JP2021095943A - 熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料、熱可塑成形水素タンクライナー及び水素タンクの製造方法 - Google Patents
熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料、熱可塑成形水素タンクライナー及び水素タンクの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
また、ヨウ化銅/ヨウ化カリウムなどの無機系耐熱剤を存在させて耐熱性を向上させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、無機系耐熱剤を使用すると、稀に凝集によって低温での伸びが損なわれるといった問題があった。
そこで、本発明は、優れた耐熱性及び低温下での機械的特性を備えた、熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂組成物及び熱可塑成形水素タンクライナーを提供することを課題とする。
本発明は、例えば以下の[1]〜[4]である。
[1]熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料であって、
ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びにヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含むことを特徴とする、熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料。
[2]ポリアミド樹脂成形材料からなる熱可塑成形水素タンクライナーであって、
前記ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びにヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含み、
−60℃での引張試験における引張破壊呼びひずみが15%以上であることを特徴とする、水素タンク本体の内層である熱可塑成形水素タンクライナー。
[3](工程1)ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びに少なくとも1種のヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含むポリアミド樹脂成形材料を、シリンダー温度260〜290℃、金型温度70〜90℃で成形して、中間成形品を得る工程、及び
(工程2)工程1で得られた中間成形品を溶着した中空成形品の周囲に炭素繊維強化樹脂を巻き付けた上で、下記の熱処理条件で熱処理して、熱可塑成形水素タンクライナーを内層とする水素タンク本体を得る工程
を含む、水素タンクの製造方法。
(熱処理条件)
雰囲気:空気
圧力:0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)
温度:150〜200℃
時間:0.5〜6時間
[4]前記工程2で得られた水素タンク本体における熱可塑成形水素タンクライナーの−60℃での引張試験における引張破壊呼びひずみが15%以上である、
[3]の水素タンクの製造方法。
1.本発明の第1の態様
本発明の第1の態様は、熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料であって、
ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びにヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含むことを特徴とする、熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料である。
ポリアミド樹脂成形材料は、
ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
少なくとも1種のヒンダードフェノール系耐熱剤及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
含む。
なお、ポリアミド6とポリアミド6/66をあわせてポリアミド樹脂と称することもある。
ポリアミド6(A)は、カプロラクタムまたはその加水分解物であるアミノカプロン酸の重合体であり、それらを構成単位とするポリアミド樹脂である。
ポリアミド6/66(B)は、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体であり、それらを構成単位とするポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド6及びポリアミド6/66以外のポリアミドを含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。
前記ポリアミド樹脂の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド樹脂製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
耐衝撃材(C)として具体的には、(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又はα,β−不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。耐衝撃材(C)として好ましくは、エチレン/α−オレフィン系共重合体が挙げられる。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
耐熱剤(D)は、ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)の少なくとも1種及びリン系耐熱剤(D−2)からなる。
本明細書において、ヒンダードフェノール系耐熱剤とは、フェノールの水酸基のO(オルト)位に置換基を有するヒンダードフェノール構造を有する耐熱剤をいう。O位の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基が好ましく、嵩高いi−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基がより好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。また、O位は、フェノールの水酸基に対する2つのO位がいずれも置換基を有することが好ましい。
