JP2021080344A - ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 流動性に優れ、ブロー成形に適したポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリアミド樹脂(A)及び耐衝撃材(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、該組成物の固体NMR測定による炭素核の緩和時間が、(a1)ポリアミド樹脂(A)のカルボニル基の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち、長いほうの緩和時間T C1が15〜45秒の範囲である、及び(a2)ポリアミド樹脂(A)のNH基に隣接した炭化水素基由来の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち、長いほうの緩和時間T C2が38秒以下である、をともに満たす、ポリアミド樹脂組成物である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法に関する。
ポリアミド樹脂は、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を有することから、エンジニアリングプラスチックスとして様々な用途で展開され、様々な成形方法によって使用されている。そのなかで、ブロー成形によるブロー成形品としての利用も進んでいる。
また、高分子材料においては、成型品の用途に伴って相反する物性を満足するような材料が要求されることがある。技術分野によって要求される物性は様々であるが、ポリアミド樹脂においては、例えば、耐衝撃性と耐熱性とを備えたポリアミド樹脂組成物が知られている(特許文献1)。
特許第4720567号公報
しかし、特許文献1記載のポリアミド樹脂において成形条件は考慮されておらず、成形においてより有利なポリアミド樹脂組成物に対する要求は常に存在している。ブロー成形などの成形工程において、ポリアミド樹脂は一旦溶融状態にされるため、ポリアミド樹脂が適度な流動性を有することが求められる。
そこで本発明は、流動性の向上したポリアミド樹脂組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため本発明者らが検討したところ、ポリアミド樹脂組成物が固体NMR測定において示す緩和時間を一定の範囲とすることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
本発明により、流動性の向上したポリアミド樹脂組成物及びその製造方法が提供される。このため、本発明のポリアミド樹脂組成物は、特にブロー成形により成形されるポリアミド成形品の分野において有用である。
本発明の第1の発明は、ポリアミド樹脂(A)及び耐衝撃材(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、該組成物の固体NMR測定による炭素核の緩和時間が以下の条件:(a1)ポリアミド樹脂(A)のカルボニル基の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち、長いほうの緩和時間T C1が15〜45秒の範囲である;及び(a2)ポリアミド樹脂(A)のNH基に隣接した炭化水素基由来の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち、長いほうの緩和時間T C2が38秒以下である、をともに満たす、ポリアミド樹脂組成物に関する。以下、本発明のポリアミド樹脂組成物の各成分、特性について詳細に説明する。
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
1.ポリアミド樹脂(A)
ポリアミド樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂(A)は、アミド結合を介して形成されたポリマーであれば特にその種類は制限されず、使用することができるポリアミド樹脂の構造による区分の例として、脂肪族ホモポリアミド(A−1)及び共重合ポリアミド(A−2)を挙げることができる。2種類以上の脂肪族ホモポリアミド又は共重合ポリアミドの混合物であってもよい。ポリアミド樹脂(A)としては、脂肪族ホモポリアミド(A−1)及び共重合ポリアミド(A−2)を少なくとも1種類ずつ含む混合物であることが好ましい。
<脂肪族ホモポリアミド(A−1)>
脂肪族ホモポリアミド(A−1)は、1種類の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族ホモポリアミド(A−1)は、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものであってもよく、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸との組合せからなるものであってもよい。
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。これらの中でも重合生産の観点から、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸が挙げられる。これらの中でも重合生産の観点から、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−/1,4−シクロヘキシルジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−/1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミン等の脂環式ジアミン;等が挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、脂肪族ジアミンが好ましく、ヘキサメチレンジアミンがより好ましい。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;等が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、セバシン酸及びドデカンジオン酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、セバシン酸及びドデカンジオン酸が更に好ましい。
脂肪族ホモポリアミド(A−1)として具体的には、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリアミド122等が挙げられる。脂肪族ホモポリアミド(A−1)は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
