JP2021091000A - 溶接構造部材の製造方法 - Google Patents

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隆行 米澤
Takayuki Yonezawa
隆行 米澤
島貫 広志
Hiroshi Shimanuki
広志 島貫
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Abstract

【課題】疲労強度を簡単に向上させることができる溶接構造部材の製造方法を提供する。【解決手段】第1板材および第2板材を有し、前記第1板材の一部と前記第2板材の一部とが重なっており、かつ前記第1板材の縁部に沿って形成された溶接ビードによって前記縁部が前記第2板材の表面に接合されている素材から溶接構造部材を製造する方法である。当該方法は、前記第2板材のうち前記溶接ビードの幅方向において前記溶接ビードよりも一方側でかつ前記第1板材に重なっている部分を第1負荷部として、前記第1負荷部が前記第1板材の厚み方向において前記第1板材から離れるように前記第1負荷部に力を加える負荷工程と、前記負荷工程において前記第1負荷部に加えられた力を除く除荷工程と、を備える。【選択図】 図2

Description

本発明は、溶接構造部材の製造方法に関する。
建築物、橋梁、およびクレーン等の構造物においては、面内ガセット溶接継手および突き合わせ溶接継手等の種々の溶接構造部材が利用されている。このような構造物において、溶接構造部材に繰り返し応力が作用した場合に、溶接部において応力集中が生じたり、引張残留応力が生じたりすることが知られている。また、このような応力集中等が生じることにより、溶接部から疲労亀裂が発生する場合があることも知られている。
そこで、従来、溶接構造部材を補修するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、亀裂が生じた溶接継手を加工して、優れた疲労強度を有する溶接構造物を製造する方法が開示されている。
特許文献1に開示された製造方法では、溶接継手において亀裂が生じている第1部材の当該亀裂を含む部分に開先を形成する。その後、その開先を覆うように、当該第1部材の一方の面に裏当て金を隅肉溶接する。そして、第1部材の他方の面から開先を補修溶接する。これにより、亀裂が生じた溶接継手を補修することができる。
また、特許文献1に開示された製造方法では、開先を補修溶接した後、第1部材と裏当て金との接合部(隅肉溶接された部分)をピーニングする。これにより、第1部材と裏当て金との境界部分への応力集中を緩和することができるので、上記境界部分において疲労強度が低下することを防止することができる。
特開2017−205796号公報
上記のように、特許文献1に開示された方法によれば、第1部材と裏当て金との境界部分において疲労強度が低下することを防止できるので、補修溶接後に、裏当て金を除去しなくてもよい。これにより、溶接構造物の補修が簡単になる。また、裏当て金を補強部材として機能させることができるので、裏当て金を除去する場合に比べて、溶接構造物の疲労強度を高くすることができる。このため、特許文献1に開示された方法は、溶接継手の補修に好適に利用することができる。
一方で、施工現場の環境および溶接構造部材の形状等によっては、ピーニング処理を行うことが難しい場合がある。このため、さらに簡単に溶接構造部材の疲労強度を向上させることができる方法の開発が求められている。
そこで、本発明は、疲労強度を簡単に向上させることができる溶接構造部材の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、下記の溶接構造部材の製造方法を要旨とする。
(1)第1板材および第2板材を有し、前記第1板材の一部と前記第2板材の一部とが重なっており、かつ前記第1板材の縁部に沿って形成された溶接ビードによって前記縁部が前記第2板材の表面に接合されている素材から溶接構造部材を製造する方法であって、
前記第2板材のうち前記溶接ビードの幅方向において前記溶接ビードよりも一方側でかつ前記第1板材に重なっている部分を第1負荷部として、前記第1負荷部が前記第1板材の厚み方向において前記第1板材から離れるように前記第1負荷部に力を加える負荷工程と、
前記負荷工程において前記第1負荷部に加えられた力を除く除荷工程と、
を備える、溶接構造部材の製造方法。
(2)前記第1板材は、厚み方向に貫通するように前記縁部に形成された開先を有し、
前記第2板材は、前記開先を覆うように設けられた裏当て材であり、
前記溶接ビードは、前記第1板材と前記第2板材とを接合するように前記開先内に形成され、
前記負荷工程では、前記第2板材のうち前記溶接ビードの前記幅方向において前記開先よりも一方側の部分および前記幅方向において前記開先よりも他方側の部分をそれぞれ前記第1負荷部として、前記第1負荷部に力を加える、上記(1)に記載の溶接構造部材の製造方法。
(3)前記素材は、前記第1板材との間に開先が形成されるように前記第2板材の前記表面上に設けられた第3板材をさらに有し、
前記第2板材は、前記開先を覆うようにかつ前記第1板材および前記第3板材を接続するように設けられた裏当て材であり、
前記溶接ビードは、前記第1板材と前記第2板材と前記第3板材とを接合するように前記開先内に形成され、
前記負荷工程では、前記第2板材のうち前記溶接ビードの前記幅方向において前記開先よりも一方側で前記第1板材と重なっている部分を前記第1負荷部とし、前記第2板材のうち前記幅方向において前記開先よりも他方側で前記第3板材と重なっている部分を第2負荷部として、前記第1負荷部が前記第1板材の厚み方向において前記第1板材から離れるように前記第1負荷部に力を加えるとともに、前記第2負荷部が前記第3板材の厚み方向において前記第3板材から離れるように前記第2負荷部に力を加える、上記(1)に記載の溶接構造部材の製造方法。
(4)前記溶接ビードの長さ方向に直交する断面において、前記第2板材の前記表面における前記第1負荷部と前記溶接ビードとの境界を通りかつ前記第1負荷部における前記表面に平行な線を基準線とし、前記基準線上において前記境界から前記溶接ビードとは反対側に20mm離れた位置を基準位置とした場合に、前記基準位置は、下記式(1)で規定された関係を満たす、上記(1)または(2)に記載の溶接構造部材の製造方法。
sp×(t/t1.5≧0.15 ・・・(1)
上記式(1)において、dspは、下記式(2)によって規定され、tは、前記第1板材の厚み(mm)を示し、tは、前記第2板材の厚み(mm)を示す。
sp=dmax−d ・・・(2)
上記式(2)において、dmaxは、前記負荷工程において前記第1負荷部に最大荷重が負荷されたときの前記基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示し、dは、前記除荷工程後の前記基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示す。
