以下図面を参照して、予備充電回路を有するモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施をするための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明において、「閉成(クローズ)」と「閉動作」と「閉状態」とは同義であり、「開放(オープン)」と「開動作」と「開状態」とは同義である。
図1は、本開示の第1及び第2の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。はじめに第1の実施形態によるモータ駆動装置1の構成について説明するが、図1に示す構成は、後述する第2の実施形態にも適用可能である。
一例として、交流電源2に接続されたモータ駆動装置1により、交流モータ(以下、単に「モータ」と称する。)3を制御する場合について示す。本実施形態においては、モータ3の種類は特に限定されず、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。また、交流電源2及びモータ3の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図示の例では、交流電源2及びモータ3をそれぞれ三相としている。交流電源2の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。モータ3が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。
図1に示すように、モータ駆動装置1は、整流回路11と、コンデンサ12と、インバータ13と、予備充電回路14と、放電回路15と、温度推定部16と、制御部17と、開閉部19と、制御部用電源部23とを備える。
また、本実施形態では、モータ駆動装置1は、モータ3を非常停止させるための非常停止信号及びモータ3の非常停止を解除するための非常停止解除信号を生成する信号生成部18をさらに備える。なお、信号生成部18については、モータ駆動装置1の外部に設けてもよく、例えばモータ駆動装置1を統括制御する上位制御装置(図示せず)に設けてもよい。信号生成部18がモータ駆動装置1の内部あるいは外部のいずれにある場合であっても、信号生成部18は、例えばラダープログラムに従って非常停止信号及び非常停止解除信号を生成し、あるいは作業者がモータ駆動装置1や上位制御装置などに設けられた非常停止ボタンを操作することによって生成される。信号生成部18により生成された非常停止信号及び非常停止解除信号は、制御部17に入力される。
整流回路11は、交流電源2から入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力する順変換器である。整流回路11は、交流電源2から三相交流電力が供給される場合は三相ブリッジ回路で構成され、交流電源2から単相交流電力が供給される場合は単相ブリッジ回路で構成される。整流回路11の例としては、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、及びPWMスイッチング制御方式の整流回路などがある。例えば、整流回路11がPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなり、上位制御装置(図示せず)から受信した駆動指令に応じて各スイッチング素子がオンオフ制御されて交直双方向に電力変換を行う。スイッチング素子の例としては、IGBT、FET、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどがあるが、スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他のスイッチング素子であってもよい。
整流回路11の直流出力側とインバータ13の直流入力側とを電気的に接続するDCリンクには、コンデンサ12が設けられる。コンデンサ12は、DCリンクにおいてエネルギー(直流電力)を蓄積する機能及び整流回路11の直流側の出力の脈動分を抑える機能を有する。コンデンサ12に電荷が充電されることにより、DCリンクに直流電力が蓄積されることになる。DCリンクに設けられるコンデンサ12の例としては、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどがある。
インバータ13は、DCリンクにおける直流電力をモータ3の駆動のための交流電力に変換して出力する。図示の例では、モータ3は三相交流モータであるので、インバータ13は、三相ブリッジ回路として構成される。モータ3が単相モータである場合はインバータ13は、単相ブリッジ回路として構成される。インバータ13の例としては、内部に半導体スイッチング素子を備えるPWMインバータなどがある。インバータ13がPWMインバータで構成される場合は、半導体スイッチング素子及びこれに逆並列に接続された還流ダイオードのブリッジ回路からなる。この場合、半導体スイッチング素子の例としては、IGBT、FET、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。
モータ駆動装置1によるモータ3の駆動開始前までにコンデンサ12を予備充電(初期充電)するために、予備充電回路(初期充電回路)14が設けられる。図1に示す例では、予備充電回路14は、整流回路11の交流入力側に設けられる。予備充電回路14は、充電抵抗バイパススイッチ31と充電抵抗バイパススイッチ31に並列接続された充電抵抗32とを有する。充電抵抗バイパススイッチ31が開放(オフ)されると、充電抵抗32が電流経路に含まれることになる。充電抵抗バイパススイッチ31が閉成(オン)されると、充電抵抗32をバイパスした電流経路(すなわち充電抵抗32を含まない電流経路)が形成される。図1に示す例では、交流電源2は三相交流であるので、充電抵抗バイパススイッチ31及び充電抵抗32は、各相ごとに設けられる。充電抵抗バイパススイッチ31の例としては、IGBT、FET、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどの半導体スイッチング素子や、リレーなどの機械式スイッチなどがある。充電抵抗バイパススイッチ31の開閉は、制御部17によって制御される。
制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信すると、制御部17は、予備充電回路14に対しては予備充電動作を実行するよう制御し、開閉部19に対しては閉成(オン)するよう制御する。予備充電期間中、充電抵抗バイパススイッチ31は、制御部17から開指令を受信して開放(オフ)する。予備充電期間中は、充電抵抗バイパススイッチ31は開状態を維持するので、充電抵抗32が電流経路に含まれることになり、交流電源2からの交流電力は、開閉部19及び充電抵抗32を介して整流回路11に入力される。整流回路11は、入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力されてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は所定の充電電圧になるまで充電される(予備充電動作)。予備充電期間中は、交流電源2から整流回路11へ流れる電流は充電抵抗32を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。コンデンサ12が所定の充電電圧まで充電されると、制御部17は充電抵抗バイパススイッチ31に対して閉指令を出力し、これを受けて充電抵抗バイパススイッチ31は開から閉に切り替えられて充電抵抗32をバイパスした電流経路が形成され、予備充電回路14による予備充電動作を完了する。予備充電動作の完了後は、交流電源2からの交流電力は、共に閉状態にある開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31を介して整流回路11に入力される。
放電回路15は、DCリンクにおいてコンデンサ12と並列に設けられる。放電回路15とコンデンサ12とが電気的に接続されてDCリンクにおける直流電力を放電する放電動作と、放電回路15とコンデンサ12との電気的接続が切断される非放電動作と、が選択的に切り替えられる。このため、放電回路15は、放電用スイッチ34とこの放電用スイッチ34に直列接続された放電抵抗33とを有する。図1に示す例では、放電回路15内において、高電位側に放電抵抗33、低電位側に放電用スイッチ34を設けたが、これらは入れ替えて設けてもよい。放電用スイッチ34の例としては、IGBT、FET、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどの半導体スイッチング素子や、リレーなどの機械式スイッチなどがある。図1に示す例では、放電用スイッチ34を半導体スイッチング素子で構成している。放電回路15の放電用スイッチ34の開閉は、制御部17によって制御される。制御部17の制御により放電用スイッチ34が閉成されると放電抵抗33とコンデンサ12とが電気的に接続され、DCリンクにおける直流電力が放電抵抗33に流入して熱として消費される(放電動作)。制御部17の制御により放電用スイッチ34が開放されると放電抵抗33とコンデンサ12との電気的接続が切断され、非放電動作状態となる。
開閉部19は、電流経路を閉路もしくは開放するものとして、電磁接触器、リレー、もしくは半導体スイッチング素子のいずれかを有する。図1に示す例では、整流回路11の交流入力側に予備充電回路14が設けられるので、開閉部19は、交流電源2と予備充電回路14との間に設けられる。
