JP2021107118A - ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体 - Google Patents

ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスに優れたガスバリア性材料を提供する。【解決手段】ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、を含む混合物の硬化物により構成されたガスバリア性フィルムであって、上記ガスバリア性フィルムの赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲における全ピーク面積をBとし、吸収帯1690cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をCとし、吸収帯1493cm−1以上1598cm−1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.380以下であり、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が0.150以下であり、D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が0.520以上であるガスバリア性フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体に関する。
ガスバリア性材料として、基材層上にガスバリア性層である無機物層を設けた積層体が用いられている。
しかしながら、この無機物層は摩擦等に対して弱く、このようなガスバリア性積層体は、後加工の印刷時、ラミネート時または内容物の充填時に、擦れや伸びにより無機物層にクラックが入りガスバリア性が低下することがある。
そのため、ガスバリア性材料として、ガスバリア性層として有機物層を用いた積層体も用いられている。
ガスバリア性層として有機物層を用いたガスバリア性材料として、ポリカルボン酸およびポリアミン化合物を含む混合物により形成されたガスバリア性層を備える積層体が知られている。
このようなガスバリア性積層体に関する技術としては、例えば、特許文献1(特開2005−225940号公報)、特許文献2(特開2013−10857号公報)および特許文献3(国際公開第2016/017544号)に記載のものが挙げられる。
特許文献1には、ポリカルボン酸と、ポリアミンおよび/またはポリオールから製膜されたガスバリア性層を有し、ポリカルボン酸の架橋度が40%以上であるガスバリア性フィルムが開示されている。
特許文献1には、このようなガスバリア性フィルムは高湿度条件下においても低湿度条件下と同様の優れたガスバリア性を有すると記載されている。
特許文献2には、プラスチックフィルムからなる基材の少なくとも片面に、ポリアミンとポリカルボン酸を重量比でポリアミン/ポリカルボン酸=12.5/87.5〜27.5/72.5となるように混合してなる混合物が塗布されたフィルムが開示されている。
特許文献2には、このようなガスバリア性フィルムはボイル処理後もガスバリア性、特に酸素遮断性に優れ、かつ可撓性、透明性、耐湿性、耐薬品性等に優れると記載されている。
特許文献3にはポリカルボン酸、ポリアミン化合物、多価金属化合物および塩基を含み、(上記ポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)/(上記ポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)=100/20〜100/90であるガスバリア用塗材が開示されている。
特許文献3には、このようなガスバリア用塗材を用いると、低湿度下および高湿度下での双方の条件下でのガスバリア性、とりわけ酸素バリア性が良好なガスバリア性フィルム、及びその積層体を提供できると記載されている。
特開2005−225940号公報 特開2013−10857号公報 国際公開第2016/017544号
ガスバリア性材料の各種特性について要求される技術水準は、ますます高くなっている。本発明者らは、特許文献1〜3に記載されているような従来のガスバリア性材料に関し、以下のような課題を見出した。
特許文献1〜3に記載されているようなガスバリア性材料は、ポリカルボン酸とポリアミンとを架橋させるために、高温で長時間の加熱が必要になるため、生産性の面で劣っていた。
また、このようなガスバリア性材料は、生産性を向上させるために、ポリカルボン酸とポリアミンとを架橋させるための加熱処理時間を短くすると、ポリカルボン酸とポリアミンとが架橋することにより形成されるアミド結合の割合が低くなり、バリア性が悪化することが明らかになった。
さらに、本発明者らの検討によると、ポリカルボン酸の架橋剤としてポリアミンの代わりに多価金属化合物を用いると、ポリカルボン酸とポリアミンとを架橋させる必要はなく、加熱処理時間を短くでき、生産性を向上できるが、得られる積層体の層間接着性が弱くなり、デラミが発生しやすくなることが明らかになった。
このように、本発明者らは、特許文献1〜3に記載されているような従来のガスバリア性材料は、バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスが不十分であることを見出した。
すなわち、本発明者らは、従来のガスバリア性材料には、バリア性、耐デラミ性および生産性をバランスよく向上させるという観点において、改善の余地があることを見出した。
なお、これまでバリア性能の向上に着目した技術は多くあったものの、バリア性、耐デラミ性および生産性をバランスよく向上させる技術は、これまでに報告されていなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスに優れたガスバリア性材料を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、を含む混合物の硬化物により構成され、かつ、特定の赤外線吸収スペクトルを示すガスバリア性フィルムが、バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスに優れることを見出して本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下に示すガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体が提供される。
[1]
ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、を含む混合物の硬化物により構成されたガスバリア性フィルムであって、
前記ガスバリア性フィルムの赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲における全ピーク面積をBとし、
吸収帯1690cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をCとし、
吸収帯1493cm−1以上1598cm−1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.380以下であり、
C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が0.150以下であり、
D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が0.520以上であるガスバリア性フィルム。
[2]
上記[1]に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
(上記硬化物中の上記多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(上記硬化物中の上記ポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)が0.16以上であるガスバリア性フィルム。
[3]
上記[1]または[2]に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
(上記硬化物中の上記ポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)/(上記硬化物中の上記ポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)が20/100以上90/100以下であるガスバリア性フィルム。
[4]
上記[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のガスバリア性フィルムにおいて、
上記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびアクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含むガスバリア性フィルム。
[5]
上記[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のガスバリア性フィルムにおいて、
