JP2020169245A - 摩擦材用熱硬化性樹脂組成物および摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【課題】その硬化物が耐熱性および耐摩耗性に優れ、低コストで製造できる熱硬化性樹脂組成物、ならびに当該熱硬化性樹脂組成物から製造される摩擦材を提供する。【解決手段】フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンと、メラミン、メラミンシアヌレート、グアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、および炭酸グアニジンからなる群より選択される少なくとも1つのトリアジン化合物と、を含む摩擦材用熱硬化性樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、摩擦材用熱硬化性樹脂組成物および摩擦材に関する。より詳細には、ブレーキパッド等の摩擦材の材料として用いられる熱硬化性樹脂組成物、およびそれを用いて製造される摩擦材に関する。
フェノール樹脂は、耐熱性、機械的強度、成型加工性などにおいて優れた特性を有していることから、従来より、成型材料として使用されたり、または接着、含浸等の加工を経て、各種工業材料用として使用されてきた。近年、耐熱性や耐久性の向上の要求は、高温で使用する材料、例えば自動車用摩擦材などで更に高まり、摩擦材に使用される基材も、従来のガラスの様な無機繊維に代わり、耐熱性の高いアラミド繊維やカーボン繊維などが普及している。そのため、摩擦材の結合剤として使用されるフェノール樹脂に対しても、このような耐熱性の高い繊維に適合可能であるとともに、耐熱性や耐久性のさらなる向上が要求されてきた。これらの要求に応えるため、フェノール樹脂を改質(変性)し、耐熱性を改善するための様々な技術が開発されている。
摩擦材の耐熱性を改善するための技術として、例えば、特許文献1では、ビスフェノールと、トリアジンと、アルデヒド類と、ノボラック型フェノール樹脂とを反応させて得られるトリアジン変性レゾール型フェノール樹脂を用いて、耐熱性に優れた摩擦材を製造する方法が開示されている。
摩擦材の耐摩耗性を改善するための技術として、例えば、特許文献2では、メラミン樹脂硬化物を用いる技術が提案されている。
しかし、本発明者が検討した結果、特許文献1の摩擦材において、その耐摩耗性において改善の余地があることが判明した。また、特許文献2に記載の摩擦材は、高価なメラミン樹脂を用いているため、製造コストの点で不利であった。
本発明は、優れた耐熱性および耐摩耗性を有するとともに、製造コストが低く、摩擦材として好適に使用できる熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、特定のトリアジン化合物を用いることにより、その硬化物が耐熱性および耐摩耗性に優れた熱樹脂組成物を低コストで得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、
フェノール樹脂と、
ヘキサメチレンテトラミンと、
メラミン、メラミンシアヌレート、グアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、および炭酸グアニジンからなる群より選択される少なくとも1つのトリアジン化合物と、を含む摩擦材用熱硬化性樹脂組成物が提供される。
フェノール樹脂と、
ヘキサメチレンテトラミンと、
メラミン、メラミンシアヌレート、グアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、および炭酸グアニジンからなる群より選択される少なくとも1つのトリアジン化合物と、を含む摩擦材用熱硬化性樹脂組成物が提供される。
また本発明によれば、上記摩擦材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる摩擦材が提供される。
本発明によれば、その硬化物が耐熱性および耐摩耗性に優れ、低コストで製造できる熱硬化性樹脂組成物、ならびに当該熱硬化性樹脂組成物から製造される摩擦材が提供される。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(摩擦材用熱硬化性樹脂組成物)
本実施形態の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物(以下、「熱硬化性樹脂組成物」とも称する)は、フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンと、トリアジン化合物とを含む。本実施形態において、トリアジン化合物は、メラミン、メラミンシアヌレート、グアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、または炭酸グアニジン、あるいはこれらの組み合せである。
本実施形態の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物(以下、「熱硬化性樹脂組成物」とも称する)は、フェノール樹脂と、ヘキサメチレンテトラミンと、トリアジン化合物とを含む。本実施形態において、トリアジン化合物は、メラミン、メラミンシアヌレート、グアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、または炭酸グアニジン、あるいはこれらの組み合せである。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記成分を組み合わせて含むことにより、その硬化物が耐摩耗性および耐熱性に優れる。この理由は必ずしも明らかではないが、高温(たとえば、300℃以上)下では、硬化物中に含まれるトリアジン化合物が熱分解してガス化して、生成した不活性なガスが硬化物の酸化分解を抑制し、硬化物自体の摩耗量が低減されるためと考えられる。また当該熱硬化性樹脂組成物は、高価なメラミン樹脂を含まないため、低コストで製造できる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられるフェノール樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂が好適に用いられる。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸触媒下で反応させて得られるフェノール樹脂である。ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノールノボラック型樹脂、クレゾールノボラック型樹脂、レゾルシンノボラック型樹脂、キシレノールノボラック型樹脂、アルキルフェノールノボラック型樹脂、ナフトールノボラック型樹脂、ビスフェノールAノボラック型樹脂、フェノールアラルキルノボラック型樹脂、フェノールジフェニルアラルキルノボラック型樹脂、フェノールナフタレンノボラック型樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型樹脂、及びカシューナッツ油、テルペン、トール油、ロジン、ゴム等より得られるノボラック型変性フェノール樹脂などが挙げられる。
