JP2014160045A - 部分放電検査装置及び検査方法 - Google Patents

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博 菊池
Yoshihiko Yamakawa
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Abstract

【課題】1回の放電で、部分放電電流のセンサ出力が所定の判定閾値を複数回超えた場合においても、正確な放電頻度を測定できる部分放電検査装置及び検査方法を提供すること。
【解決手段】ワークMにサージ電圧を印加するインバータ電源部1と、ワークMにサージ電圧を印加したとき発生する部分放電電流を検出する放電検出部2と、放電検出部2が出力するセンサ出力q1、q2・・・が判定閾値Bを超えた回数を放電頻度として演算、記録する放電頻度測定部3とを備えた部分放電検査装置10であって、放電頻度測定部3には、センサ出力q1、q2・・・が判定閾値Bを超えた後、一定時間の間、回数を放電頻度として加算しない不感帯時間Cを設けることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、HV(ハイブリッド自動車)やEV(電気自動車)の駆動モータ等における絶縁検査に用いる部分放電検査装置及び検査方法に関する。
一般に、HV(ハイブリッド自動車)やEV(電気自動車)における駆動モータは、ドライバビリティや燃費向上の観点から、小型軽量化と高出力化とが同時に求められている。そのため、上記駆動モータには、従来以上に高電圧(例えば、400〜650V程度)をかけて駆動する場合が多くなっている。
また、上記駆動モータは、高精度制御が要求されるため、通常、インバータによって駆動されている。インバータは、高速スイッチング動作を繰り返すことで、モータ駆動に必要な正弦波電流を作り出している。そのため、インバータの出力端子には、スイッチング動作の度にバッテリ電圧を超えるサージ電圧が発生する。
このようなHV(ハイブリッド自動車)等の駆動モータに対する従来の絶縁検査装置では、一般に、周波数50Hzの正弦波形電圧を印加して、部分放電開始電圧(PDIV:Partial Discharge Inception Voltage)を検査している。この部分放電開始電圧(PDIV)を検査する理由は、モータ等のコイル間に高電圧を加えたとき、ある電圧を超えるとコイル絶縁被膜の表面間で微小な放電が発生することが知られているが、この放電を部分放電といい、部分放電が発生し続けると、少しずつ絶縁被膜を侵食して、やがて絶縁破壊に至るからである。
しかし、部分放電が開始する電圧は、電圧波形によって変動するため、従来の絶縁検査装置の正弦波形と実車のインバータサージ電圧波形では、部分放電開始電圧(PDIV)が相違する。したがって、従来の絶縁検査装置による部分放電開始電圧(PDIV)の測定結果と、実車の絶縁破壊電圧Vと絶縁寿命時間tとの関係を求めるV−t寿命耐久試験の結果とに大きな乖離が発生する問題があった。
そこで、実車状態に近づけるべく、所定周波数のサージ電圧を模擬した電圧、もしくは実際のインバータ電圧を試料モータに印加し、1サージ電圧サイクルあたりの部分放電発生頻度を計測するインバータ駆動モータの絶縁評価方法が検討されている(特許文献1を参照)。
特開2007−232517号公報
しかしながら、特許文献1における絶縁評価方法には、以下の問題があった。
すなわち、1サージ電圧サイクルあたりの部分放電発生頻度を計測するためには、ワークに電圧を印加し、発生した部分放電電流のセンサ出力(電圧値)が所定の閾値を超えた回数をカウントして放電発生頻度を測定する必要がある。
ところが、1回の放電で、部分放電電流のセンサ出力が閾値を複数回超えた場合においても、超えた回数分だけ放電したと認識してカウントすることになる。そのため、ただ単に、発生した部分放電電流のセンサ出力が所定の閾値を超えた回数をカウントするだけでは、正確な放電発生頻度を測定することができないという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、1回の放電で、部分放電電流のセンサ出力が所定の判定閾値を複数回超えた場合においても、正確な放電頻度を測定できる部分放電検査装置及び検査方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明に係る部分放電検査装置及び検査方法は、次のような構成を有している。
