JP2021098319A - 繊維強化樹脂成形体および複合成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明では、繊維強化樹脂成形体において、熱可塑性樹脂からなる別部材を容易に接合でき、かつ、その接合性能に優れる繊維強化樹脂成形体およびそれからなる複合成形体を提供することを目的とする。【解決手段】強化繊維(A)、熱硬化性樹脂(B)、熱可塑性樹脂(C)および無機充填材(D)を含む、繊維強化樹脂成形体であって、強化繊維(A)は、多数本の連続した単糸から構成される強化繊維群であり、熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域と熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域の境界面において、前記強化繊維(A)の強化繊維群の一部および無機充填材(D)の少なくとも一部が熱硬化性樹脂(B)および熱可塑性樹脂(C)の両者と接する、繊維強化樹脂成形体。【選択図】図2

Description

本発明は、熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂の両者を含む繊維強化樹脂成形体に関する。
熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として用い、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維と組み合わせた繊維強化樹脂は、軽量でありながら、強度や剛性などの力学特性や耐熱性や耐食性に優れているため、航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に活用されている。
一般に、繊維強化樹脂は、複雑な形状を有する部品や成形体を単一の成形工程で製造するには不向きであり、複雑な形状を形成するためには、繊維強化樹脂からなる部材を作製し、次いで、別の部材と接合する必要がある。航空機や自動車用の構造部材や準構造部材として用いる場合、現状、接着剤を用いる接合手法や、リベットなどの機械的締結による接合手法が用いられている。しかし、接着剤を用いた場合は、繊維強化樹脂成形体と別の部材との境界面で剥離などによる接合不良が発生する可能性がある。また、機械的締結を用いた場合は、繊維強化樹脂および別の部材に穴開けを行うため、穴部の強度が低下する可能性があるといった課題がある。
熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂に用いた繊維強化樹脂は、他の熱可塑性樹脂を用いた部材と溶着により接合することができるため、比較的工程を簡略化しやすいと言える。例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂層と熱可塑性樹脂層が凹凸形状の境界面を形成して接合されている繊維強化樹脂製の積層体が開示されており、そのような積層体は、優れた接合強度を発現するとともに、高温環境下で容易に解体できることが記載されている。
国際公開第2004/060658号
特許文献1に示される手法は、穴開けの必要が無く、繊維強化樹脂成形体の強度や剛性などの特性を有効に活用でき、接合工程が簡便であることから高い生産性を有する。しかし、製品としての適応範囲の拡大のためには、さらなる接合強度の向上が求められていた。
本発明は、高度な接合性を有し、最終製品としての適応範囲が広い繊維強化樹脂成形体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、強化繊維(A)、熱硬化性樹脂(B)、熱可塑性樹脂(C)および無機充填材(D)を含む、繊維強化樹脂成形体であって、連続した強化繊維(A)から構成される強化繊維群と、熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域および熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域を有するマトリックス樹脂とが複合化されてなり、強化繊維(A)の一部および無機充填材(D)の一部が、前記熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域および前記熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域の両者と接しており、かつ少なくとも一方の表面に前記熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域が存在する繊維強化樹脂成形体である。
本発明に係る繊維強化樹脂成形体の模式図である。 本発明に係る繊維強化樹脂成形体の断面模式図である。 無機充填剤(D)の凝集ストラクチャー長さを説明するための模式図である。
以下に、本発明について説明する。
<繊維強化樹脂成形体>
本発明の繊維強化樹脂成形体(以下、単に「成形体」という場合がある)は、連続した強化繊維(A)から構成される強化繊維群と、熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域および熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域を有するマトリックス樹脂とが複合化されてなるものである。以下、本明細書においては、連続した強化繊維(A)から構成される強化繊維群を「強化繊維群」、熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域を「熱硬化性樹脂領域」、熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域を「熱可塑性樹脂領域」と略称する。
図2は本発明の繊維強化樹脂成形体の一実施形態において、図1に示すように強化繊維(A)の配向方向に対し45度の角度をなし、かつ成形体の面方向に垂直に切った断面を示す模式図である。図2において、強化繊維(A)6は紙面に垂直な方向から45度傾いた角度に配向する多数本の強化繊維(A)6から構成される強化繊維群を構成している。そして、当該強化繊維群に、熱硬化性樹脂領域8と熱可塑性樹脂領域7とからなるマトリックス樹脂が複合化され、全体として強化繊維樹脂成形体を構成している。このように、本発明の繊維強化樹脂成形体において、熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域とは界面を形成しつつ接している。
そして、本発明の成形体においては、少なくとも一方の表面に前記熱可塑性樹脂領域が存在する。このようにすることで、成形体を別の部材との接合する場合に、熱可塑性樹脂領域が接合面となり、射出成形や熱溶着などの簡便な工程にて接合することが可能となる。熱可塑性樹脂領域は、表面の50%以上の面積占めていることが好ましく、80%以上を占めていることがより好ましく、とりわけ好ましくは100%、すなわち表面全てが熱可塑性樹脂領域であることである。また、両面に熱可塑性樹脂領域が存在することも好ましい。
図2に示すように、熱可塑性樹脂領域と熱硬化性樹脂領域とは層状構造をなしていることが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂層と熱硬化性樹脂層が界面を形成しつつ積層されている形態であることが好ましい。このような積層構造をとることで、成形体を別の部材と接合する場合により接合強度を向上させることができる。
熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域との界面に関しては、図1に示すように、成形体を、強化繊維(A)の配向方向に対し45度の角度をなし、かつ成形体の面方向に垂直な断面を観察した場合に、当該断面において、両樹脂領域の界面がなす曲線(以下、「界面曲線」という)の粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、かつ粗さ平均高さRcが3.5μm以上であることが好ましい。ここで、粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcは、JIS B0601(2013)に従って算出される、輪郭曲線の粗さを表すパラメータである。
かかる断面観察において、界面曲線の粗さ平均長さRSmが100μm以下であると、化学的または/および物理的な結合力のみならず、交絡という機械的な結合力も加わりやすく、両樹脂領域が剥離しにくくなる。RSmの下限値は、特に限定されないが、応力集中による機械的な結合力の低下を忌避するという観点から、好ましくは15μm以上である。
また、当該界面曲線の粗さ平均高さRcが3.5μm以上であることにより、上記の交絡による機械的な結合力に加え、境界面上に存在する強化繊維(A)が熱硬化性樹脂領域および熱可塑性樹脂領域の双方と物理的な凹凸形状を形成しやすくなり、両樹脂領域の密着力が向上する。Rcの好ましい範囲としては、強化繊維(A)および後述する無機充填剤(D)が両樹脂領域に接しやすくなることによって密着力がより向上する10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。上限値は、特に限定されないが、応力集中による機械的な結合力の低下を忌避するという観点から、好ましくは100μm以下である。
ここで、界面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを測定するための断面を得る方法としては、図1に示すように、成形体における、熱可塑性樹脂領域を有する側の最表面に配向する強化繊維の方向を0度とし基準とし、その垂線方向(強化繊維の断面が真円に観察される方向)に対して、45度の角度となるように、ダイヤモンドカッターなどを用いて、切削研磨を行うことにより観察断面を得ることができる。このとき、湿式研磨紙は所望する断面の観察画像が鮮鋭に観察できるようにするために、#1500程度の砥粒サイズで仕上げ研磨することを好ましく例示することができる。得られた断面から、界面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを測定する方法は、例えば、X線CTを用いて断面画像を取得する方法、エネルギー分散型X線分光器(EDS)を用いた断面の元素分析マッピング画像を用いる方法、あるいは光学顕微鏡あるいは走査電子顕微鏡(SEM)あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察画像を用いる方法が挙げられる。観察においては、両樹脂領域のコントラストを調整するため、熱硬化性樹脂(B)および/または熱可塑性樹脂(C)を染色しても良い。上記のいずれかの手法により得られる画像において、500μm四方の範囲において、界面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを測定する。
界面曲線の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmの測定方法(界面曲線要素の測定方法)は、以下の通りである。長方形型の観察画像9の熱硬化性樹脂(B)を含む樹脂領域側の端部11を基準線として、熱硬化性樹脂(B)を含む樹脂領域8から熱可塑性樹脂(C)を含む樹脂領域7に向かって5μm間隔で垂基線12を描く。基準線から描かれる垂基線が初めて熱可塑性樹脂(C)と交わる点をプロットし、プロットされた点を結んだ線を界面曲線13とする。得られた界面曲線13につき、JIS B0601(2013)に基づくフィルタリング処理を行い、界面曲線13の粗さ平均高さRcおよび粗さ平均長さRSmを算出する。
そして、本発明においては、強化繊維群を構成している強化繊維(A)のうち一部の強化繊維(A)が、熱硬化性樹脂領域および熱可塑性樹脂領域の両者と接している。図2を参照すると、強化繊維(A)6の一部である強化繊維(A)6Aおよび6Bは、その断面の一部で熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域の両者と接している。なお、ここでは図2を用いてある特定の断面のみに基づいて説明したが、一部の強化繊維(A)は、特定の断面において両樹脂領域に接していなくても、その全長のどこかで両者と接していれば、両樹脂領域に接していると言える。この場合、そのような強化繊維(A)が両樹脂領域を跨ぐ部分の断面においては、当該強化繊維(A)の断面は図2における強化繊維(A)6Aや6Bのように両樹脂領域に接する状態で観察されることになる。
強化繊維(A)は、成形体の全体に渡り連続していても、あるいは分断されていてもよいが、10mm以上の長さを有していることが好ましく、成形体の全体に渡り連続していることがより好ましい。
本発明の繊維強化樹脂成形体は、さらに無機充填材(D)を含み、その一部の無機充填剤(D)もまた熱硬化性樹脂領域および熱可塑性樹脂領域の両者と接している。図2を参照すると、無機充填材(D)14Aは、その断面から明らかなように、熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域の両者と接している。ここで、無機充填剤(D)は一般的に強化繊維(A)よりも短小ではあるが、両樹脂領域に接する状態についての説明は前述した強化繊維(A)の場合と同様であるため省略する。
本発明の繊維強化樹脂成形体は、強化繊維(A)だけでなく、一部の無機充填剤(D)が熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域の両者に接していることにより、繊維強化樹脂成形体とした場合に、両樹脂領域が優れた接合性を示す。
繊維強化樹脂成形体における熱可塑性樹脂領域の目付は、10g/m2以上であると好ましい。熱可塑性樹脂領域の目付は、50g/m2以上であるとより優れた接合強度を発現するための十分な厚みを得やすいため好ましく、さらに好ましくは100g/m2である。目付の上限値は特に限定されないが、比強度と比弾性率に優れる積層体を得る観点から、好ましくは500g/m2以下である。ここで、熱可塑性樹脂領域の目付とは、成形体1m2あたりに含まれる熱可塑性樹脂(C)の質量(g)を指す。
また、繊維強化樹脂成形体の単位面積あたりの強化繊維量は、30〜2,000g/m2であることが好ましい。かかる強化繊維量が30g/m2以上であると、積層体成形の際に所定の厚みを得るための積層枚数を少なくすることができ、作業が簡便となりやすい。一方で、強化繊維量が2,000g/m2以下であると、繊維強化樹脂成形体のドレープ性が向上しやすくなる。
繊維強化樹脂成形体における強化繊維(A)の質量含有率は、好ましくは30〜90質量%であり、より好ましくは35〜85質量%であり、更に好ましくは40〜80質量%である。質量含有率が30質量%以上であると、樹脂の量が繊維対比多くなりすぎず、比強度と比弾性率に優れる繊維強化樹脂成形体の利点が得られやすくなり、また、成形の際、硬化時の発熱量が過度に高くなりにくい。また、質量含有率が90質量%以下であると、熱硬化性樹脂の含浸不良が生じにくく、得られる繊維強化樹脂成形体内のボイドが少なくなりやすい。
<強化繊維(A)>
本発明の成形体において、強化繊維群は、一方向に配向した強化繊維(A)が、一層または複数層配列されている形態、または、織物構造をとって配列されている形態かのいずれかの状態であることができる。軽量で耐久性がより高い成形体を得るためには、強化繊維群は一方向に配向した強化繊維(A)が一層または複数層配列されている形態であることが好ましい。また、一方向に配向した強化繊維(A)が複数層配列されている形態の場合、各層を構成する強化繊維群は、同方向に配向していてもよく、また直交するように配向していてもよい。
