JP2021080845A - エンジン制御装置及びエンジン制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンの停止に際して、新気が排気管に排出されると三元触媒に酸素が貯蔵されるため、エンリッチ噴射が必要となり、燃費と排気の悪化が生じていた。【解決手段】ECU102は、エンジンの状態変化を判定する状態判定部301と、マップ情報321と、マップ情報321から読み出した位相変更情報、及び状態判定部が判定したエンジンの状態変化に基づいて、VTC40を通じて吸気弁の位相を基準位置から目標位置に変更する途中に、中間位置の付近で吸気弁の位相を変更する第1位相変更速度を、基準位置から中間位置の付近に変更するまでの第2位相変更速度よりも低下させ、中間保持期間の経過後に第1位相変更速度よりも高い第3位相変更速度で吸気弁の位相を中間位置の付近から目標位置に変更する吸気弁位相変更部302と、を備える。【選択図】図3

Description

本発明は、吸気弁の位相を変更可能な可変バルブタイミング制御機構を備えたエンジンを制御するエンジン制御装置及びエンジン制御方法に関する。
従来、トラクションモータとエンジンを備えるハイブリッド方式の車両が提供されている。ハイブリッド方式には、電気とガソリンを併用して走行するパラレルハイブリッド方式、走行はモータのみを使用し、エンジンを発電のみで使用するシリーズハイブリッド方式の2種類が知られている。
パラレルハイブリッド方式では、エンジンの熱効率が低い低負荷運転域においてはエンジンを休止させてモータのみで車両が走行し、エンジンの熱効率が高い中負荷以上の運転域ではエンジン単体で車両が走行する。都市部では低負荷と中負荷の運転域が混合するため、エンジンの停止と始動の頻度が高い。
また、シリーズハイブリッド方式では、車両に搭載されたバッテリのバッテリ容量を監視し、バッテリ容量が下限値以下となるとエンジンが動作してジェネレータを回転することで発電してバッテリを充電する運転となる。そして、バッテリ容量が上限値以上になるとエンジンを停止させる運転となるので、エンジンの停止と始動の頻度が高い。
このようにそれぞれのハイブリッド方式で用いられるハイブリッドエンジンでは燃費低減のためエンジンの停止と始動の頻度が高くなっている。近年では、更なる燃費低減のため、エンジンを停止させる際のトルクが不要な期間において燃料噴射をカットする、「燃料カット運転」が実施される。しかし、この燃料カット運転中はエンジンが惰性で回転するため、通常走行時と同じバルブタイミングでは未燃焼の空気(新気)が筒内に吸入された後に排気管に排出される。
新気が排気管に排出され、排気管に設けられた三元触媒に到達すると、新気に含まれる酸素が三元触媒に貯蔵されるので、酸素過多の状態となる。この状態では三元触媒の窒素酸化物(NOx)の浄化効率が低下してしまう。このため、エンジンが再始動する際には、運転空燃比が理論混合比よりも小さくなるように燃料噴射割合を増加させて余剰燃料を供給することで三元触媒に貯蔵された酸素を取り除く、エンリッチ噴射が実施されている。
しかし、エンリッチ噴射が行われると、余分な燃料が噴射されるために燃費が悪化し、さらに燃料過剰状態で燃焼させるため排気が悪化する課題がある。特にハイブリッドエンジンではエンジンの停止と始動の頻度が高いため、燃料カット運転による、燃費と排気の悪化への影響が大きくなる。
燃料カット運転での三元触媒の浄化効率低下を抑制するための技術として、例えば、特許文献1には、「燃料カット検出手段が燃料カットを検出したとき、吸気バルブの開弁時期を早めるように開弁時期可変手段を進角制御する」という技術が開示されている。
特開平10−115234号公報
特許文献1に開示された技術により、吸気行程で筒内に吸入される新気量を低減し、排気管へ排出される新気の新気量を低減して三元触媒の酸素貯蔵を抑制することができると考えられていた。つまり、吸気弁の位相を進角させ、開弁から閉弁までの期間を排気行程に設定すると、排気行程中に吸気弁と排気弁が開く。このため、吸気管と排気管から筒内に吸入された空気が、ピストン上昇によって吸気管と排気管に噴き戻される状態となり、排気管への新気の排出を抑制可能となると考えられていた。
しかし、実際には吸気弁の位相を進角側に動作を開始してから目標位置に到達するまでに吸気弁が吸気行程中に開閉する過渡期間が存在する。この過渡期間では吸気弁が開いているため、吸気行程に吸気管から筒内に吸入された新気が排気管に排出される。また、エンジンを停止させる際に燃料カットが実施されているが、燃料カット時には新気が排気管に排出される。そして、排気管に排出された新気によって三元触媒へ酸素が貯蔵されてしまう。
そこで、燃料カット中に排気管に排出される新気の新気量を減らすことを目的として、吸気弁の位相を進角する方法がある。しかし、吸気弁の位相を切替え後に排気管への新気排出を抑制しても、位相を切替え途中の過程において排気管に排出された新気が三元触媒に到達し、三元触媒に酸素が貯蔵されていた。
エンジンを再始動する際には、エンジン始動直後にピストンの空気圧縮によるエンジン回転数の変動を抑制するデコンプレッション(ガス抜き)のため、吸気弁が進角された状態でエンジンモータリングが実施される。しかし、回転数が上昇して初爆サイクルに移行する際には上述した動作とは逆の動作が行われるため、初爆の吸気弁位相に到達する過渡期間でも同様に排気管に新気が排出される。
このように位相を目標位置まで変更した後には排気管への新気排出を抑制できるが、位相を変更途中の過渡期間では新気が排気管に排出されて三元触媒に酸素が貯蔵される。このため、エンジンの再始動時には、三元触媒から酸素を取り除くためのエンリッチ噴射が必要となる。このように従来の技術では、エンジンの再始動時におけるエンリッチ噴射を無しにすることができず、燃費と排気の悪化が生じる。
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、エンジンを再始動する際にエンリッチ噴射を無しとすることを目的とする。
本発明は、吸気管に設けられた吸気弁の位相を変更可能な可変バルブタイミング制御機構を備えたエンジンを制御するエンジン制御装置であって、エンジンの状態変化を判定する状態判定部と、エンジンの状態変化の前における吸気弁の位相の基準位置と、エンジンの状態変化の後における吸気弁の位相の目標位置と、基準位置及び目標位置の間の中間位置と、中間位置の付近で保持される吸気弁の位相の中間保持期間とを吸気弁の位相変更情報として記憶する位相変更情報記憶部と、位相変更情報記憶部から読み出した位相変更情報、及び状態判定部が判定したエンジンの状態変化に基づいて、可変バルブタイミング制御機構を通じて吸気弁の位相を基準位置から目標位置に変更する途中に、中間位置の付近で吸気弁の位相を変更する第1位相変更速度を、吸気弁の位相を基準位置から中間位置に変更するまでの第2位相変更速度よりも低下させ、中間保持期間の経過後に第1位相変更速度よりも高い第3位相変更速度で吸気弁の位相を中間位置から目標位置に変更する吸気弁位相変更部と、を備える。
本発明によれば、中間位置の付近で吸気弁の位相を変更する第1位相変更速度を、吸気弁の位相を基準位置から中間位置に変更するまでの第2位相変更速度よりも低下させることで、排気管内にあるガスが吸気管に戻る。このため、エンジンを再始動する際にエンリッチ噴射を無しとし、燃費を向上し、排気の悪化を抑えることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
本発明の第1の実施の形態に係るハイブリッド自動車に搭載される制御装置を、シリーズ式ハイブリッド自動車に適用した例を示す概略構成図である。 本発明の第1の実施の形態に係るエンジンの構成例を示す概要図である。 本発明の第1の実施の形態に係るECUの内部構成例を示す制御ブロック図である。 本発明の第1の実施の形態に係るエンジンの発電運転時における吸気弁、排気弁のプロファイルの例を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係るエンジンの燃料カット運転への移行時における吸気弁、排気弁のプロファイルの例を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る吸気弁の位相が中間位置で保持される様子を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係るECUに格納された、燃料カット時のエンジン回転数と中間保持期間との関係を表すマップ情報の例を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係るECUがエンジンを始動した後に、吸気弁位相変更部が吸気弁を遅角させた様子を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係るECUが燃料カットを開始後にエンジン回転数が変化する様子を示したグラフである。 