(1)ワークにサージ電圧を印加するインバータ電源部と、前記ワークに前記サージ電圧を印加したとき発生する部分放電電流を検出する放電検出部と、前記放電検出部が出力するセンサ出力が判定閾値を超えた回数を放電頻度として演算、記録する放電頻度測定部とを備えた部分放電検査装置であって、
前記放電頻度測定部には、前記センサ出力が前記判定閾値を超えた後、一定時間の間、前記回数を前記放電頻度として加算しない不感帯時間を設けることを特徴とする。
本発明においては、放電頻度測定部には、センサ出力が判定閾値を超えた後、一定時間の間、回数を放電頻度として加算しない不感帯時間を設けるので、1番目のセンサ出力(放電電流の電圧値)が最初に判定閾値を超えたとき1回とカウントした後、一定時間の間に超えた2番目以降のセンサ出力の回数は、放電頻度として加算されることがない。そのため、1回の放電で、一定時間以内にセンサ出力が判定閾値を複数回超えた場合においても、超えた回数分だけ放電したと誤認識してカウントすることはない。よって、本部分放電検査装置によれば、重複カウントを防止して、正確な放電頻度を測定できる。
なお、放電検出部には、ハイパスフィルタを備えてインバータ電源部のスイッチングノイズを除去するのが好ましい。ハイパスフィルタの周波数特性は、10MHz以下のサージノイズをカットできることが、更に好ましい。
(2)(1)に記載された部分放電検査装置において、
前記不感帯時間は、前記部分放電電流のハンチング時間以上であり、かつ前記部分放電の発生間隔以下であることを特徴とする。
本発明においては、不感帯時間は、部分放電電流のハンチング時間以上であり、かつ部分放電の発生間隔以下であるので、放電検出部が検出する部分放電電流のハンチング現象による多重カウントを防止しつつ、新たに発生する部分放電を確実にカウントすることができる。そのため、部分放電の検出精度を向上して、より正確な放電頻度を測定できる。
なお、一般に、部分放電電流のハンチング時間は、0.1μ秒以内であり、部分放電の発生間隔は、0.4〜1μ秒程度であるため、不感帯時間は、0.1〜0.3μ秒程度が好ましく、0.2μ秒程度が更に好ましい。
(3)(1)又は(2)に記載された部分放電検査装置において、
前記放電頻度測定部には、前記センサ出力を取り込む複数のA/D変換ボードを並列に備え、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相をずらしたことを特徴とする。
本発明においては、放電頻度測定部には、センサ出力を取り込む複数のA/D変換ボードを並列に備え、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相をずらしたので、1回の放電に対するサンプリング回数を増加させることができる。具体的には、低サンプリングレートのA/D変換ボードを用いて高サンプリングレートのA/D変換ボードを用いたと同等のサンプリングが可能となる。例えば、安価な汎用の100MHzA/D変換ボードを2枚並列に接続し、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相を180度ずらすことで、見掛け上200MHz相当のサンプリングが可能となり、高価な200MHzA/D変換ボードを用いることなく、データ欠損を防止することができる。また、安価な汎用の100MHzA/D変換ボードをN枚並列に接続し、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相のずらし量を異なる値に設定すること(例えば、A/D変換ボードのサンプリング周期をTとしたとき、ずらし量T1=1/2×T、T2=1/3×T、T3=1/5×T、・・・)で、異なる周期の放電波形にも1回の測定で対応可能となる。
(4)ワークにサージ電圧を印加するインバータ電源部と、前記ワークに前記サージ電圧を印加したとき発生する部分放電電流を検出する放電検出部と、前記放電検出部が出力するセンサ出力が判定閾値を超えた回数を放電頻度として演算、記録する放電頻度測定部とを備えた部分放電検査装置を用いた部分放電検査方法であって、
前記放電頻度測定部は、前記センサ出力が前記判定閾値を超えた後、一定時間の間、前記回数を前記放電頻度として加算しないことを特徴とする。
本発明においては、放電頻度測定部には、センサ出力が判定閾値を超えた後、一定時間の間、回数を放電頻度として加算しないので、1番目のセンサ出力が最初に判定閾値を超えたとき1回とカウントした後、一定時間の間に超えた2番目以降のセンサ出力の回数は、放電頻度として加算されることがない。そのため、1回の放電で、一定時間以内にセンサ出力が判定閾値を複数回超えた場合においても、超えた回数分だけ放電したと誤認識してカウントすることはない。よって、本部分放電検査方法によれば、重複カウントを防止して、正確な放電頻度を測定できる。
