JP2021102560A - 除草剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的高濃度の酢酸を含む除草剤中においてもマスキング効果が得られ、かつ、そのマスキング性能を長期間維持できるようにする。【解決手段】溶媒に溶解した酢酸を有効成分として含む除草剤において、ラクトン系化合物からなる香料を含んでいる。【選択図】なし

Description

本発明は、除草剤に関するものである。
従来より、ある剤を形成する成分中の特定の成分の臭いを隠すための香料、いわゆるマスキング香料を添加することが行われている。
特許文献1の除草剤は、酢酸、プロピオン酸及び乳酸から選ばれる有機酸を有効成分としており、マスキング香料としてバニリンが添加されている。
特許文献2の洗浄剤組成物は、酢酸を有効成分としており、マスキング香料としてフルーツ系香料が添加されている。
特開2015−137240号公報 特開2002−3886号公報
ところで、特許文献1の除草剤では、比較的高濃度の酢酸を含んでおり、使用時には酢酸臭がきつく感じられることに鑑みてバニリンを所定量添加し、使用時の不快感を抑制している。
しかしながら、特に香りに関しては消費者ニーズが多様化しており、他の種類の香りで酢酸臭をマスキングしたいという要求があるが、除草効果を十分に得るために酢酸の濃度を高くしていることから、これまではマスキング効果が得られる香料を選定することが困難であった。特に除草剤の場合、使用される時期は夏季の暑い時期であるとともに、高温下で数ヶ月間保管される場合が多く、このような状況下においても香料の変質を防ぎマスキング性能を維持させることが要求される。
また、特許文献2にはマスキング香料としてのフルーツ系香料が開示されているが、この特許文献2は洗浄剤組成物であるため、酢酸の濃度が除草剤に比べて低くなっている。特許文献2のフルーツ系香料が除草剤のように比較的高濃度の酢酸中においても十分にマスキングできるか否か、当該香料が長期間安定できるか否かは不明である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的高濃度の酢酸を含む除草剤中においてもマスキング効果が得られ、かつ、そのマスキング性能を長期間維持させることにある。
発明者が鋭意研究を重ねた結果、高濃度の酢酸が含まれる除草剤においては、テルペン系化合物からなる香料ではマスキング効果が低くなり、また、エステル系化合物からなる香料では長期安定性が不足することが明らかになった。
そこで本発明は、酢酸を用いた除草剤において、マスキングおよび長期安定性を満足する香料としてラクトン系化合物を含む香料を混合するようにした。
第1の発明は、溶媒に溶解した酢酸を有効成分として含む除草剤において、ラクトン系化合物を含む香料が混合されていることを特徴とする。
すなわち、ラクトン系化合物を含む香料は酢酸臭のマスキング効果が高く、かつ高濃度の酢酸中においても変質することがないためマスキング性能を長期間に亘って維持でき、使用時の酢酸臭による不快感が低減される。
第2の発明は、前記香料は、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンを含む群から選ばれる1または2以上のラクトン系化合物を含むことを特徴とする。
この構成によれば、桃の主要な香気成分によるマスキング効果が得られるので、消費者ニーズの多様化に対応できる。
第3の発明は、前記酢酸の濃度は4質量%以上11質量%以下であることを特徴とする。
この構成によれば、除草効果の高い組成とすることができる。
第4の発明は、前記香料の濃度は、0.2質量%以下であることを特徴とする。
この構成によれば、香料の使用量を抑制して低コスト化を図りながら、マスキング効果を得ることができる。
第5の発明は、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドを含むことを特徴とする。
この構成によれば、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドが陽イオン性界面活性剤であるため、負に帯電した茎葉表面の角皮(クチクラ)に付着しやすい。ジデシルジメチルアンモニウムクロライドが雑草の茎葉表面に触れると、茎葉表面の角皮にジデシルジメチルアンモニウムクロライドが付着して茎葉表面の濡れ性を向上させるとともに、茎葉の細胞壁を損傷ないし破壊する。そして、有効成分である酢酸が茎葉表面に素早く濡れ広がる。また、茎葉の細胞壁が損傷ないし破壊されているので、酢酸が細胞内部に侵入しやすくなる。この結果、酢酸が素早く雑草に吸収され、極めて短時間で葉枯れ効果が現れる。この場合に、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドがラクトン系化合物によるマスキング効果を阻害することはなく、使用時の酢酸臭による不快感が低減される。
第6の発明は、前記香料は、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンを含み、γ−ウンデカラクトンの含有量が、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンの各含有量よりも多く設定されていることを特徴とする。
この構成によれば、桃のような香りにより一層近づくとともに、酢酸臭のマスキング効果が十分に得られるようになる。
