JP2021080570A - 耐熱合金部材およびその製造方法ならびに合金皮膜およびその製造方法ならびに高温装置およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温酸化性雰囲気、高温腐食性雰囲気、等において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用されても、優れた耐高温酸化性、耐高温腐食性、等と耐亀裂性・耐剥離性とを得ることができる耐熱合金部材を提供する。【解決手段】耐熱合金部材は、Cu系金属からなる金属基材10と、その表面に形成された合金皮膜20とを有する。合金皮膜20は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物30を含有し、かつ酸化物30以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である。酸化物30は、Alに加えて金属基材10が含有する元素を含有することがある。【選択図】図1
Description
この発明は、耐熱合金部材およびその製造方法ならびに合金皮膜およびその製造方法ならびに高温装置およびその製造方法に関し、特に、高温酸化性雰囲気、高温腐食性雰囲気、等において加熱・冷却が繰り返される環境下で使用される、金属溶解炉、焼却炉、ボイラー、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス部材、等に適用して好適なものである。
耐熱材料が曝される高温雰囲気は、酸素、窒素、水蒸気、亜硫酸ガス、等の酸化性・腐食性成分および未燃成分による還元・浸炭性雰囲気となる。これら腐食性・浸炭性の高温雰囲気に耐熱材料が曝されると高温腐食、内部腐食、浸炭、等が発生し、材料が減肉して材料強度が低下する場合がある。
高温酸化や高温腐食は環境遮断特性に優れた保護皮膜によって耐熱材料の表面を被覆することによって、防止できる。代表的な保護皮膜はAl2 O3 (酸化アルミニウム(アルミナ))であり、種々の形成方法によって形成することができるが、一般的には、基材に含まれているAl(アルミニウム)の酸化、および、基材表面にカロライズ処理、Alめっき、溶融Al浸漬、化学気相成長(CVD)、溶射、電子ビーム蒸着、等によってAl含有合金皮膜を形成し、このAl含有合金皮膜のAlを酸化して保護的Al2 O3 皮膜を形成する方法、が採用されている(非特許文献1参照)。
耐熱材料の表面に形成したAl含有合金皮膜は、高温雰囲気に曝されることによって、図40に示すように、皮膜中のAlは保護的Al2 O3 皮膜を形成して基材を保護するが、保護的Al2 O3 皮膜の直下にAl欠乏層が形成されると同時に、基材との間の相互拡散によって、基材との界面付近の皮膜にAl濃度が低下した、いわゆる相互拡散層が形成される。Al含有合金皮膜のAl濃度が低下すると、保護的Al2 O3 皮膜の維持と剥離の際の再生能を喪失する。
保護的Al2 O3 皮膜の形成・維持、再生の能力を向上させるには、Al含有合金皮膜のAl濃度を増加させることが効果的であり、一般的に広く利用されているカロライズ処理、Alめっき、溶融Al浸漬、等ではAlを70原子%〜80原子%含有するAl含有合金皮膜が形成される(特許文献1〜3参照)。
Al含有合金皮膜のAl濃度の増大は、しかしながら、加熱・冷却時に基材とAl含有合金皮膜との間に発生する熱応力により、図41に示すように、Al含有合金皮膜に縦方向の亀裂(クラック)が発生し、この亀裂を介して酸化が進行することによって、Al含有合金皮膜の破壊・剥離へと進展する。さらに、このAl含有合金皮膜の亀裂は保護的Al2 O3 皮膜の破壊・剥離を助長する。
一方、低Al濃度のAl含有合金皮膜では、熱応力による亀裂の発生を抑制できるが、保護的Al2 O3 皮膜の形成・維持・再生する能力に劣る。
Al含有合金皮膜は、従って、保護的Al2 O3 皮膜の形成・維持・再生の能力を有するAl濃度を有し、同時に、加熱・冷却時の亀裂・剥離を抑制する能力、の両方を満足することが望まれる。特に、金属溶解炉、焼却炉、ボイラー、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス部材、等に使用されている汎用の大型・複雑形状部材への高機能性で安価な高Al含有合金皮膜の開発が望まれている。しかしながら、本発明者らの知る限り、これまで、そのような高Al含有合金皮膜は得られていない。
金属表面技術便覧(改定新版) 2000年1月1日 p.1390、日刊工業新聞社
上述のように、これまで、耐高温酸化性、耐高温腐食性、等と耐亀裂性・耐剥離性とに優れた耐熱合金部材は得られていなかった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、高温酸化性雰囲気、高温腐食性雰囲気、等において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用されても、優れた耐高温酸化性、耐高温腐食性、等と耐亀裂性・耐剥離性とを得ることができる耐熱合金部材およびその製造方法ならびにそのような耐熱合金部材に含まれる合金皮膜およびその製造方法ならびにそのような耐熱合金部材を含む高温装置およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。
すなわち、Al含有合金皮膜の亀裂・剥離はAl含有合金皮膜および基材の熱応力に起因し、Al含有合金皮膜のAl濃度が高いほどその傾向が強くなることから、Al含有合金皮膜の亀裂・剥離を防止するためにはAl濃度を低くする必要があるが、保護的Al2 O3 皮膜の形成・維持・再生に必要な高Al濃度とは相反する要求となる。
本発明者らは、独自の視点から種々実験を行い、理論的検討を行った結果、Al含有合金皮膜に低熱膨張の酸化物を挿入することで、Al含有合金皮膜の熱膨張係数を基材のそれに近づけることによって、加熱・冷却時の亀裂を抑制することができると同時に、保護的Al2 O3 皮膜を形成・維持・再生することができることを見出し、この発明を案出するに至った。対象となる基材は、Fe(鉄)系金属およびNi(ニッケル)系金属からなる金属基材だけでなく、Cu(銅)系金属からなる金属基材も含む。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材である。