本発明によれば、1回の放電で、部分放電電流のセンサ出力が判定閾値を複数回超えた場合においても、正確な放電頻度を測定できる部分放電検査装置及び検査方法を提供することができる。
本実施形態に係る部分放電検査装置の回路構成図である。 図1に示す部分放電検査装置の電源部におけるインバータサージ電圧波形図である。 図1に示す部分放電検査装置の電源部におけるサージ立ち上がり時の電圧波形図と放電検出部が検出する放電波形図である。 図3に示す放電波形図の拡大図である。 図1に示す部分放電検査装置における放電頻度測定フローチャート図である。 図1に示す部分放電検査装置の第1変形回路構成図である。 図6に示す部分放電検査装置における放電波形の詳細図である。 図1に示す部分放電検査装置の第2変形回路構成図である。
以下、本発明の実施形態に係る部分放電検査装置及び検査方法について、図1〜図8を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る部分放電検査装置の回路構成について、各回路構成要素の作用、動作方法等を含めて詳細に説明する。その後、本実施形態に係る部分放電検査装置を用いた検査方法を説明する。最後に、本実施形態に係る部分放電検査装置の変形例を説明する。
<部分放電検査装置の回路構成>
まず、本実施形態に係る部分放電検査装置の回路構成について、図1〜図4を用いて説明する。図1に、本実施形態に係る部分放電検査装置の回路構成図を示す。図2に、図1に示す部分放電検査装置の電源部におけるインバータサージ電圧波形図を示す。図3に、図1に示す部分放電検査装置の電源部におけるサージ立ち上がり時の電圧波形図と放電検出部が検出する放電波形図を示す。図4に、図3に示す放電波形図の拡大図を示す。
図1に示すように、部分放電検査装置10は、インバータ電源部1と、放電検出部2と、放電頻度測定部3とを備えている。
インバータ電源部1は、実車相当のサージ電圧を含む高周波パルス電圧を生成し、ワークM(例えば、モータコイル線の端子)に印加する。印加電圧は、1〜2kV程度の高周波パルス波形からなり、インバータのスイッチング作用に基づくサージ電圧が、パルス波形の立ち上がり時に発生している(図2を参照)。サージ電圧の高さは、パルス立ち上がり角度が急峻になるほど、大きくなる。
また、放電検出部2は、電流センサ21と、ハイパスフィルタ22とを備えている。
電流センサ21は、インバータ電源部1とワークMとを接続するケーブルを流れる放電電流を検出する。電流センサ21は、例えば、同軸トランスを用いることができる。電流センサ21が検出した放電電流は、インバータ電源部1のスイッチングノイズ等を含んでいる。
スイッチングノイズ等は、ハイパスフィルタ22を通過させることによって除去している。ハイパスフィルタ22は、LC回路で構成し、10MHz以下のサージノイズをカットできる周波数特性を有することが、好ましい。
したがって、放電検出部2は、電流センサ21が検出した放電電流からハイパスフィルタ22を通過させることによって、インバータ電源部1のスイッチングノイズを除去した放電信号(センサ出力)のみを次の放電頻度測定部3へ出力することができる。
また、放電頻度測定部3は、A/D変換ボード31と、演算ボード32と、パソコン33とを備えている。
A/D変換ボード31は、放電電流の電圧波形(以下、「放電波形」という)をデジタル変換するA/D変換部である。演算ボード32は、デジタル変換後の放電信号(センサ出力:電圧値)が判定閾値以上となる回数をカウントする演算処理部である。
ここで、判定閾値は、部分放電が開始したと判定できる時の放電電流の電圧値であって、印加電圧と放電頻度との関係から実験的に定める。例えば、印加電圧を徐々に増加させながら放電頻度を測定した時、放電頻度が急増するときを部分放電開始時とみなし、その時の放電電流の電圧値を判定閾値とする。
パソコン33は、実験的に定めた判定閾値を演算ボード32に指示し、演算ボード32がカウントした放電頻度を記録し、画面上に表示する。例えば、1秒当たりの放電頻度を表示する。また、パソコン33にて後述する不感帯時間を設定して、演算ボード32に指示する。
図3に示すように、インバータ電源部1が生成する印加電圧におけるサージ電圧立ち上がり時(電圧波形Pが上昇方向に傾斜している時)に、放電波形Qが発生する場合が多い。通常、1回のサージ電圧立ち上がりによって、放電波形Qは複数回発生している。複数回発生する放電波形Qの大きさは、それぞれ相違し、放電波形Qの発生間隔も相違する。