(5)前記溶接ビードの長さ方向に直交する断面において、前記第2板材の前記表面における前記第1負荷部と前記溶接ビードとの第1境界を通りかつ前記第1負荷部における前記表面に平行な線を第1基準線とし、前記第1基準線上において前記第1境界から前記溶接ビードとは反対側に20mm離れた位置を第1基準位置とした場合に、前記第1基準位置は、下記式(3)で規定された関係を満たし、
前記断面において、前記第2板材の前記表面における前記第2負荷部と前記溶接ビードとの第2境界を通りかつ前記第2負荷部における前記表面に平行な線を第2基準線とし、前記第2基準線上において前記第2境界から前記溶接ビードとは反対側に20mm離れた位置を第2基準位置とした場合に、前記第2基準位置は、下記式(5)で規定された関係を満たす、上記(3)に記載の溶接構造部材の製造方法。
sp1×(t/t1.5≧0.15 ・・・(3)
上記式(3)において、dsp1は、下記式(4)によって規定され、tは、前記第1板材の厚み(mm)を示し、tは、前記第2板材の厚み(mm)を示す。
sp1=dmax1−df1 ・・・(4)
上記式(4)において、dmax1は、前記負荷工程において前記第1負荷部に最大荷重が負荷されたときの前記第1基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示し、df1は、前記除荷工程後の前記第1基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示す。
sp2×(t/t1.5≧0.15 ・・・(5)
上記式(5)において、dsp2は、下記式(6)によって規定され、tは、前記第2板材の厚み(mm)を示し、tは、前記第3板材の厚み(mm)を示す。
sp2=dmax2−df2 ・・・(6)
上記式(6)において、dmax2は、前記負荷工程において前記第2負荷部に最大荷重が負荷されたときの前記第2基準位置と前記第3板材との距離(mm)を示し、df2は、前記除荷工程後の前記第2基準位置と前記第3板材との距離(mm)を示す。
本発明によれば、溶接構造部材の疲労強度を簡単に向上させることができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る製造方法において用いられる素材を示す図である。 図2は、第1実施形態に係る製造方法の各工程を説明するための図である。 図3は、第1負荷部の好ましい変位を説明するための図である。 図4は、基準位置の決定方法を説明するための図である。 図5は、補修対象となる溶接継手を示す図である。 図6は、溶接継手の補修方法を説明するための図である。 図7は、溶接継手の補修方法を説明するための図である。 図8は、溶接継手の補修方法を説明するための図である。 図9は、本発明の第2実施形態に係る製造方法において用いられる素材を示す図である。 図10は、第2実施形態に係る製造方法の各工程を説明するための図である。 図11は、第1負荷部および第2負荷部の好ましい変位を説明するための図である。 図12は、本発明の第3実施形態に係る製造方法において用いられる素材を示す図である。 図13は、第3実施形態における負荷工程を説明するための図である。 図14は、解析モデルを示す図である。 図15は、解析結果を示す図である。 図16は、解析結果を示す図である。 図17は、解析結果を示す図である。 図18は、解析結果を示す図である。 図19は、解析結果を示す図である。
本発明は、第1板材および第2板材を有し、第1板材の少なくとも一部と第2板材の少なくとも一部とが重なっており、かつ第1板材の縁部に沿って形成された溶接ビードによって上記縁部が第2板材の表面に接合されている素材から溶接構造部材を製造する方法に関する。本発明は、上記の構成を有する種々の素材(溶接継手)から溶接構造部材を製造する際に利用することができる。また、本発明は、上記の構成を有する種々の素材(溶接継手)を補修する際にも利用することができる。以下、本発明の実施の形態に係る溶接構造部材の製造方法について詳細に説明する。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る溶接構造部材の製造方法について説明する。まず、本実施形態に係る製造方法において用いられる素材について説明する。図1は、本実施形態に係る製造方法において用いられる素材を示す図であり、(a)は素材を示す斜視図であり、(b)は(a)のb−b部分を示す断面図である。
図1に示すように、素材10は、金属からなる第1板材12と、金属からなる第2板材14と、溶接ビード(溶接金属)16とを備えている。本実施形態では、第1板材12として、例えば、厚みが4mm〜60mmの金属板が用いられ、第2板材14として、例えば、厚みが1mm〜60mmの金属板が用いられる。
第1板材12の縁部には、第1板材12を厚み方向に貫通するように開先12aが形成されている。第2板材14は、第1板材12の厚み方向における一方側に設けられている。本実施形態では、第2板材14は、開先12aを覆うように設けられた裏当て材である。
溶接ビード16は、第1板材12の縁部に沿って形成されている。本実施形態では、溶接ビード16は、第1板材12の縁部に形成された開先12a内に形成されている。第1板材12の縁部(本実施形態では、開先12aの縁部)は、溶接ビード16によって第2板材14の表面14aに接合されている。溶接ビード16は、例えば、ガス溶接、アーク溶接、電子ビーム溶接、またはレーザビーム溶接等の公知の方法によって形成できる。溶接ビードの形成方法については、後述する他の実施形態においても同様である。
次に、本実施形態に係る溶接構造部材の製造方法が備える各工程について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る製造方法の各工程を説明するための図である。なお、図2には、素材10の正面図(溶接ビード16の長さ方向から見た図)が示されている。
本実施形態では、図1および図2に示すように、第2板材14のうち溶接ビード16の幅方向において開先12aよりも一方側の部分および上記幅方向において開先12aよりも他方側の部分をそれぞれ第1負荷部14bと規定する。本実施形態では、一方の第1負荷部14bは、上記幅方向における溶接ビード16の一方側で第1板材12に重なり、他方の第1負荷部14bは、上記幅方向における溶接ビード16の他方側で第1板材12に重なっている。
本実施形態に係る製造方法では、下記の負荷工程および除荷工程が順に実施される。
(負荷工程)
図2(a)および図2(b)に示すように、負荷工程では、各第1負荷部14bが第1板材12の厚み方向において第1板材12から離れるように、各第1負荷部14bに力Fを加える。本実施形態では、素材10のうち溶接ビード16のルート部16a(図2(b)参照)の近傍の部分を塑性変形させるように、第1負荷部14bに力を加える。なお、溶接ビード16のルート部16aには、第1板材12側のルート部と、第2板材14側のルート部とが含まれる。負荷工程においては、特に、第1板材12側のルート部の近傍の部分に塑性変形を生じさせることが好ましい。