温度推定部16は、予備充電回路14内の充電抵抗32の推定温度を逐次計算する。温度推定部16による充電抵抗32の推定温度の計算処理の詳細については後述する。
制御部17は、インバータ13、予備充電回路14、放電回路15、及び開閉部19の各動作を制御する。制御部17は、制御部用電源部23により供給される制御電圧によって駆動される。制御部用電源部23は、整流回路11の整流動作とは別に、交流電源2から供給される交流電圧を整流し、制御電圧レベル(例えば5[V]や24[V]など)まで降圧させたものを制御部17に供給する。
制御部17は、インバータ13に対して電力変換指令を出力してインバータ13の電力変換動作を制御することで、モータ3の駆動を制御する。より詳細には次の通りである。制御部17は、モータ3の(回転子の)回転速度、モータ3の巻線に流れる電流、所定のトルク指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、電力変換指令を生成する。インバータ13は、制御部17から受信した電力変換指令に従い、モータ3を駆動するための交流電力を出力する。モータ3は、インバータ13から供給される例えば電圧可変及び周波数可変の交流電力に基づいて、速度、トルクまたは回転子の位置が制御される。よって結局のところ、制御部17によるモータ3の制御は、インバータ13の電力変換動作を制御することで実現される。制御部17は、予め規定された動作プログラムに従い、インバータ13内の電力変換を制御することで、モータ3が所定の動作パターンに従って動作するよう制御する。
また、制御部17は、予備充電回路14に対して充電指令を出力して充電抵抗バイパススイッチ31の開閉動作を制御する。より詳細には、制御部17は、信号生成部18から非常停止解除信号を受信した場合、充電抵抗バイパススイッチ31を開放してコンデンサ12が所定の充電電圧に達するまで予備充電動作を実行し、さらにコンデンサ12が充電電圧に達した後は充電抵抗バイパススイッチ31を閉成して予備充電動作を完了するよう、予備充電回路14を制御する。
また、制御部17は、放電回路15に対して放電指令を出力して放電用スイッチ34の開閉動作を制御する。ただし、温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が所定の温度閾値を超えた場合、放電回路15が非放電動作を維持するように、すなわち放電用スイッチ34が開状態を維持するように制御する。なお、制御部17による放電回路15の制御の詳細については後述する。
また、制御部17は、開閉部19に対して開閉指令を出力して開閉部19の開閉動作を制御する。
上述した温度推定部16、制御部17、及び信号生成部18は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ駆動装置1内やモータ駆動装置1が設けられた機械内にある例えばMPUやDSPなどの演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、温度推定部16、制御部17、及び信号生成部18を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、温度推定部16、制御部17、及び信号生成部18の各機能を実現するソフトウェアプログラムを記憶媒体に格納してもよい。
図1に示す例では、予備充電回路14を整流回路11の交流入力側に設けたが、この代替例として、予備充電回路14を整流回路11の直流出力側に設けてもよい。図2は、本開示の第1及び第2の実施形態によるモータ駆動装置において、予備充電回路を整流回路の直流出力側に設けた場合を示す図である。図2では第1の実施形態によるモータ駆動装置1の構成について説明するが、図2に示す構成は、後述する第2の実施形態にも適用可能である。
図2に示すように、整流回路11の直流出力側に予備充電回路14が設けられる場合、充電抵抗バイパススイッチ31及び充電抵抗32が1組設けられる。
図2において、制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信すると、制御部17は、予備充電回路14に対しては予備充電動作を実行するよう制御し、開閉部19に対して閉成するよう制御する。予備充電期間中は、充電抵抗バイパススイッチ31は開状態を維持するので、充電抵抗32が電流経路に含まれることになり、整流回路11から出力された電流は充電電流として充電抵抗32を介してコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は所定の充電電圧になるまで充電される(予備充電動作)。予備充電期間中は、整流回路11から出力される電流は充電抵抗32を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。コンデンサ12が所定の充電電圧まで充電されると、制御部17は充電抵抗バイパススイッチ31に対して閉指令を出力し、これを受けて充電抵抗バイパススイッチ31は開から閉に切り替えられて充電抵抗32をバイパスした電流経路が形成され、予備充電回路14による予備充電動作を完了する。予備充電動作の完了後は、整流回路11から出力される直流で電力は、充電抵抗バイパススイッチ31を介してインバータ13(及びコンデンサ12)に入力される。
続いて、本開示の第1及び第2の実施形態によるモータ駆動装置1における温度推定部16の計算処理及びこの計算結果に基づく制御部17による放電回路15の選択的実行の具体例について、従来のモータ駆動装置と比較しながら説明する。
図3は、従来のモータ駆動装置における開閉部、予備充電回路及び放電回路の動作を例示する図である。ここでは、一例として、図3に示すようなタイミングでモータ駆動装置内の制御部が非常停止信号及び非常停止解除信号を受信した場合について説明する。
時刻t1までのモータ3の非常停止中は、開閉部及び予備充電回路内の充電抵抗バイパススイッチは開状態にあり、また、放電回路とコンデンサとは電気的に接続されている。時刻t1でモータ駆動装置内の制御部が非常停止解除信号を受信すると、制御部の制御により、予備充電回路による予備充電動作及び放電回路による非放電動作が実行される。すなわち、時刻t1から時刻t2までの予備充電期間中は、予備充電回路内の充電抵抗バイパススイッチは開動作を実行し、開閉部は閉動作を実行し、放電回路とコンデンサとの電気的接続は切断される。この結果、予備充電期間中は充電抵抗に充電電流が流れてコンデンサが充電され、DCリンク電圧が徐々に上昇する。なお、充電抵抗に流れる充電電流は、実際には正負に振動する減衰傾向を示すが、説明を簡明にするために図3では正側の包絡線で示している。また、充電抵抗に充電電流が流れるので、充電抵抗の温度は徐々に上昇する。
時刻t2でコンデンサは所定の充電電圧に到達するので、制御部の制御により、充電抵抗バイパススイッチは閉動作を実行して予備充電動作を完了する。これにより、モータ動作の準備が完了する。これ以降、充電抵抗には電流が流れないので、充電抵抗の温度はしばらくしてから上昇から低下に転じる。
時刻t3でモータ駆動装置内の制御部が非常停止信号を受信すると、制御部の制御により、開閉部及び予備充電回路内の充電抵抗バイパススイッチによる開動作が実行され、放電回路とコンデンサとが電気的に接続されて放電回路による放電動作が実行される。これにより、DCリンク電圧は急激に低下して0[V]になる。また、充電抵抗には電流が流れないので、充電抵抗の温度は引き続き低下する。
時刻t4でモータ駆動装置内の制御部が非常停止解除信号を受信すると、制御部の制御により、開閉部による閉動作が実行され、放電回路による非放電動作が実行される。すなわち、時刻t4から時刻t5までの予備充電期間中は、開閉部は閉動作を実行し、予備充電回路内の充電抵抗バイパススイッチは引き続き開動作を実行し、放電回路とコンデンサとの電気的接続は切断される。この結果、予備充電期間中は充電抵抗に充電電流が流れてコンデンサが充電され、DCリンク電圧が徐々に上昇する。また、充電抵抗に充電電流が流れるので、充電抵抗の温度は低下から上昇に転じる。
ここで、モータ駆動装置内の制御部が非常停止信号を受信する時刻t3と非常停止解除信号を受信する時刻t4との間が短い場合は、時刻t4の時点でも充電抵抗は十分に冷却されておらず、充電抵抗の温度は依然として高い。このように充電抵抗の温度が高い状態で時刻t4に予備充電動作が開始されると、充電抵抗において熱の蓄積がさらに進む。この結果、時刻t4以降は、時刻t4の時点における充電抵抗の温度に、さらに温度が重畳された形で上昇していく。
時刻t5でコンデンサは所定の充電電圧に到達するので、制御部の制御により、充電抵抗バイパススイッチは閉動作を実行して予備充電動作を完了する。これにより、モータ動作の準備が完了する。これ以降、充電抵抗には電流が流れないので、充電抵抗の温度はしばらくしてから上昇から低下に転じる。ただし、これより前の時刻t4の近傍で充電抵抗の熱の蓄積があったため、高い温度からの温度低下となる。例えば時刻t6以降も、モータ駆動装置内の制御部が非常停止信号及び非常停止解除信号を短い時間の間に交互に受信すると、放電回路による放電動作と予備充電回路の予備充電動作が頻繁に実行され、充電抵抗を十分に冷却しきれず充電抵抗における熱の蓄積がさらに進み、充電抵抗の温度が重畳され上昇してことになる。
