JP2021105533A - 部分放電検出装置および部分放電検出方法 - Google Patents

部分放電検出装置および部分放電検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造コストおよび検査コストの低減を図りつつ、一連の検査処理を短時間で容易に実施可能とする。【解決手段】検出対象Xの巻線Cにおける両端間に試験電圧を印加するインパルス電源11と、インパルス電源11から巻線Cに対して印加された試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定する電圧検出部12と、電圧検出部12によって測定された各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する処理部(データ処理装置3)を備え、インパルス電源11は、ピーク電圧が相違する複数種類のサージ電圧を試験電圧として巻線Cに対して印加し、処理部は、各信号波形の各測定値を対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。【選択図】図1

Description

本発明は、検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加しつつその電圧値を測定すると共に測定値の信号波形に放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出装置および部分放電検出方法に関するものである。
例えば、電力用外鉄型変圧器などの電気機器を対象として、部分放電が発生する状態であるか否か(絶縁状態が良好であるか否か)を判定可能な判定システムおよび判定方法として、部分放電判定システム(部分放電判定装置)およびその判定方法の発明が下記の特許文献に開示されている。具体的には、下記特許文献に開示の判定システム(判定装置)は、対象の電気機器に対してインパルス電圧を印加するインパルス電圧発生装置と、機器内部を伝搬する弾性波信号を検出するための音響センサと、音響センサからの出力信号に基づいて電気機器において部分放電が発生したか否かを判定する部分放電判定装置とを備えている。
この場合、検査対象の電気機器にインパルス電圧を印加した際に部分放電が発生したときには、発生した部分放電の大きさに応じた弾性波信号が発生する。したがって、音響センサの出力信号を解析して弾性波信号の有無を特定することで、部分放電が発生したか否かを検査することが可能となる。しかしながら、変圧器などの電気機器に対してインパルス電圧を印加したときには、機器内部の静電容量を介して瞬間的に充電電流が流れる。この際には、充電電流が流れることで各巻線間に物理的な力が発生して機械的振動が生じ、変圧器タンク内を充填する絶縁油に弾性波が伝播する。この結果、部分放電の有無に拘わらず、上記の機械的振動が音響センサによって検出されるため、部分放電の発生に起因する弾性波信号を正確に検出するのが困難となる。
したがって、下記特許文献に開示の判定システム(判定装置)およびその判定方法では、インパルス電圧の印加時に部分放電が発生したか否かを音響センサを用いて判定する際に、部分放電が発生しない低電圧印加時に現れる機械的振動成分波形を利用して部分放電が発生し得る高電圧印加時の機械的振動成分を除去することによって、部分放電信号のみを抽出する構成、方法が採用されている。これにより、静電容量を介して充電電流が流れることで検出される機械的振動成分波形の影響を受けることなく、部分放電が発生したか否かを検査することが可能となっている。
特許第6045757号公報(第5−16頁、第1−13図)
ところが、上記の特許文献に開示の判定システム(判定装置)およびその判定方法には、以下のような問題点が存在する。具体的には、上記特許文献に開示の判定システム(判定装置)およびその判定方法では、部分放電の発生に伴う弾性波信号が音響センサによって検出されるか否かに基づいて対象の電気機器の絶縁状態を検査する構成および方法が採用されている。この場合、部分放電が発生したときに生じる弾性波信号は非常に小さな信号であるため、この弾性波信号を確実に検出するためには、高精度な音響センサが必要となる。したがって、上記の特許文献に開示の判定システム(判定装置)およびその判定方法には、高価な音響センサを要することで製造コストおよび検査コストの低減が困難となっているという問題点がある。
また、上記の特許文献に開示の判定システム(判定装置)およびその判定方法では、部分放電が発生したか否かに拘わらず充電電流が流れることで検出される機械的振動成分波形の影響を排除するために、部分放電の有無を検査するための処理(高電圧のインパルス電圧を印加しつつ音響センサの出力信号を得る処理)とは別個に、部分放電が生じるおそれのない低電圧を印加しつつ音響センサの出力信号(機械的振動成分を除去するための信号)を得る処理を実施している。このため、上記の特許文献に開示の判定システム(判定装置)およびその判定方法には、機械的振動成分を除去するための信号を得るための処理を実行する分だけ、電気機器についての検査処理が煩雑化しているという問題点がある。
