JP7052562B2 - 鋼床版および鋼床版の製造方法 - Google Patents

鋼床版および鋼床版の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼床版および鋼床版の製造方法に関する。
従来、橋梁等の土木構造物において、鋼床版が用いられている。図1は、鋼床版を備えた橋梁の一例を示す図である。なお、図1においては、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示している。X方向は橋梁1の長さ方向を示し、Y方向は橋梁1の幅方向を示し、Z方向は鉛直方向を示す。また、図1においては、橋梁1上を走行する車両8が示されている。以下の説明では、橋梁1の幅方向を、左右方向ともいう。
図1に示す橋梁1は、鋼床版2および舗装材7を有している。鋼床版2は、デッキプレート3と、複数の主桁4と、複数の横リブ5と、複数の縦リブ6とを有している。デッキプレート3、主桁4、横リブ5および縦リブ6はそれぞれ、鋼材からなる。なお、以下においては、デッキプレート3を基準として、舗装材7が設けられる側を上方とし、縦リブ6が設けられる側を下方とする。
デッキプレート3は、平板形状を有する。デッキプレート3の上面3aは、舗装材7によって舗装されている。主桁4は、Y-Z平面に平行な断面においてI字形状を有し、かつ橋梁1の長さ方向に延びるように設けられている。横リブ5は、X-Z平面に平行な断面において逆T字形状を有し、かつ橋梁1の幅方向に延びるように設けられている。
縦リブ6は、長尺形状を有し、橋梁1の長さ方向に延びるように、かつ横リブ5を貫通するように設けられている。図1に示した縦リブ6は、いわゆるUリブであり、Y-Z平面に平行な断面において、左右方向に延びる底部6aと、底部6aの左右方向における両端部から上方に延びる一対の側壁部6b,6cとを有する。側壁部6b,6cは、先端側(図1においては上側)ほど互いの間隔が大きくなるように、底部6aに対して傾斜している。縦リブ6の上部がデッキプレート3によって塞がれるように、側壁部6b,6cの上端部は、デッキプレート3の下面3bに接続されている。すなわち、縦リブ6は、閉断面リブである。本明細書における「閉断面リブ」とは、デッキプレートの下面に接続されることで、デッキプレートの下面との間に閉断面を形成する長尺状のリブのことを言う。
上記のような構成を有する橋梁1では、例えば、橋梁1上を自動車8が通過することによって、鋼床版2において疲労亀裂が発生する場合がある。この疲労亀裂は、例えば、デッキプレート3と側壁部6b,6cとの溶接部9において発生する。以下、溶接部9における疲労亀裂の発生態様について説明する。
図2は、デッキプレート3と側壁部6bとの溶接部9を示す拡大図である。図2に示すように、側壁部6bをデッキプレート3に溶接する際には、例えば、側壁部6bの先端部のうち外側の部分6dが溶接金属10を介してデッキプレート3に接合される。一般に、側壁部6bの厚み方向における溶接金属10の溶け込み深さは、縦リブ6の厚みの75%以上100%未満が基準とされており、側壁部6bの先端部のうち内側の部分6eはデッキプレート3に接合されない。このため、デッキプレート3と溶接金属10と部分6eとの間に、切欠き状の空間11(以下、不溶着部11という。)が形成される。このような溶接部9では、溶接後の溶接金属10の収縮が周囲の母材に拘束されることによって、溶接金属10の近傍で引張の残留応力が発生している。
ここで、自動車8が橋梁1上を通過すると、デッキプレート3に荷重が加わり、デッキプレート3が撓む。これにより、デッキプレート3と溶接金属10との境界部および側壁部6bと溶接金属10との境界部に、曲げ応力および引張応力が発生する。これらの応力の内、橋梁1の幅方向(左右方向)の引張応力が上述の残留応力に重畳されることにより、溶接金属10の近傍では大きな引張応力が発生しやすい。そして、複数の自動車8が通過することによって、上記荷重がデッキプレート3に繰り返し加わると、デッキプレート3と溶接金属10との境界部近傍および側壁部6bと溶接金属10との境界部近傍において疲労亀裂が発生する場合がある。例えば、溶接金属10のデッキプレート3側の止端12または側壁部6b側の止端13に疲労亀裂が発生したり、デッキプレート3側のルート部14に疲労亀裂が発生したりする。これにより、鋼床版2の強度が低下するおそれがある。
ところで、鋼床版2では、止端12および止端13は、縦リブ6の外側に位置する。このため、止端12および止端13において発生した疲労亀裂は、橋梁1の点検時等に、作業者によって発見されやすい。この場合、疲労亀裂が発生した部分を早期に補修することができるので、鋼床版2の強度低下を防止しやすい。
