JP2021105411A - 流体機器の取替方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】漏水が発生し続ける状況において、不断水状態で流体機器を安全に取り替えられる流体機器の取替方法を提供する。【解決手段】水道管1の管壁に形成された分岐口10を密封状態で囲繞する既設流体機器を、不断水状態で新規流体機器3に取り替える方法であって、分岐口10を密封囲繞可能な設置領域から前記既設流体機器を撤去する工程と、分割構造を有する流体機器3を前記設置領域に配置するとともに、分岐口10と連通して流体機器3の外部で延在する排出管路4を設ける工程と、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、流体機器3を前記設置領域に締結固定する工程とを備える。【選択図】図3

Description

本開示は、既設の流体機器を不断水状態で取り替える方法に関する。
開閉弁などの流体機器の老朽化に伴い、パッキンの劣化や締結具の破断などを生じると、密封状態が維持されずに漏水が発生することがある。その場合、漏水が発生し続ける状況において、既設の流体機器を不断水状態で取り替えることが求められる。しかし、取替作業は、地面を掘削して形成された施工ピット(作業ピット)内で行われるため、施工ピットに水が溜まって浸水する恐れがあり、作業者の安全性を確保する必要があった。
特許文献1には、水道管の管壁に形成された分岐口をゴム筒で一時的に閉塞し、既設の流体機器を不断水状態で取り替える手法が記載されている。しかし、細かい操作が要求されるため、漏水が発生し続ける状況での実施は困難であると考えられる。
特許文献2には、水道管の管壁に形成された分岐口を金属製の止水板で一時的に閉塞し、既設の流体機器を不断水状態で取り替える手法が記載されている。しかし、漏水が発生し続ける状況において作業者の安全性を確保できるのか不明である。また、分岐口に装着された防錆コアが水道管の外面から突出している場合には、止水板を利用できない。
特開2009−127731号公報 特開2008−128349号公報
本開示の目的は、漏水が発生し続ける状況において、不断水状態で流体機器を安全に取り替えられる流体機器の取替方法を提供することにある。
本開示に係る流体機器の取替方法は、水道管の管壁に形成された分岐口を密封状態で囲繞する既設流体機器を、不断水状態で新規流体機器に取り替える流体機器の取替方法であって、前記分岐口を密封囲繞可能な設置領域から前記既設流体機器を撤去する工程と、分割構造を有する前記新規流体機器を前記設置領域に配置するとともに、前記分岐口と連通して前記新規流体機器の外部で延在する排出管路を設ける工程と、前記分岐口から漏出する水を前記排出管路へ流しながら、前記新規流体機器を前記設置領域に締結固定する工程と、を備えるものである。
既設流体機器の周辺に形成された施工ピットを示す(A)正面図と(B)側面図 第1実施形態において保持部材を水道管に装着した状態を示す(A)正面図と(B)側面視断面図 第1実施形態において水道管の設置領域に配置した新規流体機器を示す部分断面図 第1実施形態において水道管の設置領域に配置した新規流体機器を示す半断面図 第1実施形態における取替作業後の新規流体機器を示す半断面図 第2実施形態で用いる新規流体機器の(A)正面視断面図と(B)側面図 第2実施形態で用いる閉鎖部材の(A)側面図と(B)X−X断面図 第2実施形態における撤去工程の直後から排出管路設定工程までの過程を示す断面図 第3実施形態で用いる新規流体機器の(A)正面図と(B)側面図 第3実施形態で用いる新規流体機器の斜視図 第3実施形態において分岐口と対面することになるサドル部の分解斜視図 図9(B)のY−Y断面を示す要部斜視図 第3実施形態で用いる閉鎖部材の(A)斜視図、(B)反対側を示す斜視図、及び、(C)側面図 第3実施形態で用いる新規流体機器のオフセット状態を示す(A)正面図と(B)側面図 第3実施形態で用いる新規流体機器のオフセット状態を示す斜視図 第3実施形態で用いるスペーサの斜視図
本開示の流体機器の取替方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