上記多価金属化合物が2価以上の金属化合物を含むガスバリア性フィルム。
[6]
上記[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のガスバリア性フィルムにおいて、
上記多価金属化合物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛から選ばれる一種または二種以上の2価の金属化合物を含むガスバリア性フィルム。
[7]
上記[1]乃至[6]のいずれか一つに記載のガスバリア性フィルムにおいて、
上記ポリアミン化合物がポリエチレンイミンを含むガスバリア性フィルム。
[8]
基材層と、
上記基材層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、上記[1]乃至[7]のいずれか一つに記載のガスバリア性フィルムにより構成されたガスバリア性層と、
を備えるガスバリア性積層体。
[9]
上記[8]に記載のガスバリア性積層体において、
上記基材層がポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含むガスバリア性積層体。
[10]
上記[8]または[9]に記載のガスバリア性積層体において、
上記基材層が第1基材層および第2基材層を含み、
上記ガスバリア性層、上記第1基材層および上記第2基材層がこの順番で積層されており、上記第1基材層がポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含むガスバリア性積層体。
[11]
上記[8]乃至[10]のいずれか一つに記載のガスバリア性積層体において、
上記ガスバリア性層の厚みが0.01μm以上15μm以下であるガスバリア性積層体。
[12]
上記[8]乃至[11]のいずれか一つに記載のガスバリア性積層体において、
上記基材層と上記ガスバリア性層との間に無機物層をさらに備えるガスバリア性積層体。
[13]
上記[12]に記載のガスバリア性積層体において、
上記無機物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物により形成されたものであるガスバリア性積層体。
[14]
上記[12]または[13]に記載のガスバリア性積層体において、
上記無機物層が酸化アルミニウムにより構成された酸化アルミニウム層を含むガスバリア性積層体。
本発明によれば、バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスに優れたガスバリア性材料を提供することができる。
本発明に係る実施形態のガスバリア性積層体の構造の一例を模式的に示した断面図である。 本発明に係る実施形態のガスバリア性積層体の構造の一例を模式的に示した断面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。なお、文中の数字の間にある「〜」は特に断りがなければ、以上から以下を表す。
<ガスバリア性フィルム>
本実施形態に係るガスバリア性フィルムは、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、を含む混合物の硬化物により構成されたガスバリア性フィルムであって、上記ガスバリア性フィルムの赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲における全ピーク面積をBとし、吸収帯1690cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をCとし、吸収帯1493cm−1以上1598cm−1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.380以下であり、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が0.150以下であり、D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が0.520以上である。
本実施形態に係るガスバリア性フィルムは、例えば、ガスバリア用塗材を基材層や無機物層に塗布した後、乾燥、熱処理を行い、ガスバリア用塗材を硬化させて、ガスバリア性層を形成することによって得られるものである。すなわち、ガスバリア用塗材を硬化させて得られるものである。
また、本実施形態に係るガスバリア性フィルム10またはガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲における全ピーク面積をBとしたとき、B/Aで示されるアミド結合の面積比率は、バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは0.370以下、より好ましくは0.360以下、さらに好ましくは0.350以下である。また、B/Aで示されるアミド結合の面積比率の下限は、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等をより一層向上させる観点から、好ましくは0.235以上、より好ましくは0.250以上、さらに好ましくは0.270以上、さらに好ましくは0.290以上、特に好ましくは0.310以上である。
また、本実施形態に係るガスバリア性フィルム10またはガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1690cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をCとしたとき、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等をより一層向上させる観点から、好ましくは0.120以下、より好ましくは0.100以下、さらに好ましくは0.080以下、特に好ましくは0.060以下である。
また、上記C/Aで示されるカルボン酸の面積比率の下限は、特に限定されないが、例えば、0.0001以上である。
さらに、本実施形態に係るガスバリア性フィルム10またはガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm−1以上1598cm−1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が、バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスをより一層向上させる観点から、好ましくは0.550以上、より好ましくは0.580以上、さらに好ましくは0.600以上である。
また、上記D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率の上限は、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等をより一層向上させる観点から、好ましくは0.750以下、より好ましくは0.720以下、さらに好ましくは0.700以下、さらにより好ましくは0.680以下である。
本実施形態に係るガスバリア性フィルムまたはガスバリア性層は赤外線吸収スペクトルにおける未反応のカルボン酸のνC=Oに基づく吸収が1700cm−1付近にみられ、架橋構造であるアミド結合のνC=Oに基づく吸収が1630〜1685cm−1付近にみられ、カルボン酸塩のνC=Oに基づく吸収が1540〜1560cm−1付近にみられる。
すなわち、本実施形態において、赤外線吸収スペクトルにおける吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積Aは、カルボン酸とアミド結合とカルボン酸塩の合計量の指標を表し、吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲における全ピーク面積Bはアミド結合の存在量の指標を表すと考えられる。さらに、吸収帯1690cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積Cは未反応のカルボン酸の存在量の指標を表し、吸収帯1493cm−1以上1598cm−1以下の範囲における全ピーク面積Dはカルボン酸塩の存在量の指標を表していると考えられる。
なお、本実施形態において、上記全ピーク面積A〜Dは、以下の手順で測定できる。
まず、ガスバリア性フィルムまたはガスバリア性層から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、そのガスバリア性フィルムまたはガスバリア性層の表面の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)〜(4)で上記全ピーク面積A〜Dを算出する。
(1)1780cm−1と1493cm−1の吸光度を直線(N)で結び、吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲の吸光スペクトルとNで囲まれる面積を全ピーク面積Aとする。