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール、p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、カルダノール等の1価フェノール置換体、1−ナフトール、2−ナフトール等の1価のフェノール類、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ジヒドロキシナフタリン等の多価フェノール類、フェノール系化合物を含有するカシューナッツ油等の油脂類が挙げられる。フェノール類は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ノボラック型フェノール樹脂を合成するために用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド、パラキシレンジメチルエーテル等が挙げられる。アルデヒド類は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述のフェノール類とアルデヒド類とを反応させてノボラック型フェノール樹脂を合成する方法において、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)は、0.5〜0.9であることが好ましく、0.55〜0.87であることがより好ましい。モル比を上記範囲とすることにより、得られる反応生成物がゲル化することなく、所望の分子量を有するフェノール樹脂を得ることができる。
ノボラック型フェノール樹脂の合成に用いられる酸触媒としては、例えば、シュウ酸などの有機酸、塩酸、硫酸、燐酸などの鉱物酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、パラフェノールスルホン酸などが挙げられる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、ヘキサメチレンテトラミンを含む。ヘキサメチレンテトラミンを含むことにより、フェノール樹脂の硬化が促進される。
ヘキサメチレンテトラミンの量は、フェノール樹脂に対して、好ましくは、2質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは、5質量%以上17質量%以下であり、さらに好ましくは、8質量%以上15質量%以下である。ヘキサメチレンテトラミンの配合量が上記下限値未満では、フェノール樹脂の硬化が不十分になる場合があり、また、上記上限値を超えると、ヘキサメチレンテトラミンの分解により発生するガスにより、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物に亀裂や膨れが生じる場合がある。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、トリアジン化合物を含む。トリアジン化合物は、フェノール樹脂に対して反応性の基を有さず、よってフェノール樹脂と反応せず、フェノール樹脂中に分散され得る化合物である。フェノール樹脂中に分散されたトリアジン化合物は、300℃を超える高温環境下では熱分解してガス化する。このようにして生成した不活性なガスは、硬化物の酸化分解を抑制し、これにより硬化物中のフェノール樹脂の摩耗が抑制される。よって、高温環境下で摩擦した場合の、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の摩耗量が低減し得る。このようなトリアジン化合物としては、メラミン、メラミンシアヌレート、グアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、および炭酸グアニジンが挙げられる。
トリアジン化合物の量は、フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは、10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは、12質量部以上45質量部以下であり、さらにより好ましくは、15質量部以上42質量部以下である。トリアジン化合物の量が上記範囲内であれば、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、摩擦材として使用するのに適切な程度の耐摩耗性を備え得る。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、従来の摩擦材に使用されていたメラミン樹脂を実質的に含まない。メラミン樹脂は高価であるため、これを用いることは、従来の摩擦材用樹脂組成物のコスト上昇につながっていた。しかし、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、高価なメラミン樹脂を含まないため、低コストで製造することができる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、上述のトリアジン化合物が、上述のフェノール樹脂に分散されていることに起因して、その硬化物の5%重量減少温度が250℃以上350℃以下の範囲であり得る。