まずは、図1を参照しながら、既設流体機器について説明する。図1では、既設の水道管1が土中に埋設されている。水道管1は、ダクタイル鋳鉄管であるが、これに限られない。水道管1には、分割構造を有する既設流体機器2(以下、単に「流体機器2」と呼ぶ場合がある)が装着されており、その周辺の地面を掘削して施工ピットPが形成されている。通常、施工ピットPは、コストの削減や掘削時間の短縮のために、作業性や安全性を確保できる限りにおいて、必要最小限の比較的狭い空間とされる。
流体機器2は、水道管1の管壁に形成された分岐口10(図2など参照)を密封状態で囲繞している。第1実施形態では採用されていないが、分岐口10には円筒状の防錆コアが装着されている場合もある(図8など参照)。図1において、流体機器2は、分岐口10を密封囲繞可能な設置領域A1に配置されている。仮設領域A2は、管軸方向において設置領域A1と隣接する領域であり、図1では設置領域A1の左側に位置するが、反対側でも構わない。
流体機器2は、管周方向に沿って連接される複数(図1の例では二つ)の円弧状のサドル部21,22と、それらの管周方向の端部に装着された締結具23と、分岐口10に対面する上側のサドル部21に設けられた開閉弁24とを備える。締結具23は、ボルト23a及びナット23bを含み、これらを締め付けることによりサドル部21,22が水道管1を挟持し、流体機器2が水道管1に締結固定される。上側のサドル部21には、分岐口10の周囲を密封するリング状のパッキン(図示せず)が装着されている。
開閉弁24は、その内部に形成された流路を開閉可能な弁体(図示せず)と、その弁体を操作するための操作部24aとを有する。本実施形態では、開閉弁24が仕切弁(ゲート弁)により形成されている例を示すが、これに限られず、例えばボール弁やバタフライ弁でもよい。開閉弁24の内部の流路は、丁字状や十字状でもよい。開閉弁24は、サドル部21と一体的に設けられていてもよいし、ねじ構造などを利用してサドル部21に着脱自在に接続されていてもよい。尚、流体機器2の構成は特に限られず、従来公知のサドル付き開閉弁などを特に制約なく利用可能である。
流体機器2の老朽化に伴い、分岐口10の周囲を密封するパッキンが劣化したり、流体機器2を締結固定しているボルト23aが破断したりすると、密封状態が維持されずに漏水が発生することがある。その場合、漏水が発生し続ける状況において、不断水状態で流体機器2の取替作業を行うことが求められる。但し、施工ピットPに水が溜まって浸水する恐れがあるため、作業者の安全性を確保する必要がある。
次に、図2〜5を参照しながら、流体機器を取り替える方法について説明する。流体機器の取替方法の第1実施形態は、分岐口10を密封囲繞可能な設置領域A1から流体機器2を撤去する工程(撤去工程)と、分割構造を有する新規流体機器3(以下、単に「流体機器3」と呼ぶ場合がある)を設置領域A1に配置するとともに、その分岐口10と連通して流体機器3の外部で延在する排出管路4を設ける工程(排出管路設定工程)と、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、流体機器3を設置領域A1に締結固定する工程(締結固定工程)とを備える。
第1実施形態で用いられる新規流体機器3は、図3〜5に示すように、管周方向に沿って連接される複数(この例では三つ)の円弧状のサドル部31〜33と、それらの管周方向の端部に装着された締結具34と、分岐口10に対面する上側のサドル部31に設けられた開閉部としての開閉弁35とを備える。締結具34は、ボルト34a及びナット34bを含み、これらを締め付けることによりサドル部31〜33が水道管1を挟持し、流体機器3が水道管1に締結固定される。サドル部31〜33の内面には、それぞれ水道管1の外面と流体機器3の内面との隙間を密封するパッキン36が装着されている。
開閉弁35は、その内部に形成された流路を開閉可能な弁体(図示せず)と、その弁体を操作するための操作部35aとを有する。本実施形態では、開閉弁35が仕切弁(ゲート弁)により形成されている例を示すが、これに限られず、例えばボール弁やバタフライ弁でもよい。開閉弁35の内部の流路は、丁字状や十字状でもよい。開閉弁35は、サドル部31と一体的に設けられていてもよいし、ねじ構造などを利用してサドル部31に着脱自在に接続されていてもよい。開閉弁35の代わりに、開閉式のプラグ機器などを使用することも可能である。
撤去工程では、設置領域A1から流体機器2を撤去する。例えば、開閉弁24を開いたうえで、開閉弁24の流路に上方から棒材(図示せず)を突っ込んで分岐口10を閉塞し、締結具23を解体して棒材と一緒に流体機器2を水道管1から取り外す。設置領域A1から流体機器2を撤去した後、図2のように排出管路4を保持する保持部材5を水道管1に装着して、分岐口10から漏出する水が排出管路4へ流れる状態とする。排出管路4の末端部(図示せず)は施工ピットPの外部に配置されており、そこから排水溝などへ排水することができる。
