JP2022090977A - ガスバリア性積層体 - Google Patents

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Abstract

Figure 2022090977000001
【課題】生産性およびバリア性のバランスに優れ、様々な層構造において好ましいバリア性が発揮されるガスバリア性材料を提供する。
【解決手段】ガスバリア性積層体100は、基材層101と、基材層101の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性層103と、基材層101とガスバリア性層103との間に設けられた無機物層102と、を含み、ガスバリア性層103が、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、1つ以上の-P-OH基を含むリン化合物またはその塩と、を含む混合物の硬化物により構成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性積層体に関する。
ガスバリア性材料のレトルト耐性を向上しようとする技術として、特許文献1(国際公開第2011/122036号)に記載のものがある。同文献には、基材と基材に積層された層とを有する複合構造体であって、上記層は反応生成物および重合体を含み、上記反応生成物は、少なくとも金属酸化物とリン化合物とが反応してなる反応生成物であり、層の赤外線吸収スペクトルに関して特定の性質を有する複合構造体が記載されている。また、上記重合体がポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、多糖類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸およびポリメタクリル酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体であることが好ましいとされている。
国際公開第2011/122036号
ガスバリア性材料の各種特性について要求される技術水準は、ますます高くなっている。そこで、本発明者らが上記特許文献に記載の技術について検討したところ、これらの技術を用いても、ガスバリア性材料には、生産性およびバリア性をバランスよく向上するという観点において、依然として改善の余地があることを見出した。これまでバリア性能の向上に着目した技術は多くあったものの、バリア性と生産性とをバランスよく向上する技術は、これまでに報告されていなかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、生産性およびバリア性のバランスに優れ、様々な層構造において好ましいバリア性が発揮されるガスバリア性材料を提供するものである。
本発明によれば、以下に示すガスバリア性積層体が提供される。
[1] 基材層と、
前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性層と、
前記基材層と前記ガスバリア性層との間に設けられた、無機物層と、
を含み、
前記ガスバリア性層が、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、1つ以上の-P-OH基を含むリン化合物またはその塩と、を含む混合物の硬化物により構成される、ガスバリア性積層体。
[2] 前記基材層と前記無機物層との間に設けられたアンダーコート層をさらに含む、[1]に記載のガスバリア性積層体。
[3] 前記無機物層が、前記基材層上に、あるいは、前記基材層と前記無機物層との間に介在層を有する場合には前記介在層上に設けられた蒸着膜であって、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される1または2以上の無機物により構成される、[1]または[2]に記載のガスバリア性積層体。
[4] 前記ガスバリア性層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
1300cm-1以上1490cm-1以下の範囲における吸光度の最大ピーク高さをαとし、
1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における吸光度の最大ピーク高さをγとしたとき、
γ/αで表されるNH3錯体に対する遊離カルボキシ基の割合が、0.00以上1.00以下である、[1]乃至[3]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[5] 前記ガスバリア性層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとし、
吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとし、
吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.200以上0.370以下であり、
C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が0.150以下であり、
D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が0.580以上0.800以下である、[1]乃至[4]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[6] 前記ガスバリア性層の厚みが0.01μm以上15μm以下である、[1]乃至[5]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[7] 前記多価金属化合物が、Zn、Ca、Mg、BaおよびAlからなる群から選択される1または2以上の2価以上の金属の化合物である、[1]乃至[6]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[8] (前記混合物中の前記リン化合物またはその塩由来のP原子のモル数)/(前記混合物中の前記ポリカルボン酸由来の-COO-基のモル数)が0.001以上0.3以下である、[1]乃至[7]のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[9] 前記リン化合物が、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸およびこれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、[1]乃至[8]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[10] (前記混合物中の前記多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(前記混合物中の前記ポリカルボン酸由来の-COO-基のモル数)が、0.10以上0.80以下である、[1]乃至[9]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[11] (前記混合物中の前記多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)が0.25以上0.65以下である、[1]乃至[10]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[12] 前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される1または2以上の重合体を含む、[1]乃至[11]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[13] 前記ポリアミン化合物がポリエチレンイミンを含む、[1]乃至[12]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
[14] 前記基材層が、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1または2以上の樹脂を含む、[1]乃至[13]いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
本発明によれば、生産性およびバリア性のバランスに優れ、様々な層構造において好ましいバリア性が発揮されるガスバリア性材料を提供することができる。
実施形態におけるガスバリア性積層体の構造の一例を模式的に示す断面図である。 実施形態におけるガスバリア性積層体の構造の一例を模式的に示す断面図である。
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
本明細書において、文中の数字の間にある「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の値を含む。
本明細書において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも1つであり、(メタ)アクリレートとはアクリレートおよびメタクリレートの少なくとも1つである。
本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
(ガスバリア性積層体)
図1は、実施形態におけるガスバリア性積層体の構成の一例を模式的に示す断面図である。図1に示したガスバリア性積層体100は、基材層101と、基材層101の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性層103と、基材層101とガスバリア性層103との間に設けられた無機物層102と、を含む。そして、ガスバリア性層103が、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、1つ以上の-P-OH基を含むリン化合物またはその塩と、を含む混合物の硬化物により構成される。
各層の具体的構成については後述する。
ガスバリア性積層体100においては、基材層101、無機物層102およびガスバリア性層103がこの順に積層されているとともに、ガスバリア性層103が上述の混合物の硬化物により構成されるため、バリア性および生産性のバランスに優れ、様々な層構造において好ましいバリア性が発揮されるものである。