一方、ルート部14は、縦リブ6の外側からは目視できない位置にあるので、ルート部14において発生した疲労亀裂を作業者が発見することは難しい。また、仮に、ルート部14に疲労亀裂が発生していることを発見できたとしても、ルート部14を縦リブ6の外側から補修することは難しい。このため、ルート部14に疲労亀裂が発生した場合は、縦リブ6の内側からルート部14を補修する必要があり、疲労亀裂の補修に時間および労力を要する。
そこで、従来、ルート部14において疲労亀裂が発生することを防止するための技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、ピーニング施工方法が記載されている。特許文献1に記載された方法では、Uリブ(縦リブ)を用いた鋼床版において、ピーニング工具によってデッキプレートの上面に打撃を与える。特許文献1には、上記のように打撃を与えることによって、Uリブの内側の部分に圧縮残留ひずみを与えることができると記載されている。特許文献1に記載された方法では、上記のようにして圧縮残留応力を与えることによって、Uリブの内側の部分に発生した疲労亀裂の進展を抑制していると考えられる。
特開2014-172043号公報
しかしながら、上記の方法では、デッキプレートの上面側をピーニング工具によって打撃するので、デッキプレートの下面側に十分な大きさの圧縮残留応力を与えることは難しい。この場合、疲労亀裂の進展または疲労亀裂の発生を十分に抑制できない。また、上記の方法では、デッキプレートと縦リブとを溶接した後に、圧縮残留応力を与えるための処理が必要になり、製造効率が低下する。
そこで、本発明は、溶接後に特別な処理を施すことなく縦リブとデッキプレートとの溶接部のルート部に疲労亀裂が発生することを抑制できる鋼床版およびその鋼床版の製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、下記の鋼床版および鋼床版の製造方法を要旨とする。
(1)上面および下面を有するデッキプレートと、
前記デッキプレートの前記下面との間で閉断面を形成する縦リブと、
前記デッキプレートと前記縦リブとを接合するように前記縦リブの長さ方向に延びかつ前記縦リブの外側から形成されている溶接部とを備え、
前記溶接部は、前記デッキプレートに溶け込んだ溶接金属を含み、
前記デッキプレートの厚み方向において、前記溶接金属の前記デッキプレートへの溶け込み深さは、前記デッキプレートの厚みの1/3以上である、鋼床版。
(2)鋼床版において上面となる第1面および前記鋼床版において下面となる第2面を有するデッキプレートに、前記第2面との間で閉断面を形成するように前記第2面に縦リブを接合する溶接工程を備え、
前記溶接工程では、前記縦リブの外側から前記デッキプレートと前記縦リブとを接合するように前記縦リブの長さ方向に延びる溶接部を形成し、
前記溶接部は、前記デッキプレートに溶け込んだ溶接金属を含み、
前記デッキプレートの厚み方向において、前記溶接金属の前記デッキプレートへの溶け込み深さは、前記デッキプレートの厚みの1/3以上である、鋼床版の製造方法。
(3)前記溶接工程の前に、前記デッキプレートのうち前記溶接工程で前記溶接金属を溶け込ませる部分に、前記第2面から前記第1面側に向かって凹む凹部を形成する、凹部形成工程をさらに備える、上記(2)に記載の鋼床版の製造方法。
本発明によれば、溶接後に特別な処理を施すことなく縦リブとデッキプレートとの溶接部のルート部に疲労亀裂が発生することを抑制できる。
図1は、鋼床版を備えた橋梁の一例を示す図である。 図2は、デッキプレートと縦リブとの溶接部の一例を示す図である。 図3は、鋼床版の解析モデルを説明するための図である。 図4は、FE解析結果を示すグラフである。 図5は、溶接金属の溶け込み深さと残留応力との関係を説明するための図である。 図6は、溶接金属の溶け込み深さと残留応力との関係を説明するための図である。 図7は、溶接金属の溶け込み深さと残留応力との関係を説明するための図である。 図8は、鋼床版の製造方法を説明するための図である。 図9は、鋼床版の製造方法を説明するための図である。 図10は、鋼床版の製造方法の他の例を説明するための図である。 図11は、鋼床版の他の例を示す図である。 図12は、鋼床版の他の例を示す図である。
(本発明者らによる検討)
本発明者らは、これまで、鋼床版において疲労亀裂が発生することを抑制するために、種々の研究を行ってきた。この研究の中で、本発明者らは、デッキプレートと縦リブとの溶接部が鋼床版の疲労強度に与える影響について詳細に検討してきた。具体的には、本発明者らは、上述のデッキプレート3および縦リブ6を備えた鋼床版の解析モデルを作成し、有限要素(FE)解析(以下、FE解析と記載する)を行うとともに、解析結果に基づいて詳細な検討を行った。
