次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本開示のケース保持装置10を含むケース移送装置1を示す斜視図である。同図に示すように、ケース移送装置1は、ロボットハンドとしてのケース保持装置10に加えて、先端部(手先部)に当該ケース保持装置10が取り付けられるロボットアーム2や制御装置3等を含む。ロボットアーム2は、多関節アーム機構や当該多関節アーム機構を駆動する複数のアクチュエータ(図示省略)等を含む。制御装置3は、CPU,ROM,RAM等(何れも図示省略)を含み、ロボットアーム2の複数のアクチュエータと、図示しない電気ケーブルを介して接続されるケース保持装置10とを制御する。
ケース保持装置10は、図2および図3に示すケースCを保持・解放可能なものである。また、ロボットアーム2は、図1におけるX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向にケース保持装置10を移動させると共に、当該ケース保持装置10をZ軸周りに回転させることができる。これにより、ケースCを保持したケース保持装置10をロボットアーム2により移動させることで、パレットP(図1参照)上に密に段積みされた複数のケースCを1個ずつ取り出したり、複数のケースCを1個ずつパレットP上に段積みしたりすることが可能となる。また、ケース移送装置1によれば、図示しないコンベヤにより搬送される複数のケースCを1個ずつ取り出したり、複数のケースCを1個ずつコンベヤ上に移載したりすることもできる。
ケース保持装置10の保持対象となるケースCは、可撓性を有する樹脂等により有底角筒状、すなわち上部が開放された直方体状(立方体状)に形成されており、図2および図3に示すように、底部B、間隔をおいて対向する一対の第1側壁部W1、および間隔をおいて対向する一対の第2側壁部W2を含む。第1側壁部W1の第1側面S1と、第2側壁部W2の第2側面S2とは、曲面状のコーナー面を介して互いに隣り合う。また、ケースCは、各第1側面S1(第1側壁部W1)および各第2側面S2(第2側壁部W2)の上縁部(開口端側の周縁部)から外側に突出して当該ケースCの上端面を形成する鍔状部(フランジ部)Fを含む。鍔状部Fは、ケースCの上縁部の全周に沿って形成されており、当該上縁部から第1および第2側面S1,S2の各々と直交するように延在する。
ケースCの種類(サイズ)は、収容される物品のサイズや特性等に応じて段積み可能となる範囲内で幅や高さを異ならせることにより複数用意されている。また、ケースCには、当該ケースC内に収容された物品を保護するための図示しない蓋を装着可能である。ケースCに装着される蓋は、当該ケースCの鍔状部Fを覆う枠状の外周部と、外周部の内側に形成されると共に当該外周部の表面よりも窪んだ底面を有する凹部とを含むものである。なお、ケースCの鍔状部Fは、必ずしも当該ケースCの上縁部の全周に沿って形成される必要はなく、例えばコーナー部から省略されてもよく、当該上縁部よりも下側の部分から突出するものであってもよい。
図4は、ケース保持装置10を示す斜視図であり、図5は、ケース保持装置10を示す平面図であり、図6および図7は、ケース保持装置10を示す側面図である。これらの図面に示すように、ケース保持装置10は、ベース部材11と、ケースCを保持するための第1押さえ部材21、第2押さえ部材22、第3押さえ部材23、第1支持部材31および第2支持部材32を含む。更に、ケース保持装置10は、ケースCを保持するように第1、第2および第3押さえ部材21,22,23並びに第1および第2支持部材31,32を移動させる移動機構として、第1横移動機構41、第2横移動機構42、第1接近離間機構51、第2接近離間機構52、第1上下移動機構61、および第2上下移動機構62を含む。
ベース部材11は、略長方形状(本実施形態では、略矩形状)の平面形状を有する平板であり、当該ベース部材11の上面の中央部には、ロボットアーム2の先端部に連結される連結部12が固定されている。また、図4および図5に示すように、ベース部材11の上面には、第1および第2横移動機構41,42が設置されている。第1横移動機構41は、ベース部材11の第1辺に沿って延在する送りねじ43と、当該送りねじ43を正逆方向に回転駆動するモータ45と、送りねじ43の回転に伴って進退移動するスライダ47とを含む。第2横移動機構42は、ベース部材11の上記第1辺と交差(直交)する第2辺に沿って延在する送りねじ44と、当該送りねじ44を正逆方向に回転駆動するモータ46と、送りねじ44の回転に伴って進退移動するスライダ48とを含む。第1および第2横移動機構41,42のモータ45,46は、それぞれ上記制御装置3により制御される。