O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールは、具体的には、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、を挙げることができる。これらは1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよいが、好適には2種以上を組み合わせて使用する。
これらの耐熱剤の市販品としては、「Irganox1010」(BASF社)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社)などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としてはヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物が好ましく、O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物がより好ましく、O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物がさらに好ましい。O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物は、具体的には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイト、を挙げることができる。O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物は、具体的には、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−4,4−ビフェニルジホスフィンを主成分とするビフェニル、三塩化リン及び2,4−ジ−tert−ブチルフェノールの反応生成物、を挙げることができる。これらの耐熱剤の市販品としては、「Irgafos168」(BASF社)、「hostanoxP−EPQ」(クラリアントケミカルズ社)が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)は、ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に1〜3質量%含まれることが好ましく、リン系耐熱剤(D−2)は0.2〜1質量%含まれることが好ましく、リン系耐熱剤(D−2)はヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)の量以下であることが特に好ましい。
ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)とリン系耐熱剤(D−2)との質量比は、ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)/リン系耐熱剤(D−2)が2を超えて5以下が好ましく、2.5〜4.5がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。上記範囲にあると熱処理後の着色が抑制される。
ポリアミド樹脂成形材料は目的等に応じて、任意成分として、染料、顔料、繊維状補強物、粒子状補強物、可塑剤、酸化防止剤、耐熱剤((D)成分を除く)、発泡剤、耐候剤、結晶核剤(有機核剤、タルクなどの無機核剤)、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等の機能性付与剤等を適宜含有していてもよい。本発明の効果向上の為、ポリアミド樹脂成形材料は、酸化防止剤を含有するのが好ましい。
任意の添加剤は、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
ポリアミド樹脂成形材料の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。
ポリアミド6(A)と、ポリアミド6/66(B)と、耐衝撃材(C)と、耐熱剤(D)と、その他任意成分との混合には、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機が用いられる。例えば、2軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
前記ポリアミド樹脂形成材料を用いて、前記製造方法により製造された成形品は、単層で十分な低温耐衝撃性を有するので、熱可塑成形水素タンクライナーに用いられる。熱可塑成形水素タンクライナーは、単層射出成形した成形品を熱処理することにより容易に製造することができる。ここで単層とは、単一の可塑化装置で溶融された樹脂成形材料をキャビティに充填して得られる成形品層を言う。また、射出成形とは金型キャビティに溶融樹脂を加圧状態で注入し、金型内で固化させて成形品を得るもの全てを指し、通常の射出成形に加え例えば射出圧縮成形も含む。
本発明の第2の態様は、ポリアミド樹脂成形材料からなる熱可塑成形水素タンクライナーであって、
前記ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びにヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含み、
−60℃での引張試験における引張破壊呼びひずみが15%以上であることを特徴とする、水素タンク本体の内層である熱可塑成形水素タンクライナーである。
ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びにヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含む。
なお、ポリアミド6とポリアミド6/66をあわせてポリアミド樹脂と称することもある。
ポリアミド6(A)は、カプロラクタムまたはその加水分解物であるアミノカプロン酸の重合体であり、それらを構成単位とするポリアミド樹脂である。
ポリアミド6/66(B)は、カプロラクタムとヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重合体であり、それらを構成単位とするポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂成形材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアミド6及びポリアミド6/66以外のポリアミドを含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。
前記ポリアミド樹脂の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド樹脂製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