本発明の第1の実施の形態に係るECUが燃料カットを開始後に、吸気弁位相変更部が吸気弁の位相を進角する様子を示したグラフである。 本発明の第1の実施の形態に係る吸気弁の位相が、中間位置のプロファイルに到達するまでに1気筒当たりの排気管へ排出される新気の新気量を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る中間位置のプロファイルに変更された吸気弁と、排気弁との動作例を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係るクランキング開始後のエンジン回転数の変化の様子を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係るクランキング開始後における吸気弁9の位相進角量の変化の様子を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る吸気弁の位相変更の開始時点を基準として4サイクル中に排気管に排出される新気の新気量を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る目標位置のプロファイルに変更された吸気弁と、排気弁との動作例を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る燃料カット開始からエンジン停止までの各サイクルにおいて排気管から吸気管に排出される新気の新気量を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る吸気弁位相変更部が、中間位置の付近で変化させるプロファイルの例を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る吸気弁位相変更部が、エンジン停止時に位相変更速度を低速にして動かした場合に、排気管から吸気管に戻る空気の空気量の例を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係るECUが燃料カットを開始後に、エンジン回転数が変化する様子を示したグラフである。 本発明の第2の実施の形態に係るECUが燃料カットを開始後に、吸気弁位相変更部が吸気弁の位相を進角する様子を示したグラフである。 本発明の第3の実施の形態に係るECUに格納された、位相変更速度と中間保持期間との関係を表すマップ情報を示す図である。 本発明の第4の実施の形態に係るECUに格納された、燃料カット時のスロットル開度と中間保持期間との関係を表すマップ情報を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置を、シリーズ式ハイブリッド自動車に適用した例を示す概略構成図である。
本実施の形態に係るハイブリッド自動車100は、走行用のトラクションモータを備え、エンジンは発電のみで使用するシリーズハイブリッド自動車の一例である。
ナビゲーション装置111は、内燃機関(エンジン113)を駆動源として備えるハイブリッド自動車100の上空にある複数のGPS(Global Positioning System)衛星が衛星電波に載せて送信したGPS信号を受信して現在位置を測位し、ハイブリッド自動車100内の表示装置に表示された地図にハイブリッド自動車100の現在位置を重畳して表示することが可能である。ナビゲーション装置111による現在位置の測位には、携帯電話端末の基地局やWi−Fi(登録商標)のアクセスポイント等も併用されることがある。ナビゲーション装置111が測位したハイブリッド自動車100の現在位置の情報、及びハイブリッド自動車100が走行する周辺及び目的地までの経路を含む地図情報は、自動車制御装置、すなわちVCU(Vehicle Control Unit)101に出力される。
ハイブリッド自動車100のキャビン内には、アクセル開度センサ106及びブレーキスイッチ107が設けられる。アクセル開度センサ106は、アクセルペダルの踏み込み量、すなわちアクセル開度を検出する。ブレーキスイッチ107は、ブレーキペダルが踏みこまれているか否かを検出する。
エンジン113は、火花点火式燃焼を用いる自動車用の直列3気筒ガソリンエンジンであり、内燃機関の一例である。このエンジン113は、エンジン113を始動するためのスタータ112を備えている。エンジン113のクランク軸には、その回転角度を検出するためのクランク角センサ110が備えられ、クランク軸の他端は、モータジェネレータ114に接続されている。
ジェネレータ制御装置、すなわちGCU(Generator Control Unit)103は、インバータ115が所定電圧でバッテリ116を充電可能となるようにインバータ115を介してモータジェネレータ114の駆動を制御する。モータジェネレータ114は、エンジン113により駆動されて発電し、インバータ115を介してバッテリ116を充電する。
バッテリ制御装置、すなわちBCU(Battery Control Unit)104は、VCU101からのバッテリ要求出力に基づいてバッテリ116の充電及び放電を制御する。バッテリ116には、バッテリ116の内部電圧を計測するバッテリ電圧センサ109が設けられており、VCU101は、バッテリ116の電圧を常時確認する。
モータ制御装置、すなわちMCU(Motor Control Unit)105は、VCU101からのモータ要求出力に基づいてインバータ117及びモータ118を制御する。インバータ117には、電気的に接続されたバッテリ116から電力が供給される。そして、インバータ117は、バッテリ116から放電される直流電力を交流電力に変換し、モータ118に交流電力を供給する。モータ118は、減速ギア119を介して車輪120と接続されている。また、車輪120の駆動軸には、自動車速度センサ108が備えられている。
自動車速度センサ108、バッテリ電圧センサ109及びクランク角センサ110から出力される各信号は、VCU101に送られる。また、アクセル開度センサ106及びブレーキスイッチ107から出力される各信号もVCU101に送られる。
VCU101は、内燃機関(エンジン113)及び電動駆動部(モータ118)の少なくとも一方の出力によって走行する自動車(ハイブリッド自動車100)に搭載される。VCU101は、アクセル開度センサ106の出力信号に基づいてドライバの要求トルクを演算する。すなわち、アクセル開度センサ106は、エンジン113及びモータ118への要求トルクを検出する要求トルク検出センサとして用いられる。また、VCU101は、ブレーキスイッチ107の出力信号に基づいてドライバの減速要求の有無を判断する。また、VCU101は、バッテリ電圧センサ109の出力信号に基づいてバッテリ116の残電力量を演算する。また、VCU101は、クランク角センサ110の出力信号に基づいてエンジン113の回転速度を演算する。そして、VCU101は、上記各種センサの出力から得られるドライバ要求、及びハイブリッド自動車100の運転状態に基づいてエンジン要求出力、モータ要求出力、バッテリ要求出力等の各装置の最適な動作量を演算する。
VCU101で演算されたエンジン要求出力は、エンジン制御装置、すなわちECU(Engine Control Unit)2に送られる。ECU102は、VCU101からの要求出力に基づいてエンジン113を制御する。具体的には、ECU102は、スタータ112の制御の他、後述する図2に示す吸気カム11、排気カム12、インジェクタ13、点火プラグ14、点火コイル15、図2に示すスロットル26、及び図3に示すVTC(Valve Timing Control)40の制御を実施する。また、VCU101で演算されたモータ要求出力は、MCU105に送られる。また、VCU101で演算されたバッテリ要求出力は、BCU104に送られる。
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン113の構成例を示す概要図である。
シリーズハイブリッド自動車では、搭載したバッテリ116の充電容量(「バッテリ容量」と呼ぶ)が規定値未満になった場合にエンジン(エンジン113)が始動される。逆に、バッテリ116の充電容量(「バッテリ容量」と呼ぶ)が規定値以上になった場合にエンジン(エンジン113)が停止される。
図2に示すエンジン113は、1気筒当たり400ccの直列3気筒の自然吸気エンジンとして構成される。このエンジン113が備えるシリンダヘッド1とシリンダブロック2、そしてシリンダブロック2に挿入されたピストン3により燃焼室が形成される。ピストン3はコンロッド4を介してクランク軸5と連結されている。クランク軸5の近傍に設けられたクランク角センサ110は、エンジン回転数を検知する。
1気筒の燃焼室に向けて吸気管7と排気管8が接続されており、燃焼室の開口部を開閉するように吸気弁9と排気弁10が設けられている。吸気弁9の上部に吸気カム11が設けられ、排気弁10の上部に排気カム12が設けられる。吸気カム11が回転することで吸気弁9が開閉され、排気カム12が回転することで排気弁10が開閉される。
