以下図面を参照して、予備充電回路を有するモータ駆動装置について説明する。理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。図面に示される形態は実施をするための一つの例であり、図示された実施形態に限定されるものではない。
図1は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置を示す図である。
一例として、交流電源2に接続されたモータ駆動装置1により、交流モータ(以下、単に「モータ」と称する。)3を制御する場合について示す。本実施形態においては、モータ3の種類は特に限定されず、例えば誘導モータであっても同期モータであってもよい。また、交流電源2及びモータ3の相数は本実施形態を特に限定するものではなく、例えば三相であっても単相であってもよい。図示の例では、交流電源2及びモータ3をそれぞれ三相としている。交流電源2の一例を挙げると、三相交流400V電源、三相交流200V電源、三相交流600V電源、単相交流100V電源などがある。モータ3が設けられる機械には、例えば工作機械、ロボット、鍛圧機械、射出成形機、産業機械、各種電化製品、電車、自動車、航空機などが含まれる。
図1に示すように、本実施形態によるモータ駆動装置1は、順変換器11と、コンデンサ12と、逆変換器13と、予備充電回路14と、電圧検出部15と、収束値計算部16とを備える。また、モータ駆動装置1は、充電完了判定部17と、スイッチ制御部18と、電流検出部19と、モータ制御部20と、速度検出部41とを備える。
順変換器11は、交流電源2から入力された交流電力を直流電力に変換して直流側である直流リンク部へ出力する。順変換器11の例としては、ダイオード整流回路、120度通電型整流回路、あるいは内部にスイッチング素子を備えるPWMスイッチング制御方式の整流回路などがある。順変換器11は、交流電源2が三相である場合は三相のブリッジ回路として構成され、交流電源2が単相である場合は単相ブリッジ回路で構成される。順変換器11がダイオード整流回路である場合は、交流電源2から入力された交流電流を整流し、直流リンク部へ直流電流を出力する。順変換器11が120度通電型整流回路やPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、順変換器11は、交流電源2から入力された交流電力を直流電力に変換して直流リンク部へ出力するとともに電源回生時には直流リンク部における直流電力を交流電力に変換して交流電源2側へ戻すことができる交直双方向に変換可能である電力変換器として実現される。順変換器11がPWMスイッチング制御方式の整流回路である場合は、半導体スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。この場合、半導体スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。なお、順変換器11の交流入力側には交流リアクトルやACラインフィルタ等が設けられるが、ここでは図示を省略している。
順変換器11の直流出力側と逆変換器13の直流入力側とを接続する直流リンク部には、コンデンサ(直流リンクコンデンサ)12が設けられる。コンデンサ12は、逆変換器13が交流電力を生成するために用いられる直流電力を蓄積する機能及び順変換器11の直流出力の脈動分を抑える機能を有する。直流リンク部に設けられるコンデンサの例としては、例えば電解コンデンサやフィルムコンデンサなどがある。
逆変換器13は、直流側から入力された直流電力(すなわち直流リンク部における直流電力)を、モータ3を駆動するための交流電力に変換してモータ3へ出力する。逆変換器13は、直流電力を交流電力に変換することができる構成を有していればよく、例えば、内部に半導体スイッチング素子を備えるPWMインバータなどがある。逆変換器13は、モータ3が三相交流モータである場合は三相ブリッジ回路として構成され、モータ3が単相モータである場合は単相ブリッジ回路として構成される。逆変換器13は、モータ制御部20からのスイッチング指令を受けて直流リンク部における直流電力をモータを駆動するための交流電力に変換してモータ3へ出力するとともにモータ回生時にはモータ3で回生された交流電力を直流電力に変換して直流リンク部へ戻す。逆変換器13がPWMインバータで構成される場合は、半導体スイッチング素子及びこれに逆並列に接続されたダイオードのブリッジ回路からなる。この場合、半導体スイッチング素子の例としては、FET、IGBT、サイリスタ、GTO、SiC、トランジスタなどがあるが、半導体スイッチング素子の種類自体は本実施形態を限定するものではなく、その他の半導体スイッチング素子であってもよい。
モータ駆動装置1によるモータ3の駆動開始前までにDCリンクコンデンサ12を予備充電(初期充電)するために、予備充電回路(初期充電回路)14が設けられる。予備充電回路14は、順変換器11とコンデンサ12との間の電路を開閉するスイッチ31とスイッチ31に並列接続された充電抵抗32とを有する。スイッチ31の例としては、サイリスタやIGBTなどの半導体スイッチング素子や、リレーなどの機械式スイッチなどがある。スイッチ31の開閉は、スイッチ制御部18によって制御される。