耐衝撃材(C)として具体的には、(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又はα,β−不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。耐衝撃材(C)として好ましくは、エチレン/α−オレフィン系共重合体が挙げられる。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
耐熱剤(D)は、ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)の少なくとも1種及びリン系耐熱剤(D−2)からなる。
本明細書において、ヒンダードフェノール系耐熱剤とは、フェノールの水酸基のO(オルト)位に置換基を有するヒンダードフェノール構造を有する耐熱剤をいう。O位の置換基としては、特に限定されないが、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基が好ましく、嵩高いi−プロピル基、sec−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基がより好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。また、O位は、フェノールの水酸基に対する2つのO位がいずれも置換基を有することが好ましい。
O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールは、具体的には、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、を挙げることができる。これらは1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよいが、好適には2種以上を組み合わせて使用する。
これらの耐熱剤の市販品としては、「Irganox1010」(BASF社)、「Sumilizer GA−80」(住友化学社)などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としてはヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、ヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物が好ましく、O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物、O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物がより好ましく、O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物がさらに好ましい。O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの亜リン酸エステル化合物は、具体的には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイト、を挙げることができる。O位にt−ブチル基を有するヒンダードフェノールの次亜リン酸エステル化合物は、具体的には、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−4,4−ビフェニルジホスフィンを主成分とするビフェニル、三塩化リン及び2,4−ジ−tert−ブチルフェノールの反応生成物、を挙げることができる。これらの耐熱剤の市販品としては、「Irgafos168」(BASF社)、「hostanoxP−EPQ」(クラリアントケミカルズ社)が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)は、ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に好ましくは1〜3質量%含まれ、リン系耐熱剤(D−2)は好ましくは0.2〜1質量%含まれ、リン系耐熱剤(D−2)はヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)の量以下であることが特に好ましい。
ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)とリン系耐熱剤(D−2)との質量比は、ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1)/リン系耐熱剤(D−2)が2を超えて5以下が好ましく、2.5〜4.5がより好ましく、3〜4がさらに好ましい。上記範囲にあると熱処理後の着色が抑制される。
ポリアミド樹脂成形材料は目的等に応じて、任意成分として、染料、顔料、繊維状補強物、粒子状補強物、可塑剤、酸化防止剤、耐熱剤((D)成分を除く)、発泡剤、耐候剤、結晶核剤(有機核剤、タルクなどの無機核剤)、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等の機能性付与剤等を適宜含有していてもよい。本発明の効果向上の為、ポリアミド樹脂成形材料は、酸化防止剤を含有するのが好ましい。
任意の添加剤は、好ましくは0.01〜1質量%、より好ましくは0.05〜0.5質量%である。
ポリアミド樹脂成形材料の製造方法は特に制限されるものではなく、例えば次の方法を適用することができる。
後述する熱可塑成形水素タンクライナーの製造には、ペレット化されたポリアミド樹脂成形材料が用いられることが好ましい。ペレット化されたポリアミド樹脂成形材料の製造方法を図1に示すフローチャートに従って説明する。
ポリアミド6(A)と、ポリアミド6/66(B)と、耐衝撃材(C)と、耐熱剤(D)と、その他任意成分は、一括して、又は必要に応じ複数に分けて混合され、単軸、2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機のシリンダーに投入する(図1のステップ1(S1))。
次いで、溶融混練機のヒーターを用いて、シリンダー内で投入された成分を加熱し、ポリアミド樹脂、耐衝撃剤等の熱可塑性樹脂を溶融する(図1のステップ2(S2))。
溶融された熱可塑性樹脂とその他の成分とを、溶融混練機のスクリューの回転により混練し、投入した成分が十分に混合された混練物とする(図1のステップ3(S3))。
混練物をダイより押し出し、紐状のストランドとする(図1のステップ4(S4))。
ストランドを水槽に浸漬して直ちに冷却する(図1のステップ5(S5))。
冷却されたストランド状の混練物をペレタライザーでペレット化し、ペレット化されたポリアミド樹脂成形材料を得る(図1のステップ6(S6))。
