JP2021095487A - 樹脂材料、摩擦材、および樹脂材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】摩擦相手部材に発生した錆による当該摩擦相手部材との固着(錆固着)を低減できる摩擦材を製造するための樹脂材料、および当該樹脂材料からなる摩擦材を提供する。【解決手段】フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つを含む縮合リン酸塩と、を含む摩擦材用の樹脂材料。【選択図】なし
Description
本発明は、樹脂材料およびその製造方法、ならびに摩擦材に関する。より詳細には、摩擦材を製造するために用いられる樹脂材料、当該樹脂材料の製造方法、ならびに当該樹脂材料を用いて製造された摩擦材に関する。
自動車等には、その制動のためにディスクブレーキパッド、ブレーキライニング等の摩擦部材が使用されている。摩擦部材は、ディスクローター、ブレーキドラム等の摩擦相手部材と摩擦することにより、制動の役割を果たしている。そのため、摩擦部材には、良好な摩擦係数、耐摩耗性(摩擦材の寿命が長いこと)、強度、音振性(ブレーキ鳴きや異音が発生しにくいこと)等が要求される。摩擦係数は、車速、減速度やブレーキ温度によらず安定であることが要求される。また、摩擦部材と摩擦相手部材との摩擦界面で発生した錆によって、摩擦部材が摩擦相手部材と固着し、発車時の異音発生や摩擦部材の表面剥離(錆剥離)などの問題が生じる場合がある。
ディスクブレーキパッドのような摩擦部材は、鉄またはアルミニウム製のプレッシャープレート(金属板)に、接着剤を用いて摩擦材を接合することにより製造される。このプレッシャープレートの表面に錆が発生すると、プレッシャープレートと摩擦材との接着強度が低下する場合があった。このようなプレッシャープレートにおける錆の発生の対策としては、摩擦部材の作製のために用いられる接着剤に、防錆剤として、リン酸塩、ポリリン酸塩、またはトリポリリン酸塩を配合する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、ブレーキパッドとプレッシャープレートとを接着するために用いられる粉体接着剤に、トリポリリン酸アルミニウム等の縮合リン酸塩を配合することにより、プレッシャープレートに対して防錆効果を有する接着剤を得ている。
一方、摩擦材自体に防錆能を付与する技術も提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2には、鉄系金属とフェノール樹脂とを含む摩擦材用樹脂組成物に、防錆剤としてのリン酸塩を配合することにより発錆が低減された摩擦材を得る技術が開示されている。
本発明者が検討した結果、特許文献2の摩擦材において、摩擦材と金属製の摩擦相手部材との錆固着を低減させる点においてさらなる改善の余地があることが判明した。
本発明は、摩擦相手部材に発生した錆による当該摩擦相手部材との固着(錆固着)を低減できる摩擦材を製造するための樹脂材料、および当該樹脂材料からなる摩擦材を提供することを目的とする。
本発明者は、特定の縮合リン酸塩を用いることにより、摩擦相手部材との錆固着が低減された摩擦材を作製するための樹脂材料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、
フェノール樹脂と、
ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つを含む縮合リン酸塩と、を含む摩擦材用の樹脂材料が提供される。
フェノール樹脂と、
ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つを含む縮合リン酸塩と、を含む摩擦材用の樹脂材料が提供される。
また本発明によれば、上記樹脂材料を含む摩擦材が提供される。
さらに本発明によれば、
フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む、摩擦材用の樹脂材料を製造するための方法であって、
フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つのリン酸塩とを含む樹脂組成物を調製する工程と、
前記フェノール樹脂が溶融するように前記樹脂組成物を加熱し、前記フェノール樹脂と前記ポリリン酸を混練する工程と、を含む樹脂材料の製造方法が提供される。
フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む、摩擦材用の樹脂材料を製造するための方法であって、
フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つのリン酸塩とを含む樹脂組成物を調製する工程と、
前記フェノール樹脂が溶融するように前記樹脂組成物を加熱し、前記フェノール樹脂と前記ポリリン酸を混練する工程と、を含む樹脂材料の製造方法が提供される。
本発明によれば、摩擦相手材との錆固着が低減された摩擦材を作製するための樹脂材料、および摩擦相手材との錆固着が低減された摩擦材、ならびにこのような樹脂材料の製造方法が提供される。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(樹脂材料)
本実施形態の樹脂材料は、摩擦材を製造するために用いられるものであり、フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む。本実施形態の樹脂材料は、ポリリン酸塩またはメタリン酸塩を含む縮合リン酸塩を含むことにより、摩擦相手部材に発生した錆による固着(錆固着)が低減された摩擦材の材料として使用できる樹脂材料を得ることができる。以下に各成分について説明する。
本実施形態の樹脂材料は、摩擦材を製造するために用いられるものであり、フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む。本実施形態の樹脂材料は、ポリリン酸塩またはメタリン酸塩を含む縮合リン酸塩を含むことにより、摩擦相手部材に発生した錆による固着(錆固着)が低減された摩擦材の材料として使用できる樹脂材料を得ることができる。以下に各成分について説明する。
(縮合リン酸塩)
本実施形態の樹脂材料に用いられる縮合リン酸塩は、ポリリン酸塩またはメタリン酸塩、あるいはこれらの組み合せである。ポリリン酸塩としては、トリポリリン酸塩が挙げられる。縮合リン酸塩としては、縮合リン酸アルミニウムが挙げられ、具体的には、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウムが挙げられる。
本実施形態の樹脂材料に用いられる縮合リン酸塩は、ポリリン酸塩またはメタリン酸塩、あるいはこれらの組み合せである。ポリリン酸塩としては、トリポリリン酸塩が挙げられる。縮合リン酸塩としては、縮合リン酸アルミニウムが挙げられ、具体的には、ポリリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウムが挙げられる。