モータ駆動装置1の起動直後(電源投入直後)からモータ3の駆動開始前までの予備充電期間中、スイッチ31は、スイッチ制御部18から開指令を受信して開放(オフ)する。予備充電期間中は、スイッチ31は開状態を維持するので、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を介して充電電流としてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は充電(予備充電)される。予備充電期間中は、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。後述するように充電完了判定部17によりコンデンサ12の予備充電が完了したと判定されると、スイッチ制御部18はスイッチ31に対して閉指令を出力し、これを受けてスイッチ31は開から閉に切り替えられ、予備充電回路14による予備充電を完了する。予備充電完了後は、順変換器11から出力される電流は、閉状態にあるスイッチ31を通じて、直流リンク部に接続された逆変換器13及びコンデンサ12へ向けて流れることになる。
スイッチ制御部18は、予備充電回路14内のスイッチ31の開閉を制御する。モータ駆動装置1の起動直後(電源投入直後)からモータ3の駆動開始前までの予備充電期間中、スイッチ制御部18は、予備充電回路14内のスイッチ31に対して開指令を出力する。充電完了判定部17によりコンデンサの予備充電が完了したと判定されると、スイッチ制御部18は、スイッチ31に対して閉指令を出力する。また、充電完了判定部17によりコンデンサの予備充電が完了したと判定されると、スイッチ制御部18は、モータ制御部20に対し、スイッチ31に対して閉指令を出力したことを通知する。この通知を受けてモータ制御部20は逆変換器13の電力変換動作の制御を開始する。
モータ制御部20は、一般的なモータ制御装置と同様、直流リンク部における直流電力とモータ3の駆動電力もしくは回生電力である交流電力との間で電力変換を行う逆変換器13を制御することで、モータ3の駆動を制御する。すなわち、モータ駆動装置1内のモータ制御部20は、速度検出器41によって検出されたモータ3の(回転子の)回転速度(速度フィードバック)、電流検出部19によって検出されたモータ3の巻線に流れる電流(電流フィードバック)、所定のトルク指令、及びモータ3の動作プログラムなどに基づいて、モータ3の速度、トルク、もしくは回転子の位置を制御するためのスイッチング指令を生成する。モータ制御部20によって作成されたスイッチング指令に基づいて、逆変換器13による電力変換動作が制御される。
電圧検出部15は、コンデンサ12の両端の電位差であるコンデンサ電圧値を検出する。このコンデンサ電圧値は、直流リンク電圧値に相当する。予備充電期間中、電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値は、収束値計算部16へ送られる。なお、予備充電完了後は、電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値は、モータ制御部20へ送られて逆変換器13の電力変換動作の制御に用いられてもよい。
収束値計算部16は、予備充電回路14内のスイッチ31の開期間中の異なるタイミングにて検出された複数のコンデンサ電圧値に基づき、コンデンサ電圧値の収束値を計算する。収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値は、充電完了判定部17へ送られる。コンデンサ電圧値の収束値の計算処理の詳細については後述する。
充電完了判定部17は、収束値計算部16により計算された収束値に基づき、コンデンサ12の予備充電が完了したか否かを判定する。コンデンサ12の予備充電完了判定処理の詳細については後述する。
収束値計算部16、充電完了判定部17、スイッチ制御部18、及びモータ制御部20は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばこれらをソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ制御装置1内にある例えばDSPやFPGAなどの演算処理装置をこのソフトウェアプログラムに従って動作させることで、上述の各部の機能を実現することができる。またあるいは、収束値計算部16、充電完了判定部17、スイッチ制御部18、及びモータ制御部20を、各部の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。また、収束値計算部16、充電完了判定部17、スイッチ制御部18、及びモータ制御部20は、例えば工作機械の数値制御装置内に設けられてもよい。また、モータ制御部20内に、収束値計算部16、充電完了判定部17及びスイッチ制御部18を設けてもよい。また、電圧検出部15、電流検出部19及び速度検出部41については、ディジタル回路とアナログ回路との組み合わせで構成してもよく、アナログ回路のみで構成してもよい。
続いて、収束値計算部16によるコンデンサ電圧値の収束値の計算処理について説明する。