本発明の第2の態様の熱可塑成形水素タンクライナーは、
(工程1)前記ポリアミド樹脂成形材料を、シリンダー温度260〜290℃、金型温度70〜90℃で成形して、中間成形品を得る工程、及び
(工程2)工程1で得られた中間成形品を溶着した中空成形品の周囲に炭素繊維強化樹脂を巻き付けた上で、以下の熱処理条件で熱処理して、熱可塑成形水素タンクライナーを内層とする水素タンク本体を得る工程
を含む、水素タンクの製造方法によって得られる水素タンク本体の内層である。
(熱処理条件)
雰囲気:空気
圧力:0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)
温度:150〜200℃
時間:0.5〜6時間
本明細書においては、「中間成形品」及び「中空成形品」とは、熱処理を経ていないポリアミド樹脂成形材料の成形品を示し、「熱可塑成形水素タンクライナー」は、熱処理を経たポリアミド樹脂成形材料の成形品を示す。
用いるポリアミド樹脂成形材料は、前述した通りである。
ポリアミド樹脂成形材料を成形した中間成形品は、射出成形機を用いて製造することができる。中間成形品は、単層射出成形により容易に製造することができる。ここで単層とは、単一の可塑化装置で溶融された樹脂成形材料をキャビティに充填して得られる成形品層を言う。また、射出成形とは金型キャビティに溶融樹脂を加圧状態で注入し、金型内で固化させて成形品を得るもの全てを指し、通常の射出成形に加え例えば射出圧縮成形も含む。
中間成形品の製造方法を図2に示すフローチャート、図3及び図4に従って説明する。
ペレット化されたポリアミド樹脂成形材料を射出成型機のホッパー1を介して射出成型機のシリンダーに投入する(図2のステップ11(S11))。
ペレット化されたポリアミド樹脂成形材料を、シリンダー2内でシリンダー2に備えられたヒーター3によって加熱し、溶融される(図2のステップ12(S12))。
その際、シリンダー温度は260〜290℃であり、260〜280℃が好ましく、265〜275℃がより好ましい。シリンダー温度が前記範囲にあると、やけ、充填不足等の成形不良および加工熱による顕著な熱劣化を防ぐことができる。
溶融されたポリアミド樹脂成形材料を、スクリュー4の回転とともに、シリンダー内でスクリューの前方に必要な量だけ押し出し計量する(図2のステップ13(S13))。
計量分の溶融されたポリアミド樹脂成形材料を、金型内(固定側の金型5と可動側の金型6とに挟まれた空間)に注入する(図2のステップ14(S14))。
その際、金型温度は、固定側の金型5の金型温度、可動側の金型6の金型温度のいずれも70〜90℃であり、75〜85℃が好ましく、80〜85℃がより好ましい。金型温度が前記範囲にあると、転写不良、ひけ等の成形不良の防止および冷却時間を短縮することができる。
その他好ましい条件としては、保圧を50〜80MPa、保圧時間を10〜30秒とするとよい。
その後、金型内の溶融されたポリアミド樹脂成形材料は、取り出し可能な硬さに固化するまで冷却する(図2のステップ15(S15))。
冷却時間は、10〜30秒が好ましい。
最後に、金型を開くことで、中間成形品7を取り出す(図2のステップ16(S16))。
工程1で得られた中間成形品は、中空形状になるように加工して中空成形品とした後に、中空成形品の外面に炭素繊維強化樹脂を巻き付けた上で、好ましくは加圧しながら熱処理を行うことにより、熱可塑成形水素タンクライナーを内層とする水素タンク本体となる。
水素タンク本体の製造方法を図5に示すフローチャート、図6〜図11に従って説明する。
工程1で得られた中間成形品7に口金8を取り付けるとともに、2つの中間成形品7をそれぞれの一端の開口部同士を溶着し、口金の取り付けられた中空成形品9とする(図5のステップ21(S21))。
中空成形品9の周囲に炭素繊維強化樹脂(硬化前)10を巻き付け、中空成形品9の内部に圧縮空気等で圧力(内圧11)をかける(図5のステップ22(S22))。
炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維で強化されたマトリックス樹脂(プラスチック)からなるCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)である。マトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
炭素繊維強化樹脂(硬化前)10を巻き付けられた中空成形品9の内部に内圧11をかけた状態で、外部から熱12をかける(図5のステップ23(S23))。ステップ23により、炭素繊維強化樹脂のマトリックス樹脂が硬化し、炭素繊維強化樹脂(硬化後)13となるとともに、中空成形品9が熱処理される。
熱処理の雰囲気は、空気であっても、不活性ガスであってもよい。
熱処理の温度は、150〜200℃である。温度が前記範囲にあると、中間成形品の外に巻かれたCFRPを短時間で焼き固めることができる。なお、上記熱処理条件における圧力及び温度は、熱処理中の最高圧力及び最高温度であり、たとえば昇温段階及び降温段階等の温度は、この温度を満たさなくてもよい。加熱方法としては、特に制限されないが、オーブン等が挙げられる。
熱処理の時間は、0.5〜6時間であり、0.5〜4.5時間がより好ましい。熱処理時間は、加熱を始めてから終了するまでの時間であり、昇温時間及び降温時間も含む。
このような熱処理条件を満たすことにより低温下における高い耐衝撃性を担保することができる。
熱処理された中空成形品9である熱可塑成形水素タンクライナー14の内部の圧力を脱圧するとともに、全体(内層及び外層)を冷却し、水素タンク本体を得る(図5のステップ24(S24))。この水素タンク本体は、熱可塑成形水素タンクライナー14を内層とし、炭素繊維強化樹脂層(硬化後)13を外層とする。この水素タンクの口金8には、バルブ等の付属品15を設け、水素タンクとする。
前記ポリアミド樹脂形成材料を用いて、前記製造方法により製造された水素タンク本体における内層である熱可塑成形水素タンクライナーは、ISO527−2/1A/50に準じて、-60℃で測定した引張破壊呼びひずみが15%以上であり、20%以上が好ましく、23%以上がより好ましい。引張破壊呼びひずみが、前記範囲にあるとライナーが水素タンク使用時の負荷に耐えて破損を防ぐことができる。
実施例及び比較例で用いた成分は、以下の通りである。
ポリアミド6(A):製品名「SF1018A」宇部興産株式会社製
ポリアミド6/66(B):製品名「5034B」、宇部興産株式会社製
耐衝撃材(C):無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体、製品名「タフマー(登録商標)MH5020」三井化学株式会社製
ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1−1):(3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、製品名「Sumilizer GA−80」住友化学社製
ヒンダードフェノール系耐熱剤(D−1−2):(ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、製品名「Irganox1010」BASF社製)
リン系耐熱剤(D−2):(トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト)、製品名「Irgafos168」BASF社製
無機系耐熱剤:ヨウ化銅/ヨウ化カリウム=2/5(質量比)
(機械的特性)
(1)引張破壊呼びひずみ
ISO527−2/1A/50に準じて、インストロン製引張試験機型式5567を使用して-60℃で測定した。
(耐熱性)
(2)色調変化
スガ試験機製カラーコンピューターSM−5−IS−2Bを用い、C光2度視野にてL*a*b*表色系により表1に示す熱処理前後の試験片チャック部の色差ΔE*を測定した。
以上、(1)および(2)の結果から、機械的特性及び耐熱性に関して以下の基準で評価した。
○:引張破壊呼びひずみが15%以上、色調変化が45以下の両方を満たす
×:上記の基準で少なくとも1つの条件を満たさないもの
以下の方法・基準で耐ブリードアウト性を評価した。
(3)グロス値変化
スガ試験機製カラーコンピューターSM−5−IS−2BおよびUGV−5Kを用い、測定角度60度にて、温度80℃湿度95%RHの環境下における10日間の湿熱処理前後の試験片チャック部のグロス値変化ΔGs(60°)を測定した。
以上(3)の結果から、耐ブリードアウト性に関して以下の基準で評価した。
○:グロス値変化が35未満
×:上記の基準を満たさないもの
以下の製造方法で、ISO527−1のType−1A試験片を製造した。
(工程1/中間成形品の製造工程(成形工程))
表2に記載した各成分を表2に記載した配合量で、二軸混練機ZSK32mc、シリンダー径32mm L/D28で、シリンダー温度270℃、スクリュー回転200rpm、吐出量50kg/hrsにて溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂成形材料(ペレット状)を作製した。得られたペレットを用いて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃、保圧50MPa、保圧時間20秒、冷却時間20秒で射出成形にて中間成形品を製造した。
なお、表2中の組成の単位は質量%であり、樹脂成形材料全体を100質量%とする。(D−1−1)と(D−1−2)は、いずれも(D−1)成分であり、表2中(D−1)の質量とあるのは、(D−1−1)及び(D−1−2)の合計の質量である。
(工程2/熱処理成形品の製造(熱処理工程))
次いで、得られた中間成形品を耐圧容器の中に入れ、耐圧容器内を空気で0.8MPa(ゲージ圧)まで加圧し、オーブンを用いて圧力容器内の温度を室温から180℃まで約2時間かけて昇温し、180℃に到達してから2時間保持した後に40℃まで0.5時間かけて降温する方法で熱処理し、熱処理成形品を得た。工程2の熱処理条件を表1に示す。
なお、引張破壊呼びひずみ、色調変化、グロス値変化は、水素タンク本体の内層の熱可塑成形水素タンクライナーにおける値であるので、工程2において、炭素繊維強化樹脂を中間成形品の外面に巻き付けるか否かで、これらの値は変わらないため、実施例の工程2では、炭素繊維強化樹脂の巻き付けを省略した。
熱処理成形品(ISO527−1のType−1A試験片)を、上記物性評価に使用した。得られた結果を表2に示す。
実施例1〜3と比較例1及び2とを比較すると、耐熱剤としてヒンダードフェノール系耐熱剤とリン系耐熱剤の組み合わせを用いると、無機系耐熱剤を用いた場合に比べて、耐熱性及び機械的特性に優れることがわかる。
また、実施例1〜3と比較例3〜5とを比較すると、耐熱剤としてヒンダードフェノール系耐熱剤とリン系耐熱剤の組み合わせを用いても、配合量が本願発明の範囲よりも少ないと、耐熱性及び機械的特性が劣ることがわかる。
2:シリンダー
3:ヒーター
4:スクリュー
5:金型(固定側)
6:金型(可動側)
7:中間成形品
8:口金
9:中空成形品
10:炭素繊維強化樹脂(硬化前)
11:内圧
12:熱
13:炭素繊維強化樹脂(硬化後)
14:熱可塑成形水素タンクライナー
15:バルブ等の付属品
16:水素タンク
Claims (4)
- 熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料であって、
ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びにヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含むことを特徴とする、熱可塑成形水素タンクライナー用ポリアミド樹脂成形材料。 - ポリアミド樹脂成形材料からなる熱可塑成形水素タンクライナーであって、
前記ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びにヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含み、
−60℃での引張試験における引張破壊呼びひずみが15%以上であることを特徴とする、水素タンク本体の内層である熱可塑成形水素タンクライナー。 - (工程1)ポリアミド樹脂成形材料100質量%中に、
ポリアミド6(A)を50〜70質量%、
ポリアミド6/66(B)を10〜30質量%、
耐衝撃材(C)を10〜20質量%、
並びに少なくとも1種のヒンダードフェノール系耐熱剤の少なくとも1種及びリン系耐熱剤からなる耐熱剤(D)を1〜4質量%
を含むポリアミド樹脂成形材料を、シリンダー温度260〜290℃、金型温度70〜90℃で成形して、中間成形品を得る工程、及び
(工程2)工程1で得られた中間成形品を溶着した中空成形品の周囲に炭素繊維強化樹脂を巻き付けた上で、下記の熱処理条件で熱処理して、熱可塑成形水素タンクライナーを内層とする水素タンク本体を得る工程
を含む、水素タンクの製造方法。
(熱処理条件)
雰囲気:空気
圧力:0.1〜1.0MPa(ゲージ圧)
温度:150〜200℃
時間:0.5〜6時間 - 前記工程2で得られた水素タンク本体における熱可塑成形水素タンクライナーの−60℃での引張試験における引張破壊呼びひずみが15%以上である、
請求項3に記載の水素タンクの製造方法。
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