JP2023070569A - 摩擦材 - Google Patents

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康典 大橋
Yasunori Ohashi
依里 ▲高▼田
Eri Takada
竜彦 山田
Tatsuhiko Yamada
肇 木村
Hajime Kimura
盛生 米川
Morio Yonekawa
武志 嶋田
Takeshi Shimada
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Tohoku Chemical Industries Ltd
Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology
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Abstract

【課題】摩擦特性および異音抑制に優れる摩擦材を提供すること。【解決手段】バインダーを含有する摩擦材において、バインダーが、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物を含有する。そのため、摩擦材は、優れた摩擦特性を有し、さらに、摩擦による異音(鳴き)を抑制できる。【選択図】なし

Description

本発明は、摩擦材に関する。
摩擦材は、例えば、車両の制動部材に使用されている。制動部材としては、例えば、ブレーキ部材およびクラッチ部材が挙げられる。摩擦材は、例えば、繊維基材、充填材および潤滑剤と、これらを結合するバインダーとを含む。
より具体的には、以下の摩擦材が提案されている。この摩擦材は、バインダーと、繊維基材、充填材および固体潤滑材を含む。バインダーは、ノボラック型フェノール樹脂および硬化剤を含む。ノボラック型フェノール樹脂は、フェノールと、酢酸変性リグニンと、パラホルムアルデヒドとの反応生成物を含む。繊維基材は、アラミド繊維および銅繊維を含む。充填材は、アクリロニトリルブタジエンゴム、カシューダストおよび硫酸バリウムを含む。固体潤滑材は、グラファイトを含む。このような摩擦材は、優れた摩擦特性を有する(例えば、特許文献1(実施例1)参照)。
国際公開第2018/190171号
摩擦材には、摩擦特性に加えて、摩擦による異音(鳴き)の抑制が、要求される。
本発明は、摩擦特性および異音抑制に優れる摩擦材である。
本発明[1]は、バインダーを含有する摩擦材であり、前記バインダーが、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物を含有する、摩擦材を、含んでいる。
本発明[2]は、前記リグニンが、針葉樹系リグニンである、上記[1]に記載の摩擦材を、含んでいる。
本発明[3]は、前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が、400以上である、上記[1]または[2]に記載の摩擦材を、含んでいる。
本発明の摩擦材において、バインダーは、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物を含有する。そのため、摩擦材は、優れた摩擦特性を有し、さらに、摩擦による異音(鳴き)を抑制できる。
本発明の摩擦材は、バインダー(結合剤)を含有している。
バインダー(結合剤)は、ポリエチレングリコール(PEG)により変性されたリグニン(以下、PEG変性リグニンと称する場合がある。)と、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物を含有している。
PEG変性リグニンにおいて、ポリエチレングリコール(PEG)は、リグニンを変性することによって、摩擦材の摩擦特性を向上させ、さらに、異音抑制を抑制させる。
ポリエチレングリコールの数平均分子量は、例えば、100以上、好ましくは、200以上、より好ましくは、300以上、さらに好ましくは、400以上、とりわけ好ましくは、500以上である。また、ポリエチレングリコールの数平均分子量は、例えば、1000以下、好ましくは、900以下、より好ましくは、800以下、さらに好ましくは、600以下である。数平均分子量が上記範囲であれば、摩擦特性および異音抑制を両立する摩擦材が得られ、また、摩擦材の生産性にも優れる。なお、数平均分子量は、公知のゲルパーミエーションクロマトグラム法により、ポリエチレングリコール換算分子量として求めることができる。
PEG変性リグニンにおいて、リグニンは、高分子フェノール性化合物である。リグニンは、天然物(天然リグニン)として、植物全般に含まれている。リグニンの基本骨格としては、例えば、グアイアシルリグニン(G型)、シリンギルリグニン(S型)、および、p-ヒドロキシフェニルリグニン(H型)が挙げられる。
リグニンは、植物材料から工業的に取り出される。植物材料としては、例えば、リグノセルロースが挙げられる。また、リグニンとしては、例えば、ソーダリグニン、サルファイトリグニンおよびクラフトリグニンが挙げられる。また、リグニンを取り出す方法としては、例えば、ソーダ法、亜硫酸法、水蒸気爆砕法、加溶媒分解法、および、クラフト法が挙げられる。
リグニンとして、より具体的には、木本系植物由来リグニン、および、草本系植物由来リグニンが挙げられる。
木本系植物由来リグニンとしては、例えば、針葉樹(例えば、スギなど)に含まれる針葉樹系リグニン、および、広葉樹に含まれる広葉樹系リグニンが挙げられる。なお、木本系植物由来リグニンは、H型の基本骨格を含まない。より具体的には、木本系植物由来リグニンのうち、針葉樹系リグニンは、S型の基本骨格を含まず、G型の基本骨格を有している。また、広葉樹系リグニンは、G型の基本骨格およびS型の基本骨格を有している。
草本系植物由来リグニンとしては、例えば、イネ科植物に含まれるイネ系リグニンが挙げられる。イネ科植物としては、例えば、麦わら、稲わら、とうもろこし、および、タケが挙げられる。なお、草本系植物由来リグニンは、H型、G型およびS型の全ての基本骨格を有している。
