JP2021108571A - 植物油脂組成物及びそれを含有する容器詰め飲料 - Google Patents

植物油脂組成物及びそれを含有する容器詰め飲料 Download PDF

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Abstract

【課題】 ペットボトルや缶等の常温流通及び加温販売が可能な殺菌済み容器詰め飲料において、カフェやチルド流通で提供されるような濃厚で新鮮なミルク感が味わえる植物油脂組成物及びそれを含有する容器詰め飲料を提供する。【解決手段】 以下の成分(A)〜(E):(A)乳成分由来のホスファチジルコリン(B)乳成分由来のホスファチジルエタノールアミン(C)乳成分由来のスフィンゴミエリン(D)植物油脂(E)水を含む植物油脂組成物であって、前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(1)を満たす、植物油脂組成物。([A]+[B]+[C])/[D]=0.0005〜0.0157 (1)(式(1)中、[A]〜[D]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(A)〜(D)の重量基準の含有割合を示す。)【選択図】 なし

Description

本発明は、植物油脂組成物及びそれを含有する容器詰め飲料に関する。
本発明は、具体的には、ペットボトルや缶等の常温流通及び加温販売が可能な容器詰め飲料であって、カフェやチルド流通で提供されるような濃厚で新鮮なミルク感が味わえる容器詰め飲料と、かかる容器詰め飲料を提供するための植物油脂組成物とに関する。
乳原料を含む容器詰め飲料において、乳様の風味代替として植物油脂組成物を用いた種々の例が開示されている。
例えば、特許文献1には、植物油脂と、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はレシチンを含む植物油脂組成物が開示され、この組成物を飲料に含有させることにより、飲料の風味を向上させ、さらには高温殺菌や長期保存に耐えうる飲料を提供することが開示されている(例えば、請求項1)。
特許文献2には、容器詰めコーヒー飲料において、植物油脂と乳脂肪の配合割合を調整すること、さらには、カテキン類を添加することにより、飲用後の不快な残り香や後味を改善する方法が開示されている(例えば、請求項1〜2)。
特許文献3には、乳脂肪球皮膜成分と乳化剤(具体的には、ショ糖脂肪酸エステル)とを含み、安定剤を実質的に含まない容器詰乳含有飲料が開示され(例えば、請求項1〜2)、静菌性効果のある乳化剤以外を含有させず乳脂肪球皮膜成分を用いることで、安定剤を低減しながらも乳脂肪の浮きが低減され、さらに乳の風味が良い飲料とすることが開示されている。
また、特許文献4には、乳成分と植物抽出物とを含有する容器詰乳含有飲料であって、植物抽出物の固形分と、脂質及びリン脂質の含有割合を調整し、安定剤を実質的に含まない飲料が開示され(例えば、請求項1)、特許文献3と同様に、安定剤を低減しながらも乳脂肪の浮きが低減され、さらに乳の風味が良好なものとなるという効果が開示されている。
しかしながら、上述のような従来技術は、ペットボトルや缶等の常温流通及び加温販売が可能な容器詰め飲料において、カフェやチルド流通で提供されるような濃厚で新鮮なミルク感が味わえるものとしては充分ではなかった。
特開2005−341933号公報 特許第4387440号公報 特開2017−195839号公報 特開2019−80554号公報
本発明は、ペットボトルや缶等の常温流通及び加温販売が可能な殺菌済み容器詰め飲料において、カフェやチルド流通で提供されるような濃厚で新鮮なミルク感が味わえる植物油脂組成物及びそれを含有する容器詰め飲料を提供することを目的とする。
一般的に、カフェで提供されるラテや、チルド流通で販売されるカップ型容器に入ったラテは、牛乳や生クリーム等の乳製品を多く使用することで脂質の含有量が約3重量%近くあるが、これらは乳固形分の含有量が3.0重量%以上含まれることから、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」(昭和二十六年十二月二十七日 厚生省令第五十二号)で定められる「乳飲料」の規格に該当し、ペットボトルに充填して常温で流通させることは望ましくないとされている。そのため、乳固形分が3.0重量%未満であり「乳飲料」の規格に該当せずに、濃厚で新鮮なミルク感が味わえる、乳脂肪の代替となる植物油脂組成物及びそれを含有する容器詰め飲料の開発が望まれる。
本発明によれば、以下の植物油脂組成物等を提供できる。
1.以下の成分(A)〜(E):
(A)乳成分由来のホスファチジルコリン
(B)乳成分由来のホスファチジルエタノールアミン
(C)乳成分由来のスフィンゴミエリン
(D)植物油脂
(E)水
を含む植物油脂組成物であって、
前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(1)を満たす、植物油脂組成物。
([A]+[B]+[C])/[D]=0.0005〜0.0157 (1)
(式(1)中、[A]〜[D]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(A)〜(D)の重量基準の含有割合を示す。)
2.さらに、成分(F)ミリスチン酸エチル及び成分(G)酪酸ブチルのうち少なくとも一方を含む、1に記載の植物油脂組成物。
3.以下の成分(D)〜(F):
(D)植物油脂
(E)水
(F)ミリスチン酸エチル
を含む植物油脂組成物であって、
前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(2)を満たす、植物油脂組成物。
[F]/[D]=0.0008〜0.00975 (2)
(式(2)中、[D]及び[F]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(D)及び(F)の重量基準の含有割合を示す。)
