である。図3の(b)においては、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。
前述したように、従来金型201を使用するSPR接合においては、従来金型201のキャビティ230に向かってSPR301が打ち込まれる際に、SPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重が大きい。その結果、例えばSPR301の脚部が増肉(厚肉化)したり座屈したりして、十分なインターロックの形成(十分なインターロック量の達成)が困難となり、例えばSPR側被接合部材401と金型側被接合部材402との接合強度の低下等の問題に繋がる虞がある。
一方、図4の(a)は上述したようなダイスポケットを備える第1金型を使用するSPR接合の接合開始状態において互いに対向しているSPRと金型との位置関係の一例を示す模式的な断面図であり、図4の(b)は当該SPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図である。図4の(b)においても、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。図4に例示するSPR接合においては、図2に例示した第1金型101が使用されている。
上述したように、第1金型101においては、接合開始状態において第1軸AX1に直交する平面によるキャビティ130の断面がキャビティ130の内底面132から開口部131へと向かうほど広くなるようにキャビティ130が形成されている。更に、第1軸AX1を中心とする環状の窪みであるダイスポケット134が内側面133に形成されている。これにより、SPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材402の材料の少なくとも一部をダイスポケット134によって受け入れることができる。
従って、第1金型101によれば、SPR接合においてキャビティ130に向かってSPR301が打ち込まれる際にSPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することができる。その結果、例えばSPR301の脚部の増肉(厚肉化)及び座屈等の問題を低減して十分なインターロック量を達成し、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402との接合強度を増大させることができる。
〈効果〉
上記のように、第1金型においては、第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されているので、SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料の少なくとも一部をダイスポケットによって受け入れることができる。従って、第1金型によれば、SPR接合において金型のキャビティに向かってSPRが打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し、インターロック量を増大させることができる。その結果、SPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合強度を増大させることができる。
上記のように、第1金型においては、第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されているので、SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料の少なくとも一部をダイスポケットによって受け入れることができる。従って、第1金型によれば、SPR接合において金型のキャビティに向かってSPRが打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し、インターロック量を増大させることができる。その結果、SPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合強度を増大させることができる。
尚、第1金型によって達成される上記のような効果は、金型側被接合部材を構成する材料がSPR側被接合部材を構成する材料よりも軟らかい(流動し易い)場合において、より有効である。換言すれば、上記のような効果は、金型側被接合部材を構成する材料がSPR側被接合部材を構成する材料よりも塑性流動を生じ易い場合において、より有効である。このような場合の具体例としては、例えば、SPR側被接合部材が高張力鋼板であり且つ金型側被接合部材がアルミニウム合金板である場合等を挙げることができる。特に、金型側被接合部材を構成する材料がSPR側被接合部材を構成する材料よりも塑性流動を生じ易く且つ積層部において金型側被接合部材の厚さがSPR側被接合部材の厚さよりも大きい場合に上記のような効果が更により有効に発揮される。
〈変形例1−1〉
前述したように、ダイスポケットの形状及び位置等は、例えばSPR接合におけるSPRの脚部のSPR側被接合部材への貫通及び金型側被接合部材への進入を実質的に妨げず且つSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することが可能である限り特に限定されない。しかしながら、SPR接合におけるSPRの脚部のSPR側被接合部材への貫通及び金型側被接合部材への進入をより確実なものとする観点からは、SPRの打ち込みに伴って塑性流動する金型側被接合部材の材料の少なくとも一部(好ましくは大部分)がSPRの脚部よりも径方向における外側において受け入れられるようにダイスポケットが形成されていることが望ましい。
前述したように、ダイスポケットの形状及び位置等は、例えばSPR接合におけるSPRの脚部のSPR側被接合部材への貫通及び金型側被接合部材への進入を実質的に妨げず且つSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することが可能である限り特に限定されない。しかしながら、SPR接合におけるSPRの脚部のSPR側被接合部材への貫通及び金型側被接合部材への進入をより確実なものとする観点からは、SPRの打ち込みに伴って塑性流動する金型側被接合部材の材料の少なくとも一部(好ましくは大部分)がSPRの脚部よりも径方向における外側において受け入れられるようにダイスポケットが形成されていることが望ましい。
そこで、変形例1−1に係る第1金型においては、接合開始状態における第1軸に直交する平面への垂直投影図において、ダイスポケットの最も深い部分であるポケット最深部がSPRの脚部の外周面よりも外側に位置するようにダイスポケットが形成されている。
図5の(a)は上述したような構成を有する変形例1−1に係る第1金型を使用するSPR接合の接合開始状態におけるSPRと金型との位置関係の一例を示す模式的な断面図であり、図5の(b)は(a)に示したSPRの脚部の外周面及びポケット最深部の第1軸に直交する平面への垂直投影図である。図5に示すように、変形例1−1に係る第1金型101aにおいては、ダイスポケット134の最も深い部分であるポケット最深部PPがSPR301の脚部の外周面Coutよりも外側に位置するようにダイスポケット134が形成されている。
従って、変形例1−1に係る第1金型101aにおいては、SPRの脚部のSPR側被接合部材への貫通後にも、金型側被接合部材を構成する材料をダイスポケットが受け入れることができる。その結果、第1金型101aによれば、SPR接合におけるSPRの脚部のSPR側被接合部材への貫通及び金型側被接合部材への進入をより確実なものとすることができる。
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第2金型」と称呼される場合がある)について説明する。
以下、本発明の第2実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第2金型」と称呼される場合がある)について説明する。
本明細書の冒頭において説明したように、SPR接合において、SPRの脚部はSPR側被接合部材を貫通した後に金型側被接合部材に食い込む。この過程において、SPRの脚部は、径方向における外側へと広がるように変形する(拡径する)。これにより、SPR側被接合部材と金型側被接合部材とが強固に接合される。上記のようなSPRの脚部の拡径を促す観点からは、金型側被接合部材のSPRの脚部に対応する部分及び脚部よりも内側の部分を構成する材料の径方向における外側へと向かう伸び変形(塑性流動)を促進することが望ましい。
〈構成〉
そこで、第2金型は、上述した第1金型であって、キャビティの内底面から開口部側に向かって隆起する凸部がキャビティの内部に形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
そこで、第2金型は、上述した第1金型であって、キャビティの内底面から開口部側に向かって隆起する凸部がキャビティの内部に形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
凸部の形状、大きさ及び位置等は、本発明によって達成されるべき上述したような効果を実質的に妨げず且つSPRの脚部の拡径を促すことが可能である限り、特に限定されない。このような凸部の形状、大きさ及び位置は、例えば有限要素法等の流動解析及び予備実験等により適宜定めることができる。典型的には、例えば、接合開始状態において第1軸を軸とする円錐台等の截頭錐体として凸部が形成される。
図6の(a)は上述したような凸部を備える第2金型を使用するSPR接合の接合開始状態において互いに対向しているSPRと金型との位置関係の一例を示す模式的な断面図であり、図6の(b)は当該SPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図である。図6の(b)においても、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。図6に例示する第2金型102は、キャビティ130の内底面132から開口部133側に向かって隆起する凸部140がキャビティ130の内部に形成されている点を除き、図2に例示した第1金型101と同様の構成を有する。
上記のような構成を有する第2金型102を使用するSPR接合においては、図6の(b)において太い矢印によって示すように、第2金型102のキャビティ130に向かってSPR301が打ち込まれてキャビティ130の内底面132に向かう力が作用する際に金型側被接合部材402を構成する材料が凸部140に沿って径方向における外側に向かう塑性流動を生じ易い。その結果、SPR301の脚部の拡径が促され、インターロック量が増大し、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とが強固に接合される。