(2)1690cm−1の吸光度(Q)から垂直に直線(O)を下ろし、NとOの交差点をPとし、1598cm−1の吸光度(R)から垂直に直線(S)を下ろし、NとSの交差点をTとし、吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲の吸収スペクトルと直線S、点T、直線N、点P、直線O、吸光度Q、吸光度Rで囲まれる面積を全ピーク面積Bとする。
(3)吸収帯1690cm−1以上1780cm−1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度Q、直線O,点P、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Cとする。
(4)吸収帯1493cm−1以上1598cm−1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度R、直線S、点T、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Dとする。
次いで、上記の方法で求めた面積から面積比B/A、C/A、D/Aを求める。
なお、本実施形態の赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、例えば、日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm−1、積算回数100回の条件で行うことができる。
本実施形態に係るガスバリア性フィルムまたはガスバリア性層のB/Aで示されるアミド結合の面積比率、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率およびD/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率は、ガスバリア性フィルムまたはガスバリア性層の製造条件を適切に調節することにより制御することが可能である。
本実施形態においては、とくにポリカルボン酸およびポリアミン化合物の配合比率、ガスバリア用塗材の調製方法、上記ガスバリア用塗材の加熱処理の方法・温度・時間等が、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率、上記C/Aで示されるカルボン酸の面積比率および上記D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率を制御するための因子として挙げられる。
本実施形態において、(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)すなわち(硬化物中の多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(硬化物中のポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)は、0.16以上が好ましく、0.18以上がより好ましく、0.20以上がさらに好ましく、0.25以上がさらにより好ましく、0.30以上がさらにより好ましく、0.35以上がさらにより好ましい。
(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)を上記下限値以上とすることにより、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等をより一層向上させることができる。
ここで、本発明者らの検討によれば、基材層として、吸湿性があるポリアミド等を用いた場合に、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等が悪化しやすいことを見出した。しかし、(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)を上記下限値以上とすることにより、基材層として、吸湿性があるポリアミド等を用いた場合でも、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等を向上させることが可能である。
一方、(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)すなわち(硬化物中の多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(硬化物中のポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)は、0.80以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましく、0.50以下がさらにより好ましい。
(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)を上記上限値以下とすることにより、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等をより一層向上させることができる。
本実施形態によれば、加熱処理時間が短くてもバリア性および耐デラミ性に優れるガスバリア性フィルムおよびガスバリア性積層体を得ることができる。すなわち、本実施形態によれば、バリア性、耐デラミ性および生産性のバランスに優れたガスバリア性材料を提供することができる
(ポリカルボン酸)
ポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸、3−ヘキセン酸、3−ヘキセン二酸等のα,β−不飽和カルボン酸の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。また、上記α,β−不飽和カルボン酸と、エチルエステル等のエステル類、エチレン等のオレフィン類等との共重合体であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸の単独重合体またはこれらの共重合体が好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体から選択される一種または二種以上の重合体であることがより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸から選択される少なくとも一種の重合体であることがさらに好ましく、アクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体から選択される少なくとも一種の重合体であることが特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリアクリル酸は、重合体100質量%中に、アクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
また、本実施形態において、ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸の単独重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリメタクリル酸は、重合体100質量%中に、メタクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
本実施形態に係るポリカルボン酸はカルボン酸モノマーが重合した重合体であり、ポリカルボン酸の分子量としては、ガスバリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から500〜2,500,000が好ましく、5,000〜2,000,000がより好ましく、10,000〜1,500,000がより好ましく、100,000〜1,200,000がさらに好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリカルボン酸の分子量はポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本実施形態に係る揮発性塩基でポリカルボン酸を中和することにより、多価金属化合物やポリアミン化合物とポリカルボン酸とを混合する際に、ゲル化が起こることを抑制することができる。したがって、ポリカルボン酸において、ゲル化防止の観点から揮発性塩基によってカルボキシ基の部分中和物または完全中和物とすることが好ましい。中和物は、ポリカルボン酸のカルボキシ基を揮発性塩基で部分的にまたは完全に中和する(即ち、ポリカルボン酸のカルボキシ基を部分的または完全にカルボン酸塩とする)ことにより得ることができる。このことにより、ポリアミン化合物や多価金属化合物を添加する際、ゲル化を防止できる。
部分中和物は、ポリカルボン酸重合体の水溶液に揮発性塩基を添加することにより調製するが、ポリカルボン酸と揮発性塩基の量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。本実施形態においてはポリカルボン酸の揮発性塩基による中和度は、ポリアミン化合物のアミノ基との中和反応に起因するゲル化を十分に抑制する観点から、70〜300当量%が好ましく、90〜250当量%がより好ましく、100〜200当量%がさらに好ましい。