4.以下の成分(D)、(E)及び(G):
(D)植物油脂
(E)水
(G)酢酸ブチル
を含む植物油脂組成物であって、
前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(3)を満たす、植物油脂組成物。
[G]/[D]=0.00003〜0.00045 (3)
(式(3)中、[D]及び[G]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(D)及び(G)の重量基準の含有割合を示す。)
5.前記植物油脂がヤシ油である、1〜4のいずれかに記載の植物油脂組成物。
6.水中油型エマルションである、1〜5のいずれかに記載の植物油脂組成物。
7.さらに、カゼインナトリウムを含む、1〜6のいずれかに記載の植物油脂組成物。
8.1〜7のいずれかに記載の植物油脂組成物の製造方法であって、
前記成分(D)植物油脂に対して、使用する場合には前記成分(F)ミリスチン酸エチル及び前記成分(G)酪酸ブチルのうち少なくとも一方を溶解し、さらに、使用する場合には乳成分原料を混合した後、前記成分(E)水を混合し、乳化させて、水中油型エマルションとすることを含む、製造方法。
9.1〜7のいずれかに記載の植物油脂組成物を含む容器詰め飲料。
10.コーヒー、紅茶、抹茶、ほうじ茶、ココア、及び酸味料からなる群から選択される少なくとも1種を含む、9に記載の容器詰め飲料。
11.乳固形分の含有量が3.0重量%未満である、9又は10に記載の容器詰め飲料。
12.脂質の含有量が2.1〜4.0重量%である、9〜11のいずれかに記載の容器詰め飲料。
本発明によれば、ペットボトルや缶等の常温流通及び加温販売が可能な殺菌済み容器詰め飲料において、カフェやチルド流通で提供されるような濃厚で新鮮なミルク感が味わえる植物油脂組成物及びそれを含有する容器詰め飲料を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について、具体的に説明する。
[植物油脂組成物]
本発明の植物油脂組成物は、植物油脂に対して、乳成分由来のホスファチジルコリン、乳成分由来のホスファチジルエタノールアミン、乳成分由来のスフィンゴミエリン、ミリスチン酸エチル、及び酪酸ブチルからなる群から選択される特定の物質を特定の含有割合で含む組成物である。本発明の植物油脂組成物は、このような特定の物質を特定の含有割合で含むことにより、乳脂肪の代替成分として容器詰め飲料に含有させた場合に、濃厚で新鮮なミルク感を付与することができる。
本発明の植物油脂組成物の第一の態様は、以下の成分(A)〜(E):(A)乳成分由来のホスファチジルコリン、(B)乳成分由来のホスファチジルエタノールアミン、(C)乳成分由来のスフィンゴミエリン、(D)植物油脂、(E)水を含む植物油脂組成物であって、前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(1)を満たす、植物油脂組成物である。
([A]+[B]+[C])/[D]=0.0005〜0.0157 (1)
(式(1)中、[A]〜[D]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(A)〜(D)の重量基準の含有割合を示す。)
式(1)において、([A]+[B]+[C])/[D]は、好ましくは0.0005〜0.0152であり、より好ましくは0.0025〜0.0152である。
本発明の植物油脂組成物の第一の態様は、さらに、成分(F)ミリスチン酸エチル及び成分(G)酪酸ブチルのうち少なくとも一方を含むことが好ましい。これにより、濃厚で新鮮なミルク感をさらに向上することができる。
本発明の植物油脂組成物の第二の態様は、以下の成分(D)〜(F):(D)植物油脂、(E)水、(F)ミリスチン酸エチルを含む植物油脂組成物であって、前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(2)を満たす、植物油脂組成物である。
[F]/[D]=0.0008〜0.00975 (2)
(式(2)中、[D]及び[F]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(D)及び(F)の重量基準の含有割合を示す。)
式(2)において、[F]/[D]は、好ましくは0.0008〜0.0075である。
本発明の植物油脂組成物の第三の態様は、以下の成分(D)、(E)及び(G):(D)植物油脂、(E)水、(G)酢酸ブチルを含む植物油脂組成物であって、前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(3)を満たす、植物油脂組成物である。
[G]/[D]=0.00003〜0.00045 (3)
(式(3)中、[D]及び[G]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(D)及び(G)の重量基準の含有割合を示す。)
式(3)において、[G]/[D]は、好ましくは0.00003〜0.0003である。
本明細書において、「本発明の植物油脂組成物」というときは、本発明の植物油脂組成物の第一の態様、第二の態様、及び第三の態様のすべてに当てはまるものとする。
本発明の植物油脂組成物は、水中油型エマルションであることが好ましい。本発明の作用機構を限定することを意図するものではないが、本発明の植物油脂組成物が水中油型エマルションである場合、植物油脂成分が分散質、水が分散媒として機能する。ミリスチン酸エチル及び酪酸ブチルは、植物油脂中に溶解して、水中油型エマルションを構成する分散質(小滴)中に取り込まれる。ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンは、それぞれの疎水性(親油性)部位が植物油脂の分散質(小滴)に対して配向して会合し、ミセルを形成する。これにより、本発明の植物油脂組成物は、UHT殺菌プロセスに供した場合や酸素を透過するペットボトルに充填した場合でも呈味安定性にすぐれ、味わいにすぐれた容器詰め飲料を提供することができる。