中でも脂肪族ホモポリアミド(A−1)は、重合生産性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610及びポリアミド612からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610及びポリアミド612ら選択される少なくとも1種がより好ましく、ポリアミド6が更に好ましい。
脂肪族ホモポリアミド(A−1)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。又は、脂肪族ホモポリアミドは、市販されているものを用いることもできる。市販品として、宇部興産(株)製ポリアミド(UBEナイロン(登録商標))の各グレードが挙げられる。
脂肪族ホモポリアミド(A−1)の相対粘度は、JIS K−6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される。脂肪族ホモポリアミド樹脂の相対粘度は、2.7以上であることが好ましく、2.7以上5.0以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂(A)が脂肪族ホモポリアミド(A−1)を含む場合、脂肪族ホモポリアミド(A−1)のポリアミド樹脂組成物の総量中における含有率は、成形加工性の観点から、例えば30質量%以上95質量%以下であり、35質量%以上90%以下が好ましく、40質量%以上85質量%以下がより好ましい。
ポリアミド樹脂組成物は、2種以上の脂肪族ホモポリアミド(A−1)を含んでもよい。2種以上の脂肪族ホモポリアミド(A−1)は互いに、構成単位が異なるものであってもよいし、分子量(例えば、数平均分子量)が異なるものであってもよい。ポリアミド樹脂組成物が2種以上の脂肪族ホモポリアミド(A−1)を含む場合、既存重合製品を使用出来、混練工程での生産性調整や成形加工性に応じた材料設計が可能となる。
ポリアミド樹脂(A)が、相対粘度が異なる脂肪族ホモポリアミド(A−1)を2種類以上含む場合、ポリアミド樹脂(A)における相対粘度は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれの相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂(A)の相対粘度としてもよい。
<共重合ポリアミド(A−2)>
共重合ポリアミド(A−2)は、2種以上の構成単位からなるポリアミド樹脂である。共重合ポリアミド(A−2)は、ジアミンとジカルボン酸の組合せ、およびラクタム又はアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。共重合ポリアミドは、以下に記載する原料として用いる化合物の組成比に応じて、分子主鎖が脂肪族炭化水素で構成される脂肪族共重合ポリアミド、分子主鎖が芳香族化合物である芳香族共重合ポリアミド、一部に芳香族を含む部分芳香族共重合ポリアミドに分類することができる。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−/1,4−シクロヘキシルジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−/1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチルジフェニルメタン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3−メチル−5−エチルフェニル)プロパンなどの芳香族ジアミン;等が挙げられる。ジアミンはこれらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、重合生産性の観点から、脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、直鎖状脂肪族ジアミンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、ヘキサメチレンジアミンが更に好ましい。
これらのジアミンは1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−/1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン−4,4’−ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−2,4−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−3,3’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−3,4’−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;等が挙げられる。ジカルボン酸はこれらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、アジピン酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。
これらのジカルボン酸は1種類で使用してもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等が挙げられる。これらの中でも重合生産の観点から、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としては6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸が挙げられる。これらの中でも重合生産の観点から、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
部分芳香族共重合ポリアミドは、ポリアミドのアミド結合間に芳香族の構造を含むポリアミドの共重合体である。部分芳香族共重合ポリアミドには、半芳香族ポリアミドと呼ばれる樹脂が含まれる。
部分芳香族共重合ポリアミドは、モノマー成分のうち少なくとも1種に芳香族化合物を用いて得られる。モノマー成分の組合せとしては例えば芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミン、脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミン、脂肪族ジアミンと芳香族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸、又は芳香族アミノカルボン酸を含む2種以上のアミノカルボン酸である。好ましい部分芳香族共重合ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの共重合体又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンの共重合体である。部分芳香族共重合ポリアミドを用いることにより、耐熱性と低温耐衝撃性がより向上するため好ましい。これらの中でも、全ジアミン単位に対して、炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位よりなる共重合体、あるいは、全ジアミン単位に対して、キシリレンジアミン単位及び/又はビス(アミノメチル)ナフタレン単位を50モル%以上含むジアミン単位と、全ジカルボン酸単位に対して、炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジカルボン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位よりなる共重合体が好ましい。