〈効果〉
上記のように、第2金型においては、キャビティの内底面から開口部側に向かって隆起する凸部がキャビティの内部に形成されているので、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への塑性流動を促進することができる。その結果、第2金型によれば、SPRの脚部の拡径を促すことにより、インターロック量を増大させて、SPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合強度を増大させることができる。
上記のように、第2金型においては、キャビティの内底面から開口部側に向かって隆起する凸部がキャビティの内部に形成されているので、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への塑性流動を促進することができる。その結果、第2金型によれば、SPRの脚部の拡径を促すことにより、インターロック量を増大させて、SPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合強度を増大させることができる。
尚、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への塑性流動が過度に促進されると、SPR接合過程の早い段階において金型側被接合部材を構成する材料によってダイスポケットが充満されてしまう虞がある。そうすると、金型側被接合部材を構成する材料をダイスポケットによって更に受け入れることができなくなるので、SPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し且つインターロック量を増大させるという本発明の効果を十分に達成することが困難となる虞がある。
上記のような問題を回避するためには、上述したように例えば有限要素法等の流動解析及び予備実験等により、好適な凸部の形状、大きさ及び位置を定めることが重要である。更に、遅くともダイスポケットが上記材料によって充満されてしまう前に当該材料を受け入れてダイスポケットの充満を遅らせることが可能な構造をキャビティに設けてもよい。
例えば、キャビティの内底面の凸部よりも径方向における外側の領域には、キャビティの内側面及び内底面と凸部の外側面とによって画定される環状の溝(以降、「外周溝」と称呼される場合がある)が形成されている。この外周溝の形状、大きさ及び位置を適宜設計することにより、遅くともダイスポケットが上記材料によって充満されてしまう前に当該材料を受け入れてダイスポケットの充満を遅らせることができる。
図7の(a)は上記のように構成された外周溝を備える第2金型を使用するSPR接合の接合開始状態において互いに対向しているSPRと金型との位置関係の一例を示す模式的な断面図である。図7の(b)は当該SPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図であり、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。図7に示す第2金型102’は、キャビティ130の内底面132における凸部140よりも径方向における外側の領域に形成された外周溝を備える点を除き、図6に例示した第2金型102と同様の構成を有する(破線によって囲まれた領域Gを参照)。
上記のような構成を有する第2金型102’を使用するSPR接合においては、図7の(b)において太い矢印によって示すように、SPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材402の材料の少なくとも一部を外周溝Gによって受け入れることができる。外周溝Gはダイスポケット134よりも径方向における内側に形成されているので、遅くともダイスポケット134が充満されてしまう前に外周溝Gによる上記材料の受け入れを開始して、ダイスポケットの充満を遅らせることができる。その結果、第2金型102’によれば、SPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し且つインターロック量を増大させるという本発明の効果をより確実に達成することができる。
〈変形例2−1〉
尚、第2金型のキャビティ内における凸部の内底面からの高さは、例えば、SPRの脚部の構成材料及び形状並びにSPR側被接合部材及び金型側被接合部材の構成材料及び厚さ等に応じて適宜設定されるべきものである。しかしながら、SPRの脚部によるSPR側被接合部材の打ち抜きの完了までの過程において当該脚部が受ける反力を低減する観点からは、第2金型の金型頂面からの凸部の深さ(第1軸に平行な方向における距離)はSPR側被接合部材の厚さと同程度であるか又はSPR側被接合部材の厚さよりも若干大きいことが望ましい。金型頂面とは、前述したように、本発明金型においてキャビティの開口部が形成された表面を指す。
尚、第2金型のキャビティ内における凸部の内底面からの高さは、例えば、SPRの脚部の構成材料及び形状並びにSPR側被接合部材及び金型側被接合部材の構成材料及び厚さ等に応じて適宜設定されるべきものである。しかしながら、SPRの脚部によるSPR側被接合部材の打ち抜きの完了までの過程において当該脚部が受ける反力を低減する観点からは、第2金型の金型頂面からの凸部の深さ(第1軸に平行な方向における距離)はSPR側被接合部材の厚さと同程度であるか又はSPR側被接合部材の厚さよりも若干大きいことが望ましい。金型頂面とは、前述したように、本発明金型においてキャビティの開口部が形成された表面を指す。
そこで、変形例2−1に係る第2金型は、凸部と金型頂面との間の第1軸に平行な方向における距離の最小値である凸部深度が金型側被接合部材の厚さを積層部の総厚から減算することによって得られる値以上であるように凸部が形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
図8は、接合開始状態において複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部が変形例2−1に係る第2金型とSPRとの間に配置された状況の一例を示す模式的な断面図である。図8においては、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。また、図8においては、紙面の都合上、主要な構成部材を示す符号のみを記載し、各部材の部分を示す符号については省略した。
図8に示す例においては、SPR側被接合部材401としての1枚の高張力鋼板と金型側被接合部材402としての1枚のアルミニウム合金板とが互いに重ね合わされた部分である積層部が変形例2−1に係る第2金型102aとSPR301との間に配置されている。この積層部は、図示しないSPR接合装置が備えるパッド500の金型側の表面であるパッド先端面501と第2金型102aの金型頂面のキャビティ130よりも径方向において外側の部分である外周頂面191とによって挟まれることにより、所定の位置に固定されている。
図8に例示する第2金型102aにおいては、凸部140と金型頂面(外周頂面191)との間の第1軸AX1に平行な方向における距離の最小値である凸部深度Dpが金型側被接合部材402の厚さT2を積層部の総厚Taから減算することによって得られる値に等しいように凸部140が形成されている(Dp=Ta−T2)。即ち、凸部深度DpがSPR側被接合部材401の厚さT1に等しいように凸部140が形成されている(Dp=T1)。その結果、第2金型102aによれば、SPR301の脚部によるSPR側被接合部材401の打ち抜きの完了までの過程において当該脚部が受ける反力をより確実に低減することができる。尚、第2金型102aにおいては、金型側被接合部材402の厚さT2を積層部の総厚Taから減算することによって得られる値に凸部深度Dpが等しいように凸部140が形成されている(Dp=Ta−T2=T1)。しかしながら、前述したように、凸部深度Dpは上記値よりも若干大きくてもよい。
〈変形例2−2〉
上述したように、凸部の形状及び位置等は、本発明によって達成されるべき上述したような効果を実質的に妨げず且つSPRの脚部の拡径を促すことが可能である限り、特に限定されない。しかしながら、SPRの脚部の拡径をより確実に促進する観点からは、SPR接合過程においてキャビティの内底面からSPRが受ける反力がSPRの脚部の拡径を促す方向に作用することが望ましい。
上述したように、凸部の形状及び位置等は、本発明によって達成されるべき上述したような効果を実質的に妨げず且つSPRの脚部の拡径を促すことが可能である限り、特に限定されない。しかしながら、SPRの脚部の拡径をより確実に促進する観点からは、SPR接合過程においてキャビティの内底面からSPRが受ける反力がSPRの脚部の拡径を促す方向に作用することが望ましい。
そこで、変形例2−2に係る第2金型は、接合開始状態における第1軸に直交する平面への垂直投影図において凸部の頂面である凸部頂面の外縁がSPRの脚部の内周と外周との間に位置するように凸部が形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
図9は、変形例2−2に係る第2金型を使用するSPR接合の接合開始状態におけるSPRと金型との位置関係を示す模式的な(a)断面図及び(b)垂直投影図である。図8に示すように、変形例2−2に係る第2金型102bにおいては、SPR301の脚部320の内周Cinと外周Coutとの間に凸部頂面141の外縁Eoutが位置するように凸部140が形成されている。具体的には、第1軸AX1に直交する平面への垂直投影図である(b)において、脚部320の内周Cinと外周Coutとの間に凸部頂面141の外縁Eoutが位置するように凸部140が形成されている。
上記のような構成により、第2金型102bにおいては、SPR接合過程においてキャビティ130の内底面132からSPR301が受ける反力が脚部320の拡径を促す方向に作用し易い。その結果、第2金型102bによれば、SPR接合過程における脚部320の拡径をより確実に促進することができる。
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第3金型」と称呼される場合がある)について説明する。
以下、本発明の第3実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第3金型」と称呼される場合がある)について説明する。
