JP2004140969A - 電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法 - Google Patents

電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法 Download PDF

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金沢 直樹
Tsutomu Oyama
大山 勉
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Abstract

【課題】電力変換装置の交流電源電圧が変化しても、あるいは平滑コンデンサの充電時定数が変化しても、常に最適の時点で充電抵抗を短絡できるようにすることにある。
【解決手段】充電抵抗53を介して平滑コンデンサ56の充電開始時点から一定サンプル周期TS 毎の平滑コンデンサ56の電圧を計り、各電圧データから求めた平滑コンデンサ56の充電時定数から平滑コンデンサ56の収束電圧を予想する。この収束電圧予想値の下側に設定した第1所定値に平滑コンデンサ56の電圧が到達する時刻を予測し、この予測時刻になれば、あるいは平滑コンデンサ電圧がこの第1所定電圧に到達すれば、前記充電抵抗を短絡する。
または、充電抵抗53を介して充電を開始する際に検出した交流電源電圧から電力変換装置の直流出力電圧を算定し、この直流出力電圧算定値の下側に設定した第2所定電圧に平滑コンデンサの電圧が到達したときに、充電抵抗53を短絡する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置の直流側に接続する平滑コンデンサの充電方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6はインバータ装置の一般的な構成を示した主回路接続図である。交流電力を直流電力に変換する電力変換装置として、例えばダイオードをブリッジ接続した整流器52を、交流電源50に電源スイッチ51を介して接続し、この整流器52が出力する直流電力を、半導体スイッチ素子とダイオードとの逆並列接続でなるスイッチング回路をブリッジ接続して構成したインバータ57へ供給するインバータ装置がある。ここで整流器52が出力する直流電力に含まれているリプル分を抑制するために、整流器52の直流側には大容量の平滑コンデンサ56を備える。このインバータ装置を始動するべく電源スイッチ51をオンにすると、その瞬間に平滑コンデンサ56に過大な充電電流が突入して、当該インバータ装置やその電源側機器に大きなダメージを与えてしまう恐れがある。そこで整流器52と平滑コンデンサ56との間に充電抵抗53とこれを短絡する短絡スイッチ54とを挿入し、短絡スイッチ54がオフの状態で平滑コンデンサ56に電圧を印加することにより、過大な充電電流が突入するのを抑制する。平滑コンデンサ56の充電をある程度進行すれば短絡スイッチ54をオンにして充電抵抗53を短絡し、当該平滑コンデンサ56の充電を完了させるようにしている。なお符号55は保護ヒューズである。
【0003】
ところで充電抵抗53を短絡する時期が早すぎると、平滑コンデンサ56の電圧が十分に上昇していないから、充電抵抗53を短絡した瞬間にやはり大きな突入電流が流れ、前述と同様のダメージを発生させる恐れがある。そこで平滑コンデンサ56の電圧が十分に高くなるまで待ってから充電抵抗53を短絡することになるが、この場合は充電抵抗53で発生する損失が大きくなるから、この損失に耐えられるように抵抗を大形にしたり冷却装置を付加する必要を生じる不都合があるし、インバータ装置に始動指令が与えられてから運転が可能になるまでの時間が長くなってしまう不具合も生じる。
【0004】
そこで平滑コンデンサ56の静電容量と充電抵抗53の抵抗値から得られる充電時定数を基にして、当該平滑コンデンサ56の電圧が所定の電圧に上昇するまでの時間を計算しておき、交流電源を印加してからこの時間が経過すれば充電抵抗53を短絡し、当該インバータ装置の始動が完了するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば図6に図示のインバータ装置などの電力変換装置は、以前はこれを設置する場所の交流回路電圧や、当該インバータ装置の使い方などが予め判っていて、それに適合するように製作されていた。すなわち注文生産であったから、平滑コンデンサの充電時定数も明らかであった。