図示しないがエンジン113の側部には、吸気カム11と連結した吸気カムプーリ、排気カムと連結した排気カムプーリ、クランク軸5と連結したクランクプーリが設けられ、タイミングベルトを介して接続されている。これによりエンジン113の動作時にクランク軸5が回転することで吸気カム11と排気カム12が回転される。クランク軸5が2回転で吸気カム11と排気カム12は1回転するように吸気カムプーリ及び排気カムプーリが設定されている。
また、吸気カム11には、吸気管(吸気管7)に設けられた吸気弁(吸気弁9)の位相を変更可能な可変バルブタイミング制御機構(以下、VTC)40(後述する図3を参照)が設けられている。また、クランク軸5には、発電時はジェネレータとして働き、エンジン113の始動や停止時にはモータとして働くモータジェネレータ114が設けられている。VTC40は電動式とし、ECU102が、VTC40に設けられたモータを回転させることで吸気弁9の位相を進角又は遅角に変更可能である。VTC40が吸気弁9の位相を変更する速度(「位相変更速度」と呼ぶ)は1秒間あたり300degCA(Crank Angle)である。
燃焼室の吸気側にインジェクタ13が設けられ、燃焼室上部に点火プラグ14と点火コイル15が設けられている。燃料は燃料タンク16に貯蔵され、フィードポンプ17によって燃料配管を通じて高圧燃料ポンプ18に送られる。高圧燃料ポンプ18は、排気カム12によって駆動され、昇圧された燃料がコモンレール19に送られる。コモンレール19には燃圧センサ20が設置され、燃料圧力(「燃圧」と呼ぶ)を検知できるようになっている。コモンレール19と各気筒に設けられたインジェクタ13は燃料配管によって接続されている。
吸気管7の上流にはコレクタ21が設けられる。このコレクタ21から各気筒に吸気管7が接続される。また、気筒に吸入される空気量を変更可能なスロットル26がコレクタ21の上流側に設けられている。
一方、排気管8の先には三元触媒22が設けられ、その下流に酸素センサ24が設けられる。三元触媒22には温度センサ23が設けられ、三元触媒22の温度を検出する。シリンダブロック2には、シリンダブロック2の周囲を流れる水の水温を測定する水温センサ27が設けられる。
水温やエンジン回転数の信号はECU102に入力される。ECU102は、各センサから入力する信号から求めた各種の情報に基づいて燃料噴射のオン、オフやVTC40の位相を制御する。
次に、ECU102の内部構成例及び動作例について以下に説明する。
図3は、ECU102の内部構成例を示す制御ブロック図である。エンジン制御装置(ECU102)は、吸気弁(吸気弁9)の位相を変更可能な可変バルブタイミング制御機構(VTC40)を備えたエンジン(エンジン113)を制御する。ECU102は、本実施の形態に係るエンジン制御方法を実行して、VTC40を備えたエンジン113を制御する。
ECU102は、CPU(Central Processing Unit)30、RAM(Random Access Memory)31、ROM(Read Only Memory)32を備える。
ECU102には、点火コイル15の電圧センサ(不図示)が検出した1次電圧、点火コイル15の電流センサ(不図示)が検出した2次電流、アクセル開度センサ106が検出したアクセル踏込情報(アクセル開度)、クランク角センサ110が検出した角度情報(クランク角度)及びエンジン113の回転数、スロットル26からのスロットル開度、バッテリ電圧センサ109が検出したバッテリ電圧(バッテリ容量)等の入力信号等が入力される。
ECU102に入力された各センサの入力情報は、RAM31に一時保管され、CPU30で、所定の制御プログラムに従って演算処理される。RAM31には、CPU31の演算処理の途中で発生した変数やパラメーター等が一時的に書き込まれ、これらの変数やパラメーター等がCPU31によって適宜読み出される。ただし、CPU31に代えてMPU(Micro Processing Unit)が用いられてもよい。
ROM32は、CPU31が動作するために必要なプログラムやデータ等を永続的に記録しており、ECU102によって実行されるプログラムを格納したコンピューター読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。このため、CPU30で行われる演算処理の内容を記述した制御プログラムは、ROM32に予め書き込まれており、CPU30により適宜読み出されて実行される。また、ROM32には、後述する図7に示すように、例えば、燃料カット時のエンジン回転数に応じた中間保持期間を規定するマップ情報321が記憶されている。ただし、ECU102に不揮発性ストレージを設け、ネットワークを通じて更新されるマップ情報321が不揮発性ストレージに記憶される構成としてもよい。
ROM32に構成される位相変更情報記憶部(マップ情報321)は、エンジン(エンジン113)の状態変化の前における吸気弁(吸気弁9)の基準位置と、エンジン(エンジン113)の状態変化の後における吸気弁(吸気弁9)の目標位置と、基準位置及び目標位置の間の中間位置と、中間位置を含む所定範囲における中間位置の継続時間とを吸気弁(吸気弁9)の位相変更情報として記憶する。
上述したようにCPU30で実行される制御プログラムにより、図中に示す状態判定部301及び吸気弁位相変更部302の各機能が実現される。
本実施の形態に係るECU102は、例えば、VCU101からECU102に対して、エンジン113の停止が指示されると、エンジン113に供給する燃料をカットする制御を行う。燃料のカットの開始は、車両(ハイブリッド自動車100)の駆動に用いられるバッテリ(バッテリ116)の充電容量が規定値以上になった場合に、エンジン(エンジン113)の停止に先立って行われる。
また、ECU102は、エンジン113が停止し、燃料カットされている状態で、ドライバがアクセルを踏み込んだ場合には、エンジン113を再始動する。そこで、状態判定部301は、エンジン(エンジン113)の状態変化を判定し、判定結果を出力する。エンジン(エンジン113)の状態変化は、エンジン(エンジン113)の停止に伴い、エンジン(エンジン113)に供給される燃料がカットされたことを含む。また、エンジン(エンジン113)の状態変化は、燃料のカットが継続した状態からエンジン(エンジン113)が再始動したことを含む。
吸気弁位相変更部(吸気弁位相変更部302)は、位相変更情報記憶部(マップ情報321)から読み出した位相変更情報、及び状態判定部(状態判定部301)が判定したエンジン(エンジン113)の状態変化に基づいて、可変バルブタイミング制御機構(VTC40)を通じて吸気弁(吸気弁9)の位相を基準位置から目標位置に変更する途中に、中間位置の付近で吸気弁(吸気弁9)の位相を変更する第1位相変更速度を、吸気弁(吸気弁9)の位相を基準位置から中間位置の付近に変更するまでの第2位相変更速度よりも低下させ、中間保持期間の経過後に第1位相変更速度よりも高い第3位相変更速度で吸気弁(吸気弁9)の位相を中間位置の付近から目標位置に変更する。エンジン(エンジン113)に供給される燃料がカットされたことが、エンジン(エンジン113)の状態変化として判定されると、吸気弁位相変更部(吸気弁位相変更部302)は、第1位相変更速度、第2位相変更速度又は第3位相変更速度で、吸気弁(吸気弁9)の位相を基準位置から目標位置に進角させる。一方、エンジン(エンジン113)が再始動したことが判定されると、吸気弁位相変更部(吸気弁位相変更部302)は、吸気弁(吸気弁9)の位相を基準位置から目標位置に向けて遅角させる。
吸気弁位相変更部302は、例えば、バッテリ容量に基づいて、ECU102がエンジン113を停止するため燃料カットを開始したこと、エンジン113を再始動すること等のエンジン113の状態変化に応じて、吸気弁9の位相を変更する指示をVTC40に行う。この際、吸気弁位相変更部302は、ROM32からマップ情報321を読み出して、吸気弁9の位相を変更開始するタイミング、吸気弁9の位相変更速度を切り替える等の制御を行う。
VTC40は、吸気弁位相変更部302の指示に基づいて、吸気カム11を駆動することで、吸気弁9の位相を進角又は遅角に変更することが可能である。以下の説明では、吸気弁位相変更部302が、吸気弁9の位相を進角又は遅角に変更するとして説明する。
なお、本実施の形態においては、ECU102内に状態判定部301、吸気弁位相変更部302及びマップ情報321を備える構成とするが、この構成に限るものではない。例えば、状態判定部301、吸気弁位相変更部302及びマップ情報321の一部、又は全てが、ECU102とは別の装置に実装されていても差し支えない。
<吸気弁及び排気弁の位相とリフト量の関係>