図2は、予備充電期間中のコンデンサ電圧値を例示する図である。
モータ3の駆動開始前、時刻0で予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が開始されると、コンデンサ12の両端の電位差であるコンデンサ電圧値は、徐々に上昇し、最終的にはコンデンサ12の静電容量や順変換器11の直流出力電圧値などで定まるある一定の収束値に収束する。本実施形態では、予備充電期間中の時間t[s]とコンデンサ電圧値V[V]との関係式を、式1で表される関数に近似し、これに基づいて収束値を予測計算する。式1において、A、b及びDは、コンデンサ12の静電容量や順変換器11の直流出力電圧値などで定まる係数である。
式1において、時刻tを無限大にすると、「Ae-bt」はゼロとなり、したがって、収束値Dが得られる。本実施形態では、収束値Dを次のようにして計算する。
時刻t1、時刻t2、及び時刻t3において電圧検出部15が検出するコンデンサ電圧値V1、V2、及びV3は、それぞれ式2、式3、及び式4のように表される。
式2及び式3を式4へ代入すると、式5が得られる。
ここで、電圧検出部15によるコンデンサ電圧値の検出間隔をΔt一定(すなわちt2-t1=t3-t2=Δt)であるとしたとき、式5は、式6のように変形することができる。
式6を収束値Dについて解くと式7が得られる。
式7で表されるDは、式1において時刻tを無限大にしたとき(すなわちAe-bt=0となるとき)におけるコンデンサ電圧Vの収束値である。また、式7においてコンデンサ電圧V1、V2、及びV3が検出されるタイミングである時刻t1、t2、及びt3はいずれも、実際にコンデンサ電圧が収束値に収まる時刻よりも前である。つまり、式7から、一定間隔Δtを有する少なくとも3つのタイミングにて電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値を用いれば、コンデンサ12の収束値Dを予測計算することができることが分かる。そこで、本実施形態では、モータ駆動装置1の起動直後(電源投入直後)からモータ駆動開始前までの予備充電期間中(すなわち予備充電回路14内のスイッチ31の開期間中)、収束値計算部16は、一定間隔Δtを有する少なくとも3つのタイミングにて電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値を用いて、式7に従って収束値Dを計算(予測計算)する。収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値は、充電完了判定部17に送られ、予備充電完了判定処理に用いられる。
続いて、充電完了判定部17による予備充電完了判定処理の例について、いくつか列記する。
まず、第1の形態による予備充電完了判定処理について説明する。
第1の形態では、収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値と、電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値と、の差が所定範囲内に収まったとき、充電完了判定部17は予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したと判定する。
図3は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置において第1の形態による予備充電完了判定処理を用いた予備充電の動作フローを示すフローチャートである。
モータ駆動装置1の起動直後(電源投入直後)からモータ駆動開始前のステップS101において、収束値計算部16は、カウンタ(図示せず)のカウント値iをゼロ(0)にセットする。
ステップS102において、スイッチ制御部18は、予備充電回路14内のスイッチ31に対して開指令を出力する。スイッチ31は、スイッチ制御部18から開指令を受信して開放(オフ)する。後述するステップS107において予備充電完了と判定されるまで、スイッチ31は開状態を維持する。この予備充電期間中、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を介して充電電流としてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は徐々に上昇する。予備充電期間中は、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。
ステップS103において、電圧検出部15は、コンデンサ12の両端の電位差であるコンデンサ電圧値を検出する。電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値は、収束値計算部16へ送られる。
ステップS104において、収束値計算部16は、カウンタのカウント値iをインクリメントする。
ステップS105において、収束値計算部16は、カウンタのカウント値iが3になったか否かを判定する。カウンタのカウント値iが3になったと判定された場合はステップS106へ進み、カウンタのカウント値iが3になったと判定されなかった場合はステップS103へ戻る。