金属基材を構成するFe系金属は、FeおよびFe基合金である。Fe基合金は、例えば、鋼、炭素鋼、鋳鉄、ステンレス鋼、等であるが、これに限定されるものではない。また、金属基材を構成するNi系金属は、NiおよびNi基合金である。Ni基合金は、例えば、Ni−Cr(クロム)合金、Ni−Cr−Fe−Mo(モリブデン)合金、Ni−Cr−W(タングステン)合金、Ni−Cr−Cu合金、等であるが、これに限定されるものではない。
合金皮膜の表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物は、Alを主体とする複合酸化物(複酸化物)、具体的には、例えば、スピネル型構造を有するMAl2 O4 (MはNi、Fe、Crなどの金属)やAl2 O3 −NiOなどである。酸化物が含有するAl以外の元素は、金属基材が含有する少なくとも一種類の元素、例えば、Si(ケイ素)、Cr、Zr(ジルコニウム)、Fe、Co(コバルト)、Ni、Mn(マンガン)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)およびWからなる群より選ばれた少なくとも一種である。典型的には、Alを主体とする酸化物は、合金皮膜中に複数、一般的には多数、存在する。また、典型的には、このAlを主体とする酸化物は、合金皮膜の表面に対してほぼ垂直に表面から内部に延在する。合金皮膜がAlを主体とする酸化物を含有することにより、この合金皮膜の熱膨張係数が金属基材の熱膨張係数に近づき、耐熱合金部材が高温酸化性雰囲気、高温腐食性雰囲気、等において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用されても、熱応力により合金皮膜に亀裂や剥離が発生するのを防止することができる。合金皮膜の酸化物以外の部分のAl濃度は、好適には、70原子%以上100原子%未満である。合金皮膜の厚さは必要に応じて選ばれる。
金属基材の形状は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば、平板状、棒状(角棒、丸棒、等)、管状、箱状、等である。
耐熱合金部材は、特に限定されないが、具体的には、例えば、金属溶解炉、焼却炉、ボイラー、排ガス部材、ガスタービンの部材、ジェットエンジンの部材、等である。
また、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl(塩化アンモニウム)粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散することにより上記合金皮膜を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl(塩化アンモニウム)粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散することにより上記合金皮膜を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法である。
Al蒸気源粉末において、Fe粉末のFe粉およびNi粉末のNi粉の粒径は、例えば、3μm以上400μm以下、好適には10μm以上400μm以下、より好適には25μm以上250μm以下である。Al粉末のAl粉の粒径は特に制限はないが、一般的には10μm以上400μm以下である。また、Al蒸気源粉末における、Al粉末の重量に対するFe粉末およびNi粉末の合計の重量の比は、典型的には0より大きく2以下である。Al蒸気源粉末の中でも、Al粉末とFe粉末とFeAl粉末とからなる混合粉末は、特に金属基材がFe系金属基材である場合に好適である。また、Al蒸気源粉末の中でも、Al粉末とNi粉末とからなる混合粉末は、特に金属基材がNi系金属基材である場合に好適である。混合粉末に含まれるNH4 Cl粉末は触媒、Al2 O3 粉末は焼結防止材である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱する温度は必要に応じて選ばれるが、一般的には700℃以上1100℃以下である。金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱する時間は必要に応じて選ばれるが、例えば1時間以上20時間以下である。この加熱処理の前期では、金属基材にAlが拡散されて金属基材の表面にAl含有合金皮膜が形成され、後期では、Al含有合金皮膜からAlが脱離してこのAl含有合金皮膜の表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔が形成される。楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する時間の短縮を図るために、好適には、金属基材を前期および後期の二段階で互いに異なる温度で加熱し、後期の加熱の温度を前期の加熱の温度より低温とする。例えば、前期の加熱の温度を900℃以上1100℃以下とし、後期の加熱の温度を700℃以上1000℃以下、好適には800℃以上1000℃以下とする。前期の加熱の時間は、好適には30分以上10時間以下である。後期の加熱の時間は、好適には1時間以上20時間以下である。不活性ガス雰囲気は、特に限定されないが、好適には、Ar(アルゴン)とHe(ヘリウム)との混合ガスまたはArとH2 (水素)との混合ガスであり、取り分けArと3vol%H2 との混合ガスが好適なものである。
Al含有合金皮膜を酸化する温度は、特に限定されないが、好適には、Alの酸化により遷移アルミナ酸化物(γ、Θ、η等)が形成される温度であり、具体的には、例えば、800℃以上1000℃以下である。Al含有合金皮膜を酸化する時間は、特に限定されないが、一般的には1時間以上20時間以内である。Al含有合金皮膜を酸化する酸化性雰囲気は、特に限定されないが、例えば、酸素(O2 )、空気、二酸化炭素(CO2 )とO2 との混合ガス、H2 OとO2 との混合ガス、湿分(H2 O)を含む空気、等であり、好適には、湿分(H2 O)を含む空気である。Al含有合金皮膜の酸化は、炉内で金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉から金属基材を取り出し、別の炉に入れて行ってもよいし、炉内で金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉内の雰囲気を酸化性雰囲気(例えば、湿分(H2 O)を含む空気)に置換してAl含有合金皮膜を酸化してもよい。