しかしながら近年のインバータ装置は量産されることが多く、その使い方も従来のように特定されてはいない。例えば、250Vの電圧に耐える素子で構成しているインバータ装置を、交流電源電圧が200Vの回路で使用することもあるし、230Vで使用する場合もあるから、充電抵抗を短絡する時点を予め定めておいても、その時点での電圧が最適であるとは限らない。また、インバータ装置を構成する整流器の複数台を並列に接続したり、あるいはインバータの複数台を並列に接続することもあるので、充電時定数が当初とは異なった値になってしまうことがある。従って充電抵抗53を短絡する時点を予め定めておくことは無意味である。それにもかかわらず充電抵抗53の短絡時点を従来のままにしておけば、充電抵抗53の過熱や過大な突入電流のために保護ヒューズ55が断線したり、半導体素子が破壊するなどの不具合を発生するおそれも生じる。
【0006】
そこでこの発明の目的は、電力変換装置の交流電源電圧が変化しても、あるいは平滑コンデンサの充電時定数が変化しても、常に最適の時点で充電抵抗を短絡できるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、この発明の電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法は、
交流電源に接続して変換された直流電力を出力する電力変換装置の直流側に平滑コンデンサを接続し、前記交流電源の投入により充電抵抗を介して前記平滑コンデンサの充電を開始し、次いで前記充電抵抗を短絡して充電を完了する電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法において、
前記交流電源を閉路し、充電抵抗を介して充電を開始した時点から所定のサンプル周期毎の前記平滑コンデンサの端子電圧を計測し、これら複数の電圧データから当該平滑コンデンサの充電時定数を演算し、この充電時定数から当該平滑コンデンサの収束電圧を予想し、この収束電圧予想値の下側に第1所定電圧を設定し、平滑コンデンサ電圧がこの第1所定電圧に到達する時刻を予測し、この第1所定電圧到達予測時刻になれば、あるいは平滑コンデンサ電圧がこの第1所定電圧に到達すれば、前記充電抵抗を短絡する。
【0008】
または、前記交流電源を閉路して充電抵抗を介して充電を開始する際の前記交流電源の電圧を検出し、この交流電源電圧検出値から前記電力変換装置の直流出力電圧を算定し、この直流出力電圧算定値の下側に第2所定電圧を設定し、前記平滑コンデンサの電圧が、この第2所定電圧に到達すれば前記充電抵抗を短絡する。
【0009】
【発明の実施の形態】
図2は本発明の第1実施例と第2実施例を説明する回路図であって、図6で既述の回路に、平滑コンデンサ56の電圧を検出する絶縁検出器61とローパスフィルタ62とA/D変換器63とデータ処理回路64を付加した構成である。
図2の回路において、短絡スイッチ54がオフの状態,すなわち充電抵抗53が挿入されている状態で電源スイッチ51をオンすることで、平滑コンデンサ56には充電電流が流入するが、このときの平滑コンデンサ56の電圧VDCは下記の数式1で表される。但しVS は三相交流の線間電圧、Cは平滑コンデンサ56の静電容量で、Rは充電抵抗53の抵抗値であり、tは経過時間である。
【0010】
【数1】
Figure 2004140969
電源スイッチ51をオンにした瞬間の平滑コンデンサ56の電圧(以下では直流電圧と称する)をVDC(0) とすると、VDC(0) =0である。TS をデータのサンプリング周期とすると、各サンプリング時間経過後の直流電圧VDC(1) , DC(2) ・・・の値はA/D変換器63から取得できるから、下記の各数式を適用し、データ処理回路64で演算することにより、それぞれからexp(−TS /CR)の値が得られる。
【0011】
【数2】
Figure 2004140969
【0012】
【数3】
Figure 2004140969
【0013】
【数4】
Figure 2004140969
【0014】
【数5】
Figure 2004140969
各式から得られるexp(−TS /CR)の値を移動平均するなどの統計処理を行って数式2へ代入すれば、線間電圧VS が得られる。このVS を用いることで、t→∞のときの直流電圧VDCの収束予想値を求めることができる。そこで、この直流電圧VDCの収束予想値の下側に第1所定値を設定する。