第2金型に関する説明において述べたように、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への塑性流動が過度に促進されると、SPR接合過程の早い段階において金型側被接合部材を構成する材料によってダイスポケットが充満されてしまう虞がある。そうすると、金型側被接合部材を構成する材料をダイスポケットによって更に受け入れることができなくなるので、SPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し且つインターロック量を増大させるという本発明の効果を十分に達成することが困難となる虞がある。
また、特にSPR側被接合部材を構成する材料に比べて軟らかい(流動し易い)材料によって金型側被接合部材が構成されている場合においては、キャビティに向かってSPRが打ち込まれて金型の内底面に向かう力が作用する際に金型側被接合部材を構成する材料がキャビティの内底面の形状に沿って径方向における外側に向かって優先的に流動し易い。その結果、金型側被接合部材の厚さが過度に薄くなり、例えば接合強度の低下及び金型側被接合部材のひび割れ等の問題に繋がる虞がある。
〈構成〉
そこで、第3金型は、上述した第2金型において、キャビティの内部に形成された凸部の頂面である凸部頂面が凹面として形成されており、第1軸を含む平面による断面図において凸部頂面の外縁である突出部がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
そこで、第3金型は、上述した第2金型において、キャビティの内部に形成された凸部の頂面である凸部頂面が凹面として形成されており、第1軸を含む平面による断面図において凸部頂面の外縁である突出部がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
凸部頂面の形状は、凹面として形成されている限り特に限定されず、例えば、SPR側被接合部材及び金型側被接合部材の構成材料及び厚さ等に応じて適宜設定することができる。また、SPR接合において複数の被接合部材にSPRを打ち込むときの加工荷重(上述した打ち抜き荷重を含む)に耐え得る凸部を形成する観点からは、凹状の頂面を有する截頭錐体として凸部が形成されていることが望ましい。更に、SPRの脚部の円筒状の形状の軸を通る直線である第1軸を含む平面による断面図において、凸部頂面の外縁である突出部がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように構成されている。即ち、突出部は、SPRが打ち込まれる方向に垂直な平面ではなく、開口部側に凸状の曲面によって構成されている。尚、SPR接合において複数の被接合部材にSPRを打ち込むときの加工荷重(上述した打ち抜き荷重を含む)に耐え得る凸部を形成する観点からは、凹状の頂面を有する截頭錐体として凸部が形成されていることが望ましい。
具体的には、凸部頂面は、例えば凹状の曲面として形成されていてもよく、この場合、凸部頂面は凹状の球面として形成されていてもよい。この場合における凸部頂面の具体的な形状(例えば、曲率半径及び深さ等)は、例えばSPR側被接合部材及び金型側被接合部材の構成材料及び厚さ等に応じて適宜設定することができる。或いは、凸部頂面は、凹状の円錐面として形成されていてもよい。この場合における凸部頂面の具体的な形状(例えば、円錐角の大きさ等)もまた、例えばSPR側被接合部材及び金型側被接合部材の構成材料及び厚さ等に応じて適宜設定することができる。尚、本明細書において「円錐角」とは、円錐面の頂点を通る軸を含む平面による当該円錐面の断面における2つの母線がなす角を意味する。
図10は、第3金型の構成の1つの例を示す模式的な(a)等角投影図、(b)平面図(上面図)、(c)正面図、(d)側面図、(e)上記(d)に示す線B−Bを含む平面による断面図、及び(f)キャビティの開口部近傍の拡大断面図である。図10に例示する第3金型103は、キャビティ130の内底面132から開口部側に向かって隆起する凸部がキャビティ130の内部に形成されており、凸部の頂面である凸部頂面141が凹状の曲面として形成されており、且つ第1軸AX1を含む平面による断面図において凸部頂面141の外縁Eoutである突出部(以降、「突出部Eout」と称呼される場合がある)がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている点を除き、図2に例示した第1金型101と同様の構成を有する。
図11は、第3金型の構成のもう1つの例を示す模式的な(a)等角投影図、(b)平面図(上面図)、(c)正面図、(d)側面図、(e)上記(d)に示す線B−Bを含む平面による断面図、及び(f)キャビティの開口部近傍の拡大断面図である。図10に例示する第3金型103’は、キャビティ130の内部に形成された凸部の頂面である凸部頂面141が凹状の円錐面として形成されている点を除き、図10に例示した第3金型103と同様の構成を有する。尚、図10の(a)乃至(e)及び図11の(a)乃至(e)においては、ダイスポケット134が省略されている。
図12の(a)及び(b)は、それぞれ図10及び図11に例示した第3金型103及び第3金型103’を使用するSPR接合の接合開始状態において互いに対向している第3金型103及び第3金型103’とSPR301との位置関係の一例を示す模式的な断面図である。但し、図12の(b)においては、SPR301が省略されている。
〈効果〉
以上のように、第3金型においては、キャビティの内底面から開口部側に向かって隆起する凸部が形成されており、凸部頂面が凹状の曲面として形成されており、且つ第1軸を含む平面による断面図においてキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部頂面の外縁(突出部)が形成されている。従って、第3金型によれば、金型側被接合部材がSPR側被接合部材に比べて塑性流動を生じ易い材料によって構成されている場合であっても、金型側被接合部材を構成する材料がSPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと過度に塑性流動して、SPR接合過程の早い段階においてダイスポケットが充満されたり、金型側被接合部材が過剰に薄肉化されたりする虞を低減することができる。
以上のように、第3金型においては、キャビティの内底面から開口部側に向かって隆起する凸部が形成されており、凸部頂面が凹状の曲面として形成されており、且つ第1軸を含む平面による断面図においてキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部頂面の外縁(突出部)が形成されている。従って、第3金型によれば、金型側被接合部材がSPR側被接合部材に比べて塑性流動を生じ易い材料によって構成されている場合であっても、金型側被接合部材を構成する材料がSPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと過度に塑性流動して、SPR接合過程の早い段階においてダイスポケットが充満されたり、金型側被接合部材が過剰に薄肉化されたりする虞を低減することができる。
上記に加えて、第3金型においては、上述した第1金型と同様に、第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されているので、SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料の少なくとも一部をダイスポケットによって受け入れることができる。従って、第3金型によっても、SPR接合において金型のキャビティに向かってSPRが打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し、インターロック量を増大させることができる。その結果、SPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合強度を増大させることができる。即ち、第3金型によれば、SPR接合において、打ち抜き荷重を低減しつつ、金型側被接合部材の過剰な薄肉化の低減及びインターロック量の増大を達成することができる。
〈SPR接合過程〉
ここで、ダイスポケットを備えない従来技術に係るSPR接合用金型(従来金型)を使用するSPR接合過程と対比しながら、第3金型を使用するSPR接合過程について以下に詳しく説明する。
ここで、ダイスポケットを備えない従来技術に係るSPR接合用金型(従来金型)を使用するSPR接合過程と対比しながら、第3金型を使用するSPR接合過程について以下に詳しく説明する。
図13は、接合開始状態において複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部がダイスポケットを備えない従来金型とSPRとの間に配置された状況の一例を示す模式的な断面図である。図13に例示する従来金型202は、ダイスポケット134を備えない点を除き、図12の(a)に例示した第3金型103と同様の構成を有する。尚、図13においては、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。また、図13においては、紙面の都合上、主要な構成部材を示す符号のみを記載し、各部材の部分を示す符号については省略した。
図13に示す例においては、SPR側被接合部材401としての1枚の高張力鋼板と金型側被接合部材402としての1枚のアルミニウム合金板とが互いに重ね合わされた部分である積層部が従来金型202とSPR301との間に配置されている。この積層部は、図示しないSPR接合装置が備えるパッド500の金型側の表面であるパッド先端面501と従来金型202の金型頂面のキャビティ130よりも径方向において外側の部分である外周頂面191とによって挟まれることにより、所定の位置に固定されている。また、図14の(a)は上記構成によるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図であり、図14の(b)はSPR301、SPR側被接合部材401及び金型側被接合部材402以外の構成部材を(a)から削除した図である。