次に、吸気弁9の位相を変えるタイミング(バルブ開閉タイミング)と、変更された吸気弁9の位相について図4〜図8を参照して説明する。なお、図4〜図6及び図8の横軸には、膨張行程、排気行程、吸気行程、圧縮行程の順に行程が変化する様子が示され、縦軸には、吸気弁9及び排気弁10のリフト量が示される。
図4は、第1の実施の形態に係るエンジン113の発電運転時における吸気弁9、排気弁10のプロファイルの例を示す図である。以下の図中に示す、吸気弁9、排気弁10の各プロファイルは、吸気弁9、排気弁10の開閉タイミング、位相の変化、及びリフト量を表す。
図4では、吸気弁9の位相の変化をプロファイル9aで表し、排気弁10の位相の変化をプロファイル10aで表す。吸気弁9のリフト量は6mm、作用角は190degで設定され、排気弁10のリフト量は8mm、作用角は200degで設定されている。また、吸気弁9の閉弁時期は下死点(BDC:Bottom Dead Center)、排気弁10の閉弁時期は上死点(TDC:Top Dead Center)に設定されている。図4に示すように、エンジン113が駆動している時は、排気行程で排気弁10のプロファイル10aが変化し、吸気行程で吸気弁9のプロファイル9aが変化する。プロファイル10a,9aは、ほぼ重なっていない。プロファイル9aで表される吸気弁9の位相の位置を「基準位置」と呼ぶ。
図5は、第1の実施の形態に係るエンジン113の燃料カット運転への移行時における吸気弁9、排気弁10のプロファイルの例を示す図。図5の横軸及び縦軸は、図4の横軸及び縦軸と同じである。
第1の実施の形態に係るECU102は、バッテリ容量が上限値に到達するとエンジン113を停止させる制御を行う。そこで、ECU102は、エンジン113を停止させる前に燃料噴射を停止させる燃料カット運転に移行する。
その際、エンジン113が惰性で回転するため、プロファイル9aの状態では燃焼されていない空気(新気)が排気管8に排出される。そこで、吸気弁位相変更部302は、図5に示すように、プロファイル9aを、プロファイル9bの停止位置に進角させる。プロファイル9bは、発電運転時のプロファイル9aに対して、クランク角度で180deg進角した位置となっている。このため、吸気弁9のプロファイル9bと、排気弁10のプロファイル10aとは、ほぼ同じタイミングで重なっている。このプロファイル9bで表される吸気弁9の位相の位置を「目標位置」と呼ぶ。
図6は、吸気弁9の位相が中間位置で保持される様子を示す図である。図6の横軸及び縦軸は、図4の横軸及び縦軸と同じである。
本実施の形態に係る吸気弁位相変更部302は、ECU102がエンジン113を停止する制御に際して、燃料カット運転をする際に、吸気弁9の中間位置制御を行う。中間位置制御は、吸気弁位相変更部302が吸気弁9を進角し、プロファイル9aからプロファイル9bに変更する途中で、吸気弁9が中間位置に到達すると所定期間(「中間保持期間」と呼ぶ)にわたって、中間位置を保持する制御である。
上述したように吸気弁位相変更部302が中間位置制御を行うと、吸気弁9の位相は、中間保持期間にわたって、中間位置で保持される。このとき、吸気弁9の位相は、プロファイル9cで表される。プロファイル9cで表される吸気弁9の位相の位置を「中間位置」と呼ぶ。
目標位置では、エンジン(エンジン113)が有する気筒に膨張行程で排気管(排気管8)から気筒内に吸入されたガスが、排気行程で排気管(排気管8)及び吸気管(吸気管7)に戻るように、排気行程で吸気管(吸気管7)に設けられた吸気弁(吸気弁9)の開弁時期と、排気管(排気管8)に設けられた排気弁(排気弁10)の開弁時期とが重なる。ただし、中間位置では、吸気弁(吸気弁9)の開弁時期が、排気弁(排気弁10)の開弁時期よりも遅角側に設定される。また、中間保持期間は、燃料カット時のエンジン113の回転数によって変わる。中間保持期間について、図7を参照して説明する。
図7は、ECU102に格納された、燃料カット時のエンジン回転数と中間保持期間との関係を表すマップ情報321の例を示す図である。図7の横軸は燃料カット時のエンジン回転数[rpm]を表し、縦軸は中間保持期間[s]を表す。
位相変更情報記憶部(マップ情報321)には、燃料のカットが開始された時点のエンジン(エンジン113)の回転数が上がるほど、長い中間保持期間が規定される。そこで、吸気弁位相変更部302は、図3に示すROM32から読み出したマップ情報321に基づいて、燃料カット時のエンジン回転数に応じた中間保持期間を取得する。
再び、図6を参照すると、中間位置のプロファイル9cは、発電運転時におけるプロファイル9aに対して、150degだけ進角した位置となっている。つまり、中間保持位置は、位相変更開始前の吸気行程における吸気弁9の位置に対して、150degだけ進角した位置である。また、吸気弁位相変更部302は、図7のマップ情報321に示したように、燃料カットが開始された直後のエンジン回転数に基づいて中間位置の保持期間を決定し、かつ、エンジン回転数が高いほど中間保持期間が長くなるよう制御する。
エンジン113が停止した後にバッテリ容量が下限値以下となるとエンジン113が再始動される。その際は、モータジェネレータ114がクランク軸5を回転させることでエンジン113の回転が始まる。しかし、エンジン113の始動直後は吸気行程で吸入された空気が圧縮行程で圧縮されると回転の抵抗になり回転数の上昇が変動する。このため、吸気弁位相変更部302は、吸気弁9の位相をプロファイル9bの状態で維持するデコンプレッションでエンジン113を再始動する。
その後、ECU102は、エンジン回転数が1200rpmまで上昇したところでモータ回転数を維持するように制御する。
図8は、ECU102がエンジン113を始動した後に、吸気弁位相変更部302が吸気弁9を遅角させる様子を示す図である。
ECU102がエンジン113を再始動すると、吸気弁位相変更部302は、プロファイル9dで吸気弁9が動作するよう、吸気弁9を遅角する。プロファイル9dは、排気行程と吸気行程にまたがった位置にある。プロファイル9dは、エンジン(エンジン113)の初爆時にECU102がエンジン(エンジン113)を自立回転させるために必要なトルクを発生させるために設定された吸入弁9の位相を表している。例えば、プロファイル9dに示される、吸気弁9の閉弁時期は上死点後120degだけ遅角した位置に設定される。
プロファイル9dに到達すると、ECU102の制御により、インジェクタ13から燃料が噴射され、エンジン113が初爆される。初爆後はエンジン113の燃焼により回転数が上昇し、モータジェネレータ114のクランキングへのアシストは停止される。
次に、本実施の形態に係るECU102が制御するエンジン113の作用について説明する。ここでは、ECU102が、エンジン回転数1800rpm、エンジントルク60Nmの発電点での運転からエンジン113を停止し、その後、エンジン113を再始動する過程について説明する。
例えば、ハイブリッド自動車100が走行中の条件で、エンジン113は暖気後で水温が80℃となっており、バッテリ容量が下限値以下のため、発電点でエンジンは動作中である。発電点であるエンジン1800rpmの条件では、吸気弁位相変更部302が、図4に示したプロファイル9a,10aに従って、吸気弁9及び排気弁10が動作するように運転している。この状態では、吸気行程で燃焼室に吸入された空気の空気量に対する燃料の空燃比が“14.5”となるように、インジェクタ13から燃料が噴射される。
燃料噴射時期は吸気行程の60degATDCとなっており、吸気行程から圧縮行程の期間を経て燃焼室内に均一な混合気が形成される。混合気は、圧縮行程後期の燃費最良点火時期で点火され、燃焼圧がピストン3を押すことでクランク軸5が回転される。クランク軸5が回転することで、クランク軸5に連結されたモータジェネレータ114も回転されて発電され、バッテリ116に電力が充電される。
信号や渋滞等によってハイブリッド自動車100が停止し、バッテリ容量が上限値以上となると充電を停止し、ECU102の制御により、エンジン113は停止処理を開始する。この際、エンジントルクが不要なためエンジンは燃料カット運転モードに入る。そして、ECU102は、インジェクタ13への燃料噴射信号をオフとすることで、燃焼室への燃料供給を停止する。
そこで、燃料カットの開始からエンジン停止までのエンジン回転数と、吸気弁9の位相進角量との時間履歴について、図9と図10を参照して説明する。
図9は、ECU102が燃料カットを開始後にエンジン回転数が変化する様子を示したグラフである。図9の横軸は、燃料カットの開始後に経過した時間[s]を表し、縦軸は、エンジン回転数[rpm]を表す。
そして、図9の時間0.0[s]が、ECU102が燃料カットを開始したタイミングを表す。燃料カットが開始されると、エンジンは惰性で回転し、エンジン回転数が徐々に低くなる。
図10は、ECU102が燃料カットを開始後に、吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相を進角する様子を示したグラフである。図10の横軸は、燃料カットの開始後に経過した時間[s]を表し、縦軸は、吸気弁9の位相進角量[deg]を表す。