保持部材5は、分岐口10と対面するように配置される本体51と、その分岐口10の周囲を密封するシート状のパッキン52とを備える。本体51は、管周方向に沿った円弧状に形成され、その内部にパッキン52が装着されている。分岐口10に防錆コアが装着されている場合は、防錆コアを収容可能な内部空間が形成されるよう、比較的内径の大きい保持部材が用いられる。本体51には、筒状の接続口53が形成されており、その接続口53に排出管路4が着脱自在に接続されている。これらはバヨネット構造によって接続されているが、ねじ構造など他の接続形式を適用してもよい。
図2の例では、ラッシングベルトやバンドなどの固定部材54によって保持部材5を水道管1に固定しているが、これに限られない。分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しているので、水圧に抗して作業者が人手で押さえることも可能である。保持部材5は、固定部材54を緩めた状態で、予め仮設領域A2に仮装着しておいてもよい。その場合、設置領域A1から流体機器2を撤去した直後に、保持部材5を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置することができる。排出管路4は、設置領域A1に配置する前の保持部材5の接続口53に予め接続しておくことが好ましい。
排出管路設定工程では、図3のように、流体機器3を設置領域A1に配置するとともに、分岐口10と連通して流体機器3の外部で延在する排出管路4を設ける。排出管路4は、流体機器3の流入口37から流出口38に至る流路に挿通された状態になっている。本実施形態では、排出管路4を挿通させた流体機器3を保持部材5に被せることで、その流体機器3を設置領域A1に配置する。より具体的には、図2(B)に破線で示すように、排出管路4をサドル部31及び開閉弁35に挿通させ、それらをサドル部32,33と組み合わせて水道管1の設置領域A1に装着する。
締結固定工程では、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、流体機器3を設置領域A1に締結固定する。その際、締結具34を締め付け操作し、流体機器3によって分岐口10を密封状態で囲繞する。流体機器3を設置領域A1に締結固定した後は、図4に示すように、保持部材5と排出管路4との接続を解除し、流体機器3の内部に保持部材5を残置させて排出管路4を撤去する。本実施形態では、排出管路4を軸線周りに回すことにより接続口53との接続が解除される。
本実施形態では、接続口53から排出管路4を取り外したときの漏水を抑えるために、流体機器3の流出口38に漏水防止用のカップ41を取り付けている。但し、カップ41の使用は任意であり、省略しても構わない。図4のように流体機器3の流路から排出管路4を引き抜いた後、すぐさま開閉弁35を閉じて止水することで、カップ41を使わなくても漏水を最小限に抑えられる。開閉弁35を閉じたら、カップ41を流出口38から取り外し、排出管路4とともに撤去する。そして、図5のように流体機器3の流出口38に分岐管路39を接続し、流体機器3を介して給水可能な状態にする。
[第2実施形態]
次に、図6〜8を参照しながら、流体機器の取替方法の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、以下に説明する構成を除いて第1実施形態と同様に構成できるため、共通点の説明を省略し、主に相違点について説明する。第1実施形態において既に説明した構成には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
流体機器の取替方法の第2実施形態は、分岐口10を密封囲繞可能な設置領域A1から既設流体機器2(図1参照)を撤去する工程(撤去工程)と、分割構造を有する新規流体機器6(以下、単に「流体機器6」と呼ぶ場合がある)を設置領域A1に配置するとともに、分岐口10と連通して流体機器6の外部で延在する排出管路4を設ける工程(排出管路設定工程)と、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、流体機器6を設置領域A1に締結固定する工程(締結固定工程)とを備える。