図13及び図14に例示する従来金型202においても、図12の(a)に例示した第3金型103と同様に、キャビティ130の内底面132から開口部側に向かって隆起する凸部がキャビティ130の内部に形成されており、凸部の頂面である凸部頂面141が凹状の曲面として形成されており、且つ第1軸AX1を含む平面による断面図において凸部頂面141の外縁(突出部Eout)がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている。従って、従来金型202によっても、上記のように金型側被接合部材402がSPR側被接合部材401に比べて塑性流動を生じ易い材料によって構成されている場合であっても、金型側被接合部材402を構成する材料がSPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと過度に塑性流動して、金型側被接合部材402が過剰に薄肉化される虞を低減することができる。しかしながら、従来金型202はダイスポケットを備えないので、金型側被接合部材402を構成する材料をダイスポケットによって受け入れることによりSPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し且つインターロック量を増大させる効果を達成することはできない。
一方、図15は、接合開始状態において複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部がダイスポケットを備える第3金型とSPRとの間に配置された状況の一例を示す模式的な断面図である。図15に例示する第3金型103は、図12の(a)に例示した第3金型103である。尚、図15においても、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれており、紙面の都合上、主要な構成部材を示す符号のみを記載し、各部材の部分を示す符号については省略した。
図15に示す例においても、SPR側被接合部材401としての高張力鋼板と金型側被接合部材402としてのアルミニウム合金板との積層部が、第3金型103とSPR301との間に配置されパッド先端面501と外周頂面191とによって挟まれて所定の位置に固定されている。また、図16の(a)は上記構成によるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図であり、図16の(b)はSPR301、SPR側被接合部材401及び金型側被接合部材402以外の構成部材を(a)から削除した図である。
図15及び図16に例示する第1金型103は、上述したように、キャビティ130の内底面132から開口部側に向かって隆起する凸部がキャビティ130の内部に形成されており、凸部の頂面である凸部頂面141が凹状の曲面として形成されており、且つ第1軸AX1を含む平面による断面図において凸部頂面141の外縁(突出部Eout)がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている。従って、上記のように金型側被接合部材402がSPR側被接合部材401に比べて塑性流動を生じ易い材料によって構成されている場合であっても、金型側被接合部材402を構成する材料がSPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと過度に塑性流動して、金型側被接合部材402が過剰に薄肉化される虞を低減することができる。加えて、第3金型103はダイスポケット134を備える。従って、SPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材402の材料をダイスポケット134によって受け入れることにより、SPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し且つインターロック量を増大させることができる。
〈効果〉
上記のように、第3金型においては、キャビティの内部に形成された凸部の頂面である凸部頂面が凹面として形成されており、第1軸を含む平面による断面図において凸部頂面の外縁である突出部がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている。従って、第3金型によれば、金型側被接合部材がSPR側被接合部材に比べて塑性流動を生じ易い材料によって構成されている場合であっても、金型側被接合部材を構成する材料がSPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと過度に塑性流動して、SPR接合過程の早い段階においてダイスポケットが充満されたり、金型側被接合部材が過剰に薄肉化されたりする虞を低減することができる。
上記のように、第3金型においては、キャビティの内部に形成された凸部の頂面である凸部頂面が凹面として形成されており、第1軸を含む平面による断面図において凸部頂面の外縁である突出部がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている。従って、第3金型によれば、金型側被接合部材がSPR側被接合部材に比べて塑性流動を生じ易い材料によって構成されている場合であっても、金型側被接合部材を構成する材料がSPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと過度に塑性流動して、SPR接合過程の早い段階においてダイスポケットが充満されたり、金型側被接合部材が過剰に薄肉化されたりする虞を低減することができる。
〈変形例3−1〉
前述したように、SPRの脚部によるSPR側被接合部材の打ち抜きの完了までの過程において当該脚部が受ける反力を低減する観点からは、金型頂面からの凸部の深さ(第1軸に平行な方向における距離)がSPR側被接合部材の厚さと同程度であるか又はSPR側被接合部材の厚さよりも若干大きいことが望ましい。従って、上述した変形例2−1に係る第2金型においては、凸部と金型頂面との間の第1軸に平行な方向における距離の最小値である凸部深度が金型側被接合部材の厚さを積層部の総厚から減算することによって得られる値以上であるように凸部が形成されている。
前述したように、SPRの脚部によるSPR側被接合部材の打ち抜きの完了までの過程において当該脚部が受ける反力を低減する観点からは、金型頂面からの凸部の深さ(第1軸に平行な方向における距離)がSPR側被接合部材の厚さと同程度であるか又はSPR側被接合部材の厚さよりも若干大きいことが望ましい。従って、上述した変形例2−1に係る第2金型においては、凸部と金型頂面との間の第1軸に平行な方向における距離の最小値である凸部深度が金型側被接合部材の厚さを積層部の総厚から減算することによって得られる値以上であるように凸部が形成されている。
一方、第3金型においては、上記のように、キャビティの内部に形成された凸部の頂面である凸部頂面が凹面として形成されており、第1軸を含む平面による断面図において凸部頂面の外縁である突出部がキャビティの開口部側に向かって凸状の曲線を描くように凸部が形成されている。従って、第3金型においては、突出部と金型頂面(キャビティの開口部が形成された表面)との間の第1軸に平行な方向における距離の最小値が凸部深度に該当する。
そこで、変形例3−1に係る第3金型は、凸部頂面の外縁である突出部と金型頂面との間の第1軸に平行な方向における距離の最小値である凸部深度が金型側被接合部材の厚さを積層部の総厚から減算することによって得られる値以上であるように凸部が形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
図17は、接合開始状態において複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部が変形例3−1に係る第3金型とSPRとの間に配置された状況を示す模式的な断面図である。図17においては、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。また、図17においては、紙面の都合上、主要な構成部材を示す符号のみを記載し、各部材の部分を示す符号については省略した。
図17に示す例においては、SPR側被接合部材401としての1枚の高張力鋼板と金型側被接合部材402としての1枚のアルミニウム合金板とが互いに重ね合わされた部分である積層部が変形例3−1に係る第3金型103aとSPR301との間に配置されている。この積層部は、図示しないSPR接合装置が備えるパッド500の金型側の表面であるパッド先端面501と第3金型103aの金型頂面のキャビティ130よりも径方向において外側の部分である外周頂面191とによって挟まれることにより、所定の位置に固定されている。
図17に例示する第3金型103aにおいては、凸部頂面の外縁である突出部Eoutと金型頂面(外周頂面191)との間の第1軸AX1に平行な方向における距離の最小値が凸部深度Dpに該当し、当該凸部深度Dpが金型側被接合部材402の厚さT2を積層部の総厚Taから減算することによって得られる値に等しいように凸部140が形成されている(Dp=Ta−T2)。即ち、凸部深度DpがSPR側被接合部材401の厚さT1に等しいように凸部140が形成されている(Dp=T1)。その結果、第3金型103aによれば、前述した変形例2−1に係る第2金型102aと同様に、SPR301の脚部によるSPR側被接合部材401の打ち抜きの完了までの過程において当該脚部が受ける反力をより確実に低減することができる。尚、第3金型103aにおいては、金型側被接合部材402の厚さT2を積層部の総厚Taから減算することによって得られる値に凸部深度Dpが等しいように凸部140が形成されている(Dp=Ta−T2=T1)。しかしながら、前述したように、凸部深度Dpは上記値よりも若干大きくてもよい。
〈変形例3−2〉
上述したように、凸部の形状及び位置等は、本発明によって達成されるべき上述したような効果を実質的に妨げず且つSPRの脚部の拡径を促すことが可能である限り、特に限定されない。しかしながら、SPRの脚部の拡径をより確実に促進する観点からは、SPR接合過程においてキャビティの内底面からSPRが受ける反力がSPRの脚部の拡径を促す方向に作用することが望ましい。
上述したように、凸部の形状及び位置等は、本発明によって達成されるべき上述したような効果を実質的に妨げず且つSPRの脚部の拡径を促すことが可能である限り、特に限定されない。しかしながら、SPRの脚部の拡径をより確実に促進する観点からは、SPR接合過程においてキャビティの内底面からSPRが受ける反力がSPRの脚部の拡径を促す方向に作用することが望ましい。
そこで、変形例3−2に係る第3金型は、接合開始状態における第1軸に直交する平面への垂直投影図において凸部の頂面である凸部頂面の外縁である突出部がSPRの脚部の内周と外周との間に位置するように凸部が形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
図18は、変形例3−2に係る第3金型を使用するSPR接合の接合開始状態におけるSPRと金型との位置関係を示す模式的な(a)断面図及び(b)垂直投影図である。図18に示すように、変形例3−2に係る第3金型103bにおいては、SPR301の脚部320の内周Cinと外周Coutとの間に凸部頂面141の外縁である突出部Eoutが位置するように凸部140が形成されている。具体的には、第1軸AX1に直交する平面への垂直投影図である(b)において、脚部320の内周Cinと外周Coutとの間に凸部頂面141の突出部Eoutが位置するように凸部140が形成されている。