具体例の一つとして、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又はナフタレンジカルボン酸単位を含む部分芳香族共重合ポリアミドについて説明する。
部分芳香族共重合ポリアミド中の炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位の含有量は、得られるポリアミド樹脂組成物の諸物性を十分に確保する観点から、全ジアミン単位に対して、50モル%以上であり、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位としては、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン等から誘導される単位が挙げられる。炭素原子数が上記を満たす限り、分岐鎖状脂肪族ジアミンから誘導される単位を含有していても構わない。分岐鎖状脂肪族ジアミンの例は先に挙げたとおりである。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位の中でも、耐熱性の観点から、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミンから誘導される単位が好ましく、1,6−ヘキサンジアミンから誘導される単位が好ましい。
部分芳香族共重合ポリアミド中のジアミン単位は、本発明の機能・特性を損なわない範囲内であれば、炭素原子数6以上13以下の脂肪族ジアミン単位以外の他のジアミン単位を含んでいてもよい。他のジアミン単位としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン等の脂肪族ジアミンから誘導される単位、先に例示した脂環式ジアミンから誘導される単位、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,4−ビス(アミノメチル)ナフタレン、1,5−ビス(アミノメチル)ナフタレン、2,6−ビス(アミノメチル)ナフタレン、2,7−ビス(アミノメチル)ナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンから誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら他のジアミン単位の含有量は、全ジアミン単位に対して、50モル%以下であり、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。
部分芳香族共重合ポリアミド中のテレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又はナフタレンジカルボン酸単位の含有量は、得られるポリアミド樹脂の機能・特性を十分に確保する観点から、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以上であり、55モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。
ナフタレンジカルボン酸単位としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記ナフタレンジカルボン酸単位の中でも、経済性、入手の容易さを考慮して、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。
部分芳香族共重合ポリアミド中のジカルボン酸単位は、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位及び/又はナフタレンジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでいてもよい。他のジカルボン酸単位としては、先に挙げた直鎖状、分岐鎖状脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸から誘導される単位、フタル酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルプロパン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−トリフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記単位の中でも、芳香族ジカルボン酸から誘導される単位が好ましい。これら他のジカルボン酸単位の含有量は、全ジカルボン酸単位に対して、50モル%以下であり、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましい。さらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸を溶融成形が可能な範囲内で用いることもできる。
部分芳香族共重合ポリアミドには、ジカルボン酸単位及びジアミン単位以外のその他の単位を含んでいてもよい。その他の単位としては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等のラクタムから誘導される単位、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸、p−アミノメチル安息香酸等の芳香族アミノカルボン酸のアミノカルボン酸から誘導される単位が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。その他の単位の含有量は、全ジカルボン酸単位に基づいて、45モル%以下であることが好ましく、40モル%以下であることがより好ましく、35モル%以下であることがさらに好ましい。