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストおよび検査コストの低減を図りつつ、一連の検査処理を短時間で容易に実施し得る部分放電検出装置および部分放電検出方法を提供することを他の目的とする。
上記目的を達成すべく、請求項1記載の部分放電検出装置は、検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加する電源部と、前記電源部から前記巻線に対して印加された前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定する測定部と、前記測定部によって測定された各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する処理部を備え、前記電源部は、ピーク電圧が相違する複数種類のサージ電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加し、前記処理部は、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。
請求項2記載の部分放電検出装置は、検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加する電源部と、前記電源部から前記巻線に対して印加された前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定する測定部と、前記測定部によって測定された各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する処理部を備え、前記電源部は、振幅が相違する複数種類の周期的変位電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加し、前記処理部は、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、前記周期的変位電圧の変位周期を含む予め規定された周期範囲内の周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。
請求項3記載の部分放電検出装置は、請求項1または2記載の部分放電検出装置において、前記処理部は、前記測定部によって測定された前記各測定値に基づき、前記巻線に対して印加すべき前記試験電圧の電圧値と当該巻線に対して印加された前記試験電圧の電圧値との電圧差に基づいて前記電源部を制御して当該巻線に対して次に印加する前記試験電圧の電圧値を補正する。
請求項4記載の部分放電検出方法は、検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加し、かつ当該巻線に対して印加した前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定すると共に、測定した各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出方法であって、ピーク電圧が相違する複数種類のサージ電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加すると共に、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。
請求項5記載の部分放電検出方法は、検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加し、かつ当該巻線に対して印加した前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定すると共に、測定した各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出方法であって、振幅が相違する複数種類の周期的変位電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加すると共に、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、前記周期的変位電圧の変位周期を含む予め規定された周期範囲内の周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。
請求項6記載の部分放電検出方法は、請求項4または5記載の部分放電検出方法において、測定した前記各測定値に基づき、前記巻線に対して印加すべき前記試験電圧の電圧値と当該巻線に対して印加された前記試験電圧の電圧値との電圧差に基づいて前記電源部を制御して当該巻線に対して次に印加する試験電圧の電圧値を補正する。
請求項1記載の部分放電検出装置、および請求項4記載の部分放電検出方法では、検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加し、かつ巻線に対して印加した電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定すると共に、測定した各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する際に、ピーク電圧が相違する複数種類のサージ電圧を試験電圧として巻線に対して印加すると共に、各信号波形の各測定値を対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。