上記のような構成により、第3金型103bにおいては、SPR接合過程においてキャビティ130の内底面132からSPR301が受ける反力が脚部320の拡径を促す方向に作用し易い。その結果、第3金型103bによれば、SPR接合過程における脚部320の拡径をより確実に促進することができる。
〈変形例3−3〉
ところで、前述したように、キャビティ内における凸部よりも径方向における外側の領域には、キャビティの内側面及び底面と凸部の外側面とによって画定される環状の溝(外周溝)が形成されている。SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料が外周溝へと移動することができるので、SPR接合における打ち抜き荷重等の加工荷重を低減することができる。このような観点からは、外周溝は、SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料を受け入れることができる程度に十分に大きい容積を有することが望ましい。
ところで、前述したように、キャビティ内における凸部よりも径方向における外側の領域には、キャビティの内側面及び底面と凸部の外側面とによって画定される環状の溝(外周溝)が形成されている。SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料が外周溝へと移動することができるので、SPR接合における打ち抜き荷重等の加工荷重を低減することができる。このような観点からは、外周溝は、SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料を受け入れることができる程度に十分に大きい容積を有することが望ましい。
そこで、変形例3−3に係る第3金型は、外周側内底面深度が凸部凹面深度よりも大きいようにキャビティが形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。外周側内底面深度は、キャビティの内底面の凸部よりも径方向における外側の領域である外周側内底面と金型頂面との間の第1軸に平行な方向における距離の最大値である。凸部凹面深度は、凸部頂面と金型頂面との間の第1軸に平行な方向における距離の最大値である。
図19は、接合開始状態において複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部が変形例3−3に係る第3金型とSPRとの間に配置された状況を示す模式的な断面図である。図19においても、第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれており、紙面の都合上、各部材の部分を示す符号については省略され、主要な構成部材を示す符号のみが記載されている。
図19に示すように、外周側内底面深度Dgは、キャビティの内底面の凸部140よりも径方向における外側の領域である外周側内底面と金型頂面(外周頂面191)との間の第1軸AX1に平行な方向における距離の最大値である。また、凸部凹面深度Dtは、凸部頂面の外縁である突出部Eoutと金型頂面(外周頂面191)との間の第1軸AX1に平行な方向における距離の最大値である。そして、変形例3−3に係る第3金型103c例においては、外周側内底面深度Dgが凸部凹面深度Dtよりも大きいようにキャビティが形成されている。尚、外周側内底面は、キャビティの内底面の凸部よりも径方向における外側の領域であり、キャビティの内側面及び内底面と凸部の外側面とによって画定される環状の溝(外周溝G)の底面に該当する。
上記構成により、SPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材402の材料が外周溝Gへと移動することができるので、SPR接合における打ち抜き荷重等の加工荷重を低減することができる。また、外周溝Gはダイスポケット134よりも径方向における内側に形成されているので、遅くともダイスポケット134が充満されてしまう前に外周溝Gによる上記材料の受け入れを開始して、ダイスポケットの充満を遅らせることができる。その結果、第3金型103cによれば、SPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し且つインターロック量を増大させるという本発明の効果をより確実に達成することができる。
《第4実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第4金型」と称呼される場合がある)について説明する。
以下、本発明の第3実施形態に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「第4金型」と称呼される場合がある)について説明する。
以上説明してきたように、第1金型乃至第3金型を始めとする本発明に係るSPR接合用金型(本発明金型)においては、第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されている。従って、SPRの打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材の材料の少なくとも一部をダイスポケットによって受け入れることができる。その結果、本発明金型によれば、SPR接合において金型のキャビティに向かってSPRが打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し、インターロック量を増大させることができ、SPR側被接合部材と金型側被接合部材との接合強度を増大させることができる。
しかしながら、例えばSPR及び本発明金型並びに個々の被接合部材の構成(例えば、形状及び材料等)等によっては、複数の被接合部材にSPRが打ち込まれる際に金型側被接合部材を構成する材料がキャビティの内壁面に沿って径方向における外側に向かって過剰に流動してしまう場合がある。この場合、金型側被接合部材を構成する材料の過剰な流動により、インターロック量が減少し、例えば接合強度の低下等の問題に繋がる虞がある。更に、金型側被接合部材を構成する材料の過剰な流動により、SPRが打ち込まれる向きへのSPR側被接合部材の変形量が大きくなったりSPR側被接合部材と金型側被接合部材とSPRとの界面近傍において間隙が生じたりして、例えば接合強度の低下等の問題に繋がる虞がある。
従って、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材の径方向における外側への流動を適度に低減することができれば、本発明金型によるインターロック量の増大効果を更に高めて、被接合部材の接合強度を更に高めることができるものと期待される。そこで、本発明者は、更なる研究の結果、金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域にキャビティを取り囲む環状の突起を設けることにより、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材の径方向における外側への流動を適度に低減することができることを見出した。
〈構成〉
即ち、第4金型は、上述した第1金型乃至第3金型を始めとする本発明に係るセルフピアスリベット接合用金型(本発明金型)であって、第1軸に平行な方向において内底面とは反対側に向かって隆起する環状の突起である環状突起が金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域に形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
即ち、第4金型は、上述した第1金型乃至第3金型を始めとする本発明に係るセルフピアスリベット接合用金型(本発明金型)であって、第1軸に平行な方向において内底面とは反対側に向かって隆起する環状の突起である環状突起が金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域に形成されている、セルフピアスリベット接合用金型である。
環状突起の具体的な構成(例えば、横断面の形状及び大きさ並びに位置等)は、SPRの打ち抜き荷重の増大の低減、金型側被接合部材の過剰な薄肉化の低減及びインターロック量の増大を達成しつつ、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への流動を適度に低減することが可能である限り、特に限定されない。ここでいう「環状突起の横断面」とは、SPR接合の開始時点においてSPRとSPR接合用金型とが所定の位置関係に配置された状態(接合開始状態)における第1軸を含む平面による環状突起の断面である。但し、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への流動を過度に低減すると、SPRの脚部の拡径が困難となり、結果的にインターロック量が減少する虞がある。
具体的には、環状突起の横断面の形状は、例えば三角形、台形及び四角形等の多角形であってもよく、或いは例えば半円形及び半楕円形等、内底面とは反対側に向かって隆起する面が曲面となる形状であってもよい。更に、環状突起の横断面の大きさ(例えば、径方向における大きさである幅及び第1軸に平行な方向における大きさである高さ等)は、例えばSPRの打ち抜き荷重の増大の低減、金型側被接合部材の過剰な薄肉化の低減及びインターロック量の増大とSPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への流動の適度な低減との両立が可能であるように適宜定められる。
加えて、環状突起が形成される位置は、金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域である限り特に限定されない。一般的には、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への流動を適度に低減する観点からは、金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域において、キャビティにより近い位置に環状突起が形成されることが好ましい。典型的には、金型頂面のキャビティに隣接する位置に環状突起が形成される。尚、上記のような要件を満たし得る環状突起の構成は、例えば有限要素法等の流動解析及び予備実験等により適宜定めることができる。
〈機能〉