部分芳香族共重合ポリアミドとして具体的には、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミド6N)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリ(2−メチルオクタメチレンテレフタラミド)(ポリアミドM8T)、ポリ(2−メチルオクタメチレンイソフタラミド)(ポリアミドM8I)、ポリ(2−メチルオクタメチレンナフタラミド)(ポリアミドM8N)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリトリメチルヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミドTMHI)、ポリトリメチルヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミドTMHN)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)などの芳香族を構造の一部に含むポリアミド、これらの2種以上を用いた共重合体、又はこれらポリアミドと脂肪族ポリアミドとの共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、入手の容易さや、本発明の効果を十分に確保する観点から、部分芳香族共重合ポリアミドとしては、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンセバカミド)共重合体(ポリアミド6T/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンドデカミド)共重合体(ポリアミド6T/612)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/2−メチルペンタメチレンテレフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/M5T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/カプロアミド)共重合体(ポリアミド6T/6)が好ましく、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド)共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体(ポリアミド6T/6I/66)やこれらの混合物がより好ましい。
共重合ポリアミド(A−2)として具体的には、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)等の脂肪族共重合ポリアミド;ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド共重合体(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(ポリアミド6T/6)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミド共重合体(ポリアミド6I/6)、ポリドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミド共重合体(ポリアミド12/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(ポリアミド66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(ポリアミド66/6/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド共重合体(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)共重合体(ポリアミド6T/M5T)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)等の芳香族共重合ポリアミド又は部分芳香族共重合ポリアミドなどが挙げられる。
これらの中でも、生産性の観点から、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12及びポリアミド6T/6Iからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これらの共重合ポリアミド(A−2)は、各々単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
共重合ポリアミド(A−2)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
共重合ポリアミド(A−2)の相対粘度は特に制限されないが、本発明の効果を向上させる観点から、JIS K−6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定した相対粘度が1.8以上5.0以下であることが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)が共重合ポリアミド(A−2)を含む場合、共重合ポリアミド(A−2)のポリアミド樹脂組成物の総量中における含有率は、成形加工性の観点から、例えば1質量%以上30質量%以下であり、2質量%以上25質量%以下が好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、好ましくは共重合ポリアミド(A−2)として脂肪族共重合ポリアミド又は部分芳香族共重合ポリアミドを含むものである。また共重合ポリアミド(A−2)としては、脂肪族共重合ポリアミドの少なくとも1種と、芳香族共重合ポリアミドの少なくとも1種とを含んでもよい。脂肪族共重合ポリアミドと芳香族共重合ポリアミドとを含む場合、脂肪族共重合ポリアミドの芳香族共重合ポリアミドに対する含有比(脂肪族/芳香族)は、質量比で例えば0.1以上20以下であり、0.5以上10以下が好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、その組成によって特に制限されるものではないが、上記ポリアミド(A−1)又は(A−2)を含むものであることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)は、2種類以上のポリアミドの組成物であることが好ましく、その場合、ポリアミド(A−1)としてポリアミド6を60質量%以上含むものであることが、より好ましく、ポリアミド6を70質量%以上含むものであることが、さらに好ましい。また、ポリアミド樹脂(A)が2種類以上のポリアミドの組成物である場合、上記ポリアミド(A−1)及び(A−2)を少なくとも1種類ずつ含むものであることが好ましく、ポリアミド6と共重合ポリアミドとの組合せであることがより好ましい。共重合ポリアミドとしては、脂肪族共重合ポリアミド又は部分芳香族共重合ポリアミドであることが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)に含まれる脂肪族ホモポリアミド(A−1)及び共重合ポリアミド(A−2)の総含有率は、例えば50質量%以上であり、70質量%以上が好ましい。またポリアミド樹脂(A)における脂肪族ホモポリアミド(A−1)に対する共重合ポリアミド(A−2)の含有比率は、例えば1質量%以上40質量%以下であり、2質量%以上30質量%以下が好ましい。
ポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)として芳香族ホモポリアミドを含んでいてもよい。芳香族ホモポリアミドは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸からなり、ジアミン及びジカルボン酸の少なくとも一方が芳香族系モノマー成分である芳香族基を含むホモポリアミド樹脂である。芳香族ホモポリアミドの具体例としては、ポリノナンメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)等が挙げられる。ポリアミド樹脂(A)が芳香族ホモポリアミドを含む場合、ポリアミド樹脂(A)中の含有率は、例えば30質量%以下であり、20質量%以下が好ましい。
ポリアミド樹脂(A)は、JIS K−6920に準拠し、ポリアミド樹脂1gを96%濃硫酸100mlに溶解させ、25℃で測定される相対粘度が2.7以上であり、2.7以上5.0以下であることが好ましい。更に本発明の効果を向上させる観点から、2.7以上4.5未満がより好ましい。2.7未満では、ポリアミド組成物の溶融粘度が低くなり、押出成形でも特にブロー成形時のパリソン形状保持が困難となる。また5.0超過では、ポリアミド組成物の溶融粘度が非常に高くなり、ブロー成形時、溶融樹脂の均一な肉厚が得られなくなる可能性がある。
ポリアミド樹脂(A)が、相対粘度が異なる2種以上のポリアミド樹脂(例えば、少なくとも1種の脂肪族ホモポリアミド(A−1)と少なくとも1種の共重合ポリアミド(A−2))を含む場合、ポリアミド樹脂(A)における相対粘度は、上記内容で測定されるのが好ましいが、それぞれのポリアミド樹脂の相対粘度とその混合比が判明している場合、それぞれの相対粘度にその混合比を乗じた値を合計して算出される平均値を、ポリアミド樹脂(A)の相対粘度としてもよい。
ポリアミド樹脂(A)の含有率は、ポリアミド樹脂組成物の総量中に60質量%以上95質量%以下であり、73質量%以上87質量%以下が好ましい。ポリアミド樹脂(A)の含有率が60質量%以上あれば、ポリアミド樹脂が本来有している強度や耐熱性等の特性を損なう恐れが小さく、95質量%以下であれば、後述する耐衝撃材など他の成分による特性が損なわれる恐れが小さい。
2.耐衝撃材(B)
本発明のポリアミド樹脂組成物は、少なくとも1種の耐衝撃材(B)を含む。耐衝撃材としてはゴム状重合体が挙げられる。耐衝撃材は、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。
耐衝撃材(B)として具体的には、(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体等を挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。耐衝撃材として好ましくは、エチレン/α−オレフィン系共重合体である。
(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素数3以上又は4以上のα−オレフィンとを共重合した重合体である。
炭素数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、 4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
また共重合体は、非共役ジエン等のポリエンを共重合したものであってもよい。非共役ジエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いてもよい。
また、耐衝撃材(B)として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、並びに(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体である。このような成分により変性することにより、ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
ポリアミド樹脂(A)に対して親和性を有する官能基としては、カルボキシ基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。これら官能基のうち、耐衝撃材(B)は少なくとも、酸無水物基を有する。
これらの官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中では無水マレイン酸が好ましい。
耐衝撃材(B)は、ASTM D1238に準拠して、温度230℃、荷重2160gで測定したMFRが0.1g/10分以上10g/10分以下であることが好ましい。MFRが0.1g/10分以上であると、ポリアミド樹脂組成物の溶融粘度が高くなりすぎず、例えば押出成形におけるブロー成形時にパリソンの形状が不安定になることが抑制され、成形体の厚みがより均一になる傾向がある。また、MFRが10g/10分以下であると、パリソンのドローダウンが大きくなりすぎず、良好なブロー成形性が得られる傾向がある。
耐衝撃材(B)の含有率は、ポリアミド樹脂組成物の総量中に5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、13質量%以上27質量%以下であることが特に好ましい。耐衝撃材(B)の含有率が5質量%未満では、溶融粘度及び耐衝撃性が充分に得られない場合があり、40質量%超過では、ポリアミド樹脂が本来有している強度や耐熱性等の特性が低下する傾向がある。
ポリアミド樹脂組成物を塩酸150℃16時間処理することで、ポリアミド成分を加水分解させることが出来、未分解物成分を耐衝撃材(B)成分として取り出すことができる。
3.添加剤
ポリアミド樹脂組成物には、目的に応じて染料、顔料、繊維状補強物、粒子状補強物、可塑剤、酸化防止剤、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等の機能性付与剤等を適宜含有していてもよい。本発明のポリアミド樹脂組成物は、酸化防止剤を含有するのが好ましい。
酸化防止剤は、分子構造から、銅系酸化防止剤(無機系酸化防止剤)、有機系酸化防止剤に分類することができ、いずれを用いてもよい。
(銅系酸化防止剤)
銅系酸化防止剤の含有率は、ポリアミド樹脂組成物の総量中に5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下がより好ましく、実質的に含まないことが更に好ましい。ここで「実質的に含まない」とは不可避的に混入する銅系酸化防止剤の存在を許容することを意味する。