さらに具体的には、ガスバリア性積層体100は、レトルト処理後の酸素バリア性や水蒸気バリア性等のバリア性能に優れるものである。また、ガスバリア性積層体100においては、ガスバリア性層103が、上述の混合物の硬化物により構成されるため、たとえばガスバリア性層103を得る際の硬化時間、具体的には加熱処理時間が短くてもバリア性に優れるガスバリア性積層体100を得ることができる。
また、ガスバリア性層103が、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、1つ以上の-P-OH基を含むリン化合物またはその塩と、を含む混合物の硬化物により構成されるため、たとえば、バリア性および耐水性に優れるガスバリア性積層体100を得ることも可能となる。
図2は、ガスバリア性積層体の他の構成例を模式的に示す断面図である。図2示したガスバリア性積層体110の基本構成は図1を参照して前述したガスバリア性積層体100と同様であるが、基材層101と無機物層102との間に設けられたアンダーコート層104をさらに含む点で異なる。
ガスバリア性積層体110においても、ガスバリア性積層体100と同様の効果が得られる。加えて、ガスバリア性積層体110では、基材層101と無機物層102との間にアンダーコート層104を設けることにより、基材層101と無機物層102との接着性をさらに向上することができる。
以下、ガスバリア性積層体に含まれる層の構成をさらに具体的に説明する。まず、ガスバリア性層103について説明する。
(ガスバリア性層)
ガスバリア性層103は、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、を含む混合物の硬化物により構成される。さらに具体的には、ガスバリア性層103は、上記硬化物により構成されたフィルム(ガスバリア性フィルム10)である。
さらに具体的には、ガスバリア性層103は、たとえば、無機物層102等のガスバリア性層103の直下に配置される層に、硬化前の混合物すなわちガスバリア用塗材を塗布した後、乾燥、熱処理をおこない、ガスバリア用塗材を硬化させて得られるものである。
ガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、1300cm-1以上1490cm-1以下の範囲における吸光度の最大ピーク高さをαとし、1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における吸光度の最大ピーク高さをγとしたとき、γ/αで表されるNH3錯体に対する遊離カルボキシ基の割合は、塗工前のガスバリア塗材の液安定性の観点から、好ましくは0.00以上であり、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上である。
また、塗工後に得られるガスバリア性層103のバリア性向上の観点から、上記γ/αは、好ましくは1.00以下であり、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.60以下、さらにより好ましくは0.40以下、よりいっそう好ましくは0.20以下、さらにまた好ましくは0.10以下である。
また、ガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとし、吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとし、吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、面積比の好ましい例を以下に示す。
ガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、B/Aで示されるアミド結合の面積比率は、レトルト処理後のガスバリア性能をより一層向上する観点から、好ましくは0.200以上であり、より好ましくは0.220以上、さらに好ましくは0.250以上である。
また、バリア性および生産性のバランスをより一層向上する観点から、上記B/Aで示されるアミド結合の面積比率は、好ましくは0.370以下であり、より好ましくは0.350以下、さらに好ましくは0.300以下である。
ガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率は、レトルト処理後のガスバリア性能をより一層向上する観点から、好ましくは0.150以下であり、より好ましくは0.100以下、さらに好ましくは0.080以下、さらにより好ましくは0.060以下である。
また、上記C/Aで示されるカルボン酸の面積比率の下限は、限定されないが、たとえば0.000以上であり、また、たとえば0.0001以上であってもよい。
ガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率は、バリア性および生産性のバランスをより一層向上する観点から、好ましくは0.580以上であり、より好ましくは0.600以上である。
また、レトルト処理後のガスバリア性能をより一層向上する観点から、上記D/Aは、好ましくは0.800以下であり、より好ましくは0.780以下、さらに好ましくは0.760以下、さらにより好ましくは0.740以下である。
さらに、ガスバリア性積層体の生産性およびバリア性のバランスをさらに好ましいものとする観点から、B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.200以上0.370以下であり、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が0.150以下であり、D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が0.580以上0.800以下であることも好ましい。
ガスバリア性層103の赤外線吸収スペクトルにおいて、B/Aで示されるアミド結合の面積比率に対するD/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率は、バリア性向上の観点から、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である。
また、レトルト後のバリア性向上の観点から、B/Aで示されるアミド結合の面積比率に対するD/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率は、好ましくは4.0以下であり、より好ましくは3.5以下、さらにより好ましくは3.0以下である。
ここで、ガスバリア性層103には、赤外線吸収スペクトルにおける未反応のカルボン酸のνC=Oに基づく吸収が1700cm-1付近にみられ、架橋構造であるアミド結合のνC=Oに基づく吸収が1630~1685cm-1付近にみられ、カルボン酸塩のνC=Oに基づく吸収が1540~1560cm-1付近にみられ、錯体を形成しているアンモニアのδN-Hに基づく吸収が1300~1490cm-1付近にみられる。
赤外線吸収スペクトルにおける1300cm-1以上1490cm-1以下の範囲における吸光度の最大ピーク高さαは、錯体を形成しているアンモニアの存在量の一つの指標を表し、1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲におけるの最大ピーク高さγは、遊離の、すなわち、未反応のカルボン酸の存在量の一つの指標を表していると考えられる。
本実施形態において、上記最大ピーク高さαおよびγは、具体的には以下の手順で測定できる。すなわち、ガスバリア性層103から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、そのガスバリア性層103の表面の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルにおいて、900cm-1の吸光度と1900cm-1の吸光度とを直線で結んだ線をベースラインとし、各吸光度の範囲における最大ピーク高さを求める。
また、赤外線吸収スペクトルにおける吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積Aは、カルボン酸とアミド結合とカルボン酸塩の合計量の一つの指標を表し、吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積Bは、アミド結合の存在量の一つの指標を表すと考えられる。さらに、吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積Cは、未反応のカルボン酸の存在量の一つの指標を表し、吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積Dは、カルボン酸塩の存在量の一つの指標を表していると考えられる。
本実施形態において、上記全ピーク面積A~Dは、具体的には以下の手順で測定できる。
まず、ガスバリア性層103から1cm×3cmの測定用サンプルを切り出す。次いで、そのガスバリア性層103の表面の赤外線吸収スペクトルを赤外線全反射測定(ATR法)により得る。得られた赤外線吸収スペクトルから、以下の手順(1)~(4)で上記全ピーク面積A~Dを算出する。
(1)1780cm-1と1493cm-1の吸光度を直線(N)で結び、吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸光スペクトルとNで囲まれる面積を全ピーク面積Aとする。
(2)1690cm-1の吸光度(Q)から垂直に直線(O)を下ろし、NとOの交差点をPとし、1598cm-1の吸光度(R)から垂直に直線(S)を下ろし、NとSの交差点をTとし、吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと直線S、点T、直線N、点P、直線O、吸光度Q、吸光度Rで囲まれる面積を全ピーク面積Bとする。
(3)吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度Q、直線O、点P、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Cとする。
(4)吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲の吸収スペクトルと吸光度R、直線S、点T、直線Nで囲まれる面積を全ピーク面積Dとする。
次いで、上記の方法で求めた面積から面積比B/A、C/A、D/Aを求める。