揮発性塩基としては、任意の水溶性塩基を用いることができる。
揮発性塩基としては、例えば、アンモニア、モルホリン、アルキルアミン、2−ジメチルアミノエタノール、N−メチルモノホリン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の三級アミンまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。良好なガスバリア性を得る観点から、アンモニア水溶液が好ましい。
(ポリアミン化合物)
本実施形態に係るガスバリア用塗材は、ポリアミン化合物を含む。ポリアミン化合物を含むことによって、得られるガスバリア性材料のバリア性を向上できるとともに、得られるガスバリア性積層体の層間接着性を向上でき、耐デラミ性を良好にすることができる。
本実施形態に係るポリアミン化合物は、主鎖あるいは側鎖あるいは末端にアミノ基を2つ以上有するポリマーである。具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)等の脂肪族系ポリアミン類;ポリリジン、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類;等が挙げられる。また、アミノ基の一部を変性したポリアミンでもよい。良好なガスバリア性を得る観点から、ポリエチレンイミンがより好ましい。
本実施形態に係るポリアミン化合物の数平均分子量は、ガスバリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から、50〜2,000,000が好ましく、100〜1,000,000がより好ましく、1,500〜500,000がさらに好ましく、1,500〜100,000がさらにより好ましく、1,500〜50,000がさらにより好ましく、3,500〜20,000がさらにより好ましく、5,000〜15,000がさらにより好ましく、7,000〜12,000が特に好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアミン化合物の分子量は沸点上昇法や粘度法を用いて測定することができる。
多価金属化合物は、周期表の2〜13族に属する金属及び金属化合物であり、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等が挙げられる。耐水性や不純物等の観点から金属の酸化物もしくは金属水酸化物が好ましい。
上記二価以上の金属の中でも、Mg、Ca、Zn、Ba及びAl、特にZnが好ましい。また、上記金属化合物の中でも、二価以上の金属化合物が好ましく、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等の二価の金属化合物がより好ましく、酸化亜鉛、水酸化亜鉛がさらに好ましく、酸化亜鉛が特に好ましい。
これら多価金属化合物は、少なくとも一種が使用されればよく、一種または二種以上としてもよい。
本実施形態において、(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)すなわち(硬化物中のポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)/(硬化物中のポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)は、20/100以上が好ましく、25/100以上がより好ましく、30/100以上がさらに好ましく、35/100以上がさらにより好ましく、40/100以上が特に好ましい。(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)を上記下限値以上とすることにより、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等をより一層向上させることができる。
一方、(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)すなわち(硬化物中のポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)/(硬化物中のポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)は、90/100以下が好ましく、85/100以下がより好ましく、80/100以下がさらに好ましく、75/100以下がさらにより好ましく、70/100以下が特に好ましい。(ガスバリア用塗材中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)を上記上限値以下とすることにより、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等をより一層向上させることができる。
かかる理由の詳細は、明らかではないが、ポリアミン化合物を構成するアミノ基によるアミド架橋と、ポリカルボン酸と多価金属との塩を構成する多価金属による金属架橋がバランスよく緻密な構造を形成することにより、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能に優れたガスバリア性フィルムまたはガスバリア性積層体を得ることができると考えられる。
本実施形態に係るガスバリア用塗材は炭酸系アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。炭酸系アンモニウム塩は、多価金属化合物を、炭酸多価金属アンモニウム錯体の状態にして、多価金属化合物の溶解性を向上させ、多価金属化合物を含む均一な溶液を調製するために添加するものである。本実施形態に係るガスバリア用塗材は炭酸系アンモニウム塩を含むことによって、多価金属化合物の溶解量を増やすことができ、その結果、(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリカルボン酸に含まれる−COO−基のモル数)を上記下限値以上としても、均一なガスバリア用塗材を得ることができる。
炭酸系アンモニウム塩としては、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられ、揮発しやすく、得られるガスバリア性層に残存し難い点から、炭酸アンモニウムが好ましい。
(ガスバリア用塗材中の炭酸系アンモニウム塩のモル数)/(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)は、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.25以上がさらに好ましく、0.50以上がさらにより好ましく、0.75以上が特に好ましい。これにより、多価金属化合物の溶解性をより一層向上させることができる。
一方、(ガスバリア用塗材中の炭酸系アンモニウム塩のモル数)/(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)は、10.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.5以下がさらにより好ましい。これにより、本実施形態に係るガスバリア用塗材の塗工性をより一層向上させることができる。
また、ガスバリア用塗材の固形分濃度は、塗工性を向上させる観点から、0.5〜15質量%に設定することが好ましく、1〜10質量%に設定することがさらに好ましい。
また、ガスバリア用塗材には、塗布の際にはじきが発生するのを抑制する観点から、界面活性剤をさらに添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は、ガスバリア用塗材の固形分全体を100質量%としたとき、0.01〜3質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。
本実施形態に係る界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、良好な塗工性を得る観点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類がより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等を挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等を挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、例えば、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、例えば、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
本実施形態に係るガスバリア用塗材は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の添加剤を含んでもよい。例えば、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加してよい。
