以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。以下、各実施形態の説明において、加熱装置として、トナーを熱により定着させる定着装置として説明する。
図1に示すモノクロの画像形成装置1には、感光体ドラム10が設けられている。感光体ドラム10は、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体であり、図の矢印方向に回転する。感光体ドラム10の周囲には、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラ7等を備えた現像装置12と、感光体ドラム10の表面をクリーニングするためのクリーニングブレード13等で構成されている。
感光体ドラム10の上方には、露光部が配置されている。露光部が画像データに基づいて発したレーザ光Lbが、ミラー14を介して感光体ドラム10の表面に照射される。
また、感光体ドラム10に対向する位置に配置され、転写チャージャを備えた転写手段15が配置されている。転写手段15は、感光体ドラム10表面上の画像を用紙Pに転写する。
画像形成装置1の下部には給紙部4が位置しており、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙カセット16や、給紙カセット16から用紙Pを搬送路5へ搬出する給紙ローラ17等からなっている。給紙ローラ17の搬送方向下流側にはレジストローラ18が配置されている。
定着装置9は、後述する加熱部材によって加熱される定着ベルト20、その定着ベルト20を加圧可能な加圧ローラ21等を有している。
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
印刷動作(画像形成動作)が開始されると、まず感光体ドラム10が帯電ローラ11によってその表面を帯電される。そして、画像データに基づいて露光部からレーザービームLbが照射され、照射された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。静電潜像が形成された感光体ドラム10には、現像装置12から表面部分にトナーが供給され、トナー画像(現像剤像)として可視像化される。そして、転写後の感光体ドラム10に残されたトナー等は、クリーニングブレード13によって取り除かれる。
一方、印刷動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部4の給紙ローラ17が回転駆動することによって、給紙カセット16に収容された用紙Pが搬送路5に送り出される。
搬送路5に送り出された用紙Pは、レジストローラ18によってタイミングを計られ、感光体ドラム10表面上のトナー画像と向かい合うタイミングで転写手段15と感光体ドラム10との対向部である転写部へ搬送され、転写手段15による転写バイアス印加によりトナー画像が転写される。
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、加熱されている定着ベルト20と加圧ローラ21とによって加熱および加圧されて、トナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ベルト20から分離され、定着装置9の下流側に設けられた搬送ローラ対によって搬送され、装置外側に設けられた排紙トレイへと排出される。
続いて、定着装置9のより詳細な構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、ベルト部材あるいは定着部材としての定着ベルト20と、定着ベルト20の外周面に接触してニップ部Nを形成する、対向部材あるいは加圧部材としての加圧ローラ21と、定着ベルト20を加熱する加熱ユニット19と、を備えている。また、加熱ユニット19は、加熱部材としての面状のヒータ22と、ヒータ22を保持する保持部材としてのヒータホルダ23と、ヒータホルダ23を支持する支持部材としてのステー24とを有する。
定着ベルト20は、無端状のベルト部材で構成され、例えば外径が25mmで厚みが40〜120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5〜50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50〜500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金21aと、この芯金21aの表面に形成された弾性層21bと、弾性層21bの外側に形成された離型層21cとで構成されている。弾性層21bはシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層21bの表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層21cを形成するのが望ましい。
加圧ローラ21と定着ベルト20は、付勢部材としてのバネによって互いに圧接されている。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ21は、画像形成装置本体に設けられた駆動手段から駆動力が伝達されて回転駆動する駆動ローラとして機能する。一方、定着ベルト20は、加圧ローラ21の回転に伴って従動回転するように構成されている。定着ベルト20が回転すると、定着ベルト20はヒータ22に対して摺動するため、定着ベルト20の摺動性を高めるために、ヒータ22と定着ベルト20との間にオイルやグリースなどの潤滑剤を介在させてもよい。
ヒータ22は、定着ベルト20の回転軸方向あるいは長手方向(以下、「ベルト長手方向」という。)に渡って長手状に設けられ、加圧ローラ21に対応する位置で定着ベルト20の内周面に接触している。
本実施形態とは異なり、発熱部60を基材50の定着ベルト20側とは反対側(ヒータホルダ23側)に設けてもよい。その場合、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、本実施形態に係るヒータ22の構成において、さらに基材50の定着ベルト20とは反対側(ヒータホルダ23側)の面に、絶縁層を設けてもよい。
ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触する場合であってもよいが、定着ベルト20への熱伝達効率を高めるには、本実施形態のように、ヒータ22を定着ベルト20に対して直に接触させる方が好ましい。また、ヒータ22を定着ベルト20の外周面に接触させることもできるが、定着ベルト20の外周面がヒータ22との接触により傷付くと定着品質が低下する虞があるため、ヒータ22が接触する面は定着ベルト20の内周面とすることが望ましい。
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側壁部に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23のヒータ22側とは反対側の面が支持されていることで、ヒータ22およびヒータホルダ23は加圧ローラ21の加圧力に対して大きく撓むことなく保たれ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部Nが形成される。
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制され効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることで、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送される(図2の矢印A方向参照)ことで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。
図3は、定着装置の斜視図、図4は、その分解斜視図である。
図3および図4に示すように、定着装置9の装置フレーム40は、一対の側壁部28と前壁部27とから成る第1装置フレーム25と、後壁部29から成る第2装置フレーム26と、を備えている。一対の側壁部28は、ベルト長手方向の一端部側と他端部側とに配置されており、両側壁部28によって、定着ベルト20、加圧ローラ21および加熱ユニット19の両端部側が支持される。各側壁部28には、複数の係合突起28aが設けられ、各係合突起28aが後壁部29に設けられた係合孔29aに係合することで、第1装置フレーム25と第2装置フレーム26とが組み付けられる。
また、各側壁部28は、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、後壁部29側で開口し、これとは反対側では開口しない突き当て部となっている。この突き当て部側の端部には、加圧ローラ21の回転軸を支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21は、その回転軸の両端部がそれぞれ軸受30に装着されることで、両側壁部28によって回転可能に支持される。