強化繊維(A)は、炭素繊維、ガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の強化繊維であることが、成形体自体の強度、弾性率や経済性の観点から好ましい。強化繊維(A)としては、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、金属繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、玄武岩繊維などを用いても良い。これらは、単独で用いてもよいし、適宜2種以上併用して用いてもよい。
これらの強化繊維(A)は、表面処理が施されているものであっても良い。表面処理としては、金属の被着処理、カップリング剤による処理、サイジング剤による処理、添加剤の付着処理などがある。これらの強化繊維の中には、導電性を有する強化繊維も含まれている。
強化繊維(A)としては、炭素繊維が、比重が小さく、高強度、高弾性率であることから、好ましく使用される。炭素繊維の市販品としては、“トレカ(登録商標)”T800G−24K、“トレカ(登録商標)”T800S−24K、“トレカ(登録商標)”T700G−24K、“トレカ(登録商標)”T700S−24K、“トレカ(登録商標)”T300−3K、および“トレカ(登録商標)”T1100G−24K(以上、東レ(株)製)などが挙げられる。
また、強化繊維(A)の、JIS R7608(2007)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠して測定したストランド引張強度が3.5GPa以上であると、引張強度に加え、優れた接合強度を有する積層体繊維強化複合材料が得られるため、好ましい。当該ストランド引張強度は、4.5GPa以上であるとより好ましい。
<熱硬化性樹脂(B)>
熱硬化性樹脂(B)は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、熱硬化ポリイミド、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂であることが、繊維強化樹脂成形体としたときの強度・弾性率や、製品とした場合の耐熱性の選択幅を拡げる観点から好ましい。なお、本明細書において、「熱硬化性樹脂(B)」は、硬化剤や添加剤を含んだ組成物であっても包含する用語であるものとする。
熱硬化性樹脂(B)としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、またはこれらの共重合体、変性体、および、これらの少なくとも2 種類をブレンドした樹脂がある。耐衝撃性向上のために、熱硬化性樹脂には、エラストマーもしくはゴム成分が添加されていても良い。
中でも、エポキシ樹脂は、力学特性、耐熱性および強化繊維との接着性に優れ、好ましい。エポキシ樹脂の主剤としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの臭素化エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−m−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−p−アミノフェノール、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−3−メチルフェノール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−2,2’−ジエチル−4,4’−メチレンジアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジンなどのグリシジルアミン型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、芳香族アミン化合物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリフェノール化合物、イミダゾール誘導体、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリメルカプタンなどが挙げられる。
<熱可塑性樹脂(C)>
熱可塑性樹脂(C)は、前記熱硬化性樹脂(B)の硬化反応温度範囲にて溶融状態となる熱可塑性樹脂であることが、繊維強化樹脂成形体内において、強化繊維(A)および無機充填材(D)を前記(B)と前記(C)からなる境界面に接しやすくすることができることから好ましい。
また、熱可塑性樹脂の溶融温度は、次のようにして測定することができる。熱可塑性樹脂をJIS K7121(1987)に規定される「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して融解温度のピーク値を測定する。測定前に試料の調整として、炉内温度50℃で制御された真空乾燥機中で24時間以上乾燥させたものを、示差走査熱量測定装置にて、前記規格による融解温度を得て、ピークトップを溶融温度と定義する。なお、本明細書において、「熱可塑性樹脂(C)」もまた、充填材や添加剤を含んだ組成物も包含する用語として用いる。
熱可塑性樹脂(C)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート 、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィンや、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂の他や、ポリオキシメチレン、ポリアミド6、ポリアミド66等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルや、ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、変性ポリスルホン 、ポリエーテルスルホンや、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等のポリアリーレンエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリル、フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。また、これら熱可塑性樹脂は、上述の樹脂の共重合体や変性体、および/または2種類以上ブレンドした樹脂などであってもよい。
これらの中でも、成形加工性と耐熱性や力学特性とのバランスから、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアミド、ポリオキシメチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
さらに、熱可塑性樹脂(C)は、用途等に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜、他の充填材や添加剤を含有しても良い。例えば、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤、カップリング剤などが挙げられる。
<無機充填材(D)>
本発明において、無機充填材(D)は、アスペクト比が5以上であることが好ましい。このような無機充填剤(D)を用いることで、熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域の界面において、無機充填剤(D)が両領域に接する構造を形成しやすくすることができ、また、当該界面の界面曲線の粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcを所定範囲に制御しやすくなる。同様の理由により、かかるアスペクト比は、さらに好ましくは50以上、さらに好ましくは100以上であり、無機充填材の取り扱い性の観点から上限は1000以下が好ましい。