<ガスバリア用塗材の製造方法>
本実施形態に係るガスバリア用塗材は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、ポリカルボン酸に、揮発性塩基を加えることによりポリカルボン酸のカルボキシ基を完全にまたは部分的に中和する。さらに多価金属塩化合物および炭酸系アンモニウム塩を混合して、上記揮発性塩基と中和した上記ポリカルボン酸の上記カルボキシ基の全部または一部、および上記揮発性塩基と中和しなかった上記ポリカルボン酸の上記カルボキシ基において金属塩を形成させる。その後、さらにポリアミン化合物を添加することによってガスバリア用塗材は得られる。このような手順でポリカルボン酸、多価金属塩化合物、炭酸系アンモニウム塩およびポリアミン化合物を混合することにより、凝集物の生成を抑制でき、均一なガスバリア用塗材を得ることができる。これにより、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
より詳細には、以下の通りである。
まず、ポリカルボン酸を構成するカルボキシ基の完全または部分中和溶液を調製する。
ポリカルボン酸に、揮発性塩基を添加して、ポリカルボン酸のカルボキシ基が完全中和または部分中和する。当該ポリカルボン酸のカルボキシ基を中和することにより、多価金属化合物やポリアミン化合物の添加時にポリカルボン酸を構成するカルボキシ基と、多価金属化合物やポリアミン化合物を構成するアミノ基とが反応することによって発生するゲル化を効果的に防止し、均一なガスバリア用塗材を得ることができる。
次いで、多価金属塩化合物および炭酸系アンモニウム塩を添加、溶解させ、生成された多価金属イオンによりポリカルボン酸を構成する−COO−基との多価金属塩を形成する。このとき多価金属イオンと塩を形成する−COO−基は上記塩基と中和しなかったカルボキシ基および塩基によって中和された−COO−基の双方をいう。塩基と中和した−COO−基の場合は上記多価金属化合物由来の多価金属イオンが入れ替わって配位して−COO−基の多価金属塩を形成する。そして、多価金属塩を形成した後、さらにポリアミン化合物を添加することによって、ガスバリア用塗材を得ることができる。
このように製造されたガスバリア用塗材を基材層上に塗布し、乾燥・硬化させることにより、ガスバリア性層を形成する。このとき、ポリカルボン酸を構成する−COO−基の多価金属塩の多価金属が金属架橋を形成し、ポリアミンを構成するアミノ基によりアミド架橋を形成して、優れたガスバリア性を有するガスバリア性層が得られる。
<ガスバリア性積層体>
図1および2は、本発明に係る実施形態のガスバリア性積層体100の構造の一例を模式的に示した断面図である。
本実施形態に係るガスバリア性積層体100は、基材層101上に、ガスバリア用塗材を塗布し、硬化させたガスバリア性層103を有するものである。
すなわち、本実施形態に係るガスバリア性積層体100は、基材層101と、基材層101の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、本実施形態に係るガスバリア性フィルム10により構成されたガスバリア性層103と、を備える。
また、図2に示すように、ガスバリア性積層体100において、無機物層102が基材層101とガスバリア性層103(ガスバリア性フィルム10)との間にさらに積層されていてもよい。これにより、酸素バリア性や水蒸気バリア性等のバリア性能をさらに向上させることができる。
また、ガスバリア性積層体100において、基材層101と、ガスバリア性層103または無機物層102との接着性を向上させる観点から、基材層101上にアンダーコート層がさらに積層されていてもよい。
(無機物層)
本実施形態に係る無機物層102を構成する無機物は、例えば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物、金属窒化物、金属弗化物、金属酸窒化物等が挙げられる。
無機物層102を構成する無機物としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、周期表の族名は旧CAS式で示している。
さらに、上記無機物の中でも、バリア性、コスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物が好ましく、酸化アルミニウムがより好ましい。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
無機物層102は上記無機物により形成されている。無機物層102は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層102が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
無機物層102の厚さは、バリア性、密着性、取扱い性等のバランスの観点から、通常1nm以上1000nm以下、好ましくは1nm以上500nm以下である。
本実施形態において、無機物層102の厚さは、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
無機物層102の形成方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、プラズマCVD法、ゾルゲル法等により基材層101の片面または両面に無機物層102を形成することができる。中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法等の減圧下での製膜が望ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素等の珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機物層102の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。
これらの結合反応を迅速に行うには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
(基材層)
本実施形態に係る基材層101は、ガスバリア用塗材の溶液を塗工できるものであれば、特に限定されず、用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、または紙等の有機質材料、ガラス、陶、セラミック、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、セメント、アルミニウム、酸化アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等の金属等の無機質材料、有機質材料同士または有機質材料と無機質材料との組合せからなる多層構造の基材層等が挙げられる。これらの中でも、例えば、包装材料やパネル等の各種フィルム用途の場合、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂を用いたプラスチックフィルム、または紙等の有機質材料が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂が好ましく、耐ピンホール性、耐破れ性および耐熱性等に優れる観点から、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂が好ましい。また、基材層として、吸湿性があるポリアミドを用いた場合、ガスバリア性積層体において、ポリアミドが水分を吸収して膨潤し、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等が悪化しやすいが、本実施形態に係るガスバリア性積層体100は、基材層101として、吸湿性があるポリアミドを用いた場合でも高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能の低下を抑制することができる。
また、熱可塑性樹脂からなる基材層101は、ガスバリア性積層体100の用途に応じて、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
また、上記熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂により形成されたフィルムを少なくとも一方向、好ましくは二軸方向に延伸して基材層としてもよい。
本実施形態に係る基材層101としては、透明性、剛性、耐熱性に優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドおよびポリブチレンテレフタレートから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムが好ましく、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムがより好ましい。