このように、従来のモータ駆動装置においては、非常停止信号の受信に伴い放電回路による放電動作が実行されると、コンデンサに蓄積された電力が全て放電されDCリンク電圧は0[V]になる。その後、すぐに非常停止解除信号が受信されると予備充電回路により予備充電動作が行われるが、この予備充電動作は、コンデンサの電圧(すなわちDCリンク電圧)が0[V]から所定の充電電圧になるまで実行されるので、充電抵抗には多くの充電電流が流れる。充電抵抗に流れる充電電流が多いほど、充電抵抗に蓄積される熱量が増える。大量の熱を蓄積した充電抵抗は既に高温の状態にあり、このよう状態において非常停止解除信号の受信に伴い予備充電回路による予備充電動作が実行されてさらに充電電流が流れると、充電抵抗の温度の重畳が進む。非常停止信号と非常停止解除信号とが短時間の間に交互に入力されることにより充電抵抗バイパススイッチの閉成及び開放が繰り返されて充電抵抗の温度が上昇し続けると、最終的には充電抵抗が溶断し、予備充電回路の破損に至る。
そこで、本実施形態では、モータ駆動装置1の制御部17が非常停止信号を受信した時点で充電抵抗32に既に熱がある程度蓄積されていた場合には、放電回路15は放電動作を実行せず非放電動作を実行を維持する。これにより、この次に実行される予備充電回路14による予備充電動作において充電抵抗32に流れる充電電流を抑制し、充電抵抗32の大幅な温度上昇を回避する。モータ駆動装置1の制御部17が非常停止信号を受信した時点で充電抵抗32に熱がある程度蓄積されているか否かの判定は、モータ駆動装置1の制御部17が非常停止信号を受信した時点において温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が所定の温度閾値を超えているか否かに基づいて行われる。より詳細には、制御部17は、非常停止信号を受信したときに充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていた場合は、放電回路15が非放電動作を維持するよう制御する。一方で、制御部17は、非常停止信号を受信したときに充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていない場合は、放電回路15が放電動作を実行するよう制御する。また、いずれの場合においてもその後、制御部17が非常停止解除信号を受信したときは、制御部17は、放電回路15が非放電動作を実行するよう制御する。なお、設定される温度閾値の例については後述する。
図4は、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置における予備充電回路、放電回路及び開閉部の動作フローを示すフローチャートである。
上述したように、モータ駆動装置1において、制御部17は非常停止解除信号を受信した時点において温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が所定の温度閾値を超えているか否かを判定する。制御部17が非常停止解除信号を受信するタイミングは特に限定されないので、温度推定部16は、制御部17がいつ非常停止解除信号を受信しても当該タイミングの充電抵抗32の推定温度を制御部17に提供できるよう、充電抵抗32の推定温度を所定の周期で逐次計算する。温度推定部16による推定温度の計算周期が短いほど、計算された充電抵抗32の推定温度の精度は高い。なお、温度推定部16による充電抵抗32の推定温度の計算処理の詳細については後述する。
ステップS101において、制御部17は、信号生成部18から非常停止解除信号を受信したか否かを判定する。ステップS101において非常停止解除信号を受信したと判定された場合は、ステップS102へ進む。
ステップS102において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を開放するよう制御する。これにより、充電抵抗32が電流経路に含まれることになる。
ステップS103において、制御部17は、開閉部19を閉成するよう制御する。これにより、開閉部19は閉状態を維持しかつ充電抵抗バイパススイッチ31は開状態を維持した状態になるので、交流電源2からの交流電力は、開閉部19及び充電抵抗32を介して整流回路11に入力される。整流回路11は、入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力する。整流回路11から出力された電流は充電電流としてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は所定の充電電圧になるまで充電される(予備充電動作)。なお、ステップS103の実行開始時点では、制御部17が放電回路15内の放電用スイッチ34を開放するよう制御することで、放電抵抗33とコンデンサ12との電気的接続は切断されている。
ステップS104において、制御部17は、予備充電回路14による予備充電動作が完了したか否かを判定する。コンデンサ12の電圧(DCリンク電圧)が所定の充電電圧に達した場合、制御部17は、予備充電回路14による予備充電動作が完了したと判定し、ステップS105へ進む。
ステップS105において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を閉成するよう制御する。これにより、充電抵抗32をバイパスした電流経路が形成され、交流電源2からの交流電力は、共に閉状態にある開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31を介して整流回路11に入力される。整流回路11は、入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力し、インバータ13は、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。
ステップS106において、制御部17は、モータ3の回転速度、モータ3の巻線に流れる電流、所定のトルク指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、電力変換指令を生成する。インバータ13は、制御部17から受信した電力変換指令に従い、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。モータ3は、インバータ13から供給される交流電力に基づいて駆動される。
ステップS107において、制御部17は、信号生成部18から非常停止信号を受信したか否かを判定する。ステップS107において非常停止信号を受信したと判定された場合は、ステップS108へ進むとともに、制御部17は、その時点で温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度を、温度推定部16から取得する。
ステップS108において、制御部17は、開閉部19を開放するよう制御する。
ステップS109において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を開放するよう制御する。なお、開閉部19は開放されているので、モータ駆動装置1は交流電源2からは電気的に切り離されており、交流電源2からの交流電力が、充電抵抗32を介してモータ駆動装置1に流れ込むことはない。
ステップS110において、制御部17は、非常停止信号を受信した時点(すなわちステップS107において制御部17が非常停止信号を受信したと判定した時点)において温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が、所定の温度閾値を超えているか否かを判定する。ステップS110において、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていると判定された場合はステップS111へ進み、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていないと判定され場合はステップS112へ進む。
ステップS110において充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定された場合は、ステップS111において、制御部17は、放電回路15が非放電動作を維持するよう制御する。より詳細には、制御部17は、放電回路15内の放電用スイッチ34の開放を維持するよう制御することで、放電抵抗33とコンデンサ12との電気的接続を切断し、非放電動作状態を維持する。この結果、DCリンクにおける直流電力(すなわちコンデンサ12に蓄積されていた直流電力)が放電抵抗33に流入することはない。なお、ステップS102の実行開始時点で制御部17が放電回路15内の放電用スイッチ34を開放するよう制御することで既に非放電動作状態となっているので、ステップS111における制御部17の放電回路15に対する制御は、この非放電動作状態を変更するものではない。したがってDCリンク電圧が急激に低下することはない。
ステップS111の実行後は、ステップS101へ戻る。ステップS111の実行後すぐにステップS101において非常停止解除信号を受信したと判定されてステップS103及びS104の予備充電動作が実行されても、DCリンク電圧は大きく低下していない(すなわち0[V]になっていない)ので、充電抵抗32に流れる電流はごく僅かであり、充電抵抗32に対する熱の蓄積は少なく、充電抵抗32の急激な温度上昇を回避することができる。
一方、ステップS110において充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていないと判定され場合は、ステップS112において、制御部17は、放電回路15が放電動作を実行するよう制御する。より詳細には、制御部17は、放電回路15内の放電用スイッチ34を閉成するよう制御することで、放電抵抗33とコンデンサ12とを電気的に接続する。これにより、ステップS102から続いていた放電回路15の非放電動作状態は放電動作状態に切り替えられ、DCリンクにおける直流電力(すなわちコンデンサ12に蓄積されていた直流電力)が放電抵抗33に流入して熱として消費され、DCリンク電圧は急激に低下して0[V]になる。