ステップS101、S104及びS105のカウンタを用いたカウント処理を設けることにより、電圧検出部15は、異なる3つのタイミングにてコンデンサ電圧値を検出することになる。ステップS103からステップS105までの一連の処理は、一定周期(すなわち上述の間隔Δt)で、3回繰り返し実行される。
ステップS105においてカウンタのカウント値iが3になったと判定された場合は、ステップS106において、収束値計算部16は、一定間隔Δtを有する3つのタイミングにて電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値を用いて、式7に従ってコンデンサ電圧値の収束値を計算する。収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値は、充電完了判定部17に送られる。
ステップS107において、電圧検出部15は、コンデンサ12の両端の電位差であるコンデンサ電圧値を検出する。電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値は、充電完了判定部17へ送られる。
ステップS108において、充電完了判定部17は、ステップS106において収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値と、ステップS107において電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値と、の差が所定範囲内に収まったか否かを判定する。充電完了判定部17は、ステップS108においてコンデンサ電圧値の収束値と最新のコンデンサ電圧値との差が所定範囲内に収まったと判定したとき、コンデンサ12の予備充電が完了したと判定し、この判定結果をスイッチ制御部18へ通知してステップS109へ進む。一方、ステップS108においてコンデンサ電圧値の収束値と最新のコンデンサ電圧値との差が所定範囲内に収まったと判定されなかった場合はステップS107へ戻る。なお、ステップS108において充電完了判定部17による予備充電完了判定処理に用いられる上記「所定範囲」は、電圧検出部15により検出されるコンデンサ電圧値の振動幅や電圧検出部15の検出誤差などを考慮し、コンデンサ電圧値の収束値として想定される値の例えば数パーセント程度に設定すればよいが、ここで挙げた数値例はあくまでも一例であり、モータ駆動装置1の運用状況などに応じて上記「所定範囲」を適宜設定すればよい。
ステップS109において、スイッチ制御部18は、コンデンサ12の予備充電が完了したとの通知を受けて、予備充電回路14内のスイッチ31に対して閉指令を出力する。これを受けてスイッチ31は開から閉に切り替えられ、予備充電回路14による予備充電を完了する。予備充電完了後は、順変換器11から出力される電流は、閉状態にあるスイッチ31を通じて、直流リンク部に接続された逆変換器13及びコンデンサ12へ向けて流れることになる。
続いて第2の形態による予備充電完了判定処理について説明する。
第2の形態では、電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値に対する収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値の割合(すなわち、最新のコンデンサ電圧値/コンデンサ電圧値の収束値)が所定値以上になったとき、充電完了判定部17は予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したと判定する。
図4は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置において第2の形態による予備充電完了判定処理を用いた予備充電の動作フローを示すフローチャートである。
第2の形態におけるステップS201からS207までの処理は、図3を参照して説明した第1の形態におけるステップS101からS107までの処理と同様であるので、説明は省略する。
ステップS208において、充電完了判定部17は、「ステップS207において電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値」に対する「ステップS206において収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値」の割合(すなわち、最新のコンデンサ電圧値/コンデンサ電圧値の収束値)が所定値以上になったか否かを判定する。充電完了判定部17は、ステップS208において最新のコンデンサ電圧値に対するコンデンサ電圧値の収束値の割合(すなわち、最新のコンデンサ電圧値/コンデンサ電圧値の収束値)が所定値以上になったと判定したとき、コンデンサ12の予備充電が完了したと判定し、この判定結果をスイッチ制御部18へ通知してステップS209へ進む。一方、ステップS208において最新のコンデンサ電圧値に対するコンデンサ電圧値の収束値の割合(すなわち、最新のコンデンサ電圧値/コンデンサ電圧値の収束値)が所定値以上になったと判定されなかった場合はステップS207へ戻る。なお、ステップS208において充電完了判定部17による予備充電完了判定処理に用いられる上記「所定値」は、電圧検出部15により検出されるコンデンサ電圧値の振動幅や電圧検出部15の検出誤差などを考慮し、コンデンサ電圧値の収束値として想定される値の例えば90パーセント以上の値に設定すればよいが、ここで挙げた数値例はあくまでも一例であり、モータ駆動装置1の運用状況などに応じて上記「所定値」を適宜設定すればよい。