ポリアミド樹脂組成物が、銅系酸化防止剤を所定量以上で含む場合、耐衝撃材の銅との接触により銅害が発生して耐衝撃材が劣化する場合があると考えられる。但し、有機酸化防止剤との組み合わせにおいてはこの限りでは無い。
銅系酸化防止剤として具体的には、銅塩及びハロゲン化カリウムの混合物を挙げることができる。銅塩及びハロゲン化カリウムの混合物における銅塩としては、ヨウ化銅を挙げることができる。
(有機系酸化防止剤)
ポリアミド樹脂組成物は、熱溶着特性と耐熱特性の観点から、耐熱材として有機系酸化防止剤の少なくとも1種を含んでいてもよい。有機系酸化防止剤を含むことで、ブロー成形時においてインターバルタイムが長くなった場合でも通常の熱老化性、物性、溶融粘度等を維持しながら、熱溶着性をより向上させることができる。これは例えば、有機系酸化防止剤の添加によって、耐衝撃材の熱劣化によるゲル化が抑制され、それにより造核作用が抑制されるためと考えられる。
有機系酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を挙げることができる。有機系酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤及びチオエーテル系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤として具体的には、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド(Irganonox 1098;BASFジャパン株式会社製)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(Irganox 1010;BASFジャパン株式会社製)、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](Irganox 245;BASFジャパン株式会社製)、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(SUMILIZER GA−80;住友化学株式会社製)、を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
チオエーテル系酸化防止剤として具体的には、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート(Irganox PS802;BASFジャパン株式会社製)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(SUMILIZER TP−D;住友化学株式会社製)、ジドデシル(3,3’−チオジプロピオネート)(Irganox PS800;BASFジャパン株式会社製)を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
リン系酸化防止剤として具体的には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168;BASFジャパン株式会社製)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエルスリトールジフォスファイト(ADEKASTAB PEP−36;株式会社ADEKA製)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノキシ)−4,4−ビフィニルジホスフィンを主成分とするビフィニル、三塩化リン及び2,4−ジ−tert−ブチルフェノールの反応生成物(Hostanox P−EPQ P;クラリアントジャパン株式会社製)、を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これら有機系酸化防止剤は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
ポリアミド樹脂組成物は、熱溶着性の観点から、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤を含有することが好ましく、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤と少なくとも1種のチオエーテル系酸化防止剤とを含有することがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤は、ポリアミド樹脂組成物の総量中に、0.01質量%以上5質量%以下含有することが好ましく、0.05質量%以上2質量%以下含有することがより好ましい。
チオエーテル系酸化防止剤は、ポリアミド樹脂組成物の総量中に、0.01質量%以上5質量%以下含有することが好ましく、0.05質量%以上2質量%以下含有することがより好ましい。
4.ポリアミド樹脂組成物
<ポリアミド樹脂組成物の緩和時間>
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂(A)及び耐衝撃材(B)を有するものであり、かつ該組成物の固体NMR測定による炭素核の緩和時間が以下の条件:
(a1)ポリアミド樹脂(A)のカルボニル基の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち、長いほうの緩和時間T C1が15〜45秒の範囲である、及び
(a2)ポリアミド樹脂(A)のNH基に隣接した炭化水素基由来の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち長いほうの緩和時間T C2が38秒以下である
をともに満たすものである。
NMR測定における「緩和時間」とは、電磁波を受けて励起状態にある原子核が、エネルギーを放出して基底状態に戻るのにかかる時間のことをいう。
NMR測定における緩和時間には、スピン−格子緩和時間といわれる成分と、スピン−スピン緩和時間といわれる成分がある。緩和時間、結晶など分子運動性の低い成分と、非晶など分子運動性の高い成分の分子運動と関係している。本発明では、緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間の内、長い方の緩和時間を用いる。本明細書では、カルボニル基の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち長いほうの緩和時間をT C1と、NH基に隣接した炭化水素基の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち長いほうの緩和時間をT C2と、それぞれ表記する。
[条件(a1)]
ポリアミド樹脂(A)のカルボニル基の炭素に対応した緩和時間T C1は15〜45秒の範囲であるが、好ましくは15〜40秒の範囲であり、より好ましくは15〜38秒の範囲である。
[条件(a2)]