Al含有合金皮膜の酸化物以外の部分のAl濃度を60原子%以上100原子%未満にするためには、好適には、例えば次のような方法が用いられる。すなわち、Al含有合金皮膜が形成された金属基材をAl粉末、または、Al粉末とFe粉末およびNi粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱し、これによってAl含有合金皮膜にAlを拡散する。Al含有合金皮膜にAlを拡散する温度は、特に限定されないが、例えば、600℃以上1000℃以下、好適には700℃以上1000℃以下である。Al含有合金皮膜にAlを拡散する時間は、特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば、15分以上10時間以下であり、好適には30分以上6時間以下である。Al蒸気源粉末は、好適には、Al粉末である。
この耐熱合金部材の製造方法の発明においては、上記以外のことは、特にその性質に反しない限り、上記の耐熱合金部材の発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材の製造方法であって、
上記金属基材の表面にAl粉末、または、Al粉末とSi粉末、Cr粉末およびZr粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末を含むスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを形成した上記金属基材をFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散することにより上記合金皮膜を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材の製造方法であって、
上記金属基材の表面にAl粉末、または、Al粉末とSi粉末、Cr粉末およびZr粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末を含むスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを形成した上記金属基材をFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散することにより上記合金皮膜を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法である。
金属基材の表面にAl蒸気源粉末を含むスラリーを形成するには、例えば、金属基材の表面にスラリーを塗布したり、金属基材をスラリーに浸漬したりする。スラリーの組成および調製方法は特に限定されず、必要に応じて選ばれる。
Al蒸気源粉末において、Cr粉末のCr粉およびZr粉末のZr粉の粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下、好適には1μm以上10μm以下である。Al粉末のAl粉およびSi粉末のSi粉の粒径は特に制限はないが、一般的には0.1μm以上200μm以下である。また、Al蒸気源粉末における、Al粉末の重量に対するSi粉末、Cr粉末およびZr粉末の合計の重量の比は、典型的には0より大きく2以下である。
この耐熱合金部材の製造方法の発明においては、上記以外のことは、特にその性質に反しない限り、上記の耐熱合金部材および耐熱合金部材の製造方法の各発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材の表面に形成された合金皮膜であって、
その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満であることを特徴とする合金皮膜である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材の表面に形成された合金皮膜であって、
その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満であることを特徴とする合金皮膜である。
また、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材の表面に形成され、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である合金皮膜の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程と、
を有する合金皮膜の製造方法である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材の表面に形成され、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である合金皮膜の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程と、
を有する合金皮膜の製造方法である。
上記の合金皮膜および合金皮膜の製造方法の各発明においては、特にその性質に反しない限り、上記の耐熱合金部材および耐熱合金部材の製造方法の各発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材の表面に形成され、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である合金皮膜の製造方法であって、
上記金属基材の表面にAl粉末、または、Al粉末とSi粉末、Cr粉末およびZr粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末を含むスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを形成した上記金属基材をFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程と、
を有する合金皮膜の製造方法である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材の表面に形成され、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である合金皮膜の製造方法であって、