以下、本発明の植物油脂組成物において使用する各成分について説明する。
(植物油脂)
本発明において使用する植物油脂は、植物から得られる油脂であれば特に限定されない。本発明において使用できる植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、サフラワー油、菜種油、オリーブ油、コーン油、等が挙げられ、好ましくは、ヤシ油である。
本発明の植物油脂組成物の一態様において、植物油脂は、好ましくはヤシ油である。
本発明の植物油脂組成物における植物油脂の含有量は、植物油脂組成物がエマルションを形成することを条件として、適宜決定することができる。本発明の植物油脂組成物における植物油脂の含有量は、植物油脂組成物の重量を基準として、例えば、15〜60%、20〜50%、又は、30〜45%である。
本発明の植物油脂組成物における植物油脂の含有量は、公知の手法により測定できる。使用する植物油脂の種類により脂肪酸組成比率が異なるため、例えば、脂肪酸分析を行うことにより植物油脂中に含まれる一種又は複数種の特徴的な脂肪酸成分の含有割合を測定し、かかる含有割合から脂質量を逆算することにより、植物油脂量として算出できる。
(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン)
本発明の植物油脂組成物の第一の態様において使用するホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンは、いずれも乳成分由来であるものとする。これらはリン脂質に分類されるもので、乳脂肪球皮膜成分に多く含まれる。
例えば、これらのリン脂質は、バターオイルを製造する際に分離工程で副産物として得られるバターセーラム等に多く含まれる。本明細書の実施例において使用する脱脂濃縮乳加工品は、これらの副産物から得られたリン脂質を含有する溶液を用いて調製したものである。また、本明細書の実施例において使用するバターミルクパウダーとは、クリームからバターを製造するときのチャーニング(撹拌)工程において得られる液体を乾燥して粉末にしたもので、これらもリン脂質を多く含む。
ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンは、それぞれ総称であり、構成脂肪酸の組合せが複数存在する。本発明において、ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンの構成脂肪酸は特に限定されず、複数の組合せが混在していてもよい。
本発明の植物油脂組成物を製造するためには、乳成分原料から単離したホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンをそれぞれ使用してもよく、あるいは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンを含有する乳成分原料を使用してもよい。
牛乳やクリーム、バター、チーズ、クリームチーズ、全粉乳、脱脂粉乳、練乳、ホエイ等は、水を除く全体の重量に対するリン脂質の含有量の比率が高くないため、本発明においては、リン脂質の含有量を高めたものを乳成分原料として用いることが好ましい。
本発明において使用することができる乳成分原料としては、例えば、バターミルクパウダー、バターミルク、バターセーラム、脱脂濃縮乳加工品、クリームからバターを製造する際の副産物、バターからバターオイルを製造する際の副産物、ホエイから取り出した乳脂肪球皮膜素材、等が挙げられる。
バターミルクやバターミルクパウダーは、クリームからバターを製造する際に副産物として得られるもので、水を除く全体の重量に対するリン脂質の含有量が、クリームや牛乳より高められたものである。また、バターセーラムは、バターからバターオイルを製造する際に副産物として得られるもので、水を除く全体の重量に対するリン脂質の含有量がバターより高められたものである。また、これらを用いた脱脂濃縮乳加工品もリン脂質の含有量がバターより高められたものである。さらに、ホエイから取り出した乳脂肪球皮膜素材とは、ホエイに対して、pH調整、加温、塩添加、膜、等の処理を施すことにより、水を除く全体の重量に対するリン脂質の含有量が、ホエイより高められた素材である。
また、本発明の植物油脂組成物を製造するために用いる乳成分原料の形態は、液状、粉末、ペースト状、冷凍物等のいずれでもよく、限定されない。
いずれの乳成分原料を用いる場合でも、(A)乳成分由来のホスファチジルコリン、(B)乳成分由来のホスファチジルエタノールアミン、(C)乳成分由来のスフィンゴミエリン、及び(D)植物油脂の各成分の組成物中における重量基準の含有割合が式(1)を満たすように、リン脂質を含有する乳成分原料の添加量を調整することにより、本発明の効果は得られる。その際、乳成分原料中のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンの含有量を測定しておくことが好ましい。
本発明の植物油脂組成物の第一の態様について、一実施形態においては、乳成分原料由来の炭水化物の重量基準の含有割合が、植物油脂に対して0.0036以上であることが好ましい。
本発明の植物油脂組成物の第一の態様について、一実施形態においては、乳成分原料由来のタンパク質(安定剤として使用するカゼインナトリウムを除く)の重量基準の含有割合が、植物油脂に対して0.0023以上であることが好ましい。
本発明の植物油脂組成物の第一の態様について、一実施形態においては、乳成分原料由来の脂質の重量基準の含有割合が、植物油脂に対して0.000875以上であることが好ましい。