縮合リン酸塩は、樹脂材料全体に対して、例えば、3質量%以上50質量%以下の量で用いられ、好ましくは、5質量%以上30質量%以下の量で用いられる。縮合リン酸塩を上記範囲内の量で用いることにより、この樹脂材料を用いて製造される摩擦材は、摩擦相手部材との錆固着が全く生じないか、または使用上問題がない程度に低減される。
(フェノール樹脂)
本実施形態の樹脂材料に用いられるフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂が好適に用いられる。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒下で反応させて得られるフェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック型樹脂、クレゾールノボラック型樹脂、レゾルシンノボラック型樹脂、キシレノールノボラック型樹脂、アルキルフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、ビスフェノールAノボラック型樹脂、フェノールアラルキルノボラック型樹脂、フェノールジフェニルアラルキルノボラック型樹脂、フェノールナフタレンノボラック型樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型樹脂、及びカシューナッツ油、テルペン、トール油、ロジン、ゴム等によるノボラック型変性フェノール樹脂などが挙げられる。
本実施形態の樹脂材料に用いられるフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂が好適に用いられる。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒下で反応させて得られるフェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック型樹脂、クレゾールノボラック型樹脂、レゾルシンノボラック型樹脂、キシレノールノボラック型樹脂、アルキルフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、ビスフェノールAノボラック型樹脂、フェノールアラルキルノボラック型樹脂、フェノールジフェニルアラルキルノボラック型樹脂、フェノールナフタレンノボラック型樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型樹脂、及びカシューナッツ油、テルペン、トール油、ロジン、ゴム等によるノボラック型変性フェノール樹脂などが挙げられる。
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、カルダノール等の1価フェノール置換体、1−ナフトール、2−ナフトール等の1価のフェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類、フェノール系化合物を含有するカシューナッツ油等の油脂類が挙げられる。フェノール類は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラキシレンジメチルエーテル等が挙げられる。アルデヒド類は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述のフェノール類とアルデヒド類とを反応させてノボラック型フェノール樹脂を合成する方法において、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)は、0.5〜0.9であることが好ましく、0.55〜0.87であることがより好ましい。モル比を上記範囲とすることにより、得られる反応生成物がゲル化することなく、所望の分子量を有するフェノール樹脂を得ることができる。
ノボラック型フェノール樹脂の合成に用いられる酸触媒としては、例えば、シュウ酸などの有機酸、塩酸、硫酸、燐酸などの鉱物酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸などが挙げられる。
(樹脂材料の製造方法)
本実施形態の樹脂材料は、フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む樹脂組成物を調製する工程と、前記フェノール樹脂が溶融するように前記樹脂組成物を加熱し、前記フェノール樹脂と前記ポリリン酸を混練する工程と、を含む方法により製造される。
本実施形態の樹脂材料は、フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む樹脂組成物を調製する工程と、前記フェノール樹脂が溶融するように前記樹脂組成物を加熱し、前記フェノール樹脂と前記ポリリン酸を混練する工程と、を含む方法により製造される。
本実施形態の樹脂材料は、フェノール樹脂と上述の縮合リン酸塩とを溶融混練して製造されるため、フェノール樹脂中に縮合リン酸塩が分散している。そのため、得られる樹脂材料は、優れた耐錆固着性を有する
本実施形態の樹脂材料は、フェノール樹脂の硬化のための、硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。中でも、得られる硬化物の耐熱性の観点から、ヘキサメチレンテトラミンを用いることが好ましい。
本実施形態の樹脂材料は、硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、フタル酸などのジカルボン酸、無機塩基性化合物、有機塩基性化合物である塩基性化合物などが挙げられる。また、これらは、単独でかまたは複数を組み合わせて使用することができる。
上記硬化触媒の配合割合としては、特に限定されないが、樹脂材料全体に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。硬化触媒の配合割合が上記下限値以上であれば、樹脂の硬化が十分に促進される。一方、上記上限値以下であれば、摩擦材成形時に樹脂材料の流動性が低下することなく、良好な機械的強度を有する摩擦材を得ることができる。
硬化触媒として用いられる無機塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、及び/またはアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられ、これらの具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムが挙げられる。また、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用して用いることもできる。