また、加圧ローラ21の回転軸の一端部側には、駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が設けられている。駆動伝達ギヤ31は、加圧ローラ21が両側壁部28に支持された状態で、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載された際、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤと連結し、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。なお、加圧ローラ21に駆動力を伝達する駆動伝達部材としては、駆動伝達ギヤ31のほか、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などであってもよい。
加熱ユニット19の長手方向の両端部には、定着ベルト20やヒータホルダ23、ステー24などを支持する一対の両端支持部材32が設けられている。各両端支持部材32には、ガイド溝32aが設けられている。このガイド溝32aを側壁部28の挿通溝28bの縁に沿って進入させることで、両端支持部材32が側壁部28に対して組み付けられる。
また、各両端支持部材32と後壁部29との間には、付勢部材としての一対のバネ33が設けられている。各バネ33によってステー24や両端支持部材32が加圧ローラ21側に付勢されることで、定着ベルト20が加圧ローラ21に押し当てられ、定着ベルト20と加圧ローラ21との間にニップ部が形成される。
また、図4に示すように、第2装置フレーム26を構成する後壁部29の長手方向の一端部側には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体のベルト長手方向の位置決めがなされる。なお、後壁部29の孔部29bが設けられた端部側とは反対の端部側には、位置決め部は設けられていない。これにより、温度変化に伴う定着装置本体のベルト長手方向の伸縮が拘束されないようにしている。
図5は、加熱ユニット19の斜視図、図6は、その分解斜視図である。
図5および図6に示すように、ヒータホルダ23の定着ベルト側の面(図5および図6における手前側の面)には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状およびサイズに形成されているが、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このように、収容凹部23aがヒータ22よりも若干長く形成されていることで、熱膨張によりヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとが干渉しないように構成されている。また、ヒータ22は、この収容凹部23a内に収容された状態で、給電部材としての後述のコネクタによってヒータホルダ23と一緒に挟まれて保持される。
一対の両端支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触してベルト長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23およびステー24の両端部側が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その両端部側にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時においては基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力は生じない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
図5および図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向一端部側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、図5および図6の左側に示される両端支持部材32の嵌合部32eが嵌合することで、ヒータホルダ23と両端支持部材32とのベルト長手方向の位置決めがなされる。一方、図5および図6の右側に示される両端支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23とのベルト長手方向の位置決めはされない。このように、両端支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをベルト長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴ってヒータホルダ23がベルト長手方向へ伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
また、図6に示すように、ステー24の長手方向の両端部側には、各両端支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは両端支持部材32に突き当たることで両端支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、両端支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが両端支持部材32に対して隙間を介して配置されることで、温度変化に伴ってステー24がベルト長手方向に伸縮したとしても、その伸縮が拘束されないようにしている。
図7は、ヒータ22の平面図、図8は、その分解斜視図である。
図8に示すように、ヒータ22は、基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた発熱部60などを有する導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、を有している。本実施形態では、定着ベルト20側(ニップ部N側)に向かって、基材50、第1絶縁層51、導体層52(発熱部60)、第2絶縁層53の順で積層されており、発熱部60から発された熱は、第2絶縁層53を介して定着ベルト20へと伝達される(図2参照)。
基材50は、ステンレス(SUS)や鉄、アルミニウム等の金属材料で構成された長手状の板材である。また、基材50の材料として、金属材料のほか、セラミック、ガラス等を用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度むらが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
各絶縁層51,53は、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成されている。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミド(PI)等を用いてもよい。
導体層52は、複数の抵抗発熱体59を有する発熱部60と、複数の電極部61と、これらを電気的に接続する複数の、導電体としての給電線62と、で構成されている。各抵抗発熱体59は、基材50上に設けられた複数の給電線62を介して3つの電極部61のいずれか2つに対して電気的に並列接続されている。
発熱部60は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成される。発熱部60の材料として、これら以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。
給電線62は、発熱部60よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。給電線62や電極部61の材料としては、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)などを用いることができ、このような材料をスクリーン印刷するなどによって給電線62や電極部61が形成されている。
図9は、ヒータ22にコネクタ70が接続された状態を示す斜視図である。
図9に示すように、コネクタ70は、樹脂製のハウジング71と、ハウジング71に設けられた複数のコンタクト端子72と、を有している。各コンタクト端子72は、板バネで構成され、給電用のハーネス73が接続されている。
図9に示すように、コネクタ70は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子72の先端に設けられた接触部72aが、それぞれ対応する電極部61に弾性的に接触(圧接)することで、コネクタ70を介して発熱部60と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部60へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部61は、コネクタ70との接続を確保するため、少なくとも一部が第2絶縁層53に被覆されておらず、露出した状態になっている(図7参照)。