第1負荷部14bに対する荷重の負荷方法は特に限定されないが、例えば、爪付きジャッキを用いる場合には、爪部を第1板材12と第1負荷部14bとの間に差し込んで、第1板材12と第1負荷部14bとが互いに離れるように、爪部によって第1板材12と第1負荷部14bとに力を加えてもよい。詳細な説明は省略するが、例えば、第1板材12と第1負荷部14bとの間に楔を打ち込むことによって第1負荷部14bに力を加えてもよく、バール等の工具を用いて第1負荷部14bを第1板材12から離れるように引っ張ってもよい。
なお、本実施形態では、第1板材12と第1負荷部14bとの間に、例えば、第1板材12の厚み方向における長さが0.1mm以上となる隙間が形成されていることが好ましい。この場合、上述の爪部、楔およびバール等の工具を第1板材12と第1負荷部14bとの間に差し込みやすくなるので、負荷工程を効率よく実施することができる。
(除荷工程)
除荷工程では、負荷工程において第1負荷部14bに加えていた力を除く。これにより、第2板材14は、負荷工程前の第2板材14の形状に戻るように変形する。このようにして、溶接構造部材10aが製造される。
なお、本実施形態では、上述のように、負荷工程においてルート部16aの近傍を塑性変形させている。そのため、第2板材14は、負荷工程前の第2板材14の形状に完全には戻らない。すなわち、溶接構造部材10aの形状は、素材10と同一ではない。
(本実施形態の作用効果)
素材10において溶接ビード16のルート部16aの近傍には、溶接時の膨張および溶接後の収縮によって、引張の残留応力が発生しているおそれがある。このため、素材10をそのまま溶接構造部材として利用すると、素材10に繰り返し応力が作用した際に、ルート部16aの近傍において応力集中が生じ、疲労亀裂が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態に係る製造方法では、溶接構造部材において上記のような応力集中が発生することを抑制するために、素材10に対して、上述の負荷工程および除荷工程を実施することによって、ルート部16aの近傍に圧縮方向の力を加えている。
具体的には、まず、負荷工程において、上述したように、第1負荷部14bが第1板材12から離れるように、第1負荷部14bに力が加えられる。これにより、ルート部16aの近傍の部分が第2板材14側に引っ張られる。本実施形態では、第1負荷部14bは、ルート部16aを中心として回転するように第1板材12から離れるので、ルート部16aの近傍の部分には、溶接ビード16の幅方向に平行な方向において引張の力が与えられる。これにより、ルート部16aの近傍の部分に引張塑性ひずみが生じる。
その後、除荷工程を実施することによって、上述したように、第2板材14は、元の形状に戻るように変形する。これにより、素材10のうちルート部16aの近傍の部分が、第2板材14によって第1板材12側に押し付けられる。すなわち、スプリングバックの効果が生じる。この結果、ルート部16aの近傍の部分に、溶接ビード16の幅方向に平行な方向において圧縮の力を加えることができる。これにより、ルート部16aの近傍の部分の引張残留応力を低減できる、またはルート部16aの近傍の部分に圧縮残留応力を発生させることができる。
このため、例えば、溶接構造部材10aに荷重が繰り返し加わった場合でも、ルート部16aの近傍において大きな引張応力が発生することを防止することができる。その結果、ルート部16aの近傍において疲労亀裂が発生することを抑制することができる。また、ルート部16aの近傍に疲労亀裂が既に発生している場合には、その亀裂先端の引張残留応力を低減できる、または亀裂先端に圧縮残留応力を発生させることができるので、疲労亀裂が進展することを抑制することができる。
以上のように、本実施形態に係る製造方法によれば、第1負荷部14bに力を加えることによって、溶接構造部材10aの疲労強度を簡単に向上させることができる。
なお、図2では、一対の第1負荷部14bに対して同時に負荷工程および除荷工程を実施する場合について説明したが、一方の第1負荷部14bに対して負荷工程および除荷工程を実施した後に、他方の第1負荷部14bに対して負荷工程および除荷工程を実施してもよい。
また、図2では、第2板材14が変形し、第1板材12は変形していないが、第1板材12が変形してもよい。具体的には、負荷工程においては、第1負荷部14bが第1板材12の厚み方向において第1板材12から離れるように第1負荷部14bに力が加えられていれば、第1板材12および第2板材14のいずれが変形してもよい。
(負荷工程における第1負荷部の好ましい変位)
次に、負荷工程おける第1負荷部14bの好ましい変位について説明する。図3は、第1負荷部14bの好ましい変位を説明するための図であり、(a)は、負荷工程において第1負荷部14bに最大荷重が負荷されたとき(第1負荷部14bに加えられる力が最大となったとき)の素材10の状態を示し、(b)は除荷工程後の素材10(溶接構造部材10a)の状態を示す。
図3に示すように、本実施形態では、溶接ビード16の長さ方向に直交する断面において、第2板材14の表面14aにおける第1負荷部14bと溶接ビード16との境界18aを通りかつ第1負荷部14bにおける表面14aに平行な仮想的な線を基準線RLと規定する。また、基準線RL上において境界18aから溶接ビード16とは反対側に20mm離れた位置を基準位置18bと規定する。さらに、図3(a)に示すように、負荷工程において第1負荷部14bに最大荷重が負荷されたときの基準位置18bと第1板材12との距離を距離dmaxと規定し、図3(b)に示すように、除荷工程後の基準位置18bと第1板材12との距離を距離dと規定する。なお、距離dmaxおよび距離dは、第1板材12の厚み方向における距離(mm)である。
本実施形態では、負荷工程において、上記のようにして規定された基準位置18bが、下記式(1)の関係を満たすように、第1負荷部14bを変位させることが好ましい。この場合、ルート部16a(図2参照)の近傍の部分に、圧縮方向の力を十分に加えることができ、ルート部16aの近傍の部分の引張残留応力を十分に低減できる、またはルート部16aの近傍の部分に十分な圧縮残留応力を発生させることができる。
sp×(t/t1.5≧0.15 ・・・(1)
上記式(1)において、dspは、下記式(2)によって規定され、tは、第1板材12の厚み(mm)を示し、tは、第2板材14の厚み(mm)を示す。
sp=dmax−d ・・・(2)
なお、図3では、一方の第1負荷部14bについて説明したが、他方の第1負荷部14bについても同様に基準位置18bを規定し、基準位置18bが、上記式(1)の関係を満たすように、第1負荷部14bを変位させることが好ましい。
また、上記においては、溶接ビード16の幅方向において第1負荷部14bが20mm以上の長さを有している場合について説明したが、図4に示すように、溶接ビード16の幅方向において第1負荷部14bの長さが20mm以下である場合も同様に基準位置18bを規定し、その基準位置18bに基づいて距離dmaxおよび距離d(図示せず)が規定される。