図10の時間0.0[s]は、図9と同様に、ECU102が燃料カットを開始したタイミングを表す。吸気弁位相変更部302は、燃料カットを開始したタイミングと同時に、吸気弁9の位相を進角させる制御を開始し、VTC40を駆動する。まず、ECU102は、図6に中間保持位置として示したプロファイル9cを中間位置の目標値として設定する。プロファイル9aからプロファイル9cまでのクランク角度は150deg、VTC40の応答速度は300degCA/sとなっている。
このため、燃料カットの開始から0.5秒でプロファイル9aがプロファイル9cの位置に到達する。なお、図9に示したように、燃料カット直前のエンジン回転数は1800rpm、0.5秒後の回転数は1780rpmである。このため、プロファイル9cには7サイクル目の途中で到達することとなる。そして、吸気弁位相変更部302は、中間保持期間(2.1秒)が経過するまでの間、中間位置の付近(150deg付近)で吸気弁(吸気弁9)の位相を進角させる第1位相変更速度をゼロとする。中間保持期間が経過した後、吸気弁位相変更部302は、第1位相変更速度より高い第3位相変更速度で吸気弁9の位相を目標位置に変更する。
ここで、1気筒当たりの排気管8へ排出される新気の新気量について説明する。
図11は、吸気弁9の位相が、中間位置のプロファイル9cに到達するまでに1気筒当たりの排気管8へ排出される新気の新気量を示す図である。図11の横軸は、燃料カット開始からのサイクル番号(サイクル数)を表し、縦軸は排気管8に排出された新気の体積(新気量)[cm]を表す。
燃料カットの直後は、吸気弁9の閉弁時期が吸気行程の下死点付近にある。このため、燃料カットの直後は、吸気行程で多量の新気が燃焼室内に吸入され、吸気弁9の閉弁後に圧縮行程を経て排気行程で排気管8に新気が排出される。
しかし、吸気弁9の位相が進角されるにしたがって吸気弁9の閉弁時期が吸気行程の上死点に近づくため、排気管8に排出される新気の新気量は徐々に減少する。そして、6サイクル目では排気管8に排出される新気の新気量はゼロとなり、7サイクル目では排出される新気の新気量がマイナスとなり、排気管8から吸気管7に新気が戻る状態となる。
図11に示す、吸気管7から排気管8に排出される新気の体積V1は1411ccとなる。また、図11には、吸気管7から排気管8に戻される新気の体積V2が示される。
ここで、図11に示した8サイクル目のプロファイル9cの状態において、新気が排気管8から吸気管7に戻される現象について説明する。
図12は、中間位置のプロファイル9cに変更された吸気弁9と、排気弁10との動作例を示す図である。
図12の上側には、図6と同様のプロファイル9c,10aが示される。
図12の下側には、プロファイル9c,10aで規定される吸気弁9、排気弁10の動作の様子がタイミング(1)〜(4)ごとに示される。図12の下側に示す吸気管7と排気管8、燃焼室の模式図のうち、左側の管を吸気管7、右側の管を排気管8とする。また、タイミング(1)〜(4)において、縦縞の領域が吸気管7の新気を表し、横縞の領域が排気管8の新気又は排気ガスを表す。図中の矢印は、新気の移動方向を表す。
吸気行程では、プロファイル9cに示すように、吸気弁9が吸気行程初期のピストン3が下降する前に閉弁されるため、燃焼室内に新気が殆ど吸入されない。そのため、吸気弁9の閉弁後にピストン3が下降すると、初期に燃焼室に存在した新気が膨張され燃焼室内に負圧が形成される。
圧縮行程では、ピストン3が上昇し、燃焼室の容積が小さくなる。このため、ピストン3の上死点付近で初期の大気圧の状態に戻る。次に、膨張行程でピストン3が下降すると、初期に存在した新気が再度膨張して負圧が形成される。
つまり、タイミング(1)に示す膨張行程において、排気弁10が開弁前の状態では、吸気管7から吸入された新気が無いので、燃焼室内に負圧が形成された状態となる。
タイミング(2)に示す排気弁10のみが開弁された期間では、排気管8内は大気圧となり、燃焼室は負圧となっている。このため、排気管8と燃焼室との圧力差により、前のサイクルで排気管8に排出されていた排気ガスを含む新気が燃焼室内に吸入される。排気弁10が開弁してから、吸気弁9が開弁されるまでの期間は40degであるため、排気管8の前のサイクルで排出された空気が燃焼室内に充満し、排気管8と同じ大気圧まで、燃焼室内の圧力が回復する。
排気行程に入るとピストン3の上昇が開始される。ここで、タイミング(3)に示す排気行程では、吸気弁9も開弁した状態となる。このため、燃焼室内の圧力は大気圧まで回復しており、燃焼室内の圧力と、吸気管7及び排気管8の圧力とで差圧がない。このため、吸気管7から新気は吸入されず、排気管8から燃焼室に流入した新気が、吸気管7及び排気管8に戻される。
タイミング(4)に示すピストン3の上昇中は、排気管8から吸入された前のサイクルの混合気を含む新気が、吸気管7と排気管8にそれぞれ押し出される状態となる。この結果、排気管8の新気が吸気管7に戻されている。タイミング(4)では、吸気弁9のリフト量が、排気弁10のリフト量より多いため、前のサイクルの混合気を含む新気は、吸気管7に多く戻される。
ここで、図11を参照すると、燃料開始から6サイクル目までに1411ccの体積V1で示す新気が排気管8に排出されており、8サイクル目以降のプロファイル9cの状態では1サイクル当たり62ccの新気が排気管8から吸気管7に戻される状態となる。例えば、プロファイル9cの状態を23サイクル続けることで排気管8に排出された新気をすべて吸気管7に戻すことが可能となる。この間の平均回転数は約1700rpmのため、23サイクルは1.7秒に相当する。
エンジン113の再始動時にエンリッチ噴射を無くすためには、排気管8に排出される新気の新気量をゼロにする必要がある。しかし、デコンプレッションのため、吸気弁位相変更部302は、ECU102がエンジン113を始動した時に、吸気弁9の位相をプロファイル9b(図5を参照)の状態とする。そして、吸気弁位相変更部302は、ECU102がモータジェネレータ114によりクランク軸5を回転させ、回転数が1200rpmに上昇した後に初爆するために、吸気弁9の位相をプロファイル9bから120degだけ遅角させて、プロファイル9d(図8を参照)に変更する。
吸気弁位相変更部302が、吸気弁9の位相を、初爆前のプロファイル9bからプロファイル9dに変更する期間においても新気が排気管8に排出される。このため、エンジン停止の段階で再始動時に排出される新気を見越し、燃料カットにおいて排気管8へ排出された新気に追加して燃焼ガスも吸気管7に戻しておく必要がある。
ハイブリッド自動車100が走行し、バッテリ容量が下限値以下になると発電のため、ECU102からエンジン113の始動指令が出力される。エンジン113の始動時には、まず、吸気弁9の位相がプロファイル9bのまま、モータジェネレータ114によりクランク軸5が回転される。
図5に示したように、プロファイル9bでは、圧縮行程におけるピストン3の上昇時に、吸気行程で負圧となった空気が大気圧に戻される。また、排気行程では、吸気弁9及び排気弁10が開弁しているため、燃焼室内の空気が圧縮されることはない。このため、ピストン3が空気を圧縮することによって生じるエンジン回転数の変動が抑制され、振動による不快感が運転者に発生しない。そして、吸気弁位相変更部302は、ECU102により、エンジン回転数が1200rpmに上昇するのを待ってからVTC40を動作させ、吸気弁9の位相をプロファイル9bから初爆のためのプロファイル9dに変更する。
次に、モータジェネレータ114によるクランキングの影響について、図13と図14を参照して説明する。
図13は、クランキング開始後のエンジン回転数の変化の様子を示す図である。図13の横軸はクランキング開始後の時間[s]を表し、縦軸はエンジン回転数[rpm]を表す。図13の時間0.0[s]が、ECU102がクランキングを開始したタイミングを表す。
エンジン113の再始動時には、モータジェネレータ114により回転数が1200rpmに上昇するまでに1気筒あたり3サイクルの0.2秒を要する。そしてエンジン113の再始動から0.2秒後にエンジン回転数が1200rpmに到達した時点でモータジェネレータ114により回転数が1200rpmで保持される。このとき、ECU102は、プロファイル9bがプロファイル9dになるように吸気弁9の位相を変更する。
図8に示すようにプロファイル9bは吸気弁9の閉弁時期が上死点(TDC)であり、プロファイル9dは吸気弁9の閉弁時期が上死点後120degである。また、VTC40の応答速度は300degCA/sである。このため、ECU102は、プロファイル9bからプロファイル9dに0.4秒で変更できる。なお、エンジン回転数は1200rpmであるので、プロファイルの変更期間は4サイクルに相当する。そしてプロファイル9dに到達後は燃料が噴射されて初爆サイクルとなり新気ではなく既燃焼ガスが排出される。