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、例えば、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとトリアジン化合物を溶融混合する方法、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとトリアジン化合物とを溶融混合した後に粉砕する方法、各々粉砕されたフェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとトリアジン化合物とを乾式混合する方法、あるいは、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとメラミン化合物とを同時に粉砕して混合する方法、などにより調製することができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ブレーキ―パッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシングといった摩擦材の製造に好適に用いることができる。摩擦材は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を、例えば、150℃の温度下でプレス成形することにより製造することができる。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、高価なメラミン樹脂を含まないため、低コストで製造できる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、安息香酸、サリチル酸などの芳香族カルボン酸、フタル酸などのジカルボン酸、無機塩基性化合物、有機塩基性化合物である塩基性化合物などが挙げられる。また、これらは、単独でかまたは複数を組み合わせて使用することができる。
上記硬化触媒の配合割合としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。硬化触媒の配合割合が上記下限値以上であれば、樹脂の硬化が十分に促進される。一方、上記上限値以下であれば、成形時に組成物の流動性が低下することなく、良好な機械的強度を有する硬化物を得ることができる。
硬化触媒として用いられる無機塩基性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、及び/またはアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられ、これらの具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化アルミニウムが挙げられる。また、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用して用いることもできる。
硬化触媒として用いられる有機塩基性化合物としては、脂肪族または脂環族の、第一級、第二級または第三級アミン、芳香環を有する脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、含窒素芳香複素環化合物、イミダゾ−ル類、スルフェンアミド類、チアゾ−ル類、アゾ化合物などの複素環式化合物が挙げられる。
硬化触媒として用いられる有機塩基性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノ−ルアミン、n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジプロピルアミン、エチレンジアミン、アニリン、メチルアニリン、1−アミノアダマンタン、4−アミノジフェニルアミン、1−ナフチルアミン、オクタデシルアミン、ジフェニルアミン、N−イソプロピル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、フェニルアミン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、イミダゾ−ル類、スルフェンアミド類、チアゾ−ル類、2−メチルイミダゾ−ル、2−ウンデシルイミダゾ−ル、2−ヘプタデシルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾ−ル、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾ−ル、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾ−ル、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−s−トリアジン、N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリンスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モリホリノチオ)ベンゾチアゾール、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、環状ポリアミンなどが挙げられる。これらは単独でかまたは2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、熱硬化性樹脂組成物の硬化物が向上した機械的強度を有することから、2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1')]−エチル−s−トリアジン、及びジアザビシクロウンデセン等の含窒素芳香複素環化合物を用いることが好ましい。これらの硬化触媒は、1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用して用いることもできる。
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、フィラーを含んでもよい。フィラーとしては、繊維基材や充填材が挙げられる。
繊維基材としては、例えば、スチール繊維、銅繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維などの無機繊維、アラミド繊維などの有機繊維が挙げられる。また、これらは単独でかまたは複数を組み合わせて使用することができる。繊維基材は、得られる硬化物が摩擦材として使用するのに十分な機械強度を有するように、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、1質量%以上20質量%以下、好ましくは、5質量%以上15質量%以下の量で使用され得る。