ステップS209において、スイッチ制御部18は、コンデンサ12の予備充電が完了したとの通知を受けて、予備充電回路14内のスイッチ31に対して閉指令を出力する。これを受けてスイッチ31は開から閉に切り替えられ、予備充電回路14による予備充電を完了する。予備充電完了後は、順変換器11から出力される電流は、閉状態にあるスイッチ31を通じて、直流リンク部に接続された逆変換器13及びコンデンサ12へ向けて流れることになる。
続いて第3の形態による予備充電完了判定処理について説明する。
第3の形態は、第1の形態及び第2の形態による予備充電完了判定処理の変形例である。第3の形態による予備充電完了判定処理では、複数計算されるコンデンサ12の収束値のうち最新のコンデンサ12の収束値に基づき、予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したか否かを判定する。第3の形態を第1の形態の変形例とする場合、収束値計算部16により計算された最新のコンデンサ電圧値の収束値と、電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値と、の差が所定範囲内に収まったとき、充電完了判定部17は予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したと判定する。第3の形態を第2の形態の変形例とする場合、電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値に対する収束値計算部16により計算された最新のコンデンサ電圧値の収束値の割合(すなわち、最新のコンデンサ電圧値/最新のコンデンサ電圧値の収束値)が所定値以上になったとき、充電完了判定部17は予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したと判定する。ここでは、一例として、第3の形態を第1の形態の変形例とする場合について、図5を参照して説明する。
図5は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置において第3の形態による予備充電完了判定処理を用いた予備充電の動作フローを示すフローチャートである。
モータ駆動装置1の起動直後(電源投入直後)からモータ駆動開始前のステップS301において、収束値計算部16は、カウンタ(図示せず)のカウント値iをゼロ(0)にセットする。
ステップS302において、スイッチ制御部18は、予備充電回路14内のスイッチ31に対して開指令を出力する。スイッチ31は、スイッチ制御部18から開指令を受信して開放(オフ)し、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を介して充電電流としてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は徐々に上昇する。予備充電期間中は、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。
ステップS303において、電圧検出部15は、コンデンサ12の両端の電位差であるコンデンサ電圧値を検出する。電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値は、収束値計算部16へ送られる。
ステップS304において、収束値計算部16は、カウンタのカウント値iをインクリメントする。
ステップS305において、収束値計算部16は、カウンタのカウント値iが3以上になったか否かを判定する。カウンタのカウント値iが3以上になったと判定された場合はステップS306へ進み、カウンタのカウント値iが3以上になったと判定されなかった場合はステップS303へ戻る。
ステップS301、S304及びS305のカウンタを用いたカウント処理を設けることにより、電圧検出部15は、少なくとも3つ以上の異なるタイミングにてコンデンサ電圧値を検出することになる。また、ステップS303からステップS305までの一連の処理は、一定の周期(すなわち上述の間隔Δt)で、3回以上繰り返し実行される。
ステップS305においてカウンタのカウント値iが3以上になったと判定された場合は、ステップS306において、収束値計算部16は、一定間隔Δtを有する直近の3つのタイミングにて電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値を用いて、式7に従ってコンデンサ電圧値の収束値を計算する。ステップS306において収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値は、その時点で予測計算される最新の値である。収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値(最新の収束値)は、充電完了判定部17に送られる。