第2実施形態で用いられる新規流体機器6は、図6に示すように、管周方向に沿って連接される複数(この例では二つ)の円弧状のサドル部61,62と、それらの管周方向の端部に装着された締結具63と、上側のサドル部61に設けられた開閉部としての開閉プラグ64とを備える。締結具63は、ボルト63a及びナット63bを含み、これらを締め付けることによりサドル部61,62が水道管1を挟持し、流体機器6が水道管1に締結固定される。サドル部61,62の内面には、それぞれ水道管1の外面と流体機器6の内面との隙間を密封するパッキン65が装着されている。
開閉プラグ64は、分岐口10と対面することになるサドル部61に形成された貫通孔61aに装着されている。開閉プラグ64は、その貫通孔61aの開口を開閉操作可能に構成されている。流体機器6の流入口66は、貫通孔61aないし開閉プラグ64の底部によって形成される。排出管路4は、開閉プラグ64に対して着脱自在に接続される。開閉プラグ64としては、従来公知の開閉式のプラグ機器を特に制約なく使用できる。開閉プラグ64の代わりに、前述の第1実施形態で使用したような開閉弁を取り付けることも可能である。
流体機器6は、管周方向で部分的に内径を拡大させ且つ管軸方向に向けて開口した通過孔部61bと、その通過孔部61bを閉鎖可能な閉鎖機構60とを有する。通過孔部61bは、サドル部61の管軸方向の一端部(図6の右端部)に設けられている。通過孔部61bの設定箇所では、パッキン65も部分的に内径を拡大させている。通過孔部61bは、水道管1の外面を基準とした拡径高さHを有し、流体機器6の内部空間と外部空間とを連通するようにして管軸方向に延びている。拡径高さHは、締結具63を緩めて管軸方向にスライド可能な状態の流体機器6において、後述する防錆コア11の突出高さと同じか、それよりも大きく設定される。
閉鎖機構60は、水道管1の外面に向けて開口した収容凹部67に配置された閉鎖部材68と、その閉鎖部材68を移動操作するための操作具としての押ボルト69とを含む。収容凹部67は、パッキン65の外側に隣接して且つ通過孔部61bの管径方向外側に形成されている。図6(及び図8)では簡略的に描かれているが、図7に示すように、閉鎖部材68は、金属などの堅牢な材料で形成された本体部68aと、その本体部68aにライニングされた弾性体としてのゴム部68bとを有する。閉鎖部材68の底部は、管周方向に沿って湾曲している。押ボルト69は、管径方向に沿って閉鎖部材68を移動可能に構成されている。
流体機器6は、締結具63を緩めた状態で、予め仮設領域A2に仮装着しておくことができる。そして、設置領域A1から流体機器2を撤去した後、設置領域A1に隣接する仮設領域A2に仮装着した流体機器6を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置し、分岐口10から漏出する水を流体機器6に接続された排出管路4へ流す。排出管路4は、流体機器6を設置領域A1に配置する前に予め接続しておくことが好ましい。図8は、このような撤去工程の直後から排出管路設定工程までの過程を示している。
図8(A)は、設置領域A1から流体機器2を撤去した直後の状態を示す。流体機器2の撤去によって露出した分岐口10から水が漏出している。防錆コア11は、分岐口10に装着され水道管1の外面から突出している。防錆コア11は、ステンレスなどの耐蝕性に優れた材料で形成されており、分岐口10の内周面の腐蝕や錆びの発生を抑制する。仮設領域A2には流体機器6が仮装着されている。設置領域A1から流体機器2を撤去したら、すぐさま流体機器6を管軸方向にスライドさせ、図8(B)のように分岐口10を囲繞する。
図8(A)から図8(B)に至る過程では、防錆コア11が通過孔部61bを通って流体機器6の内部に配置されるように、流体機器6を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置する。このため、締結具63を軽く緩めておくだけで、水道管1の外面から突出する防錆コア11を容易に躱すことができる。流体機器6に作用する水圧を低減できるよう、開閉プラグ64は開いておく。図8(B)の状態では、分岐口10から漏出した水が、流入口66と通過孔部61bから流出する。排出管路4を接続していることにより、流入口66からの流出は、施工ピットP内での漏水の問題を引き起こす原因にならない。