これらのリグニンは、単独使用または2種類以上併用することができる。リグニンとして、好ましくは、H型の基本骨格を含まない木本系植物由来リグニンが挙げられ、より好ましくは、S型の基本骨格を含まず、G型の基本骨格を有する針葉樹系リグニンが挙げられ、とりわけ好ましくは、スギに由来する針葉樹系リグニンが挙げられる。スギに由来する針葉樹系リグニンから得られるPEG変性リグニンは、優れた均質性を有する。
PEG変性リグニンは、例えば、特開2017-197517号公報に記載される方法に準拠して、製造される。
この方法では、例えば、リグニンの原料となる植物材料(リグノセルロース)を、ポリエチレングリコールを用いて蒸解する。
蒸解方法としては、特に制限されないが、例えば、リグニンの原料となる植物材料と、ポリエチレングリコールと、酸触媒としての無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)とを混合し、反応させる。
ポリエチレングリコールの配合割合は、リグニンの原料となる植物材料100質量部に対して、例えば、200質量部以上、好ましくは、300質量部以上である。また、ポリエチレングリコールの配合割合は、リグニンの原料となる植物材料100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、600質量部以下である。
また、無機酸(100%換算)の配合割合は、ポリエチレングリコール100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上である。また、無機酸(100%換算)の配合割合は、ポリエチレングリコール100質量部に対して、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
また、反応条件としては、常圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上である。また、反応温度が、例えば、180℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間が、例えば、60分以上である。また、反応時間が、例えば、240分以下、好ましくは、120分以下である。
また、反応終了後、反応液にアルカリを適宜の割合で添加し、pHを調整する。アルカリとしては、例えば、アンモニアおよび水酸化ナトリウムが挙げられる。これにより、PEG変性リグニンを、溶液に抽出する。調整後のpHは、例えば、8以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、10.5以上であり、例えば、14以下である。
このような方法によって、固形成分としてパルプが得られるとともに、溶液成分としてPEG変性リグニンが得られる。
次いで、この方法では、濾過、プレス、遠心分離などの公知の分離方法によって、反応生成物から固形成分(パルプ)を分離し、溶液成分を回収する。
また、この方法では、必要に応じて、固形成分(パルプ)を洗浄し、固形成分に含浸される溶液(PEG変性リグニン)を、回収することもできる。
その後、この方法では、無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)などを添加し、pHを、調整して、PEG変性リグニンを析出および沈殿させる。
調整後のpHは、例えば、1.5以上であり、例えば、5以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、2以下である。
これにより、PEG変性リグニンを沈殿させることができる。また、得られた沈殿を、例えば、濾過、プレス、遠心分離などの公知の方法で回収することにより、固形分として、PEG変性リグニンを得ることができる。
フェノール類は、フェノールおよびフェノール誘導体(フェノール変性体)である。フェノール類としては、例えば、フェノール、2官能性フェノール誘導体、3官能性フェノール誘導体および4官能性フェノール誘導体が挙げられる。2官能性フェノール誘導体としては、例えば、o-クレゾール、p-クレゾール、p-ter-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-ノニルフェノール、2,4-キシレノールおよび2,6-キシレノールが挙げられる。3官能性フェノール誘導体としては、例えば、m-クレゾール、レゾルシノール、および、3,5-キシレノールが挙げられる。4官能性フェノール誘導体としては、例えば、ビスフェノールAおよびジヒドロキシジフェニルメタンが挙げられる。また、フェノール誘導体としては、ハロゲン化フェノール類も挙げられる。ハロゲン化フェノール類は、フェノールまたはフェノール誘導体のハロゲン化物である。ハロゲンとしては、例えば、塩素および臭素が挙げられる。これらフェノール類は、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、フェノールの誘導体において、フェノールが誘導体化(変性)されるタイミングは特に制限されない。例えば、フェノールの誘導体化は、フェノール類とアルデヒド類との反応前であってもよく、反応後であってもよく、反応と同時であってもよい。フェノール類として、好ましくは、フェノールが挙げられる。
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、ベンズアルデヒド、トリオキサン、および、テトラオキサンが挙げられる。また、アルデヒドの一部が、フルフリルアルコールなどに置換されていてもよい。これらアルデヒド類は、単独使用または2種類以上併用することができる。アルデヒド類として、好ましくは、ホルムアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドが挙げられる。
また、アルデヒド類は、例えば、水溶液として用いることができる。そのような場合において、アルデヒド類の濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