図14は、クランキング開始後における吸気弁9の位相進角量の変化の様子を示す図である。図14の横軸はクランキング開始後の時間[s]を表し、縦軸は吸気弁9の位相進角量[deg](VTC位相とも呼ぶ)を表す。図14の時間0.0[s]が、ECU102がクランキングを開始したタイミングを表す。
エンジン113の再始動時には、デコンプレッションが必要とされる。そこで、吸気弁位相変更部(吸気弁位相変更部302)は、エンジン(エンジン113)の再始動により発生するデコンプレッションが完了した後に、吸気弁(吸気弁9)の位相を目標位置から基準位置に向けて遅角させる。この際、図中に示すように、エンジン113の再始動の開始は、クランキングの開始と同じとしてよい。
吸気弁位相変更部302は、クランキングの開始タイミングから、デコンプレッションを完了するまでの期間は、プロファイル9bのまま吸気弁9の位相を変えない。デコンプレッションを完了した後、吸気弁位相変更部302は、吸気弁9の位相進角量を、180[deg]から60[deg]まで遅角する。つまり、吸気弁位相変更部302は、エンジン(エンジン113)の状態変化がエンジン(エンジン113)の始動である場合に、排気行程と吸気行程にまたがった位置であって、エンジン(エンジン113)の初爆時に、エンジン(エンジン113)が自立回転可能なトルクが発生する位置まで吸気弁(吸気弁9)の位相を遅角する。そして、ECU102は、吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相進角量を60[deg]に変更したタイミングで初爆サイクルとする。
図15は、吸気弁9の位相変更の開始時点を基準として4サイクル中に排気管8に排出される新気の新気量を示す図である。
吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相を変更する途中の1サイクル目で、吸気弁9の位相がプロファイル9c付近に変化する。この時、排気管8から吸気管7に空気が戻るサイクルとなっているが2サイクル目以降は吸気管7から排気管8に新気が排出される。
ここで、1サイクル目での排気管8から吸気管7に空気が戻る体積V3は50ccである。一方、2サイクル目から4サイクル目の吸気管7から排気管8に新気が排出される体積V4は500ccに相当する。そして、体積V4のうち、450ccがエンジン113の始動時に吸気管7から排気管8に排出される新気の新気量となる。
このことから、エンジン停止の燃料カットにおいて吸気管7から排気管8に排出される新気の体積V1は1411cc、エンジン113の始動時のクランキングから初爆までの期間において吸気管7から排気管8に排出される新気の体積は、体積V4(500cc)−体積V3(50cc)の450ccとなる。そして、エンジン停止から初爆までに排出される新気の新気量をゼロとするには、エンジン停止時のプロファイル9cにおいて1861cc(=1411+450)の空気を排気管8から吸気管7に戻しておく必要がある。
ここで、プロファイル9cでは1サイクルあたり62ccの空気を戻すことが可能である。このため、プロファイル9cで30サイクル、エンジン113の平均回転数を1700rpmとすると、2.1秒間が必要となる。
そこで、吸気弁位相変更部302は、エンジン停止の燃料カットにおいてプロファイル9cの保持期間を2.3秒に設定し、燃料カットの開始から2.8秒後にプロファイル9bに変更する。プロファイル9bに到達すると吸気管7から排気管8に排出される空気量は0となり、エンジン113が回転していても排気管8に新気が流れることはない。
ここで、プロファイル9bにおいて吸気管7から排気管8に排出される量がゼロとなる現象について説明する。
図16は、目標位置のプロファイル9bに変更された吸気弁9と、排気弁10との動作例を示す図である。
図16の上側には、図5と同様のプロファイル9b,10aが示される。
図16の下側には、プロファイル9b,10aで規定される吸気弁9、排気弁10の動作の様子がタイミング(1)〜(4)ごとに示される。
図16に示すプロファイル9bにおいても、図12に示したプロファイル9cと同様にタイミング(1)の排気弁10の閉弁前は負圧が形成されている。タイミング(2)では、まず排気弁10が開弁され、排気管8の新気が燃焼内に吸入される。
ここで、図12に示したプロファイル9cとは異なり、タイミング(2)で排気弁10が開弁してから10deg後の早いタイミングで吸気弁9が開弁される。このため、タイミング(3)では、燃焼室内に十分な負圧が残っており、開弁された吸気管7からも新気が燃焼室に吸入される。このとき、排気弁10の方が先に開弁されるため排気管8からの新気の吸入量が、吸気管7からの新気の吸入量よりも多くなっている。
そして、吸気管7と排気管8から燃焼室に吸入された新気が、タイミング(4)に示す排気行程中にピストン3が上昇することでそれぞれ吸気管7と排気管8に押し出される。この際、吸気弁9のリフト量が6mmであるのに対し、排気弁10のリフト量は8mmであるので、排気弁10の方が吸気弁9よりリフト量が大きい。このため、圧力損失の影響から排気管8側に新気が多く排出される。この結果、吸気管7と排気管8から吸入した新気量と同等の量がそれぞれ戻されるため、排気管8に排出される新気の新気量はゼロとなっている。
また、吸気弁位相変更部302は、吸気弁9の位相をプロファイル9cからプロファイル9bに到達させてエンジン113を停止させる。そこで、燃料カットからエンジン停止までに排気管8に排出される新気について説明する。
図17は、燃料カット開始からエンジン停止までの各サイクルにおいて排気管8から吸気管7に排出される新気の新気量を示す図である。ここでは、プロファイル9cの保持期間が2.3秒となるように制御される。図17の横軸は、燃料カット開始からのサイクル番号を表し、縦軸は排気管8に排出された新気の体積(新気量)[cm]を表す。
8サイクル目から37サイクルまでが、吸気弁9の位相が、プロファイル9cの中間位置に保持されている状態である。上述したように図15では、エンジン113の始動時のクランキング後に、吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相を初爆位置に変更する際、吸気管7から排気管8に戻される新気の体積V3と、エンジン停止時の燃料カットからエンジン113の始動時の初爆までに吸気管7から排気管8に排出される新気の体積V4とが示される。
また、図17には、エンジン停止時の燃料カット開始からエンジン停止までに吸気管7から排気管8に排出される新気の体積V1と、吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相を中間位置に保持することで排気管8から吸気管7に戻される新気の体積V2とが示される。そして、ECU102は、新気の体積V1+V4と、新気の体積V2+V3との積算値をゼロにすることでエンジン初爆から噴射する燃料のエンリッチが不要となり、エンジン停止から再始動に伴う燃費、排気の悪化を抑制することが可能となる。
以上説明した第1の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302は、エンジン停止時に吸気弁9の位相変更を開始した直後の過渡期間で排気管8に排出された新気に対し、この新気を燃焼室内に再吸入してから吸気管7に戻すことが可能な位相(プロファイル9c)を一定に保持する保持期間を設ける。そして、吸気弁位相変更部302は、保持期間中に排気管8に排出された新気を吸気管7に戻した後に、排気管8への新気の排出を抑制する位置(プロファイル9b)に動作させる。
具体的には、位相変更の開始直後に排気管8に排出された新気を吸気管7に噴き戻させるため、吸気弁位相変更部302は、吸気弁9の位相を目標位置に変更する途中の、排気弁10の開弁時期が吸気弁9の開弁時期よりも進角した状態を所定期間にわたって維持させる。そして、吸気弁位相変更部302は、エンジン停止時の位相変更途中で排気管8に排出された新気の新気量と、エンジン113の再始動時に位相をデコンプレッション位置から初爆位置に変更する際に排出される新気の新気量とを見越して、この所定期間を、これらの新気量に相当する排気ガスを事前に吸気管7に戻すことが可能な期間に設定する。
このようにエンジン停止時の過渡期間で排気管8に排出された新気と、エンジン113の始動時の過渡期間で排気管8に排出されることを見越した量の燃焼ガスをエンジン停止時の時点で吸気管7に戻しておくことで、ECU102は、エンジン113の始動時のエンリッチ噴射を無しとすることが可能となる。また、エンジン113の始動時のエンリッチ噴射を無しとしたことで、燃費を向上し、排気の悪化を抑えることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る吸気弁9の位相変更制御の例について、図18〜図21を参照して説明する。