図4に示すように、図3に示す放電波形Qの時間軸を拡大すると、図3において1つの放電波形と思われたものが、短時間の間に複数回ハンチングしていることが判明した。例えば、図4において、判定閾値Bを超える放電電流のセンサ出力(q1〜q5)は5回あるため、1回の放電において、ハンチングにより判定閾値Bを超えた回数分だけ重複して演算ボード32がカウントすると、正確な放電発生頻度の測定ができないことになる。
そこで、1番目のセンサ出力q1が判定閾値Bを超えてカウント後の一定時間は、次に判定閾値Bを超えた2番目以降のセンサ出力q2〜q5が来てもカウントしないよう不感帯時間Cを設けることで、正確な放電頻度を測定できるようにした。
そのため、ハンチングを生じている時間を予め実験的に測定して、その最長時間をハンチング時間Aと認定し、不感帯時間Cは、ハンチング時間Aより長い時間とした。一方、不感帯時間Cは、放電発生間隔より短い時間である必要がある。不感帯時間Cを放電発生間隔より長く設定すると、放電頻度の欠落が生じるからである。
よって、不感帯時間Cは、ハンチング時間Aと放電発生間隔との間の時間となるように設定する。
なお、本発明者らが実験的に測定したところ、一般のHV(ハイブリッド自動車)やEV(電気自動車)の駆動モータにおける部分放電電流のハンチング時間は、0.1μ秒以内であり、部分放電の発生間隔は、0.4〜1μ秒程度であるため、不感帯時間は、0.1〜0.3μ秒程度が好ましく、0.2μ秒程度が更に好ましい。
<部分放電検査装置を用いた検査方法>
次に、部分放電検査装置を用いた検査方法20について、図5を用いて説明する。図5に、図1に示す部分放電検査装置における放電頻度測定フローチャート図を示す。
図5に示すように、放電頻度測定フローチャートに記載された手順に従って検査を行う。
はじめに、ステップS1及びステップS2にて、放電カウント値のリセットと、タイマーのリセットを行う。放電カウント値のリセット(S1)は、前回行ったときの放電頻度の測定結果をリセットすることで、重複カウントを避けるためである。タイマーのリセット(S2)は、不感帯時間Cをリセットするためである。
次に、ステップS3にて、電流センサ出力の読み込みを行う。電流センサ出力の読み込みは、放電電流のセンサ出力をA/D変換ボード31でデジタル変換後、演算ボード32がデータ読み込みする処理である。
その後、ステップS4にて、演算ボード32は電流センサ出力が判定閾値以上であるか否かを識別する。電流センサ出力が判定閾値以上であれば、ステップS5にて、演算ボード32は放電カウント値に1回加算する。一方、電流センサ出力が判定閾値未満であれば、ステップS3に戻って、再度電流センサ出力の読み込みを行う。
次に、ステップS5にて、演算ボード32は放電カウント値に1回加算したら、ステップS6にて、演算ボード32はウェイト時間(不感帯時間C)の間、カウントを中止する。
次に、ステップ7にて、演算ボード32はタイマー積算値が1秒以上となったか否かを識別する。タイマー積算値が1秒以上となったときは、ステップS8にて、演算ボード32が1秒当たりの放電カウント値をパソコン33に出力する。一方、タイマー積算値が1秒未満であれば、ステップS3に戻って、再度センサ出力の読み込みを行う。
以上のように、上記ステップS1〜S8に基づいて、部分放電検査装置10における放電頻度の測定を行うことによって、モータコイル等における部分放電検査を実施することができる。
<部分放電検査装置の変形例>
次に、部分放電検査装置の第1変形例30、及び第2変形例40について、図6〜図8を用いて説明する。図6に、図1に示す部分放電検査装置の第1変形回路構成図を示す。図7に、図6に示す部分放電検査装置における放電電流波形の詳細図を示す。図8に、図1に示す部分放電検査装置の第2変形回路構成図を示す。
(第1変形例)
図6に示すように、第1変形例の部分放電検査装置30は、インバータ電源部1と、放電検出部2と、放電頻度測定部3Aとを備えている。
部分放電検査装置30は、放電頻度測定部3AのA/D変換ボード31a,31bを2つ設置している点のみが部分放電検査装置10と相違する。そのため、A/D変換ボード31a,31b以外の構成要素については、部分放電検査装置10と同様の符号を使用し、原則として説明を省略する。
図6に示すように、放電頻度測定部3Aにおいては、同一のサンプリングレートを有する2つのA/D変換ボード31a,31bが、ハイパスフィルタ22と演算ボード32との間で、並列に配置されている。