ここで、SPR接合過程において第4金型が備える環状突起によって達成される機能につき、環状突起を備えない本発明の第3実施形態に係るSPR接合用金型(第3金型)と対比しながら以下に詳しく説明する。
ここで、SPR接合過程において第4金型が備える環状突起によって達成される機能につき、環状突起を備えない本発明の第3実施形態に係るSPR接合用金型(第3金型)と対比しながら以下に詳しく説明する。
先ず、図20は、接合開始状態において所定の位置関係に配置された第3金型とSPRとの間に複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部が配置された状況を示す模式的な断面図である。図21の(a)は図20に示した第3金型を用いるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図であり、図21の(b)は図21の(a)から第3金型、パッド及びパンチを削除して、SPR、SPR側被接合部材及び金型側被接合部材のみを描いた模式的な断面図である。図20及び図21の(a)は、第3金型に関する説明において参照した図15及び図16にそれぞれ対応する図面である。
図20に示す例においては、SPR側被接合部材401としての1枚の高張力鋼板と金型側被接合部材402としての1枚のアルミニウム合金板とが互いに重ね合わされた部分である積層部がSPR301と第3金型103との間に配置されている。この積層部は、SPR接合装置が備えるパッド500の金型側の表面であるパッド先端面501と第3金型103の金型頂面のキャビティ130よりも径方向において外側の部分である外周頂面191とによって挟まれることにより、所定の位置に固定されている。その後、SPR接合装置が備えるパンチ600により、キャビティ130に向かってSPR301が打ち込まれ、図21に示すようにSPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とが接合される。
前述したように、第3金型103においては、凹状の頂面を有する凸部がキャビティの内部に形成されている。従って、第3金型103によれば、上記のように金型側被接合部材402を構成する材料(アルミニウム合金)がSPR側被接合部材401を構成する材料(高張力鋼板)に比べて塑性流動を生じ易い場合であっても、SPR接合において、打ち抜き荷重の増大を低減しつつ、図21に示すように、金型側被接合部材402の過剰な薄肉化の低減及びインターロック量の増大を達成することができる。
一方、図22は、接合開始状態において所定の位置関係に配置された第4金型とSPRとの間に複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部が配置された状況を示す模式的な断面図である。図23の(a)は図22に示した第4金型を用いるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す模式的な断面図であり、図23の(b)は図23の(a)から第4金型、パッド及びパンチを削除して、SPR、SPR側被接合部材及び金型側被接合部材のみを描いた模式的な断面図である。
図22に示す例においても、SPR側被接合部材401としての1枚の高張力鋼板と金型側被接合部材402としての1枚のアルミニウム合金板とが互いに重ね合わされた部分である積層部がSPR301と第4金型104aとの間に配置され、パッド先端面501と外周頂面191とによって挟まれることにより、所定の位置に固定されている。その後、SPR接合装置が備えるパンチ600により、キャビティ130に向かってSPR301が打ち込まれ、図23に示すようにSPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とが接合される。
この場合もまた、上記のように金型側被接合部材402がSPR側被接合部材401を構成する材料(高張力鋼板)に比べて塑性流動を生じ易い材料(アルミニウム合金)によって構成されている。しかしながら、図22及び図23に示すように、第4金型104aにおいては、金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域に第1軸AX1に平行な方向において内底面とは反対側に向かって隆起する環状の突起である環状突起150が形成されている(破線によって囲まれている部分を参照)。
環状突起150の構成(例えば、横断面の形状及び大きさ並びに位置等)は、上述したように、例えばSPR301の打ち抜き荷重の増大の低減、金型側被接合部材402の過剰な薄肉化の低減及びインターロック量の増大とSPR301の打ち込みに伴う金型側被接合部材402を構成する材料の径方向における外側への流動の適度な低減との両立が可能であるように適宜定めることができる。例えば、図24及び図25に示す第4金型104bが備える環状突起150は、上述した、図22及び図23に示す第4金型104aが備える環状突起150に比べて、より広い幅(径方向における横断面の大きさ)を有する(破線によって囲まれている部分を参照)。従って、SPR301の打ち込みに伴う金型側被接合部材402を構成する材料の径方向における外側への流動を低減する効果は、第4金型104aに比べて、第4金型104bの方がより大きい。
〈効果〉
第4金型104a及び104bの何れにおいても、第3金型103を使用する場合に比べて、SPR301の打ち込みに伴う金型側被接合部材402を構成する材料の径方向における外側への流動が適度に低減される。その結果、インターロック量が更に増大すると共に、SPR301が打ち込まれる向きへのSPR側被接合部材401の変形が低減され、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とSPR301との界面近傍における間隙の発生が低減される。その結果、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402との接合強度が更に高まる。
第4金型104a及び104bの何れにおいても、第3金型103を使用する場合に比べて、SPR301の打ち込みに伴う金型側被接合部材402を構成する材料の径方向における外側への流動が適度に低減される。その結果、インターロック量が更に増大すると共に、SPR301が打ち込まれる向きへのSPR側被接合部材401の変形が低減され、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とSPR301との界面近傍における間隙の発生が低減される。その結果、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402との接合強度が更に高まる。
上記のような効果は、以下のようなメカニズムによって達成されるものと考えられる。先ず、図26は、図20に示した第3金型103を用いるSPR接合において金型側被接合部材402を構成する材料がSPR301の打ち込みに伴って流動する様子を示す模式的な断面図である。図26に示す例においては、環状突起を備えない第3金型103が使用されるので、SPR301の打ち込みに伴うキャビティ内の圧力上昇により、金型側被接合部材402を構成する材料がキャビティの内壁面に沿って径方向における外側に向かって流動し、キャビティの外へと流出している(太い矢印を参照)。そのため、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とSPR301との界面近傍に間隙が生ずると共に(破線によって囲まれている部分を参照)、SPR301が打ち込まれる向きにSPR側被接合部材401が変形している。結果として、インターロック量及び被接合部材の接合強度において、更なる改善の余地が残っている。
一方、図27は、図24に示した第4金型104bを用いるSPR接合において金型側被接合部材402を構成する材料がSPR301の打ち込みに伴って流動する様子を示す模式的な断面図である。図27に示す例においては、環状突起を備える第4金型104bが使用されるので、SPR301の打ち込みに伴ってキャビティの内壁面に沿って径方向における外側に向かって流動した金型側被接合部材402を構成する材料が環状突起150によって少なくとも部分的に堰き止められている(太い矢印を参照)。そのため、金型側被接合部材402を構成する材料がSPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とSPR301との界面近傍へと流動するので、当該界面近傍に生ずる間隙がより小さくなり、インターロック量が増大する(破線によって囲まれている部分を参照)。また、SPR301が打ち込まれる向きへのSPR側被接合部材401の変形量も減少する。結果として、図26に示した例に比べて、インターロック量及び被接合部材の接合強度が更に増大されている。
以上のように、第4金型においては、金型頂面のキャビティよりも径方向における外側の領域に第1軸に平行な方向において内底面とは反対側に向かって隆起する環状の突起である環状突起が形成されている。その結果、第4金型によれば、SPRの打ち込みに伴う金型側被接合部材の径方向における外側への流動を適度に低減して、本発明金型によるインターロック量の増大効果を更に高めて、被接合部材の接合強度を更に高めることができる。
尚、第4金型に関する上記説明においては、凹状の頂面を有する凸部がキャビティの内部に形成されている第3金型103に環状突起150を更に設けた第4金型104a及び104bについて説明した。しかしながら、環状突起150によって達成される上記効果は、凹状の頂面を有する凸部がキャビティの内部に形成されている第3金型に限定されるものではない。具体的には、凹状ではない頂面を有する凸部がキャビティの内部に形成されている第2金型及び凸部がキャビティの内部に形成されていない第1金型についても、環状突起150によって達成される上記効果は同様に達成される。
本発明の実施例1に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「実施例金型」と称呼される場合がある。)によって達成される効果につき、比較例(従来技術)に係るセルフピアスリベット接合用金型(以降、「比較例金型」と称呼される場合がある。)と比較しながら以下に説明する。
実施例金型は、凹状の頂面を有する凸部及びダイスポケットを備える第3金型103である。一方、比較例金型は、凹状の頂面を有する凸部を備えるもののダイスポケットを備えない従来金型202である。このような構成を有する実施例金型及び比較例金型のそれぞれにつき、同一のSPR接合装置において、上述したSPR301を用いて、SPR側被接合部材401としての1枚の高張力鋼板と金型側被接合部材402としての1枚のアルミニウム合金板とを接合した。
〈実施例金型を使用するSPR接合過程〉