(本実施形態の利用例)
本実施形態に係る製造方法は、溶接継手を補修する際にも利用できる。例えば、図5に示すように、2枚の金属板20a,20bが突き合わせ溶接された構成を有する溶接継手20において、金属板20aに亀裂22が生じたとする。この場合、まず、図5および図6に示すように、金属板20aにおいて亀裂22が生じている部分を取り除くことによって、金属板20aに開先24を形成する。なお、開先24の形成方法は、上述の特許文献1に開示された方法と同様であるので、詳細な説明は省略する。
次に、図7に示すように、開先24を覆うように金属板20aの裏面側に裏当て材26を配置するとともに、開先24内に溶接ビード(溶接金属)28を形成することによって、金属板20aを裏当て材26の表面26aに接合する。次に、図8に示すように、裏当て材26および溶接ビード28のうち、金属板20aから金属板20b側に突出している部分を除去する。これにより、溶接継手20の補修が完了する。なお、裏当て材26および溶接ビード28を上記のように除去しなくてもよいが、裏当て材26と溶接ビード28との境界部において応力集中が生じることを抑制するためには、裏当て材26および溶接ビード28のうち、金属板20aから金属板20b側に突出した部分を除去することが好ましい。
その後、補修が完了した溶接継手20を素材として、上述の実施形態で説明したように、負荷工程および除荷工程を実施する。具体的には、金属板20aを第1板材とし、裏当て材26を第2板材とし、裏当て材26のうち、溶接ビード28の幅方向において開先24よりも一方側の部分および上記幅方向において開先24よりも他方側の部分をそれぞれ第1負荷部26bとして、負荷工程および除荷工程を実施する。これにより、補修された溶接継手20の疲労強度を向上させることができる。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る溶接構造部材の製造方法について説明する。まず、本実施形態に係る製造方法において用いられる素材について説明する。図9は、本実施形態に係る製造方法において用いられる素材を示す図であり、(a)は素材を示す斜視図であり、(b)は(a)のb−b部分を示す断面図である。
図9に示すように、素材30は、金属からなる第1板材32aと、金属からなる第2板材34と、金属からなる第3板材32bと、溶接ビード(溶接金属)36とを備えている。本実施形態では、第1板材32aおよび第3板材32bとして、例えば、厚みが4mm〜60mmの金属板が用いられ、第2板材34として、例えば、厚みが4mm〜60mmの金属板が用いられる。
第1板材32aと第3板材32bとは、互いの間に開先33が形成されるように、第2板材34の表面34a上に設けられている。本実施形態においても、第2板材34は、開先33を覆うように設けられた裏当て材である。
溶接ビード36は、第1板材32aの縁部および第3板材32bの縁部に沿って形成されている。本実施形態では、溶接ビード36は、第1板材32aの縁部と第3板材32bの縁部との間に形成された開先33内に形成されている。第1板材32aの縁部および第3板材32bの縁部は、溶接ビード36によって互いに接合されるとともに第2板材34の表面34aに接合されている。すなわち、素材30は、第1板材32aと第3板材32bとが突き合わせ溶接された溶接継手である。
次に、本実施形態に係る溶接構造部材の製造方法が備える各工程について詳細に説明する。図10は、本実施形態に係る製造方法の各工程を説明するための図である。なお、図10には、素材30の正面図(溶接ビード36の長さ方向から見た図)が示されている。
本実施形態では、図9および図10に示すように、第2板材34のうち溶接ビード36の幅方向において開先33よりも一方側の部分を第1負荷部34bと規定し、第2板材34のうち溶接ビード36の幅方向において開先33よりも他方側の部分を第2負荷部34cと規定する。本実施形態では、第1負荷部34bは、上記幅方向における溶接ビード36の一方側で第1板材32aに重なり、第2負荷部34cは、上記幅方向における溶接ビード36の他方側で第3板材32bに重なっている。
本実施形態に係る製造方法では、下記の負荷工程および除荷工程が順に実施される。
(負荷工程)
図10(a)および図10(b)に示すように、負荷工程では、第1負荷部34bが第1板材32aの厚み方向において第1板材32aから離れるように、かつ第2負荷部34cが第3板材32bの厚み方向において第3板材32bから離れるように、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに力Fを加える。本実施形態では、素材30のうち溶接ビード36のルート部36a,36b(図10(b)参照)の近傍の部分を塑性変形させるように、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに力を加える。なお、溶接ビード36のルート部36aには、第1板材32a側のルート部と、第2板材34側のルート部とが含まれる。同様に、溶接ビード36のルート部36bには、第3板材32b側のルート部と、第2板材34側のルート部とが含まれる。負荷工程においては、特に、第1板材32a側のルート部の近傍の部分および第3板材32b側のルート部の近傍の部分に塑性変形を生じさせることが好ましい。
第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに対する荷重の負荷方法は特に限定されないが、例えば、上述の第1実施形態における第1負荷部14bに対する負荷方法と同様の方法で荷重を負荷することができる。
なお、本実施形態においても、上述の第1実施形態の素材10と同様に、第1板材32aと第1負荷部34bとの間、および第3板材32bと第2負荷部34cとの間には、第1板材32a(または第3板材32b)の厚み方向における長さが0.1mm以上となる隙間が形成されていることが好ましい。
(除荷工程)
除荷工程では、負荷工程において第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに加えていた力を除く。これにより、第2板材34は、負荷工程前の第2板材34の形状に戻るように変形する。このようにして、溶接構造部材30aが製造される。
なお、本実施形態では、上述のように、負荷工程においてルート部36a,36bの近傍を塑性変形させている。そのため、第2板材34は、負荷工程前の第2板材34の形状に完全には戻らない。すなわち、溶接構造部材30aの形状は、素材30と同一ではない。
(本実施形態の作用効果)
素材30において溶接ビード36のルート部36a,36bの近傍には、溶接時の膨張および溶接後の収縮によって、引張の残留応力が発生しているおそれがある。このため、素材30をそのまま溶接構造部材として利用すると、素材30に繰り返し応力が作用した際に、ルート部36a,36bの近傍において応力集中が生じ、疲労亀裂が生じるおそれがある。