さらに、無機充填剤(D)は、凝集ストラクチャー長Lが、強化繊維(A)の単繊維径の2倍以下であることが好ましい。ここで、無機充填材(D)の凝集ストラクチャー長Lは、以下のように測定される数値である。前提として、「ストラクチャー」とは、無機充填剤(D)が凝集により鎖状や塊状の様態を形成したもののことをいう。図1に示すように、繊維強化樹脂成形体および成形体を熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域の両方を含む断面を切り出し、それを走査型電子顕微鏡などの顕微鏡にて1000倍以上に拡大し、無作為に凝集体をなしている無機充填材の凝集物(図3に例示する様態に観察される、なお図3では無機充填材(D)の形状は簡易的に楕円で示している)を選び、その最外位置(例えば、16)を通る外接円を引き、その外接円の直径を計測し、凝集ストラクチャー長とする。ここで、測定数を50(n=50)以上とし、その算術平均値を凝集ストラクチャー長とする。無機充填剤(D)がこのような凝集状態で存在することにより、熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域がなす界面曲線の粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcが所定範囲になりやすい。
無機充填材(D)は繊維強化樹脂成形体100質量%に対して、0.01〜2.0質量%の範囲内で含まれると、熱硬化性樹脂領域と熱可塑性樹脂領域境界面において両樹脂領域に接しやすくすることができ、さらにはその界面曲線の粗さ平均長さRSm、粗さ平均高さRcを所定範囲に制御しやすくなることから好ましい。さらに、熱硬化性樹脂(B)や熱可塑性樹脂(C)との配合のしやすさから、0.05〜1.0質量%の範囲内で含まれることが特に好ましい。
無機充填材(D)は、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラストナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などの繊維状充填材、あるいはフラーレン、タルク、ワラストナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材が用いられる。なかでもカーボンブラック、黒鉛粉末、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、ミルド炭素繊維、ミルドガラス繊維、ワラストナイト、タルク、マイカからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材であることが、接着強度の向上、各種樹脂中への配合のしやすさ、汎用性、経済性の観点から好ましい。とりわけ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ワラストナイト、タルクが樹脂との接着特性、汎用性の観点から特に好ましい。またこれらの無機充填材は2種類以上併用することも可能である。さらに、これらの無機充填材はイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。
<複合成形体>
本発明の成形体は、繊維強化樹脂成形体の表面に存在する熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域に、他の部材を接合させて複合成形体とすることができる。他の部材としては、熱可塑性樹脂を含む部材が挙げられる。このような熱可塑性樹脂を含む他の部材には、強化繊維やフィラー等が含まれていても良い。一体化手法は特に制限はなく、例えば、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着、抵抗溶着、誘導溶着、インサート射出成形、アウトサート射出成形などを挙げることができる。この場合、他の部材に含まれる熱可塑性樹脂は、成形体が含有する熱可塑性樹脂(C)と同種の樹脂であることが好ましい。
他の部材と一態様としては、本発明の繊維強化樹脂成形体が挙げられる。これはすなわち、本発明の繊維強化樹脂成形体の熱可塑性樹脂領域同士を接合する態様である。このように接合することで、繊維強化樹脂成形体に用いられている熱可塑性樹脂(C)が、同種であることから、溶融時に相溶しやすく、強固な接合特性を得ることができる。
<用途>
本発明の繊維強化樹脂成形体および該成形体を用いた複合成形体は、航空機構造部材、風車羽根、自動車外板、ICトレイやノートパソコンの筐体、さらにはゴルフシャフトやテニスラケットなどスポーツ用品に好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、各種特性の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
<表中で用いた略称>
[強化繊維(A)]
・CF−1
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、及び表面酸化処理を行って得た総単糸数24,000本の連続した炭素繊維。特性は下記の通り。
単繊維径:7μm
密度:1.8g/cm3
引張強度:4600MPa
引張弾性率:220GPa
・CF−2
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、及び表面酸化処理を行って得られた総単糸数24,000本の連続した炭素繊維。特性は下記の通り。
単繊維径:5μm
密度:1.8g/cm3
引張強度:5900MPa
引張弾性率:294GPa
・GF−1
集束処理を施した総単糸数1,600本の連続した連続E−ガラス繊維。特性は下記の通り。
単繊維径:13μm
引張強度:3400MPa
引張弾性率:72GPa
引張伸度:3%
密度:2.6g/cm3。
[熱硬化性樹脂(B)]
・EP
エポキシ樹脂(詳細は後述)
[熱可塑性樹脂(C)]
・PA
ポリアミド樹脂(詳細は後述)
[無機充填材(D)]
・CNT−1
“Signis(登録商標)”CG−200(ケミカル アドバンスド マテリアルス社製、平均直径1.3nm、中心長さ1μm、アスペクト比769)
・CNT−2
“NANOCYL(登録商標)”NC−3000(Nanocyl社製、平均直径9.5nm、長さ1.5μm、アスペクト比158)
・CB−1
“Printex(登録商標)”L6(オリオン・エンジニアドカーボンズ社製、平均粒径23nm)
・CB−2
“ケッチェンブラック”EC300J(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、平均粒径39.5nm)
・CB−3
“GRANOC(登録商標)”HC−600(日本グラファイトファイバー(株)製、平均直径12.5μm、長さ100μm、アスペクト比8)
・IF−1
“ワラストナイト”FPW#400(キンセイマテック(株)製、平均径 8μm、平均長40μm、アスペクト比5)
・IF−2
”タルク”JM−209(浅田製粉(株)製、平均粒径3.9μm、アスペクト比7)
<評価方法>
(1)繊維強化樹脂成形体内の無機充填材(D)の存在状態および凝集ストラクチャー長
走査型電子顕微鏡(日立製作所(株)製S−4000)にて、複合構造体の繊維強化樹脂成形体部分の厚み方向の断面を5000倍以上に拡大し写真撮影し、無作為に凝集体をなしている無機充填材(D)(図3に例示する様態に観察される)を選び、外接円を描いた。その外接円の直径を凝集体のストラクチャー長として測定した。測定数を50(n=50)以上とし、その平均値を凝集ストラクチャー長とした。
(2)繊維強化樹脂成形体の接合強度の測定方法