ステップS112が実行されるのはステップS110において充電抵抗32の推定温度は温度閾値を超えていないと判定される場合であり、この場合は充電抵抗32の熱の蓄積は軽微であると考えらえる。ステップS112の実行後は、ステップS101へ戻る。ステップS112の実行後すぐにステップS101において非常停止解除信号を受信したと判定されてステップS103及びS104の予備充電動作が実行され、充電抵抗32に多くの充電電流が流れたとしても、この時点では充電抵抗32の熱の蓄積は軽微であるので、充電抵抗32が溶断するほどに温度に達することはない。
続いて、温度推定部16による充電抵抗32の推定温度の計算処理の詳細について説明する。
図5は、本開示の第1〜第4の実施形態によるモータ駆動装置における温度推定部による推定温度計算処理を説明する図であって、(A)は充電抵抗の推定温度を例示し、(B)は推定温度の比較に用いられる温度閾値の設定例を示す。
例えばモータ駆動装置1の設計段階において、実験により、予備充電回路14を接続したモータ駆動装置1において予備充電動作を実行し、充電抵抗32の推定温度の計算に必要な各種パラメータを取得する。そして、取得したパラメータを用いて推定温度計算処理に用いられる計算式をソフトウェアプログラム上に規定する。このようにして作成されたソフトウェアプログラムを温度推定部16の機能を実現する演算処理装置にインストールしておく。演算処理装置がこのソフトウェアプログラムに従って動作することで、充電抵抗32の推定温度が算出される。
1回の予備充電動作により、充電抵抗32の推定温度は図5(A)に例示するように推移する。予備充電動作が開始される時刻t11までは、開閉部19及び予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31は開状態にある。時刻t11でモータ駆動装置1内の制御部17の制御により、充電抵抗バイパススイッチ31が開動作を実行し開閉部19が閉動作を実行して予備充電回路14による予備充電動作が開始されると、充電抵抗32が電流経路に含まれることになるので充電抵抗32に充電電流が流れ、充電抵抗32の温度は、ある熱時定数にて徐々に上昇する。時刻t12でコンデンサ12は所定の充電電圧に到達するので、制御部17の制御により、充電抵抗バイパススイッチ31は閉動作を実行して予備充電動作を完了する。時刻t12以降は充電抵抗32をバイパスした電流経路が形成されているので充電抵抗32には電流は流れないが、充電抵抗32の温度はしばらく上昇し、時刻t13で充電抵抗32の温度は低下に転じる。
時刻t11で予備充電動作が開始されてから予備充電動作完了後しばらく経過した時刻t13までの間の充電抵抗32の温度上昇が続く時間を、「温度上昇持続時間U」と称する。すなわち、温度上昇持続時間Uは、「1回の予備充電動作により充電抵抗32の温度上昇が持続する時間」として規定される。
本実施形態では、一例として、温度上昇持続時間Uの期間中における充電抵抗32の推定温度Tupが下記式1に従って推移すると規定する。
温度上昇持続時間U以外の期間は、充電抵抗32の温度は低下することになるが、本実施形態では、一例として、温度上昇持続時間U以外の期間における充電抵抗32の推定温度Tdownが下記式2に従って推移すると規定する。
式1及び式2において、Triseは1回の予備充電動作で上昇する充電抵抗32の最大値として規定される温度上昇値を示し、τは充電抵抗32が有する熱時定数であり、T0は予備充電動作開始時点の充電抵抗32の推定温度であり、Tairはモータ駆動装置1が設置される環境の温度である。これらパラメータのうちの温度上昇値Trise及び熱時定数τ並びに温度上昇持続時間Uについては、実験により、予備充電回路14を接続したモータ駆動装置1において予備充電動作を実行し、事前に取得しておく。そして、温度推定部16の機能を実現するソフトウェアプログラムには、取得したパラメータを用いて式1及び式2を規定する。また、このソフトウェアプログラムでは、制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信した時点から温度上昇持続時間Uが経過するまでの間は式1に従って推定温度が計算され、それ以外の時間については、式2に従って推定温度が計算されるように規定しておく。また、式1における予備充電動作開始時点の充電抵抗32の推定温度については、初期値T0としてモータ駆動装置1が設置される環境の温度Tairを設定しておき、それ以降は、当該予備充電動作開始時点の直前に計算された推定温度が設定されるよう、規定しておく。このようにして作成されたソフトウェアプログラムを温度推定部16の機能を実現する演算処理装置にインストールしておく。なお、実験により取得された上記各パラメータを不揮発性メモリ(図示せず)に記憶しておき、温度推定部16に係るソフトウェアプログラムが動作したときに、不揮発性メモリから上記各パラメータを呼び出すようにしてもよい。
なお、上述のように、推定温度の初期値T0としてモータ駆動装置1が設置される環境の温度Tairを設定したが、モータ駆動装置1の電源を一旦オフした後、再度電源を投入した場合、充電抵抗32の温度(推定温度)が慣用の温度Tairをよりも高い可能性もある。そこで、不揮発性メモリにリアルタイムクロックの時間と推定温度(すなわちTupまたはTdown)とを記録しておき、モータ駆動装置1の電源の再投入の段階で式2で表されるTdownに、不揮発性メモリに最後に推定温度が記録された時間から現在時刻までの経過時間を代入して現在時刻における推定温度を求め、この推定温度が現在の環境温度Tairよりも高い場合は、現在時刻における推定温度を使用するようにしてもよい。
なお、充電抵抗32の交流電源2側の電圧(換言すればモータ駆動装置1に入力される交流電圧)の大きさ如何によって、温度上昇値Trise、熱時定数τ、及び温度上昇持続時間Uは変化する。そこで、充電抵抗32の交流電源2側の種々の電圧とこれらパラメータとの関係をソフトウェアプログラム内に規定しておき、モータ駆動装置1が実際の運用される際のモータ駆動装置1に入力される交流電圧に対応した温度上昇値Trise、熱時定数τ及び温度上昇持続時間Uを選択して温度推定部16による推定温度計算処理を実行するようにしてもよい。この場合はまず、実験により、予備充電回路14を接続したモータ駆動装置1において、充電抵抗32の交流電源2側の種々の電圧の下で予備充電動作を実行し、各電圧と温度上昇値Trise、熱時定数τ及び温度上昇持続時間Uとの関係を示すテーブルを事前に取得しておく。そして、温度推定部16の機能を実現するソフトウェアプログラム内にこのテーブルを規定しておき、モータ駆動装置1が実際の運用される際のモータ駆動装置1に入力される交流電圧に対応した温度上昇値Trise、熱時定数τ及び温度上昇持続時間Uがテーブルから選択されるよう当該ソフトウェアプログラムを規定しておけばよい。このようなソフトウェアプログラムを用いることで、温度推定部16により高精度の推定温度を計算することができる。
モータ駆動装置1の実際の運用時において、温度推定部16は、式1及び2に従って、充電抵抗32の推定温度を逐次計算する。式2におけるモータ駆動装置1が設置される環境の温度Tairは、モータ駆動装置1の近傍に置かれた温度計によって測定されたものを用いてもよく、あるいは、モータ駆動装置1に既に内蔵されている温度計によって測定されたものを用いてもよく、あるいは、モータ駆動装置1が設置される環境の実際の温度に近い予め規定された一定温度(定数)を用いてもよい。制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信した時点から温度上昇持続時間Uが経過するまでの間は、温度推定部16は式1に従って充電抵抗32の推定温度Tupを計算し、それ以外の時間では温度推定部16は式2に従って充電抵抗32の推定温度Tdownを計算する。制御部17が非常停止信号を受信した時点が温度上昇持続時間Uの期間中に含まれる場合は、温度推定部16が式1に従って計算した充電抵抗32の推定温度Tupが温度閾値との比較に用いられる。一方、制御部17が非常停止信号を受信した時点が温度上昇持続時間U以外の期間中に含まれる場合は、温度推定部16が式2に従って計算した充電抵抗32の推定温度Tdownが温度閾値との比較に用いられる。
温度閾値は、図5(B)に示すように、例えば、充電抵抗32が有する最大温度定格から実験で取得した充電抵抗32の温度上昇値Triseを減算した値に設定すればよい。またさらに、温度閾値を、充電抵抗32が有する最大温度定格から充電抵抗32の温度上昇値Trise及びマージンを減算した値に設定に設定すれば、より確実に発熱による破損を回避することができる。なお、充電抵抗32が有する最大温度定格は、例えば充電抵抗32の諸元データが規定された規格表の値を用いればよい。
なお、式1及び式2は一例であり、他の計算式に基づいて充電抵抗32の推定温度を計算してもよい。
また、図1に示す例では、予備充電回路14を整流回路11の交流入力側に設けたので充電抵抗32が三相交流の各相ごとに設けられるが、温度推定部16が計算した推定温度は、このうちの1相分の充電抵抗32の推定温度に相当する。図2に示すように整流回路11の直流出力側に予備充電回路14が設けられる場合は、充電抵抗32は1個だけ設けられるので、温度推定部16が計算した推定温度は当該充電抵抗32の推定温度に相当する。