また、2つのA/D変換ボード31a,31bは、データを取り込むサンプリング位相を、互いに180度ずらしてセットされている。A/D変換ボード31a,31bのサンプリングレートは、100MHzである。
そのため、放電頻度測定部3Aは、図7(a)に示すオリジナルの放電波形が放電検出部2から出力されたとき、図7(b)に示すサンプリング位相ズレ:0度のA/D変換ボード1(31a)が取り込む放電波形と、図7(c)に示すサンプリング位相ズレ:180度のA/D変換ボード2(31b)が取り込む放電波形とに分解して、それぞれ取り込むことができる。
したがって、放電頻度測定部3Aは、A/D変換ボードのサンプリングレートを2倍(200MHz)に増加したのと同様の効果を奏することができる。ここでは、A/D変換ボードを2つ並列に配置したが、3つ以上並列に配置することも可能である。その場合、A/D変換ボードの数量に比例してサンプリングレートが増加する。
これによって、第1変形例の部分放電検査装置30は、低サンプリングレートの安価なA/D変換ボードを複数、並列配置するだけで、高サンプリングレートの高価なA/D変換ボードを使用したのと同様の機能を発揮させることができる。その結果、低コストで高機能の部分放電検査装置を提供することができる。これは、量産用検査装置を提供する上で、非常に有用である。
(第2変形例)
図8に示すように、第2変形例の部分放電検査装置40は、インバータ電源部1と、放電検出部2と、放電頻度測定部3Bとを備えている。
部分放電検査装置40は、放電頻度測定部3BのA/D変換ボード311〜31nをN個、設置している点のみが部分放電検査装置10と相違する。そのため、A/D変換ボード311〜31n以外の構成要素については、部分放電検査装置10と同様の符号を使用し、原則として説明を省略する。
図8に示すように、放電頻度測定部3Bにおいては、同一のサンプリングレートを有するN個のA/D変換ボード311〜31nが、ハイパスフィルタ22と演算ボード32との間で、並列に配置されている。A/D変換ボード311〜31nのサンプリングレートは、いずれも100MHzである。
また、N個のA/D変換ボード311〜31nは、データを取り込むサンプリング位相のずらし量を、それぞれ相違してセットされている。
例えば、A/D変換ボードのサンプリング周期をTとしたとき、A/D変換ボード1(311)とA/D変換ボード2(312)との位相のずらし量をT1=1/2×Tとし、A/D変換ボード2(312)とA/D変換ボード3(313)との位相のずらし量をT2=1/3×Tとし、A/D変換ボード3(313)とA/D変換ボード4(314)との位相のずらし量をT3=1/5×Tとし、その他の組み合わせについても、上記と同様に位相のずらし量を変化させる。
これによって、第2変形例の部分放電検査装置40は、低サンプリングレートの安価なA/D変換ボードを複数、並列配置し、各A/D変換ボードの位相ずらし量をそれぞれ相違させるだけで、1回の測定で異なる周期の放電波形に対しても対応することができる。その結果、複雑な放電波形を発生するモータコイルの絶縁検査を短時間に行うことができ、効率的な量産用検査装置を提供する上で、非常に有用である。
<作用効果>
本実施形態に係る部分放電検査装置10、30、40によれば、放電頻度測定部3、3A、3Bには、センサ出力が判定閾値Bを超えた後、一定時間の間、回数を放電頻度として加算しない不感帯時間Cを設けるので、1番目のセンサ出力q1が判定閾値Bを超えたとき1回とカウントした後、一定時間の間に超えた2番目以降のセンサ出力q2〜q5の回数は、放電頻度として加算されることがない。そのため、1回の放電で、一定時間以内にセンサ出力が判定閾値Bを複数回超えた場合においても、超えた回数分だけ放電したと誤認識してカウントすることはない。よって、本部分放電検査装置10、30、40によれば、正確な放電頻度を測定できる。
なお、放電検出部2には、ハイパスフィルタ22を備えてインバータ電源部1のスイッチングノイズを除去している。ハイパスフィルタ22の周波数特性は、10MHz以下のサージノイズをカットできるように設定されている。
また、本実施形態に係る部分放電検査装置10、30、40によれば、不感帯時間Cは、部分放電電流のハンチング時間A以上であり、かつ部分放電の発生間隔以下であるので、放電検出部2が検出する部分放電電流のハンチング現象による多重カウントを防止しつつ、新たに発生する部分放電を確実にカウントすることができる。そのため、部分放電の検出精度を向上して、より正確な放電頻度を測定できる。