また、請求項2記載の部分放電検出装置、および請求項5記載の部分放電検出方法では、検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加し、かつ巻線に対して印加した電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定すると共に、測定した各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する際に、振幅が相違する複数種類の周期的変位電圧を試験電圧として巻線に対して印加すると共に、各信号波形の各測定値を対象として、周期的変位電圧の変位周期を含む予め規定された周期範囲内の周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。
したがって、請求項1,2記載の部分放電検出装置、および請求項4,5記載の部分放電検出方法によれば、高価な音響センサを使用せずに部分放電が発生したか否かを判定することができるため、部分放電検出装置の製造コスト、および部分放電検出方法を実行するためのコストを十分に低減することができるだけでなく、機械的振動成分を除去するための信号を得るための処理を別途実行する必要がない分だけ、部分放電が発生したか否かを短時間で容易に判定することができる。
請求項3記載の部分放電検出装置、および請求項6記載の部分放電検出方法では、測定した各測定値に基づき、巻線に対して印加すべき試験電圧の電圧値と巻線に対して印加された試験電圧の電圧値との電圧差に基づいて電源部を制御して巻線に対して次に印加する試験電圧の電圧値を補正する。したがって、請求項3記載の部分放電検出装置、および請求項6記載の部分放電検出方法によれば、検出対象に対して規定電圧の試験電圧を確実に印加することができるため、どのような電圧値の電圧が印加されたときに部分放電が発生するかを確実に特定することができる。
部分放電検出装置1の構成図である。 部分放電検出装置1の他の構成図である。 絶縁状態が良好な巻線C,Cについての測定値Dsの波形W0を示す信号波形図である。 絶縁状態が不良な巻線C,Cについての測定値Dsの波形W0を示す信号波形図である。 図3に示す波形W0の各値をフィルタリング処理した演算値の波形W1を示す信号波形図である。 図4に示す波形W0の各値をフィルタリング処理した演算値の波形W1を示す信号波形図である。 図5に示す波形W1の各値のサンプリングタイミング毎の標準化変量の波形W2を示す信号波形図である。 図6に示す波形W1の各値のサンプリングタイミング毎の標準化変量の波形W2を示す信号波形図である。
以下、部分放電検出装置および部分放電検出方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、部分放電検出装置1の構成について説明する。図1,2に示す部分放電検出装置1は、「部分放電検出装置」の一例である「インパルス試験装置」であって、後述する「部分放電検出方法」に従って検出対象Xの良否(部分放電が発生する状態であるか否か)を検査可能に構成されている。この部分放電検出装置1は、測定装置2およびデータ処理装置3を備えて構成されている。
なお、検出対象Xは、「検出対象」の一例である三相誘導電動機であって、U相巻線Cu、V相巻線CvおよびW相巻線Cw(「検出対象の巻線」の一例:以下、これらを区別しないときには「巻線C」ともいう)を備えて構成されている。この場合、本例では、各巻線Cがスター配線された電動機を検出対象Xとする例について説明するが、各巻線Cがデルタ配線された電動機や、電動機以外の各種の機器を検出対象Xとして検査することもできる。
測定装置2は、図1に示すように、インパルス電源11および電圧検出部12を備え、一例として、データ処理装置3における後述の処理部23の制御に従い、検出対象Xを対象とする各種の測定処理を実行可能に構成されている。インパルス電源11は、「電源部」の一例であって、データ処理装置3(処理部23)の制御に従い、U相巻線Cuの一端とV相巻線Cv間の一端との間、V相巻線Cvの一端とW相巻線Cwの一端との間、およびW相巻線Cwの一端とU相巻線Cuの一端との間にインパルス電圧(「サージ電圧」の一例)を「試験電圧」として印加する。
電圧検出部12は、「測定部」の一例であって、インパルス電源11から検出対象Xに対して印加された電圧を測定して測定値Dsを出力する。具体的には、電圧検出部12は、データ処理装置3(処理部23)の制御に従い、インパルス電源11から検出対象Xに対して印加された電圧を、予め設定された周期(「予め規定されたサンプリング周期:測定周期)でA/D変換(サンプリング)して測定値Dsを生成し、生成した測定値Dsをデータ処理装置3(処理部23)に順次出力する。