なお、本実施形態において、赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)は、たとえば、日本分光社製IRT-5200装置を用い、PKM-GE-S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm-1、積算回数100回の条件でおこなうことができる。
ガスバリア性層103の最大ピーク高さαおよびγ、ならびに、B/Aで示されるアミド結合の面積比率、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率およびD/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率は、ガスバリア性層103の製造条件を適切に調節することにより制御することが可能である。具体的には、ポリカルボン酸、ポリアミン化合物、多価金属化合物およびリン化合物の配合比率、硬化前の混合物の調製方法、混合物の加熱処理の方法・温度・時間等が、ガスバリア性層103の最大ピーク高さαおよびγ、ならびに、B/Aで示されるアミド結合の面積比率、C/Aで示されるカルボン酸の面積比率およびD/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率を制御するための因子として挙げられる。
次に、硬化前の混合物(ガスバリア用塗材)に含まれる成分について説明する。
(ポリカルボン酸)
ポリカルボン酸は、分子内に2個以上のカルボキシ基を有するものである。具体的には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸、3-ヘキセン酸、3-ヘキセン二酸等のα,β-不飽和カルボン酸の単独重合体またはこれらの共重合体が挙げられる。また、上記α,β-不飽和カルボン酸と、エチルエステル等のエステル類、エチレン等のオレフィン類等との共重合体であってもよい。
これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、桂皮酸の単独重合体またはこれらの共重合体が好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される1または2以上の重合体であることがより好ましく、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸から選択される少なくとも一種の重合体であることがさらに好ましくおよびアクリル酸の単独重合体、メタクリル酸の単独重合体から選択される少なくとも1つの重合体であることがさらにより好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の単独重合体、アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。アクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリアクリル酸は、重合体100質量%中に、アクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
また、本実施形態において、ポリメタクリル酸とは、メタクリル酸の単独重合体、メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の両方を含む。メタクリル酸と他のモノマーとの共重合体の場合、ポリメタクリル酸は、重合体100質量%中に、メタクリル酸由来の構成単位を、通常は90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは99質量%以上含む。
ポリカルボン酸はカルボン酸モノマーが重合した重合体である。ポリカルボン酸の分子量は、ガスバリア性および取扱い性のバランスに優れる観点から、500~2,500,000が好ましく、5,000~2,000,000がより好ましく、10,000~1,500,000がより好ましく、100,000~1,200,000がさらに好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリカルボン酸の分子量はポリエチレンオキサイド換算の重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
ポリカルボン酸は、揮発性塩基により少なくとも一部が中和されていてもよい。揮発性塩基でポリカルボン酸を中和することにより、多価金属化合物やポリアミン化合物とポリカルボン酸とを混合する際に、ゲル化が起こることを抑制することができる。したがって、ポリカルボン酸において、ゲル化防止の観点から揮発性塩基によってカルボキシ基の部分中和物または完全中和物とすることが好ましい。中和物は、ポリカルボン酸のカルボキシ基を揮発性塩基で部分的にまたは完全に中和する、すなわち、ポリカルボン酸のカルボキシ基を部分的または完全にカルボン酸塩とすることにより得ることができる。このことにより、ポリアミン化合物や多価金属化合物を添加する際、ゲル化を防止できる。
部分中和物は、ポリカルボン酸重合体の水溶液に揮発性塩基を添加することにより調製できるが、ポリカルボン酸と揮発性塩基の量比を調節することにより、所望の中和度とすることができる。本実施形態においてはポリカルボン酸の揮発性塩基による中和度は、ポリアミン化合物のアミノ基との中和反応に起因するゲル化を十分に抑制する観点から、70~300当量%が好ましく、90~250当量%がより好ましく、100~200当量%がさらに好ましい。
揮発性塩基としては、任意の水溶性塩基を用いることができる。
揮発性塩基としては、たとえば、アンモニア、モルホリン、アルキルアミン、2-ジメチルアミノエタノール、N-メチルモノホリン、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の三級アミンまたはこれらの水溶液、あるいはこれらの混合物が挙げられる。良好なガスバリア性を得る観点から、アンモニア水溶液が好ましい。
(ポリアミン化合物)
硬化前の混合物は、ポリアミン化合物を含む。ポリアミン化合物を含むことによって、得られるガスバリア性材料のバリア性を向上できる。
ポリアミン化合物は、主鎖あるいは側鎖あるいは末端にアミノ基を2つ以上有する化合物であり、好ましくはポリマーである。具体的には、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(トリメチレンイミン)等の脂肪族ポリアミン類;ポリリジン、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類;等が挙げられる。また、アミノ基の一部を変性したポリアミンでもよい。
良好なガスバリア性を得る観点から、ポリアミン化合物は好ましくはポリエチレンイミンを含み、より好ましくはポリエチレンイミンである。
ポリアミン化合物の数平均分子量は、ガスバリア性および取り扱い性のバランスに優れる観点から、50~2,000,000が好ましく、100~1,000,000がより好ましく、1,500~500,000がさらに好ましく、1,500~100,000がさらにより好ましく、1,500~50,000がさらにより好ましく、3,500~20,000がさらにより好ましく、5,000~15,000がさらにより好ましく、7,000~12,000がよりいっそう好ましい。
ここで、本実施形態において、ポリアミン化合物の分子量は沸点上昇法や粘度法を用いて測定することができる。
(混合物中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)/(混合物中のポリカルボン酸に含まれる-COO-基のモル数)は、レトルト処理後のガスバリア性能をより一層向上する観点から、好ましくは0.20以上であり、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.30以上、さらにより好ましくは0.35以上、よりいっそう好ましくは0.40以上である。
同様の観点から、(混合物中のポリアミン化合物に含まれるアミノ基のモル数)/(混合物中のポリカルボン酸に含まれる-COO-基のモル数)は、好ましくは0.90以下であり、より好ましくは0.85以下、さらに好ましくは0.80以下、さらにより好ましくは0.75以下、よりいっそう好ましくは0.70以下である。
かかる理由の詳細は、明らかではないが、ポリアミン化合物を構成するアミノ基によるアミド架橋と、ポリカルボン酸と多価金属との塩を構成する多価金属による金属架橋がバランスよく緻密な構造を形成することにより、レトルト処理後のガスバリア性能に優れたガスバリア性層103およびこれを有するガスバリア性積層体を得ることができると考えられる。
(多価金属化合物)
多価金属化合物は、具体的には周期表の2~13族に属する金属および金属化合物であり、さらに具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の2価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩若しくは亜硫酸塩等が挙げられる。耐水性や不純物等の観点から金属の酸化物もしくは金属水酸化物が好ましい。
多価金属化合物における2価以上の金属は、レトルト処理後のガスバリア性能をさらに向上する観点から、好ましくはZn、Ca、Mg、BaおよびAlからなる群から選択される1または2以上の金属であり、より好ましくはZnである。
同様の観点から、多価金属化合物は、好ましくはZn、Ca、Mg、BaおよびAlからなる群から選択される1または2以上の2価以上の金属の化合物であり、より好ましくはZnの化合物である。
同様の観点から、多価金属化合物は、好ましくは酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム等の酸化物および水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等の水酸化物からなる群から選択される1または2以上の化合物であり、より好ましくは酸化亜鉛および水酸化亜鉛の少なくとも1つであり、さらに好ましくは酸化亜鉛である。
本実施形態において、(混合物中の多価金属化合物のモル数)/(混合物中のポリカルボン酸に含まれる-COO-基のモル数)は、レトルト処理後のガスバリア性能をより一層向上する観点から、好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.13以上、さらに好ましくは0.15以上、さらにより好ましくは0.18以上である。