図6は、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置における開閉部、予備充電回路及び放電回路の動作を例示する図である。ここでは、一例として、モータ駆動装置1内の制御部17が、時刻t3及びt5で非常停止信号を受信し、時刻t1及びt4で非常停止解除信号を受信し、特に時刻t3で非常停止信号を受信したときに充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていた場合について説明する。
時刻t1までのモータ3の非常停止中は、開閉部19及び予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31は開状態にあり、また、放電回路15とコンデンサ12とは電気的に接続されている。
時刻t1でモータ駆動装置1内の制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信すると、制御部17の制御により、予備充電回路14による予備充電動作及び放電回路15による非放電動作が実行される。すなわち、時刻t1から時刻t2までの予備充電期間中は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31は開動作を実行し、開閉部19は閉動作を実行し、放電回路15とコンデンサ12との電気的接続は切断される。この結果、予備充電期間中は充電抵抗32に充電電流が流れてコンデンサ12が充電され、DCリンク電圧が徐々に上昇する。なお、充電抵抗32に流れる充電電流は、実際には正負に振動する減衰傾向を示すが、説明を簡明にするために図6では正側の包絡線で示している。また、充電抵抗32に充電電流が流れるので、充電抵抗32の温度は徐々に上昇する。
時刻t2でコンデンサ12は所定の充電電圧に到達するので、制御部17の制御により、充電抵抗バイパススイッチ31は閉動作を実行して予備充電動作を完了する。これにより、モータ3の動作準備が完了する。これ以降、充電抵抗32には電流が流れないので、充電抵抗32の温度はしばらくしてから上昇から低下に転じる。
時刻t3でモータ駆動装置1内の制御部17が非常停止信号を受信すると、制御部17は、時刻t3の時点で温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度を、温度推定部16から取得する。図6に示す例では、時刻t3の時点で温度推定部16が計算した充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定されるとしたので、制御部17の制御により、放電回路15とコンデンサ12との電気的接続が切断された状態である非放電動作が維持されるとともに、開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31については開動作が実行される。なお、時刻t1の時点で制御部17が放電回路15内の放電用スイッチ34を開放するよう制御することで既に非放電動作状態となっているので、時刻t3の時点における制御部17の放電回路15に対する制御は、この非放電動作状態を変更するものではない。したがってDCリンク電圧が急激に低下することはない。
時刻t4でモータ駆動装置1内の制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信すると、制御部17の制御により、開閉部19による閉動作が実行される。このとき、充電抵抗バイパススイッチ31は開放されているので、充電抵抗32には電流が流れる。しかしながら、放電回路15による非放電動作が実行されているので、DCリンク電圧は大きくは低下していない(0[V]になっていない)ので、充電抵抗32に流れる充電電流はごく僅かであるので、充電抵抗32に対する熱の蓄積は少なく、充電抵抗32の急激な温度上昇はない。
時刻t5でコンデンサ12は所定の充電電圧に到達するので、制御部17の制御により、充電抵抗バイパススイッチ31は閉動作を実行して予備充電動作を完了する。これにより、モータ3の動作準備が完了する。これ以降、充電抵抗32には電流が流れないので、充電抵抗32の温度はさらに低下する。このように、本開示の第1の実施形態によるモータ駆動装置1においては、制御部17が非常停止信号を受信した時点で充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたので、放電回路15は放電動作を実行せず非放電動作を実行を維持し、この次に実行される予備充電回路14による予備充電動作において充電抵抗32に流れる充電電流を抑制するので、充電抵抗32の温度上昇を回避することができる。
続いて、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置について説明する。第2の実施形態は、モータ駆動装置の制御部が非常停止解除信号を受信したときにDCリンクの電圧が所定の電圧閾値を超えているか否かに応じて予備充電回路の動作内容を変更するという点で、第1の実施形態とは相違する。
図1または図2に示すように、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置1の構成は、第1の実施形態と同様である。ただし、本開示の第2の実施形態では、制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信したときの動作内容が、第1の実施形態とは相違する。より詳細には次の通りである。
制御部17は、信号生成部18から非常停止解除信号を受信したときにDCリンクの電圧が所定の電圧閾値を超えていない場合は、充電抵抗バイパススイッチ31を開放するよう予備充電回路14を制御する。また、制御部17は、信号生成部18から非常停止解除信号を受信したときにDCリンクの電圧が電圧閾値を超えていた場合は、充電抵抗バイパススイッチ31の閉成を維持するよう予備充電回路14を制御する。DCリンクの電圧は、コンデンサ12の正負両極の間に印加される電圧を検出する電圧検出部(図1及び図2では図示せず)によって検出される。
既に説明した第1の実施形態では、図6に示すように時刻t3で制御部17が非常停止信号を受信したときに充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていた場合、制御部17の制御により、放電回路15とコンデンサ12との電気的接続が切断された状態である非放電動作が維持されるとともに、開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31については開動作が実行され、さらにその後、時刻t4で制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信すると、制御部17の制御により、開閉部19による閉動作が実行される。このとき、充電抵抗バイパススイッチ31は閉成されているので、充電抵抗32には電流が流れる。図6に示すように第1の実施形態では時刻t4の時点では放電回路15は非放電動作状態にあるので、コンデンサ12の電圧は低下していないはずである。しかしながら、コンデンサ12が自然放電してコンデンサ12の電圧が大きく低下している可能性もある。この場合、充電抵抗32には大きな突入電流が発生し、整流回路11内のダイオードやコンデンサ12が破壊される恐れがある。
そこで、第2の実施形態では、制御部17が非常停止解除信号を受信したときにおいて、コンデンサ12が自然放電により大きく電圧が低下しているか否かを判定する。コンデンサ12が自然放電により大きく電圧が低下しているか否かの判定は、モータ駆動装置1の制御部17が非常停止解除信号を受信した時点においてDCリンクの電圧(すなわちコンデンサ12の正負両極の間の電圧が所定の電圧閾値を超えているか否かに基づいて行われる。電圧閾値は、例えばコンデンサ12の電圧低下により発生する突入電流が、整流回路11内のダイオードやコンデンサ12の破壊をもたらすことになるような電圧以上の値に設定すればよい。そして、制御部17は、DCリンクの電圧が電圧閾値を超えていないと判定した場合は、コンデンサ12の電圧が自然放電により大きく低下していると考えられるので、充電抵抗バイパススイッチ31を開放するよう予備充電回路14を制御して予備充電動作を行い、この予備充電動作によりコンデンサ12が所定の充電電圧に達したとき、充電抵抗バイパススイッチ31を閉成するよう予備充電回路14を制御して予備充電動作を完了する。これにより、制御部17がさらに次に非常停止解除信号を受信したときに実行されることになる予備充電動作において充電抵抗32に流れる電流を抑制することができる。このように第2の実施形態によれば、充電抵抗32の溶断による破壊並びに整流回路11内のダイオード及びコンデンサ12の破壊をより確実に防ぐことができる。
図7は、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置における予備充電回路、放電回路及び開閉部の動作フローを示すフローチャートである。
第2の実施形態においても、第1の実施形態同様、モータ駆動装置1において、制御部17は非常停止解除信号を受信した時点において温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が所定の温度閾値を超えているか否かを判定する。制御部17が非常停止解除信号を受信するタイミングは特に限定されないので、温度推定部16は、制御部17がいつ非常停止解除信号を受信しても当該タイミングの充電抵抗32の推定温度を制御部17に提供できるよう、充電抵抗32の推定温度を所定の周期で逐次計算する。
ステップS201において、制御部17は、信号生成部18から非常停止解除信号を受信したか否かを判定する。ステップS201において非常停止解除信号を受信したと判定された場合は、ステップS202へ進む。