上記金属基材の表面にAl粉末、または、Al粉末とSi粉末、Cr粉末およびZr粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末を含むスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを形成した上記金属基材をFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程と、
を有する合金皮膜の製造方法である。
また、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材
を有する高温装置である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材
を有する高温装置である。
また、この発明は、
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材
を有する高温装置の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程とを実行し、
または
上記金属基材の表面にAl粉末、または、Al粉末とSi粉末、Cr粉末およびZr粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末を含むスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを形成した上記金属基材をFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程とを実行することにより耐熱合金部材を製造する工程を有する高温装置の製造方法である。
Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満である耐熱合金部材
を有する高温装置の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程とを実行し、
または
上記金属基材の表面にAl粉末、または、Al粉末とSi粉末、Cr粉末およびZr粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末を含むスラリーを形成する工程と、
上記スラリーを形成した上記金属基材をFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜にAlを拡散する工程とを実行することにより耐熱合金部材を製造する工程を有する高温装置の製造方法である。
高温装置は、上記の耐熱合金部材を一部または全部に含む各種のものであってよいが、具体的には、例えば、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス装置、等である。
また、この発明は、
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材である。
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材である。
金属基材を構成するCu系金属は、CuおよびCu基合金である。Cu基合金は、例えば、クロム銅、真鍮、黄銅、等であるが、これに限定されるものではない。
また、この発明は、
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法である。
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法である。
Cu系金属からなる金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱する温度は必要に応じて選ばれるが、一般的には530℃以上620℃以下である。金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱する時間は必要に応じて選ばれるが、例えば1時間以上20時間以下である。この加熱処理の前期では、金属基材にAlが拡散されて金属基材の表面にAl含有合金皮膜が形成され、後期では、Al含有合金皮膜からAlが脱離してこのAl含有合金皮膜の表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔が形成される。楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する時間の短縮を図るために、好適には、金属基材を前期および後期の二段階で互いに異なる温度で加熱し、後期の加熱の温度を前期の加熱の温度より低温とする。例えば、前期の加熱の温度を580℃以上620℃以下とし、後期の加熱の温度を530℃以上600℃以下、好適には530℃以上580℃以下とする。前期の加熱の時間は、好適には30分以上10時間以下である。後期の加熱の時間は、好適には1時間以上20時間以下である。不活性ガス雰囲気は、特に限定されないが、好適には、ArとHeとの混合ガスまたはArとH2 との混合ガスであり、取り分けArと3vol%H2 との混合ガスが好適なものである。
Al含有合金皮膜を酸化する温度は、特に限定されないが、好適には、Alの酸化により遷移アルミナ酸化物(γ、Θ、η等)が形成される温度であり、具体的には、例えば730℃以上950℃以下である。Al含有合金皮膜を酸化する時間は、特に限定されないが、一般的には1時間以上20時間以内である。Al含有合金皮膜を酸化する酸化性雰囲気は、特に限定されないが、例えば、O2 、空気、CO2 とO2 との混合ガス、H2 OとO2 との混合ガス、湿分(H2 O)を含む空気、等であり、好適には、湿分(H2 O)を含む空気である。Al含有合金皮膜の酸化は、炉内で金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉から金属基材を取り出し、別の炉に入れて行ってもよいし、炉内で金属基材を不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉内の雰囲気を酸化性雰囲気(例えば、湿分(H2 O)を含む空気)に置換してAl含有合金皮膜を酸化してもよい。
また、この発明は、
Cu系金属からなる金属基材の表面に形成された合金皮膜であって、