同様の観点から、(混合物中の多価金属化合物のモル数)/(混合物中のポリカルボン酸に含まれる-COO-基のモル数)は、好ましくは0.80以下であり、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.60以下、さらにより好ましくは0.55以下、よりいっそう好ましくは0.50以下である。
本実施形態において、(混合物中の多価金属化合物のモル数)/(混合物中のポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)は、レトルト処理後のガスバリア性能をより一層向上する観点から、好ましくは0.25以上であり、より好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.40以上である。
同様の観点から、(混合物中の多価金属化合物のモル数)/(混合物中のポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)は、好ましくは0.65以下であり、より好ましくは0.60以下、さらに好ましくは0.55以下である。
(リン化合物またはその塩)
リン化合物またはその塩におけるリン化合物は、分子構造中に1つ以上の-P-OH基を含む。リン化合物は塩として混合物に配合されてもよい。
レトルト処理後の水蒸気バリア性をさらに向上する観点から、リン化合物は、好ましくは2個以上の-P-OH基を含み、より好ましくは3個以上の-P-OH基を含む。また、ガスバリア塗材の液安定性向上の観点から、リン化合物中の-P-OH基の数は、たとえば2個以下であってもよい。
リン化合物の具体例として、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、これらの誘導体が挙げられる。
ポリリン酸は、具体的には、分子構造中に2以上のリン酸の縮合構造を有し、たとえば、二リン酸(ピロリン酸)、三リン酸、4つ以上のリン酸が縮合したポリリン酸などが挙げられる。
誘導体の具体例として、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉等の上述のリン化合物のエステル;
塩化物等のハロゲン化物;
十酸化四リン等の無水物;および
ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N',N'-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)等のリン原子に結合する水素原子がアルキル基に置換された構造を有する化合物が挙げられる。
バリア性および生産性のバランスをさらに向上する観点から、リン化合物は、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸およびこれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはリン酸および亜リン酸からなる群から選択される少なくとも1つである。
また、リン化合物の塩における塩の具体例として、ナトリウム、カリウム等の1価の金属の塩;アンモニウム塩が挙げられる。バリア性向上の観点から、リン化合物の塩は好ましくはアンモニウム塩である。
本実施形態において、(混合物中のリン化合物またはその塩由来のP原子のモル数)/(混合物中のポリカルボン酸由来の-COO-基のモル数)は、バリア性向上の観点から、たとえば0.0001以上であってもよく、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.005以上である。リン酸のように化学式中にP原子が1個含まれるリン化合物では、P原子のモル数とリン化合物のモル数は同じ意味になる。
また、バリア塗材(混合物)の液安定性向上の観点から、(混合物中のリン化合物またはその塩由来のP原子のモル数)/(混合物中のポリカルボン酸由来の-COO-基のモル数)は、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.08以下、さらにより好ましくは0.005以下である。
硬化前の混合物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。
たとえば、混合物は炭酸系アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。炭酸系アンモニウム塩は、多価金属化合物を、炭酸多価金属アンモニウム錯体の状態にして、多価金属化合物の溶解性を向上させ、多価金属化合物を含む均一な溶液を調製するために添加するものである。硬化前の混合物が炭酸系アンモニウム塩を含むことにより、多価金属化合物の溶解量を増やすことができ、その結果、多価金属化合物が配合された混合物をさらに均質なものとすることができる。
炭酸系アンモニウム塩として、たとえば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられ、揮発しやすく、得られるガスバリア性層に残存し難い点から、炭酸アンモニウムが好ましい。
(混合物中の炭酸系アンモニウム塩のモル数)/(混合物中の多価金属化合物のモル数)は、多価金属化合物の溶解性をより一層向上する観点から、0.05以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、0.25以上がさらに好ましく、0.50以上がさらにより好ましく、0.75以上がよりいっそう好ましい。
また、ガスバリア用塗材としての塗工性をより一層向上する観点から、(ガスバリア用塗材中の炭酸系アンモニウム塩のモル数)/(ガスバリア用塗材中の多価金属化合物のモル数)は、10.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.5以下がさらにより好ましい。
また、硬化前の混合物は、ガスバリア用塗材として塗布する際にはじきが発生するのを抑制する観点から、好ましくは界面活性剤をさらに含む。
界面活性剤の添加量は、混合物の固形分全体を100質量%としたとき、0.01~3質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。
界面活性剤としては、たとえば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、良好な塗工性を得る観点から、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類がより好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類がさらに好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等を挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル等を挙げることができる。
ソルビタン脂肪酸エステル類としては、たとえば、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、たとえば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、たとえば、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
硬化前の混合物は、上述の成分以外の添加剤を含んでもよい。たとえば、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加してよい。
また、硬化前の混合物の固形分濃度は、ガスバリア用塗材として塗工する際の塗工性を向上する観点から、0.5~15質量%とすることが好ましく、1~10質量%とすることがさらに好ましい。
(ガスバリア性層の製造方法)
ガスバリア性層103は、具体的には、硬化前の混合物(ガスバリア性用塗材)を塗工し、硬化することにより製造できる。
混合物は、以下のようにして得ることができる。
まず、ポリカルボン酸に、適宜揮発性塩基を加えることによりポリカルボン酸のカルボキシ基を完全にまたは部分的に中和する。さらに多価金属塩化合物および適宜炭酸系アンモニウム塩を混合して、揮発性塩基と中和した上記ポリカルボン酸のカルボキシ基の全部または一部、および揮発性塩基と中和しなかったポリカルボン酸のカルボキシ基において金属塩を形成する。
その後、さらにポリアミン化合物を添加し、最後にリン化合物またはその塩を添加することによって、硬化前の混合物が得られる。これにより、リン化合物と多価金属化合物またはポリアミンのアミノ基とにおいて塩が形成される。
このような手順でポリカルボン酸、多価金属塩化合物、リン化合物またはその塩、適宜炭酸系アンモニウム塩およびポリアミン化合物を混合することにより、凝集物の生成を抑制でき、より均一な混合物を得ることができる。これにより、ポリカルボン酸に含まれる-COO-基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進めることが可能となる。
より詳細には、以下の通りである。以下では、揮発性塩基および炭酸系アンモニウム塩を混合物中に配合する場合を例に説明する。
まず、ポリカルボン酸を構成するカルボキシ基の完全または部分中和溶液を調製する。
ポリカルボン酸に、揮発性塩基を添加して、ポリカルボン酸のカルボキシ基が完全中和または部分中和する。当該ポリカルボン酸のカルボキシ基を中和することにより、多価金属化合物やポリアミン化合物の添加時にポリカルボン酸を構成するカルボキシ基と、多価金属化合物やポリアミン化合物を構成するアミノ基とが反応することによって発生するゲル化を効果的に防止し、より均一な混合物を得ることができる。
次いで、多価金属塩化合物および炭酸系アンモニウム塩を添加、溶解させ、生成された多価金属イオンによりポリカルボン酸を構成する-COO-基との多価金属塩を形成する。このとき多価金属イオンと塩を形成する-COO-基は上記塩基と中和しなかったカルボキシ基および塩基によって中和された-COO-基の双方をいう。塩基と中和した-COO-基の場合は上記多価金属化合物由来の多価金属イオンが入れ替わって配位して-COO-基の多価金属塩を形成する。
そして、多価金属塩を形成した後、さらにポリアミン化合物、および、リン化合物またはその塩を添加することによって、混合物を得ることができる。このとき、-COO-基に配位した多価金属塩がリン化合物中の-P-O-基にも配位して、-COO-多価金属-O-P-構造が形成される。また、ポリアミン中の-NH2基とリン化合物中の-P-O-基との間にイオン結合が形成される。