そこで、本実施形態に係る製造方法では、溶接構造部材において上記のような応力集中が発生することを抑制するために、素材30に対して、上述の負荷工程および除荷工程を実施することによって、ルート部36a,36bの近傍に圧縮方向の力を加えている。
具体的には、まず、負荷工程において、上述したように、第1負荷部34bが第1板材32aから離れるように、かつ第2負荷部34cが第3板材32bから離れるように、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに力を加える。これにより、ルート部36aの近傍の部分が第1負荷部34b側に引っ張られ、かつルート部36bの近傍の部分が第2負荷部34c側に引っ張られる。本実施形態では、第1負荷部34bは、ルート部36aを中心として回転するように第1板材32aから離れ、第2負荷部34cは、ルート部36bを中心として回転するように第3板材32bから離れる。このため、ルート部36a,36bの近傍の部分には、溶接ビード36の幅方向に平行な方向において引張の力が与えられる。その結果、ルート部36a,36bの近傍の部分に引張塑性ひずみが生じる。
その後、除荷工程を実施することによって、上述したように、第2板材34は、元の形状に戻るように変形する。これにより、第2板材34によって、素材30のうちルート部36aの近傍の部分が第1板材32a側に押し付けられ、ルート部36bの近傍の部分が第3板材32b側に押し付けられる。すなわち、スプリングバックの効果が生じる。この結果、ルート部36a,36bの近傍の部分に、溶接ビード36の幅方向に平行な方向において圧縮の力を加えることができる。これにより、ルート部36a,36bの近傍の部分の引張残留応力を低減できる、またはルート部36a,36bの近傍の部分に圧縮残留応力を発生させることができる。
このため、例えば、溶接構造部材30aに荷重が繰り返し加わった場合でも、ルート部36a,36bの近傍において大きな引張応力が発生することを防止することができる。その結果、ルート部36a,36bの近傍において疲労亀裂が発生することを抑制することができる。また、ルート部36a,36bの近傍に疲労亀裂が既に発生している場合には、その亀裂先端の引張残留応力を低減できる、または亀裂先端に圧縮残留応力を発生させることができるので、疲労亀裂が進展することを抑制することができる。
以上のように、本実施形態に係る製造方法によれば、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに力を加えることによって、溶接構造部材30aの疲労強度を簡単に向上させることができる。
なお、図10では、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに対して同時に負荷工程および除荷工程を実施する場合について説明したが、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cのうちの一方に対して負荷工程および除荷工程を実施した後に、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cのうちの他方に対して負荷工程および除荷工程を実施してもよい。
また、図10では、第2板材34が変形し、第1板材32aおよび第3板材32bは変形していないが、第1板材32aおよび第3板材32bが変形してもよい。具体的には、負荷工程においては、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cが第1板材32aおよび第3板材32bから離れるように第1負荷部34bおよび第2負荷部34cに力が加えられていれば、第1板材32aおよび第3板材32bが変形してもよい。
(負荷工程における第1負荷部および第2負荷部の好ましい変位)
次に、負荷工程おける第1負荷部34bおよび第2負荷部34cの好ましい変位について説明する。図11は、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cの好ましい変位を説明するための図である。
図11に示すように、本実施形態では、溶接ビード36の長さ方向に直交する断面において、第2板材34の表面34aにおける第1負荷部34bと溶接ビード36との第1境界38aを通りかつ第1負荷部34bにおける表面34aに平行な仮想的な線を第1基準線RL1と規定する。また、第1基準線RL1上において第1境界38aから溶接ビード36とは反対側に20mm離れた位置を第1基準位置38bと規定する。
同様に、溶接ビード36の長さ方向に直交する断面において、第2板材34の表面34aにおける第2負荷部34cと溶接ビード36との第2境界39aを通りかつ第2負荷部34cにおける表面34aに平行な仮想的な線を第2基準線RL2と規定する。また、第2基準線RL2上において第2境界39aから溶接ビード36とは反対側に20mm離れた位置を第2基準位置39bと規定する。
本実施形態では、負荷工程において、第1基準位置38bが下記式(3)の関係を満たすように、かつ第2基準位置39bが下記式(5)の関係を満たすように、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cを変位させることが好ましい。
sp1×(t/t1.5≧0.15 ・・・(3)
上記式(3)において、dsp1は、下記式(4)によって規定され、tは、第1板材32aの厚み(mm)を示し、tは、第2板材34の厚み(mm)を示す。
sp1=dmax1−df1 ・・・(4)
上記式(4)において、dmax1は、負荷工程において第1負荷部34bに最大荷重が負荷されたときの第1基準位置38bと第1板材32aとの距離(mm)を示し、df1は、除荷工程後の第1基準位置38bと第1板材32aとの距離(mm)を示す。
sp2×(t/t1.5≧0.15 ・・・(5)
上記式(5)において、dsp2は、下記式(6)によって規定され、tは、第2板材34の厚み(mm)を示し、tは、第3板材32bの厚み(mm)を示す。
sp2=dmax2−df2 ・・・(6)
上記式(6)において、dmax2は、負荷工程において第2負荷部34cに最大荷重が負荷されたときの第2基準位置39bと第3板材32bとの距離(mm)を示し、df2は、除荷工程後の第2基準位置39bと第3板材32bとの距離(mm)を示す。
第1基準位置38bが上記式(3)の関係を満たすように、かつ第2基準位置39bが上記式(5)の関係を満たすように、第1負荷部34bおよび第2負荷部34cを変位させることによって、ルート部36a,36b(図10参照)の近傍の部分に、圧縮方向の力を十分に加えることができる。その結果、ルート部36a,36bの近傍の部分の引張残留応力を十分に低減できる、またはルート部36a,36bの近傍の部分に十分な圧縮残留応力を発生させることができる。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係る溶接構造部材の製造方法について説明する。まず、本実施形態に係る製造方法において用いられる素材について説明する。図12は、本実施形態に係る製造方法において用いられる素材を示す図であり、(a)は素材を示す斜視図であり、(b)は(a)のb−b部分を示す断面図である。また、図13は、負荷工程を説明するための図である。