各実施例・比較例で作製した成形体を、0°方向を試験片の長さ方向として、幅250mm、長さ92.5mmの形状に2枚カットし、真空オーブン中で24時間乾燥させた。その後、幅250mm、長さ92.5mmの形状にカットした2枚のパネルを、0°方向を長さ方向として、幅25mm×長さ12.5mmとして重ね合わせ、用いた前記(C)の熱可塑性樹脂の融点よりも20℃高い温度にて、3MPaの圧力をかけて、1分間保持することで、重ね合わせた面を溶着し、前記成形品を得た。得られた成形品に、ISO4587:1995(JIS K6850(1994))に準拠してタブを接着し、幅25mmでカットすることで、目的の試験片を得た。
得られた試験片を、真空オーブン中で24時間乾燥させ、ISO4587:1995(JIS K6850(1994))に基づく接合強度評価実験を行い、破壊後に分断された試験片の表面を顕微鏡にて観察し、熱可塑性樹脂の付着面積を画像から算出した。測定結果に基づいて以下のように評価した。
good:試験片の両方の破壊面に熱可塑性樹脂(C)が80%を超えて付着している。
fair:試験片の両方の破壊面に、熱可塑性樹脂(C)が60%以上〜80%未満付着しており、残りの面には熱硬化性樹脂(B)が観察される。
bad:試験片の両方の破壊面に、熱可塑性樹脂(C)が60%未満付着しており、残りの面には熱硬化性樹脂(B)が観察される。
worst:試験片の破壊面の片方に、熱可塑性樹脂(C)が100%付着しており、もう片方の面には熱硬化性樹脂(B)が観察される。
(3)別の部材と接合した複合成形品の接合強度の測定方法
各実施例・比較例で作製した成形体を、0°方向を試験片の長さ方向として、幅250mm、長さ92.5mmの形状に1枚カットし、真空オーブン中で24時間乾燥させた。その後、射出成形機の金型間にセットし、射出成形材料として下記のように作製した材料を用い、シリンダ温度、金型温度を表4記載のように設定して、繊維強化樹脂成形体における熱可塑性樹脂(C)側の面に射出成形して接合させた複合成形体を得た。
・NY6射出材料
二軸押出機中に、NY6(“アミラン(登録商標)”CM1007、東レ(株)製)を80部およびCF−1を20部投入し、250℃で加熱混練を行い、射出成形用のペレットを得た。ペレット中のCF−1の数平均繊維長は0.1mmであった。
・PP射出材料
二軸押出機中に、PP( “プライムポリプロ”(登録商標)、プライムポリマー(株)製、J105Gを79質量%と、 “アドマー” (登録商標)QB510、三井化学(株)製を20質量%とをドライブレンドしたもの)を80部およびCF−1を20部投入し、200℃で加熱混練を行い、射出成形用のペレットを得た。ペレット中のCF−1の数平均繊維長は0.1mmであった。
・PEKK射出成形材料
二軸押出機中に、PEKK(“KEPSTAN(登録商標)”7002、アルケマ(株)製、融点331℃)を80部およびCF−1を20部投入し、320℃で加熱混練を行い、射出成形用のペレットを得た。ペレット中のCF−1の数平均繊維長は0.1mmであった。
得られた複合成形体に、ISO4587:1995(JIS K6850(1994))に準拠してタブを接着し、幅25mmでカットすることで、目的の試験片を得た。
得られた試験片を、真空オーブン中で24時間乾燥させ、ISO4587:1995(JIS K6850(1994))に基づき、接合強度評価実験を行い、破壊後に分断された試験片の表面を顕微鏡にて観察し、熱可塑性樹脂の付着面積を画像から算出した。測定結果に基づいて以下のように評価した。結果は表4に記載した。
good:試験片の両方の破壊面に熱可塑性樹脂(C)が80%を超えて付着している。
fair:試験片の両方の破壊面に、熱可塑性樹脂(C)が60%以上〜80%未満付着しており、残りの面には熱硬化性樹脂(B)が観察される。
bad:試験片の両方の破壊面に、熱可塑性樹脂(C)が60%未満付着しており、残りの面には熱硬化性樹脂(B)が観察される。
worst:試験片の破壊面の片方に、熱可塑性樹脂(C)が100%付着しており、もう片方の面には熱硬化性樹脂(B)が観察される。
(4)界面曲線の粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRc
上記で作製した繊維強化樹脂成形体ないしは複合成形品を用い、前記両樹脂領域に含まれる強化繊維[A]の任意の配向方向に対し、繊維強化樹脂成形体の平面視における45度の角度にて繊維強化樹脂成形体の平面方向に対し垂直に、ダイヤモンドカッターを用いてカットした。カットにより得られた断面を、湿式研磨紙(#1500)を用いて、切削研磨を行うことにより観察断面を仕上げ研磨を行った。断面において、光学顕微鏡を用いて、1000倍の画像を撮影した。得られた画像中の任意の500μm四方の観察範囲において、前記界面曲線要素の測定方法1により得られる界面曲線要素のJIS B0601(2013)で定義される、粗さ平均長さRSmおよび粗さ平均高さRcを測定した。
<実施例1>
[熱可塑プリプレグ(PP+C)]
ポリプロピレン(PP)樹脂として、二軸押出機中に、未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J105G、融点161℃)79質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー” (登録商標)QB510、融点164℃)樹脂を20質量%、無機充填材(D)としてCNT−1を1質量%となるように調製し、200℃で加熱混練を行った。得られた混練物を100g/m2となるように調製し、2枚の金属板の間に挟みこんだものを、熱盤温度を200℃に調整したプレス機に面圧3MPaにて金属板と共に加圧・加熱を行った。5分後、プレス機の加圧を止めて解放し、金属板ごと、熱盤温度が50℃に調整したプレス機に移動させ、面圧3MPaで加圧・冷却をおこなうことで樹脂シート(PP)を得た。
強化繊維(A)としてCF−1を、一方向に引き揃えた強化繊維シート(目付193g/m2)に、樹脂シート(PP)を当該強化繊維シート上に配置して、IRヒータで200℃に加熱し、前記樹脂シートを溶融し、連続強化繊維シート片面全面に付着させ、表面温度が熱可塑性樹脂(C)の融点以下である、80℃に保たれたニップロールで加圧して、冷却して繊維強化樹脂成形体の中間体である熱可塑プリプレグ(PP+C)を得た。
[熱硬化性樹脂フィルム(EP)]
熱硬化性樹脂(B)として、実施例1と同様の熱硬化性樹脂(EP)を、ナイフコーターを用いて樹脂目付50g/m2で調整しながら離型紙上にコーティングし、熱硬化性樹脂フィルム(EP)を作製した。
[繊維強化樹脂成形体]
前記熱可塑プリプレグ(PP+C)における、樹脂シートを含浸させた反対の表面に前記熱硬化性樹脂フィルム(EP)を重ね、ヒートロールにより加熱加圧しながら樹脂フィルムを中間体に含浸させ、繊維強化樹脂成形体を成形するための複合プリプレグを得た。
前記熱硬化プリプレグ6枚、前記複合プリプレグ2枚を、強化繊維(A)の配向方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で積層し、プリフォームを作製した。このとき両面それぞれの最外層の2枚は前記複合プリプレグとなるように積層し、プリフォームの両側の表層が、熱可塑性樹脂層となるように配置した。このプリフォームをプレス成形金型にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例2>
[熱硬化プリプレグ(EP)]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)825(三菱ケミカル(株)製))を50質量部、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製))を50質量部、ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製))を8質量部投入し、加熱混練を行い、ポリエーテルスルホンを溶解させた。次いで、混練を続けたまま100℃以下の温度まで降温させ、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製))を45質量部加えて撹拌し、熱硬化性樹脂(EP)を得た。