このように製造された混合物をガスバリア用塗材として無機物層102または無機物層102上に形成されたガスバリア性層103との介在層上に塗布し、乾燥、硬化させることにより、ガスバリア性層103を形成する。このとき、ポリカルボン酸を構成する-COO-基の多価金属塩の多価金属が金属架橋を形成し、ポリアミンを構成するアミノ基によりアミド架橋を形成し、リン化合物中の-P-O-基と多価金属またはポリアミン中のアミノ基とのイオン架橋を形成して、優れたガスバリア性を有するガスバリア性層103が得られる。ガスバリア性層103のより詳細な製造方法については後述する。
乾燥、硬化後のガスバリア性層103の厚みは、バリア性向上の観点から、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上である。
また、ガスバリア性積層体全体の薄型化の観点から、乾燥、硬化後のガスバリア性層103の厚みは、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。
(基材層)
基材層101は、単層であっても、2種以上の層であってもよい。基材層101の形状は、限定されないが、たとえば、シートまたはフィルム形状、トレー、カップ、中空体等の形状が挙げられる。
基材層101の材料としては、基材層101上に無機物層102を安定的に形成でき、また、無機物層102の上部にガスバリア用塗材の溶液を塗工できるものであれば、限定されず、用いることができる。基材層101の材料として、たとえば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂や紙等の有機質材料;ガラス、陶、セラミック、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、セメント、アルミニウム、酸化アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等の金属等の無機質材料;有機質材料同士または有機質材料と無機質材料との組み合せからなる多層構造の基材層等が挙げられる。これらの中でも、たとえば、包装材料やパネル等の各種フィルム用途の場合、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を用いたプラスチックフィルム、または、紙等の有機質材料が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、公知の熱硬化性樹脂を用いることができる。たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ユリア・メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。たとえば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
これらの中でも、透明性を良好にする観点では、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1または2以上の樹脂が好ましい。
また、耐ピンホール性、耐破れ性および耐熱性等に優れる観点では、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1または2以上の樹脂が好ましい。同様の観点から、基材層101は、好ましくはポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1または2以上の樹脂を含む層であり、より好ましくはこれら1または2以上の樹脂の層である。
また、基材層101にポリアミド等の吸湿性のある材料を用いた場合、ガスバリア性積層体において、基材層101が水分を吸収して膨潤し、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能、酸性の内容物を充填した際のガスバリア性能等が低下しやすいが、本実施形態においては、基材層101として、吸湿性のある材料を用いた場合でも、ガスバリア性積層体の高湿度下でのガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能の低下を好適に抑制することができる。
また、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂により形成されたフィルムを少なくとも一方向、好ましくは二軸方向に延伸して基材層101としてもよい。
透明性、剛性および耐熱性に優れる観点から、基材層101は、好ましくはポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミドおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1または2以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムであり、より好ましくはポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1または2以上の熱可塑性樹脂により形成された二軸延伸フィルムである。
また、基材層101の表面に、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニアルコール共重合体、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等がコーティングされていてもよい。
さらに、基材層101はガスバリア性層103との接着性を改良するために、表面処理が施されたものであってもよい。具体的には、基材層101のガスバリア性層103との対向面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマーコート処理等の表面活性化処理をおこなってもよい。
基材層101の厚さは、良好なフィルム特性を得る観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは1000μm以下であり、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは300μm以下である。
(無機物層)
無機物層102を構成する無機物は、たとえば、バリア性を有する薄膜を形成できる金属、金属酸化物、金属窒化物、金属弗化物、金属酸窒化物等が挙げられる。
無機物層102を構成する無機物としては、たとえば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の周期表2A族元素;チタン、ジルコニウム、ルテニウム、ハフニウム、タンタル等の周期表遷移元素;亜鉛等の周期表2B族元素;アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等の周期表3A族元素;ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表4A族元素;セレン、テルル等の周期表6A族元素等の単体、酸化物、窒化物、弗化物、または酸窒化物等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
なお、本実施形態では、無機物層102についての周期表の族名は旧CAS式で示している。
さらに、上記無機物の中でも、バリア性、コスト等のバランスに優れていることから、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される1または2以上の無機物が好ましく、酸化アルミニウムがより好ましい。
なお、酸化ケイ素には、二酸化ケイ素の他、一酸化ケイ素、亜酸化ケイ素が含有されていてもよい。
無機物層102は上記無機物により形成されている。無機物層102は、バリア性、コスト等のバランスに優れていることから、好ましくは酸化アルミニウムにより構成された酸化アルミニウム層を含む。
無機物層102は単層の無機物層から構成されていてもよいし、複数の無機物層から構成されていてもよい。また、無機物層102が複数の無機物層から構成されている場合には同一種類の無機物層から構成されていてもよいし、異なった種類の無機物層から構成されていてもよい。
無機物層102の厚さは、バリア性向上および取り扱い性向上のバランスの観点から、通常1nm以上であり、好ましくは4nm以上であり、また、通常1000nm以下であり、好ましくは500nm以下である。
ここで、無機物層102の厚さは、たとえば透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡による観察画像により求めることができる。
無機物層102の形成方法は限定されず、たとえば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、プラズマCVD法、ゾルゲル法等により基材層101の片面または両面に無機物層102を形成することができる。中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法等の減圧下での製膜が望ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素等の珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機物層102の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。これらの結合反応を迅速におこなうには、その無機原子や化合物が化学的に活性な分子種もしくは原子種であることが望ましい。
また、ガスバリア性積層体のバリア性と生産性とのバランスを向上する観点から、無機物層102は好ましくは蒸着膜である。
無機物層102は、ガスバリア性積層体のバリア性と生産性とのバランスを向上する観点から、基材層101上に、あるいは、基材層101と無機物層102との間に介在層を有する場合にはかかる介在層上に設けられた蒸着膜であって、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される1または2以上の無機物により構成される。
(アンダーコート層)
基材層101と無機物層102との間にはアンダーコート層104が設けられてもよく(図2)、アンダーコート層104を設けることによりこれらの接着性をさらに向上することができ、また、レトルト処理後におけるバリア性をさらに向上することができる。