なお、一般に、部分放電電流のハンチング時間Aは、0.1μ秒以内であり、部分放電の発生間隔は、0.4〜1μ秒程度であるため、不感帯時間Cは、0.1〜0.3μ秒に設定している。
また、本実施形態に係る部分放電検査装置30、40によれば、放電頻度測定部3A、3Bには、放電検出部2が出力するセンサ出力q1、q2・・・を取り込む複数のA/D変換ボード31a、31b、311〜31nを並列に備え、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相をずらしたので、1回の放電に対するサンプリング回数を、低コストで増加させることができる。すなわち、低サンプリングレートのA/D変換ボードを用いて高サンプリングレートのA/D変換ボードを用いたと同等のサンプリングが可能となる。例えば、安価な汎用の100MHzA/D変換ボードを2枚並列に接続し、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相を180度ずらすことで、見掛け上200MHz相当のサンプリングが可能となり、高価な200MHzA/D変換ボードを用いることなく、データ欠損を防止することができる。また、例えば、安価な汎用の100MHzA/D変換ボードをN枚並列に接続し、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相のずらし量を異なる値に設定すること(例えば、A/D変換ボードのサンプリング周期をTとしたとき、ずらし量T1=1/2×T、T2=1/3×T、T3=1/5×T、・・・)で、異なる周期の放電波形にも1回の測定で対応可能となる。
また、本実施形態に係る部分放電検査装置10、30、40を用いた検査方法20によれば、放電頻度測定部3、3A、3Bには、センサ出力q1、q2・・・が判定閾値Bを超えた後、一定時間の間、回数を放電頻度として加算しないので、1番目のセンサ出力q1が最初に判定閾値Bを超えたとき1回とカウントした後、一定時間の間に超えた2番目以降のセンサ出力q2〜q5の回数は、放電頻度として加算されることがない。そのため、1回の放電で、一定時間以内にセンサ出力q1〜q5が判定閾値Bを複数回超えた場合においても、超えた回数分だけ放電したと誤認識してカウントすることはない。よって、本検査方法20によれば、正確な放電頻度を測定できる。
本発明は、特に、HV(ハイブリッド自動車)やEV(電気自動車)の駆動モータ等における絶縁検査に用いる部分放電検査装置及び検査方法に利用できる。
1 インバータ電源部
2 放電検出部
3 放電頻度測定部
10 部分放電検査装置
20 検査方法
21 電流センサ
22 ハイパスフィルタ
31 A/D変換ボード
32 演算ボード
33 パソコン
M ワーク
q1〜q5 センサ出力

Claims (4)

  1. ワークにサージ電圧を印加するインバータ電源部と、前記ワークに前記サージ電圧を印加したとき発生する部分放電電流を検出する放電検出部と、前記放電検出部が出力するセンサ出力が判定閾値を超えた回数を放電頻度として演算、記録する放電頻度測定部とを備えた部分放電検査装置であって、
    前記放電頻度測定部には、前記センサ出力が前記判定閾値を超えた後、一定時間の間、前記回数を前記放電頻度として加算しない不感帯時間を設けることを特徴とする部分放電検査装置。
  2. 請求項1に記載された部分放電検査装置において、
    前記不感帯時間は、前記部分放電電流のハンチング時間以上であり、かつ前記部分放電の発生間隔以下であることを特徴とする部分放電検査装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された部分放電検査装置において、
    前記放電頻度測定部には、前記センサ出力を取り込む複数のA/D変換ボードを並列に備え、各A/D変換ボードの取り込みタイミングの位相をずらしたことを特徴とする部分放電検査装置。
  4. ワークにサージ電圧を印加するインバータ電源部と、前記ワークに前記サージ電圧を印加したとき発生する部分放電電流を検出する放電検出部と、前記放電検出部が出力するセンサ出力が判定閾値を超えた回数を放電頻度として演算、記録する放電頻度測定部とを備えた部分放電検査装置を用いた部分放電検査方法であって、
    前記放電頻度測定部は、前記センサ出力が前記判定閾値を超えた後、一定時間の間、前記回数を前記放電頻度として加算しないことを特徴とする部分放電検査方法。
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