図10に示すように、本実施形態では、基材50の長手方向に並ぶ複数の抵抗発熱体59のうち、両端以外の各抵抗発熱体59で構成される第1の発熱部(第1の抵抗発熱体群)60Aと、両端の各抵抗発熱体59で構成される第2の発熱部(第2の抵抗発熱体群)60Bとは、それぞれ独立して発熱制御可能に構成されている。具体的に、第1の発熱部60Aを構成する両端以外の各抵抗発熱体59は、それぞれ基材50の長手方向の一端部側に設けられた第1の電極部61Aに対して第1の給電線62Aを介して接続されている。また、第1の発熱部60Aを構成する各抵抗発熱体59は、第1の電極部61A側とは反対の端部側に設けられた第2の電極部61Bに対して第2の給電線62Bを介して接続されている。一方、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59は、基材50の長手方向の一端部側に設けられた(第1の電極部61Aとは別の)第3の電極部61Cに対して第3の給電線62C又は第4の給電線62Dを介して接続されている。また、これら両端の各抵抗発熱体59は、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59と同様に第2の給電線62を介して第2の電極部61Bに接続されている。
また、それぞれの電極部61A〜61Cは、前述のコネクタ70を介して電源64に接続され、電源64から電力を供給される。電極部61Aは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Aが設けられており、スイッチ65AのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。同様に、電極部61Cは、電源64との間に、切替え部としてのスイッチ65Cが設けられており、スイッチ65CのONOFFにより、電圧の印加の有無を切り替えることができる。
第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに電圧を印加した場合は、両端以外の各抵抗発熱体59が通電することで、第1の発熱部60Aのみが発熱する。一方、第2の電極部61Bおよび第3の電極部61Cに電圧を印加した場合は、両端の各抵抗発熱体59が通電することで、第2の発熱部60Bのみが発熱する。また、全ての電極部61A〜61Cに電圧を印加すれば、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bの両方の(全ての)抵抗発熱体59を発熱させることができる。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aのみを発熱させ、A4サイズ(通紙幅:210mm)を超える比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、第1の発熱部60Aに加え第2の発熱部60Bも発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることができる。
ところで、画像形成装置や定着装置のさらなる小型化を図るにあたっては、定着ベルトの内側に配置される部材の一つであるヒータの小型化が重要である。すなわち、ヒータをその短手方向(図10中の矢印Y方向:ヒータ22の発熱部60A,60Bが設けられている面に沿って長手方向と交差する方向)に小さくすることで、定着ベルトを小径化することができ、ひいては定着装置および画像形成装置の小型化を実現できるようになる。具体的に、ヒータを短手方向に小さくする方法として、例えば次の3つの方法が挙げられる。
1つは、発熱部(抵抗発熱体)を短手方向に小さくする方法である。しかしながら、発熱部を短手方向に小さくすると、定着ベルトが加熱される加熱領域の幅が小さくなるため、定着ベルトに与える熱量を同様に確保しようとした場合に、昇温ピーク値が高くなるといった問題が生じる。昇温ピーク値が高くなると、ヒータの裏面に設けられているサーモスタットやヒューズなどの過昇温検知装置の温度が耐熱温度を超えたり、過昇温検知装置が誤作動したりする虞がある。また、昇温ピーク値が高くなると、ヒータから定着ベルトへの伝熱効率も低下するため、エネルギー効率の観点からも好ましくない。このように、発熱部を短手方向に小さくする方法は採用し難い事情がある。
2つ目の方法として、発熱部や電極部、給電線が設けられていない部分を短手方向に小さくする方法がある。しかしながら、この方法では、発熱部と給電線との間や電極部と給電線との間の間隔が小さくなるため、絶縁性の確保ができなくなる虞がある。現状のヒータの構造から鑑みれば、発熱部と給電線との間や電極部と給電線との間の間隔をさらに小さくすることは厳しい状況にある。
残る3つ目の方法としては、給電線を短手方向に小さくする方法である。この方法は、上記2つの方法に比べて実現の余地がある。ただし、給電線を短手方向に小さくすると、給電線の抵抗値が大きくなるため、ヒータの導電経路上で意図しない分流が発生する虞がある。特に、画像形成装置の高速化に対応すべく発熱部の発熱量を増大させるために、発熱部の抵抗値を小さくすると、給電線の抵抗値と発熱部の抵抗値が相対的に近づくため、意図しない分流が発生しやすくなる。このような意図しない分流を回避する方法として、給電線を短手方向に小さくした分、反対に厚さ方向(長手方向および短手方向に交差する方向)に大きくすることで、断面積を確保し、給電線の抵抗値が大きくなるのを抑制することも考えられる。しかしながら、その場合、給電線をスクリーン印刷することが困難になり、給電線の形成方法の変更を強いられることになる。このため、給電線を厚くする解決策は採用し難い。従って、ヒータの短手方向の小型化を実現するには、抵抗値が上昇するのを見越したうえで給電線を短手方向に小さくし、これに伴って発生し得る意図しない分流に対しては別途対策を講じる必要がある。
以下、上述のヒータ22と同じレイアウトのヒータを例に、意図しない分流と、これによる弊害について説明する。
図11に示すヒータ22において、第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59のみを発熱させるために第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとに電圧を印加すると、通常、電流は、第1の給電線62Aに流れ、両端以外の各抵抗発熱体59を通過して、第2の給電線62Bに流れる。
しかしながら、上述の小型化に伴う給電線の抵抗値の増大や、発熱量向上に伴う発熱部の抵抗値の低下によって、給電線と発熱部のそれぞれの抵抗値の差が小さくなると、図12に示すように、意図しない経路の分流が発生する。すなわち、図12における左から2番目の抵抗発熱体59を通過した電流の一部が、その先の第2の給電線62Aの分岐部Xにて第2の電極部61B側とは反対側に流れる。そして、分流した電流は、図12における左端の抵抗発熱体59を通過し、さらに、第3の給電線62C、第3の電極部61C、第4の給電線62D、右端の抵抗発熱体59を順に通過した後、第2の給電線62Bに合流する。
このように、図12に示すヒータ22において、第2の給電線62Bのうち分岐部Xから図の左側に伸びる部分と、第2の発熱部60Bを構成する両端の各抵抗発熱体59と、第3の電極部61Cと、第3の給電線62Cおよび第4の給電線62Dを含む部分は、意図しない経路で電流を流す分岐導電経路E3を構成する。
また、このような意図しない分流は、ヒータ22の導電経路が、第1の発熱部60Aと第1の電極部61Aとを接続する第1の導電部E1と、第1の発熱部60Aからヒータ22の長手方向のうち他方側(図12の右側)に伸びて第2の電極部61Bに接続される第2の導電部E2と、第2の導電部E2から長手方向他方側とは反対の長手方向一方側(図12の左側)に分岐して第1の導電部E1を介さずに第2の導電部E2又は第2の電極部61Bに接続される分岐導電経路E3と、を少なくとも有する構成であれば、第1の発熱部60Aに通電した際に生じ得る。本実施形態では、分岐導電経路E3上に、第2の発熱部60Bと第3の電極部61Cとが設けられているが、第2の発熱部60Bおよび第3の電極部61Cが設けられていない導電経路や、これら以外の導電部材が設けられた導電経路であっても、意図しない分流は生じる可能性がある。
そして、意図しない分流が生じた場合、これまで想定されていなかった経路で電流が流れるため、給電線の発熱によりヒータ22の温度分布にばらつきが発生する。例えば、図13に示すヒータ22において、第1の電極部61Aから第1の発熱部60Aの各抵抗発熱体59へ電流が20%ずつ均等に流れ、このうち図の左から2番目の抵抗発熱体59を通過する電流が、その先の分岐部Xにおいて5%分流した場合、抵抗発熱体59ごとに区画された各ブロック内で発生する給電線の発熱量は、同図中の表に示すようになる。
ここでは、各給電線のヒータ22の短手方向に伸びる部分は短く、その部分における発熱量はわずかであることからその発熱量は無視し、各給電線のヒータ22の長手方向に伸びる部分で発生する発熱量のみを算出している。具体的には、第1の給電線62Aと、第2の給電線62Bと、第4の給電線62Dの、それぞれのヒータ22の長手方向に伸びる部分で発生する発熱量を算出している。また、発熱量(W)は下記式(1)で表されることから、図13の表に示す発熱量は、便宜的に各給電線に流れる電流(I)の二乗として算出している。よって、図13の表に示す発熱量の数値は、あくまで簡易的に算出された値であり、実際の発熱量とは異なるものである。