本発明の植物油脂組成物の第一の態様において、乳成分原料由来の炭水化物、タンパク質、及び脂質のそれぞれの含有量が増えるほど、乳本来の風味を付与できるため、含有量の上限は特に限定されない。但し、本発明の植物油脂組成物の第一の態様においては、前述のとおり、式(1)を満たすことを条件とする。また、本発明の植物油脂組成物の第一の態様を含有する本発明の容器詰め飲料において、乳固形分の含有量が3.0重量%未満であることが好ましい。
本発明において、炭水化物の含有量(含有割合)は、栄養成分表示のための分析方法により測定することができる。具体的には、植物油脂組成物の合計重量を基準として、そこから水分、タンパク質、脂質、灰分の重量を差し引くことで求められる。水分の含有量は、常圧加熱乾燥法、減圧加熱乾燥法、カールフィッシャー法、等を用いて測定することができる。タンパク質の含有量は、燃焼法、ケルダール法、等を用いて測定することができる。脂質の含有量は、ソックスレー抽出法、酸分解法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、レーゼゴッドリーブ法、等を用いて測定することができる。灰分の含有量は、直接灰化法、酢酸マグネシウム添加法、等を用いて測定することができる。
尚、乳成分原料には、一般に、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン以外の物質も含まれ得るところ、乳固形分の含有量が3.0重量%未満であり「乳飲料」の規格に該当せずに、濃厚で新鮮なミルク感を付与する観点では、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンの植物油脂に対する重量基準の含有割合が特定の範囲である場合に、本発明の効果が得られることを見出した。
リン脂質であるホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリンの含有量は、公知の手法により測定できる。例えば、一般財団法人日本食品分析センターが公表するリン脂質及び各リン脂質の組成比により算出する方法(https://www.jfrl.or.jp/storage/file/055.pdf)が挙げられる。具体的には、試料から抽出をしたのち、灰化(乾式灰化法)させ、モリブデンブルー吸光光度法(リンの定量)の定量によりリン脂質を測定することができる。各リン脂質の割合は、試料から抽出、精製処理した後、薄層クロマトグラフィー(2次元展開)させ、各リン脂質に該当する箇所をかきとり、分解(湿式分解)し、モリブデンブルー吸光光度法より測定することができる。
(ミリスチン酸エチル、酪酸ブチル)
ミリスチン酸エチル、酪酸ブチルは、香料原料の一つとして用いられるエステル類の成分である。
本発明の植物油脂組成物を製造するためには、ミリスチン酸エチル、酪酸ブチルは、直接、単独で添加すればよく、あるいは、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、トリアセチン等の有機溶媒や油脂類で希釈した状態で添加してもよい。また、乳化剤を用いて乳化香料製剤のような形態で添加してもよい。
ミリスチン酸エチルを用いる場合、(F)ミリスチン酸エチル及び(D)植物油脂の各成分の組成物中における重量基準の含有割合が式(2)を満たすように、添加量を調整することにより、本発明の効果は得られる。
酪酸ブチルを用いる場合、(G)酪酸ブチル及び(D)植物油脂の各成分の組成物中における重量基準の含有割合が式(3)を満たすように、添加量を調整することにより、本発明の効果は得られる。
ミリスチン酸エチル、酪酸ブチルの含有量は、公知の手法により測定できる。例えば、植物油脂組成物あるいは容器詰め飲料から極性の低い有機溶媒を用いて抽出、濃縮し、ガスクロマトグラフィーにより定量することができる。
(安定剤)
本発明の植物油脂油脂組成物を調製する際、又は、後述する本発明の容器詰め飲料を調製する際には、本発明の効果を損なわないことを条件として、安定剤を配合してもよい。本発明において使用できる安定剤としては、本明細書の実施例において使用したカゼインナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)が挙げられるが、これらには限定されない。
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンに結合した脂肪酸の数が異なる、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドが挙げられる。モノグリセリドとしては、例えば、グリセリンカプリル酸エステル、グリセリンカプリン酸エステル、グリセリンラウリン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル、グリセリンベヘン酸エステル等が挙げられる。ジグリセリド又はトリグリセリドとしては、これらのモノグリセリドの同一若しくは異なる脂肪酸が2つ又は3つ結合したものが挙げられる。
また、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(又は有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。
グリセリン有機酸脂肪酸エステルは、グリセリンに脂肪酸が1つ結合したモノグリセリドの水酸基にさらに有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸)が結合したものである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン重合度が、例えば、2〜9であり、脂肪酸残基は一種又は複数種であってもよい。
その他に、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、等が挙げられる。また、カラギーナンやデキストリン、セルロース製剤、等の使用も可能である。
これらの安定剤は、本発明の植物油脂組成物を調製する際、又は、本発明の植物油脂組成物を含有する本発明の容器詰め飲料を調製する際に、本発明の効果を損なわない範囲で、最低限の種類及び添加量で使用することができ、これにより、本発明の効果である風味の向上に加えて、飲料中の成分の安定性の効果も期待できる。