また、ベース部材11の下面には、図6および図7に示すように、当該ベース部材11の下方に位置するように3Dビジョンカメラ(3Dセンサ)15が固定(支持)されている。3Dビジョンカメラ15は、下方に存在する物体(ケースC)を撮像し、取得した情報(3次元点群データ)を上述の制御装置3に送信する。制御装置3は、3Dビジョンカメラ15からの情報に基づいて、ベース部材11の下方に存在する物体の位置や形状等を取得する。更に、ベース部材11の下面には、上記第1辺に沿って延在するガイドレール17と、上記第2辺に沿って延在するガイドレール18とが固定されている。ガイドレール17は、第1接近離間機構51を上記第1辺に沿って移動自在に支持し、ガイドレール18は、第2接近離間機構52上記第2辺に沿って移動自在に支持する。すなわち、ベース部材11は、第1および第2接近離間機構51,52を吊り下げた状態で第1辺または第2辺に沿って移動自在に支持する。
第1接近離間機構51は、図示しない圧縮空気源から圧縮空気が供給されるハウジング53と、当該圧縮空気によりハウジング53に対して軸方向に進退移動させられるロッド55とを含むエアシリンダである。第1接近離間機構51のハウジング53は、ロッド55が上記第1辺(送りねじ43)と直交するようにベース部材11のガイドレール17により摺動自在に支持されると共に、連結部材470を介して第1横移動機構41のスライダ47に連結(固定)される。第2接近離間機構52は、上記圧縮空気源から圧縮空気が供給されるハウジング54と、当該圧縮空気によりハウジング54に対して軸方向に進退移動させられるロッド56とを含むエアシリンダである。第2接近離間機構52のハウジング54は、ロッド56が上記第2辺(送りねじ44)と直交するようにベース部材11のガイドレール18により摺動自在に支持されると共に、連結部材480を介して第2横移動機構42のスライダ48に連結(固定)される。第1および第2接近離間機構51,52に対する圧縮空気の給排は、それぞれ上記制御装置3により制御される。
また、図6に示すように、第1接近離間機構51のハウジング53には、下方に延びる連結プレート57が固定されており、当該連結プレート57の下端部には、第1押さえ部材21が固定されている。更に、図6に示すように、第2接近離間機構52のハウジング54には、下方に延びる連結プレート58が固定されており、当該連結プレート58の下端部には、第2押さえ部材22が固定されている。すなわち、第1および第2接近離間機構51,52のハウジング53,54は、第1または第2押さえ部材21,22を下方に吊り下げた状態で支持する。加えて、図1および図7に示すように、ベース部材11の第1辺と第2辺との交差部(角部)には、下方に延びる連結プレート19が固定されており、当該連結プレート19の下端部には、第3押さえ部材23が固定されている。すなわち、ベース部材11は、第3押さえ部材23を下方に吊り下げた状態で支持する。
第1、第2および第3押さえ部材21、22,23は、何れも平板状に形成されており、それぞれ平坦な下面を有する。以下、第1押さえ部材21の平坦な下面(図6参照)を「第1押さえ面21s」といい、第2押さえ部材22の平坦な下面(図6参照)を「第2押さえ面22s」といい、第3押さえ部材23の平坦な下面(図7参照)を「第3押さえ面23s」という。第1、第2および第3押さえ部材21、22,23は、第1、第2および第3押さえ面21s,22s,23sが第1および第2接近離間機構51,52のハウジング53,54の下方でベース部材11の下面と平行をなす同一平面内に含まれるように当該ベース部材11により支持される。
また、第1、第2および第3押さえ部材21,22,23は、それぞれ第1ピン21p、第2ピン22pまたは23pを軸方向すなわち上下方向に移動自在に支持する。第1、第2および第3ピン21p,22p,23pは、各々の上部に形成されたフランジ部をそれぞれ有し、重力により第1押さえ面21s、第2押さえ面22sまたは第3押さえ面23sから下方に突出する。当該フランジ部が第1押さえ部材21、第2押さえ部材22または第3押さえ部材23の上面に当接することで、第1、第2および第3ピン21p,22p,23pの第1押さえ部材21、第2押さえ部材22または第3押さえ部材22からの脱落が規制される。更に、第1、第2および第3ピン21p,22p,23pは、下方に存在する物品から押圧されることで上方に退避する。
また、図6に示すように、第1接近離間機構51のロッド55の先端部には、第1上下移動機構61が固定されており、図7に示すように、第2接近離間機構52のロッド56の先端部には、第2上下移動機構62が固定されている。第1上下移動機構61は、上記圧縮空気源から圧縮空気が供給されるハウジング63と、当該圧縮空気によりハウジング63に対して軸方向に進退移動させられるロッド65とを含むエアシリンダである。第1上下移動機構61のハウジング63は、ロッド65が上下方向に延在するように第1接近離間機構51のロッド55の先端部に固定される。