図1は本発明の第1実施例を表したフローチャートであって、前述の動作を表している。すなわち短絡スイッチ54がオフである(判断41)ことを条件にして電源スイッチ51をオン(処理21)することで、平滑コンデンサ56の充電が開始される。電源スイッチ51がオンしてから1回目のサンプリング時間TS が経過(判断42)した瞬間の直流電圧VDC(1) を検出(処理22)し、数式2によりexp(−TS /CR)を計算(処理25)する。次のサンプリング時間TS が経過(判断43)した瞬間の線間電圧VDC(2) を検出(処理23)し、数式3によりexp(−TS /CR)を計算(処理26)する。同様の動作を繰り返すのであるが、n回目のサンプリング時間TS が経過(判断44)した瞬間に直流電圧VDC(n) を検出(処理24)し、数式5によりexp(−TS /CR)を計算(処理27)する。
【0015】
このようにして得られた計算値を統計処理(処理28)して直流電圧VDCの収束予想値が求まる(処理29)。この収束予想値の下側に第1所定値を設定(処理30)するとともに、この第1所定値に到達するまでの時間T1 を計算(処理31)する。この第1所定値到達時間T1 が経過すれば(判断45)、短絡スイッチ54をオンにして充電抵抗53を短絡(処理32)し、平滑コンデンサ56の充電が完了する。
図3は本発明の第2実施例を表したフローチャートであって、前述の第1実施例のフローチャートに図示している処理31と判断45の代わりに、判断46を備えているのが異なる点であるが、これ以外は同じである。よって同じ部分の説明は省略する。
【0016】
この第2実施例フローチャートでは、直流電圧VDCの収束予想値の下側に第1所定値を設定(処理30)し、直流電圧VDCの検出値がこの第1所定値に達したことを検出すれば(判断46)、短絡スイッチ54をオンにして充電抵抗53を短絡(処理32)し、平滑コンデンサ56の充電を完了させる。
図4は本発明の第3実施例を説明する回路図である。この図4において、コンバータ6は、半導体スイッチ素子とダイオードとの逆並列接続でなるスイッチング回路の6組を三相ブリッジ接続し、その直流側に平滑コンデンサ7を接続した構成である。交流電源1からの三相交流電力が、電源スイッチ2とリアクトル3と充電抵抗4とを介して供給されるのであるが、充電抵抗4には短絡スイッチ5が並列に接続されている。また三相交流電圧を検出するために分圧抵抗8を設置している。この分圧抵抗8から絶縁検出器12で検出された交流相電圧VP は、ローパスフィルタ14とA/D変換器16を介してCPU17へ入力して、交流電源1の相電圧VP から直流電圧VDCの収束予想値の演算と、このVDCの収束予想値の下側に第2所定値の設定とを行う。
【0017】
一方、絶縁検出器11で検出された平滑コンデンサ7の電圧VDCは、ローパスフィルタ13とA/D変換器15を介してCPU17へ入力し、検出された直流電圧VDCが前述の第2所定値に到達したときに短絡スイッチ5をオンにして、充電抵抗4を短絡する。なお、分圧抵抗8と絶縁検出器12とで交流電源1の相電圧VP を検出しているが、線間電圧を検出する回路構成であっても差し支えないのは勿論である。
図5は本発明の第3実施例を表したフローチャートであって、図4で既述の回路の動作を表している。すなわち、短絡スイッチ5がオフしていることを条件にして(判断71)電源スイッチ2をオン(処理73)し、平滑コンデンサ7の充電を開始すると共に、分圧抵抗8に交流相電圧VP を印加する。この交流相電圧VP を計測(処理74)し、次いで直流電圧VDCを演算(処理75)する。更にこの直流電圧VDCの下側に第2所定値を設定(処理76)し、絶縁検出器11で検出する平滑コンデンサ7の電圧VDCがこの第2所定値に達すれば(判断72)、短絡スイッチ5をオンにして充電抵抗4を短絡(処理77)する。
【0018】
【発明の効果】
交流を直流に変換する電力変換装置の直流側には大容量の平滑コンデンサを備えているから、電力変換装置の始動時には、先ず充電抵抗を介してこの平滑コンデンサを充電し、一定時間経過後に充電抵抗を短絡して充電を完了させるのが通常である。しかし交流電圧の変化や平滑コンデンサの静電容量の変更などが原因で、平滑コンデンサの充電が不十分な状態で充電抵抗を短絡すれば過大な突入電流が流れる不具合を生じるし、逆に充電抵抗の短絡までに無駄時間を経過する不具合を生じることもある。これに対して本発明は、平滑コンデンサの充電開始と共に当該平滑コンデンサの電圧の変化を監視し、その電圧変化から最終的に到達する電圧を予測し、この予測電圧の下側に設定した第1所定値に到達するまでの時間を算出して、その時間が経過すれば充電抵抗を短絡する。