硬化触媒として用いられる有機塩基性化合物としては、脂肪族または脂環族の、第一級、第二級または第三級アミン、芳香環を有する脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、含窒素芳香複素環化合物、イミダゾ−ル類、スルフェンアミド類、チアゾ−ル類、アゾ化合物などの複素環式化合物が挙げられる。
硬化触媒として用いられる有機塩基性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノ−ルアミン、n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、エチレンジアミン、アニリン、メチルアニリン、1−アミノアダマンタン、4−アミノジフェニルアミン、1−ナフチルアミン、オクタデシルアミン、ジフェニルアミン、N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、イミダゾ−ル類、スルフェンアミド類、チアゾ−ル類、2−メチルイミダゾ−ル、2−ウンデシルイミダゾ−ル、2−ヘプタデシルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾ−ル、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾ−ル、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリンスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モリホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、環状ポリアミンなどが挙げられる。これらは単独でかまたは2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、得られる樹脂材料が向上した機械的強度を有することから、2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、及びジアザビシクロウンデセン等の含窒素芳香複素環化合物を用いることが好ましい。これらの硬化触媒は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用して用いることもできる。
本実施形態の樹脂材料は、例えば、摩擦材として使用する場合、フィラーを含んでもよい。フィラーとしては、繊維基材や充填材が挙げられる。
繊維基材としては、例えば、スチール繊維、銅繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維などの無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維が挙げられる。また、これらは単独でかまたは複数を組み合わせて使用することができる。繊維基材は、得られる樹脂材料が、摩擦材として使用するのに十分な機械強度を有するように、樹脂材料全体に対して、1質量%以上20質量%以下、好ましくは、5質量%以上15質量%以下の量で使用され得る。
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、雲母、アブレーシブ、カリオン、タルクなどの無機充填材、カシューダスト、ラバーダストなどの有機充填材、グラファイト、三流化アンチモン、二硫化モリブデン、二硫化亜鉛などの潤滑材が挙げられる。また、これらは単独でかまたは複数を組み合わせて使用することができる。充填材の含有量は、所望の摩擦特性や耐摩耗性に応じて適宜調整することができる。充填材の含有量は、樹脂材料全体に対して、例えば、50質量%以上90質量%以下であり、好ましくは、60質量%以上90質量%以下である。
(摩擦材の製造)
本実施形態の摩擦材は、上述の樹脂材料を硬化することにより製造することができる。例えば、上述の樹脂材料を、熱硬化することにより摩擦材を製造することができ、より具体的には、上述の樹脂材料を金型に充填し、130℃〜180℃、10〜100MPaの条件で、5〜20分間、加熱圧縮成形し、その後、必要に応じて160℃〜250℃でポストキュアー処理をすることにより製造することができる。
本実施形態の摩擦材は、上述の樹脂材料を硬化することにより製造することができる。例えば、上述の樹脂材料を、熱硬化することにより摩擦材を製造することができ、より具体的には、上述の樹脂材料を金型に充填し、130℃〜180℃、10〜100MPaの条件で、5〜20分間、加熱圧縮成形し、その後、必要に応じて160℃〜250℃でポストキュアー処理をすることにより製造することができる。
本実施形態の摩擦材は、例えば、ブレーキパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等として好適に使用することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<樹脂材料の調製>
(実施例1)
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポリリン酸アルミニウム333部を加圧ニーダー中で90℃まで昇温して、10分間混練した。その後混練物を取り出し冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Aを得た。
(実施例1)
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポリリン酸アルミニウム333部を加圧ニーダー中で90℃まで昇温して、10分間混練した。その後混練物を取り出し冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Aを得た。
(実施例2)
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポルリン酸アルミニウム111質量部を90℃に加温した二本ロールを用い、5分間混練した。その後混練物を取り出し冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Bを得た。
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポルリン酸アルミニウム111質量部を90℃に加温した二本ロールを用い、5分間混練した。その後混練物を取り出し冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Bを得た。
(実施例3)
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、メタリン酸アルミニウム250質量部を入口温度80℃、出口温度90℃に制御された二軸押出機へ単位時間当たりの供給比率が等しくなるよう供給し、出口から出てきた混練物を冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Cを得た。