本実施形態に係るガスバリア性積層体100は、基材層101が第1基材層および第2基材層を含み、ガスバリア性層103、第1基材層および第2基材層がこの順番で積層された構成とした場合、第1基材層がポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含むことが好ましく、ポリアミドを含むことがより好ましい。この場合、基材層101としては、耐水性に優れるポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ブテン)等)を含むことが好ましい。
これにより、本実施形態に係るガスバリア性積層体100において、耐ピンホール性、耐破れ性および耐熱性等を良好にしながら、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能の低下をより一層抑制することができる。
また、基材層101の表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン系樹脂等がコーティングされていてもよい。
さらに、基材層101はガスバリア性層103(ガスバリア性フィルム10)との接着性を改良するために、表面処理を行ってもよい。具体的には、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理を行ってもよい。
基材層101の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、1〜1000μmが好ましく、1〜500μmがより好ましく、1〜300μmがさらに好ましい。
基材層101の形状は、特に限定されないが、例えば、シートまたはフィルム形状、トレー、カップ、中空体等の形状が挙げられる。
(アンダーコート層)
ガスバリア性積層体100において、基材層101と、ガスバリア性層103または無機物層102との接着性を向上させる観点から、基材層101の表面にアンダーコート層、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート系化合物またはウレタン(メタ)アクリレート系化合物のアンダーコート層を形成させておくことが好ましい。
上記アンダーコート層としては、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物から選択される少なくとも一種を硬化してなる層が好ましい。
エポキシ(メタ)アクリレート系化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等のエポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる化合物、さらには上記エポキシ化合物をカルボン酸またはその無水物と反応させて得られる酸変性エポキシ(メタ)アクリレートが例示される。これらのエポキシ(メタ)アクリレート系の化合物は、光重合開始剤及び必要に応じて他の光重合開始剤あるいは熱反応性モノマーからなる希釈剤と共に、基材層の表面に塗布され、その後紫外線等を照射して架橋反応によりアンダーコート層が形成される。
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物からなるオリゴマー(以下、ポリウレタン系オリゴマーとも呼ぶ。)をアクリレート化したもの等が挙げられる。
ポリウレタン系オリゴマーは、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合生成物から得ることができる。具体的なポリイソシアネート化合物としては、メチレン・ビス(p−フェニレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート・ヘキサントリオールの付加体、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、チオプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート二量体、水添キシリレンジイソシアネート、トリス(4−フェニルイソシアネート)チオフォスフェート等が例示でき、また、具体的なポリオール化合物としては、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテル系ポリオール、ポリアジペートポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリエステル系ポリオール、アクリル酸エステル類とヒドロキシエチルメタアクリレートとのコポリマー等がある。アクリレートを構成する単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等が例示できる。
これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、必要に応じて、併用される。また、これらを重合させる方法としては、公知の種々の方法、具体的には電離性放射線を含むエネルギー線の照射または加熱等による方法が挙げられる。
アンダーコート層を紫外線で硬化して形成する場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミフィラベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステルまたはチオキサントン類等を光重合開始剤として、また、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリn−ブチルホスフィン等を光増感剤として混合して使用するのが好ましい。また、本実施形態では、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物とウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、併用することも行われる。
また、これらのエポキシ(メタ)アクリレート系化合物やウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、(メタ)アクリル系モノマーで希釈することが行われる。このような(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が例示できる。
中でもアンダーコート層としてウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いた場合は、得られるガスバリア性積層体100の酸素ガスバリア性がさらに改良される。
本実施形態のアンダーコート層の厚さは、コート量として、通常、0.01〜100g/m、好ましくは0.05〜50g/mの範囲にある。
(接着剤層)
また、基材層101とガスバリア性層103(ガスバリア性フィルム10)との間に接着剤層を設けてもよい。なお、上記接着剤層から上記アンダーコート層は除かれる。
接着剤層は、公知の接着剤を含むものであればよい。接着剤としては、有機チタン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性シリコーン樹脂及びアルキルチタネート、ポリエステル系ポリブタジエン等から組成されているラミネート接着剤、または一液型、二液型のポリオールと多価イソシアネート、水系ウレタン、アイオノマー等が挙げられる。または、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂等を主原料とした水性接着剤を用いてもよい。
また、ガスバリア性積層体100の用途に応じて、接着剤に硬化剤、シランカップリング剤等の他の添加物を添加してもよい。ガスバリア性積層体の用途が、レトルト等の熱水処理に用いられるものである場合、耐熱性や耐水性の観点から、ポリウレタン系接着剤に代表されるドライラミネート用接着剤が好ましく、溶剤系の二液硬化タイプのポリウレタン系接着剤がより好ましい。
本実施形態に係るガスバリア性積層体100およびガスバリア性フィルム10は、ガスバリア性能に優れており、包装材料、特に高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途、日常雑貨用途等さまざまな包装材料としても好適に使用し得る。
また、本実施形態のガスバリア性積層体100およびガスバリア性フィルム10は、例えば、高いバリア性能が要求される、真空断熱用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
<ガスバリア性積層体の製造方法>
本実施形態に係るガスバリア性積層体100の製造方法は、本実施形態に係るガスバリア用塗材を基材層101に塗工し、次いで、乾燥することにより塗工層を得る工程と、上記塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシル基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性層103を形成する工程と、を含む。