データ処理装置3は、一例として、データ処理用プログラムDpがインストールされたパーソナルコンピュータで構成されている。このデータ処理装置3は、図2に示すように、操作部21、表示部22、処理部23および記憶部24を備えている。操作部21は、測定条件などを入力するためのキーボードやポインティングデバイスで構成され、それらの操作に応じた操作信号を処理部23に出力する。表示部22は、データ処理装置3(部分放電検出装置1)の動作状態や、測定装置2による測定結果、および検出対象Xについての検査結果などを表示する。
処理部23は、データ処理用プログラムDpに従い、データ処理装置3を総括的に制御すると共に、測定装置2のインパルス電源11および電圧検出部12を制御する。この処理部23は、「処理部」の一例であって、データ処理用プログラムDpに従い、インパルス電源11を制御して検出対象Xに対してインパルス電圧を印加させる。この場合、本例の部分放電検出装置1(データ処理用プログラムDp)では、処理部23が、一例として、IEC/TS61934において規定された測定手順に準じて検出対象Xに対して印加するインパルス電圧を変化させる構成・手順(「ピーク電圧が相違する複数種類のインパルス電圧を「試験電圧」として巻線に対して印加」との処理の一例)が採用されている。
また、処理部23は、電圧検出部12から出力される測定値Dsを記憶部24に記憶させると共に、データ処理用プログラムDpに従い、各測定値Dsの信号波形に部分放電成分が含まれているか否かを判定する判定処理を実行する。なお、判定処理の手順については、後に具体的に説明する。記憶部24は、上記のデータ処理用プログラムDpや、測定装置2から出力された測定値Dsを記憶する。
次に、部分放電検出装置1による検出対象Xの検査方法について、添付図面を参照して説明する。なお、データ処理装置3にデータ処理用プログラムDpをインストールする作業などについては既に完了しているものとする。
検出対象Xの検査に際しては、最初に、データ処理装置3の操作部21を操作して、インパルス電源11から検出対象Xに対して印加するインパルス電圧のピーク電圧、印加回数、およびピーク電圧の変更手順を設定する。この際には、前述したように、IEC/TS61934において規定された測定手順に準じた条件を設定する。同様にして、電圧検出部12による測定処理の条件(電圧値の測定周期および測定開始/終了のタイミングなど)を設定する。
次いで、測定装置2とデータ処理装置3とを接続すると共に、検出対象Xに測定装置2を接続する。この際には、一例として、図1に示すように、インパルス電源11および電圧検出部12をU相巻線Cuの一端部およびV相巻線Cvの一端部に接続する。続いて、データ処理装置3の操作部21を操作して測定処理の開始を指示する。これに応じて、処理部23は、設定された各条件、およびデータ処理用プログラムDpに従って測定装置2を制御して測定処理を開始させる。
この際に、測定装置2では、電圧検出部12が、データ処理装置3(処理部23)から指示されたサンプリング周期での電圧値のサンプリング(測定)を開始する。これにより、電圧検出部12から両巻線Cの間の電圧値を示す測定値Dsが順次出力されてデータ処理装置3(処理部23)に順次出力される。また、処理部は、インパルス電源11を制御して検出対象Xにインパルス電圧を印加させる。
この際に、両巻線Cの間に印加された電圧についての測定値Ds(インパルス電源11から印加されるインパルス電圧の応答波形の値)が、両巻線Cの電気的特性(絶縁状態等)や、測定装置2の特性(測定装置2の測定回路自体の電気的特性、および電圧検出部12において使用されるデジタルフィルタの特性)などに応じて、例えば、図3,4に示す波形W0(「信号波形」の一例:以下、これらを区別しないときには「波形W0」ともいう)のように変化する。なお、図3は、インパルス電圧の印加時に部分放電が発生しない良品の検出対象Xについての波形W0であり、図4は、インパルス電圧の印加時に部分放電が発生する不良品の検出対象Xについての波形W0である。
また、データ処理装置3では、処理部23が、測定装置2(電圧検出部12)から出力された測定値Dsを、インパルス電源11から出力させたインパルス電圧のピーク電圧に対応付けて記憶部24に記憶させる。この場合、本例の部分放電検出装置1およびデータ処理用プログラムDpでは、IEC/TS61934に従い、一例として、1000V、1200V、1400V、1600V、1800V、2000V、1800V、1600V、1400V、1200および1000V(ピーク電圧が相違する複数種類のインパルス電圧)の順でピーク電圧を変更しつつ、各ピーク電圧毎に複数回に亘って両巻線C間にインパルス電圧を印加する構成および方法が採用されている。つまり、例えば、1種類のピーク電圧毎に10回ずつインパルス電圧を印加する場合には、10×11=110回に亘って両巻線C間にインパルス電圧を印加し、その都度、電圧検出部12から出力される測定値Dsが記憶部24に記憶されることとなる。