第2上下移動機構62は、上記圧縮空気源から圧縮空気が供給されるハウジング64と、当該圧縮空気によりハウジング64に対して軸方向に進退移動させられるロッド66とを含むエアシリンダである。第2上下移動機構62のハウジング64は、ロッド66が上下方向に延在するように第2接近離間機構52のロッド56の先端部に固定される。第1および第2上下移動機構61,62に対する圧縮空気の給排も、それぞれ上記制御装置3により制御される。
更に、第1上下移動機構61のロッド65の下端部には、第1支持部材31が固定されており、第2上下移動機構62のロッド66の下端部には、第2支持部材32が固定されている。第1支持部材31は、平坦な第1当接面33と、当該第1当接面33と平行に延在する平板状の第1支持部35とを含む。第1支持部35は、第1当接面33の下方から突出しており、例えば平坦な上端面および第1当接面33と平行に延在する前面を有する。また、第1支持部35の第1当接面33からの突出長d1(図6参照)、すなわち第1当接面33から第1支持部35の前面までの長さは、ケースCの鍔状部Fの第1および第2側壁部W1,W2(第1および第2側面S1,S2)からの張り出し長よりも短く定められる。更に、第1支持部材31の上下方向における高さは、保持対象となる最も低背のケースCの深さよりも短く定められる。
第2支持部材32は、平坦な第2当接面34と、当該第2当接面34と平行に延在する平板状の第2支持部36とを含む。第2支持部36は、第2当接面34の下方から突出しており、例えば平坦な上端面および第2当接面34と平行に延在する前面を有する。また、第2支持部36の第2当接面34からの突出長d2(図7参照)、すなわち第2当接面34から第2支持部36の前面までの長さは、ケースCの鍔状部Fの第1および第2側壁部W1,W2(第1および第2側面S1,S2)からの張り出し長よりも短く定められる。更に、第2支持部材32の上下方向における高さは、保持対象となる最も低背のケースCの深さよりも短く定められる。
本実施形態において、第1および第2支持部材31,32は、互いに同一の形状(寸法)を有する。ただし、第1および第2支持部材31,32の形状は、ケース保持装置10の保持対象となるケースCの形状等に応じて互いに異なっていてもよい。また、第1および第2支持部材31,32において、図示するように、第1、第2当接面33,34と第1、第2支持部35,36の背面との間に隙間が形成されてもよく、当該隙間が省略されてもよい。
図6に示すように、第1支持部材31は、第1当接面33および第1支持部35(前面)が第1押さえ部材21の第1ピン21pと対向すると共に上下方向に延在するように第1上下移動機構61のロッド65の下端部に固定される。また、図7に示すように、第2支持部材32は、第2当接面34および第2支持部36(前面)が第2押さえ部材22の第2ピン22pと対向すると共に上下方向に延在するように第2上下移動機構62のロッド66の下端部に固定される。これにより、第1押さえ部材21および第1支持部材31は、ベース部材11の下方に位置するように、当該ベース部材11により支持された第1横移動機構41のスライダ47に連結される。また、第2押さえ部材22および第2支持部材32は、ベース部材11の下方に位置するように、当該ベース部材11により支持された第2横移動機構42のスライダ48に連結される。
従って、ケース保持装置10では、第1横移動機構41によって第1押さえ部材21および第1支持部材31をベース部材11の上記第1辺に沿って横方向に一体に移動させると共に、第2横移動機構42によって第2押さえ部材22および第2支持部材32をベース部材11の上記第2辺に沿って横方向に一体に移動させることができる。また、ケース保持装置10では、第1接近離間機構51によって第1支持部材31を第1押さえ部材21に対して接近離間させると共に、第2接近離間機構52によって第2支持部材32を第2押さえ部材22に対して接近離間させることができる。更に、ケース保持装置10では、第1上下移動機構61によって第1支持部材31をベース部材11に対して上下方向に移動させると共に、第2上下移動機構62によって第2支持部材32をベース部材11に対して上下方向に移動させることができる。
続いて、図8から図14を参照しながら、上述のケース保持装置10を含むケース移送装置1の動作について説明する。ここでは、パレットP上に段積みされた複数のケースCをケース移送装置1により1個ずつ取り出していく場合を例にとって当該ケース移送装置1の動作について説明する。