図12に示すように、素材40は、金属からなる第1板材42と、金属からなる第2板材44と、溶接ビード(溶接金属)46とを備えている。本実施形態では、第1板材42として、例えば、厚みが1mm〜60mmの金属板が用いられ、第2板材44として、例えば、厚みが1mm〜60mmの金属板が用いられる。
溶接ビード46は、第1板材42の縁部に沿って形成されている。第1板材42の縁部は、溶接ビード46によって第2板材44の表面44aに接合されている。本実施形態では、素材40は、重ね溶接継手である。
本実施形態では、図12に示すように、第2板材44のうち溶接ビード46の幅方向において溶接ビード46よりも一方側の部分を第1負荷部44bと規定する。第1負荷部44bは、上記幅方向における溶接ビード46の一方側で第1板材42に重なっている。
本実施形態においても、上述の実施形態と同様に、負荷工程および除荷工程が順に実施される。具体的には、図13に示すように、まず、負荷工程において、第1負荷部44bが第1板材42の厚み方向において第1板材42から離れるように、第1負荷部44bに力Fを加える。本実施形態では、素材40のうち溶接ビード46のルート部46a(図12(b)参照)の近傍の部分を塑性変形させるように、第1負荷部44bに力を加える。なお、溶接ビード46のルート部46aには、第1板材42側のルート部と、第2板材44側のルート部とが含まれる。負荷工程においては、特に、第1板材42側のルート部の近傍の部分に塑性変形を生じさせることが好ましい。
第1負荷部44bに対する荷重の負荷方法は特に限定されないが、例えば、上述の第1実施形態における第1負荷部14bに対する負荷方法と同様の方法で荷重を負荷することができる。
なお、本実施形態においても、上述の素材10,30と同様に、第1板材42と第1負荷部44bとの間には、第1板材42の厚み方向における長さが0.1mm以上となる隙間が形成されていることが好ましい。
次に、負荷工程において第1負荷部44bに加えていた力を除く(除荷工程)。これにより、第2板材44は、負荷工程前の第2板材44の形状に戻るように変形する。このようにして、溶接構造部材が製造される。
(本実施形態の作用効果)
素材40においても、上述の素材10,30と同様に、ルート部46aの近傍には、溶接時の膨張および溶接後の収縮によって、引張の残留応力が発生しているおそれがある。そこで、本実施形態においても上述の実施形態と同様に、素材40に対して負荷工程および除荷工程を実施することによって、ルート部46aの近傍に、溶接ビード46の幅方向に平行な方向において圧縮の力を加えている。
具体的には、まず、負荷工程において、上述したように、第1負荷部44bが第1板材42から離れるように第1負荷部44bに力を加える。これにより、ルート部46aの近傍の部分が第1負荷部44b側に引っ張られ、ルート部46aの近傍の部分に引張塑性ひずみが生じる。その後、除荷工程を実施することによって、上述したように、第2板材44は、元の形状に戻るように変形する。これにより、第2板材44によって、素材40のうちルート部46aの近傍の部分が第1板材42側に押し付けられ、ルート部46aの近傍の部分に圧縮方向の力を加えることができる。その結果、ルート部46aの近傍の部分の引張残留応力を低減できる、またはルート部46aの近傍の部分に圧縮残留応力を発生させることができる。したがって、上述の実施形態と同様に、本実施形態においても、溶接構造部材の疲労強度を向上させることができる。
以上のように、本実施形態に係る製造方法においても、上述の実施形態と同様に、第1負荷部44bに力を加えることによって、溶接構造部材の疲労強度を簡単に向上させることができる。
(負荷工程における第1負荷部の好ましい変位)
次に、負荷工程おける第1負荷部44bの好ましい変位について説明する。図13に示すように、本実施形態では、溶接ビード46の長さ方向に直交する断面において、第2板材44の表面44aにおける第1負荷部44bと溶接ビード46との境界48aを通りかつ第1負荷部44bにおける表面44aに平行な仮想的な線を基準線RLと規定する。また、基準線RL上において境界48aから溶接ビード46とは反対側に20mm離れた位置を基準位置48bと規定する。本実施形態では、負荷工程において、基準位置48bが下記式(1)の関係を満たすように、第1負荷部44bを変位させることが好ましい。
sp×(t/t1.5≧0.15 ・・・(1)
上記式(1)において、dspは、下記式(2)によって規定され、tは、第1板材42の厚み(mm)を示し、tは、第2板材44の厚み(mm)を示す。
sp=dmax−d ・・・(2)
上記式(2)において、dmaxは、負荷工程において第1負荷部44bに最大荷重が負荷されたときの基準位置48bと第1板材42との距離(mm)を示し、dは、除荷工程後の基準位置48bと第1板材42との距離(mm)を示す。
基準位置48bが上記式(1)の関係を満たすように第1負荷部44bを変位させることによって、ルート部46a(図12参照)の近傍の部分に、圧縮方向の力を十分に加えることができる。その結果、ルート部46aの近傍の部分の引張残留応力を十分に低減できる、またはルート部46の近傍の部分に十分な圧縮残留応力を発生させることができる。
(シミュレーションに基づく検討)
以下、有限要素法を用いたシミュレーション結果とともに、本発明の効果を説明する。本発明者らは、図14に示すように、上述の素材30の1/2の解析モデル(以下、解析モデル30と記載する。)を作成して、FEM解析を行った。なお、説明を簡便にするために、解析モデル30の各構成要素には、上述の素材30の対応する構成要素と同一の名称および符号を付している。図14において、(a)は解析モデルを示す図であり、(b)は解析モデルにおいてルート部36aに相当する部分の拡大図である。
解析モデル30は、4節点の2次元平面ひずみ要素を用いて作成した。図14に示すように、溶接ビード36の幅方向における解析モデル30の長さは100mmとし、第1板材32aの厚みtは12mmとし、第2板材34(第1負荷部34b)の厚みtは6mm、9mm、および12mmとし、第1板材32aと第1負荷部34bとの初期(負荷工程前)の隙間dは、0.1mm、0.2mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、および2.0mmとした。
FEM解析では、第1板材32a、第2板材34および溶接ビード36の材料として、SM490B(JIS G3106 2015)を用いたと仮定し、その応力−ひずみ線図を用いた。具体的には、降伏応力を452MPa、ヤング率を206GPa、ポアソン比を0.3にそれぞれ設定し、等方硬化則に従ってFEM解析を行った。