基材層101と無機物層102との接着性向上の観点から、アンダーコート層104の材料としては、たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オキサゾリン樹脂、(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、各種ポリウレタン樹脂、ポリウレタンポリ尿素樹脂およびそれらのプレポリマー等が例示できる。このようなウレタン樹脂の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート等のジイソシアネート成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコール等のジオール成分との反応物;末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、アミノ化合物、アミノスルホン酸塩、ポリヒドロキシカルボン酸、重亜硫酸等との反応物;等を挙げることができる。
また、レトルト処理後におけるバリア性および基材層101と無機物層102との間の接着性をさらに良好にする観点から、アンダーコート層104において、ポリウレタン樹脂が、芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン樹脂により構成されていることも好ましい。芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン系樹脂は、たとえば、ポリオールと有機ポリイソシアネートと鎖伸長剤との反応により水分散型ポリウレタン樹脂として得ることができる。これにより、ポリウレタン系樹脂の主鎖に芳香族環構造を導入することができる。
芳香族環構造を主鎖に有するポリウレタン樹脂として、さらに具体的には、特開2018-171827号公報に記載のものを用いることができる。
また、上述の水分散型ポリウレタン樹脂には、耐熱性、耐水性、および耐加水分解性等を向上する観点から、架橋剤を併用してもよい。架橋剤は、水分散型ポリウレタン樹脂に対し、第3成分として添加する外部架橋剤でもよく、また水分散型ポリウレタン樹脂の分子構造内に予め架橋構造となる反応点を導入する内部架橋剤でもよい。
架橋剤としては、イソシアネート基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、エポキシ基、メラミン樹脂、およびシラノール基等を有する化合物を好適に用いることができ、カルボジイミド基を有する化合物がさらに好適である。また、カルボジイミド基を有する化合物を架橋剤として用いる場合、カルボジイミド基を有する化合物の添加量は、ポリウレタン樹脂中のカルボキシ基1.0molに対し、カルボジイミド基が好ましくは0.1~3.0mol、さらに好ましくは0.2~2.0mol、さらにより好ましくは0.3~1.0molとなるような量である。
アンダーコート層104に用いられるポリエステル樹脂としては、各種ポリエステル樹脂およびそれらの変性物が例示できる。このようなポリエステル樹脂の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、2-スルホイソフタル酸、5-スルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ドデカン二酸等の多価カルボン酸成分と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール等のジオール成分との反応物が挙げられ、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等による変性物も含まれる。
アンダーコート層104にオキサゾリン樹脂を使用する場合、アンダーコート層104は、オキサゾリン基含有水性ポリマー、水性(メタ)アクリル樹脂および水性ポリエステル樹脂を含むオキサゾリン系樹脂組成物により構成されていることが好ましい。
オキサゾリン系樹脂組成物は、たとえば、オキサゾリン基含有量が6.0~9.0mmol/gであるオキサゾリン基含有水性ポリマー、カルボキシ基含有量が0.5~3.5mmol/gである水性(メタ)アクリル樹脂およびカルボキシ基含有量が0.5~2.0mmol/gである水性ポリエステル樹脂により構成されている。
また、オキサゾリン系樹脂組成物は、オキサゾリン基含有水性ポリマー、水性(メタ)アクリル樹脂および水性ポリエステル樹脂の合計量を100質量%として、たとえば、オキサゾリン基含有水性ポリマーを10~55質量%、水性(メタ)アクリル樹脂を10~80質量%、水性ポリエステル樹脂を10~80質量%含有する。
また、オキサゾリン系樹脂組成物においては、たとえば、オキサゾリン基のモル数とカルボキシ基のモル数の比率〔オキサゾリン基のモル数(xmmol)とカルボキシ基のモル数(ymmol)の比(x/y)×100[mol%]で示される。〕が150~420mol%である。
アンダーコート層104に用いられるオキサゾリン樹脂として、さらに具体的には、国際公開第2016/186074号に記載のものを用いることができる。
アンダーコート層104の厚さは、良好な接着性を得る観点から、好ましくは0.001μm以上であり、より好ましくは0.005μm以上、さらに好ましくは0.01μm以上、さらにより好ましくは0.05μm以上、よりいっそう好ましくは0.1μm以上、さらにまた好ましくは0.2μm以上である。
また、経済的であるという観点からアンダーコート層104の厚さは、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.6μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下であり、また、たとえば0.1μm以下、またはたとえば0.05μm以下であってもよい。
(接着剤層)
ガスバリア性積層体には、接着剤層がさらに設けられてもよい。なお、接着剤層からアンダーコート層104は除かれる。
接着剤層は、たとえば、ガスバリア性層103とガスバリア性層103の上層との間に設けられる。また、上記上層が複数の層から形成されるとき、複数の層の間に接着層が設けられていてもよい。ここで、ガスバリア性層103の上層とは、ガスバリア性層103の無機物層102と対向面との反対側の面に積層される層をいう。
接着剤層は、公知の接着剤を含むものであればよい。接着剤としては、有機チタン樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性シリコーン樹脂およびアルキルチタネート、ポリエステルポリブタジエン等から組成されているラミネート接着剤、または一液型、二液型のポリオールと多価イソシアネート、水系ウレタン、アイオノマー等が挙げられる。または、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を主原料とした水性接着剤を用いてもよい。
また、ガスバリア性積層体100の用途に応じて、接着剤に硬化剤、シランカップリング剤等の他の添加物を添加してもよい。ガスバリア性積層体の用途が、レトルト等の熱水処理に用いられるものである場合、耐熱性や耐水性の観点から、ポリウレタン接着剤に代表されるドライラミネート用接着剤が好ましく、溶剤系の二液硬化タイプのポリウレタン接着剤がより好ましい。
(ガスバリア性積層体の製造方法)
本実施形態において、ガスバリア性積層体100の製造方法は、たとえば、基材層101を準備する工程と、基材層101上に無機物層102を形成する工程と、無機物層102が形成された基材層101の上部にガスバリア性層103を形成する工程と、を含む。また、無機物層102を形成する工程の後、ガスバリア性層103を形成する工程の前に、無機物層102上にアンダーコート層104を形成する工程をさらに含んでもよい。
基材層101上に無機物層102を形成する工程には、たとえば前述の無機物層102の形成方法を用いることができる。
ガスバリア性層103を形成する工程は、たとえば、硬化前の混合物をガスバリア用塗材として無機物層102に塗工し、次いで、乾燥することにより塗工層を得る工程と、上記塗工層を加熱し、ポリカルボン酸に含まれるカルボキシ基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基とを脱水縮合反応させることにより、アミド結合を有するガスバリア性層103を形成する工程と、を含む。
ガスバリア用塗材を無機物層102に塗布する方法は、限定されず、通常の方法を用いることができる。たとえば、メイヤーバーコーター、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター等、公知の塗工機を用いて塗工する方法が挙げられる。
塗工量(ウエット厚み)は、得られるガスバリア性積層体のバリア性能をより良好なものとする観点から、好ましくは0.05μmであり、より好ましくは1μm以上である。
また、得られるガスバリア性積層体がカールすることを抑制する観点、および、ポリカルボン酸に含まれる-COO-基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応をより効果的に進める観点から、ウェット厚みは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
乾燥および熱処理は、乾燥後、熱処理をおこなってもよいし、乾燥と熱処理を同時におこなってもよい。
乾燥、加熱処理する方法は、本発明の効果が得られるものであれば限定されず、ガスバリア用塗材を硬化させられるもの、硬化したガスバリア用塗材を加熱できる方法であればよい。たとえば、オーブン、ドライヤー等の対流伝熱によるもの、加熱ロール等の伝導伝熱によるもの、赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いる輻射伝熱によるもの、マイクロ波等内部発熱によるものが挙げられる。乾燥、加熱処理に使用する装置としては製造効率の観点から乾燥と加熱処理の双方をおこなえる装置が好ましい。その中でも具体的には乾燥、加熱、アニーリング等の種々の用途に利用できるという観点から熱風オーブンを用いることが好ましく、また、フィルムへの熱伝導効率に優れているという観点から加熱ロールを用いることが好ましい。また、乾燥、加熱処理に使用する方法を適宜組み合わせてもよい。具体的には、熱風オーブンと加熱ロールを併用してもよく、たとえば、熱風オーブンでガスバリア用塗材を乾燥後、加熱ロールで加熱処理をおこなえば、加熱処理工程が短時間となり製造効率の観点から好ましい。また、熱風オーブンのみで乾燥と加熱処理をおこなうことが好ましい。