パレットP上に段積みされたケースCの取り出しに際して、制御装置3は、ケースCの上端面を形成する鍔状部Fと、互い隣り合う一対の第1側面S1および第2側面S2が他のケースCにより遮られていないケースCを取り出し対象として選択する。例えば、ケース移送装置1による最初の取り出し対象となるケースCは、ロボットアーム2から最も遠い列の最上段の一端側に位置するケースCとなる。また、ケースCの取り出しに先立って、第1および第2支持部材31,32は、対応する第1または第2押さえ部材21,22との間に充分な間隔が形成されるように、第1および第2接近離間機構51,52によって第1または第2押さえ部材21,22から予め離間させられている。更に、ケースCの取り出しに先立って、第1および第2支持部材31,32は、第1および第2支持部35,36の上端面が第1および第2押さえ部材21,22の第1および第2押さえ面21s,22sよりも充分に下方に位置するように第1および第2上下移動機構61,62によって予め下降させられている。
取り出し対象となるケースCを選択した後、ケース移送装置1の制御装置3は、ベース部材11により支持された3Dビジョンカメラ15からの情報等に基づいて、取り出し対象となるケースCの上方までケース保持装置10を移動させるようにロボットアーム2を制御する。より詳細には、制御装置3は、図8に示すように、上方からみて第3押さえ部材23の第3ピン23pが他のケースCにより遮られていない一対の第1および第2側壁部W1,W2の交差部の内側に位置するようにロボットアーム2によりケース保持装置10を移動させる。また、制御装置3は、必要に応じて、第1押さえ部材21の第1ピン21pが上方からみて取り出し対象となるケースCの第1側壁部W1の内側に位置し、かつ第2押さえ部材22の第2ピン22pが上方からみて取り出し対象となるケースCの第2側壁部W2の内側に位置するように、3Dビジョンカメラ15からの情報に基づいて、第1および第2横移動機構41,42の少なくとも何れか一方を制御すると共に、ケース保持装置10をZ軸周りに回転させる。
ケース保持装置10を対象となるケースCの上方で停止させた後、制御装置3は、図9に示すように、ケース保持装置10を対象となるケースCに対して下降させるようにロボットアーム2を制御する。ケース保持装置10がケースCに対して下降していくと、第1押さえ部材21の第1ピン21pが当該ケースCの第1側壁部W1の内側に上方から差し込まれ、第2押さえ部材22の第2ピン22pが当該ケースCの第2側壁部W2の内側に上方から差し込まれ、第3押さえ部材23の第3ピン23pが当該第1および第2側壁部W1,W2の交差部の内側に上方から差し込まれていく。また、制御装置3は、3Dビジョンカメラ15からの情報に基づいて第1、第2および第3押さえ部材21,22,23の第1、第2および第3押さえ面21s,22s,23sがケースCの上端面すなわち鍔状部Fの上面の一部にそれぞれ当接した段階で、ケース保持装置10の下降を停止させるようにロボットアーム2を制御する。これにより、ケースCは、第1ピン21pが第1側壁部W1の内側に配置され、第2ピン22pが第2側壁部W2の内側に配置され、かつ第3ピン23pが第1および第2側壁部W1,W2の交差部の内側に配置された状態で、上方から第1、第2および第3押さえ部材21,22,23により押さえ付けられる。
次いで、制御装置3は、図10に示すように、第1および第2支持部材31,32をそれぞれ対応する第1または第2側壁部W1,W2すなわち第1または第2押さえ部材21,22に接近させるように第1および第2接近離間機構51,52を制御する。制御装置3は、第1および第2支持部材31,32の第1および第2当接面33,34がケースCの第1または第2側壁部W1,W2から突出する鍔状部Fに外方から当接し、第1および第2側壁部W1,W2が第1押さえ部材21の第1ピン21p、第2押さえ部材22の第2ピン22pおよび第3押さえ部材23の第3ピン23pに押し付けられた段階で、第1および第2接近離間機構51,52を停止させる。これにより、ケースCの第1および第2側壁部W1,W2は、第3ピン23pを基準としてケース保持装置10に対して位置決めされる。なお、この際、第1および第2支持部材31,32を第1または第2押さえ部材21,22に接近させる前の第1、第2および第3ピン21p,22p,23pと第1および第2側壁部W1,W2との間隔によっては、可撓性を有するケースCの第1および第2側壁部W1,W2の一部が撓むこともある。