ステップS307において、充電完了判定部17は、ステップS306において収束値計算部16により計算されたコンデンサ12の収束値に基づき、予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したか否かを判定する。図5に示す第3の形態は第1の形態の変形例としたので、ステップS307では、充電完了判定部17は、ステップS306において収束値計算部16により計算された最新のコンデンサ電圧値の収束値と、ステップS303において電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値と、の差が所定範囲内に収まったか否かを判定する。充電完了判定部17は、ステップS307においてコンデンサ電圧値の収束値と最新のコンデンサ電圧値との差が所定範囲内に収まったと判定したとき、コンデンサ12の予備充電が完了したと判定し、この判定結果をスイッチ制御部18へ通知してステップS308へ進む。一方、ステップS307においてコンデンサ電圧値の収束値と最新のコンデンサ電圧値との差が所定範囲内に収まったと判定されなかった場合はステップS303へ戻る。このようにステップS303からステップS307までの一連の処理が一定の周期(すなわち上述の間隔Δt)で繰り返し実行されることで、最新のコンデンサ12の収束値に基づき、予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したか否かが判定されることになる。このため、収束値計算部16は、充電完了判定部17によりコンデンサ12の予備充電が完了したと判定されるまで、収束値を計算することになる。
ステップS308において、スイッチ制御部18は、コンデンサ12の予備充電が完了したとの通知を受けて、予備充電回路14内のスイッチ31に対して閉指令を出力する。これを受けてスイッチ31は開から閉に切り替えられ、予備充電回路14による予備充電を完了する。予備充電完了後は、順変換器11から出力される電流は、閉状態にあるスイッチ31を通じて、直流リンク部に接続された逆変換器13及びコンデンサ12へ向けて流れることになる。
なお、図5に示す第3の形態は第1の形態の変形例としたが、第2の形態の変形例とする場合は、ステップS307において、充電完了判定部17は、「ステップS303において電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値」に対する「ステップS306において収束値計算部16により計算された最新のコンデンサ電圧値の収束値」の割合(すなわち、最新のコンデンサ電圧値/最新のコンデンサ電圧値の収束値)が所定値以上になったか否かを判定する。この場合、充電完了判定部17は、「ステップS303において電圧検出部15により検出された最新のコンデンサ電圧値」に対する「ステップS306において収束値計算部16により計算された最新のコンデンサ電圧値の収束値」の割合(すなわち、最新のコンデンサ電圧値/最新のコンデンサ電圧値の収束値)が所定値以上になったとき、充電完了判定部17は予備充電回路14によるコンデンサ12に対する予備充電が完了したと判定し、ステップS308へ進む。
続いて第4の形態による予備充電完了判定処理について説明する。
第4の形態では、充電完了判定部は、電圧検出部により検出されるコンデンサ電圧値が収束値に到達するまでの予測時間を計算する予測時間計算部を有し、予測時間計算部により計算された予測時間が経過したとき、コンデンサの予備充電が完了したと判定する。
図6は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置において第4の形態による予備充電完了判定処理を用いたモータ駆動装置を示す図である。
図6に示すように、充電完了判定部17は、電圧検出部16により検出されるコンデンサ電圧値が収束値に到達するまでの予測時間を計算する予測時間計算部21を有する。収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧の収束値は、充電完了判定部17内の予測時間計算部21へ送られる。予測時間計算部21は、コンデンサ電圧値が収束値に到達するまでの予測時間を計算する。例えば、「コンデンサ電圧値の収束値」と「コンデンサ電圧値がその収束値に到達するまでに要する時間」との関係を表すテーブル(表)を実験等により事前に取得して予測時間計算部21内のメモリに保持しておき、予測時間計算部21では、このテーブルから、収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧の収束値に対応する時間を読み出してこれを「予測時間」として出力するようにしてもよい。充電完了判定部17は、予測時間計算部21により計算された予測時間が経過したとき、コンデンサ12の予備充電が完了したと判定する。充電完了判定部17によりコンデンサの予備充電が完了したと判定されると、スイッチ制御部18は、スイッチ31に対して閉指令を出力する。また、充電完了判定部17によりコンデンサの予備充電が完了したと判定されると、スイッチ制御部18は、モータ制御部20に対し、スイッチ31に対して閉指令を出力したことを通知する。これ以外の構成については図1を参照して説明した構成と同様であるので詳細な説明は省略する。