第2の実施の形態に係るECU102の構成は、第1の実施の形態に係るECU102の構成と同じである。ただし、第2の実施の形態に係るECU102は、吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相を変更途中で位相変更速度をゼロとせず、排気管8から吸気管7へ空気が戻る現象が生じる期間中に位相変更速度を遅くすることで排気管8から吸気管7への空気が戻る期間を生成する点で第1の実施の形態と異なる。このように第2の実施の形態に係るECU102が動作することの利点は、位相変更速度をゼロにしないため、動作を開始した際のモータ起動電力の増加を抑制できることにある。
図18は、第2の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302が、中間位置の付近で変化させるプロファイル9d,9eの例を示す図である。
第1の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302は、図6に示したように、排気管8から吸気管7に最大の空気(62cc)が戻る位相進角量150degのプロファイル9cで位相を停止する制御を行った。
一方、第2の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302は、図18に示すように、排気管8から吸気管7に空気が戻り始める位相進角量140degのプロファイル9dに到達した時点で位相変更速度(第1位相変更速度)を、プロファイル9aからプロファイル9dに到達するまでの位相変更速度(第2位相変更速度)よりも低下させる。そして、吸気弁位相変更部302は、排気管8から吸気管7に空気が戻らなくなる位相進角量160degのプロファイル9eに到達した時点で通常の位相変更速度(第3位相変更速度)に戻す制御となる。なお、プロファイル9eは、図6に示したプロファイル9cよりも10degだけ進角した位置にある。
なお、エンジン停止時に吸気管7から排気管8に排出される空気量1411cc(図11に示す体積V1)と、エンジン113の再始動時に排気管8に排出される空気量450cc(図15に示す体積V3の−50ccと、図15に示す体積V4の500ccとの合算値)は第1の実施の形態と同じである。また、排気管8から吸気管7に戻す目標空気量は1861ccであり、第1の実施の形態、第2の実施の形態とも同じである。
第2の実施の形態に係るECU102の吸気弁位相変更部302は、位相変更速度をゼロにせず、低速で動かし続けるため、上述した1861ccの空気を排気管8から吸気管7に戻せる期間となるように位相変更速度(第1位相変更速度)を設定する必要がある。
ここで、第2の実施の形態に係る位相変更速度の制御により、排気管8から吸気管7に戻る空気の空気量について、図19を参照して説明する。
図19は、吸気弁位相変更部302が、エンジン停止時に位相変更速度を低速にして動かした場合に、排気管8から吸気管7に戻る空気の空気量の例を示す図である。図19の横軸は、燃料カット開始後の6サイクル目からのサイクル番号を表し、縦軸は排気管8に排出された新気の体積(新気量)[cm]を表す。
吸気弁位相変更部302は、吸気弁9の位相が6サイクル目でプロファイル9dに到達するように位相を変更する。第2の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302によるエンジン停止後、6サイクル目までの制御は、図11に示した第1の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302の制御と同じである。その後、吸気弁位相変更部302は、排気管8から吸気管7に戻る空気量が最大となるプロファイル9cの位置まで16サイクル目で到達させる。ただし、吸気弁位相変更部302は、プロファイル9cの位置に到達するまでの間、吸気弁9の位相を低速で変更するので、徐々に排気管8から吸気管7に戻る空気量が増加している。
16サイクル目以降は、吸気弁位相変更部302が、プロファイル9cからプロファイル9eに位相を変更するため、徐々に排気管8から吸気管7に戻る空気量が減少する。26サイクル目でプロファイル9eに到達すると排気管8から吸気管7に戻る空気量はゼロとなる。
なお、図19でプロファイル9dからプロファイル9eまで変更する期間が20サイクルの場合、排気管8から吸気管7に戻る空気量は539.6ccとなる。この結果から、排気管8から吸気管7に戻す空気量を1861ccとするには、プロファイル9dからプロファイル9eに変更するサイクルを“69”に設定する必要がある。
ここで、第2の実施の形態における吸気弁位相変更部302が、エンジン113を停止して燃料カットを開始してからのエンジン回転数と吸気弁位相進角量との関係について、図20と図21を参照して説明する。
図20は、ECU102が燃料カットを開始後に、エンジン回転数が変化する様子を示したグラフである。図20の横軸は、燃料カットの開始後に経過した時間[s]を表し、縦軸は、エンジン回転数[rpm]を表す。
図21は、ECU102が燃料カットを開始後に、吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相を進角する様子を示したグラフである。図21の横軸は、燃料カットの開始後に経過した時間[s]を表し、縦軸は、吸気弁9の位相進角量[deg]を表す。
上述したように、第2の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302が、排気管8から吸気管7にガスを戻すには69サイクルが必要となり、第1の実施の形態に係る制御で必要とされた30サイクルよりも長くなる。そのため平均回転数は1600rpmとなり、69サイクルの期間は5.2秒となる。そして、図18に示したように、吸気弁位相変更部302がプロファイル9dからプロファイルeに変更に要する位相は20degである。そこで、20degの位相を5.2秒で変更するために必要な位相変更速度は3.8degCA/sとなる。
以上説明した第2の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302は、排気管8から吸気管7に空気が戻る位相範囲において、吸気弁9の位相を低速で動かすことでも第1の実施の形態と同じ効果を得ることができる。すなわち、ECU102は、エンジン113の始動時のエンリッチ噴射を無しとしたことで、燃費を向上し、排気の悪化を抑えることができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る吸気弁9の位相変更制御の例について、図22を参照して説明する。
第3の実施の形態に係るECU102の構成は、第1の実施の形態に係るECU102の構成と同じである。ただし、第3の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302は、VTC40の低コスト化を目的として、第1の実施の形態の位相変更速度300degCA/sに対して半分の150degCA/sに性能を落としたモータを採用し、このモータを動作させる点が第1の実施の形態と異なる。
性能を落としたモータを採用したVTC40を使用すると、位相変更速度が第1の実施の形態に係る位相変更速度の半分となるため、エンジン停止時と始動時のサイクル数が増加する。例えば、エンジン停止時の位相変更の様子を示した図11のサイクル数、エンジン113の始動時の位相変更の様子を示した図15でのサイクル数が概ね2倍になると考えられる。この場合、図11に示した、吸気管7から排気管8に排出される空気の体積V1が2倍の2822ccとなり、図15に示した、排気管8から吸気管7に戻される空気の体積V3が100cc、吸気管7から排気管8に排出される空気の体積V4が1000ccとなる。
そこで、位相変更速度と中間保持期間との関係について説明する。
図22は、ECU102に格納された、位相変更速度と中間保持期間との関係を表すマップ情報321Aの例を示す図である。図22の横軸は位相変更速度[degCA/s]を表し、縦軸は中間保持期間[s]を表す。
位相変更速度が半分になったことで、ECU102は、図17に体積V2で示す3722cc(=2822−100+1000)の空気量を排気管8から吸気管7に戻すことが可能な中間保持期間を設定する必要がある。そこで、ECU102は、エンジン停止時とエンジン113の始動時の位相変更速度に応じた中間保持期間に変更する。位相変更情報記憶部(マップ情報321)には、吸気弁(吸気弁9)の位相変更速度が上がるほど、短い中間保持期間が規定される。
中間保持期間は、燃料カット直後のエンジン回転数によって変わる。このため、吸気弁位相変更部302は、異なるエンジン回転数で燃料カットを実施する場合に、それぞれの条件に対応して用意した図22に示すマップ情報321Aを参照して、位相変更速度に応じた中間保持期間に変更する。