また、第1および第2支持部材31,32では、上述のように、第1および第2支持部35,36の突出長d1,d2が鍔状部Fの張り出し長よりも短く定められている。従って、第1および第2支持部材31,32の第1当接面33が対応する鍔状部Fに当接した際、第1および第2支持部35,36の前面は、第1側壁部W1の第1側面S1または第2側壁部W2の第2側面S2に当接しない。これにより、第1および第2側面S1,S2の少なくとも何れか一方に、看板等が差し込まれるホルダ等が設けられている場合であっても、第1および第2当接面33,34をケースCの鍔状部Fに外方から当接させることが可能となる。
第1および第2接近離間機構51,52を停止させた後、制御装置3は、図11に示すように、第1および第2支持部材31,32を第1または第2側壁部W1,W2に沿ってベース部材11に対して上昇させるように第1および第2上下移動機構61,62を制御する。この際、上述のように、第1および第2支持部35,36の前面は、第1側壁部W1の第1側面S1または第2側壁部W2の第2側面S2に当接しておらず、第1および第2当接面33,34のみが鍔状部Fに当接している。従って、第1および第2支持部材31,32に作用する摺動抵抗を減らして、当該第1および第2支持部材31,32をスムースに上昇させることができる。そして、制御装置3は、第1および第2支持部材31,32の第1および第2支持部35,36の上端面がケースCの第1または第2側壁部W1,W2から突出する鍔状部Fに当接した段階で、第1および第2上下移動機構61,62を停止させる。
これにより、ケースCの鍔状部Fの下面が第1および第2支持部35,36により支持される。すなわち、第1側壁部W1から突出する鍔状部Fは、第1押さえ部材21の第1押さえ面21sと第1支持部材31の第1支持部35とにより保持(挟持)される。また、第2側壁部W2から突出する鍔状部Fは、第2押さえ部材22の第2押さえ面22sと第2支持部材32の第2支持部36とにより保持(挟持)される。更に、ケースCの鍔状部Fや第1および第2側壁部W1,W2は、第1、第2および第3押さえ部材21,22,23の第1、第2および第3ピン21p,22p,23pと、第1および第2支持部材31,32の第1および第2当接面33,34とによっても保持される。従って、第1、第2および第3押さえ部材21,22,23並びに第1および第2支持部材31,32によってケースCをしっかりと保持することができる。
ケース保持装置10により対象となるケースCが保持された後、制御装置3は、図12に示すように、ケース保持装置10を上昇させると共に、ケースCを例えば台車等の移送先に載置するようにロボットアーム2を制御する。ケースCが移送先に載置されると、制御装置3は、図13に示すように、第1および第2支持部材31,32を第1または第2側壁部W1,W2に沿ってベース部材11に対して下降させるように第1および第2上下移動機構61,62を制御する。また、制御装置3は、第1および第2支持部材31,32をケースCの第1または第2側壁部W1,W2すなわち第1または第2押さえ部材21,22から離間させるように第1および第2接近離間機構51,52を制御する。更に、制御装置3は、図14に示すように、ケース保持装置10をケースCに対して上昇するようにロボットアーム2を制御する。これにより、ケース保持装置10がケースCから離間し、1つのケースCの移送が完了する。その後、制御装置3は、次の取り出し対象となるケースC(先に取り出されたケースCの隣または下に配置されているケースC)の上方までケース保持装置10を移動させるようにロボットアーム2を制御する。
上述のように、ケース保持装置10によれば、対象となるケースC上に他のケースC等が存在しておらず、かつ互いに隣り合う第1および第2側壁部W1,W2が露出されていれば、隣り合うケースC同士の隙間に拘わらず当該ケースCをケース保持装置10によってしっかりと保持することが可能となる。また、互いに隣り合う第1および第2側壁部W1,W2から突出する鍔状部Fを第1、第2および第3押さえ部材21,22,23並びに第1および第2支持部材31,32により保持することで、ケースCの保持に際して当該ケースCの深さ情報(底部Bの位置情報)を取得する必要がなくなり、単一のケース保持装置10により高さが異なる複数種類のケースCを容易に保持することができる。更に、ケース保持装置10によれば、ケースCに対して、第1、第2および第3押さえ部材21,22,23の第1、第2および第3ピン21p,22p,23pが差し込まれる凹部を有する蓋が装着されている場合であっても、当該ケースCを保持可能である。