図7は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置において第4の形態による予備充電完了判定処理を用いた予備充電の動作フローを示すフローチャートである。
モータ駆動装置1の起動直後(電源投入直後)からモータ駆動開始前のステップS401において、収束値計算部16は、カウンタ(図示せず)のカウント値iをゼロ(0)にセットする。
ステップS402において、スイッチ制御部18は、予備充電回路14内のスイッチ31に対して開指令を出力する。スイッチ31は、スイッチ制御部18から開指令を受信して開放(オフ)し、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を介して充電電流としてコンデンサ12へ流れ込み、コンデンサ12は徐々に上昇する。予備充電期間中は、順変換器11から出力される電流は充電抵抗32を流れるので、突入電流の発生を防ぐことができる。
ステップS403において、電圧検出部15は、コンデンサ12の両端の電位差であるコンデンサ電圧値を検出する。電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値は、収束値計算部16へ送られる。
ステップS404において、収束値計算部16は、カウンタのカウント値iをインクリメントする。
ステップS405において、収束値計算部16は、カウンタのカウント値iが3になったか否かを判定する。カウンタのカウント値iが3になったと判定された場合はステップS406へ進み、カウンタのカウント値iが3になったと判定されなかった場合はステップS403へ戻る。
ステップS405においてカウンタのカウント値iが3になったと判定された場合は、ステップS406において、収束値計算部16は、一定間隔Δtを有する3つのタイミングにて電圧検出部15により検出されたコンデンサ電圧値を用いて、式7に従ってコンデンサ電圧値の収束値を計算する。収束値計算部16により計算されたコンデンサ電圧値の収束値は、充電完了判定部17内の予測時間計算部21に送られる。
ステップS407において、予測時間計算部21は、コンデンサ電圧値が収束値に到達するまでの予測時間を計算する。
ステップS408において、充電完了判定部17は、予測時間計算部21により計算された予測時間が経過したか否かを判定する。予測時間が経過したと判定された場合はステップS409へ進み、予測時間が経過したと判定されなかった場合はステップS408へ戻る。
ステップS409において、スイッチ制御部18は、コンデンサ12の予備充電が完了したとの通知を受けて、予備充電回路14内のスイッチ31に対して閉指令を出力する。これを受けてスイッチ31は開から閉に切り替えられ、予備充電回路14による予備充電を完了する。予備充電完了後は、順変換器11から出力される電流は、閉状態にあるスイッチ31を通じて、直流リンク部に接続された逆変換器13及びコンデンサ12へ向けて流れることになる。
以上説明したように、本開示の実施形態によれば、従来のように順変換器の直流出力電圧値及びコンデンサ電圧値をそれぞれ検出するために2つの電圧検出回路を設けて曜日充電完了を行う必要はなく、1つの電圧検出部15のみで予備充電完了判定を容易に行うことができ、低コストである。
上述の第1から第4の形態の変形例として、収束値計算部16により計算(予測計算)された収束値を、モータ駆動装置1で発生する異常の検出に用いてもよい。図8は、本開示の一実施形態によるモータ駆動装置の変形例を示す図である。
図8に示すように、モータ駆動装置1は、第1のアラーム出力部22及び第2のアラーム出力部23をさらに備える。
第1のアラーム出力部22は、収束値計算部16により計算された収束値が、予め規定された上限値を上回った場合、第1のアラームを出力する。例えば、何らかの原因で順変換器11から直流リンク部に定格を超える電圧が出力された場合、予備充電期間中に収束値計算部16により計算された収束値が上限値を上回る。したがって、予備充電期間中、収束値計算部16により計算された収束値が、予め規定された上限値を上回った場合、は「順変換器11から定格を超える電圧が出力されている」という異常が発生している可能性があるので、第1のアラーム出力部22は第1のアラームを出力する。なお、第1のアラーム出力部22のアラーム出力処理に用いられる上限値は、正常時に想定されるコンデンサ電圧値の収束値よりも大きい値に設定しておけばよい。
第2のアラーム出力部23は、収束値計算部16により計算された収束値が、予め規定された下限値を下回った場合、第2のアラームを出力する。例えば、コンデンサ12が短絡故障していた場合、予備充電回路14により予備充電してもコンデンサ電圧値は上昇しない。したがって、予備充電期間中、収束値計算部16により計算された収束値が、予め規定された下限値を下回った場合は、コンデンサ12が短絡故障している可能性があるので、第2のアラーム出力部23は第2のアラームを出力する。第2のアラーム出力部23のアラーム出力処理に用いられる下限値は、コンデンサ12の短絡故障の発生を検出できればよいので、正常時のコンデンサ電圧値よりも十分に小さい値に設定しておけばよい。