FEM解析では、まず、第1板材32aと第1負荷部34bとの隙間を拡げる方向の荷重を、第1板材32aおよび第1負荷部34bに与えた(負荷工程)。より具体的には、第2板材34の表面34aにおいて第1負荷部34bの端面A1から2mmの範囲、および第1板材32aのうち表面34aの上記2mmの範囲に対向する部分に荷重を均一に作用させた。その後、除荷を行い(除荷工程)、溶接ビード36のルート部36a(より具体的には、図14(b)に示す位置A2)に生じる溶接ビード36の幅方向に平行な方向の応力を算出した。
図15に、負荷工程および除荷工程において解析モデル30に与えられる荷重(負荷荷重)とルート部36aに生じる応力との関係を示し、図16に、負荷荷重と第1板材32aおよび第1負荷部34bの隙間の拡張量Δd(=その時点の隙間d−初期の隙間d)との関係を示す。なお、図15および図16には、隙間dを0.2mm、第2板材34の厚みtを9mm、負荷工程における最大負荷荷重を600MPaに設定した場合の解析結果を示す。
なお、図15以降の各図において、ルート部36aに生じる応力が正の値の場合は、ルート部36aに引張応力が発生していることを示し、負の値の場合は、ルート部36aに圧縮応力が発生していることを示す。拡張量Δdは、第1負荷部34bの端面A1(図14(a)参照)の第1板材32a側の端部A3と第1板材32aとの距離に基づいて算出した。
図15に示した結果から分かるように、負荷工程において負荷荷重が増加することにより、ルート部36aに引張応力が生じる。負荷荷重がさらに増加し、ルート部36a近傍が塑性変形し始めると、引張応力の増加量は減少する。その後、除荷工程において、負荷荷重が減少するのに従ってルート部36aの引張応力も減少する。負荷荷重がさらに減少することによって、ルート部36aには圧縮応力が生じる。
上記の解析結果から、素材30の製造時(第1板材32aと第2板材34との溶接時)にルート部36aに引張の残留応力が発生していたとしても、負荷工程および除荷工程を実行することにより、ルート部36aに、圧縮方向の力を加えることができることが分かった。すなわち、本発明に係る製造方法を実施することによって、ルート部36a近傍の引張残留応力を低減できる、またはルート部36a近傍に圧縮残留応力を発生させることができることが分かった。この効果によって、本発明によれば、溶接構造部材の疲労強度を向上することができる。
また、図16に示した結果から、負荷工程によってルート部36a近傍が塑性変形することにより、除荷工程後における第1板材32aと第1負荷部34bとの隙間は、初期の隙間dよりも大きくなることが分かった。
図17に、最大荷重時における第1板材32aおよび第1負荷部34bの隙間の拡張量Δdmaxと除荷工程後にルート部36aに生じた応力との関係を示す。なお、本解析においても、隙間dは0.2mmに設定した。第2板材34の厚みtは、6mm、9mmおよび12mmに設定した。
図17に示した結果から、隙間の拡張量Δdmaxが増加するほど、ルート部36aに生じる圧縮残留応力が増加することが分かった。一方で、拡張量Δdmaxが1mm以上となる条件では、ルート部36aに生じる圧縮残留応力はほぼ一定であった。これは、ルート部36a以外の部分における塑性変形量が増加したためであると考えられる。なお、本解析では、拡張量Δdmaxを約1mm以上にするためには、負荷工程における負荷荷重を700MPa以上にすればよいことが分かった。
図17に示した結果のうち、第2板材34の厚みtが6mmの場合の解析結果に着目すると、最大荷重が350MPaで拡張量Δdmaxが3mmとなり、小さな荷重で第1板材32aと第1負荷部34bとの隙間を大きく拡張できた。しかしながら、除荷工程後にルート部36aに生じる圧縮残留応力は減少した。これは、第2板材34の厚みが第1板材32aの厚みに対して薄くなったことで、負荷工程時に第2板材34の変形量が増加し、第1板材32a側のルート部の塑性変形量が減少したためであると考えられる。
一方、第1板材32aの厚みtおよび第2板材34の厚みtをともに12mmに設定した解析では、負荷荷重は増加するものの、拡張量Δdmaxが僅か0.4mmの場合でも、除荷工程後のルート部36aに生じる圧縮残留応力が600MPaに達した。以上の結果から、本発明においては、第2板材の厚みは、第1板材(第3板材)の厚みの半分以上であることが好ましく、2/3以上であることがより好ましいことが分かる。
図18に、第1板材32aおよび第1負荷部34bの初期の隙間dと除荷工程後のルート部36aに生じた応力との関係を示す。なお、図18には、第2板材34の厚みtを9mm、負荷工程における最大負荷荷重を650MPaに設定した場合の解析結果を示す。初期の隙間dは、0.1mm、0.2mm、0.5mm、1.0mm、1.5mm、および2.0mmに設定した。
図18に示した結果から、初期の隙間dの増加に伴い、除荷工程後にルート部36aに生じる圧縮残留応力が増加することが分かる。ただし、初期の隙間dがルート部36aに生じる圧縮残留応力に与える影響は小さいと考えられる。
以上の結果から、除荷工程後にルート部36aに生じる圧縮残留応力は、第1板材32aの厚み、第2板材34の厚み、および最大負荷荷重の影響を受けることが分かった。一方で、本発明者らは、種々の研究の結果、除荷工程後にルート部36aに生じる残留応力は、除荷工程後のスプリングバック量(最大荷重時の第1板材32aと第1負荷部34bとの距離−除荷工程後の第1板材32aと第1負荷部34bとの距離)にも影響を受けると考えた。そこで、本発明者らは、種々の研究に基づいて下記式(3a)で規定される第1負荷部34bの変位に関する指標Sを導き出し、当該指標Sと除荷工程後のルート部36aに生じた応力との関係をさらに調査した。調査結果を図19に示す。
S=dsp1×(t/t1.5 ・・・(3a)
上記式(3a)において、dsp1は、除荷工程後のスプリングバック量(mm)を示し、下記式(4a)によって規定される。tは、第1板材32aの厚みを示し、tは、第2板材34の厚みを示す。
sp1=dmax1−df1 ・・・(4a)
上記式(4a)において、dmax1は、負荷工程において第1負荷部34bに最大荷重が負荷されたときの第1負荷部34bの端部A3(図14参照)と第1板材32aとの距離を示し、df1は、除荷工程後の端部A3と第1板材32aとの距離を示す。
図19に示した結果から、指標Sを用いることによって、第1板材32aおよび第1負荷部34bの厚みかかわらず、除荷工程後のルート部36aに生じる残留応力を整理できることが分かる。たとえば、指標Sを0.15以上に設定することによって、母材の降伏応力の約50%に相当する圧縮残留応力をルート部36aに生じさせることができる。また、指標Sを0.2以上に設定することによって、十分に大きな圧縮残留応力(期待できる最大の圧縮残留応力に近い値)をルート部36aに生じさせることができる。