図13に基づき、発熱量の算出方法について具体的に説明すると、第1ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が100%、第4の給電線62Dに流れる電流が5%であるので、それぞれの二乗の合計値である10025(10000+25)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が80%、第2の給電線62Bに流れる電流が5%、第4の給電線62Dに流れる電流が5%であるので、これらの二乗の合計値である6450(6400+25+25)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
そして、図13の表に示す各ブロックの合計発熱量をグラフ化したものが図14である。図14に示すように、各ブロックの合計発熱量は、上記の意図しない分流の影響により、発熱領域中央の第4ブロックを基準に左右非対称となる。
また本実施形態のヒータ22では、全ての発熱部に通電した場合、つまり、上記のような分流が生じない場合にも、導電部に流れる電流の大きさに長手方向の左右で差が生じ、ヒータ22の長手方向の発熱量が左右非対称になってしまう。このような左右非対称が生じる原因としては、例えば、上記のようにヒータ22を小型化しようとした場合に、電極部や導電部の配置も制約を受けるため、ヒータ22の長手方向の発熱量を左右対称にすることが難しくなることが挙げられる。特に、画像形成装置の高速化のために抵抗発熱体へ流れる電流を大きくした場合には、導電部で生じる発熱量も大きくなるため、その影響が無視できなくなり、発熱量の左右非対称の問題が顕著になる。以下、全ての発熱部に通電した場合の発熱量の左右非対称について説明する。
図15に示すように、全ての発熱部に通電した場合、左右両端の抵抗発熱体59、および、これに接続された給電線62C,62Dにも20%の電流が流れる点が前述の場合と異なる。給電線62Aに流れる電流の値は先ほどと同様である。以上の場合、第1ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が100%、第4の給電線62Dに流れる電流が20%であるので、それぞれの二乗の合計値である10400(10000+400)が第1ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、第2ブロックにおいては、第1の給電線62Aに流れる電流が80%、第2の給電線62Bに流れる電流が20%、第4の給電線62Dに流れる電流が20%であるので、これらの二乗の合計値である7200(6400+400+400)が第2ブロックにおける給電線の合計発熱量となる。また、他のブロックにおいても、同様にして発熱量を算出している。
そして、図16に示すように、各ブロックの合計発熱量は、発熱領域中央の第4ブロックを基準に左右非対称となる。特に、全ての抵抗発熱体59に接続された第2の給電線62Bが、その下流側、つまり第7ブロックで電流値が120%と大きくなり、左右の発熱量に差が生じている。
このような左右非対称になる給電線の発熱量のばらつきは、ヒータ22の長手方向に渡る温度のばらつきの原因となる。ヒータ22の温度が長手方向に渡ってばらつくと、用紙に定着される画像が温度の高い部分で光沢度が高く、温度の低い部分では反対に光沢度が低くなるので、全体的に光沢むらが発生し、画質の低下につながる虞がある。なお、本実施形態では、A4サイズとA3サイズの用紙を均等に加熱できるように、各ブロックの長さは同じに設けている。
そこで本実施形態では、上記の全ての発熱部に通電した場合、つまり、ヒータ22の長手方向他方側の発熱量が一方側よりも大きくなった場合について、ヒータ22の長手方向の一方側と他方側との温度偏差に起因する定着装置の温度偏差を抑制するために下記のような対策を講じている。
図17は、ヒータ22と定着装置9内の他の部材との長手方向の位置関係を示した図であり、図の上側にヒータ22を、真ん中に定着装置9内の各部材を示し、その長手方向の位置関係を示している。また、図の下側に各長手方向の位置における定着ベルト20の温度Tの分布を示している。図17の加熱領域Bは、前述した第1ブロック〜第7ブロックの範囲を示したものであり、全ての抵抗発熱体59による長手方向の発熱領域を示すものである。また、図17で通紙される用紙Pは、ヒータ22が対応する最大幅の用紙で、例えばA4サイズ横送りである。
また、図17に示すように、ヒータ22の加熱領域Bの長手方向中央位置である中央線B0に対する長手方向の両方向のうち、ヒータ22の発熱量が大きい側を第1の方向S1の側、第1の方向と反対の方向で、第1の方向S1の側よりもヒータ22の発熱量の小さい側を第2の方向S2の側とする。本実施形態で全ての抵抗発熱体59に通電した場合には、長手方向他方側の発熱量が大きくなるため(図15参照)、本実施形態では、第1の方向S1は図の右側で長手方向の他方側であり、第2の方向S2は図の左側で長手方向の一方側である。
図17に示すように、定着ベルト20は、そのベルト長手方向他方側(図の右側、つまり第1の方向S1の側)が、ヒータ22の長手方向の加熱領域B(通紙領域)よりもさらに外側へ延在して設けられている。つまり、定着ベルト20は、中央線B0よりもベルト長手方向他方側(第1の方向S1の側)の長さC2の方が、中央線B0よりもベルト長手方向一方側(第2の方向S2の側)の長さC1より長く設けられている。なお、本実施形態では、加圧ローラ21の長手方向(軸線方向)の中央位置は中央線B0に一致するが、必ずしもこれに限るものではない。
定着ベルト20が加熱領域Bから受け入れた熱は、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の、加熱領域Bよりも外側に延在した部分に、熱が移動する(逃げる)。つまり、加熱領域Bの中央位置に対して、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量が長手方向一方側(図の左側、つまり第2の方向S2の側)の熱容量よりも大きい。従って、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の、加熱領域Bよりも外側に延在した部分は、加熱領域Bの熱を逃がす伝熱部となる。なお、ここでいう長手方向他方側(第1の方向S1の側)に設けた「伝熱部」とは、長手方向他方側(第1の方向S1の側)にだけ設けられた部材や、長手方向一方側(第2の方向S2の側)よりも長手方向他方側(第1の方向S1の側)に延長された部材の延長部分のことである。
定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の、加熱領域Bよりも外側に延在した部分に対向して、除電手段としての除電ブラシ41が設けられる。除電ブラシ41は、定着ベルト20の表面に当接し、定着ベルト20の表面の電荷を取り除くことができる。このように、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に除電ブラシ41を当接させることによっても、除電ブラシ41の熱容量の分だけ定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。つまり、伝熱部の一部としての除電ブラシ41を定着ベルト20にさらに当接させることで、伝熱部へ加熱領域Bの熱をより逃がすことができる。
また、伝熱部の一部を除電手段(除電ブラシ41)とすることにより、トナー像の一部が定着ベルト20の表面に付着することを防止し、オフセット現象による用紙表面の画像欠陥を防止できる。
このように、本実施形態の定着装置9では、中央線B0よりも長手方向他方側(第1の方向S1の側)に加熱領域Bから受けた熱を逃がす伝熱部を設けている。つまり、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の長さを長く設けることや、長手方向他方側(第1の方向S1の側)に除電ブラシ41を設けることにより、長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量を長手方向一方側(第2の方向S2の側)よりも大きくしている。