加熱処理条件については、たとえば、加熱処理温度が80~250℃、加熱処理時間が1秒~10分であり、好ましくは、加熱処理温度が120~240℃、加熱処理時間が1秒~1分、より好ましくは、加熱処理温度が170℃~230℃、加熱処理時間が1秒~30秒、さらに好ましくは、加熱処理温度が200℃~220℃、加熱処理時間が1秒~10秒である。さらに、上述したように加熱ロールを併用することで短時間での加熱処理が可能となる。
なお、ポリカルボン酸に含まれる-COO-基とポリアミン化合物に含まれるアミノ基との脱水縮合反応を効果的に進める観点から、加熱処理温度および加熱処理時間はガスバリア用塗材のウエット厚みに応じて調整することが重要である。適切な加熱処理温度および加熱処理時間を選択することで、適切な架橋構造が形成される。
ガスバリア用塗材が乾燥、熱処理されることにより、ポリカルボン酸のカルボキシ基がポリアミンや多価金属化合物と反応し、共有結合およびイオン架橋されることにより、レトルト処理後においても良好なガスバリア性を有するガスバリア性層103が形成される。
本実施形態において、ガスバリア性積層体は、ガスバリア性能に優れており、たとえば、包装材料、中でも高いガスバリア性が要求される内容物の食品包装材料を始め、医療用途、工業用途、日常雑貨用途等さまざまな包装材料として好適に使用し得る。
また、本実施形態におけるガスバリア性積層体は、たとえば、高いバリア性能が要求される、真空断熱用フィルム;エレクトロルミネセンス素子、太陽電池等を封止するための封止用フィルム;等として好適に使用することができる。
本実施形態において、ガスバリア性積層体を含んで構成される積層構造の具体例を以下に示す。
(積層構造例1)基材層101(PET基材)/無機物層102(アルミナ蒸着層)/ガスバリア性層103/接着剤層/ポリオレフィン層
(積層構造例2)基材層101(PET基材)/アンダーコート層104/無機物層102(アルミナ蒸着層)/ガスバリア性層103/接着剤層/ポリオレフィン層
(積層構造例3)基材層101(PET基材)/無機物層102(アルミナ蒸着層)/ガスバリア性層103/接着剤層/ポリアミド層/接着剤層/ポリオレフィン層
(積層構造例4)基材層101(PET基材)/アンダーコート層104/無機物層102(アルミナ蒸着層)/ガスバリア性層103/接着剤層/ポリアミド層/接着剤層/ポリオレフィン層
ここで、積層構造中に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ(1-ブテン)等のポリオレフィンにより構成されるポリオレフィン層を含むことにより、ガスバリア性積層体において、耐ピンホール性、耐破れ性および耐熱性等を良好にしながら、高湿度下のガスバリア性能やレトルト処理後のガスバリア性能の低下をより一層抑制することができる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ガスバリア用塗材の作製
ポリアクリル酸(東亜合成社製、製品名:AC-10H、重量平均分子量:800,000)のカルボキシ基に対して10%アンモニア水(和光純薬工業社製)のアンモニアが150当量%になるよう添加、更に精製水を添加して濃度が7.29質量%のポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
次いで、得られたポリアクリル酸アンモニウム水溶液に、酸化亜鉛(関東化学社製)および炭酸アンモニウムを添加して混合、撹拌して混合液(A)を作製した。ここで、酸化亜鉛の添加量は、(ガスバリア用塗材中の酸化亜鉛のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる-COO-基のモル数)が表1におけるZnO/PAAの欄に示す値になる量とした。また、炭酸アンモニウムは、(ガスバリア用塗材中の炭酸系アンモニウム塩のモル数)/(ガスバリア用塗材中の酸化亜鉛のモル数)が1.0になる量とした。
次いで、ポリエチレンイミン(日本触媒社製、製品名:SP-200、数平均分子量:10,000)に精製水を添加して10%溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
また、リン酸水素二アンモニウム(関東化学社製(NH42HPO4)に精製水を添加して10%水溶液を調製した。
次に、上記混合液(A)、上記ポリエチレンイミン水溶液および上記リン酸水素二アンモニウム溶液を、(ガスバリア用塗材中のポリエチレンイミンに含まれるアミノ基のモル数)/(ガスバリア用塗材中のポリアクリル酸に含まれる-COO-基のモル数)が表1におけるPEI/PAAの欄に示す値、および、((NH42HPO4のモル数)/(ポリアクリル酸に含まれる-COO-基のモル数)が表1における酸化合物/PAAの欄の添加量に示す値になる割合で混合して混合液(B)を調製した。
さらに、上記混合液(B)の固形分濃度が1.5%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌したのちに、活性剤(花王社製、商品名:エマルゲン120)を混合液(B)の固形分に対して0.3質量%となるように混合し、ガスバリア用塗材を調製した。
(2)ガスバリア性積層体の作製
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(ユニチカ社製、PET12)を基材とし、この片面(コロナ処理面)に以下の組成の樹脂組成物をメイヤーバーにて塗布して乾燥することにより、乾燥後の厚みが0.20μmのアンダーコート(UC)層を形成した。
(組成)
主剤:ポリウレタン樹脂水分散液(三井化学社製、製品名:タケラックWS-4033、芳香族ポリエステル型ポリウレタン樹脂)
架橋剤:カルボジイミド基を有する化合物(日清紡ケミカル社製、製品名:カルボジライトSV-02)
配合比:主剤中のポリウレタン樹脂のカルボキシ基1.0molに対し、架橋剤中のカルボジイミド基が0.4molとなるように、主剤に架橋剤を配合した。
次に、アンダーコート層上に、以下の方法でアルミナ蒸着層を形成した。
UC層上に高周波誘導加熱方式により、アルミニウムを加熱蒸発させ、酸素を導入しながら蒸着することで、厚さ7nmの酸化アルミニウム膜を形成させた。これにより酸化アルミニウム蒸着PETフィルムを得た。この酸化アルミニウム蒸着PETフィルムの水蒸気透過度は1.5g/(m2・24h)であった。
そして、蒸着層の上に、手順(1)で得られたガスバリア用塗材を、メイヤバーにて乾燥後の塗工量が0.2μmになるように塗布し、熱風乾燥器を使用して、表1における熱処理の欄に示す条件で熱処理をして、ガスバリア性積層体を得た。作製条件の一覧を表1に示す。
(3)ガスバリア性層の分析
また、上記手順(2)で得られたガスバリア性積層体のガスバリア性層に対して、次に示すATR法による赤外線吸収スペクトル分析を行った。
赤外線吸収スペクトルの測定(赤外線全反射測定:ATR法)には日本分光社製IRT-5200装置を用い、PKM-GE-S(Germanium)結晶を装着して入射角度45度、室温、分解能4cm-1、積算回数100回の条件で測定した。得られた吸収スペクトを前述した方法で解析し、最大ピークαおよびγを求めるとともに、全ピーク面積A~Dを算出した。そして、全ピーク面積A~Dから面積比B/A、C/A、D/Aを求めた。
ATR法による赤外線吸収スペクトル分析結果を表2に示す。
(4)2層ラミネート構造体の作製
厚さ70μmの無延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ社製、商品名:RXC-22)のコロナ放電処理面に接着剤を塗工し、上記手順(2)で得られたガスバリア性積層体のガスバリア性面(ガスバリア性層の側の面、以下同じ。)と張り合わせ、2層ラミネート構造のラミネート構造体を作製した。接着剤は、三井化学社製、商品名:タケラックA525S):9質量部、イソシアネート系硬化剤(三井化学社製、商品名:タケネートA50):1質量部および酢酸エチル:7.5質量部を配合したものを用いた。
(5)3層ラミネート構造体の作製
まず、厚さ60μmの無延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ社製、商品名:RXC-22)のコロナ放電処理面に接着剤を塗工し、厚さ15μmのナイロンフィルム(ユニチカ社製、商品名:(エンブレムONBC)を張り合わせた積層体を用意した。
上記積層体のナイロンフィルム面に接着剤を塗工し、上記手順(2)で得られたガスバリア性積層体のガスバリア性面と張り合わせ、3層ラミネート構造のラミネート構造体を作製した。使用した接着剤は、上記手順(4)と同様である。
(6)レトルト処理後のガスバリア性評価
手順(4)及び手順(5)で得られたラミネート構造体を無延伸ポリプロピレンが内面になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を70mL入れ、もう一方をヒートシールにより袋を作製し、これを高温高圧レトルト殺菌装置で130℃で30分レトルト処理を行った。レトルト処理後、内容物の水を抜き、シール部を除いてレトルト処理後(水充填)のフィルムを得た。
上記の方法で得られたレトルト処理後のフィルムの酸素透過率[ml/(m2・day・MPa)]を、モコン社製OX-TRAN2/21を用いて、JIS K 7126に準じ、20℃90%RHの条件で測定した。
また、上述の方法で得られたレトルト処理後のフィルムを無延伸ポリプロピレンが内面になるように重ねてラミネート構造体を折り返し、2方をヒートシールし、袋状にした後、内容物として塩化カルシウムを入れ、もう1方をヒートシールにより表面積が0.01m2となるように袋を作製し、40℃、90%RHの条件で300時間放置し、放置前後の重量変化により、水蒸気透過率[g/(m2・day)]を測定した。
レトルト処理後のガスバリア性評価結果を表3に示す。
(実施例2~8)
各実施例について、原料の配合および作製条件を表1に示す数値にそれぞれ変えたこと以外は実施例1に準じてガスバリア性積層体および各ラミネート構造体を得た。
実施例1に準じて、得られたガスバリア積層体のガスバリア性層に対して行った分析の結果を表2に併せて示す。また、レトルト処理後のガスバリア性評価結果を表3に併せて示す。
(比較例1)
酸化亜鉛および炭酸アンモニウムを使用しないこと、および、リン酸水素二アンモニウム溶液を使用しないこと以外は実施例1に準じてガスバリア性積層体および3層ラミネート構造体を得た。
実施例1に準じて、得られたガスバリア積層体のガスバリア性層に対して行った分析の結果を表2に併せて示す。また、レトルト処理後のガスバリア性評価結果を表3に併せて示す。