充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、雲母、アブレーシブ、カリオン、タルクなどの無機充填材、カシューダスト、ラバーダストなどの有機充填材、グラファイト、三流化アンチモン、二硫化モリブデン、二硫化亜鉛などの潤滑材が挙げられる。また、これらは単独でかまたは複数を組み合わせて使用することができる。充填材の含有量は、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物の用途、特に、所望する摩耗特性に応じて適宜調整することができる。充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全体に対して、例えば、50質量%以上90質量%以下であり、好ましくは、60質量%以上90質量%以下である。
(摩擦材の製造)
本実施形態の摩擦材は、上述の熱硬化性樹脂組成物を硬化することにより製造することができる。例えば、上述の熱硬化性樹脂を、熱硬化することにより摩擦材を製造することができ、より具体的には、上述の熱硬化性樹脂組成物を金型に充填し、130℃〜180℃、10〜100MPaの条件で、5〜20分間、加熱圧縮成形し、その後、必要に応じて160℃〜250℃でポストキュアー処理をすることにより製造することができる。
本実施形態の摩擦材は、上述の熱硬化性樹脂組成物を硬化することにより製造することができる。例えば、上述の熱硬化性樹脂を、熱硬化することにより摩擦材を製造することができ、より具体的には、上述の熱硬化性樹脂組成物を金型に充填し、130℃〜180℃、10〜100MPaの条件で、5〜20分間、加熱圧縮成形し、その後、必要に応じて160℃〜250℃でポストキュアー処理をすることにより製造することができる。
本実施形態の摩擦材は、例えば、ブレーキパッド、ブレーキライニング、クラッチフェーシング等として好適に使用することができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例A1〜A2、比較例A1〜A2)
(合成例1:フェノール樹脂の合成)
フェノール1000部、37%ホルマリン570部、蓚酸10部の混合物を、100℃で3時間反応させた後、反応混合物の温度が140℃になるまで、常圧蒸留で脱水し、更に、0.9kPaまで、徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が220℃になるまで減圧蒸留で脱水、脱モノマーし、ノボラック型フェノール樹脂905部を得た。ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は88℃であった。
(合成例1:フェノール樹脂の合成)
フェノール1000部、37%ホルマリン570部、蓚酸10部の混合物を、100℃で3時間反応させた後、反応混合物の温度が140℃になるまで、常圧蒸留で脱水し、更に、0.9kPaまで、徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が220℃になるまで減圧蒸留で脱水、脱モノマーし、ノボラック型フェノール樹脂905部を得た。ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は88℃であった。
(熱硬化性樹脂組成物の調製)
各実施例および各比較例において、フェノール樹脂、メラミンまたはメラミン樹脂、およびヘキサメチレンテトラミンを表1に示す配合量で用い、小型粉砕機で粉砕混合を行い、メディアン径30μmの熱硬化性樹脂組成物を得た。表1中で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
・フェノール樹脂1:合成例1で調製したノボラック型フェノール樹脂
・ヘキサメチレンテトラミン:三菱ガス化学株式会社製、商品名「ヘキサミン」
・メラミン:日産化学工業株式会社製、商品名「メラミン」
・メラミン樹脂:日本カーバイト社製、商品名「ニカレジン S−260」
各実施例および各比較例において、フェノール樹脂、メラミンまたはメラミン樹脂、およびヘキサメチレンテトラミンを表1に示す配合量で用い、小型粉砕機で粉砕混合を行い、メディアン径30μmの熱硬化性樹脂組成物を得た。表1中で用いた材料の詳細は以下のとおりである。
・フェノール樹脂1:合成例1で調製したノボラック型フェノール樹脂
・ヘキサメチレンテトラミン:三菱ガス化学株式会社製、商品名「ヘキサミン」
・メラミン:日産化学工業株式会社製、商品名「メラミン」
・メラミン樹脂:日本カーバイト社製、商品名「ニカレジン S−260」
(熱硬化性樹脂組成物の特性評価)
得られた熱硬化性樹脂組成物A〜Dを200℃で1時間で硬化させて得られた硬化物を、小型粉砕機で粉砕を行いサンプルとし、TG−DTAでサンプル量10mg、昇温速度10℃/min、測定温度範囲30−600℃、空気雰囲気下で、5%重量減少温度(℃)を測定をした。結果を表1に示す。
得られた熱硬化性樹脂組成物A〜Dを200℃で1時間で硬化させて得られた硬化物を、小型粉砕機で粉砕を行いサンプルとし、TG−DTAでサンプル量10mg、昇温速度10℃/min、測定温度範囲30−600℃、空気雰囲気下で、5%重量減少温度(℃)を測定をした。結果を表1に示す。
(実施例B1〜B2、比較例B1〜B2)
(摩擦材の作製)
上記で調製した熱硬化性樹脂組成物、繊維基材としてのアラミド繊維、無機充填剤としての炭酸カルシウム、および硫酸バリウムを、表2に示す配合で混合して、摩擦材用混合物を得た。表2中に記載の材料の詳細は以下のとおりである。
(熱硬化性樹脂組成物)
・熱硬化性樹脂組成物A:実施例A1の熱硬化性樹脂組成物
・熱硬化性樹脂組成物B:実施例A2の熱硬化性樹脂組成物
・熱硬化性樹脂組成物C:比較例A1の熱硬化性樹脂組成物
・熱硬化性樹脂組成物D:比較例A2の熱硬化性樹脂組成物
(繊維基材)
・アラミド繊維:DUPONT社製、商品名「ケブラー」
(無機充填材)
・炭酸カルシウム:三共精粉株式会社製の炭酸カルシウム
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製の簸性硫酸バリウム