また、本例のデータ処理装置3(処理部23)およびデータ処理用プログラムDpでは、インパルス電源11に対して指示したピーク電圧の値と、電圧検出部12から出力される測定値Dsにおけるピーク値とが相違するときに、次にインパルス電源11から印加させるインパルス電圧の電圧値を相違量に応じて補正する(「巻線に対して印加すべき試験電圧の電圧値と巻線に対して印加された試験電圧の電圧値との電圧差に基づいて電源部を制御して巻線に対して次に印加する試験電圧の電圧値を補正する」との処理の一例)。
具体的には、インパルス電源11に対して指示したインパルス電圧の電圧値よりも電圧検出部12によって検出された電圧の電圧値が低いときには、両巻線Cに対して次にインパルス電圧を印加する際に、印加すべき電圧値と同値の電圧値が電圧検出部12によって検出されるように、印加すべき電圧値よりも高い電圧値のインパルス電圧を印加するようにインパルス電源11に指示する。また、インパルス電源11に対して指示したインパルス電圧の電圧値よりも電圧検出部12によって検出された電圧の電圧値が高いときには、両巻線Cに対して次にインパルス電圧を印加する際に、印加すべき電圧値と同値の電圧値が電圧検出部12によって検出されるように、印加すべき電圧値よりも低い電圧値のインパルス電圧を印加するようにインパルス電源11に指示する。これにより、部分放電が発生するか否かを判定すべき各種のピーク電圧のインパルス電圧を印加して高精度な測定処理を実行することが可能となる。以上により、U相巻線CuおよびV相巻線Cvについての測定処理が完了する。
続いて、インパルス電源11および電圧検出部12をV相巻線Cvの一端部およびW相巻線Cwの一端部に接続して、U相巻線CuおよびV相巻線Cv間についての上記の測定処理と同様の測定処理を実行した後に、インパルス電源11および電圧検出部12をW相巻線Cwの一端部およびU相巻線Cuの一端部に接続して、U相巻線CuおよびV相巻線Cv間や、V相巻線CvおよびW相巻線Cw間についての測定処理やと同様の測定処理を実行する。以上により、検出対象Xについての一連の測定処理が完了する。
次いで、データ処理装置3では、処理部23がデータ処理用プログラムDpに従い、記憶部24に記憶されている各測定値Dsに基づき、検出対象XにおけるU相巻線CuとV相巻線Cvとの間、V相巻線CvとW相巻線Cwとの間、およびW相巻線CwとU相巻線Cuとの間の絶縁状態(部分放電が発生したか否か:検出対象Xが良品か不良品か)を判定する。
具体的には、処理部23は、検出対象Xに対してインパルス電圧を印加した際の各測定値Dsの信号波形を対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する演算処理(HPF(high-pass filter)を用いたフィルタリング処理)を実行する。これにより、インパルス応答波形成分のような長い周期の変化成分や、静電容量を介して充電電流が流れることで生じる機械的振動成分(部分放電が発生した際に生じる長い周期の変化成分)などが除去されて、図3に示す波形W0については、図5に示す波形W1のような値が導出され、図4に示す波形W0については、図6に示す波形W1のような演算値が導出される(「演算処理」の一例)。
次いで、処理部23は、波形W1から求めた標準偏差値を用いて各演算値の測定タイミング毎の標準化変量(以下、「偏差」ともいう)を演算する(各演算値を標準化する)。この際に、図5に波形W1で示す各演算値については、図7に波形W2で示すような偏差(標準化変量)が測定タイミング毎にそれぞれ演算され、図6に波形W1で示す各演算値については、図8に波形W2で示すような偏差(標準化変量)が測定タイミング毎にそれぞれ演算される。また、処理部23は、波形W2の各演算値の大きさに基づき、検出対象Xの各巻線Cの絶縁状態(部分放電が発生したか否か:検出対象Xが良品か不良品か)を判定する。
この場合、本例の部分放電検出装置1(データ処理用プログラムDp)では、前述の「演算処理」によってインパルス応答波形成分のような長い周期の変化成分が除去されている。このため、インパルス電圧を印加した両巻線C間の絶縁状態が良好で部分放電が発生しなかったときには、サンプリングタイミング毎の偏差が±4σの範囲内となる。したがって、処理部23は、データ処理用プログラムDpに従い、演算した各偏差が±6σの範囲内(ノイズの影響等を考慮した判定用閾値の一例)であるときに、両巻線C間の絶縁状態が良好で部分放電が発生しなかったと判定する(「差分値に基づいて多相誘導電動機の良否を判定する」との処理の一例)。また、処理部23は、判定結果を表示部22に表示させると共に、判定結果を記録した検査結果データを生成して記憶部24に記憶させる。これにより、両巻線C間についての検査が完了する。
一方、インパルス電圧を印加した両巻線C間の絶縁状態が不良で部分放電が発生したときには、サンプリングタイミング毎の偏差が±4σの範囲を超える。したがって、処理部23は、データ処理用プログラムDpに従い、演算した各偏差のいずれかが±6σの範囲(ノイズの影響等を考慮した判定用閾値の一例)を超えたときに、両巻線C間の絶縁状態が不良で部分放電が発生したと判定する(「差分値に基づいて多相誘導電動機の良否を判定する」との処理の他の一例)。また、処理部23は、判定結果を表示部22に表示させると共に、判定結果を記録した検査結果データを生成して記憶部24に記憶させる。これにより、両巻線C間についての検査が完了する。