熱硬化性樹脂(B)として熱硬化性樹脂(EP)を、ナイフコーターを用いて樹脂目付50g/m2で離型紙上にコーティングし、熱硬化性樹脂フィルムを作製した。この熱硬化性樹脂フィルムを、炭素繊維CF−1を一方向に引き揃えた強化繊維シート(目付193g/m2)の両側に重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧しながら熱硬化性樹脂フィルムを強化繊維(A)に含浸させた熱硬化プリプレグ(EP)を得た。
[樹脂シート(PA+C)]
二軸押出機中に、熱可塑性樹脂(C)としてポリアミド(PA)系樹脂である“アミラン(登録商標)”CM4000(東レ(株)製、3元共重合ポリアミド樹脂、融点155℃)を99質量%、無機充填材(D)としてCNT−2を1質量%となるように調製し、180℃で加熱混練を行った。得られた混練物を100g/m2となるように調製し、2枚の金属板の間に挟みこんだものを、熱盤温度を180℃に調整したプレス機に面圧3MPaにて金属板と共に加圧・加熱を行った。5分後、プレス機の加圧を止めて解放し、金属板ごと、熱盤温度が50℃に調整したプレス機に移動させ、面圧3MPaで加圧・冷却をおこなうことで樹脂シート(PA+C)を得た。
[繊維強化樹脂成形体]
次いで、熱硬化プリプレグに含まれる強化繊維(A)の配向方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で熱硬化プリプレグを8枚積層した。そして、さらにその両側に樹脂シート(PA+C)を1枚ずつ配置してプリフォームを得た。当該プリフォームをプレス成形金型にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例3〜5>
CNT−2に代えて表1に示す無機充填材(D)を用いた以外は、実施例2と同様にして、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例6>
強化繊維(A)としてCF−1に代えてCF−2を用いたこと、および無機充填材(D)CNT−1の配合量を熱可塑性樹脂(C)に対して、1.7質量%となるように調製したこと以外は実施例1と同様にして、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例7>
無機充填材(D)CNT−1の配合量を熱可塑性樹脂(C)に対して、0.5質量%となるように調製した以外は実施例1と同様にして、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例8>
強化繊維(A)としてCF−1に代えてCF−2を用い、無機充填材(D)としてCNT−2を用いた以外は実施例7と同様にして、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例9>
強化繊維(A)としてCF−1に代えてGF−1を用い、無機充填材(D)としてCNT−2を用いた以外は実施例7と同様にして、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例10>
[熱硬化プリプレグ(EP+C)]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)825(三菱ケミカル(株)製))を50質量部、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製))を50質量部、ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製))を8質量部投入し、加熱混練を行い、ポリエーテルスルホンを溶解させ、混練物を得た。
次いで、無機充填材としてCNT−2を1質量%秤量し、上記混練物とともに二軸押出機に投入し、混練を続けた。次いで、混練を続けたまま100℃以下の温度まで降温させ、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製))を45質量部加えて撹拌し、CNT−2を含有する熱硬化性樹脂組成物を得た。
当該熱硬化性樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付50g/m2で離型紙上にコーティングし、熱硬化性樹脂フィルムを作製した。この熱硬化性樹脂フィルムを、一方向に引き揃えた強化繊維シート(目付193g/m2)の両側に重ね合せてヒートロールを用い、加熱加圧しながら熱硬化性樹脂フィルムを強化繊維(A)に含浸させ、無機充填剤(D)が配合された熱硬化プリプレグ(EP+C)を得た。
[樹脂シート(PA)]
PA系樹脂として、 “アミラン(登録商標)”CM4000(東レ(株)製、3元共重合ポリアミド樹脂、融点155℃)を使用し、樹脂シート(PA)を作製した。樹脂シート(PA)は、CM4000を100g/m2となるように調製し、2枚の金属板の間に挟みこんだものを、熱盤温度を180℃に調整したプレス機に面圧3MPaにて金属板と共に加圧・加熱を行った。5分後、プレス機の加圧を止めて解放し、金属板ごと、熱盤温度が50℃に調整したプレス機に移動させ、面圧3MPaで加圧・冷却をおこなうことで樹脂シート(PA)を得た。
次いで、熱硬化プリプレグ(EP+C)と樹脂シート(PA)とを実施例1と同様に積層・プレス成形して繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例11>
[熱可塑プリプレグ(PP+C)]
ポリプロピレン(PP)樹脂として、二軸押出機中に、未変性ポリプロピレン樹脂(プライムポリマー(株)製“プライムポリプロ”(登録商標)J105G、融点161℃)79質量%と、酸変性ポリプロピレン樹脂(三井化学(株)製“アドマー” (登録商標)QB510、融点164℃)樹脂を20質量%、無機充填材(D)としてCNT−2を1質量%となるように調製し、200℃で加熱混練を行った。得られた混練物を100g/m2となるように調製し、2枚の金属板の間に挟みこんだものを、熱盤温度を200℃に調整したプレス機に面圧3MPaにて金属板と共に加圧・加熱を行った。5分後、プレス機の加圧を止めて解放し、金属板ごと、熱盤温度が50℃に調整したプレス機に移動させ、面圧3MPaで加圧・冷却をおこなうことで樹脂シート(PP)を得た。
強化繊維(A)としてCF−1を、一方向に引き揃えた強化繊維シート(目付193g/m2)に、樹脂シート(PP)を当該強化繊維シート上に配置して、IRヒータで200℃に加熱し、前記樹脂シートを溶融し、連続強化繊維シート片面全面に付着させ、表面温度が熱可塑性樹脂(C)の融点以下である、80℃に保たれたニップロールで加圧して、冷却して繊維強化樹脂成形体の中間体である熱可塑プリプレグ(PP+C)を得た。
[熱硬化性樹脂フィルム(EP)]
熱硬化性樹脂(B)として、実施例1と同様の熱硬化性樹脂(EP)を、ナイフコーターを用いて樹脂目付50g/m2で調整しながら離型紙上にコーティングし、熱硬化性樹脂フィルム(EP)を作製した。
[繊維強化樹脂成形体]
前記熱可塑プリプレグ(PP+C)における、樹脂シートを含浸させた反対の表面に前記熱硬化性樹脂フィルム(EP)を重ね、ヒートロールにより加熱加圧しながら樹脂フィルムを中間体に含浸させ、繊維強化樹脂成形体を成形するための複合プリプレグを得た。
前記熱硬化プリプレグ6枚、前記複合プリプレグ2枚を、強化繊維(A)の配向方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で積層し、プリフォームを作製した。このとき両面それぞれの最外層の2枚は前記複合プリプレグとなるように積層し、プリフォームの両側の表層が、熱可塑性樹脂層となるように配置した。このプリフォームをプレス成形金型にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例12>