ステップS202において、制御部17は、非常停止解除信号を受信した時点(すなわちステップS201において制御部17が非常停止解除信号を受信したと判定した時点)におけるDCリンクの電圧が、所定の電圧閾値を超えているか否かを判定する。ステップS202においてDCリンクの電圧が電圧閾値を超えていると判定された場合はステップS204へ進み、DCリンクの電圧が電圧閾値を超えていないと判定された場合はステップS203へ進む。
ステップS202においてDCリンクの電圧が電圧閾値を超えていないと判定された場合は、ステップS203において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を開放するよう制御し、その後、ステップS204へ進む。
一方、ステップS202においてDCリンクの電圧が電圧閾値を超えていると判定された場合は、予備充電回路14の充電抵抗バイパススイッチ31は閉状態を維持したまま、ステップS204へ進む。
ステップS204において、制御部17は、開閉部19を閉成するよう制御する。先のステップS202においてDCリンクの電圧が電圧閾値を超えていないと判定された場合は、充電抵抗32を介する予備充電動作が実行される。すなわち、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31は開状態にあるので、充電抵抗32が電流経路に含まれることになり、交流電源2からの交流電力は、開閉部19及び充電抵抗32を介して整流回路11に入力される。整流回路11は、入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力する。整流回路11から出力された電流は充電電流としてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は所定の充電電圧になるまで充電される(充電抵抗32を介する予備充電動作)。
一方、先のステップS202においてDCリンクの電圧が電圧閾値を超えていると判定された場合は、充電抵抗32を介さない予備充電動作が実行される。すなわち、予備充電回路14の充電抵抗バイパススイッチ31は閉状態を維持しているので、充電抵抗32をバイパスした電流経路が形成され、交流電源2からの交流電力は、充電抵抗32には流れず、開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31を流れて整流回路11に入力される。整流回路11は、入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力する。整流回路11から出力された電流は充電電流としてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は所定の充電電圧になるまで充電される(充電抵抗32を介さない予備充電動作)。
なお、充電抵抗32を介する予備充電動作が行われる場合及び充電抵抗32を介さない予備充電動作が行われる場合のいずれにおいても、ステップS204の実行開始時点では、制御部17が放電回路15内の放電用スイッチ34を開放するよう制御することで、放電抵抗33とコンデンサ12との電気的接続は切断されている。
ステップS205において、制御部17は、予備充電回路14による予備充電動作が完了したか否かを判定する。コンデンサ12の電圧(DCリンク電圧)が所定の充電電圧に達した場合、制御部17は、予備充電回路14による予備充電動作が完了したと判定し、ステップS206へ進む。
ステップS206において、制御部17は、予備充電回路14の充電抵抗バイパススイッチ31が開状態にあるか否かを判定する。ステップS206において充電抵抗バイパススイッチ31が開状態にあると判定された場合はステップS207へ進み、充電抵抗バイパススイッチ31が開状態にあると判定されなかった場合(すなわち充電抵抗バイパススイッチ31が閉状態にある場合)はステップS208へ進む。
ステップS206において充電抵抗バイパススイッチ31が開状態にあると判定された場合は、ステップS207において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を閉成するよう制御する。先のステップS202においてDCリンクの電圧が電圧閾値を超えていないと判定されて充電抵抗バイパススイッチ31が開動作し充電抵抗32を介した予備充電動作が行われた場合は、ステップS207の処理を経ることによって、当該予備充電動作完了後は、充電抵抗バイパススイッチ31が閉成されて充電抵抗32をバイパスした電流経路が形成され、交流電源2からの交流電力は、共に閉状態にある開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31を介して整流回路11に入力されることになる。その後、ステップS208へ進む。
ステップS206において充電抵抗バイパススイッチ31が開状態にあると判定されなかった場合は、予備充電回路14の充電抵抗バイパススイッチ31は閉状態を維持したまま、ステップS208へ進む。この場合も、交流電源2からの交流電力は、共に閉状態にある開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31を介して整流回路11に入力される。
整流回路11は、共に閉状態にある開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31を介して入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力し、インバータ13は、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。ステップS208において、制御部17は、モータ3の回転速度、モータ3の巻線に流れる電流、所定のトルク指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、電力変換指令を生成する。インバータ13は、制御部17から受信した電力変換指令に従い、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。モータ3は、インバータ13から供給される交流電力に基づいて駆動される。
ステップS209において、制御部17は、信号生成部18から非常停止信号を受信したか否かを判定する。
ステップS209において非常停止信号を受信したと判定された場合は、ステップS210へ進むとともに、制御部17は、その時点で温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度を、温度推定部16から取得する。
ステップS210において、制御部17は、開閉部19を開放するよう制御する。
ステップS211において、制御部17は、非常停止信号を受信した時点(すなわちステップS209において制御部17が非常停止信号を受信したと判定した時点)において温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が、所定の温度閾値を超えているか否かを判定する。ステップS211において、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定された場合はステップS212へ進み、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていないと判定され場合はステップS213へ進む。
ステップS211において充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定された場合は、ステップS212において、制御部17は、放電回路15が非放電動作を維持するよう制御する。より詳細には、制御部17は、放電回路15内の放電用スイッチ34の開放を維持するよう制御することで、放電抵抗33とコンデンサ12との電気的接続を切断し、非放電動作状態を維持する。ステップS212における放電回路15による非放電動作は、ステップS210において充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定される限りは、予備充電回路14の動作内容に関わらず、必ず実行される。ステップS212の実行後は、ステップS201へ戻る。
一方、ステップS211において充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていないと判定され場合は、ステップS213において、制御部17は、放電回路15が放電動作を実行するよう制御する。これにより、ステップS202から続いていた放電回路15の非放電動作状態は放電動作状態に切り替えられ、DCリンクにおける直流電力(すなわちコンデンサ12に蓄積されていた直流電力)が放電抵抗33に流入して熱として消費され、DCリンク電圧は急激に低下して0[V]になる。ステップS213の実行後は、ステップS201へ戻る。
図8は、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置における開閉部、予備充電回路及び放電回路の動作を例示する図である。ここでは、一例として、モータ駆動装置1内の制御部17が、時刻t3及びt5で非常停止信号を受信し、時刻t1及びt4で非常停止解除信号を受信し、特に時刻t3で非常停止信号を受信したときに充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えている場合について説明する。