図28乃至図34は、実施例金型(第3金型103)を使用するSPR接合が達成される過程(SPR接合過程)の種々の段階における各部材の状況を示す模式的な断面図である。図28は、接合開始状態において複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部がSPRと実施例金型との間に配置された状況を示す模式的な断面図である。尚、図28乃至図34においては、SPR301(の脚部320)及び実施例金型の共通の軸である第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。また、図28乃至図34においては、紙面の都合上、主要な構成部材を示す符号のみを記載し、各部材の部分を示す符号については省略した。
図28乃至図34は、実施例金型(第3金型103)を使用するSPR接合が達成される過程(SPR接合過程)の種々の段階における各部材の状況を示す模式的な断面図である。図28は、接合開始状態において複数(2つ)の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部がSPRと実施例金型との間に配置された状況を示す模式的な断面図である。尚、図28乃至図34においては、SPR301(の脚部320)及び実施例金型の共通の軸である第1軸AX1よりも図面に向かって右側の部分のみが描かれている。また、図28乃至図34においては、紙面の都合上、主要な構成部材を示す符号のみを記載し、各部材の部分を示す符号については省略した。
図28に示す例においては、SPR側被接合部材401としての1枚の高張力鋼板と金型側被接合部材402としての1枚のアルミニウム合金板とが互いに重ね合わされた部分である積層部がSPR301と実施例(第3金型103)との間に配置されている。この積層部は、SPR接合装置が備えるパッド500の金型側の表面であるパッド先端面501と第1金型101の金型頂面のキャビティ130よりも径方向において外側の部分である外周頂面191とによって挟まれることにより、所定の位置に固定されている。また、凹状の頂面を有する略截頭錐体として凸部140が形成されている。
その後、図示しないSPR接合装置が備えるパンチ600によってキャビティに向かってSPR301が打ち込まれ始める。その結果、加工荷重の増大と共にSPR側被接合部材401と金型側被接合部材402とからなる被接合部材(以降、「被接合部材400」と総称される場合がある)がキャビティ側に押し込まれて変形し、図29に示す状況となる。実施例金型(第3金型103)の凸部頂面は凹面として形成されているので、この過程における被接合部材400の変形を妨げること無く、上記のように変形した金型側被接合部材402が凸部頂面141の広い領域に接触している状況に到達することができる。
その後、図30に示すように、パンチ600によるSPR301の更なる打ち込みに伴って、SPR側被接合部材401にSPR301が食い込み始めると共に、実施例金型(第3金型103)の凸部頂面の外縁である突出部から受ける反力等によりSPR301の脚部が拡径し始める。一方、金型側被接合部材402を構成する材料は、キャビティの内底面の凸部140よりも径方向における外側の領域に形成された外周溝を充填し始める。その後、SPR301の打ち込みが更に進行すると、図31に示すように、被接合部材400が潰されつつ、SPR側被接合部材401が脚部320によって打ち抜かれる。この時点において、金型側被接合部材402を構成する材料のダイスポケット134への充填は未だ始まっていない。
その後、SPR301の更なる打ち込みに伴って、図32に示すように、金型側被接合部材402を構成する材料による外周溝の充填及びSPR301の脚部の拡径が更に進行する。但し、この時点においても、ダイスポケット134は金型側被接合部材402を構成する材料によって充満されてはおらず、未だ空隙が残っている。従って、実施例金型によれば、キャビティに向かってSPR301が打ち込まれる際に金型側被接合部材402を構成する材料をダイスポケット134によって受け入れて、SPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することができる。
その後、打ち込みが更に進行すると、図33に示すように、SPR301の脚部が金型側被接合部材402の内部へと食い込み始め、金型側被接合部材402を構成する材料によってダイスポケット134が充満される。その後、図34に示すように所定の位置(本実施例においてはSPR301の頭部とSPR側被接合部材401の表面とが面一になる位置)までSPR301が打ち込まれ、SPR接合過程が終了する。
実施例金型(第3金型103)においては、第1軸AX1を中心とする環状の窪みであるダイスポケット134がキャビティの内側面に形成されているので、SPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材402の材料の少なくとも一部をダイスポケット134によって受け入れることができる。従って、実施例金型によれば、キャビティに向かってSPR301が打ち込まれる際に金型側被接合部材402を構成する材料をダイスポケット134によって受け入れて、SPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し、インターロック量を増大させることができる。その結果、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402との接合強度を増大させることができる。
〈比較例金型を使用するSPR接合過程〉
図35乃至図40は、比較例金型(従来金型202)を使用するSPR接合が達成される過程(SPR接合過程)の種々の段階における各部材の状況を示す模式的な断面図である。図35乃至図39は上述した実施例金型を使用するSPR接合過程についての図28乃至図32に対応し、図40は上述した実施例金型を使用するSPR接合過程についての図34に対応する。
図35乃至図40は、比較例金型(従来金型202)を使用するSPR接合が達成される過程(SPR接合過程)の種々の段階における各部材の状況を示す模式的な断面図である。図35乃至図39は上述した実施例金型を使用するSPR接合過程についての図28乃至図32に対応し、図40は上述した実施例金型を使用するSPR接合過程についての図34に対応する。
上述したように、比較例金型は、凹状の頂面を有する凸部を備えるもののダイスポケットを備えない従来金型202である。上述した実施例金型について説明したように、被接合部材400が潰されつつ、SPR側被接合部材401が脚部320によって打ち抜かれる時点に対応する図31に示す状況において、金型側被接合部材402を構成する材料のダイスポケット134への充填は未だ始まっていない。従って、ダイスポケットを備えない比較例金型(従来金型202)を使用するSPR接合においてもSPR側被接合部材401が脚部320によって打ち抜かれる時点に対応する図38に示す状況までのSPR接合過程は、ダイスポケットを備える実施例金型(第3金型103)を使用するSPR接合と同様である。従って、図35乃至図38についての説明は図28乃至図31についての説明と同様であるので省略する。
SPR側被接合部材401が脚部320によって打ち抜かれた後、SPR301の打ち込みが更に進行すると、図39に示すように、金型側被接合部材402を構成する材料による外周溝の充填及びSPR301の脚部の拡径が更に進行する。但し、比較例金型はダイスポケットを備えないので、実施例金型のようにキャビティに向かってSPR301が打ち込まれる際に金型側被接合部材402を構成する材料をダイスポケット134によって受け入れてSPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することはできない。
その後、打ち込みが更に進行し、図4に0示すように所定の位置(SPR301の頭部とSPR側被接合部材401の表面とが面一になる位置)までSPR301が打ち込まれ、SPR接合過程が終了する。
比較例金型(従来金型202)においては、第1軸AX1を中心とする環状の窪みであるダイスポケットがキャビティの内側面に形成されていないので、SPR301の打ち込みに伴って径方向における外側へと塑性流動する金型側被接合部材402の材料をダイスポケットによって受け入れることができない。従って、比較例金型においては、実施例金型とは異なり、キャビティに向かってSPR301が打ち込まれる際に金型側被接合部材402を構成する材料をダイスポケットによって受け入れて、SPR301が受ける反力及び打ち抜き荷重を低減し、インターロック量を増大させることができない。その結果、SPR側被接合部材401と金型側被接合部材402との接合強度を増大させることができない。
〈SPR接合状態の評価〉
図41は実施例金型(第3金型103)を用いるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す断面写真であり、図42は比較例金型(従来金型202)を用いるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す断面写真である。図41及び図42に示したSPR接合の各々につき、インターロック量(L)、SPR開脚径(DL)、金型側被接合部材の残板厚(T)、SPR高さ(H)及びSPRの打ち込み時における最大荷重(Fmax)を計測した。
図41は実施例金型(第3金型103)を用いるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す断面写真であり、図42は比較例金型(従来金型202)を用いるSPR接合が完了した時点における各部材の状況を示す断面写真である。図41及び図42に示したSPR接合の各々につき、インターロック量(L)、SPR開脚径(DL)、金型側被接合部材の残板厚(T)、SPR高さ(H)及びSPRの打ち込み時における最大荷重(Fmax)を計測した。
図43は、この実施例において計測される各部位を示すための模式的な断面図である。インターロック量(L)は、図43に示すように、図面に向かって左側のインターロック量(LL)及び右側のインターロック量(LR)を計測し、これらの平均値を算出することによって求めた。SPRの開脚径(DL)は、SPR接合に伴って拡径されたSPR301の脚部の最大径である。金型側被接合部材の残板厚(T)は、SPR接合が完了した時点における金型側被接合部材402の最も薄い部分の厚さである。具体的には、キャビティの内部に形成された凸部の頂面の外縁である突出部とSPR側被接合部材401との間における金型側被接合部材402の厚さを金型側被接合部材の残板厚(T)として計測した。金型側被接合部材の残板厚(T)もまた、図43に示すように、図面に向かって左側の残板厚(TL)及び右側の残板厚(TR)を計測し、これらの平均値を算出することによって求めた。