前述のように、ヒータ22の全ての発熱部に対して通電すると、長手方向他方側(第1の方向S1の側)の発熱量が大きくなり、図17の下側の2点鎖線部に示すように、定着ベルト20の温度Tも、長手方向他方側(第1の方向S1の側)が一方側(第2の方向S2の側)よりも大きくなってしまう(なお、「発熱量」とは、ヒータ22単体で測定した場合の発熱量を意味する)。しかし本実施形態では、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に熱を逃がす伝熱部を設けていることで、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の温度が相対的に小さくなる。これにより、ヒータ22によって加熱される定着ベルト20の長手方向の一方側(第1の方向S1の側)と他方側(第2の方向S2の側)との温度偏差を抑制することができる(図17の下側のグラフの実線部参照)。したがって、加熱装置としての定着装置の温度偏差(長手方向の一方側:第2の方向S2の側と他方側:第1の方向S1の側との温度偏差)を抑制することができる。さらに、定着装置としては、ヒータ22の長手方向の一方側と他方側との温度偏差に起因する、画像光沢むらや定着むらを抑制することができる。
本実施形態のように、定着ベルト20のベルト長手方向他方側(第1の方向S1の側)に飛び出した部分を設けることで、定着ベルト20の加熱領域Bの範囲外で、用紙の通紙範囲外に除電ブラシ41を当接させることができる。除電ブラシ41を、定着ベルト20の加熱領域Bの範囲外で、用紙の通紙範囲外に設けることで、除電ブラシ41の用紙表面の画像への接触による定着不良やスジ状汚れなどの異常画像の形成を防止できる。
また、図18に示すように、除電ブラシ41に代えて、加圧ローラ21の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に除電手段としての除電ゴム42を設けることもできる。除電ゴム42は、環状の部材で、加圧ローラ21のローラ部分の軸方向他端側に取り付けられ、加圧ローラ21の回転に伴って連れ回りする。除電ゴム42は、定着ベルト20の長手方向外側へ突出した部分に当接して定着ベルト20表面の電荷を取り除くことができる。さらに、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に伝熱部の一部である除電ゴム42を設けることにより、長手方向他方側(第1の方向S1の側)から熱を逃がす。つまり、伝熱部としての除電ゴム42を定着ベルト20に当接させることで、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。
これにより、定着ベルト20の長手方向の一方側(第2の方向S2の側)と他方側(第1の方向S1の側)との温度偏差を抑制することができる。また、定着ベルト20を長手方向他方側へ飛び出させることで、除電ゴム42を通紙領域外に当接させることができ、除電ゴム42の用紙表面の画像への接触による定着不良や異常画像の形成を防止できる。
また図19に示すように、加圧ローラ21を長手方向の他方側(第1の方向S1の側)へ延長することで、定着装置9の長手方向他方側(第1の方向S1の側)から熱を逃がすことができる。つまり、伝熱部の一部である加圧ローラ21の延長部分(加熱領域Bよりも外側に飛び出した部分)を定着ベルト20に当接させることで、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。これにより、定着ベルト20の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。なお本実施形態では、加圧ローラ21と共に、定着ベルト20を長手方向他方側(第1の方向S1の側)へ延長しているが、必ずしも定着ベルト20が長手他方側(第1の方向S1の側)へ延長している必要はない。
特に本実施形態では、加圧ローラ21の延長部分、つまり、加熱領域Bよりも外側に飛び出した部分に除電ブラシ41を当接させている。これにより、加圧ローラ21表面の電荷を取り除くことができる。また、除電ブラシ41を、加圧ローラ21の加熱領域Bの範囲外で、用紙の通紙範囲外に設けることで、除電ブラシ41が加圧ローラ21に接触して傷をつけることにより発生する、定着不良や異常画像を防止できる。さらに、加圧ローラ21の延長部分に除電ブラシ41を当接させることで、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。
さらに本実施形態では、加圧ローラ21の軸部を長手方向他方側(第1の方向S1の側)に延長し、加圧ローラ21を回転させるための駆動力を伝達する駆動伝達部材として駆動伝達ギヤ31を設けている。このように、加圧ローラ21の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に、駆動伝達ギヤ31を設けることによっても、定着装置9の長手方向他方側(第1の方向S1の側)から熱を逃がすことができる。つまり、駆動伝達ギヤ31を伝熱部の一部として、駆動伝達ギヤ31、および駆動伝達ギヤ31が当接している加圧ローラ21の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の軸部、および長手他方側(第1の方向S1の側)に延長している加圧ローラ21の延長部分、および延長部分と当接している定着ベルト20の部分によって、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。これにより、定着装置9の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。
また図20に示すように、駆動伝達ギヤ31を加圧ローラ21の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に設けると共に、定着ベルト20側に除電ブラシ41を設けてもよいし、図21に示すように、加圧ローラ21の側に除電ゴム42を設けた構成と組み合わせることもできる。
このように、複数の構成を組み合わせて、定着装置9の長手方向他方側(第1の方向S1の側)から、加熱領域Bから受け取った熱を逃がすことができ、その組み合わせは上記に限らない。例えば図19や図20で、除電手段は図示される位置に限定されない。また、本実施形態では加圧ローラ21の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に駆動伝達部材を設けたが、モータなどの駆動手段を設けた構成であってもよい。
また、長手方向他方側(第1の方向S1の側)に温度検知手段を設けることで、定着装置9の長手方向他方側(第1の方向S1の側)から熱を逃がすことができる。例えば図22および図23に示すように、加圧ローラ21の外周面に対向する位置で、長手方向において、B5用紙の横通紙(図22の一点鎖線部参照)時の通紙範囲D1の外側でA4用紙の横通紙時の通紙範囲D2の内側に、温度検知手段としての温度サーミスタ43を設ける。温度サーミスタ43は、接触式の温度検知手段である。また本実施形態では、定着装置9に通紙される最大の用紙幅である通紙範囲D1と加熱領域Bは略一致している。
A4用紙縦送りよりも幅が大きい用紙の場合には、発熱部60A、60Bを発熱させる。しかし、定着装置9に通紙される最大幅の用紙よりも小さい用紙、例えばB5用紙横送りの場合、加熱領域Bの長手方向端部側に用紙が通過しない非通紙領域が存在し、定着ベルト20のその他の部分と比較して温度が上昇する。定着ベルト20が過昇温すると、その耐熱温度を超え、部品破損するおそれがある。そこで、温度サーミスタ43を設けることで、予め設定された温度以上の温度を検知すると、印刷速度を遅くする、または印刷動作自体を停止させることで、定着ベルト20の非通紙部分の過昇温を防止することができる。
このように、温度検知手段としての温度サーミスタ43を加圧ローラ21の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に設けることにより、定着装置9の長手方向他方側(第1の方向S1の側)から熱を逃がすようにしている。つまり、伝熱部の一部である温度検知手段(温度サーミスタ43)を設けることで、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。これにより、定着装置9の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。
また、温度検知手段を定着ベルト20の側に設けることもできる。例えば図24および図25に示すように、定着ベルト20の内周面に対向する位置で、長手方向のB5用紙の横通紙時の通紙範囲D1の外側でA4用紙の横通紙時の通紙範囲D2の内側に、温度検知手段としての温度サーミスタ43を設ける。これにより、定着ベルト20の非通紙部分の過昇温を防止することができる。また、上記で説明したように、温度検知手段としての温度サーミスタ43を定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に設けることにより、定着装置9の長手方向他方側(第1の方向S1の側)から熱を逃がすようにしている。また、温度サーミスタ43を定着ベルト20の内周面側に設けることで、通紙面である外周面側を傷つけることがなく、定着ベルト20の通紙面側の傷による定着不良やスジ状汚れなどの異常画像の形成を防止できる。これらの温度検知手段を設ける他、除電手段を設けるなど、他の構成と組み合わせてもよいことはもちろんである。