本発明の植物油脂組成物の一態様においては、デカグリセリン脂肪酸エステルを含まないことが好ましい。
また、本発明の植物油脂組成物の一態様においては、レシチンを含まないことが好ましい。より具体的には、厚生労働省が認める食品添加物の既存添加物名簿には、レシチンとして、植物レシチン、卵黄レシチン、又は、これらに処理を加えた酵素分解レシチン、分別レシチン、酵素処理レシチンが収載されているが、これらは風味が好ましくないため、本発明の植物油脂組成物の一態様においては含まないことが好ましい。
また、本発明の植物油脂組成物の一態様においては、デカグリセリン脂肪酸エステル及びレシチンを含まないことが好ましい。
本発明の植物油脂組成物の一態様においては、カゼインナトリウムを含むことが好ましい。
(植物油脂組成物の製造方法)
本発明の植物油脂組成物は、成分(D)植物油脂に対して、使用する場合には成分(F)ミリスチン酸エチル及び成分(G)酪酸ブチルのうち少なくとも一方を溶解し、さらに、使用する場合には乳成分原料を混合した後、成分(E)水を混合し、乳化させることにより製造することができる。このとき、植物油脂組成物を水中油型エマルションとすることが好ましい。
ミリスチン酸エチル、酪酸ブチルを使用する場合は、植物油脂に溶解するものとするが、それ以外の成分について投入順序は限定されるものではなくいずれの順序でもよい。安定剤を配合する場合、配合の順序は特に限定されない。
植物油脂は、あらかじめ加温して融解しておくことが好ましい。植物油脂を融解する際の温度は、それぞれの油脂の融点を超える温度が好ましい。
また、水は加温したものが好ましい。具体的には、使用する安定剤が溶解しやすい温度に水を加温することが好ましい。
乳化のためには、既知の手段・方法を用いることができ、例えば、高速ホモゲナイザー、高圧ホモゲナイザー等を使用することができる。乳化強度は、せん断力が強いほど、乳化粒子径が細かくなるため、安定性の向上が期待できる。
(容器詰め飲料)
本発明の容器詰め飲料は、既に説明した本発明の植物油脂組成物を含むものである。本発明の容器詰め飲料は、飲料に対して本発明の植物油脂組成物を配合し、これを容器に充填することにより製造できる。
本発明の容器詰め飲料において使用する容器は、特に限定されず、ペットボトル、缶、アルミパウチ、紙容器、プラスチックカップ、ビン等、シール性を有するものであれば使用できる。
本発明の容器詰め飲料において、飲料を殺菌することが好ましい。殺菌方法は、特に限定されず、UHT殺菌、レトルト殺菌等を採用することができる。殺菌強度は、常温流通において変敗のおそれがない条件で行えばよい。
本発明の容器詰め飲料は、コーヒー、紅茶、抹茶、ほうじ茶、ココア、及び酸味料からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。しかしながら、本発明の容器詰め飲料は、これらに限定されず、スープ類、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料等の他の容器詰め飲料であってもよい。本明細書に記載されていない他の飲料原料をさらに加えることも可能である。
(乳固形分)
本発明の容器詰め飲料の一態様においては、乳固形分の含有量が3.0重量%未満であることが好ましい。乳固形分の含有量が3.0重量%未満である場合、乳等省令において「乳飲料」の規格に該当しないが、本発明の植物油脂組成物を使用することにより、容器詰め飲料に濃厚で新鮮なミルク感を付与することができる。
乳固形分とは、乳脂肪分と無脂乳固形分の合計を指し、一般的な牛乳は乳固形分が12.6重量%(乳脂肪分3.8重量%、無脂乳固形分8.8重量%)である。また、本明細書の実施例において用いた生クリームは、乳固形分が51.8重量%(乳脂肪分47重量%、無脂乳固形分4.8重量%)であった。
(脂質)
本発明の容器詰め飲料の一態様においては、脂質の含有量が2.1〜4.0重量%であることが好ましい。これにより、容器詰め飲料の呈味を好ましいものとすることができる。
本発明において脂質の含有量とは、植物油脂と乳脂肪の含有量の合計を意味する。
本発明において、脂質の含有量は、栄養成分表示のための分析方法により測定することができる。具体的には、ソックスレー抽出法、酸分解法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、レーゼゴッドリーブ法、等を用いればよい。
(乳脂肪を含む原料の併用)
本発明の容器詰め飲料の一態様においては、植物油脂組成物と乳脂肪を含む原料とを併用してもよい。
乳脂肪を含む原料としては、例えば、牛乳、全粉乳、生クリーム、バター、バターオイル、クリームチーズ等が挙げられる。これらの原料中の乳脂肪の含有量は、各々の原料により異なるため、原料の添加量を調節することにより、容器詰め飲料における乳脂肪の含有量を調整することが可能である。植物油脂組成物に乳脂肪を含む原料を併用することにより、植物油脂組成物のみを用いる場合よりも、さらに風味が向上することが期待できる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
[調製例1]
(1)植物油脂組成物の調製(実施例1〜6、比較例1〜2)
精製ヤシ油を60〜70℃に加温融解し、表1に示す配合にしたがって、所定量の脱脂濃縮乳加工品(MILK−EM−1、アデカ社製)、バターミルクパウダー(よつば乳業製)、カゼインナトリウムを加え、最後に、合計が100gとなるような量の70〜90℃に加温した水を加えた。この混合物200gに対して、高速乳化装置(PRIMIX社製ホモミクサーMARKII)を用いて、16000rpmにて2分間乳化処理を行い、植物油脂組成物を調製した。
使用した脱脂濃縮乳加工品100gにおいて、炭水化物の含有量は14.4g、タンパク質の含有量は9.2g、脂質の含有量は3.5g、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンの合計の含有量は2.03gであった。