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、メタリン酸アルミニウム250質量部を入口温度80℃、出口温度90℃に制御された二軸押出機へ単位時間当たりの供給比率が等しくなるよう供給し、出口から出てきた混練物を冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Cを得た。
(実施例4)
表1に示す配に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポリリン酸アルミニウム333質量部、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部を、温度25℃、レディゲミキサーを用いて粉砕混合し、樹脂材料Dを得た。
表1に示す配に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポリリン酸アルミニウム333質量部、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部を、温度25℃、レディゲミキサーを用いて粉砕混合し、樹脂材料Dを得た。
(実施例5)
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポリリン酸アルミニウム31質量部を加圧ニーダー中で90℃まで昇温して、10分間混練した。その後混練物を取り出し冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Eを得た。
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000質量部、ポリリン酸アルミニウム31質量部を加圧ニーダー中で90℃まで昇温して、10分間混練した。その後混練物を取り出し冷却した後、温度25℃、レディゲミキサーを用いて、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100質量部と単純混合し、樹脂材料Eを得た。
(比較例1)
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000部、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100部を、温度25℃、レディゲミキサーを用いて単純混合し、樹脂材料Fを得た。
表1に示す配合に従って、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195、住友ベークライト株式会社製)1000部、ヘキサメチレンテトラミン(三菱ガス化学株式会社製)100部を、温度25℃、レディゲミキサーを用いて単純混合し、樹脂材料Fを得た。
<摩擦材の製造>
実施例1〜5および比較例1の樹脂材料A〜Fを用いて、表2に示す原料を混合したものを150℃で8分間熱成形し、その後200℃で5時間熱処理して、摩擦材を製造した。
実施例1〜5および比較例1の樹脂材料A〜Fを用いて、表2に示す原料を混合したものを150℃で8分間熱成形し、その後200℃で5時間熱処理して、摩擦材を製造した。
得られた摩擦材について、以下の項目について評価した。
(耐錆固着性)
上記の摩擦材について、錆固着試験を行い、耐錆固着性を評価した。錆固着試験はJIS D4414−2に準拠して、摩擦面と平行で摩擦材のしゅう動方向に押して、相手材からはがしたときの最大荷重(N/mm2)を測定した。最大荷重の値が、40N/mm2以下の場合を「◎」(錆固着がまったくない)、40N/mm2を超え55N/mm2以下の場合を「〇」(錆固着がわずかにあるが、使用上問題ない)、55N/mm2を超え60N/mm2以下の場合を「×」(錆固着あり)、として評価した。結果を表2に示す。
(耐錆固着性)
上記の摩擦材について、錆固着試験を行い、耐錆固着性を評価した。錆固着試験はJIS D4414−2に準拠して、摩擦面と平行で摩擦材のしゅう動方向に押して、相手材からはがしたときの最大荷重(N/mm2)を測定した。最大荷重の値が、40N/mm2以下の場合を「◎」(錆固着がまったくない)、40N/mm2を超え55N/mm2以下の場合を「〇」(錆固着がわずかにあるが、使用上問題ない)、55N/mm2を超え60N/mm2以下の場合を「×」(錆固着あり)、として評価した。結果を表2に示す。
実施例1〜5の樹脂材料は、比較例と比べて、錆固着性を示す最大荷重が大きく減少しており、耐錆固着性に優れていることが分かった。
Claims (7)
- フェノール樹脂と、
ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つを含む縮合リン酸塩と、を含む摩擦材用の樹脂材料。 - 前記ポリリン酸塩が、トリポリリン酸塩を含む、請求項1に記載の樹脂材料。
- 前記ポリリン酸塩が、ポリリン酸アルミニウムを含む、請求項1または2に記載の樹脂材料。
- 前記メタリン酸塩が、メタリン酸アルミニウムを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂材料。
- 前記縮合リン酸塩が、当該樹脂材料全体に対して、3質量%以上50質量%以下の量である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂材料。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂材料を含む摩擦材。
- フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む、摩擦材用の樹脂材料を製造するための方法であって、
フェノール樹脂と、ポリリン酸塩およびメタリン酸塩から選択される少なくとも1つの縮合リン酸塩とを含む樹脂組成物を調製する工程と、
前記フェノール樹脂が溶融するように前記樹脂組成物を加熱し、前記フェノール樹脂と前記ポリリン酸を混練する工程と、を含む樹脂材料の製造方法。
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JP2019227189A JP2021095487A (ja) | 2019-12-17 | 2019-12-17 | 樹脂材料、摩擦材、および樹脂材料の製造方法 |
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WO2023085286A1 (ja) * | 2021-11-10 | 2023-05-19 | 曙ブレーキ工業株式会社 | 摩擦材 |
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