また、第1および第2支持部材31,32において、第1および第2支持部35,36の第1および第2当接面33,34の突出長d1,d2は、ケースCの鍔状部Fの第1および第2側壁部W1,W2(第1および第2側面S1,S2)からの張り出し長よりも短く定められている。これにより、第1および第2支持部35,36をCケースの第1または第2側壁部W1,W2に突き当てることなく、第1および第2当接面33,34によりケースCの鍔状部Fを押圧し、第3ピン23pを基準としてケース保持装置10に対してケースCを位置決めすることが可能となる。
更に、第1および第2支持部材31,32の上下方向における高さは、保持対象となる最も低背のケースCの深さよりも短く定められている。これにより、当該最も低背のケースCとその下のケースCとがケース保持装置10により同時に保持されないようにすることができる。
また、ケース保持装置10において、第1支持部材31は、第1押さえ部材21の第1ピン21pと対向するように配置され、第2支持部材32は、第2押さえ部材22の第2ピン22pと対向するように配置される。これにより、第3ピン23pを基準としてケース保持装置10に対してケースCをスムースに位置決めすると共に、第1、第2および第3押さえ部材21,22,23の第1、第2および第3ピン21p,22p,23pと、第1および第2支持部材31,32の第1および第2当接面33,34とによって、ケースCの鍔状部F(第1および第2側壁部W1,W2)をしっかりと保持することが可能となる。
更に、ケース保持装置10は、第1押さえ部材21および第1支持部材31を第1側壁部W1に沿って横方向に一体に移動させる第1横移動機構41と、第2押さえ部材22および第2支持部材32を第2側壁部W2に沿って横方向に一体に移動させる第2横移動機構42とを含む。すなわち、第1押さえ部材21および第1支持部材31は、ベース部材11の下方に位置するように第1横移動機構41のスライダ47に連結され、第2押さえ部材22および第2支持部材32は、ベース部材11の下方に位置するように第2横移動機構42のスライダ48に連結される。これにより、単一のケース保持装置10によって幅や長さ(平面視した際の寸法)が異なる複数種類のケースCを保持することが可能となる。
また、第1、第2および第3ピン21p,22p,23pは、それぞれ第1、第2または第3押さえ部材21,22,23により軸方向に移動自在に支持される。これにより、第1、第2および第3ピン21p,22p,23pの少なくとも何れかがケースC内の物品に接触した際に、当該第1、第2および第3ピン21p,22p,23pの少なくとも何れかを上方に退避させることができるので、ケースC内の物品を良好に保護することが可能となる。
更に、ケース保持装置10は、ベース部材11の下方に位置するように当該ベース部材11により支持されてケースCを撮像する3Dビジョンカメラ15を含む。これにより、3Dビジョンカメラ15によりケースCの位置情報を精度よく取得することが可能となる。従って、当該3Dビジョンカメラ15からの情報に基づいて、ロボットアーム2によってケース保持装置10を対象となるケースC上に精度よく移動させると共に、第1、第2および第3押さえ部材21,22,23の第1、第2および第3ピン21p,22p,23pを当該ケースCに対して精度よく差し込むことが可能となる。
なお、ケースCの数や積み方によっては、図1において二点鎖線で示すように、ロボットアーム2の設置箇所に3Dビジョンカメラ(3Dセンサ)5がロボットアーム2等の上方に位置するように配置されてもよい。これにより、ケース保持装置10により保持されたケースCをロボットアーム2により移送先に移送させている間に、3Dビジョンカメラ5により次の取り出し対象となるケースCの位置情報等を取得しておくことができるので、ケースCの取り出し・移送作業のサイクルタイムを短縮化することが可能となる。また、ロボットアーム2の設置箇所に3Dビジョンカメラ5が配置される場合には、ケース保持装置10から3Dビジョンカメラ15が省略されてもよい。
更に、ケース保持装置10では、第3押さえ部材23がベース部材11の下方に位置するように当該ベース部材11の角部に固定されるが、これに限られるものではない。すなわち、ケース保持装置10には、第3押さえ部材23の第3ピン23pと対向するように配置される第3当接面および第3支持部を含む第3支持部材と、当該第3支持部材を第3押さえ部材23に対して接近離間させる第3接近離間機構と、第3支持部材を上下方向に移動させる第3上下移動機構とが設けられてもよい。これにより、ケース保持装置10によって重量物等を収容したケースCをしっかりと保持することが可能となる。また、ケースCは、鍔状部Fの第1および第2側壁部W1,W2に沿って横方向に延びる部分の外周端から第1、第2側面S1、S2に沿って下方(底部B側)に延出された延出部を含むものであってもよい。