また、アルデヒド類とともに、ケトン類を配合することもできる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、および、ジフェニルケトンが挙げられる。これらケトン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。ケトン類が配合される場合、ケトン類の配合割合は、固形分基準で、アルデヒド類100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
そして、PEG変性リグニンとフェノール類とアルデヒド類(および必要により配合されるケトン類(以下同様))とを反応させるには、上記の各成分(PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類)を配合し、加熱する。
この反応において、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、350質量部以下である。換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上である。また、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下である。
また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上である。また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
また、アルデヒド類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上である。また、アルデヒド類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、350質量部以下、好ましくは、300質量部以下である。
各成分の配合割合が上記範囲であれば、各種物性に優れた摩擦材が得られる。
また、この反応では、酸触媒が添加される。すなわち、上記の各成分は、酸触媒下において反応する。
酸触媒としては、例えば、有機酸および無機酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物およびリン酸化合物が挙げられる。カルボン酸化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸およびシュウ酸が挙げられる。スルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、キュメンスルホン酸、ジノニルナフタレンモノスルホン酸、および、ジノニルナフタレンジスルホン酸が挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、リン酸エステル類が挙げられる。リン酸エステル類として、より具体的には、例えば、炭素数1~18のアルキル基を有するリン酸エステル類が挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、および、リン酸トリオクチルが挙げられる。無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸および硝酸が挙げられる。これら酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。酸触媒として、好ましくは、有機酸、より好ましくは、カルボン酸化合物、さらに好ましくは、シュウ酸が挙げられる。
酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、酸触媒が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、酸触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよい。また、酸触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合時に同時に添加されてもよい。さらに、酸触媒は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合後に添加されてもよい。
反応条件としては、大気圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、反応温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、反応時間が、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
これにより、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の反応生成物を含む樹脂組成物として、バインダー(結合剤)が得られる。
PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の反応生成物は、PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂である。より具体的には、酸触媒下におけるフェノール類とアルデヒド類との反応によって、ノボラック型フェノール樹脂が得られ、また、そのノボラック型フェノール樹脂が、PEG変性リグニンにより変性される。すなわち、上記の反応では、PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂を含む樹脂組成物(バインダー)が得られる。
このようにして得られるバインダー(結合剤)によれば、優れた摩擦特性を有し、かつ、異音を抑制できる摩擦材が得られる。
また、PEG変性リグニンとフェノール類とアルデヒド類との反応では、上記のように、上記各成分を一括配合して反応させることもできるが、上記各成分を順次配合して反応させることもできる。より具体的には、例えば、まず、PEG変性リグニンとフェノール類とを反応させ、次いで、得られた反応生成物と、アルデヒド類とを反応させることができる。