SPR高さ(H)は、SPR接合が完了した時点におけるSPR301の高さ(上述した第1軸方向における寸法)である。この実施例においては、図43に示すように、図面に向かって左側のSPR高さ(HL)をSPR高さ(H)として求めた。SPRの打ち込み時における最大荷重(Fmax)は、SPR301を被接合部材に打ち込むためのパンチを駆動するプレス機が備えるロードセルによって計測した。このようにして計測された各部位の寸法及び最大荷重(Fmax)を以下の表1に列挙する。
表1に示すように、実施例金型(第3金型103)を用いる実施例に係るSPR接合においては、比較例金型(従来金型202)を用いる比較例に係るSPR接合に比べて、最大荷重(Fmax)が大幅に低減され、開脚径(DL)が大幅に増大され、且つインターロック量(L)もまた大幅に増大されている。即ち、実施例においては、比較例に比べて、打ち抜き荷重の増大が低減(寧ろ減少)されたことにより、SPRの脚部が十分に拡径され且つインターロック量が大幅に増大されている。
尚、金型側被接合部材の残板厚(T)については、比較例に比べて、実施例の方が僅かに減少している。しかしながら、これは、上述したように実施例金型(第3金型103)のキャビティの内側面に形成されたダイスポケットにより金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への塑性流動が促進されたためであり、本明細書の冒頭において述べたような問題(例えば、接合強度の低下及び金型側被接合部材のひび割れ等)に繋がるものではない。更に、SPR高さ(H)についても、比較例に比べて、実施例の方が増大している。これもまた、上述したように実施例金型(第3金型103)のキャビティの内側面に形成されたダイスポケットにより金型側被接合部材を構成する材料の径方向における外側への塑性流動が促進され、最大荷重(Fmax)が大幅に低減されたためであると考えられる。
以上のように、本発明に係る第3金型103を用いる実施例においては、従来技術に係る従来金型202を用いる比較例に比べて、セルフピアスリベット接合(SPR接合)において金型のキャビティに向かってセルフピアスリベット(SPR)が打ち込まれる際にSPRが受ける反力及び打ち抜き荷重を低減することによりインターロック量を増大させることができることが確認された。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
101,102,102’,102a,102b,103,103’,103a,103b,103c,104a,104b…金型、110…頭部、120…軸部、130…キャビティ、131…開口部、132…内底面、133…内側面、134…ダイスポケット、140…凸部、141…凸部頂面、191…外周頂面、201,202…金型(従来技術)、230…キャビティ(従来技術)、239…底面(従来技術)、240…突起(従来技術)、241…平面部(従来技術)、242…先端面(従来技術)、300,301…セルフピアスリベット(SPR)、310…頭部、320…脚部、400…被接合部材、401…SPR側被接合部材、402…金型側被接合部材、500…パッド、501…パッド先端面、600…パンチ、AX1…第1軸、Cin…脚部の内周、Cout…脚部の外周、Dg…外周側底面深度、Dp…凸部深度、Dt…凸部凹面深度、Eout…凸部頂面の外縁(突出部)、G…外周溝、L…インターロック量、PL…インターロック部、PP…ポケット最深部。
Claims (15)
- 円筒状の脚部を有するセルフピアスリベットと前記脚部に対向する面である金型頂面に開口部を有するキャビティが形成された金型との間に複数の被接合部材が互いに重ね合わされた部分である積層部を配置し前記脚部の円筒状の形状の軸を通る直線である第1軸に平行な方向において前記キャビティに向かって前記セルフピアスリベットを前記積層部に打ち込むことにより複数の前記被接合部材を接合するセルフピアスリベット接合において使用されるセルフピアスリベット接合用金型であって、
前記セルフピアスリベット接合の開始時点において前記セルフピアスリベットと前記セルフピアスリベット接合用金型とが所定の位置関係に配置された状態である接合開始状態において、
前記第1軸に直交する平面による前記キャビティの断面が前記キャビティの内底面から前記開口部へと向かうほど大きくなるように前記キャビティが形成されており、
前記第1軸を中心とする環状の窪みであるダイスポケットが前記キャビティの内側面に形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項1に記載されたセルフピアスリベット接合用金型であって、
複数の前記被接合部材のうち前記セルフピアスリベット接合用金型に最も近い被接合部材である金型側被接合部材を構成する材料が、複数の前記被接合部材のうち前記金型側被接合部材よりも前記セルフピアスリベット側に位置する被接合部材であるSPR側被接合部材よりも塑性流動を生じ易い、前記セルフピアスリベット接合において使用される、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項2に記載されたセルフピアスリベット接合用金型であって、
前記積層部において前記金型側被接合部材の厚さが前記SPR側被接合部材の厚さよりも大きい、前記セルフピアスリベット接合において使用される、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記接合開始状態における前記第1軸に直交する平面への垂直投影図において前記ダイスポケットの最も深い部分であるポケット最深部が前記脚部の外周面よりも外側に位置するように前記ダイスポケットが形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記第1軸に直交する平面による前記ダイスポケットの断面が前記内底面側から前記開口部側へと向かうほど広くなるように前記ダイスポケットが形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載されたセルフピアスリベット接合用金型であって、
前記内底面から前記開口部側に向かって隆起する凸部が前記キャビティの内部に形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項6に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記凸部と前記金型頂面との間の前記第1軸に平行な方向における距離の最小値である凸部深度が複数の前記被接合部材のうち前記セルフピアスリベット接合用金型に最も近い被接合部材である金型側被接合部材の厚さを前記積層部の総厚から減算することによって得られる値以上であるように前記凸部が形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項6又は請求項7に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記接合開始状態における前記第1軸に直交する平面への垂直投影図において前記凸部の頂面である凸部頂面の外縁が前記脚部の内周と外周との間に位置するように前記凸部が形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項6乃至請求項8の何れか1項に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記凸部の頂面である凸部頂面が凹面として形成されており、
前記第1軸を含む平面による断面図において前記凸部頂面の前記外縁である突出部が前記開口部側に向かって凸状の曲線を描くように前記凸部が形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項9に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記凸部頂面が凹状の曲面として形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項10に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記凸部頂面が凹状の球面として形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項9に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記凸部頂面が凹状の円錐面として形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項9乃至請求項12の何れか1項に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記内底面の前記凸部よりも径方向における外側の領域である外周側内底面と前記金型頂面との間の前記第1軸に平行な方向における距離の最大値である外周側内底面深度が前記凸部頂面と前記金型頂面との間の前記第1軸に平行な方向における距離の最大値である凸部凹面深度よりも大きいように前記キャビティが形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項1乃至請求項13の何れか1項に記載されたセルフピアスリベット接合用金型であって、
前記第1軸に平行な方向において前記内底面とは反対側に向かって隆起する環状の突起である環状突起が前記金型頂面の前記キャビティよりも径方向における外側の領域に形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。 - 請求項14に記載されたセルフピアスリベット接合用金型において、
前記金型頂面の前記キャビティに隣接する位置に前記環状突起が形成されている、
セルフピアスリベット接合用金型。
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JP2020008167A JP2021115574A (ja) | 2020-01-22 | 2020-01-22 | セルフピアスリベット接合用金型 |
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- 2020-01-22 JP JP2020008167A patent/JP2021115574A/ja active Pending
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