時刻t1までのモータ3の非常停止中は、開閉部19及び予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31は開状態にあり、また、放電回路15とコンデンサ12とは電気的に接続されている。
時刻t1でモータ駆動装置1内の制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信すると、制御部17は、非常停止解除信号を受信した時刻t1の時点におけるDCリンクの電圧が電圧閾値を超えているか否かを判定する。図8に示す例では、時刻t1の時点でDCリンクの電圧が0[V]であり電圧閾値を超えていないので、制御部17は、予備充電回路14の充電抵抗バイパススイッチ31が開動作するよう制御する。また、制御部17の制御により、放電回路15による非放電動作が実行される。すなわち、時刻t1から時刻t2までの予備充電期間中は、開閉部19は閉動作を実行し、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31は開動作を実行し、放電回路15とコンデンサ12との電気的接続は切断される。この結果、予備充電期間中は充電抵抗32に充電電流が流れてコンデンサ12が充電され、DCリンク電圧が徐々に上昇する。なお、充電抵抗32に流れる充電電流は、実際には正負に振動する減衰傾向を示すが、説明を簡明にするために図8では正側の包絡線で示している。また、充電抵抗32に充電電流が流れるので、充電抵抗32の温度は徐々に上昇する。
時刻t2でコンデンサ12は所定の充電電圧に到達するので、制御部17の制御により、充電抵抗バイパススイッチ31は閉動作を実行して予備充電動作を完了する。これにより、モータ3の動作準備が完了する。これ以降、充電抵抗32には電流が流れないので、充電抵抗32の温度はしばらくしてから上昇から低下に転じる。
時刻t3でモータ駆動装置1内の制御部17が非常停止信号を受信すると、制御部17は、時刻t3の時点で温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度を温度推定部16から取得する。図8に示す例では、時刻t3の時点で温度推定部16が計算した充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていると判定されるとしたので、制御部17の制御により、放電回路15とコンデンサ12との電気的接続が切断された状態である非放電動作が維持されるとともに、充電抵抗バイパススイッチ31については閉動作が維持され、開閉部19については開動作が実行される。なお、時刻t2の時点で制御部17が充電抵抗バイパススイッチ31を閉成するよう制御することで充電抵抗バイパススイッチ31は既に閉動作しているので、時刻t3の時点における制御部17の予備充電回路14に対する制御は、充電抵抗バイパススイッチ31による閉動作を変更するものではない。また、時刻t1の時点で制御部17が放電回路15内の放電用スイッチ34を開放するよう制御することで既に非放電動作状態となっているので、時刻t3の時点における制御部17の放電回路15に対する制御は、この非放電動作状態を変更するものではない。したがってDCリンク電圧が急激に低下することもない。
時刻t4でモータ駆動装置1内の制御部17が信号生成部18から非常停止解除信号を受信すると、制御部17は、非常停止解除信号を受信した時刻t1の時点におけるDCリンクの電圧が電圧閾値を超えているか否かを判定する。図8に示す例では、時刻t3の時点でDCリンクの電圧がほぼ満充電に近い電圧であることから電圧閾値を超えており、したがって、制御部17は、予備充電回路14の充電抵抗バイパススイッチ31の閉動作を維持するよう制御する。また、制御部17の制御により、開閉部19による閉動作が実行される。このように充電抵抗バイパススイッチ31は閉動作の実行が維持されているので、充電抵抗32には電流が流れない。よって、充電抵抗32に対する熱の蓄積は少なく、充電抵抗32の温度はさらに低下する。
時刻t5でコンデンサ12は所定の充電電圧に到達するので、予備充電動作を完了する。なお、既に、充電抵抗バイパススイッチ31は閉動作を実行しているので、予備充電動作の完了際の予備充電回路14の動作に変更はない。これにより、モータ3の動作準備が完了する。これ以降も、充電抵抗32には電流が流れないので、充電抵抗32の温度はさらに低下する。このように、本開示の第2の実施形態によるモータ駆動装置1においては、制御部17が非常停止解除信号を受信した時点でDCリンクの電圧が電圧閾値を超えており充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えている場合は、充電抵抗バイパススイッチ31は閉動作の実行を維持しかつ放電回路15は放電動作を実行しない(すなわち非放電動作を維持する)ので、この次に実行される予備充電回路14による予備充電動作において充電抵抗32に電流は流れないので、コンデンサ12の自然放電があっても、充電抵抗32の温度上昇を回避することができる。
続いて、本開示の第3及び第4の実施形態によるモータ駆動装置について説明する。第3及び第4の実施形態は、上述した第1及び第2の実施形態において、作業者に充電抵抗の温度が高くなっていることを注意喚起するためのアラームを出力するアラーム出力部をさらに備えるものである。
まず、本開示の第3の実施形態によるモータ駆動装置について、図9〜図11を参照して説明する。第3の実施形態は、上述した第1及び第2の実施形態において、モータの非常停止を解除するための非常停止解除信号を受信したときに推定温度が温度閾値を超えていた場合にアラームを出力するアラーム出力部をさらに備えたものである。
図9は、本開示の第3及び第4の実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。図9に示す構成は、後述する第4の実施形態にも適用可能である。
図9に示すように、第3の実施形態によるモータ駆動装置1は、制御部17が非常停止解除信号を受信したときに充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていた場合にアラームを出力するアラーム出力部21をさらに備える。制御部17が非常停止解除信号を受信したときに充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定された場合は、放電回路15は放電動作ではなく非放電動作を実行するので、コンデンサ12に電荷が蓄積された状態が維持されるので、作業員の感電の恐れがあることから、アラーム出力部21によりアラームを出力することで作業者に注意喚起する。例えば、アラーム出力部21から出力されるアラームを用いて、作業者に放電回路15が非放電動作状態にあるのでコンデンサ12に電荷が蓄積されて感電の恐れがあることを報知するための報知部(図示せず)を設けてもよい。報知部の手段の例としては、モータ駆動装置1やその上位制御装置に付属のディスプレイ、パソコン、携帯端末及びタッチパネルなどのディスプレイなどがある。また例えば、報知部を、音声、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響機器にて実現してもよい。またあるいは、プリンタを用いて紙面等にプリントアウトして表示させる形態をとってもよい。またあるいは、これらを適宜組み合わせて実現してもよい。
アラーム出力部21は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ駆動装置1内やモータ駆動装置1が設けられた機械内にある例えばMPUやDSPなどの演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、アラーム出力部21の機能を実現することができる。またあるいは、アラーム出力部21の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、アラーム出力部21の機能を実現するソフトウェアプログラムを記憶媒体に格納してもよい。なお、アラーム出力部21以外の回路構成要素については図1または図2に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
図10は、本開示の第1の実施形態にアラーム出力部をさらに設けた第3の実施形態によるモータ駆動装置における予備充電回路、放電回路、開閉部及びアラーム出力部の動作フローを示すフローチャートである。
図10に示すステップS101〜S110及びS112の各処理は、図4を参照して説明したステップS101〜S110及びS112の各処理とそれぞれ同様である。
ステップS110において、制御部17は、非常停止信号を受信した時点(すなわちステップS107において制御部17が非常停止信号を受信したと判定した時点)において温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が、所定の温度閾値を超えているか否かを判定する。ステップS110において、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていると判定された場合はステップS300へ進み、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていないと判定され場合はステップS112へ進む。
ステップS110において充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定された場合は、ステップS300において、次段のステップS111において放電回路15が非放電動作を実行することを作業者に注意喚起するために、アラームを出力する。その後、モータ駆動装置1は動作を終了する。