本発明によれば、ラクトン系化合物からなる香料を含んでいるので、比較的高濃度の酢酸を含む除草剤中においてもマスキング効果が得られ、かつ、そのマスキング性能を長期間維持することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明の実施形態に係る除草剤は、溶媒に溶解した酢酸を有効成分として含んでおり、これにマスキング香料が混合されてなるものである。酢酸の溶媒は、イオン交換水等の水である。酢酸の濃度は、4質量%以上11質量%以下の範囲で設定することができる。酢酸の濃度の下限は6質量%以上とするのが好ましい。酢酸の濃度の上限は10質量%以下とするのが好ましい。酢酸の濃度を4質量%以上とすることで、例えばネザサ(イネ科)、イタドリ(タデ科)、ドクダミ(ドクダミ科)、スギナ(トクサ科)等の雑草に対する葉枯れ効果を十分に高めることができる。また、酢酸の濃度を6質量%以上とすることで葉枯れ効果がより一層向上する。酢酸の濃度を11質量%以下とすることで、後述するマスキング香料によるマスキング効果が得られ、特に、10質量%以下とすることで、マスキング香料によるマスキング効果がさらに高まる。
酢酸が有効成分であることから、グリホサートのような自然界に存在しない合成農薬に比べて忌避や使用制限がなされにくい。特に、子供やペットのいる家庭菜園や庭の除草に安心して使用することができる。ただしこれに限定されるわけではなく、本発明の除草剤は、酢酸に加えて、グリホサートや他の公知の除草成分を追加の有効成分として配合することもできる。
酢酸を含む醸造酢を除草剤の原料として用いることができる。使用可能な醸造酢としては、例えばHDV(キューピー醸造株式会社製)やHA−150(マルカン酢株式会社製)など、酢酸を含む市販の醸造酢を挙げることができる。特に高濃度の醸造酢を用いることで、除草剤中の酢酸濃度を上げて、除草剤の効力を向上させることが可能になるため好ましい。醸造酢に代えて、または醸造酢に加えて、木酢液や市販の合成酢酸、加工食酢等を用いることができる。合成酢酸であれば、より安価に除草剤を製造可能である。また、除草剤には、プロピオン酸や乳酸を混合してもよい。
マスキング香料は、ラクトン系化合物を含む香料であり、酢酸臭をマスキングするための組成物である。酢酸臭を完全にマスキングしてもよいが、多少の酢酸臭が感じられたとしても、除草剤の使用感として良好な範囲での酢酸臭は除草剤であるという観点からは許容でき、このような場合もマスキング効果を発揮しているものとする。また、ラクトン系化合物は酸性条件で環を形成するため安定しており、後述するように高濃度酢酸中においても変質することなく数ヶ月間に亘ってマスキング性能を維持する。
マスキング香料は、γ−ウンデカラクトン(C11)、γ−ノナラクトン(C9)及びγ−デカラクトン(C10)を含む群から選ばれる1または2以上のラクトン系化合物を含んでいる。γ−ウンデカラクトンの含有量が、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンの各含有量よりも多く設定されている。また、γ−ノナラクトンの含有量は、γ−デカラクトンの含有量よりも多く設定されている。マスキング香料は、ラクトン系化合物を溶解する香料用溶媒を含んでいる。香料用溶媒としては、酢酸の除草効果を低減させないジプロピレングリコールが好ましい。ジプロピレングリコールの含有量は、γ−ウンデカラクトンの含有量よりも少なく設定されているが、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンの各含有量よりも多く設定されている。
マスキング香料の処方の一例としては、γ−ウンデカラクトンの含有量が40質量%以上60質量%以下、γ−ノナラクトンの含有量が5質量%以上15質量%以下、γ−デカラクトンの含有量が3質量%以上8質量%以下、残部をジプロピレングリコールとすることができる。ジプロピレングリコールの含有量は、例えば20質量%以上30質量%以下とすることができる。
マスキング香料の濃度は、0.2質量%以下である。マスキング香料の濃度の上限は、例えば0.1質量%以下とすることができる。また、マスキング香料の濃度の下限は、例えば0.05質量%以下とすることができる。上述した酢酸の濃度を前提としたとき、マスキング香料を0.05質量%以上含んでいれば、通常の使用時にはマスキング効果を得ることができる。また、マスキング香料の濃度を0.2質量%以下とすることで、必要以上にマスキング香料を含まない組成とすることができ、低コスト化を図ることができる。
除草剤は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤は、上記成分を溶媒(イオン交換水)中に均一に溶解させるとともに、雑草の葉面に対する有効成分(酢酸)の展着性を向上させることにより草枯れ効果を増大させる。草枯れ効果の観点から、界面活性剤はジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)が特に好ましい。ジデシルジメチルアンモニウムクロライドとしては、例えばパイオニンB−2211(竹本油脂株式会社)や、アーカード210−80E(ライオン株式会社)などの市販のものを用いることができる。なお、除草剤中のジデシルジメチルアンモニウムクロライドの濃度は、葉枯れ効果の観点から0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また、作業者に対する影響を考慮すると、1.0質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。
また、溶媒として、イオン交換水に代えて、蒸留水や水道水、井戸水などを用いてもよい。また、水の一部又は全部を、有機酸及び香料を溶解可能な有機溶剤に置換してもよい。有機溶剤の例としては、エタノールやイソプロピルアルコール等が挙げられる。
本実施形態における除草剤の製造方法は、まず大容器に醸造酢(酢酸15%)を投入し、更にマスキング香料及び界面活性剤(ジデシルジメチルアンモニウムクロライド)を加えて撹拌した後、規定の酢酸濃度になるようにイオン交換水を加えて撹拌する。この方法により、本実施形態の除草剤が得られる。ただし、調合順序はこれに限らない。なお、溶解とはミセル状態での溶解も含み、肉眼で均一に見える状態を指すものとする。