図3は、鋼床版の解析モデルを説明するための図である。具体的には、図3(a)は、鋼床版の解析モデルを示す図であり、図3(b)は、解析モデルのうちデッキプレートと側壁部との溶接部を拡大して示した概略図である。なお、図3(a)においては、鋼床版の幅方向における中心線を一点鎖線で示している。
図3に示すように、本発明者らは、4節点の2次元平面ひずみ要素を用いて、鋼床版2aの1/2線対称モデルを作成した。なお、鋼床版2aは、上述の主桁4および横リブ5を備えていない。鋼床版2aの寸法には、日本鋼構造協会規格 JSS II 08-2006で規定された鋼床版用U形鋼(320×240×6-40)の寸法を用いた。鋼床版2aの幅方向における不溶着部11の長さL1は、0.8mmとし、ルート部14(不溶着部11の先端)と止端12との間の距離L2は、12.8mmとした。なお、図3には示していないが、後述する図5に示すように、溶接金属10の周囲には、溶接金属10とともに溶接部9を構成する溶接熱影響部(以下、HAZと記載する。)16が形成されるものとした。FE解析では、上面3aが下方を向き、下面3bが上方を向くように鋼床版2aを配置した。以下においては、上面3aを第1面3aと記載し、下面3bを第2面3bと記載する。
なお、鋼床版2aの材料としてSM490B(JIS G3106 2015)を用いたと仮定し、材料挙動は非線形移動硬化則に従うとして、FE解析を行った。
FE解析では、片側すみ肉溶接によって側壁部6bをデッキプレート3の第2面3bに接合した(溶接工程)。具体的には、アーク溶接によって片側すみ肉溶接を行ったと仮定して、溶接金属10に入熱を行った。溶接金属10の側壁部6bへの溶け込み深さdは、側壁部6bの厚みの75%とした。溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さDは、2.5mm、3.2mm、4.0mm、5.3mm、7.7mm、11.4mmおよび16.0mmに設定した。溶接工程における雰囲気温度は、20℃とした。
図4に解析結果を示す。なお、図4は、溶接金属10の溶け込み深さDとルート部14およびデッキプレート3側の止端12に生じた残留応力(鋼床版2aの幅方向に生じる応力成分)との関係を示すグラフである。図4において横軸は、デッキプレート3の厚み(16.0mm)に対する溶接金属10の溶け込み深さDの割合(%)を示す。図4ならびに後述の図6および7において、残留応力が正の値で示される場合は、鋼床版2aの幅方向において引張の残留応力が生じていることを示し、残留応力が負の値で示される場合は、鋼床版2aの幅方向において圧縮の残留応力が生じていることを示す。
図4に示した結果から、デッキプレート3における溶接金属10の溶け込み深さDを大きくすることによって、ルート部14に生じる圧縮残留応力が大きくなることが分かる。特に、溶け込み深さDをデッキプレート3の厚みの1/3(33.3%)以上にすることによって、ルート部14に生じる圧縮残留応力が顕著に増大している。
ここで、従来の一般的な鋼床版においては、デッキプレート3における溶接金属10の溶け込み深さDは、デッキプレート3の厚みの20%程度である。この点を考慮すると、溶け込み深さDをデッキプレート3の厚みの1/3(33.3%)以上にすることによって、従来の鋼床版に比べて、ルート部14の近傍に、十分な大きさの圧縮残留応力を生じさせることができると考えられる。
上記のようにルート部14の近傍に十分な大きさの圧縮応力を生じさせることができれば、鋼床版に荷重が繰り返し加わったとしても、ルート部14の近傍に大きな引張応力が生じることを抑制することができる。これにより、ルート部14から疲労亀裂が発生することを抑制できると考えられる。
また、図4に示すように、溶け込み深さDをデッキプレート3の厚みの1/3(33.3%)以上にすることによって、デッキプレート3側の止端12に生じる圧縮残留応力も十分に大きくなっている。したがって、溶け込み深さDをデッキプレート3の厚みの1/3(33.3%)以上にすることによって、止端12から疲労亀裂が発生することも十分に抑制できると考えられる。
図5~7は、溶接金属のデッキプレートへの溶け込み深さと残留応力との関係を説明するための図である。図5(a)は、溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さを3.2mmに設定した場合の溶接金属10およびHAZ16の形状を示す図であり、図5(b)は、溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さを5.3mmに設定した場合の溶接金属10およびHAZ16の形状を示す図である。図6は、溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さを3.2mmに設定した場合に溶接部9の周辺に生じている残留応力の状態を示す図であり、図7は、溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さを5.3mmに設定した場合に溶接部9の周辺に生じている残留応力の状態を示す図である。