以上説明したように、本開示のケース保持装置は、ロボットアーム(2)に取り付けられ、互いに隣り合う2つの側壁部(W1,W2)および前記2つの側壁部(W1,W2)から外側に突出する鍔状部(F)を含むケース(C)を保持するケース保持装置(10)であって、前記ケース(C)の上端面の一部を押さえ付ける第1押さえ面(21s)と、前記2つの側壁部(W1,W2)の一方の内側に上方から差し込まれる第1ピン(21p)とを含む第1押さえ部材(21)と、前記ケース(C)の上端面の一部を押さえ付ける第2押さえ面(22s)と、前記2つの側壁部(W1,W2)の他方の内側に上方から差し込まれる第2ピン(22p)とを含む第2押さえ部材(22)と、前記ケース(C)の上端面の一部を押さえ付ける第3押さえ面(23s)と、前記2つの側壁部(W1,W2)同士の交差部の内側に上方から差し込まれる第3ピン(23p)とを含む第3押さえ部材(23)と、前記2つの側壁部(W1,W2)の前記一方から突出する前記鍔状部(F)に外方から当接する第1当接面(33)と、前記鍔状部(F)の下面を支持するように前記第1当接面(33)の下方から突出する第1支持部(35)とを含む第1支持部材(31)と、前記2つの側壁部(W1,W2)の前記他方から突出する前記鍔状部(F)に外方から当接する第2当接面(34)と、前記鍔状部(F)の下面を支持するように前記第2当接面(34)の下方から突出する第2支持部(36)とを含む第2支持部材(32)と、前記第1支持部材(31)を前記2つの側壁部(W1,W2)の前記一方に対して接近離間させる第1接近離間機構(51)と、前記第2支持部材(32)を前記2つの側壁部(W1,W2)の前記他方に対して接近離間させる第2接近離間機構(52)と、前記第1支持部材(31)を前記2つの側壁部(W1,W2)の前記一方に沿って上下方向に移動させる第1上下移動機構(61)と、前記第2支持部材(32)を前記2つの側壁部(W1,W2)の前記他方に沿って上下方向に移動させる第2上下移動機構(62)とを含むものである。
本開示のケース保持装置は、互いに隣り合う2つの側壁部および当該2つの側壁部から外側に突出する鍔状部を含むケースを保持するためにロボットアームに取り付けられ、例えば、パレットあるいはコンベヤ上の複数のケースを1個ずつ取り出したり、ケースを1個ずつパレットあるいはコンベヤ上に移載したりするのに用いられる。本開示のケース保持装置にケースを保持させる際には、ロボットアームによりケース保持装置を対象となるケースの上方まで移動させる。更に、第1ピンが2つの側壁部の一方の内側に位置し、第2ピンが当該2つの側壁部の他方の内側に位置し、第3ピンが当該2つの側壁部同士の交差部の内側に位置し、かつ第1、第2および第3押さえ面のそれぞれがケースの上端面の一部を押さえ付けるようにロボットアームによりケース保持装置を下方に移動させる。次いで、第1当接面がケースの2つの側壁部の上記一方から突出する鍔状部に外方から当接するように第1接近離間機構により第1支持部材を移動させると共に、第2当接面が当該2つの側壁部の上記他方から突出する鍔状部に外方から当接するように第2接近離間機構により第2支持部材を移動させる。これにより、2つの側壁部は、第1支持部材の第1当接面および第2支持部材の第2当接面により押圧されて、第1押さえ部材の第1ピン、第2押さえ部材の第2ピンおよび第3押さえ部材の第3ピンに対して押し付けられる。この結果、ケースは、第3ピンを基準としてケース保持装置に対して位置決めされる。そして、第1支持部がケースの2つの側壁部の上記一方から突出する鍔状部の下面を支持するように第1上下移動機構により第1支持部材をケースの2つの側壁部の一方に沿って上方に移動させる。更に、第2支持部がケースの2つの側壁部の上記他方から突出する鍔状部の下面を支持するように第2上下移動機構により第2支持部材をケースの2つの側壁部の他方に沿って上方に移動させる。これにより、ケースの2つの側壁部の上記一方から突出する鍔状部が、第1押さえ部材の第1押さえ面と第1支持部材の第1支持部とにより保持される。また、ケースの2つの側壁部の上記他方から突出する鍔状部が、第2押さえ部材の第2押さえ面と第2支持部材の第2支持部とにより保持される。更に、ケースの鍔状部(2つの側壁部)は、第1、第2および第3押さえ部材の第1、第2および第3ピンと、第1および第2支持部材の第1および第2当接面とによっても保持される。従って、第1、第2および第3押さえ部材並びに第1および第2支持部材によりケースをしっかりと保持することができる。この結果、対象となるケース上に他のケース等が存在しておらず、かつ互いに隣り合う2つの側壁部が露出されていれば、隣り合うケース同士の隙間に拘わらず当該ケースをケース保持装置によってしっかりと保持することが可能となる。