使用したバターミルクパウダー100gにおいて、炭水化物の含有量は50.1g、タンパク質の含有量は31.0g、脂質の含有量は2.7g、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びスフィンゴミエリンの合計の含有量は1.05gであった。
(2)容器詰め飲料の調製(実施例7〜16、比較例4〜7)
ブラジル産コーヒー豆(焙煎度合いL値=20)に、コーヒー豆の重量に対して8〜10倍量の95〜98℃の水を加え、抽出を行った。得られたコーヒー抽出液を屈折式Brix計(ショ糖換算)に供し、Brix値を測定した。抽出液量(g)にBrix値(%)を乗じて、抽出液中のコーヒー固形分(g)を算出した。
ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖パルミチン酸エステル、三菱ケミカルフーズ社、P−1670)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(グリセリン平均重合度3〜4、脂肪酸部:パルミチン酸、ステアリン酸)及びカゼインナトリウムに、それぞれ、予め重量比で300倍量の水を加え、70〜80℃で30分撹拌して、ダマがなくなるまで分散させた。
表2に示す配合にしたがい、コーヒー抽出液、植物油脂組成物、砂糖、乳化剤、カゼインナトリウム、重曹(pH調整剤)、生クリーム(乳脂肪分47重量%)を配合し、水を用いてメスアップを行い、均一になるように充分な溶解撹拌を行い、コーヒー飲料を調製した。この飲料を、UHT殺菌機を用いて、140℃にて30秒間殺菌し、無菌環境下にてペットボトル容器に充填して、容器詰め飲料を得た。
比較例7では、植物油脂組成物を配合しない代わりに、牛乳(乳脂肪分3.8重量%)及び生クリーム(乳脂肪分47重量%)を配合し、乳等省令において「乳飲料」の規格に該当するコーヒー飲料を調製した。
(3)官能評価
上記(2)で調製した容器詰め飲料を、3名の専門パネラーにて、「濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味」について官能評価を行った。1〜5点の範囲で、1点刻みで5段階にて点数を付け、3名の平均点を小数点以下第一位になるように四捨五入をして算出した。最終的には、平均点が3点以上であるものを効果があると判断した。
官能評価に際しては、評点を1点あげるにはどの程度「濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味」が強くなればよいのかをパネラー間で共通になるようにした。
「濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味」の目標品質として、比較例7を基準にした。比較例7は、牛乳と生クリームを配合したことにより、乳固形分の含有量が3重量%以上であり、乳等省令で定められている「乳飲料」の規格に該当する。この比較例7を評価点の最良値の5点として設定し評価を行うこととした。
・5点:比較例7と同等の乳風味を感じる。
・4点:比較例7と非常に近い乳風味を感じる。
・3点:比較例7と近い乳風味を感じる。
・2点:比較例7とやや異なる乳風味を感じる。
・1点:比較例7と異なる乳風味を感じる。
(4)結果
官能評価点を、表2及び表3に示す。実施例1〜4の植物油脂組成物を使用して調製した、実施例7〜10の容器詰め飲料において、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味が3.0点以上であった。乳成分由来のホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとスフィンゴミエリンを、特定の含有割合で植物油脂と組み合わせることにより、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味を付与できることが分かった。
また、乳化剤やカゼインナトリウム等の安定剤を配合していない、実施例5の植物油脂組成物を使用した実施例11の容器詰め飲料においても、官能評価の結果は実施例9と同等であった。乳化剤やカゼインナトリウム等の安定剤の添加の有無に関わらず、乳成分由来のホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとスフィンゴミエリンを、特定の含有割合で植物油脂と組み合わせることにより、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味を付与できることが分かった。
脱脂濃縮乳の代わりにバターミルクパウダーを配合した、実施例6の植物油脂組成物を使用した実施例12も、官能評価の結果は、実施例9や実施例11と同等であった。乳成分由来のホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとスフィンゴミエリンを、特定の含有割合で植物油脂と組み合わせることにより、他の乳成分原料を使用した場合でも、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味を付与できることが分かった。
実施例13〜15において、実施例3で調製した植物油脂組成物の添加量を変更したところ、添加量が多くなるほど濃厚で新鮮なミルクの風味がより強くなることが分かった。また、実施例16において、実施例3で調製した植物油脂組成物と、乳脂肪を47重量%含む生クリームとを併用したところ、同じ脂質量3.0重量%においても、実施例9より効果が高くなることが分かった。このことから、植物油脂組成物と乳脂肪を併用することでより効果が高くなることが分かった。