以上説明した第3の実施の形態に係るECU102では、燃料カット直後のエンジン回転数によって変わる中間保持期間を求め、位相変更速度を変えて中間保持期間を変更する。このとき、ECU102は、位相変更速度が遅い時には中間保持期間を長くし、位相変更速度が速い時には中間保持期間を短くするように制御する。このようにECU102は、位相変更速度によって中間保持期間を変更することで第1の実施の形態と同様に、エンジン113の始動時のエンリッチ噴射を無しとしたことで、燃費を向上し、排気の悪化を抑えるという効果を得ることができる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態に係る吸気弁9の位相変更制御の例について、図23を参照して説明する。
第4の実施の形態に係るECU102の構成は、第1の実施の形態に係るECU102の構成と同じである。ただし、第4の実施の形態に係るECU102は、スロットル開度が異なる条件で燃料カットを開始した場合について説明する。
図23は、ECU102に格納された、燃料カット時のスロットル開度と中間保持期間との関係を表すマップ情報321Bの例を示す図である。図23の横軸は燃料カット時のスロットル開度[deg]を表し、縦軸は中間保持期間[s]を表す。
スロットル開度が大きいほど吸気管7の圧力は高くなるので、エンジン停止時に吸気管7から排気管8に排出される空気の体積V1が増加する。このため、ECU102は、体積V1の増加に合わせて、中間保持期間を長くする必要がある。そこで、位相変更情報記憶部(マップ情報321)には、燃料のカットが開始された時点のスロットル開度が大きくなるほど、長い中間保持期間が規定される。
そして、第4の実施の形態に係る吸気弁位相変更部302は、ECU102が燃料カットを実施する場合に、マップ情報321Bを参照して、燃料カット時のスロットル開度に応じた中間保持期間に変更する。
以上説明した第4の実施の形態に係るECU102では、燃料カット直後のスロットル開度に応じて変わる中間保持期間を求め、中間保持期間を増減する。このとき、ECU102は、スロットル開度が小さい時には中間保持期間を短くし、スロットル開度が大きい時には中間保持期間を長くする。このようにECU102は、燃料カット時のスロットル開度によって中間保持期間を変更することで第1の実施の形態と同様に、エンジン113の始動時のエンリッチ噴射を無しとしたことで、燃費を向上し、排気の悪化を抑えるという効果を得ることができる。
[変形例]
なお、上述した各実施の形態では、吸気弁の位相を変更可能な可変バルブタイミング制御機構として、VTC40を備えたエンジン113の構成例について説明したが、吸気弁9の位相とリフト量を変更可能なVVL(Variable Valve Lift:可変バルブリフト機構)を備えたエンジンであってもよい。
また、VTC40は、電動で動作する機構であるが、油圧で動作する機構であってもよい。いずれであっても、吸気弁9の位相を適切に変更することが可能となる。
また、上述した各実施の形態では、吸気弁位相変更部302が吸気弁9の位相を適切に変更したことで、ECU102がエンリッチ噴射を無しとしたが、エンジン113の部品品質のばらつき、エンジン113の部品劣化等を考慮して、ECU102がわずかにエンリッチ噴射を行ってもよい。
なお、本発明は上述した各実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、ここで説明した実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
3…ピストン、9…吸気弁、10…排気弁、22…三元触媒、30…CPU、40…VTC、100…ハイブリッド自動車、101…VCU、102…ECU、113…エンジン、116…バッテリ、301…状態判定部、302…吸気弁位相変更部、321…マップ情報

Claims (10)

  1. 吸気管に設けられた吸気弁の位相を変更可能な可変バルブタイミング制御機構を備えたエンジンを制御するエンジン制御装置であって、
    前記エンジンの状態変化を判定する状態判定部と、
    前記エンジンの状態変化の前における前記吸気弁の位相の基準位置と、前記エンジンの状態変化の後における前記吸気弁の位相の目標位置と、前記基準位置及び前記目標位置の間の中間位置と、前記中間位置を含む所定範囲における前記中間位置の付近で保持される前記吸気弁の位相の中間保持期間とを前記吸気弁の位相変更情報として記憶する位相変更情報記憶部と、
    前記位相変更情報記憶部から読み出した前記位相変更情報、及び前記状態判定部が判定した前記エンジンの状態変化に基づいて、前記可変バルブタイミング制御機構を通じて前記吸気弁の位相を前記基準位置から前記目標位置に変更する途中に、前記中間位置の付近で前記吸気弁の位相を変更する第1位相変更速度を、前記基準位置から前記中間位置の付近に変更するまでの第2位相変更速度よりも低下させ、前記中間保持期間の経過後に前記第1位相変更速度よりも高い第3位相変更速度で前記吸気弁の位相を前記中間位置の付近から前記目標位置に変更する吸気弁位相変更部と、を備える
    エンジン制御装置。
  2. 前記エンジンの状態変化は、前記エンジンの停止に伴い、前記エンジンに供給される燃料がカットされたことを含み、
    前記吸気弁位相変更部は、前記第1位相変更速度、前記第2位相変更速度又は前記第3位相変更速度で、前記吸気弁の位相を前記基準位置から前記目標位置に進角させる
    請求項1に記載のエンジン制御装置。
  3. 前記エンジンの状態変化は、前記エンジンに供給される燃料のカットが継続した状態から前記エンジンが再始動したことを含み、
    前記吸気弁位相変更部は、前記エンジンの再始動により発生するデコンプレッションが完了した後に、前記吸気弁の位相を前記目標位置から前記基準位置に向けて遅角させる
    請求項1に記載のエンジン制御装置。
  4. 前記中間位置では、前記吸気弁の開弁時期が、排気管に設けられた排気弁の開弁時期よりも遅角側に設定され、
    前記目標位置では、前記エンジンが有する気筒に膨張行程で前記排気管から前記気筒内に吸入されたガスが、排気行程で前記排気管及び前記吸気管に戻るように、前記排気行程で前記吸気弁の開弁時期と、前記排気弁の開弁時期とが重なる
    請求項2又は3に記載のエンジン制御装置。
  5. 前記吸気弁位相変更部は、前記中間保持期間が経過するまでの間、前記中間位置の付近で前記吸気弁の位相を進角させる前記第1位相変更速度をゼロとする
    請求項4に記載のエンジン制御装置。
  6. 前記燃料のカットの開始は、車両の駆動に用いられるバッテリの充電容量が規定値以上になった場合に、前記エンジンの停止に先立って行われ、
    前記位相変更情報記憶部には、前記燃料のカットが開始された時点の前記エンジンの回転数が上がるほど、長い前記中間保持期間が規定される
    請求項4に記載のエンジン制御装置。
  7. 前記位相変更情報記憶部には、前記吸気弁の位相変更速度が上がるほど、短い前記中間保持期間が規定される
    請求項4に記載のエンジン制御装置。
  8. 前記位相変更情報記憶部には、前記燃料のカットが開始された時点のスロットル開度が大きくなるほど、長い前記中間保持期間が規定される
    請求項4に記載のエンジン制御装置。
  9. 前記吸気弁位相変更部は、前記エンジンの状態変化が前記エンジンの再始動したことである場合に、排気行程と吸気行程にまたがった位置であって、前記エンジンの初爆時に、前記エンジンが自立回転可能なトルクが発生する位置まで前記吸気弁の位相を遅角する
    請求項3に記載のエンジン制御装置。
  10. 吸気弁の位相を変更可能な可変バルブタイミング制御機構を備えたエンジンを制御するエンジン制御方法であって、
    前記エンジンの状態変化を判定する処理と、
    前記エンジンの状態変化の前における前記吸気弁の位相の基準位置と、前記エンジンの状態変化の後における前記吸気弁の位相の目標位置と、前記基準位置及び前記目標位置の間の中間位置と、前記中間位置を含む所定範囲における前記中間位置の付近で保持される前記吸気弁の位相の中間保持期間とを前記吸気弁の位相変更情報として記憶する位相変更情報記憶部から読み出した前記位相変更情報、及び前記エンジンの状態変化に基づいて、前記可変バルブタイミング制御機構を通じて前記吸気弁の位相を前記基準位置から前記目標位置に変更する処理と、を含み、
    前記吸気弁の位相を前記基準位置から前記目標位置に変更する処理の途中に、
    前記中間位置の付近で前記吸気弁の位相を変更する第1位相変更速度を、前記基準位置から前記中間位置の付近に変更するまでの第2位相変更速度よりも低下させる処理と、
    前記中間保持期間の経過後に前記第1位相変更速度よりも高い第3位相変更速度で前記吸気弁の位相を前記中間位置の付近から前記目標位置に変更する処理と、を含む
    エンジン制御方法。
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