更に、互いに隣り合う2つの側壁部から突出する鍔状部を第1、第2および第3押さえ部材並びに第1および第2支持部材により保持することで、ケースの保持に際して当該ケースの深さ情報(底部の位置情報)を取得する必要がなくなり、単一のケース保持装置により高さが異なる複数種類のケースを容易に保持することができる。そして、第1および第2上下移動機構により第1および第2支持部材を下方に移動させた後、第1および第2接近離間機構により第1および第2支持部材を対応する側壁部から離間させることで、ロボットアームによりケース保持装置をケースから離間させることが可能となる。なお、本開示のケース保持装置は、上部が開放されたケースだけではなく、第1、第2および第3押さえ部材の第1、第2および第3ピンが差し込まれる凹部を有する蓋が装着されたケースも保持可能である。
また、前記第1支持部(35)の前記第1当接面(33)からの突出長(d1)および前記第2支持部(36)の前記第2当接面(34)からの突出長(d2)は、前記ケース(C)の前記鍔状部(F)の前記側壁部(W1,W2)からの張り出し長よりも短くてもよい。これにより、第1および第2支持部材の第1および第2支持部をケースの側壁部に突き当てることなく、第1および第2当接面によりケースの鍔状部を押圧し、第3ピンを基準としてケース保持装置に対してケースを位置決めすることが可能となる。
更に、前記第1および第2支持部材(31,32)の前記上下方向における高さは、保持対象となる最も低背のケース(C)の深さよりも短くてもよい。これにより、当該最も低背のケースとその下のケースとがケース保持装置により同時に保持されないようにすることができる。
また、前記第1支持部材(31)は、前記第1押さえ部材(21)の前記第1ピン(21p)と対向するように配置されてもよく、前記第2支持部材(32)は、前記第2押さえ部材(22)の前記第2ピン(22p)と対向するように配置されてもよい。これにより、第3ピンを基準としてケース保持装置に対してケースをスムースに位置決めすると共に、第1、第2および第3押さえ部材の第1、第2および第3ピンと、第1および第2支持部材の第1および第2当接面とによって、ケースの鍔状部(2つの側壁部)をしっかりと保持することが可能となる。
更に、前記ケース保持装置(10)は、前記第1押さえ部材(21)および前記第1支持部材(31)を前記2つの側壁部(W1,W2)の前記一方に沿って横方向に一体に移動させる第1横移動機構(41)と、前記第2押さえ部材(22)および前記第2支持部材(32)を前記2つの側壁部(W1,W2)の前記他方に沿って横方向に一体に移動させる第2横移動機構(42)とを含むものであってもよい。これにより、単一のケース保持装置によって幅や長さ(平面視した際の寸法)が異なる複数種類のケースを保持することが可能となる。
また、前記ケース保持装置(10)は、前記ロボットアーム(2)に取り付けられるベース部材(11)を更に含むものであってもよく、前記第3押さえ部材(23)は、前記ベース部材(11)の下方に位置するように前記ベース部材(11)の角部に固定されてもよく、前記第1および第2横移動機構(41,42)は、前記ベース部材(11)により支持されてもよく、前記第1押さえ部材(21)および前記第1支持部材(31)は、前記ベース部材(11)の下方に位置するように前記第1横移動機構(41)のスライダ(47)に連結されてもよく、前記第2押さえ部材(22)および前記第2支持部材(32)は、前記ベース部材(11)の下方に位置するように前記第2横移動機構(42)のスライダ(48)に連結されてもよい。
更に、前記ケース保持装置(10)は、前記ベース部材(11)の下方に位置するように前記ベース部材(11)により支持されて前記ケース(C)を撮像する3Dセンサ(15)を含むものであってもよい。これにより、3Dセンサによりケースの位置情報を精度よく取得すると共に、当該3Dセンサからの情報に基づいてロボットアームによりケース保持装置を対象となるケース上に精度よく移動させて第1、第2および第3押さえ部材の第1、第2および第3ピンを当該ケースに対して精度よく差し込むことが可能となる。
また、前記第1ピン(21p)は、前記第1押さえ部材(21)により軸方向に移動自在に支持されてもよく、前記第2ピン(22p)は、前記第2押さえ部材(22)により軸方向に移動自在に支持されてもよく、前記第3ピン(23p)は、前記第3押さえ部材(23)により軸方向に移動自在に支持されてもよい。これにより、第1、第2および第3ピンの少なくとも何れかがケース内の物品に接触した際に、第1、第2および第3ピンを上方に退避させることができるので、ケース内の物品を良好に保護することが可能となる。
なお、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。