図11は、本開示の第2の実施形態にアラーム出力部をさらに設けた第3の実施形態によるモータ駆動装置における予備充電回路、放電回路、開閉部及びアラーム出力部の動作フローを示すフローチャートである。
図10に示すステップS201〜S211及びS213の各処理は、図7を参照して説明したステップS201〜S211及びS213の各処理とそれぞれ同様である。
ステップS211において、制御部17は、非常停止信号を受信した時点(すなわちステップS209において制御部17が非常停止信号を受信したと判定した時点)において温度推定部16により計算された充電抵抗32の推定温度が、所定の温度閾値を超えているか否かを判定する。ステップS211において、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていると判定された場合はステップS300へ進み、充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていないと判定され場合はステップS213へ進む。
ステップS211において充電抵抗32の推定温度が温度閾値を超えていたと判定された場合は、ステップS300において、さらに後段のステップS212において放電回路15が非放電動作を実行することを作業者に注意喚起するために、アラームを出力する。その後、モータ駆動装置1は動作を終了する。
次に、本開示の第4の実施形態によるモータ駆動装置について、図9及び図12を参照して説明する。第4の実施形態は、上述した第1及び第2の実施形態において、所定の時間期間の間に予備充電回路により実行される予備充電動作の回数が、所定の回数閾値を超えた場合にアラームを出力するアラーム出力部をさらに備えたものである。
図9に示すように、第4の実施形態によるモータ駆動装置1は、所定の時間期間の間に予備充電回路14により実行される予備充電動作の回数が、所定の回数閾値を超えた場合にアラームを出力するアラーム出力部22をさらに備える。温度上昇持続時間Uの期間中に制御部17に非常停止信号と非常停止解除信号とが交互に入力されると、当該温度上昇持続時間Uの期間中に予備充電動作が複数回実行され、充電抵抗32に熱が蓄積されて温度が上昇し、溶断により破壊される可能性が高くなる。そこで、温度上昇持続時間Uの期間中に予備充電回路14により実行される予備充電動作の回数が所定の回数閾値を超えた場合、アラーム出力部21によりアラームを出力することで作業者に注意喚起する。
例えば、充電抵抗32が有する最大温度定格が150[℃]、温度上昇持続時間Uが60[秒]、充電抵抗32の温度上昇値Triseが10[℃。]である場合、13回の予備充電動作があると、780(=13×60)[秒]で充電抵抗32は最大温度定格150(=13×10+20)[℃]に達する。
アラームを出力するか否かの判定に用いられる回数閾値Kthは、充電抵抗32の最大定格温度をTmax[℃]、としたとき、下記式3のように表される。
よって、アラーム出力部22は、「U×Kth[秒]」の間に、温度上昇持続時間Uの期間中に予備充電回路14により実行される予備充電動作の回数が、所定の回数閾値を超えた場合、アラームを出力する。なお、温度上昇持続時間Uは、上述のように実験により予め取得されるものである。例えば、アラーム出力部22から出力されるアラームを用いて、充電抵抗32が溶断による破損の恐れがあることを報知するための報知部(図示せず)を設けてもよい。報知部の手段の例としては、モータ駆動装置1やその上位制御装置に付属のディスプレイ、パソコン、携帯端末及びタッチパネルなどのディスプレイなどがある。また例えば、報知部を、音声、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響機器にて実現してもよい。またあるいは、プリンタを用いて紙面等にプリントアウトして表示させる形態をとってもよい。またあるいは、これらを適宜組み合わせて実現してもよい。
アラーム出力部22は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ駆動装置1内やモータ駆動装置1が設けられた機械内にある例えばMPUやDSPなどの演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、アラーム出力部22の機能を実現することができる。またあるいは、アラーム出力部22の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。またあるいは、アラーム出力部22の機能を実現するソフトウェアプログラムを記憶媒体に格納してもよい。なお、アラーム出力部22以外の回路構成要素については図1または図2に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
図12は、本開示の第1または第2の実施形態にアラーム出力部をさらに設けた第4の実施形態によるモータ駆動装置における予備充電回路及びアラーム出力部の動作フローを示すフローチャートである。
第4の実施形態によるモータ駆動装置1におけるアラーム出力部22は、図4を参照して説明した第1の実施形態または図7を参照して説明した第2の実施形態によるモータ駆動装置1における予備充電回路14、放電回路15、制御部17及び開閉部19の動作に並行して実行される。図12では、予備充電回路14、制御部17、開閉部19及びアラーム出力部22の動作についてのみ示す。
ステップS401において、アラーム出力部22は、予備充電回路14による予備充電動作の回数iとして、初期値である0(ゼロ)を設定する。
ステップS402において、制御部17は、信号生成部18から非常停止解除信号を受信したか否かを判定する。ステップS402において非常停止解除信号を受信したと判定された場合は、ステップS403へ進む。
ステップS403において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を開放するよう制御する。これにより、充電抵抗32が電流経路に含まれることになる。
ステップS404において、制御部17は、開閉部19を閉成するよう制御する。これにより、開閉部19は閉状態を維持しかつ充電抵抗バイパススイッチ31は開状態を維持するので、交流電源2からの交流電力は、開閉部19及び充電抵抗32を介して整流回路11に入力され、予備充電回路14による予備充電動作が開始される。この後、充電抵抗32に電流が流れて温度が上昇する温度上昇持続時間Uに入る。アラーム出力部22は、ステップS404の開始時点からの経過時間を計測する。
ステップS405において、制御部17は、予備充電回路14による予備充電動作が完了したか否かを判定する。コンデンサ12の電圧(DCリンク電圧)が所定の充電電圧に達した場合、制御部17は、予備充電回路14による予備充電動作が完了したと判定し、ステップS406へ進む。
ステップS406において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を閉成するよう制御する。これにより、充電抵抗32をバイパスした電流経路が形成され、交流電源2からの交流電力は、共に閉状態にある開閉部19及び充電抵抗バイパススイッチ31を介して整流回路11に入力される。整流回路11は、入力された交流電力を直流電力に変換してDCリンクへ出力し、インバータ13は、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。
ステップS407において、制御部17は、モータ3の回転速度、モータ3の巻線に流れる電流、所定のトルク指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、電力変換指令を生成する。インバータ13は、制御部17から受信した電力変換指令に従い、DCリンクにおける直流電力を交流電力に変換してモータ3に供給する。モータ3は、インバータ13から供給される交流電力に基づいて駆動される。
ステップS408において、制御部17は、信号生成部18から非常停止信号を受信したか否かを判定する。ステップS408において、非常停止信号を受信したと判定された場合はステップS409へ進み、非常停止信号を受信しなかったと判定された場合はステップS407へ戻る。
ステップS409において、制御部17は、予備充電回路14内の充電抵抗バイパススイッチ31を開放するよう制御する。これにより、充電抵抗32が電流経路に含まれることになる。
ステップS410において、アラーム出力部22は、現在、温度上昇持続時間Uの期間中であるか否かを判定する。上述のように、アラーム出力部22は、ステップS404における予備充電動作開始時点からの経過時間を計測しており、この計測した経過時間が温度上昇持続時間U以内であるか否かに基づいて、温度上昇持続時間Uの期間中であるか否かを判定する。ステップS410において、温度上昇持続時間Uの期間中であると判定された場合はステップS411へ進み、温度上昇持続時間Uの期間中であると判定されなかったと判定された場合はステップS402へ戻る。
ステップS411において、アラーム出力部22は、予備充電回路14による予備充電動作の回数iを1だけインクリメントする。
ステップS412において、アラーム出力部22は、予備充電回路14による予備充電動作の回数iが回数閾値Kth以上であるか否かを判定する。ステップS412において、予備充電動作の回数iが回数閾値Kth以上であると判定された場合はステップS413へ進み、予備充電動作の回数iが回数閾値Kth未満であると判定された場合はステップS402へ戻る。
ステップS413において、アラーム出力部22はアラームを出力する。その後、アラーム出力部22の処理を終了する。