[熱可塑プリプレグ(NY6+C)]
二軸押出機中に、“アミラン(登録商標)”CM1007(東レ(株)製、融点225℃)を99質量%、無機充填材(D)として、CNT−2を1質量%となるように調製し、250℃で加熱混練を行った。得られた混練物を100g/m2となるように調製し、2枚の金属板の間に挟みこんだものを、熱盤温度を250℃に調整したプレス機に面圧3MPaにて金属板と共に加圧・加熱を行った。5分後、プレス機の加圧を止めて解放し、金属板ごと、熱盤温度が80℃に調整したプレス機に移動させ、面圧3MPaで加圧・冷却をおこなうことでシート化し、樹脂シート(NY6)を作製した。
強化繊維(A)としてCF−1を、一方向に引き揃えた強化繊維シート(目付193g/m2)に、熱可塑性樹脂(C)からなる樹脂シートを当該強化繊維シート上に配置して、IRヒータで250℃に加熱し、前記樹脂シートを溶融し、連続強化繊維シート片面全面に付着させ、表面温度が前記(C)の融点以下である、80℃に保たれたニップロールで加圧して、冷却して繊維強化樹脂成形体の中間体である熱可塑プリプレグ(NY6+C)を得た。
[繊維強化樹脂成形体]
前記熱可塑プリプレグ(NY6+C)における、樹脂シートを含浸させた反対の表面に、実施例11に記載した方法により作製した熱硬化性樹脂フィルム(EP)を重ね、ヒートロールにより加熱加圧しながら樹脂フィルムを中間体に含浸させ、繊維強化樹脂成形体を成形するための複合プリプレグを得た。
前記熱硬化プリプレグ6枚、前記複合プリプレグ2枚を、強化繊維(A)の配向方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で積層し、プリフォームを作製した。このとき両面それぞれの最外層の2枚は前記複合プリプレグとなるように積層し、プリフォームの両側の表層が、熱可塑性樹脂層となるように配置した。このプリフォームをプレス成形金型にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例13>
[熱可塑プリプレグ(PEKK+C)]
二軸押出機中に、“KEPSTAN(登録商標)”7002(アルケマ(株)製、融点331℃)を99質量%、無機充填材(D)として、CNT−2を1質量%となるように調製し、350℃で加熱混練を行った。得られた混練物を100g/m2となるように調製し、2枚の金属板の間に挟みこんだものを、熱盤温度を350℃に調整したプレス機に面圧3MPaにて金属板と共に加圧・加熱を行った。5分後、プレス機の加圧を止めて解放し、金属板ごと、熱盤温度が120℃に調整したプレス機に移動させ、面圧3MPaで加圧・冷却をおこなうことでシート化し、樹脂シート(PEKK)を作製した。
強化繊維(A)としてCF−1を、一方向に引き揃えた強化繊維シート(目付193g/m2)に、熱可塑性樹脂(C)からなる樹脂シートを当該強化繊維シート上に配置して、IRヒータで350℃に加熱し、前記樹脂シートを溶融し、連続強化繊維シート片面全面に付着させ、表面温度が前記(C)の融点以下である、120℃に保たれたニップロールで加圧して、冷却して繊維強化樹脂成形体の中間体である熱可塑プリプレグ(PEKK+C)を得た。
[熱硬化性樹脂フィルム(EP+C)]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“jER”(登録商標)825(三菱ケミカル(株)製))を50質量部、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“スミエポキシ(登録商標)”ELM434(住友化学(株)製))を50質量部、ポリエーテルスルホン(“スミカエクセル(登録商標)”PES5003P(住友化学(株)製))を8質量部投入し、加熱混練を行い、ポリエーテルスルホンを溶解させ、混練物を得た。
次いで、無機充填材としてCNT−2を1質量%秤量し、上記混練物とともに二軸押出機に投入し、混練を続けた。次いで、混練を続けたまま100℃以下の温度まで降温させ、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS(和歌山精化工業(株)製))を45質量部加えて撹拌し、CNT−2を含有した熱硬化性樹脂組成物を得た。当該熱硬化性樹脂組成物を、ナイフコーターを用いて樹脂目付50g/m2で調整しながら離型紙上にコーティングし、熱硬化性樹脂フィルム(EP+C)を作製した。
[繊維強化樹脂成形体]
前記熱可塑プリプレグ(PEKK+C)における、樹脂シートを含浸させた反対の表面に前記熱硬化性樹脂フィルム(EP+C)を重ね、ヒートロールにより加熱加圧しながら樹脂フィルムを中間体に含浸させ、繊維強化樹脂成形体を成形するための複合プリプレグを得た。
前記熱硬化プリプレグ6枚、前記複合プリプレグ2枚を、強化繊維(A)の配向方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で積層し、プリフォームを作製した。このとき両面それぞれの最外層の2枚は前記複合プリプレグとなるように積層し、プリフォームの両側の表層が、熱可塑性樹脂層となるように配置した。このプリフォームをプレス成形金型にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例14>
無機充填材(D)CB−1の配合量を5質量%とした以外は、実施例3と同様に繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例15>
無機充填材(D)にCB−3を用い、熱硬化性樹脂(B)への配合量を5質量%とした以外は実施例10に記載の方法と同様の方法で、熱硬化プリプレグ(EP+C)を作製した。
無機充填材(D)CB−3の配合量を5質量%となるように調製した以外は、実施例5に記載の方法と同様の方法で、樹脂シート(PA+C)を作製した。
次いで、熱硬化プリプレグ(EP+C)に含まれる強化繊維の配向方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で熱硬化プリプレグを8枚積層した。そして、さらにその両側に樹脂シート(PA+C)を1枚ずつ配置してプリフォームを得た。当該プリフォームをプレス成形金型にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例16>
無機充填材(D)としてCNT−1に代えてIF−1を用い、熱可塑性樹脂シートへの配合量を2質量%とした以外は実施例1と同様にして、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<実施例17>
無機充填材(D)としてCNT−1に代えてIF−2を用い、熱可塑性樹脂シートへの配合量を2質量%とした以外は実施例1と同様にして、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<比較例1>
無機充填材(D)を配合しなかった以外は実施例1と同様に繊維強化樹脂成形体に用いる基材、成形体を作製し、評価に供した。
<比較例2>
実施例1と同様に、熱硬化プリプレグ(EP)および樹脂シート(PA+C)を作製した。
前記熱硬化プリプレグ8枚を、強化繊維の配向方向を0°とし、軸直交方向を90°と定義して、[0°/90°]2s(記号sは、鏡面対称を示す)で積層し、プレス成形金型にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、180℃で2時間加温することで、硬化させて熱硬化性樹脂成形体を得た。
その後、当該熱硬化性樹脂成形体の両側に熱可塑性樹脂シートを配置し、熱可塑性樹脂(C)が溶融する温度(180℃)に調整したプレス成形盤面にセットし、プレス機で0.6MPaの圧力をかけ、150℃で5分間加温することで、熱硬化性樹脂成形体と熱可塑性樹脂シートを密着させて、繊維強化樹脂成形体を作製した。