流体機器6を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置した後、図8(C)のように、流体機器6に取り付けられた押ボルト69を介して、流体機器6が備える閉鎖部材68を移動操作し、それによって通過孔部61bの隙間を密封する。閉鎖部材68を管径方向内側に移動させると、水道管1の外面にゴム部68bが密着するとともに、本体部68aに形成された傾斜面68c(図7参照)の作用によりゴム部68bが止水側(図8の左側)に誘導されてパッキン65に密着する。これにより、水道管1の外面と流体機器6の内面との隙間が密封され、通過孔部61bからの水の流出を止めることができる。
締結固定工程では、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、流体機器6を設置領域A1に締結固定する。上述のように排出管路設定工程では締結具63を軽く緩めるだけでよいため、締結具63を締め付ける作業が簡便になる。閉鎖機構60で通過孔部61bを閉鎖する作業は、流体機器6を設置領域A1に締結固定した後でも構わないが、施工ピットP内での漏水量を減らす観点から、締結固定する前に行うことが好ましい。流体機器6を設置領域A1に締結固定したら、開閉プラグ64を閉めて排出管路4を撤去し、代わりに分岐管路(図示せず)を接続して、流体機器6を介して給水可能な状態にする。
[第3実施形態]
次に、図9〜16を参照しながら、流体機器の取替方法の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、以下に説明する構成を除いて第2実施形態と同様に構成できるため、共通点の説明を省略し、主に相違点について説明する。第1,2実施形態において既に説明した構成には、同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
流体機器の取替方法の第3実施形態は、分岐口10を密封囲繞可能な設置領域A1から既設流体機器2(図1参照)を撤去する工程(撤去工程)と、分割構造を有する新規流体機器7(以下、単に「流体機器7」と呼ぶ場合がある)を設置領域A1に配置するとともに、分岐口10と連通して流体機器7の外部で延在する排出管路4を設ける工程(排出管路設定工程)と、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、流体機器7を設置領域A1に締結固定する工程(締結固定工程)とを備える。
第3実施形態で用いられる新規流体機器7は、図9〜12に示すように、管周方向に沿って連接される複数(この例では三つ)の円弧状のサドル部71〜73と、それらの管周方向の端部に装着された締結具74と、分岐口10と対面することになる上側のサドル部71に設けられた開閉部としての開閉プラグ75とを備える。締結具74は、ボルト74a及びナット74bを含み、これらを締め付けることによりサドル部71〜73が水道管1を挟持し、流体機器7が水道管1に締結固定される。サドル部71〜73の内面には、それぞれ水道管1の外面と流体機器7の内面との隙間を密封するパッキン76が装着されている。
図11のように、サドル部71の管軸方向の一端部には、切欠部71aが設けられている。切欠部71aは、平面視矩形状をなす空所により形成されている。サドル部71の内面に装着されたパッキン76の管軸方向の一端部には、切欠部76aが設けられている。切欠部76aは、管周方向に沿って延びる円弧状部分の中央を欠落させることにより形成されている。切欠部71a,76aの管周方向における端面は、それぞれ上下方向に沿って形成されているが、これに限られない。他のサドル部72,73には、このような切欠部が設けられていない。サドル部72,73の内面に装着されるパッキン76は、切欠部76aを有さず、環状に形成されている。
サドル部71の管軸方向の一端部には、締結具74を介して閉鎖部材8が取り付けられている。閉鎖部材8は、管周方向に沿った円弧状をなし、その両端部にはボルト74aを挿通するためのボルト孔81が形成されている。閉鎖部材8は、管径方向内側に向けて突出した突部82を有する。突部82は、閉鎖部材8の管軸方向の一端部に設けられている。突部82は、サドル部71の切欠部71aに嵌入可能に構成されている。突部82は、管周方向に沿って円弧状に延び、その長さは切欠部71aの長さに比べて僅かに小さい。図9,10,12では、突部82の嵌入によって切欠部71aが埋められた状態になっている。