本実施形態に係るガスバリア用塗材を基材層101に塗布する方法は、特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバース及びジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーター及びノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等種々公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
塗工量(ウエット厚み)は、0.05〜300μmが好ましく、1〜200μmがより好ましく、1〜100μmとなることがさらに好ましい。
塗工量が上記上限値以下であると、得られるガスバリア性積層体やガスバリア性フィルムがカールすることを抑制できる。また、塗工量が上記上限値以下であると、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
また、塗工量が上記下限値以上であると、得られるガスバリア性積層体やガスバリア性フィルムのバリア性能をより良好なものとすることができる。
乾燥・硬化後のガスバリア性重合体を含む層(ガスバリア性積層体中のガスバリア性層や、ガスバリア性フィルム)の厚みは0.01μm以上15μm以下が好ましく、0.05μm以上5μm以下がより好ましく、0.1μm以上1μm以下がさらに好ましい。
乾燥及び熱処理は、乾燥後、熱処理を行ってもよいし、乾燥と熱処理を同時におこなってもよい。
乾燥、加熱処理する方法は、本発明の目的を達することができる限り特に限定されないが、ガスバリア用塗材を硬化させられるもの、硬化したガスバリア用塗材を加熱できる方法であればよい。例えば、オーブン、ドライヤー等の対流伝熱によるもの、加熱ロール等の伝導伝熱によるもの、赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いる輻射伝熱によるもの、マイクロ波等内部発熱によるものが挙げられる。乾燥、加熱処理に使用する装置としては製造効率の観点から乾燥と加熱処理の双方を行える装置が好ましい。その中でも具体的には乾燥、加熱、アニーリング等の種々の目的に利用できるという観点から熱風オーブンを用いることが好ましく、また、フィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールを用いることが好ましい。また、乾燥、加熱処理に使用する方法を適宜組み合わせてもよい。熱風オーブンと加熱ロールを併用してもよく例えば、熱風オーブンでガスバリア用塗材を乾燥後、加熱ロールで加熱処理を行えば加熱処理工程が短時間となり製造効率の観点から好ましい。また、熱風オーブンのみで乾燥と加熱処理を行うことが好ましい。
例えば、加熱処理温度は160〜250℃、加熱処理時間は1秒〜1分、好ましくは加熱処理温度が180〜240℃、加熱処理時間が1秒〜30秒、より好ましく加熱処理温度が200℃〜230℃、加熱処理時間が1秒〜15秒、さらに好ましくは加熱処理温度が200℃〜220℃、加熱処理時間が1秒〜10秒の条件で加熱処理をおこなうことが望ましい。さらに上述したように加熱ロールを併用することで短時間での加熱処理が可能となる。なお、ポリカルボン酸に含まれる−COO−基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進める観点から、加熱処理温度および加熱処理時間はガスバリア用塗材のウエット厚みに応じて調整することが重要である。
ガスバリア用塗材は、乾燥、熱処理されることにより、ポリカルボン酸のカルボキシル基がポリアミンや多価金属化合物と反応し、共有結合およびイオン架橋されることにより、高湿度下においても良好なガスバリア性が得られる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
(1)ガスバリア用塗材の作製
ポリアクリル酸(東亜合成株式会社製、製品名:AC−10H、重量平均分子量:800,000)のカルボキシル基に対して10%アンモニア水(和光純薬工業社製)のアンモニアが150当量%になるよう添加、更に精製水を添加して濃度が7.29質量%のポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
次いで、得られたポリアクリル酸アンモニウム水溶液に、酸化亜鉛(関東化学社製)および炭酸アンモニウムを添加して混合・撹拌して混合液(A)を作成した。ここで、酸化亜鉛の添加量は、(ガスバリア用塗材中の酸化亜鉛のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)が表1に示す値になるような量とした。また、炭酸アンモニウムは、(ガスバリア用塗材中の炭酸系アンモニウム塩のモル数)/(ガスバリア用塗材中の酸化亜鉛のモル数)が1.0になるような量とした。
次いで、ポリエチレンイミン(日本触媒社製、製品名:SP−200、数平均分子量:10,000)に精製水を添加して10%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
次に、上記混合液(A)と上記ポリエチレンイミン水溶液とを、(ガスバリア用塗材中のポリエチレンイミンに含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)が表1に示す値になるような割合で混合して混合液(B)を調製した。
さらに上記混合液(B)の固形分濃度が1.5%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌したのちに、活性剤(花王社製商品名:エマルゲン120)を混合液(B)の固形分に対して0.3重量%となるように混合し、ガスバリア用塗材を調製した。
(2)ガスバリア性積層フィルムの作製
得られたガスバリア用塗材を厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)のコロナ処理面に、メイヤバーにて乾燥後の塗工量が0.3μmになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して温度;120℃、時間;12秒の条件で乾燥し、さらに加熱ロールにて温度;210℃、時間;4.2秒の熱処理をして、ガスバリア性積層フィルムを得た。
得られたガスバリア性積層フィルムについて、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
〔実施例2〜10〕
(ガスバリア用塗材中の酸化亜鉛のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)および(ガスバリア用塗材中のポリエチレンイミンに含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)を表1に示す値にそれぞれ変えた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルムをそれぞれ得た。
得られたガスバリア性フィルムについて、以下の評価をそれぞれ行い、結果を表1に示した。
〔比較例1、4〜6〕
(ガスバリア用塗材中のポリエチレンイミンに含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)を表1に示す値にそれぞれ変え、さらに酸化亜鉛および炭酸アンモニウムを使用しない以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルムをそれぞれ得た。
得られたガスバリア性フィルムについて、以下の評価をそれぞれ行い、結果を表1に示した。
〔比較例2〜3〕
(ガスバリア用塗材中の酸化亜鉛のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)および(ガスバリア用塗材中のポリエチレンイミンに含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)を表1に示す値にそれぞれ変え、さらに炭酸アンモニウムを使用しない以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルムをそれぞれ得た。
得られたガスバリア性フィルムについて、以下の評価をそれぞれ行い、結果を表1に示した。
〔比較例7〜9〕
(ガスバリア用塗材中の酸化亜鉛のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる−COO−基のモル数)を表1に示す値にそれぞれ変え、さらにポリエチレンイミンを使用しない以外は実施例1と同様にしてガスバリア性積層フィルムをそれぞれ得た。
得られたガスバリア性積層フィルムについて、以下の評価をそれぞれ行い、結果を表1に示した。
<評価方法>
(1)厚さ15μmのポリアミドフィルム(ユニチカ社製、商品名:ONBC)の両面に、エステル系接着剤(ポリウレタン系接着剤(三井化学社製、商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製、商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部)を塗布した。次いで、接着剤を付与したポリアミドフィルムの両面に、実施例および比較例で得られたガスバリア性積層フィルムのバリア面(ガスバリア用塗材を塗布した面)と、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ社製、商品名:RXC−22)とをそれぞれ貼り合わせ、レトルト処理前のフィルムを得た。