このように、この部分放電検出装置1、およびその部分放電検出方法では、検出対象Xの巻線Cにおける両端間に「試験電圧」を印加し、かつ巻線Cに対して印加した電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定すると共に、測定した各測定値Dsの信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する際に、ピーク電圧が相違する複数種類のインパルス電圧(サージ電圧)を「試験電圧」として巻線Cに対して印加すると共に、各信号波形の各測定値Dsを対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する「演算処理」を実行し、「演算処理」の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する。
したがって、この部分放電検出装置1、およびその部分放電検出方法によれば、高価な音響センサを使用せずに部分放電が発生したか否かを判定することができるため、部分放電検出装置1の製造コスト、および部分放電検出方法を実行するためのコストを十分に低減することができるだけでなく、機械的振動成分を除去するための信号を得るための処理を別途実行する必要がない分だけ、部分放電が発生したか否かを短時間で容易に判定することができる。
また、この部分放電検出装置1、およびその部分放電検出方法では、測定した各測定値Dsに基づき、巻線Cに対して印加すべき「試験電圧」(サージ電圧の一例であるインパルス電圧)の電圧値と巻線Cに対して印加された「試験電圧(サージ電圧の一例であるインパルス電圧)」の電圧値との電圧差に基づいて電源部を制御して巻線Cに対して次に印加する「試験電圧(サージ電圧の一例であるインパルス電圧)」の電圧値を補正する。したがって、この部分放電検出装置1、およびその部分放電検出方法によれば、検出対象X(巻線C)に対して規定のピーク電圧の「試験電圧」を確実に印加することができるため、どのような電圧値の電圧が印加されたときに部分放電が発生するかを確実に特定することができる。
なお、「部分放電検出装置」の構成や、「部分放電検出方法」は、上記のデータ処理装置3の構成およびその部分放電検出方法の例に限定されない。例えば、HPFを用いたフィルタリング処理を行う例について説明したが、インパルス応答波形成分のような長い周期的な変化成分を除去することができる限り、上記のフィルタリング処理以外の各種の「演算処理」(一例として、BPF(band-pass filter)を用いたフィルタリング処理)を実行することができる。
また、ピーク電圧が相違する複数種類のサージ電圧(インパルス電圧)を「試験電圧」として巻線Cに対して印加すると共に、各信号波形の各測定値Dsを対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する「演算処理」を実行し、「演算処理」の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する構成・方法について説明したが、このような構成に代えて、振幅が相違する複数種類の「周期的変位電圧」を「試験電圧」として巻線Cに対して印加すると共に、各信号波形の各測定値Dsを対象として、「周期的変位電圧の変位周期」を含む予め規定された周期範囲内の周期の変化成分を除去する「演算処理」を実行し、「演算処理」の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する構成・方法を採用することもできる。
この場合、「周期的変位電圧」としては、「正弦波電圧」、「矩形波電圧」、「三角波電圧」および「ランプ波電圧(のこぎり波電圧)」などの「電位(電圧値)が周期的に変化する電圧)」を使用することができる。また、「演算処理」としては、「試験電圧」として印加する「周期的変位電圧」の変位周期を含む周期範囲内の変化成分を減衰させるBSF(band-stop filter)を用いたファイルタリング処理や、「試験電圧」として印加する「周期的変位電圧」の変位周期の変化成分、およびその変位周期よりも長い周期の変化成分を除去するHPFを用いたファイルタリング処理を実行することができる。
このように構成した「部分放電検出装置」および「部分放電検出方法」によれば、前述の部分放電検出装置1、およびその部分放電検出方法と同様にして、高価な音響センサを使用せずに部分放電が発生したか否かを判定することができるため、「部分放電検出装置」の製造コスト、および「部分放電検出方法」を実行するためのコストを十分に低減することができるだけでなく、機械的振動成分を除去するための信号を得るための処理を別途実行する必要がない分だけ、部分放電が発生したか否かを短時間で容易に判定することができる。
さらに、フィルタリング処理後の演算値のサンプリングタイミング毎の標準化変量を求めて部分放電が発生したか否かを判定する例について説明したが、このような処理に代えて、周期的に発生するノイズ成分等を除去可能な各種の「演算処理」を実行し、その演算値の大きさや分布に基づいて部分放電が発生したか否かを判定することもできる。