その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下であることを特徴とする合金皮膜である。
Cu系金属からなる金属基材の表面に形成された合金皮膜であって、
その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下であることを特徴とする合金皮膜である。
また、この発明は、
Cu系金属からなる金属基材の表面に形成され、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である合金皮膜の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
を有する合金皮膜の製造方法である。
Cu系金属からなる金属基材の表面に形成され、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である合金皮膜の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
を有する合金皮膜の製造方法である。
また、この発明は、
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材
を有する高温装置である。
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材
を有する高温装置である。
また、この発明は、
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材
を有する高温装置の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程とを実行することにより耐熱合金部材を製造する工程を有する高温装置の製造方法である。
Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材
を有する高温装置の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程とを実行することにより耐熱合金部材を製造する工程を有する高温装置の製造方法である。
Cu系金属からなる金属基材を用いる上記の合金皮膜、合金皮膜の製造方法、高温装置および高温装置の製造方法の各発明においては、その性質に反しない限り、Cu系金属からなる金属基材を用いる耐熱合金部材および耐熱合金部材の製造方法の各発明に関連して説明したことが成立する。また、高温装置については、Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材を用いる上記の高温装置および高温装置の製造方法の各発明に関連して説明したことが成立する。
この発明によれば、Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材を用いる場合は、合金皮膜が、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満であることにより、この合金皮膜を金属基材の表面に形成した耐熱合金部材が高温酸化性雰囲気、高温腐食性雰囲気、等において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用されても、合金皮膜の表面に継続的に保護的Al2 O3 皮膜が形成されるとともに、合金皮膜の表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物により合金皮膜の亀裂・剥離を防止することができることにより、優れた耐高温酸化性、耐高温腐食性、等および耐亀裂性・耐剥離性を得ることができる。それによって、長寿命の優れた高温装置を実現することができる。また、Cu系金属からなる金属基材を用いる場合は、合金皮膜が、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下であることにより、上記と同様な効果を得ることができる。
以下、発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」と言う。)について説明する。
〈第1の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
図1Aは第1の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図1Aに示すように、この耐熱合金部材においては、Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材10の表面に合金皮膜20が形成されている。金属基材10は、例えば、既に挙げたものの中から選ばれる。合金皮膜20は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する酸化物30を複数、典型的には多数、含有する。これらの酸化物30は、典型的には、合金皮膜20の表面に対してほぼ垂直に延在する。これらの酸化物30の深さは互いにほぼ同一であっても異なっていてもよい。酸化物30はAlを主体とし、典型的には、Alに加えて金属基材10が含有する元素、例えば、Si、Cr、Zr、Fe、Co、Ni、Mn、Mo、TiおよびWからなる群より選ばれた少なくとも一種を含有する。合金皮膜20のうち酸化物30以外の部分はAlを高濃度に含有し、Al濃度が60原子%以上100原子%未満である。合金皮膜20の厚さは必要に応じて選ばれるが、例えば、10μm以上500μm以下である。
[耐熱合金部材]
図1Aは第1の実施の形態による耐熱合金部材を示す。図1Aに示すように、この耐熱合金部材においては、Fe系金属またはNi系金属からなる金属基材10の表面に合金皮膜20が形成されている。金属基材10は、例えば、既に挙げたものの中から選ばれる。合金皮膜20は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する酸化物30を複数、典型的には多数、含有する。これらの酸化物30は、典型的には、合金皮膜20の表面に対してほぼ垂直に延在する。これらの酸化物30の深さは互いにほぼ同一であっても異なっていてもよい。酸化物30はAlを主体とし、典型的には、Alに加えて金属基材10が含有する元素、例えば、Si、Cr、Zr、Fe、Co、Ni、Mn、Mo、TiおよびWからなる群より選ばれた少なくとも一種を含有する。合金皮膜20のうち酸化物30以外の部分はAlを高濃度に含有し、Al濃度が60原子%以上100原子%未満である。合金皮膜20の厚さは必要に応じて選ばれるが、例えば、10μm以上500μm以下である。