図12,13に示すように、突部82の管周方向における側面82a,82bは、それぞれ上下方向に沿って形成されているが、これに限られない。突部82の管軸方向一方側(図12の右側)の側面82cは、管径方向に沿って平坦に形成されている。側面82cは、閉鎖部材8の端面の一部を形成し、サドル部71の端面と面一に配置されている。また、突部82の管軸方向他方側(図12の左側)の側面82dは、パッキン片9の側面93に対応した階段状に形成されている。尚、図12では、開閉プラグ75の図示を省略している。
閉鎖部材8は、サドル部71の外面(具体的には、切欠部71aの縁)に被さるように配置されるガイド部83を有する。ガイド部83は、閉鎖部材8の管軸方向の他端部に設けられている。ガイド部83には、サドル部71に形成されたテーパ面71b(図11参照)と接触可能なテーパ面83aが形成されている。テーパ面71b,83aは、それぞれ管周方向に沿って円弧状に延びている。閉鎖部材8を管径方向内側に移動させると、テーパ面71bに対してテーパ面83aが摺動し、ボルト74aとボルト孔81との遊びの範囲内で、閉鎖部材8が管軸方向他方側(図12の左側)にガイドされる。
閉鎖部材8の内面に配置されるパッキン片9は、パッキン76の切欠部76aに嵌入可能に構成されている。パッキン片9は、管周方向に沿って円弧状に延び、その長さは切欠部76aの長さに比べて僅かに小さい。図9,10,12では、パッキン片9の嵌入によって切欠部76aが埋められた状態になっている。パッキン片9の管周方向における端面91,92は、それぞれ上下方向に沿って形成されているが、これに限られない。パッキン片9の管軸方向一方側の側面93は階段状に形成されている。パッキン片9の管軸方向他方側の側面には、サドル部71に対する密着性を高めるために突起94が形成されている。この例では、断面半円形状をなす突起94が一対で形成されている。
図14,15は、ボルト孔81に装着されている締結具74を緩め、サドル部71に対して閉鎖部材8を管径方向外側(図14の上側)へ移動させた状態(以下、「オフセット状態」と呼ぶ)を示す。隠れて見えないが、閉鎖部材8と一緒にパッキン片9も管径方向外側に移動している。パッキン片9は、例えば接着剤などを用いて閉鎖部材8の内面に固着されている。オフセット状態において、流体機器7は、管周方向で部分的に内径を拡大させ且つ管軸方向に向けて開口した通過孔部71cを有する。通過孔部71cは、サドル部71の管軸方向の一端部に設けられている。
流体機器7は、更に、通過孔部71cを閉鎖可能な閉鎖機構70を有する。閉鎖機構70は、閉鎖部材8(及びパッキン片9)と、その閉鎖部材8を移動操作するための操作具としての締結具74とを含む。後述するように、オフセット状態から締結具74を締め付けることにより、閉鎖部材8を管径方向内側(図14の下側)に移動できる。このように、第3実施形態では、閉鎖部材8を操作するための操作具が、流体機器7を締結固定するための締結具74を兼ねている。
本実施形態では、オフセット状態において通過孔部71cが安定して保持されるよう、図16に示す治具84を装着している。治具84は、作業者が挟持するための摘まみ部84aと、サドル部71と閉鎖部材8との間隔を確保するためのスペーサ部84bと、サドル部71とサドル部72またはサドル部73との間隔を確保するためのスペーサ部84cとを有する。スペーサ部84b,84cには、それぞれボルト74aを挿通するための挿通孔85と、その挿通孔85に通じるスリット86とが形成されている。治具84は、例えば樹脂材によって形成される。
流体機器7は、締結具74を緩めたオフセット状態で、予め仮設領域A2に仮装着しておくことができる。図14(A)は、設置領域A1から流体機器2を撤去した直後の状態を示す。設置領域A1から流体機器2を撤去した後、設置領域A1に隣接する仮設領域A2に仮装着した流体機器7を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置し、分岐口10から漏出する水を流体機器7に接続された排出管路4へ流す。その際、防錆コア11が通過孔部71cを通って流体機器7の内部に配置されるように、流体機器7を管軸方向にスライドさせる。かかる工程は、第2実施形態と同様に実施できるため、詳しい説明を省略する。