(2)レトルト処理(水充填)
上記で得られたレトルト処理前のフィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を70cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作製し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の水を抜き、レトルト処理後(水充填)のフィルムを得た。
なお、比較例7および8のフィルムはレトルト処理によって、デラミが生じた。
(3)レトルト処理(穀物酢充填)
上記で得られたレトルト処理前のフィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として穀物酢(pH:2.4)を70cc入れ、もう1方をヒートシールにより袋を作製し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃、30分間の条件でレトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の穀物酢を抜き、レトルト処理後(穀物酢充填)のフィルムを得た。
(4)酸素透過度[ml/(m・day・MPa)]
上記方法で得られたレトルト処理前のフィルム、レトルト処理後(水充填)のフィルムおよびレトルト処理後(穀物酢充填)のフィルムの酸素透過度を、モコン社製OX−TRAN2/21を用いて、JIS K 7126に準じ、温度20℃、湿度90%RHの条件でそれぞれ測定した。
(5)水蒸気透過度[g/(m・day)]
上記方法で得られたレトルト処理前のフィルム、レトルト処理後(水充填)のフィルムおよびレトルト処理後(穀物酢充填)のフィルムを無延伸ポリプロピレンフィルムが内面になるように重ねてガスバリア性積層フィルムを折り返し、3方をヒートシールし、袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01mになるように袋を作成し、40℃、90%RHの条件で300時間放置し、その重量差で水蒸気透過度をそれぞれ測定した。
(6)IR面積比
赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は日本分光社製IRT−5200装置を用い、PKM−GE−S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm−1、積算回数100回の条件で測定した。得られた吸収スペクトを前述した方法で解析し、全ピーク面積A〜Dを算出した。そして、全ピーク面積A〜Dから面積比B/A、C/A、D/Aを求めた。
(7)テープ剥離試験
得られたガスバリア性積層フィルムについて、以下のテープ剥離試験をおこない、以下の基準で評価した。
作製したカスバリア性積層フィルムのガスバリア性層表面に、セロハンテープ(ニチバン セロテープ(登録商標))を貼り付け、セロハンテープを剥がすことにより、ガスバリア性層が剥離する様子を評価した。
〇:ガスバリア性層の剥がれなし
×:ガスバリア性層の剥がれあり
(8)ガスバリア性積層フィルムの外観評価
ガスバリア性積層フィルムの外観は以下の基準で目視により評価した。
〇:着色や表面にブツが観察されない
×:着色や表面にブツが観察される
Figure 2021107118
10 ガスバリア性フィルム
100 ガスバリア性積層体
101 基材層
102 無機物層
103 ガスバリア性層

Claims (14)

  1. ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、を含む混合物の硬化物により構成されたガスバリア性フィルムであって、
    前記ガスバリア性フィルムの赤外線吸収スペクトルにおいて、
    吸収帯1493cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
    吸収帯1598cm−1以上1690cm−1以下の範囲における全ピーク面積をBとし、
    吸収帯1690cm−1以上1780cm−1以下の範囲における全ピーク面積をCとし、
    吸収帯1493cm−1以上1598cm−1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
    B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.380以下であり、
    C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が0.150以下であり、
    D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が0.520以上であるガスバリア性フィルム。
  2. 請求項1に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    (前記硬化物中の前記多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(前記硬化物中の前記ポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)が0.16以上であるガスバリア性フィルム。
  3. 請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    (前記硬化物中の前記ポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)/(前記硬化物中の前記ポリカルボン酸由来の−COO−基のモル数)が20/100以上90/100以下であるガスバリア性フィルム。
  4. 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、およびアクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される一種または二種以上の重合体を含むガスバリア性フィルム。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    前記多価金属化合物が2価以上の金属化合物を含むガスバリア性フィルム。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    前記多価金属化合物が、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛から選ばれる一種または二種以上の2価の金属化合物を含むガスバリア性フィルム。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムにおいて、
    前記ポリアミン化合物がポリエチレンイミンを含むガスバリア性フィルム。
  8. 基材層と、
    前記基材層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムにより構成されたガスバリア性層と、
    を備えるガスバリア性積層体。
  9. 請求項8に記載のガスバリア性積層体において、
    前記基材層がポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含むガスバリア性積層体。
  10. 請求項8または9に記載のガスバリア性積層体において、
    前記基材層が第1基材層および第2基材層を含み、
    前記ガスバリア性層、前記第1基材層および前記第2基材層がこの順番で積層されており、前記第1基材層がポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される一種または二種以上の樹脂を含むガスバリア性積層体。
  11. 請求項8乃至10のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体において、
    前記ガスバリア性層の厚みが0.01μm以上15μm以下であるガスバリア性積層体。
  12. 請求項8乃至11のいずれか一項に記載のガスバリア性積層体において、
    前記基材層と前記ガスバリア性層との間に無機物層をさらに備えるガスバリア性積層体。
  13. 請求項12に記載のガスバリア性積層体において、
    前記無機物層が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、アルミニウムからなる群から選択される一種または二種以上の無機物により形成されたものであるガスバリア性積層体。
  14. 請求項12または13に記載のガスバリア性積層体において、
    前記無機物層が酸化アルミニウムにより構成された酸化アルミニウム層を含むガスバリア性積層体。
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