図1Bは、図1AのI−I線に沿ってのAl濃度分布の一例を合金皮膜20および金属基材10に対応して示したものである。図1Bに示すように、合金皮膜20のうち酸化物30以外の部分のAl濃度は60原子%以上100原子%未満である。
[耐熱合金部材の製造方法]
まず、金属基材10を用意する。
まず、金属基材10を用意する。
次に、金属基材10をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させる。Al蒸気源粉末は、金属基材10がFe系金属からなる場合は、好適にはAl粉末とFe粉末とFeAl粉末とからなるものを用い、金属基材10がNi系金属からなる場合は、好適にはAl粉末とNi粉末とからなるものを用いる。Fe粉末のFe粉およびNi粉末のNi粉の粒径は、例えば、10μm以上400μm以下、好適には50μm以上250μm以下とし、Al粉末のAl粉の粒径は10μm以上400μm以下とする。Al蒸気源粉末における、Al粉末の重量に対するFe粉末およびNi粉末の合計の重量の比は、0より大きく2以下、例えば0.5以上2以下とする。
次に、金属基材10を上記の混合粉末中に埋没させた状態で不活性ガス雰囲気中で加熱する。加熱する温度は700℃以上1100℃以下とする。必要に応じて、金属基材10を前期および後期の二段階で加熱し、後期の加熱の温度を前期の加熱の温度より低温とし、例えば、前期の加熱の温度を900℃以上1100℃以下とし、後期の加熱の温度を700℃以上1000℃以下とする。加熱する時間は、例えば1時間以上20時間以内である。不活性ガス雰囲気は、好適には、ArとHeとの混合ガスまたはArとH2 との混合ガス、より好適にはArと3vol%H2 との混合ガスである。
上記の加熱処理の前期では、図2Aに示すように、金属基材10の表面にAlが拡散浸透することによりAl含有合金皮膜40が形成され、後期では、このAl含有合金皮膜40からAlが脱離することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔50が複数、一般的には多数形成される。図2Bは、図2AのII−II線に沿ってのAl濃度分布の一例をAl含有合金皮膜40および金属基材10に対応して示したものである。図2Bに示すように、Al含有合金皮膜40のAl濃度は図1Bに示すAl濃度より低い。Al含有合金皮膜40の形成の際には、後述のようにAlはAlCl3 として供給され、Al拡散処理は一種のCVDとなるため、Al含有合金皮膜40の表面が平坦になるという利点を得ることができる。
次に、図3Aに示すように、Al含有合金皮膜40が形成された金属基材10を酸化性雰囲気中で酸化することにより細孔50の内部に酸化物30を形成する。酸化温度は、Alの酸化により遷移アルミナ酸化物(γ、Θ、η等)が形成される温度、例えば800℃以上1000℃以下である。酸化時間は、1時間以上20時間以内である。酸化性雰囲気は、例えば、O2 、空気、CO2 とO2 との混合ガス、H2 OとO2 との混合ガス、湿分(H2 O)を含む空気、等である。酸化は、電気炉等の炉内で金属基材10を上述のように不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉から金属基材10を取り出し、別の炉に入れて行ってもよいし、炉内で金属基材10を上述のように不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉内の雰囲気を酸化性雰囲気(例えば、湿分(H2 O)を含む空気)に置換してAl含有合金皮膜40を酸化してもよい。図3Bは、図3AのIII−III線に沿ってのAl濃度分布の一例をAl含有合金皮膜40および金属基材10に対応して示したものである。図3Bに示すように、Al含有合金皮膜40中のAlの一部が酸化物30の形成により消費されたため、Al含有合金皮膜40のAl濃度は図2Bに示すAl濃度より低くなっている。
次に、上述のようにしてAlを主体とする酸化物30が形成されたAl含有合金皮膜40が形成された金属基材10をAl粉末、または、Al粉末とFe粉末およびNi粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱する。これによって、Al含有合金皮膜40にAlを高濃度に拡散することにより、図1Bに示すように、酸化物30以外の部分のAl濃度を60原子%以上100原子%未満とする。Alを拡散する温度は、例えば、600℃以上1000℃以下、好適には700℃以上1000℃以下である。Alを拡散する時間は、例えば、15分以上4時間以下であり、好適には30分以上6時間以下である。Al蒸気源粉末は、好適には、Al粉末である。
以上により、図1Aに示すように、金属基材10の表面に、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物30を含有し、この酸化物30以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満の合金皮膜20が形成され、目的とする耐熱合金部材が製造される。
ここで、金属基材10を上記の混合粉末中に埋没させた状態で不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、金属基材10の表面に、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔50を含有するAl含有合金皮膜40が形成されるメカニズムについて検討する。一例として、混合粉末として、Al粉末とFe粉末とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末を用いる場合について説明するが、Fe粉末の代わりにNi粉末またはFeAl粉末を用いる場合も同様である。
まず、不活性ガス雰囲気中での加熱により、混合粉末中に含まれるNH4 Clの熱分解反応
NH4 Cl→NH3 +HCl (1)
が進行し、生成したHCl(塩化水素)とAl粉とが反応して、
Al+HCl⇒AlCl3 +H2 (2)
によりAlCl3 (塩化アルミニウム)が形成される。