順次反応では、具体的には、まず、PEG変性リグニンとフェノール類とを反応させ、PEG変性リグニンおよびフェノール類の反応生成物を含むPEG変性リグニン-フェノール組成物を調製し、次いで、そのPEG変性リグニン-フェノール組成物と、アルデヒド類とを反応させる。
PEG変性リグニンとフェノール類との反応では、PEG変性リグニンに対してフェノール類は過剰当量配合される。具体的には、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、350質量部以下である。換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上である。また、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下である。
また、この反応では、上記の酸触媒が添加される。酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上である。また、酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、酸触媒は、PEG変性リグニンおよびフェノール類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよい。また、酸触媒は、PEG変性リグニンおよびフェノール類の配合時に同時に添加されてもよい。また、酸触媒は、PEG変性リグニンおよびフェノール類の配合後に添加されてもよい。
反応条件としては、大気圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、反応温度が、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
この反応により、PEG変性リグニンがフェノール類により変性される。具体的には、PEG変性リグニンの分子中の脂肪族水酸基が、フェノール類に置換される。
なお、上記の反応では、過剰のフェノール類が、未反応成分として残存する。そのため、上記の反応で得られるPEG変性リグニン-フェノール組成物には、PEG変性リグニンおよびフェノール類の反応生成物(フェノール類により変性されたPEG変性リグニン)と、遊離のフェノール類とが含有される。
次いで、この方法では、上記により得られるPEG変性リグニン-フェノール組成物(すなわち、フェノール類により変性されたPEG変性リグニン、および、遊離のフェノール類を含む。)と、アルデヒド類とを反応させる。
この反応において、アルデヒド類の配合割合は、フェノール類(上記反応において原料として用いられたフェノール類)100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
また、この反応では、必要に応じて、上記の酸触媒を適宜の割合で添加することもできる。
反応条件としては、大気圧下が挙げられる。また、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、反応温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、反応時間が、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
これにより、上記のPEG変性リグニン-フェノール組成物と、アルデヒド類とが反応し、PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(PEG変性リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂)が得られる。また、そのPEG変性リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂を含む樹脂組成物として、バインダーが得られる。
なお、PEG変性リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の製造では、必要により、蒸留などの公知の方法によって、未反応原料(未反応のフェノール類など)や酸触媒を除去することができる。
このようにして得られるバインダー(結合剤)によれば、優れた摩擦特性を有し、かつ、異音を抑制できる摩擦材が得られる。
また、バインダーは、必要により、フェノール樹脂硬化剤を含有できる。バインダーは、好ましくは、ノボラック型フェノール樹脂と、フェノール樹脂硬化剤とを含み、より好ましくは、ノボラック型フェノール樹脂と、フェノール樹脂硬化剤とからなる。
フェノール樹脂硬化剤としては、特に制限されず、公知の硬化剤が挙げられる。フェノール樹脂硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、メチロールメラミンおよびメチロール尿素が挙げられる。これらフェノール樹脂硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。フェノール樹脂硬化剤の配合割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、バインダーは、さらに、添加剤を含有できる。添加剤としては、バインダーに添加される公知の添加剤が挙げられる。添加剤としては、例えば、着色剤、可塑剤、安定剤、離型剤が挙げられる。離型剤としては、例えば、金属石鹸が挙げられ、より具体的には、ステアリン酸亜鉛が挙げられる。これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、添加剤の添加のタイミングは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。添加剤の配合割合は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、摩擦材は、必要に応じて、その他のバインダーを含有することができる。その他のバインダーは、上記の樹脂組成物(PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂を含む樹脂組成物)を除くバインダーである。その他のバインダーとしては、例えば、公知の熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂が挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用することができる。