このようにして得た除草剤は、例えば上部に複数の孔の空いたシャワータイプの容器に入れ、容器を傾けることにより雑草の茎葉部分にかけて使用することができる。その他、霧吹き、エアゾール容器、農業用の散布機又は噴霧機等を用いて除草剤を散布してもよい。また、使用時と比べて濃度の高い状態で除草剤を製造、貯蔵及び販売し、除草剤使用前に水等の液体で希釈して使用することも可能である。
次に、具体的に実施した実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。表1は実施例の除草剤に含まれる成分とその含有割合を示したものである。なお本実施例で用いた界面活性剤中には、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(DDAC)が約75質量%含まれている。
Figure 2021102560
実施例の除草剤の調製後、すぐに使用した時における酢酸臭について官能評価を行った結果、酢酸臭はほぼしなかった。また、酢酸の含有量を4質量%以上11質量%以下の範囲で変更した除草剤を調製し、使用時における酢酸臭について官能評価を行った結果、これらの場合も酢酸臭はほぼしなかったか、ほとんど気にならない範囲であった。よって、マスキング香料は0.08質量%という極めて少ない含有量で十分なマスキング効果を発揮することが分かる。なお、官能評価であることから多少の感じ方のばらつきが存在することは避けられず、そのばらつきを考慮した場合、マスキング香料を実施例よりも多く含有させるのが好ましいこともある。
次に、実施例のマスキング効果の経時的変化を確認した結果について説明する。実施例の調製後、40℃の雰囲気中に3ヶ月間保管してから使用する時における酢酸臭を同様に官能評価すると、保管前と比べてほとんど変化が感じられなかった。酢酸の含有量を4質量%以上11質量%以下の範囲で変更した場合も同様であった。したがって、マスキング香料に含まれるラクトン系化合物の経時的変化がほとんど起こらず、そのマスキング性能を長期間維持させることができる。なお、40℃、3ヶ月という条件は、除草剤が使用される機会は高温になる夏季が多く、しかも、除草剤は屋外や倉庫等に保管されるケースが多いことに基づいて設定した。
比較例1、2として表2に示す除草剤を調製した。比較例1ではアップル系香料を使用した。アップル系香料はエステル系化合物が主体の香料であり、例えば、β-PINENE、ETHYL ACETATE、HEXYL ACETATE、ETHYL 2-METHYLBUTYRATE、ISO-AMYL ACETATE等を含んでいる。比較例2ではレモン系香料を使用した。レモン系香料はテルペン系化合物が主体の香料であり、例えば、α-PINENE、γ-TERPINENE、β-PINENE、LIMONENE等を含んでいる。
Figure 2021102560
アップル系香料を含む比較例1の調製後、すぐに使用した時における酢酸臭について官能評価を行った結果、酢酸臭はほとんど感じられなかった。しかし、比較例1の調製後、40℃の雰囲気中に3ヶ月間保管してから使用する時における酢酸臭を同様に官能評価すると、酢酸臭がかなり感じられた。これは酸性条件でアップル系香料が変質したことによるものと考えられる。
レモン系香料を含む比較例2の調製後、すぐに使用した時における酢酸臭について官能評価を行った結果、酢酸臭がまあまあ感じられたので、初期において既にマスキング効果が不足していた。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る除草剤によれば、溶媒に溶解した酢酸を有効成分として含む除草剤に、ラクトン系化合物を含むマスキング香料を混合したので、十分なマスキング効果が得られ、しかもそのマスキング性能を数ヶ月以上の長期間に亘って維持することができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明に係る除草剤は、例えば、畑地、水田、果樹園、家庭菜園等の農耕地や、グラウンド、工場敷地等の非農耕地で雑草を防除するために使用できる。

Claims (6)

  1. 溶媒に溶解した酢酸を有効成分として含む除草剤において、
    ラクトン系化合物を含む香料が混合されていることを特徴とする除草剤。
  2. 請求項1に記載の除草剤において、
    前記香料は、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンを含む群から選ばれる1または2以上のラクトン系化合物を含むことを特徴とする除草剤。
  3. 請求項1または2に記載の除草剤において、
    前記酢酸の濃度は4質量%以上11質量%以下であることを特徴とする除草剤。
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載の除草剤において、
    前記香料の濃度は、0.2質量%以下であることを特徴とする除草剤。
  5. 請求項1から4のいずれか1つに記載の除草剤において、
    ジデシルジメチルアンモニウムクロライドを含むことを特徴とする除草剤。
  6. 請求項1から5のいずれか1つに記載の除草剤において、
    前記香料は、γ−ウンデカラクトン、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンを含み、γ−ウンデカラクトンの含有量が、γ−ノナラクトン及びγ−デカラクトンの各含有量よりも多く設定されていることを特徴とする除草剤。
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