NH4 Cl→NH3 +HCl (1)
が進行し、生成したHCl(塩化水素)とAl粉とが反応して、
Al+HCl⇒AlCl3 +H2 (2)
によりAlCl3 (塩化アルミニウム)が形成される。
このAlCl3 は金属基材10およびFe粉とそれぞれ反応して
AlCl3 +金属基材10⇒Al含有合金皮膜40+Cl2 (3)
AlCl3 +Fe粉⇒Al(Fe)+Cl2 (4)
により、Alが金属基材10の表面およびFe粉の表面からそれぞれ拡散浸透する。
AlCl3 +金属基材10⇒Al含有合金皮膜40+Cl2 (3)
AlCl3 +Fe粉⇒Al(Fe)+Cl2 (4)
により、Alが金属基材10の表面およびFe粉の表面からそれぞれ拡散浸透する。
前期のAl拡散処理の初期の段階では、雰囲気のAl活量は(2) 式のAl(=AlCl3 )で決定され、金属基材10の表面とFe粉の表面とに高Al濃度のAl含有合金皮膜40が形成される。
前期のAl拡散処理の時間の経過とともに、金属基材10では内部へのAl含有合金皮膜40の成長が進行するのに対して、Fe粉では内部までAlが浸透し、遂には、Fe粉はAl(Fe)粉に変化する、前期の後半の段階に達する。
前期の後半の段階では、HClとAl(Fe)粉およびAl含有合金皮膜40とが反応して、
Al(Fe)粉+HCl⇒AlCl3 +Fe(Al減) +H2 (5)
Al含有合金皮膜40+HCl⇒AlCl3 +Al含有合金皮膜40(Al減) +H2
(6)
によりAlCl3 を形成し、同時に、Al(Fe)粉およびAl含有合金皮膜40の表面からAlが脱離する。
Al(Fe)粉+HCl⇒AlCl3 +Fe(Al減) +H2 (5)
Al含有合金皮膜40+HCl⇒AlCl3 +Al含有合金皮膜40(Al減) +H2
(6)
によりAlCl3 を形成し、同時に、Al(Fe)粉およびAl含有合金皮膜40の表面からAlが脱離する。
前期のAl拡散処理では、初期の段階では(2) 式で与えられるAl(AlCl3 ) 活量で進行するが、後期になると、(5) と(6) で決定されるAl(AlCl3 ) 活量で進行することとなる。
前期のAl拡散処理の初期の段階で形成したAl含有合金皮膜40のAl濃度(式(3)
に対応)に比較して、後期ではAl濃度(式(6) に対応)は低下する、すなわち、Alが脱離することになる。ここでは、この後期の段階をAl脱離処理と呼ぶことにする。
に対応)に比較して、後期ではAl濃度(式(6) に対応)は低下する、すなわち、Alが脱離することになる。ここでは、この後期の段階をAl脱離処理と呼ぶことにする。
上記の、前期のAl拡散処理から後期のAl脱離処理への変移は、Al蒸気源粒子におけるAl粉末に対するFe粉末の重量比およびFe粉末のFe粉の粒径を制御することによって、図4に示すように、Al拡散処理ではAl粉末がAl源として作用し、金属基材10とFe粉の表面に高Al濃度の合金層が形成されるが、時間の経過とともに、AlとFe粉との反応が進行し、Fe粉の全体がAl(Fe)粉に変化する。この変化の過程で、雰囲気のAl(=AlCl3 )の活量はAl(Fe)(=AlCl3 )へと変化する。さらに時間が経過すると、Alは金属基材10内部へ拡散侵入するが、このAlはAl(Fe)(=AlCl3 )から供給され、Al(Fe)粉のAl濃度は低下することになる。
Al含有合金皮膜40の表面のAl濃度は、初期の高Al濃度から低Al濃度へ変化する際、Al含有合金皮膜40からAlの脱離が進行し、楔状の細孔50を形成することになる。
上記の前期のAl拡散処理と後期のAl脱離処理とは同一の温度で行うことはできるが、しかしながら、長時間を要する。前期のAl拡散処理による高Al濃度のAl含有合金皮膜40の形成後に、温度を低下させて後期のAl脱離処理工程を行うことによって、短時間で効果的に細孔50を形成することができる。
上記のように、高Al濃度のAl含有合金皮膜40の表面からのAlの脱離を支配する雰囲気のAl(=AlCl3 )活量は、Al粉末とFe粉末との重量比によって決定され、一段目から二段目に移行するまでの時間は、Fe粉の大きさによって決定される。
この第1の実施の形態によれば、耐熱合金部材の金属基材10の表面に形成された合金皮膜20が、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物30を含有し、かつ酸化物30以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満であることにより、この耐熱合金部材が高温酸化性雰囲気、高温腐食性雰囲気、等において加熱・冷却サイクルが付加された環境下で使用されても、合金皮膜20の表面に継続的に保護的Al2 O3 皮膜が形成されるとともに、合金皮膜20の表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物30が低熱膨張であることにより合金皮膜20に発生する熱応力を低く抑制することができるため合金皮膜20の亀裂・剥離を防止することができる。これによって、優れた耐高温酸化性、耐高温腐食性、等および耐亀裂性・耐剥離性を得ることができる耐熱合金部材を実現することができ、この耐熱合金部材を用いることによって長寿命の優れた高温装置を実現することができる。この耐熱合金部材あるいは高温装置は、金属溶解炉、焼却炉、ボイラー、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス系部材、等に適用して好適なものである。
〈第2の実施の形態〉
[耐熱合金部材の製造方法]
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態による耐熱合金部材を第1の実施の形態で説明した方法と異なる方法で製造する方法について説明する。
[耐熱合金部材の製造方法]
第2の実施の形態においては、第1の実施の形態による耐熱合金部材を第1の実施の形態で説明した方法と異なる方法で製造する方法について説明する。