あるいは平滑コンデンサ電圧がこの第1所定値に到達したことを検出すれば充電抵抗を短絡する。あるいは検出した交流電圧から平滑コンデンサが最終的に到達する電圧を算出し、これの下側に設定した第2所定値に平滑コンデンサ電圧が到達すれば充電抵抗を短絡する。その結果、電力変換装置の設置場所が移動して交流電圧が当初と異なる値になっても、あるいは電力変換装置を並列運転するなどで平滑コンデンサの充電時定数が変化しても、最適な時点で充電抵抗を短絡できるから、過大な突入電流が流れて機器を損傷する危険を回避できる効果が得られるし、無用に長い時間をかけて充電抵抗を短絡することにより生じる無駄時間を排除できる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を表したフローチャート
【図2】本発明の第1実施例と第2実施例を説明する回路図
【図3】本発明の第2実施例を表したフローチャート
【図4】本発明の第3実施例を説明する回路図
【図5】本発明の第3実施例を表したフローチャート
【図6】インバータ装置の一般的な構成を示した主回路接続図
【符号の説明】
1,50       交流電源
2,51       電源スイッチ
4,53       充電抵抗
5,54       短絡スイッチ
6          コンバータ
7,56       平滑コンデンサ
8          分圧抵抗
10          演算制御回路
11,12,61    絶縁検出器
13,14,62    ローパスフィルタ
15,16,63    A/D変換器
17          CPU
21〜32,71,72 処理
41〜46,73〜77 判断
52          整流器
55          保護ヒューズ
57          インバータ
64          データ処理回路

Claims (3)

  1. 交流電源に接続して変換された直流電力を出力する電力変換装置の直流側に平滑コンデンサを接続し、前記交流電源の閉路により充電抵抗を介して前記平滑コンデンサの充電を開始し、次いで前記充電抵抗を短絡して充電を完了する電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法において、
    前記交流電源を閉路し、充電抵抗を介して充電を開始した時点から所定のサンプル周期毎の前記平滑コンデンサの電圧を計測し、これら複数の電圧データから当該平滑コンデンサの充電時定数を演算する段階と、
    この充電時定数から当該平滑コンデンサの収束電圧を予想する段階と、
    この収束電圧予想値の下側に第1所定電圧を設定する段階と、
    この第1所定電圧に到達する時刻を予想する段階と、
    この第1所定電圧到達予想時刻に前記充電抵抗を短絡する段階と、を備えることを特徴とする電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法。
  2. 請求項1に記載の電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法において、
    前記平滑コンデンサの電圧が前記第1所定電圧に到達した時点で前記充電抵抗を短絡する段階を備えることを特徴とする電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法。
  3. 交流電源に接続して変換された直流電力を出力する電力変換装置の直流側に平滑コンデンサを接続し、前記交流電源の閉路により充電抵抗を介して前記平滑コンデンサの充電を開始し、次いで前記充電抵抗を短絡して充電を完了する電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法において、
    前記交流電源を閉路して充電抵抗を介して充電を開始する際の前記交流電源の電圧を検出する段階と、
    この交流電源電圧検出値から前記電力変換装置の直流出力電圧を算定する段階と、
    この直流出力電圧の下側に第2所定電圧を設定する段階と、
    前記平滑コンデンサの電圧が前記第2所定電圧に到達した時点で前記充電抵抗を短絡する段階と、を備えることを特徴とする電力変換装置用平滑コンデンサの充電方法。
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