加えて、U相巻線Cu、V相巻線CvおよびW相巻線Cwを備えた三相誘導電動機を検出対象Xとして部分放電の有無を検査する例について説明したが、「検出対象」は三相誘導電動機のような誘導電動機に限定されず、トランスやコイルなどの各種の巻線部品を「検出対象」として部分放電の有無を検査することができる。
1 部分放電検出装置
2 測定装置
3 データ処理装置
11 インパルス電源
12 電圧検出部
23 処理部
Cu U相巻線
Cv V相巻線
Cw W相巻線
Dp データ処理用プログラム
Ds 測定値
X 検出対象

Claims (6)

  1. 検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加する電源部と、
    前記電源部から前記巻線に対して印加された前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定する測定部と、
    前記測定部によって測定された各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する処理部を備え、
    前記電源部は、ピーク電圧が相違する複数種類のサージ電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加し、
    前記処理部は、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出装置。
  2. 検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加する電源部と、
    前記電源部から前記巻線に対して印加された前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定する測定部と、
    前記測定部によって測定された各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する処理部を備え、
    前記電源部は、振幅が相違する複数種類の周期的変位電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加し、
    前記処理部は、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、前記周期的変位電圧の変位周期を含む予め規定された周期範囲内の周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出装置。
  3. 前記処理部は、前記測定部によって測定された前記各測定値に基づき、前記巻線に対して印加すべき前記試験電圧の電圧値と当該巻線に対して印加された前記試験電圧の電圧値との電圧差に基づいて前記電源部を制御して当該巻線に対して次に印加する前記試験電圧の電圧値を補正する請求項1または2記載の部分放電検出装置。
  4. 検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加し、かつ当該巻線に対して印加した前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定すると共に、測定した各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出方法であって、
    ピーク電圧が相違する複数種類のサージ電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加すると共に、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、予め規定された周期よりも長い周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出方法。
  5. 検出対象の巻線における両端間に試験電圧を印加し、かつ当該巻線に対して印加した前記試験電圧を予め規定されたサンプリング周期で測定すると共に、測定した各測定値の信号波形に部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出方法であって、
    振幅が相違する複数種類の周期的変位電圧を前記試験電圧として前記巻線に対して印加すると共に、前記各信号波形の前記各測定値を対象として、前記周期的変位電圧の変位周期を含む予め規定された周期範囲内の周期の変化成分を除去する演算処理を実行し、当該演算処理の演算結果におけるサンプリングタイミング毎の標準化変量に基づいて前記部分放電波形成分が含まれているか否かを判定する部分放電検出方法。
  6. 測定した前記各測定値に基づき、前記巻線に対して印加すべき前記試験電圧の電圧値と当該巻線に対して印加された前記試験電圧の電圧値との電圧差に基づいて前記電源部を制御して当該巻線に対して次に印加する試験電圧の電圧値を補正する請求項4または5記載の部分放電検出方法。
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