その他のバインダーが配合される場合、その配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲において、適宜設定される。摩擦材は、好ましくは、その他のバインダーを含有しない。すなわち、摩擦材は、好ましくは、バインダーとして、上記樹脂組成物のみを含有する。
また、摩擦材は、好ましくは、繊維基材を含有する。繊維基材としては、例えば、有機繊維および無機繊維が挙げられる。
有機繊維としては、例えば、ポリアミド繊維およびアクリル繊維が挙げられる。ポリアミド繊維としては、例えば、アラミド繊維が挙げられる。アクリル繊維としては、例えば、耐炎化アクリル繊維が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。有機繊維として、好ましくは、ポリアミド繊維が挙げられ、より好ましくは、アラミド繊維が挙げられる。
無機繊維としては、例えば、金属繊維、セラミック繊維、ガラス繊維および炭素繊維が挙げられる。金属繊維としては、例えば、銅繊維および真鍮繊維が挙げられる。セラミック繊維としては、例えば、チタン酸カリウム繊維、Al-SiO系セラミック繊維、および、生体溶解性セラミック繊維が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。無機繊維として、好ましくは、金属繊維が挙げられ、より好ましくは、銅繊維が挙げられる。
繊維基材は、単独使用または2種類以上併用できる。繊維基材として、好ましくは、有機繊維および無機繊維が挙げられ、より好ましくは、有機繊維および無機繊維の併用が挙げられる。
なお、繊維基材のサイズは、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、繊維基材の長さ(繊維長)は、特に制限されないが、例えば、100μm以上2500μm以下である。また、繊維基材の直径は、特に制限されないが、例えば、3μm以上600μm以下である。
また、摩擦材は、好ましくは、摩擦調整材を含有する。摩擦調整材としては、例えば、充填材、固体潤滑材および研削材が挙げられる。
充填材としては、例えば、有機充填材および無機充填材が挙げられる。
有機充填材としては、例えば、木粉、パルプ、ゴム粉末、カシューパーティクル(カシューダスト)およびメラミンダストが挙げられる。ゴム粉末において、ゴムとしては、例えば、アクリルニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、および、ブタジエンゴム(BR)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。有機充填材として、好ましくは、ゴム粉末およびカシューパーティクルが挙げられる。
無機充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、硫化鉄、硫化銅、酸化ケイ素、金属粉末および鉱物が挙げられる。金属粉末において、金属としては、例えば、銅、アルミニウム、青銅および亜鉛が挙げられる。鉱物としては、例えば、バーミキュライトが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。無機充填材として、好ましくは、硫酸バリウムが挙げられる。
充填材は、単独使用または2種類以上併用できる。充填材として、好ましくは、有機充填材および無機充填材が挙げられ、より好ましくは、有機充填材および無機充填材の併用が挙げられる。
固体潤滑材としては、公知の固体潤滑材が挙げられる。固体潤滑材として、より具体的には、例えば、グラファイトおよび二硫化モリブデンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。固体潤滑材として、好ましくは、グラファイトが挙げられる。
研削材としては、公知の研削材が挙げられる。研削材として、より具体的には、例えば、アルミナ、マグネシアおよびジルコニアが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
これら摩擦調整材は、単独使用または2種類以上併用できる。摩擦調整材は、要求される物性に応じて、適宜選択される。摩擦調整材として、好ましくは、充填材および固体潤滑材が挙げられ、より好ましくは、充填材および固体潤滑材の併用が挙げられる。
なお、摩擦調整材のサイズは、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、摩擦調整材の平均粒子径は、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上である。また、摩擦調整材の平均粒子径は、例えば、500μm以下、好ましくは、250μm以下である。
摩擦材の製造では、例えば、まず、上記のバインダーと、繊維基材および摩擦調整材とを配合および混練し、摩擦材用成形材料(組成物)を製造する。
摩擦材用成形材料において、繊維基材および摩擦調整材の総量が、上記のバインダー100質量部に対して、例えば、250質量部以上、好ましくは、400質量部以上である。また、繊維基材および摩擦調整材の総量が、上記のバインダー100質量部に対して、例えば、950質量部以下、好ましくは、900質量部以下である。