乳成分原料として用いた脱脂濃縮乳加工品は、バターミルクパウダーよりも、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとスフィンゴミエリンの合計の含有割合が高かった。しかし、いずれの乳成分原料を使用した場合でも、ホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとスフィンゴミエリンの合計の植物油脂に対する含有割合を特定の範囲に調節することにより、所望の効果が得られることが分かった。乳成分原料として脱脂濃縮乳加工品を用いた場合、乳成分原料由来の炭水化物、タンパク質、脂質の含有量が少ないため、乳固形分の含有量は低くなった。また、乳成分原料としてバターミルクパウダーを用いた場合、乳原料由来の炭水化物、タンパク質、脂質の含有量が多いため、乳固形分の含有量は高くなった。
Figure 2021108571
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[調製例2]
(1)植物油脂組成物の調製(実施例17〜22、比較例8〜11)
精製ヤシ油を60〜70℃に加温融解し、表4及び表5に示す配合にしたがって、ミリスチン酸ブチル、酪酸ブチル、脱脂濃縮乳加工品(MILK−EM−1、アデカ社製)を加え、最後に合計が100gとなるような量の70〜90℃に加温した水を加えた。この混合物200gに対して、高速乳化装置(PRIMIX社製ホモミクサーMARKII)を用いて16000rpmにて2分間乳化処理を行い、植物油脂組成物を調製した。
(2)容器詰め飲料の調製(実施例23〜28、比較例12〜15)
調製例1の(2)と同様の方法により、表6及び表7に示す配合にしたがって、容器詰め飲料を調製した。
(3)官能評価
上記(2)で調製した容器詰め飲料について、調製例1の(3)と同様の方法により、官能評価を実施した。
(4)結果
官能評価点を、表6及び表7に示す。実施例17〜18の植物油脂組成物を使用して調製した、実施例23〜24の容器詰め飲料において、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味が3.0点以上であることから、ミリスチン酸エチルと植物油脂を特定の含有割合で配合することにより、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味を付与できることが分かった。
実施例19〜20の植物油脂組成物を使用して調製した、実施例25〜26の容器詰め飲料において、点数がそれぞれ3.0点以上であることから、ミリスチン酸エチルと植物油脂を特定の含有割合で配合することにより、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味を付与できることが分かった。
実施例21〜22の植物油脂組成物を使用して調製した、実施例27〜28の容器詰め飲料において、実施例9よりも官能評価点が高かったことから、乳成分由来のホスファチジルコリンとホスファチジルエタノールアミンとスフィンゴミエリンを、特定の含有割合で植物油脂と組み合わせ、さらにミリスチン酸エチル及び酪酸ブチルの少なくとも一方を含有することにより、より優れた効果を示すことが分かった。
Figure 2021108571
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Figure 2021108571
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[調製例3]
(1)植物油脂組成物の調製
調製例1の(1)と同様の方法により、表1の実施例3の配合にしたがって、植物油脂組成物を調製した。
(2)容器詰め飲料の調製(実施例29〜33)
表8に示す配合にしたがって、各種の容器詰め飲料を調製した。
紅茶及びほうじ茶の抽出は、紅茶茶葉(商品名:VAHDAM TEAS、ダージリン)とほうじ茶(商品名:静岡深蒸し極上ほうじ茶、販売者:マルフク)のそれぞれ100gに対して、20倍量の95〜98℃に加温した水を用いて、抽出固形分が25〜27g得られるように抽出を行った。抽出固形分は、屈折Brix計の測定値により算出した。容器詰め飲料の調製の際には、抽出固形分が8.0g/100gとなるように使用した。
さらに、抹茶(販売者:ほんぢ園)、ココアパウダー(純ココア、販売者:富澤商店)、酸味料(クエン酸、クエン酸三ナトリウム)を使用した。
実施例29〜32においては、調製した飲料に対してUHTにて140℃分の殺菌を行い、無菌環境下でペットボトルに充填した。実施例33においては、調製した飲料を容器詰めした後、容器内の飲料が85℃になるよう熱水中で10分間殺菌を行った。
(3)官能評価
上記(2)で調製した容器詰め飲料について、調製例1の(3)と同様の方法により、官能評価を実施した。
(結果)
官能評価点を表8に示す。紅茶、ほうじ茶、抹茶、ココア、酸味料を加えた酸性飲料ともに、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味が3.0点以上であった。このことから、本発明の植物油脂組成物は、コーヒーに限らず、種々の容器詰め飲料に適用できることが分かった。
Figure 2021108571
[調製例4]
(1)植物油脂組成物の調製(実施例34〜35)
精製ヤシ油を60〜70℃に加温融解し、表9に示す配合にしたがって、所定量の脱脂濃縮乳加工品(MILK−EM−1、アデカ社製)、バターミルクパウダー(よつば乳業製)、カゼインナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖パルミチン酸エステル、三菱ケミカルフーズ社、P−1670)、有機酸モノグリセライド(コハク酸脂肪酸モノグリセライド、理研ビタミン社、ポエム(登録商標)B−30)を加え、最後に、合計が100gとなるような量の70〜90℃に加温した水を加えた。この混合物200gに対して、高速乳化装置(PRIMIX社製ホモミクサーMARKII)を用いて、16000rpmにて2分間乳化処理を行い、植物油脂組成物を調製した。