「NH基に隣接した炭化水素基由来の炭素」とは、ポリアミド樹脂のNH基に隣接した脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基の炭素であり、末端アミノ基を構成するNH基に隣接する炭素及びアミド基を構成するNH基のカルボニル基と反対側に隣接する炭素である。すなわち、ポリアミド樹脂は以下のような構造:
[−C(=O)NH−C−R−]
(ここで、RはCと一緒になってカルボン酸又はアミンに由来する炭化水素基を表す)
を有しているが、当該構造におけるCに対応した緩和時間がT C1であり、Cに対応した緩和時間がT C2である。本発明におけるポリアミド樹脂(A)のNH基に隣接した炭化水素基の炭素に対応した緩和時間T C2は38秒以下であるが、好ましくは20秒以上38秒以下である。
本発明のポリアミド樹脂(A)においては、さらに、前記緩和時間T C1及びT C2の差の絶対値|T C1−T C2|が2〜8秒であることが好ましい。当該差の絶対値が2.5〜7.5秒であると、より好ましい。如何なる理論に束縛されるものでもないが、緩和時間T C1及びT C2の差が小さいと、組成物全体の分子構造をみたときに、分子全体にわたって運動性にムラが小さくなり、流動性において有利に働くものと考えられる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の固体13C NMR測定は、下記の手法により実施する。本発明のポリアミド樹脂組成物のペレットを、固体NMRサンプル管の中央に充填し、固体NMR測定装置(例えば日本電子製ECA400)に供し、室温で、観測核を13C、観測周波数を98.5MHz、パルス幅3.0μsとし、Torchia法によりTIC測定を行い、対応する炭素核の緩和時間を測定する。線形法による2成分解析を行い、長い方の緩和時間を得る。ポリアミド樹脂(A)のカルボニル基の炭素及びNH基に隣接した炭化水素基の炭素に対応したピークは、ポリアミド樹脂(A)の種類により異なるが、例えば、ポリアミド樹脂(A)としてポリアミド6を使用する場合は、カルボニル基の炭素に対応したピークは174ppm付近に、NH基に隣接した炭化水素基の炭素に対応したピークは42ppm付近に現れる。ポリアミド樹脂の構造に応じて、各々の炭素に対応するピークの同定方法は、当業者に公知であり、公知の材料についてのNMRチャートの資料を参照するなどして同定することができる。ポリアミド樹脂(A)が共重合ポリアミドである場合、又は2種類以上のポリアミドの混合物である場合、カルボニル基の炭素に対応したピーク、NH基に隣接した炭化水素基の炭素に対応したピークは2つ以上現れることがある。このような場合における、ポリアミド樹脂が備える緩和時間も同様にして決定することができる。また、配合比等の理由によって主成分以外のシグナルが無視できるほど弱い場合は、主成分のNMRシグナルに基づく緩和時間のみを考慮するようにしてもよい。
ポリアミド樹脂組成物は、ISO 1133に準拠して、温度280℃、荷重10kgで測定したMFRが10.0g/10分以上20.0g/10分以下であることが好ましい。MFRがこの範囲であると、流動性を持ち、かつドローダウンもしにくいため、成形がしやすくなり、好ましい。
ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、例えば次の方法を適用することができる。
ポリアミド樹脂(A)と、耐衝撃材(B)と、必要に応じて含まれる酸化防止剤との混合には、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機が用いられる。例えば、二軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法など、いずれの方法を用いてもよい。混練時に高いせん断力を付与することで、緩和時間を所定の範囲に調整しやすくなるため、好ましい。特に、二軸の押出機を用いることが、本発明の方法において好ましい。
二軸押出機は、フルフライト、ニーディングディスク等の長さや形状的特徴が異なるスクリューセグメントが組み合わされて構成されたスクリューを平行に2本配置した構成を有する。二軸押出機では、上流側から供給された原材料が回転するスクリューの長軸方向に沿って混錬されつつ押し出され、下流側から溶融樹脂が吐出される。二軸押出機を使用する場合、混練性の向上の点から、スクリュー長さLとスクリュー直径Dの比であるL/Dの値が45以上50未満であることが好ましい。スクリュー長さとは、スクリュー根元の原料が供給される位置(フィード口)にあるスクリューセグメントの上流側の端部から、吐出側のスクリュー先端部までの長さである。本発明の一態様は、スクリュー長さとスクリュー径の比L/Dが45以上50未満であって、複数個所で溶融混錬することのできる複数のニーディングディスクを備えたスクリューを有する二軸混錬機で上記ポリアミド樹脂(A)及び耐衝撃材(B)を溶融混錬する工程を含む、ポリアミド樹脂組成物の製造方法である。
二軸押出機を使用する場合、二軸押出機のスクリューとしては、特に制限はなく、完全噛み合い型、不完全噛み合い型、非噛み合い型等のスクリューを使用することができる。混練性、反応性の観点から、完全噛み合い型スクリューであることが好ましい。また、スクリューの回転方向としては、同方向、異方向どちらでもよいが、同方向に回転するようにすることが好ましい。
二軸押出機を使用する場合には、ポリアミド樹脂組成物の押出量が、スクリュー1rpm当たり0.01kg/h以上であることが好ましく、より好ましくは0.05kg/h〜1kg/h、さらに好ましくは0.1〜0.5kg/h、である。ここでの「押出量」とは、押出機から1時間当たり吐出されるポリアミド樹脂組成物の重量を意味する。なお、上記二軸押出機における押出量に関わる数値範囲は、スクリュー直径37mmの二軸押出機の押出量を基準とするものである。スクリュー直径が異なる二軸押出機を使用する場合、押出量は、スクリューの直径比に対して、好ましくは2.5乗則又は3乗則、より好ましくは2.5乗則に従って変動するものとして、近似することができる。
二軸押出機により混錬する際のシリンダー温度は、ポリアミド樹脂組成物中の全成分が溶融状態を保つことができる温度であれば特に制限されない。ポリアミド樹脂又は対衝撃剤の種類に応じて適宜設定することができるが、200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、240℃以上であることが更に好ましい。
また、スクリューの回転速度にも特に制限はないが、50rpm以上、好ましくは75rpm以上、さらに好ましくは100rpm以上である。スクリューの回転速度は、所望の押出量、溶融混錬する際のシリンダー温度に合わせて、当業者であれば適宜設定することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、成形性に優れる流動性を有することから、ブロー成形による成形品の製造に好適に用いることができる。