また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、バインダーが、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上である。また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、バインダーが、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、繊維基材が、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上である。また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、繊維基材が、例えば、65質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、摩擦調整材が、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上である。また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、摩擦調整材が、例えば、95質量部以下、好ましくは、85質量部以下である。
また、摩擦調整材が研削材を含む場合、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、研削材が、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上である。バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、研削材が、例えば、30質量部以下、好ましくは、25質量部以下である。
また、摩擦調整材が充填材を含む場合、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、充填材が、例えば、30質量部以上、好ましくは、35質量部以上である。また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、充填材が、例えば、90質量部以下、好ましくは、85質量部以下である。
また、摩擦調整材が固体潤滑材を含む場合、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、固体潤滑材が、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上である。また、バインダー、繊維基材および摩擦調整材の総量100質量部に対して、固体潤滑材が、例えば、30質量部以下、好ましくは、25質量部以下である。
混練方法としては、特に制限されず、公知の混練機が用いられる。混練機としては、例えば、単軸押出機、多軸押出機、ロール混練機、ニーダー、ヘンシエルミキサーおよびバンバリーミキサーが挙げられる。
混練温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、より好ましくは、100℃以上である。また、混練温度は、例えば、180℃以下、好ましくは、170℃以下、より好ましくは、160℃以下である。また、混練時間が、例えば、3分以上、好ましくは、5分以上である。また、混練時間が、例えば、30分以下、好ましくは、20分以下である。
このような摩擦材用成形材料は、バインダーとして、上記のノボラック型フェノール樹脂を含有する。そのため、このような摩擦材用成形材料を用いることにより、優れた摩擦特性を有し、かつ、異音を抑制できる摩擦材が得られる。
次いで、この方法では、上記の摩擦材用成形材料を、公知の方法で成形する。これにより、摩擦材が得られる。
成形方法としては、公知の方法が採用される。成形方法として、より具体的には、例えば、トランスファ成形および圧縮成形が挙げられる。なお、成形条件は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
例えば、温度条件が、例えば、140℃以上、好ましくは、150℃以上である。また、温度条件が、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、圧力条件が、例えば、20MPa以上、好ましくは、30MPa以上である。また、圧力条件が、例えば、100MPa以下、好ましくは、80MPa以下である。また、処理時間が、例えば、2分以上、好ましくは、10分以上である。また、処理時間が、例えば、60分以下、好ましくは、30分以下である。
このようにして摩擦材用成形材料を成形することにより、摩擦材が得られる。
また、摩擦材は、必要に応じて、公知の方法で処理されていてもよい。処理としては、例えば、脱脂処理およびプライマー処理が挙げられる。また、成形された摩擦材は、公知の方法でアフターキュア(熱硬化処理)されていてもよい。
アフターキュアにおける処理条件は、特に制限されないが、常圧下が採用される。また、温度条件が、例えば、上記の成形時における温度より10~100℃高い。温度条件は、例えば、150℃以上、好ましくは、160℃以上である。また、温度条件は、例えば、300℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、処理時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、処理時間が、例えば、10時間以下、好ましくは、8時間以下である。アフターキュアにより、摩擦特性および耐熱性の向上を図ることができる。
そして、摩擦材は、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物(PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂)を含有する。そのため、上記の摩擦材は、優れた摩擦特性を有し、さらに、摩擦による異音(鳴き)を抑制できる。
より具体的には、通常、摩擦材の機械強度を向上させることにより、摩擦特性を向上できる。しかし、摩擦材の機械強度を向上させると、摩擦材の柔軟性が低下するため、摩擦による摩擦材の振動が生じやすく、異音(鳴き)を生じやすくなる。つまり、摩擦特性の向上と、異音の抑制とは、背反関係を有する。