上述した第1のアラーム出力部22及び第2のアラーム出力部23は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。この場合、モータ制御装置1内にある例えばDSPやFPGAなどの演算処理装置にこのソフトウェアプログラムを動作させて各部の機能を実現することができる。あるいは、第1のアラーム出力部22及び第2のアラーム出力部23の機能を実現するソフトウェアプログラムを書き込んだ半導体集積回路として実現してもよい。また、第1のアラーム出力部22及び第2のアラーム出力部23はモータ制御部20内に設けてもよい。
第1のアラーム出力部22から出力される第1のアラーム及び第2のアラーム出力部23から出力される第2のアラームを用いて、ユーザに以上の発生を報知させるための報知部(図示せず)を設けてもよい。報知部の手段の例としては、モータ駆動装置1やその上位制御装置に付属のディスプレイ、パソコン、携帯端末及びタッチパネルなどのディスプレイなどがある。例えば「異常発生」といった表示をディスプレイに映し出してもよい。また例えば、報知部を、音声、スピーカ、ブザー、チャイムなどのような音を発する音響機器にて実現してもよい。またあるいは、プリンタを用いて紙面等にプリントアウトして表示させる形態をとってもよい。またあるいは、これらを適宜組み合わせて実現してもよい。
また、第1のアラーム出力部22または第2のアラーム出力部23から第1のアラームまたは第2のアラームが出力された場合、モータ制御部20がモータ駆動装置1に対して起動できないように制御をかけるようにしてもよい。また、第1のアラーム出力部22または第2のアラーム出力部23から第1のアラームまたは第2のアラームが出力された場合、交流電源2から順変換器11への交流電力の入力を遮断するかまたは順変換器11の電力変換動作を停止させることによって、順変換器11から直流リンク部へ電圧を出力しないようにしてもよい。
なお、図8では第1のアラーム出力部22及び第2のアラーム出力部23の両方を備える例について示したが、いずれか一方のみのアラーム出力部を備えるようにしてもよい。
図9は、図8に示すモータ駆動装置におけるアラーム出力処理の動作フローを示すフローチャートである。ここでは、一例として、図3を参照して説明した第1の形態にアラーム出力処理を設けた場合について説明する。
本変形例におけるステップS101からS109までの処理は、図3を参照して説明した通りであるので説明は省略する。
ステップS106において収束値計算部16により収束値を計算した後、ステップS501において、第1のアラーム出力部22及び第2のアラーム出力部23は、所定のアラーム出力要件を満たすか否かを判定する。すなわち、第1のアラーム出力部22は収束値計算部16により計算された収束値が上限値を上回ったか否かを判定し、第2のアラーム出力部23は収束値計算部16により計算された収束値が下限値を下回ったか否かを判定する。収束値が上限値を上回ったと判定された場合または収束値が下限値を下回ったと判定された場合はステップS502へ進み、それ以外の場合はステップS107へ進む。
ステップS502では、第1のアラーム出力部22または第2のアラーム出力部23は、第1のアラームまたは第2のアラームを出力する。すなわち、ステップS501において収束値が上限値を上回ったと判定された場合は第1のアラーム出力部22は第1のアラームを出力し、ステップS501において収束値が下限値を下回ったと判定された場合は第2のアラーム出力部23は第2のアラームを出力する。
なお、図9では第1のアラーム出力部22及び第2のアラーム出力部23の両方を備える例について示したが、いずれか一方のみのアラーム出力部を備えるようにした場合は、ステップS501及びS502では、当該アラーム出力部の処理が実行されることになる。
また、図9一例として、図3を参照して説明した第1の形態にアラーム出力処理を設けた場合について説明したが、図4を参照して説明した第2の形態、図5を参照して説明した第3の形態、または図7を参照して説明した第4の形態に、アラーム出力処理を設けてもよい。図4を参照して説明した第2の形態にアラーム出力処理を設ける場合、ステップS206において収束値計算部16により収束値を計算した後に、ステップS501及びS502の処理を実行すればよい。図5を参照して説明した第3の形態にアラーム出力処理を設ける場合、ステップS306において収束値計算部16により収束値を計算した後に、ステップS501及びS502の処理を実行すればよい。図7を参照して説明した第4の形態にアラーム出力処理を設ける場合、ステップS406において収束値計算部16により収束値を計算した後に、ステップS501及びS502の処理を実行すればよい。
上述の変形例のように、収束値計算部16により計算(予測計算)された収束値を、モータ駆動装置1で発生する異常の検出に用いることで、コンデンサの予備充電期間中におけるコンデンサ電圧値の挙動を事前に把握することができ、モータ駆動装置の異常発生を未然に防ぐことができる。