上記の実施形態では、定着ベルト20や加圧ローラ21の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に伝熱部を設けたり、これらの部材に当接する除電手段等を伝熱部の一部とすることで、定着装置9の長手方向他方側(第1の方向S1の側)から加熱領域Bの熱を逃がすようにしていた。次に示す実施形態では、ヒータを保持する保持部材としてのヒータホルダに伝熱部を設ける例である。
図26に示す例は、ヒータホルダ23の長手方向他方側(第1の方向S1の側)において、ヒータ22の基材50よりも外側に延在した部分を設けている。つまり、加熱領域Bの中央位置を中央線B0とすると、ヒータホルダ23は中央線B0よりも、他方側(第1の方向S1の側)の長さが一方側(第2の方向S2の側)よりも長い。伝熱部の一部であるヒータホルダ23の延在部分を設けることで、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。これにより、定着装置9の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。
以上のように本発明では、ヒータ22の長手方向の発熱量が大きい側(第1の方向S1の側)において、加熱領域Bの熱を逃がす伝熱部を設けることで、定着装置9の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。これにより、ヒータ22の長手方向の一方側と他方側との温度偏差に起因する、画像光沢むらや定着むらを抑制することができる。また、画像形成装置の高速化や小型化にも対応することができる。
また本発明は、上記のようにヒータの小型化に伴う定着ベルト20や定着装置9の温度ばらつきの問題を改善することが可能である。このため、本発明は、特に短手方向に小型化したヒータに好適である。具体的には、図27に示すヒータ22(基材50)の短手方向寸法Qに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Rの比(R/Q)が25%以上となるヒータ22に本発明を適用することが好ましい。さらに、本発明は、前記短手方向の寸法比(R/Q)が40%以上となるヒータ22に適用されることがより好ましい。このような小型のヒータ22に本発明を適用することでより大きな効果を期待できる。
次に、上記の短手方向寸法の比(R/Q)を変化させた場合の、ヒータ22の長手方向中央側と端部側との間に生じる温度偏差の実験結果について説明する。実験では、前述した構成のヒータ22について、上記の短手方向寸法比(R/Q)が、20%以上25%未満、25%以上40%未満、40%以上70%未満、70%以上80%未満のものをそれぞれ用意し、ヒータ単体の条件下でヒータの全ての抵抗発熱体に所定の電圧で通電し、ヒータの長手方向中央および端部のそれぞれの表面温度をフリアシステムズ社製の赤外線サーモグラフィ FLIR T620を用いて測定した。以上の実験結果を表1に示す。表1の結果は、中央側と端部側の温度差が2℃未満のものを○、2℃以上5℃未満のものを△、5℃以上のものを×とした。なお、短手方向寸法の比(R/Q)を80%以上とすると、ヒータの短手方向寸法を極端に大きくする等しない限り、給電線を配置するスペースがなくなるため、実験の対象にはしていない。
表1に示すように、短手方向寸法の比(R/Q)が大きくなるほど、ヒータの中央と端部の温度差も大きくなった。具体的には、20%以上25%未満では〇であるのに対して、25%以上40%未満では△に変化し、40%以上70%未満、および、70%以上80%未満では×に変化した。この結果からわかるように、ヒータの長手方向の温度むらは、短手方向寸法の比(R/Q)が25%以上で顕著になり、40%以上で特に顕著になる。従って、このような寸法比のヒータに対して、本実施形態の上記構成を適用してその温度偏差を抑制することが好適である。
また、前述のヒータ22の温度のばらつきを抑制するために、PTC特性を有する抵抗発熱体を用いてもよい。PTC特性とは、温度が高くなると抵抗値が高くなる(一定電圧をかけた場合に、ヒータ出力が下がる)特性である。PTC特性を有する発熱部とすることで、低温では高出力によって高速で立ち上がり、高温では低出力により過昇温を抑制することができる。例えば、PTC特性のTCR係数を300〜4000ppm/度程度にすれば、ヒータに必要な抵抗値を確保しながら、低コスト化を図れる。より好ましくは、TCR係数を500〜2000ppm/度とするのがよい。
抵抗温度係数(TCR)は、下記式(2)を用いて算出することができる。式(2)中のT0は基準温度、T1は任意温度、R0は基準温度T0における抵抗値、R1は任意温度T1における抵抗値である。例えば、図7に示す上述のヒータ22において、第1の電極部61Aと第2の電極部61Bとの間の抵抗値が、25℃(基準温度T0)で10Ω(抵抗値R0)であり、125℃(任意温度T1)で12Ω(抵抗値R1)であった場合は、式(2)から抵抗温度係数は2000ppm/℃となる。
また、本発明を適用するヒータは、図7などに示すようなブロック状(四角形状)の抵抗発熱体59を有するヒータ22に限らず、例えば、図28(a)あるいは図28(b)に示すような、直線を折り返したような形状の抵抗発熱体59を有するヒータ22や、その他の形状の抵抗発熱体を有するヒータにも適用可能である。なお、図中において、着色した箇所が抵抗発熱体59を示している。図28(a)では、ヒータ22の長手方向に沿って形成されている給電線62A、62Dから、長手方向と交差する方向に給電線が一部延びている例である。一方、図28(b)は、ヒータ22の長手方向に沿って形成されている給電線62A、62Dから長手方向と交差する方向に折れ曲がった領域も含めて抵抗発熱体59として形成されている例である。
また、本発明は、前述の定着装置のほか、図29〜図31に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図29〜図31に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
まず、図29に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されており、この押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
図29に示す定着装置9においても、前述の実施形態で説明したように、定着ベルト20の長手方向他方側(ヒータ22の発熱量が大きい側、つまり第1の方向S1の側)に、ヒータ22の加熱領域の熱を逃がす伝熱部を設けることで、定着装置9の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。伝熱部としては、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に設けた、定着ベルト20の延在部分、除電ブラシや除電ゴムのような除電手段、サーミスタのような温度検知手段が挙げられる。また伝熱部として、加圧ローラ21の延在部分、長手方向他方側に設けた駆動ギヤのような駆動伝達部材やサーミスタのような温度検知手段、そして、ヒータホルダ23の延在部分でも良い。
次に、図30に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図29に示す定着装置9と同じ構成である。
最後に、図31に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とを分けて構成している。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側に、ニップ形成部材91とステー93とを配置し、これらニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト92と加圧ローラ21との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。その他は、図2に示す定着装置9と同じ構成である。
図31に示す定着装置9においても、前述の実施形態で説明したように、定着ベルト20の長手方向他方側(ヒータ22の発熱量が大きい側、つまり第1の方向S1の側)に、ヒータ22の加熱領域の熱を逃がす伝熱部を設けることで、定着装置9の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。伝熱部としては、定着ベルト20の長手方向他方側(第1の方向S1の側)に設けた、定着ベルト20の延在部分、除電ブラシや除電ゴムのような除電手段、サーミスタのような温度検知手段が挙げられる。また伝熱部として、加圧ローラ21の延在部分、長手方向他方側に設けた駆動ギヤのような駆動伝達部材やサーミスタのような温度検知手段、そして、ヒータホルダ23の延在部分でも良い。
また、ヒータ22の基材50上に配置される電極部等のレイアウトについても、上記の実施形態に限らず、長手方向の一方側と他方側とで温度偏差が生じるヒータに対して本発明を適用することができる。