(2)容器詰め飲料の調製(実施例36〜37)
調製例1の(2)と同様の方法により、表10に示す配合にしたがって、容器詰め飲料を調製した。
(3)官能評価
上記(2)で調製した容器詰め飲料について、調製例1の(3)と同様の方法により、官能評価を実施した。
(4)結果
官能評価点を表10に示す。
実施例9は、安定剤としてカゼインナトリウムを含む植物油脂組成物(実施例3)を用い、さらに安定剤としてショ糖脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルとカゼインナトリウムを配合した容器詰め飲料である。一方、実施例36及び37は、それぞれ、安定剤としてさらにショ糖脂肪酸エステル(実施例34)又は有機酸モノグリセライド(実施例35)を含む植物油脂組成物を用いたほかは、実施例9と同量の安定剤を配合した容器詰め飲料である。
実施例34〜35の植物油脂組成物を使用して調製した、実施例36〜37の容器詰め飲料において、実施例3の植物油脂組成物を使用して調製した、実施例9の容器詰め飲料と同様に、濃厚で新鮮な牛乳や生クリームのような風味が3.7点という結果となった。
このことから、安定剤であるショ糖脂肪酸エステル又は有機酸モノグリセライドは、本発明の効果に寄与しないことが分かった。
Figure 2021108571
Figure 2021108571
本発明によれば、ペットボトルや缶等の常温流通及び加温販売が可能な殺菌済み容器詰め飲料において、カフェやチルド流通で提供されるような濃厚で新鮮なミルク感が味わえる植物油脂組成物、及びそれを含有する容器詰め飲料を提供することができる。
特に、乳固形分の含有量が3.0重量%未満である「乳飲料」の規格に該当しない飲料においても、濃厚で新鮮なミルク感というすぐれた風味を付与することができる。

(植物油脂組成物の製造方法)
本発明の植物油脂組成物は、成分(D)植物油脂に対して、使用する場合には成分(F)ミリスチン酸エチル及び成分(G)酪酸ブチルのうち少なくとも一方を溶解し、さらに、(A)乳成分由来のホスファチジルコリン、(B)乳成分由来のホスファチジルエタノールアミン、及び(C)乳成分由来のスフィンゴミエリンを混合するか、又は成分(A)〜(C)を含む乳成分原料を混合した後、成分(E)水を混合し、乳化させることにより製造することができる。このとき、植物油脂組成物を水中油型エマルションとすることが好ましい。

Claims (12)

  1. 以下の成分(A)〜(E):
    (A)乳成分由来のホスファチジルコリン
    (B)乳成分由来のホスファチジルエタノールアミン
    (C)乳成分由来のスフィンゴミエリン
    (D)植物油脂
    (E)水
    を含む植物油脂組成物であって、
    前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(1)を満たす、植物油脂組成物。
    ([A]+[B]+[C])/[D]=0.0005〜0.0157 (1)
    (式(1)中、[A]〜[D]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(A)〜(D)の重量基準の含有割合を示す。)
  2. さらに、成分(F)ミリスチン酸エチル及び成分(G)酪酸ブチルのうち少なくとも一方を含む、請求項1に記載の植物油脂組成物。
  3. 以下の成分(D)〜(F):
    (D)植物油脂
    (E)水
    (F)ミリスチン酸エチル
    を含む植物油脂組成物であって、
    前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(2)を満たす、植物油脂組成物。
    [F]/[D]=0.0008〜0.00975 (2)
    (式(2)中、[D]及び[F]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(D)及び(F)の重量基準の含有割合を示す。)
  4. 以下の成分(D)、(E)及び(G):
    (D)植物油脂
    (E)水
    (G)酢酸ブチル
    を含む植物油脂組成物であって、
    前記組成物中の前記成分の重量基準の含有割合が式(3)を満たす、植物油脂組成物。
    [G]/[D]=0.00003〜0.00045 (3)
    (式(3)中、[D]及び[G]は、それぞれ、前記組成物中における前記成分(D)及び(G)の重量基準の含有割合を示す。)
  5. 前記植物油脂がヤシ油である、請求項1〜4のいずれかに記載の植物油脂組成物。
  6. 水中油型エマルションである、請求項1〜5のいずれかに記載の植物油脂組成物。
  7. さらに、カゼインナトリウムを含む、請求項1〜6のいずれかに記載の植物油脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の植物油脂組成物の製造方法であって、
    前記成分(D)植物油脂に対して、使用する場合には前記成分(F)ミリスチン酸エチル及び前記成分(G)酪酸ブチルのうち少なくとも一方を溶解し、さらに、使用する場合には乳成分原料を混合した後、前記成分(E)水を混合し、乳化させて、水中油型エマルションとすることを含む、製造方法。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の植物油脂組成物を含む容器詰め飲料。
  10. コーヒー、紅茶、抹茶、ほうじ茶、ココア、及び酸味料からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の容器詰め飲料。
  11. 乳固形分の含有量が3.0重量%未満である、請求項9又は10に記載の容器詰め飲料。
  12. 脂質の含有量が2.1〜4.0重量%である、請求項9〜11のいずれかに記載の容器詰め飲料。

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