(実施例9)
(1)ガスバリア用塗材の作製
ポリアクリル酸(PAA)水溶液(東亜合成社製、製品名:AC-10H、重量平均分子量:800,000)を精製水で希釈し、PAAの濃度10%の水溶液を作製し、カルボキシ基に対して1.5molのアンモニアになるよう10%のアンモニア水を添加し、PAAの濃度が7.38%のポリアクリル酸アンモニウム水溶液を得た。
次いで、得られたポリアクリル酸アンモニウム水溶液に、酸化亜鉛(ZnO:関東化学社製)および炭酸アンモニウム(関東化学社製)を添加して混合、撹拌した。ここで、酸化亜鉛の添加量は、(酸化亜鉛)/(PAAのカルボキシ基)がmol比で0.3となる量とした。また、炭酸アンモニウムは、PAAのカルボキシ基に対してmol比で0.3となる量とした。このようにして、混合液(A)を作製した。
次いで、ポリエチレンイミン(PEI:日本触媒社製、製品名:SP-200、数平均分子量:10,000)に精製水を添加してPEIの濃度10%の水溶液にしたポリエチレンイミン水溶液を得た。
次に、上記混合液(A)と上記ポリエチレンイミン水溶液とを、(PEIの窒素)/(PAAのカルボキシ基)がmol比で0.55となる割合で混合して、混合液(B)を調製した。
さらに、上記混合液(B)をPAA+ZnO+PEIの固形分濃度が2%になるように精製水を添加し、均一溶液になるまで撹拌した。さらに、リン酸水素二アンモニウム(関東化学社製、(NH42HPO4)がPAAのカルボキシ基1molに対して1×10-3molとなるように固形分濃度2%のリン酸水素二アンモニウム水溶液を添加・撹拌した後、活性剤(花王社製、商品名:エマルゲン120)をPAA+ZnO+PEIの固形分に対して0.3質量%となるように固形分濃度1%の活性剤水溶液を混合し、ガスバリア用塗材を調製した。
(2)ガスバリア性積層体の作製
無機物層として酸化アルミニウムを基材層の12μmPETフィルムに蒸着した透明蒸着フィルム(三井化学東セロ社製、型番:TL-PET-H)をガラス板に張り付け、アプリケータにて乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように、手順(1)で得られたガスバリア用塗材を塗布し、ガラス板ごと120℃で5分熱風乾燥器にて乾燥した。乾燥したフィルムの両端を固定してフィルムを中空状態としたうえで、150℃で時間1分の条件で熱風乾燥器にて熱処理を行い、透明蒸着フィルム上にガスバリア性層を形成してガスバリア性積層体を作製した。
ガスバリア性層の作製条件を表1に示す。
(3)ガスバリア性層の分析
上記手順(2)で得られたガスバリア積層体のガスバリア性層に対して、実施例1の手順(3)と同様の分析を行った。分析の結果を表2に併せて示す。
(4)2層ラミネート構造のガスバリア性積層体の作製
上記手順(2)で得られたガスバリア積層体のガスバリア性層を用い、実施例1の手順(4)と同様に2層ラミネート構造体を作製した。
(5)3層ラミネート構造のガスバリア性積層体の作製
上記手順(2)で得られたガスバリア積層体のガスバリア性層を用い、実施例1の手順(5)と同様に3層ラミネート構造体を作製した。
(6)レトルト処理後のガスバリア性評価
上記手順(4)及び手順(5)で得られたラミネート構造体に対して、実施例1の手順(6)と同様にレトルト処理後のガスバリア性評価を行った。結果を表6に併せて示す。
(実施例10)
リン酸水素二アンモニウムの濃度をポリアクリル酸のカルボキシ基1molに対し、0.01molにしたこと以外は実施例9に準じてガスバリア性積層体および各ラミネート構造体を作製した。作製条件を表3に併せて示す。
実施例9に準じて、得られたガスバリア積層体のガスバリア性層に対して行った分析の結果を表2に併せて示す。また、レトルト処理後のガスバリア性評価結果を表3に併せて示す。
(実施例11)
リン酸水素二アンモニウムの濃度をポリアクリル酸のカルボキシ基1molに対し、0.03molにしたこと以外は実施例9に準じてガスバリア性積層体および各ラミネート構造体を作製した。作製条件を表1に併せて示す。
実施例9に準じて、得られたガスバリア積層体のガスバリア性層に対して行った分析の結果を表2に併せて示す。また、レトルト処理後のガスバリア性評価結果を表3に併せて示す。
Figure 2022090977000002
Figure 2022090977000003
Figure 2022090977000004
表1~表3より、各実施例においては、2層ラミネート積層体および3層ラミネート積層体のいずれとする場合にも、レトルト処理後のバリア性に優れる積層体を生産性良く得ることができた。
10 ガスバリア性フィルム
100 ガスバリア性積層体
101 基材層
102 無機物層
103 ガスバリア性層
104 アンダーコート層
110 ガスバリア性積層体

Claims (14)

  1. 基材層と、
    前記基材層の少なくとも一方の面に設けられたガスバリア性層と、
    前記基材層と前記ガスバリア性層との間に設けられた、無機物層と、
    を含み、
    前記ガスバリア性層が、ポリカルボン酸と、ポリアミン化合物と、多価金属化合物と、1つ以上の-P-OH基を含むリン化合物またはその塩と、を含む混合物の硬化物により構成される、ガスバリア性積層体。
  2. 前記基材層と前記無機物層との間に設けられたアンダーコート層をさらに含む、請求項1に記載のガスバリア性積層体。
  3. 前記無機物層が、前記基材層上に、あるいは、前記基材層と前記無機物層との間に介在層を有する場合には前記介在層上に設けられた蒸着膜であって、酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよびアルミニウムからなる群から選択される1または2以上の無機物により構成される、請求項1または2に記載のガスバリア性積層体。
  4. 前記ガスバリア性層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
    1300cm-1以上1490cm-1以下の範囲における吸光度の最大ピーク高さをαとし、
    1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における吸光度の最大ピーク高さをγとしたとき、
    γ/αで表されるNH3錯体に対する遊離カルボキシ基の割合が、0.00以上1.00以下である、請求項1乃至3いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  5. 前記ガスバリア性層の赤外線吸収スペクトルにおいて、
    吸収帯1493cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をAとし、
    吸収帯1598cm-1以上1690cm-1以下の範囲における全ピーク面積をBとし、
    吸収帯1690cm-1以上1780cm-1以下の範囲における全ピーク面積をCとし、
    吸収帯1493cm-1以上1598cm-1以下の範囲における全ピーク面積をDとしたとき、
    B/Aで示されるアミド結合の面積比率が0.200以上0.370以下であり、
    C/Aで示されるカルボン酸の面積比率が0.150以下であり、
    D/Aで示されるカルボン酸塩の面積比率が0.580以上0.800以下である、請求項1乃至4いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  6. 前記ガスバリア性層の厚みが0.01μm以上15μm以下である、請求項1乃至5いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  7. 前記多価金属化合物が、Zn、Ca、Mg、BaおよびAlからなる群から選択される1または2以上の2価以上の金属の化合物である、請求項1乃至6いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  8. (前記混合物中の前記リン化合物またはその塩由来のP原子のモル数)/(前記混合物中の前記ポリカルボン酸由来の-COO-基のモル数)が0.001以上0.3以下である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  9. 前記リン化合物が、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸およびこれらの塩からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1乃至8いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  10. (前記混合物中の前記多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(前記混合物中の前記ポリカルボン酸由来の-COO-基のモル数)が、0.10以上0.80以下である、請求項1乃至9いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  11. (前記混合物中の前記多価金属化合物由来の多価金属のモル数)/(前記混合物中の前記ポリアミン化合物由来のアミノ基のモル数)が0.25以上0.65以下である、請求項1乃至10いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  12. 前記ポリカルボン酸が、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、アクリル酸とメタクリル酸との共重合体からなる群から選択される1または2以上の重合体を含む、請求項1乃至11いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  13. 前記ポリアミン化合物がポリエチレンイミンを含む、請求項1乃至12いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
  14. 前記基材層が、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートからなる群から選択される1または2以上の樹脂を含む、請求項1乃至13いずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
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