ポリアミド樹脂からブロー成形により成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。一般的には、通常のブロー成形機を用いパリソンを形成した後、ブロー成形を実施すればよい。パリソン形成時の好ましい樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物の融点より10℃から70℃高い温度範囲で行うことが好ましい。
また、ポリエチレンなどのポリオレフィンや他の熱可塑性樹脂と共押出した後、ブロー成形を行い、多層構造体を得ることも可能である。その場合ポリアミド樹脂組成物層とポリオレフィンなどの他の熱可塑性樹脂層の間に接着層を設けることも可能である。多層構造体の場合、本発明のポリアミド樹脂組成物は外層、内層のいずれにも使用し得る。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
固体NMR(13C)の分析方法
以下の装置、方法により13C NMR測定を行い、緩和時間を得た。
装置:日本電子製ECA400
測定法:Torchia法
観測周波数:98.5MHz
パルス幅:3.0μsec(13C)
コンタクトタイム:1msec
繰返時間:10sec
インターバル(τ):16sec、19sec、23sec、28sec、33sec、40sec(計6点)
積算回数:496回
温度:室温
MAS速度:6kHz
基準物質:アダマンタンを外部基準(29.472ppm)とする
緩和時間解析:線形法による2成分解析による
成分(A):ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂として、以下のポリアミドを用いた。
・脂肪族ホモポリアミド
ポリアミド6−1:(宇部興産(株)製 UBEナイロン(登録商標) SF1018A)
ポリアミド6−2:(宇部興産(株)製 UBEナイロン(登録商標) 1013B)
ポリアミド6−3:(宇部興産(株)製 UBEナイロン(登録商標) 1013B−MBL)
・共重合ポリアミド
ポリアミド6/66:(宇部興産(株)製 UBEナイロン(登録商標) 5034B)
ポリアミド6T/6I:(エスケミージャパン株式会社製、グリボリー(登録商標)G21)
成分(B):耐衝撃材
耐衝撃材として、市販されている以下の重合体を用いた。
エチレン−ヘキセン共重合体 (株式会社プライムポリマー製、エボリュー(登録商標)SP0540)
無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体 (三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)MH5020)
<実施例1,2>
表1に記載した各成分を二軸混練機TEX44HCT(シリンダー径44mm、スクリューのL/D48(実施例1)、46(実施例2))で、シリンダー温度250℃、スクリュー回転120rpm、押出量40kg/hにて複数箇所にて溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。
なお、表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
次に、得られたペレットを用いて、上述の測定方法に従って固体13C NMR測定を行い、ポリアミド樹脂由来のカルボニル炭素の緩和時間T C1及びポリアミド樹脂由来のNH基に隣接する炭素の緩和時間T C2をそれぞれ得た。結果を表1に示す。
<比較例1>
表1に記載した各成分を二軸混練機TEX44HCT(シリンダー径44mm、スクリューのL/D44)で、シリンダー温度250℃、スクリュー回転120rpm、押出量40kg/hにて単一箇所にて溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。
なお、表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
<流動性の測定>
流動性の評価として、ASTM D1238に準拠して、温度280℃、荷重2160gでMFRを測定した。
結果を表1に示す。
Figure 2021080344
表1より、一定範囲の緩和時間を有する本発明のポリアミド樹脂組成物は、MFRが高くなり、流動性に長けていることが明らかとなった。一方、比較例の樹脂組成物は、各々の緩和時間が大きく、MFRが小さくなり、流動性が低くなるため、成形においては不利であることが分かった。

Claims (7)

  1. ポリアミド樹脂(A)及び耐衝撃材(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、該組成物の固体NMR測定による炭素核の緩和時間が以下の条件:
    (a1)ポリアミド樹脂(A)のカルボニル基の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち、長いほうの緩和時間T C1が15〜45秒の範囲である
    (a2)ポリアミド樹脂(A)のNH基に隣接した炭化水素基由来の炭素に対応する炭素核の緩和時間の2成分解析における2つの緩和時間のうち、長いほうの緩和時間T C2が38秒以下である
    をともに満たす、ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記緩和時間T C1及びT C2の差の絶対値|T C1−T C2|が2〜8秒である、請求項1記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド樹脂(A)の総量に対してポリアミド6を60質量%以上含むものである、請求項1又は2記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. ポリアミド樹脂(A)が、ポリアミド6及び共重合ポリアミドの組合せである、請求項1又は2記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記共重合ポリアミドが、脂肪族共重合ポリアミド又は部分芳香族共重合ポリアミドである、請求項4記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. ポリアミド樹脂組成物の総量に対する耐衝撃材(B)の含有量が5〜20質量%の範囲である、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. スクリュー長さLとスクリュー径Dの比L/Dが45以上50未満であって、複数箇所で溶融混錬することのできるスクリューを有する二軸混錬機でポリアミド樹脂(A)及び耐衝撃材(B)を溶融混錬する工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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