これに対して、上記の摩擦材では、バインダーが、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物(PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂)を含有する。そのため、摩擦材の機械強度を向上させながら、柔軟性を確保できる。
その結果、摩擦材の摩擦特性を向上させるとともに、摩擦材の振動を抑制し、異音(鳴き)の発生を抑制できる。
そのため、摩擦材は、例えば、車両の制動部材において、好適に用いられる。車両としては、例えば、自動車、自動二輪車および電車が挙げられる。制動部材としては、例えば、ブレーキパッドおよびクラッチ部材が挙げられる。摩擦材は、自動車のブレーキパッドとして、とりわけ好適に用いられる。
摩擦材が自動車のブレーキパッドとして用いられる場合、ブレーキ用部材と、上記の摩擦材用成形材料とが、一体的に成形されていてもよい。ブレーキ用部材としては、例えば、公知のプレッシャプレートが挙げられる。
より具体的には、例えば、まず、上記の摩擦材用成形材料が予備成形される。必要に応じて、予備成形された摩擦材用成形材料は、脱脂処理およびプライマー処理される。次いで、摩擦材用成形材料と、ブレーキ用部材とが接着剤を介して接着される。その後、摩擦材用成形材料およびブレーキ用部材が、一体的に熱成形される。これとともに、摩擦材用成形材料と、ブレーキ用部材とが固着する。
熱成形における処理条件は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、温度条件が、例えば、140℃以上170℃以下である。また、圧力条件が、例えば、30MPa以上80MPa以下である。また、熱処理時間が、例えば、2分以上10分以下である。
また、熱成形された摩擦材は、必要に応じて、公知の方法でアフターキュアおよび仕上げ処理される。アフターキュアにおける処理条件は、特に制限されない。例えば、常圧下、温度条件が、例えば、150℃以上300℃以下である。また、処理時間が、例えば、1時間以上4時間以下である。
そして、ブレーキパッドは、上記の摩擦材を用いて得られるため、優れた摩擦特性を有し、さらに、摩擦による異音(鳴き)を抑制できる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
<リグニン類の合成>
製造例1(Mn200-PEG変性リグニン)
以下の方法で、数平均分子量200のポリエチレングリコールにより変性されたリグニン(以下、Mn200-PEG変性リグニン)を製造した。
すなわち、市販の数平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG200)230質量部と、酸触媒としての硫酸0.69質量部(PEG200 100質量部に対して、0.3質量部)を、反応容器に入れて撹拌した。
次いで、絶乾スギ木粉46質量部を、反応容器に投入し、常圧下140℃に昇温して、撹拌しながら90分反応させた。
次いで、反応容器を冷却し、温度が40℃以下になったことを確認した後、水酸化ナトリウム(0.2mol/L)を280質量部投入して、30分間撹拌した。
次いで、得られた固形成分(パルプ)を、フィルタープレスにより除去し、溶液成分を回収した。
次いで、得られた溶液成分に、硫酸を添加し、pHを2.0に調整した。これにより、Mn200-PEG変性リグニンの懸濁液を得た。
その後、Mn200-PEG変性リグニンを、遠心分離により回収した。
製造例2(Mn400-PEG変性リグニン)
数平均分子量200のポリエチレングリコールに代えて、数平均分子量400のポリエチレングリコール(以下、Mn400-PEG)を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、Mn400-PEG変性リグニンを得た。
製造例3(Mn600-PEG変性リグニン)
数平均分子量200のポリエチレングリコールに代えて、数平均分子量600のポリエチレングリコール(以下、Mn600-PEG)を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、Mn600-PEG変性リグニンを得た。
製造例4(酢酸変性リグニン)
コーンストーバー100質量部を、95質量%の酢酸1000質量部および硫酸3質量部と混合し、還流下において4時間反応させた。反応後、濾過してパルプを除去し、パルプ廃液を回収した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてパルプ廃液中の酢酸を除去し、体積が1/10になるまで濃縮した後、その濃縮液の10倍量(質量基準)の水を添加し、濾過することにより、固形分として酢酸変性リグニンを得た。
<ノボラック型フェノール樹脂の合成>
合成例1(PEG200リグニン-ノボラック樹脂)
フェノール493.5gをフラスコに入れ、50℃程度まで加熱してフェノールを液化させ、その後、Mn200-PEG変性リグニン150gを添加した。
次いで、シュウ酸(酸触媒)7.62gと、パラホルムアルデヒド117.3gを添加し、95℃で2.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで110℃まで昇温し、110℃で1.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで120℃まで昇温し、120℃で2時間反応させた。
反応後、2300gの水を添加し、強く撹拌した後に静置し、デカンテーションで水を除去することによって、シュウ酸およびフェノールを除去した。さらに、適宜、水を加えつつ120℃、0.08MPaの条件で減圧蒸留し、残留フェノールを除去した。なお、減圧蒸留はフェノール残存率が1%以下になるまで繰り返した。