流体機器7を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置した後、流体機器7に取り付けられた締結具74を介して、流体機器7が備える閉鎖部材8を移動操作し、それによって通過孔部71cの隙間を密封する。これにより、水道管1の外面と流体機器7の内面との隙間が密封され、通過孔部71cからの水の流出を止めることができる。閉鎖部材8は、治具84を取り外して締結具74を締め付けることにより、管径方向内側に移動できる。摘まみ部84aを引っ張ると、スペーサ部84b,84cが変形してスリット86が拡がるので、治具84を簡単に引き抜いて取り外すことができる。
閉鎖部材8が管径方向内側に移動すると、閉鎖部材8で押圧されたパッキン片9が切欠部76aに嵌入され、図12のように水道管1の外面に密着する。しかも、ガイド部83の作用によって、閉鎖部材8が管軸方向他方側(図12の左側)にガイドされる。その際、突部82の側面82dがパッキン片9の側面93を管軸方向一方側(図12の右側)から支持しているため、切欠部71aの管軸方向の端面にパッキン片9の突起94が密着する。更に、パッキン片9の端面91,92は、それぞれ切欠部76aの管周方向の端面に密着する。このようにして通過孔部71cの隙間が密封される。
流体機器7を設置領域A1に配置したら、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、流体機器7を設置領域A1に締結固定する。第3実施形態では、閉鎖部材8を操作するための操作具が締結具74を兼ねているため、通過孔部71cを閉鎖する作業を行うことにより、流体機器7の締結固定が行われる。流体機器7を設置領域A1に締結固定したら、開閉プラグ75を閉めて排出管路4を撤去し、代わりに分岐管路(図示せず)を接続して、流体機器7を介して給水可能な状態にする。
上記の通り、第1〜第3実施形態の流体機器の取替方法は、水道管1の管壁に形成された分岐口10を密封状態で囲繞する既設流体機器2を、不断水状態で新規流体機器3,6,7に取り替える流体機器の取替方法であって、分岐口10を密封囲繞可能な設置領域A1から既設流体機器2を撤去する工程と、分割構造を有する新規流体機器3,6,7を設置領域A1に配置するとともに、分岐口10と連通して新規流体機器3,6,7の外部で延在する排出管路4を設ける工程と、分岐口10から漏出する水を排出管路4へ流しながら、新規流体機器3,6,7を設置領域A1に締結固定する工程と、を備える。これにより、漏水が発生し続ける状況において、不断水状態で流体機器を安全に取り替えることができる。
第1実施形態の流体機器の取替方法では、既設流体機器2を撤去した後、排出管路4を保持する保持部材5を水道管1に装着して、分岐口10から漏出する水が排出管路4へ流れる状態とし、排出管路4を挿通させた新規流体機器3を保持部材5に被せることで、新規流体機器3を設置領域A1に配置する。これにより、新規流体機器3を設置領域A1に配置する前に、分岐口10から漏出する水が排出管路4へ流れる状態となるため、より安全に施工できる。
第1実施形態の流体機器の取替方法では、新規流体機器3を設置領域A1に締結固定した後、保持部材5と排出管路4との接続を解除し、新規流体機器3の内部に保持部材5を残置させて排出管路4を撤去することが好ましい。これにより、新規流体機器3を設置領域A1に締結固定した後の作業が簡単になる。
第2,第3実施形態の流体機器の取替方法では、設置領域A1から既設流体機器2を撤去した後、設置領域A1に隣接する仮設領域A2に仮装着した新規流体機器6,7を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置し、分岐口10から漏出する水を新規流体機器6,7に接続された排出管路4へ流す。これにより、新規流体機器6,7を設置領域A1に配置して締結固定する作業が簡単になり、作業時間の短縮によって施工ピットP内での漏水量が抑えられる。
第2,第3実施形態の流体機器の取替方法では、新規流体機器6,7が、管周方向で部分的に内径を拡大させ且つ管軸方向に向けて開口した通過孔部61b,71cを有し、分岐口10に装着され水道管1の外面から突出している防錆コア11が通過孔部61b,71cを通って新規流体機器6,7の内部に配置されるように、新規流体機器6,7を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置する。これにより、水道管1の外面から突出している防錆コア11を容易に躱して、新規流体機器6,7を設置領域A1に円滑に配置できる。それ故、防錆コア11の有無に影響されることなく、不断水状態で流体機器を取り替えることができる。