<検討>
各実施例および比較例の概要および評価結果を表1〜4に示す。
実施例1〜17および比較例1、2の比較により、繊維強化樹脂成形体に無機充填材(D)を用い、かつ、繊維強化樹脂成形体内における熱硬化性樹脂(B)と熱可塑性樹脂(C)との境界面における、強化繊維(A)がなす形態、無機充填材(D)の形態を本発明の範囲を満足し、また、無機充填材(D)の凝集ストラクチャー長、粗さ平均長さRSm、粗さ平均高さRcを満足した場合に接合強度評価が満足するものとなった。さらに、接合強度評価後の破壊面を観察したところ、破壊後の試験片面の両面に熱可塑性樹脂(C)が観察され、熱可塑性樹脂(C)の強度以上の接合強度であることから、十分な接合強度を有していることが明らかであった。
特に、実施例1と比較例1の対比により、無機充填材(D)の配合効果が明確となった。さらに、実施例1〜5においては、無機充填材(D)の配合量および凝集ストラクチャー長を満足することで、本発明の課題である接合強度の向上をその種類を問わず実現することができた。
実施例6、7、16、17および実施例14、15との対比より無機充填材(D)の配合に最適量があることが明確となった。これは、接着評価における試験片の破断面が熱硬化性樹脂(B)にて破壊されていることから、無機充填材(D)の配合量過多により、凝集ストラクチャー長が大きくなり、熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域と熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域の境界面が脆弱となったためと考えられた。
比較例2においては、繊維強化樹脂成形体に配合した熱硬化性樹脂(B)を予め硬化させた中間体に、熱可塑性樹脂(C)を貼付したが、その効果は限定的であった。これは、繊維強化樹脂成形体において、熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域と熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域の境界面にて、強化繊維(A)を共有することができなかったためと考えられた。
実施例2および実施例11〜13との対比により、本発明に則れば、熱可塑性樹脂種の影響を大きく受けることなく、融点の異なる熱可塑性樹脂(C)を接着層として用いることができることが示唆された。
Figure 2021098319
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本発明に係る繊維強化樹脂成形体およびその複合成形体によれば、熱可塑性樹脂溶着層を有し、熱可塑性樹脂との高い接合特性を有する繊維強化樹脂成形体およびそれを用いた複合成形体を提供できる。
1:繊維強化樹脂成形体
2:強化繊維(A)
3:熱硬化性樹脂(B)または熱可塑性樹脂(C)
4:任意の繊維束の配向方向
5:断面観察面
6:強化繊維(A)
7:熱硬化性樹脂(B)を主成分とする樹脂領域
8:熱可塑性樹脂(C)を主成分とする樹脂領域
9:観察画像
10:境界面
11:基準線
12:垂基線
13:界面曲線
14:無機充填材(D)
15:無機充填材(D)の凝集物
16:無機充填材(D)
17:外接円
L:凝集ストラクチャー長

Claims (12)

  1. 強化繊維(A)、熱硬化性樹脂(B)、熱可塑性樹脂(C)および無機充填材(D)を含む、繊維強化樹脂成形体であって、
    連続した強化繊維(A)から構成される強化繊維群と、熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域および熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域を有するマトリックス樹脂とが複合化されてなり、
    強化繊維(A)の一部および無機充填材(D)の一部が、前記熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域および前記熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域の両者と接しており、かつ少なくとも一方の表面に前記熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域が存在する繊維強化樹脂成形体。
  2. 前記熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域と、前記熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域が層状構造をなしている、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形体。
  3. 強化繊維(A)の配向方向に対し45度異なる角度の方向から、繊維強化樹脂成形体の平面に垂直な断面を得た場合に、該断面において、前記熱硬化性樹脂(B)を主成分とする領域と、前記熱可塑性樹脂(C)を主成分とする領域との境界がなす界面曲線の、JIS B0601(2013)で定義される粗さ平均長さRSmが100μm以下であり、粗さ平均高さRcが3.5μm以上である、請求項1または2のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  4. 無機充填材(D)のアスペクト比が5以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  5. 無機充填材(D)の凝集ストラクチャー長の平均値が、強化繊維(A)の単繊維径の2倍以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  6. 無機充填材(D)が、繊維強化樹脂成形体100質量%に対して、0.01〜2.0質量%の範囲内で含まれる、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  7. 無機充填材(D)が、カーボンブラック、黒鉛粉末、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、ミルド炭素繊維、ミルドガラス繊維、ワラストナイト、タルク、マイカからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  8. 強化繊維(A)が、炭素繊維、ガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  9. 熱硬化性樹脂(B)が、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、熱硬化ポリイミド、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂である、請求項1〜8のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  10. 熱可塑性樹脂(C)は、前記熱硬化性樹脂(B)の硬化反応温度範囲にて溶融状態となる熱可塑性樹脂である、請求項1〜9のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体。
  11. 前記熱可塑性樹脂(C)を主成分とする層が、表層の50%以上の面積を覆ってなる、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形体。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形体における熱可塑性樹脂(C)の面に、別の部材が加熱により接合してなる、複合成形体。
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