また、図19に示した結果から、第2実施形態の素材30において、上述の(3)式および(5)式の関係を満たすように第1負荷部34bおよび第2負荷部34cを変位させることによって、ルート部36a,36b(図10参照)の近傍の部分に、十分に大きな圧縮残留応力を生じさせることができることが分かる。
なお、第1実施形態に係る素材10および第3実施形態に係る素材40に関して、「第1板材および第2板材を有し、第1板材の少なくとも一部と第2板材の少なくとも一部とが重なっており、かつ第1板材の縁部に沿って形成された溶接ビードによって上記縁部が第2板材の表面に接合されている」という構成は、第2実施形態に係る素材30と共通している。したがって、第1実施形態に係る素材10および第3実施形態に係る素材40についても、上述の素材30についての解析と同様に良好な結果が得られると考えられる。
本発明によれば、溶接構造部材の疲労強度を簡単に向上させることができる。したがって、本発明は、溶接構造部材の製造に加えて、溶接構造部材(溶接継手等)の補修にも好適に利用できる。
10,30,40 素材
10a,30a 溶接構造部材
12,32a,42 第1板材
12a,33 開先
14,34,44 第2板材
14a,34a,44a 第2板材の表面
14b,34b,44b 第1負荷部
16,36,46 溶接ビード
16a,36a,36b,46a ルート部
32b 第3板材
34c 第2負荷部

Claims (5)

  1. 第1板材および第2板材を有し、前記第1板材の一部と前記第2板材の一部とが重なっており、かつ前記第1板材の縁部に沿って形成された溶接ビードによって前記縁部が前記第2板材の表面に接合されている素材から溶接構造部材を製造する方法であって、
    前記第2板材のうち前記溶接ビードの幅方向において前記溶接ビードよりも一方側でかつ前記第1板材に重なっている部分を第1負荷部として、前記第1負荷部が前記第1板材の厚み方向において前記第1板材から離れるように前記第1負荷部に力を加える負荷工程と、
    前記負荷工程において前記第1負荷部に加えられた力を除く除荷工程と、
    を備える、溶接構造部材の製造方法。
  2. 前記第1板材は、厚み方向に貫通するように前記縁部に形成された開先を有し、
    前記第2板材は、前記開先を覆うように設けられた裏当て材であり、
    前記溶接ビードは、前記第1板材と前記第2板材とを接合するように前記開先内に形成され、
    前記負荷工程では、前記第2板材のうち前記溶接ビードの前記幅方向において前記開先よりも一方側の部分および前記幅方向において前記開先よりも他方側の部分をそれぞれ前記第1負荷部として、前記第1負荷部に力を加える、請求項1に記載の溶接構造部材の製造方法。
  3. 前記素材は、前記第1板材との間に開先が形成されるように前記第2板材の前記表面上に設けられた第3板材をさらに有し、
    前記第2板材は、前記開先を覆うようにかつ前記第1板材および前記第3板材を接続するように設けられた裏当て材であり、
    前記溶接ビードは、前記第1板材と前記第2板材と前記第3板材とを接合するように前記開先内に形成され、
    前記負荷工程では、前記第2板材のうち前記溶接ビードの前記幅方向において前記開先よりも一方側で前記第1板材と重なっている部分を前記第1負荷部とし、前記第2板材のうち前記幅方向において前記開先よりも他方側で前記第3板材と重なっている部分を第2負荷部として、前記第1負荷部が前記第1板材の厚み方向において前記第1板材から離れるように前記第1負荷部に力を加えるとともに、前記第2負荷部が前記第3板材の厚み方向において前記第3板材から離れるように前記第2負荷部に力を加える、請求項1に記載の溶接構造部材の製造方法。
  4. 前記溶接ビードの長さ方向に直交する断面において、前記第2板材の前記表面における前記第1負荷部と前記溶接ビードとの境界を通りかつ前記第1負荷部における前記表面に平行な線を基準線とし、前記基準線上において前記境界から前記溶接ビードとは反対側に20mm離れた位置を基準位置とした場合に、前記基準位置は、下記式(1)で規定された関係を満たす、請求項1または2に記載の溶接構造部材の製造方法。
    sp×(t/t1.5≧0.15 ・・・(1)
    上記式(1)において、dspは、下記式(2)によって規定され、tは、前記第1板材の厚み(mm)を示し、tは、前記第2板材の厚み(mm)を示す。
    sp=dmax−d ・・・(2)
    上記式(2)において、dmaxは、前記負荷工程において前記第1負荷部に最大荷重が負荷されたときの前記基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示し、dは、前記除荷工程後の前記基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示す。
  5. 前記溶接ビードの長さ方向に直交する断面において、前記第2板材の前記表面における前記第1負荷部と前記溶接ビードとの第1境界を通りかつ前記第1負荷部における前記表面に平行な線を第1基準線とし、前記第1基準線上において前記第1境界から前記溶接ビードとは反対側に20mm離れた位置を第1基準位置とした場合に、前記第1基準位置は、下記式(3)で規定された関係を満たし、
    前記断面において、前記第2板材の前記表面における前記第2負荷部と前記溶接ビードとの第2境界を通りかつ前記第2負荷部における前記表面に平行な線を第2基準線とし、前記第2基準線上において前記第2境界から前記溶接ビードとは反対側に20mm離れた位置を第2基準位置とした場合に、前記第2基準位置は、下記式(5)で規定された関係を満たす、請求項3に記載の溶接構造部材の製造方法。
    sp1×(t/t1.5≧0.15 ・・・(3)
    上記式(3)において、dsp1は、下記式(4)によって規定され、tは、前記第1板材の厚み(mm)を示し、tは、前記第2板材の厚み(mm)を示す。
    sp1=dmax1−df1 ・・・(4)
    上記式(4)において、dmax1は、前記負荷工程において前記第1負荷部に最大荷重が負荷されたときの前記第1基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示し、df1は、前記除荷工程後の前記第1基準位置と前記第1板材との距離(mm)を示す。
    sp2×(t/t1.5≧0.15 ・・・(5)
    上記式(5)において、dsp2は、下記式(6)によって規定され、tは、前記第2板材の厚み(mm)を示し、tは、前記第3板材の厚み(mm)を示す。
    sp2=dmax2−df2 ・・・(6)
    上記式(6)において、dmax2は、前記負荷工程において前記第2負荷部に最大荷重が負荷されたときの前記第2基準位置と前記第3板材との距離(mm)を示し、df2は、前記除荷工程後の前記第2基準位置と前記第3板材との距離(mm)を示す。

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