例えば、本発明を適用するその他のヒータの例として、図32に示すヒータ22は、前述の実施形態と異なり、全ての電極部が長手方向の一方側に設けられる。つまり、図10等のヒータ22と比較すると、第2の電極部61Bが長手方向一方側に設けられる点が異なる。また、図32に示すように、第2の電極部61Bが長手方向一方側に設けられるため、第2の電極部61Bに直に接続される給電線が長手方向他方側まで延在して折り返し、各抵抗発熱体59に接続されている。本実施形態では、これらの第2の電極部61Bと各抵抗発熱体59を接続する給電線のうち、各抵抗発熱体59に接続される部分から長手方向他方側の折り返し部分までを第2の給電線62Bと称し、折り返し部分に連続した長手方向一方側へ延在する部分から第2の電極部61Bまでの部分を第5の給電線(導電体)62Eと称する。
このようなヒータ22においても、第1の発熱部60Aのみに通電した場合、そして、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合のそれぞれについて、前述したような長手方向の温度偏差が生じる。
まず、第1の発熱部60Aのみに通電した場合には、図33および図34に示すように、意図しない分流が第3の給電線62Cの側へ生じる。従って、各ブロックの合計発熱量は、発熱領域中央の第4ブロックを基準に左右非対称となり、長手方向一方側の発熱量が他方側に比べて大きくなる。また、第1の発熱部60Aおよび第2の発熱部60Bに通電した場合にも、図35および図36に示すように、第4ブロックを基準に合計発熱量が左右非対称となり、第1の方向の側である長手方向他方側の発熱量が一方側に比べて大きくなる。
そして前述の実施形態と同様、すべての発熱部に通電した場合に、ヒータ22の長手方向において、ヒータ22の発熱量が大きい側である第1の方向の側、つまり、長手方向他方側に伝熱部を設けることで、定着装置9の長手方向一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。これにより、長手方向一方側と他方側とでの定着性の差を抑制、および、長手方向での光沢偏差を抑制することができる。従って、用紙の画像むらや光沢むらを抑制することができる。
また、前述したヒータと異なる構成のヒータとして、電極部を2つ配置した構成のヒータにも本発明を適用することができる。例えば、図37に示すように、ヒータ22は、複数の抵抗発熱体59を有する発熱部60と、複数の電極部61と、これらを電気的に接続する複数の給電線62と、で構成されている。本実施形態では、複数の電極部61として、第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bが設けられ、これらの電極部61A,61Bは、基材50の長手方向の互いに反対の端部側に配置されている。
前述した実施形態と異なる点として、各抵抗発熱体59は、ヒータ22の長手方向Uに往復するように、短手方向の両側の曲げ部を介して複数回折り返した線部からなる。ヒータ22の短手方向Yにおける各抵抗発熱体59の一端部(接続位置G1の部分)は、第1の給電線62Aを介して第1の電極部61Aに接続されている。一方、ヒータ22の短手方向Yにおける各抵抗発熱体59の他端部(接続位置G2の部分)は、第2の給電線62Bを介して第2の電極部61Bに接続されている。このように、各抵抗発熱体59は、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bによって第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに対して互いに並列に接続されている。
以上の構成のヒータ22において、給電線の接続位置の違いによる給電線の発熱量の違いについて説明する。上記の図37は、各給電線62A,62Bの接続位置G1,G2が、抵抗発熱体59の長手方向中央Mに対して互いに反対側に配置される場合、図38は共に他方側に配置される場合、図39は共に一方側に配置される場合である。以上のそれぞれの場合について、第1の電極部61Aおよび第2の電極部61Bに通電した場合の各ブロックの給電線による発熱量を各図に示す。
図37に示すように、接続位置が互いに反対側に配置される場合には、各ブロックの合計発熱量が発熱領域中央の第3ブロックを基準に左右対称となっている。これに対して、図38あるいは図39に示すように、各抵抗発熱体59に対する各給電線62A,62Bの接続位置G1,G2が互いに同じ側に配置されている場合は、各ブロックの合計発熱量が、発熱領域中央の第3ブロックを基準に左右非対称となる。具体的には、図38では、長手方向一方側(第1の方向S1の側)の発熱量が他方側(第2の方向S2の側)に比べて大きくなり、図39では、長手方向他方側(第1の方向S1の側)の発熱量が一方側(第2の方向S2の側)に比べて大きくなる。
このように、接続位置が同じ側か異なる側かによって、給電線の合計発熱量が、一方では左右対称になり他方では左右非対称になる。そして、図38や図39のように、給電線の発熱量が左右非対称になる場合は、その影響により、ヒータの温度分布が非対称となり、それに起因する不具合(たとえば、光沢むらや定着むら)が発生するおそれがある。上記接続位置は、給電線の折り返し回数によって変化するため、ヒータの設計の自由度を高めるために、給電線の発熱量が左右非対称になる場合について、上記不具合に対策を施すことが重要である。
上記のヒータ22に前述した各伝熱部を設けた場合について説明する。以下の説明では、上記のヒータ22のうち、接続位置が長手方向他方側に設けられたヒータ22(図38のヒータ22)について説明する。この場合、前述のように第1の方向S1は図の左側で長手方向一方側であり、第2の方向S2は図の右側で長手方向他方側である。
図40に示すように、定着ベルト20は、中央線B0よりもベルト長手方向一方側(第1の方向S1の側)の長さC1の方が、中央線B0よりもベルト長手方向他方側(第2の方向S2の側)の長さC2より長く設けられている。定着ベルト20の加熱領域Bよりも外側に延在した部分は、加熱領域Bの熱を逃がす伝熱部となる。また、定着ベルト20のこの部分に対向して、除電手段としての除電ブラシ41が設けられる。伝熱部の一部としての除電ブラシ41をさらに設け、定着ベルト20に当接させることで、伝熱部へ加熱領域Bの熱をより逃がすことができる。
図41に示すように、本実施形態では、上記の除電ブラシ41に代えて、加圧ローラ21の長手方向一方側(第1の方向S1の側)に除電手段としての除電ゴム42を設ける。伝熱部としての除電ゴム42を定着ベルト20に当接させることで、定着ベルト20の長手方向一方側の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。
図42に示すように、本実施形態では、加圧ローラ21の軸部を長手方向一方側(第1の方向S1の側)に延長し、長手方向一方側(第1の方向S1の側)に、駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31を設けている。駆動伝達ギヤ31を伝熱部の一部として、駆動伝達ギヤ31、および駆動伝達ギヤ31が当接している加圧ローラ21の長手方向一方側の軸部、および、長手一方側(第1の方向S1の側)に延長している加圧ローラ21の延長部分によって、定着ベルト20の長手方向一方側(第1の方向S1の側)の熱容量をより大きくでき、加熱領域Bの熱をより多く逃がすことができる。
また図43に示すように、駆動伝達ギヤ31を加圧ローラ21の長手方向一方側(第1の方向S1の側)に設けると共に、定着ベルト20側に除電ブラシ41を設けてもよいし、図44に示すように、加圧ローラ21の側に除電ゴム42を設けた構成と組み合わせることもできる。
以上の各実施形態のように、ヒータ22の加熱領域の長手方向中央線B0よりも長手方向一方側(第1の方向S1の側)に伝熱部を設けることで、長手方向一方側(第1の方向S1の側)の熱容量を他方側(第2の方向S2の側)よりも大きくでき、加熱領域Bの熱を逃がすことができる。これにより、定着装置9の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。
また図45に示すように、全ての電極部61を長手方向の同じ側に設けてもよい。つまり、本実施形態のヒータ22は、図39等のヒータ22と比較すると、第2の電極部61Bが長手方向一方側に設けられる点が異なる。また、図45に示すように、第2の給電線62Bが長手方向一方側の第2の電極部61Bに接続される位置まで延在している。
本実施形態においても、発熱領域中央の第3ブロックを基準に、発熱量が左右非対称になる。具体的には、ヒータ22の長手方向の第1の方向S1の側である一方側の発熱量が、第2の方向S2である他方側に比べて大きくなる。
また図46に示すように、ヒータ22の長手方向Uに往復するように短手方向の両側の曲げ部を介して複数回折り返した線部からなる抵抗発熱体59を、図7等の電極部が3つ設けられ、2つの発熱部を有するヒータ22に適用してもよい。
以上の実施形態では、第1の給電線62Aおよび第2の給電線62Bが、それぞれヒータ22の短手方向Yに伸びる部分を有しており(図45参照)、その短手方向Yに伸びる部分が各抵抗発熱体59に接続されているが、各給電線62A,62Bと各抵抗発熱体59とを接続するヒータ22の短手方向Yに伸びる部分は、各給電線62A,62Bの一部である場合に限らず、図47に示す例のように、各抵抗発熱体59の一部であってもよい。