(摩擦材の作製)
上記で調製した熱硬化性樹脂組成物、繊維基材としてのアラミド繊維、無機充填剤としての炭酸カルシウム、および硫酸バリウムを、表2に示す配合で混合して、摩擦材用混合物を得た。表2中に記載の材料の詳細は以下のとおりである。
(熱硬化性樹脂組成物)
・熱硬化性樹脂組成物A:実施例A1の熱硬化性樹脂組成物
・熱硬化性樹脂組成物B:実施例A2の熱硬化性樹脂組成物
・熱硬化性樹脂組成物C:比較例A1の熱硬化性樹脂組成物
・熱硬化性樹脂組成物D:比較例A2の熱硬化性樹脂組成物
(繊維基材)
・アラミド繊維:DUPONT社製、商品名「ケブラー」
(無機充填材)
・炭酸カルシウム:三共精粉株式会社製の炭酸カルシウム
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製の簸性硫酸バリウム
得られた摩擦材用混合物を、温度150℃、圧力15MPaで240秒間硬化成形し、その成型体を200℃、3時間で焼成して成形体(摩擦材)を作製した。成形体を、面積4.5cm2の直方体の試験片に加工し、得られた試験片の摩耗性について評価した。
(200℃で摩擦した場合の摩耗量)
得られた試験片に対し、スケールダイナモメーターを用いて摺り合わせ試験を行った。ローターは鋳鉄を用い、1制動は初速度100km/h、制動前ブレーキ温度200℃以下、および減速度5.0m/sec2の条件でブレーキを作動させ、停止するまでとし、同条件で50回制動を実施し、その間の試験片の摩擦量を測定した。摩耗量は、試験前、試験後の試験片の厚みを測定して、摩耗した厚みを摩耗量(μm)とした。結果を「摩耗量(200℃)」として表2に示す。
得られた試験片に対し、スケールダイナモメーターを用いて摺り合わせ試験を行った。ローターは鋳鉄を用い、1制動は初速度100km/h、制動前ブレーキ温度200℃以下、および減速度5.0m/sec2の条件でブレーキを作動させ、停止するまでとし、同条件で50回制動を実施し、その間の試験片の摩擦量を測定した。摩耗量は、試験前、試験後の試験片の厚みを測定して、摩耗した厚みを摩耗量(μm)とした。結果を「摩耗量(200℃)」として表2に示す。
(300℃で摩擦した場合の摩耗量)
得られた試験片に対し、スケールダイナモメーターを用いて摺り合わせ試験を行った。ローターは鋳鉄を用い、1制動は初速度130km/h、制動前ブレーキ温度300℃以下、および減速度5.0m/sec2の条件でブレーキを作動させ、停止するまでとし、同条件で50回制動を実施し、その間の試験片の摩擦量を測定した。摩耗量は、試験前、試験後の試験片の厚みを測定して、摩耗した厚みを摩耗量(μm)とした。結果を「摩耗量(300℃)」として表2に示す。
得られた試験片に対し、スケールダイナモメーターを用いて摺り合わせ試験を行った。ローターは鋳鉄を用い、1制動は初速度130km/h、制動前ブレーキ温度300℃以下、および減速度5.0m/sec2の条件でブレーキを作動させ、停止するまでとし、同条件で50回制動を実施し、その間の試験片の摩擦量を測定した。摩耗量は、試験前、試験後の試験片の厚みを測定して、摩耗した厚みを摩耗量(μm)とした。結果を「摩耗量(300℃)」として表2に示す。
実施例の摩擦材は、300℃で摩擦した場合の摩耗量が、比較例の摩擦材に比べて低減した。
Claims (8)
- フェノール樹脂と、
ヘキサメチレンテトラミンと、
メラミン、メラミンシアヌレート、グアナミン、アジポグアナミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、サクシノグアナミン、メラム、メレム、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、および炭酸グアニジンからなる群より選択される少なくとも1つのトリアジン化合物と、を含む摩擦材用熱硬化性樹脂組成物。 - 前記トリアジン化合物が、前記フェノール樹脂に対して、10質量%以上50質量%以下の量である、請求項1に記載の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂である、請求項1に記載の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物。
- 前記トリアジン化合物が、前記フェノール樹脂中に分散している、請求項1乃至3のいずれかに記載の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物。
- 当該摩擦材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物の5%重量減少温度が、250℃以上350℃以下である、請求項1乃至4のいずれかに記載の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物。
- メラミン樹脂を実質的に含まない、請求項1乃至5のいずれかに記載の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の摩擦材用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる摩擦材。
- ブレーキパッド、ブレーキライニング、またはクラッチフェーシングである、請求項7に記載の摩擦材。
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JP2019070322A JP2020169245A (ja) | 2019-04-02 | 2019-04-02 | 摩擦材用熱硬化性樹脂組成物および摩擦材 |
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---|---|---|---|---|
CN114380967A (zh) * | 2021-12-28 | 2022-04-22 | 常熟耐素生物材料科技有限公司 | 高亚氨基三聚氰胺改性腰果壳油摩擦树脂及其制备方法和应用 |
-
2019
- 2019-04-02 JP JP2019070322A patent/JP2020169245A/ja active Pending
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