図5(a)および図6に示すように、溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さが従来の鋼床版と同様の3.2mm(デッキプレート3の厚みの20%)の場合には、ルート部14の近傍には圧縮応力がほとんど生じていない。一方、図5(b)および図7に示すように、溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さが5.3mm(デッキプレート3の厚みの33.3%)の場合には、溶け込み深さが3.2mmの場合に比べて、ルート部14の近傍に十分な大きさの圧縮応力が生じているだけでなく、圧縮応力が生じている領域も十分に大きい。この結果からも、溶接金属10のデッキプレート3への溶け込み深さをデッキプレート3の厚みの1/3(33.3%)以上にすることによって、ルート部14から疲労亀裂が発生することを十分に抑制できると考えられる。
なお、溶接部9は、溶接時の昇温過程で熱膨張するが、周囲の加熱されていない部分に拘束される。これにより、溶接部9には、圧縮応力および圧縮ひずみが発生する。このとき、溶接部9に圧縮塑性ひずみが発生すると、溶接後に溶接部9の温度が加熱前の温度まで低下するときに、溶接部9は、加熱前の状態よりも収縮しようとする。しかし、溶接部9は、溶接時に加熱されなかった周囲に拘束されるため、溶接部9には引張残留応力が生じる。一方、残留応力の自己平衡性から、溶接部9の周囲は圧縮残留応力になる。このことから、溶接部9と母材との境界部に位置するルート部14には、上記のように圧縮の残留応力が生じると考えられる。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものである。
(本発明の実施形態の説明)
以下、本発明の一実施形態に係る鋼床版および鋼床版の製造方法について説明する。図8および9は、本実施形態に係る鋼床版の製造方法を説明するための図である。なお、図8および9は、各構成部材を縦リブ6の長さ方向から見た図である。
図8に示すように、本実施形態に係る鋼床版の製造方法では、まず、第1面3aが下方を向き、第2面3bが上方を向くように、作業台20上にデッキプレート3を配置するとともに、第2面3b上に縦リブ6を配置する。
なお、第1面3aは、鋼床版において上面となる面であり、第2面3bは、鋼床版において下面となる面である。デッキプレート3および縦リブ6は、上述の鋼床版2のデッキプレート3および縦リブ6と同様の構成を有している。デッキプレート3の厚みは、例えば、12~16mmに設定され、縦リブ6の厚みは、例えば、6~9mmに設定される。なお、デッキプレート3および縦リブ6としては、公知の鋼床版のデッキプレートおよび縦リブを用いることができるので、デッキプレート3および縦リブ6の詳細な説明は省略する。
次に、図9に示すように、デッキプレート3の第2面3bとの間で閉断面を形成するように、第2面3bに縦リブ6を接合する(溶接工程)。これにより、鋼床版100が製造される。
本実施形態では、溶接工程において、縦リブ6の外側からデッキプレート3と縦リブ6とを接合するように、縦リブ6の長さ方向に延びる一対の溶接部30a,30bを形成する。溶接部30aは、縦リブ6の幅方向における一方側から片側溶接によって形成され、溶接部30bは、縦リブ6の幅方向における他方側から片側溶接によって形成される。本実施形態では、縦リブ6の長さ方向から見て、縦リブ6のデッキプレート3側の一対の端部のうち、一方の端部(側壁部6bのデッキプレート3側の端部)とデッキプレート3とが溶接部30aによって接合され、他方の端部(側壁部6cのデッキプレート3側の端部)とデッキプレート3とが溶接部30bによって接合される。溶接部30aは、縦リブ6の長さ方向に延びる溶接金属32aと、溶接金属32aの周囲に形成されるHAZ(図示せず)とを含む。同様に、溶接部30bは、縦リブ6の長さ方向に延びる溶接金属32bと、溶接金属32bの周囲に形成されるHAZ(図示せず)とを含む。
溶接部30a,30bはそれぞれ、通常のアーク溶接(ガスシールドアーク溶接)によって形成してもよく、レーザ・アークハイブリッド溶接によって形成してもよい。