第2,第3実施形態の流体機器の取替方法では、新規流体機器6,7を管軸方向にスライドさせて設置領域A1に配置した後、新規流体機器6,7に取り付けられた操作具(押ボルト69、締結具74)を介して、新規流体機器6,7が備える閉鎖部材68,8を移動操作し、それによって通過孔部61b,71cの隙間を密封する。これにより、通過孔部61b,71cからの水の流出を止めることができる。
第3実施形態の流体機器の取替方法では、前記操作具が、新規流体機器7を締結固定するための締結具74を兼ねている。これにより、閉鎖部材8を移動操作しながら、それと同時に新規流体機器7を水道管1に締結固定することができる。
以上、本開示の実施形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、更には特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
流体機器の分割数は特に限定されない。第1,第3実施形態では、それぞれ流体機器3,7が管周方向に三分割された構造であったが、例えば二分割構造にしてもよい。また、第2実施形態では、流体機器6が管周方向に二分割された構造であったが、例えば三分割構造にしてもよい。
本開示の流体機器の取替方法は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。上述した第1〜第3実施形態で採用されている各構成を、任意に組み合わせて採用しても構わない。
1 水道管
2 既設流体機器
3 新規流体機器
4 排出管路
5 保持部材
6 新規流体機器
7 新規流体機器
8 閉鎖部材
9 パッキン片
10 分岐口
11 防錆コア
35 開閉弁(開閉部の一例)
37 流入口
61b 通過孔部
64 開閉プラグ(開閉部の一例)
68 閉鎖部材
69 押ボルト(操作具の一例)
71c 通過孔部
74 締結具(操作具の一例)
75 開閉プラグ(開閉部の一例)
A1 設置領域
A2 仮設領域

Claims (7)

  1. 水道管の管壁に形成された分岐口を密封状態で囲繞する既設流体機器を、不断水状態で新規流体機器に取り替える流体機器の取替方法であって、
    前記分岐口を密封囲繞可能な設置領域から前記既設流体機器を撤去する工程と、
    分割構造を有する前記新規流体機器を前記設置領域に配置するとともに、前記分岐口と連通して前記新規流体機器の外部で延在する排出管路を設ける工程と、
    前記分岐口から漏出する水を前記排出管路へ流しながら、前記新規流体機器を前記設置領域に締結固定する工程と、を備えることを特徴とする、流体機器の取替方法。
  2. 前記既設流体機器を撤去した後、前記排出管路を保持する保持部材を前記水道管に装着して、前記分岐口から漏出する水が前記排出管路へ流れる状態とし、
    前記排出管路を挿通させた前記新規流体機器を前記保持部材に被せることで、前記新規流体機器を前記設置領域に配置する、請求項1に記載の流体機器の取替方法。
  3. 前記新規流体機器を前記設置領域に締結固定した後、前記保持部材と前記排出管路との接続を解除し、前記新規流体機器の内部に前記保持部材を残置させて前記排出管路を撤去する、請求項2に記載の流体機器の取替方法。
  4. 前記設置領域から前記既設流体機器を撤去した後、前記設置領域に隣接する仮設領域に仮装着した前記新規流体機器を管軸方向にスライドさせて前記設置領域に配置し、前記分岐口から漏出する水を前記新規流体機器に接続された前記排出管路へ流す、請求項1に記載の流体機器の取替方法。
  5. 前記新規流体機器が、管周方向で部分的に内径を拡大させ且つ管軸方向に向けて開口した通過孔部を有し、
    前記分岐口に装着され前記水道管の外面から突出している防錆コアが前記通過孔部を通って前記新規流体機器の内部に配置されるように、前記新規流体機器を管軸方向にスライドさせて前記設置領域に配置する、請求項4に記載の流体機器の取替方法。
  6. 前記新規流体機器を管軸方向にスライドさせて前記設置領域に配置した後、前記新規流体機器に取り付けられた操作具を介して、前記新規流体機器が備える閉鎖部材を移動操作し、それによって前記通過孔部の隙間を密封する、請求項5に記載の流体機器の取替方法。
  7. 前記操作具が、前記新規流体機器を締結固定するための締結具を兼ねている、請求項6に記載の流体機器の取替方法。
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