また、各抵抗発熱体59の折り返し数(曲げ部の数)は、複数である場合に限らず、図48および図49に示す例のように、1つであってもよい。また、各給電線62A,62Bと各抵抗発熱体59との接続位置G1,G2は、図48に示すように、各抵抗発熱体59の端部における角であってもよいし、図49に示すように、各抵抗発熱体59の端部における短手方向Yに伸びる縁全体であってもよい。
以上の各ヒータ22においても、その発熱量が大きい側、より詳細には、加熱領域Bの長手方向における中央位置B0(図17参照)に対して一方側と他方側のうち、発熱量の大きい側である第1の方向S1の側、に伝熱部を設けることで、定着装置9の長手方向一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。これにより、長手方向一方側と他方側とでの定着性の差を抑制、および、長手方向での光沢偏差を抑制することができる。従って、用紙の画像むらや光沢むらを抑制することができる。
また上記の電極部が2つのヒータ22においても、図50に示すように、ヒータ22の短手方向寸法Qに対する抵抗発熱体59の短手方向寸法Rの比(R/Q)が25%以上となるヒータ22に対して本発明を適用した場合、大きな効果を期待できる。なお、抵抗発熱体59の短手方向寸法Rは、折り返されるように形成された抵抗発熱体59の1つの線状の部分の太さではなく、抵抗発熱体59全体の短手方向寸法を意味する。さらに、前記短手方向の寸法比(R/Q)が40%以上となるヒータ22であれば、本発明を適用することによる効果はより大きくなる。
図50に示す例では、ヒータ22の基材50が長方形であるため、ヒータ22の短手方向寸法Qはどの長手方向位置でも同じ寸法であるが、図51に示す例のように、基材50の縁に凹凸がある場合は、長手方向位置によって短手方向寸法Qが変化する。このような場合は、全ての抵抗発熱体59が配置されている発熱領域H内で、ヒータ22が短手方向Yに最小となる寸法を、上記ヒータ22の短手方向寸法Qとする。
また、本発明は、ヒータ22の長手方向寸法Laに対するヒータ22の短手方向寸法Qの比(Q/La)が、1.5%より大きく、6%未満となるヒータ22や、ヒータ22の短手方向寸法Qに対する給電線62A,62Bの短手方向寸法Wbの比(Wb/Q)が、2%より大きく、20%未満となるヒータ22に対しても、適用可能である。なお、図51に示す例のように、基材50の長手方向寸法がその部分によって異なる場合は、ヒータ22が長手方向Uに最大となる寸法を、上記ヒータ22の長手方向寸法Laとする。また、給電線62A,62Bの短手方向寸法Wbは、給電線62A,62Bがヒータ22の長手方向Uに伸びる線状部分の太さを意味し、抵抗発熱体59に接続するためにヒータ22の短手方向Yに折れ曲がった部分を含まない。また、図51に示すように、給電線62A,62Bの太さがヒータ22の長手方向位置によって変化する場合は、発熱領域H内での第1の給電線62Aまたは第2の給電線62Bの最小の短手方向寸法を、給電線62A,62Bの短手方向寸法Wbとする。
上述のように、本発明によれば、抵抗発熱体に対する各給電線の接続位置が同じ側のヒータにおいて、ヒータ22の長手方向の一方側と他方側の温度偏差に起因する不具合を抑制することができるので、このような接続位置が同じ側であるヒータを積極的に採用することができるようになる。これにより、以下のような利点が得られるようになる。
一般的に、面状のヒータを備える定着装置においては、ヒータの温度を検知する加熱部材温度検知手段として、図52に示すように、サーミスタなどの温度センサ44が設けられている。この温度センサ44は、例えば、ヒータ22の発熱部60が設けられている面とは反対側の裏面などに接触するように設けられ、ヒータ22または定着ベルト20の温度制御を行うためにヒータ22の温度を検知する。通常、ヒータ22の温度は、その短手方向Yにおける発熱部60の端部側よりも中央側の方が高くなるので、ヒータ22の過昇温を未然に防ぐため、温度センサ44はヒータ22の短手方向Yにおける発熱部60の中央Kに対応する位置(以下、単に「短手方向中央位置」という)に設けられる。
ここで、図52に示す例のように、抵抗発熱体59に対する各給電線62A,62Bの接続位置G1,G2が互いに反対側であるヒータ22においては、抵抗発熱体59の折り返された線状部分の1つが発熱部60の短手方向中央位置Kに配置されるので、上記のように、温度センサ44を発熱部60の短手方向中央位置Kに配置すると、温度センサ44の温度検知部44aが、発熱部60の短手方向中央位置Kにある抵抗発熱体59上に配置される。なお、ここでいう「抵抗発熱体上」とは、ヒータ22の長手方向Uおよび短手方向Yに対して交差する方向である厚さ方向において、抵抗発熱体と互いに重なる位置を意味する。
そして、この場合、図53に示すように、抵抗発熱体59が配置された発熱部60の短手方向中央位置Kでの温度が最も高いピーク値となるので、このピーク値の温度が温度センサ44によって検知される。しかしながら、ピーク値の近傍では、ヒータ22の温度が非常に狭い範囲で大きく変化するため、温度センサ44の配置がヒータ22の短手方向Yに少しでもずれると、検知温度が大きく変化し、適切に温度を検知することができなくなる虞がある。
これに対して、図54に示す例のように、抵抗発熱体59に対する各給電線62A,62Bの接続位置G1,G2が同じ側である場合は、温度検知部44aが、抵抗発熱体59上ではなく、抵抗発熱体59におけるヒータ22の長手方向Uに伸びる部分の間(抵抗発熱体59が設けられていない部分)に対応する位置に配置される。なお、ここでいう「長手方向に伸びる部分の間に対応する位置」とは、抵抗発熱体59におけるヒータ22の長手方向Uに伸びる部分の間の位置に対して、ヒータ22の上記厚さ方向で重なる位置を意味する。
この場合、図55に示すように、温度センサ44によって、ヒータ22の隣り合うピーク値同士の間の温度が検知される。このような隣り合うピーク値同士の間では温度が比較的広い範囲で緩やかに変化するため、温度センサ44の配置がヒータ22の短手方向Yにずれたとしても、検知温度は変化しにくい。従って、この場合は、温度センサ44の配置がずれたときの検知温度のばらつきを低減できる利点がある。また、温度センサ44の配置がずれたとしても検知温度のばらつきが生じにくいことから、温度センサ44の設置を高精度に行わなくてもよいので、温度センサ44の設置作業性が向上する。
なお、図52に示すヒータ22においても、図54に示すヒータ22と同様に、温度検知部44aを、隣り合うピーク値同士の間に配置することも可能である。しかしながら、その場合は、隣り合うピーク値の一方と他方とで温度の高さが異なるので(図53参照)、温度センサ44がどちらのピーク値寄りにずれるかによって、検知温度の変化量も異なってくる。従って、検知温度のばらつきを抑制する観点からすれば、やはり、各給電線の接続位置が互いに反対側である構成よりも、同じ側である構成の方が好ましい。
このように、抵抗発熱体に対する各給電線の接続位置が同じ側である構成においては、接続位置が互いに反対側である構成に比べて、ヒータ22の短手方向Yにおける温度センサ44の配置の点で有利となる。
また、ヒータ22の長手方向Uにおける温度センサ44の配置は、下記の点に注意して行うことが望ましい。
図56に示すように、本実施形態では、ヒータ22の長手方向Uにおける各抵抗発熱体59の両端部が、通紙方向(図56の上下方向)に対して傾斜しており、互いに隣り合う抵抗発熱体59の端部の少なくとも一部が、ヒータ22の長手方向Uに渡って互いに重複(オーバーラップ)している。すなわち、互いに隣り合う抵抗発熱体59の端部の少なくとも一部は、ヒータ22の長手方向Uにおける同じ領域Z内に配置されており、抵抗発熱体59は、隣り合う他の抵抗発熱体59とヒータ22の長手方向Uにおいて同じ領域Z内に配置される重複部59aと、隣り合う他の抵抗発熱体59とヒータ22の長手方向Uにおいて同じ領域Z内に配置されない非重複部59bとを有する。
このような重複部59aがある場合は、隣り合う抵抗発熱体59同士の間での温度低下を抑制できる。しかしながら、重複部59aでは、非重複部59bに比べて、位置ごとの温度のばらつきが大きくなる傾向がある。そのため、図56に示すように、温度センサ44の温度検知部44aは、重複部59aではなく、非重複部59bに対応する位置に配置されることが好ましい。なお、ここでいう「非重複部に対応する位置」とは、非重複部59bに対して、ヒータ22の上記厚さ方向で重なる位置を意味する。
また、本発明は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなど熱圧着装置のような加熱装置にも適用が可能である。このような加熱装置にも本発明を適用することで、加熱装置の長手方向の一方側と他方側との温度偏差を抑制することができる。
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。