デッキプレート3の厚み方向において、溶接金属32aのデッキプレート3への溶け込み深さDは、デッキプレート3の厚みTの1/3以上に設定される。同様に、溶接金属32bのデッキプレート3への溶け込み深さは、デッキプレート3の厚みTの1/3以上に設定される。なお、本実施形態では、縦リブ6の長さ方向における全ての位置において、溶接金属32a,32bのデッキプレート3への溶け込み深さが上記の条件を満たしていることが好ましい。しかしながら、溶接金属32a,32bの一部において、デッキプレート3への溶け込み深さがデッキプレート3の厚みTの1/3未満であってもよい。ただし、溶接工程では、溶接金属32a,32bのデッキプレート3への溶け込み深さをデッキプレート3の厚みTの1/3以上にすることを目標として、溶接条件(溶接電流、溶接電圧、溶接速度等)が設定される。
側壁部6bの厚み方向において、溶接金属32aの側壁部6bへの溶け込み深さdは、例えば、側壁部6bの厚みtの75%以上100%未満であることが好ましい。同様に、側壁部6cの厚み方向において、溶接金属32bの側壁部6cへの溶け込み深さは、例えば、側壁部6cの厚みの75%以上100%未満であることが好ましい。
以上のように、本実施形態では、溶接金属32a,32bのデッキプレート3への溶け込み深さが、デッキプレート3の厚みTの1/3以上に設定される。これにより、溶接金属32aのデッキプレート3側のルート部14aの近傍、および溶接金属32bのデッキプレート3側のルート部14bの近傍に十分な大きさの圧縮応力を生じさせることができる。その結果、鋼床版100に荷重が繰り返し加わったとしても、ルート部14a,14bの近傍に大きな引張応力が生じることを抑制することができる。したがって、溶接後に特別な処理を施すことなく、ルート部14a,14bから疲労亀裂が発生することを抑制できる。
また、本実施形態では、溶接金属32aのデッキプレート3側の止端12aの近傍、および溶接金属32bのデッキプレート3側の止端12bの近傍にも十分な大きさの圧縮応力を生じさせることができる。これにより、止端12a,12bから疲労亀裂が発生することも抑制できる。
なお、上述の実施形態では、平面状の第2面3bに縦リブ6を溶接する場合について説明したが、溶接工程の前に、図10に示すように、デッキプレート3において溶接金属32a,32b(図9参照)を溶け込ませる部分に、第2面3bから第1面3a側に向かって凹む凹部34a,34bを形成してもよい(凹部形成工程)。この場合、溶接金属32a,32bをデッキプレート3へ容易に溶け込ませることができる。
なお、詳細な説明は省略するが、縦リブ6をデッキプレート3に仮付け溶接した後に、上述の溶接工程(本溶接)を実施してもよい。
また、上述の実施形態では、縦リブ6がいわゆるUリブである場合について説明したが、本発明は、種々の形状の閉断面リブを備えた鋼床版に適用できる。例えば、本発明は、図11に示すような、V字形状を有する縦リブ40を備えた鋼床版100aに適用してもよく、図12に示すような、全体として略円弧状に湾曲した縦リブ42を備えた鋼床版100bに適用してもよい。これらの場合も、上述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
本発明によれば、溶接後に特別な処理を施すことなく縦リブとデッキプレートとの溶接部のルート部に疲労亀裂が発生することを抑制できる。
1 橋梁
2,2a,100,100a,100b 鋼床版
3 デッキプレート
3a 第1面(上面)
3b 第2面(下面)
4 主桁
5 横リブ
6,40,42 縦リブ
6a 底部
6b,6c 側壁部
7 舗装材
8 自動車
10,32a,32b 溶接金属
11 不溶着部
12,12a,12b 止端
14,14a,14b ルート部
16 溶接熱影響部(HAZ)
20 作業台
30a,30b 溶接部

Claims (1)

  1. 鋼床版において上面となる第1面および前記鋼床版において下面となる第2面を有するデッキプレートに、前記第2面との間で閉断面を形成するように前記第2面に縦リブを接合する溶接工程を備え、
    前記溶接工程では、前記縦リブの外側から前記デッキプレートと前記縦リブとを接合するように前記縦リブの長さ方向に延びる溶接部を形成し、
    前記溶接部は、前記デッキプレートに溶け込んだ溶接金属を含み、
    前記デッキプレートの厚み方向において、前記溶接金属の前記デッキプレートへの溶け込み深さは、前記デッキプレートの厚みの1/3以上である、鋼床版の製造方法であって、
    前記溶接工程の前に、前記デッキプレートのうち前記溶接工程で前記溶接金属を溶け込ませる部分に、前記第2面から前記第1面側に向かって凹む凹部を形成する、凹部形成工程をさらに備える、鋼床版の製造方法。
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