これにより、Mn200-PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(PEG200リグニン-ノボラック樹脂)を得た。
合成例2(PEG400リグニン-ノボラック樹脂)
Mn200-PEG変性リグニンに代えて、Mn400-PEG変性リグニン150gを用いた。その他は、合成例1と同様に操作した。これにより、Mn400-PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(PEG400リグニン-ノボラック樹脂)を得た。
合成例3(PEG600リグニン-ノボラック樹脂)
Mn200-PEG変性リグニンに代えて、Mn600-PEG変性リグニン150gを用いた。その他は、合成例1と同様に操作した。これにより、Mn600-PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(PEG600リグニン-ノボラック樹脂)を得た。
合成例4(酢酸リグニン-ノボラック樹脂)
Mn200-PEG変性リグニンに代えて、酢酸リグニン150gを用いた。その他は、合成例1と同様に操作した。これにより、酢酸リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(酢酸リグニン-ノボラック樹脂)を得た。
合成例5(無変性ノボラック樹脂)
フェノール846g、シュウ酸(酸触媒)13.02gおよびパラホルムアルデヒド172.5gをフラスコに入れ、95℃で2.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで110℃まで昇温し、110℃で1.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで120℃まで昇温し、120℃で2時間反応させた。
反応後、3030gの水を添加し、強く撹拌した後に静置し、デカンテーションで水を除去することによって、シュウ酸およびフェノールを除去した。さらに、適宜、水を加えつつ120℃、0.08MPaの条件で減圧蒸留し、残留フェノールを除去した。なお、減圧蒸留はフェノール残存率が1%以下になるまで繰り返した。
これにより、リグニンにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂(無変性ノボラック樹脂)を得た。
<<摩擦材の製造>>
実施例1
下記成分を順次配合し、2本の熱ロールにて100℃で5分間混練して、樹脂組成物を得た。
合成例1のPEG200リグニン-ノボラック樹脂100質量部(450g)
ヘキサメチレンテトラミン(硬化剤、リグナイト製)12質量部(54g)
ステアリン酸亜鉛(離型剤、和光純薬工業製)1質量部(4.5g)
次いで、下記成分をミキサーにより混合し、摩擦材用成形材料を得た。
上記の樹脂組成物(バインダー)20部
アラミド繊維(東レ・デュポン製 Kevlar(R)パルプ1F538)5質量部
銅繊維(日本スチールウール製 CCW-208)5質量部
アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)JSR製 PN30A)5質量部
カシューパーティクル(東北化工製 FF-1500)10質量部
硫酸バリウム(堺化学製 簸性硫酸バリウムBA)45質量部
グラファイト(SECカーボン製 SGP-100)10質量部
その後、得られた摩擦材用成形材料を、170℃において15分間圧縮成形し、100mmφの円盤形の試験片を得た。また、得られた試験片を、180℃において4時間熱硬化(アフターキュア)させた。これにより、摩擦材を得た。
実施例2~3および比較例1~2
表1に示す処方に変更した以外は、実施例1と同様にして、摩擦材を得た。
<<評価>>
各実施例および各比較例において得られた摩擦材を、下記の方法により評価した。
(1)摩擦係数(摩擦特性)
摩擦材の摩擦係数を、以下の方法で求めた。すなわち、ASTM D1894に準拠し、HEIDON-14を用いて摩擦係数(静摩擦係数および動摩擦係数)を求めた。摩擦係数を求めるための各種条件および用いた試験片の寸法を以下に示す。
試験片:直径100mm、厚さ約3mmの円板試験片
相手材 :直径19mm円筒
相手材の材質:S45C
試験速度 :100mm/分
(2)最大点伸度(機械物性)
摩擦材の最大点伸度を、以下の方法で求めた。すなわち、JIS K6911(1995)に準拠して、クロスヘッド速度3mm/分、スパン100mmにて、3点曲げ試験し、最大点伸度を測定した。なお、最大点伸度は、破損するまで撓ませたときのひずみ(最大点伸度)であり、下記式により求めた。
最大点伸度(ε)=[6T/L]× ΔL
(T:サンプルの厚み、L:支点間距離、ΔL:曲げ撓み量)
(3)tanδ(柔軟性)
摩擦材の200℃におけるtanδを、以下の方法で求めた。すなわち、Rheogel-E4000(ユ-ビーエム社製)を用いて固体動的粘弾性を測定した(周波数1Hz、昇温速度2℃/分)。なお、測定モードは曲げとし、測定温度範囲は室温(20℃)~300℃とした。そして、tanδ曲線から、200℃におけるtanδの値を求めた。なお、tanδは、柔軟性の指標である。tanδの値が大きいほど、柔軟性が高く、振動を抑制でき、異音を抑制できるものと判断した。
Figure 2023070569000001

Claims (3)

  1. バインダーを含有する摩擦材であり、
    前記バインダーが、
    ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、
    フェノール類と、
    アルデヒド類と
    の反応生成物を含有する、摩擦材。
  2. 前記リグニンが、針葉樹系リグニンである、請求項1に記載の摩擦材。
  3. 前記ポリエチレングリコールの数平均分子量が、400以上である
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の摩擦材。
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