まず、図5Aに示すように、金属基材10の表面にAl粉末、または、Al粉末とSi粉末、Cr粉末およびZr粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末を含むスラリー60を形成する。金属基材10の表面へのスラリー60の形成は金属基材10の表面にスラリー60を塗布したり、容器に入れられたスラリー60中に金属基材10を浸漬して引き上げたりすることにより行うことができる。スラリー60は、原料粉末を秤量し、乳鉢で混練した後、有機溶剤とエタノールとを含む液に投入することにより調製する。スラリー60の粘性は例えばエタノール添加により調整する。Al蒸気源粉末において、Cr粉末のCr粉およびZr粉末のZr粉の粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下、好適には1μm以上10μm以下である。Al粉末のAl粉およびSi粉末のSi粉の粒径は特に制限はないが、一般的には0.1μm以上200μm以下である。また、Al蒸気源粉末における、Al粉末の重量に対するSi粉末、Cr粉末およびZr粉末の合計の重量の比は、典型的には0より大きく2以下である。
次に、スラリー60を形成した金属基材10をFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱する。加熱する温度は700℃以上1100℃以下とする。必要に応じて、金属基材10を前期および後期の二段階で加熱し、後期の加熱の温度を前期の加熱の温度より低温とし、例えば、前期の加熱の温度を900℃以上1100℃以下とし、後期の加熱の温度を700℃以上1000℃以下とする。加熱する時間は、例えば1時間以上20時間以内である。不活性ガス雰囲気は、好適には、ArとHeとの混合ガスまたはArとH2 との混合ガス、より好適にはArと3vol%H2 との混合ガスである。
第1の実施の形態と同様に、上記の加熱処理の前期では、図5Bに示すように、金属基材10の表面にAl含有合金皮膜40が形成され、後期では、このAl含有合金皮膜40に、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔50が複数、一般的には多数形成される。この状態のAl含有合金皮膜40のAl濃度は図2Bに示すものと同様である。
次に、図5Cに示すように、Al含有合金皮膜40が形成された金属基材10を酸化性雰囲気中で酸化することにより細孔50の内部に酸化物30を形成する。酸化温度は、Alの酸化により遷移アルミナ酸化物(γ、Θ、η等)が形成される温度、例えば800℃以上1000℃以下である。酸化時間は、1時間以上20時間以内である。酸化性雰囲気は、例えば、O2 、空気、CO2 とO2 との混合ガス、H2 OとO2 との混合ガス、湿分(H2 O)を含む空気、等である。酸化は、電気炉等の炉内で金属基材10を上述のように不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉から金属基材10を取り出し、別の炉に入れて行ってもよいし、炉内で金属基材10を上述のように不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉内の雰囲気を酸化性雰囲気(例えば、湿分(H2 O)を含む空気)に置換してAl含有合金皮膜40を酸化してもよい。この状態のAl含有合金皮膜40のAl濃度は図3Bに示すものと同様である。
次に、上述のようにしてAlを主体とする酸化物30が形成されたAl含有合金皮膜40が形成された金属基材10をAl粉末、または、Al粉末とFe粉末およびNi粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱する。これによって、Al含有合金皮膜40にAlを高濃度に拡散することにより、図1Bに示すように、酸化物30以外の部分のAl濃度を60原子%以上100原子%未満とする。Alを拡散する温度は、例えば、600℃以上1000℃以下、好適には700℃以上1000℃以下である。Alを拡散する時間は、例えば、15分以上4時間以下であり、好適には30分以上6時間以下である。Al蒸気源粉末は、好適には、Al粉末である。
以上により、図1Aに示すように、金属基材10の表面に、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物30を含有し、この酸化物30以外の部分のAl濃度が60原子%以上100原子%未満の合金皮膜20が形成され、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
〈第3の実施の形態〉
[耐熱合金部材]
第3の実施の形態による耐熱合金部材は、図1Aにおいて、金属基材10がCu系金属からなり、合金皮膜20のうちのAlを主体とする酸化物30以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下であることが、第1の実施の形態による耐熱合金部材と異なり、それ以外は第1の実施の形態による耐熱合金部材と同様である。
[耐熱合金部材]
第3の実施の形態による耐熱合金部材は、図1Aにおいて、金属基材10がCu系金属からなり、合金皮膜20のうちのAlを主体とする酸化物30以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下であることが、第1の実施の形態による耐熱合金部材と異なり、それ以外は第1の実施の形態による耐熱合金部材と同様である。
[耐熱合金部材の製造方法]
まず、金属基材10を用意する。
まず、金属基材10を用意する。
次に、金属基材10をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させる。Al蒸気源粉末は、好適にはAl粉末とFe粉末とFeAl粉末とからなるものを用いる。Fe粉末のFe粉およびNi粉末のNi粉の粒径は、例えば、10μm以上400μm以下、好適には50μm以上250μm以下とし、Al粉末のAl粉の粒径は10μm以上400μm以下とする。Al蒸気源粉末における、Al粉末の重量に対するFe粉末およびNi粉末の合計の重量の比は、0より大きく2以下、例えば0.5以上2以下とする。
次に、金属基材10を上記の混合粉末中に埋没させた状態で不活性ガス雰囲気中で加熱する。加熱する温度は530℃以上620℃以下とする。必要に応じて、金属基材10を前期および後期の二段階で加熱し、後期の加熱の温度を前期の加熱の温度より低温とし、例えば、前期の加熱の温度を580℃以上620℃以下とし、後期の加熱の温度を530℃以上580℃以下とする。加熱する時間は、例えば1時間以上20時間以内である。不活性ガス雰囲気は、好適には、ArとHeとの混合ガスまたはArとH2 との混合ガス、より好適にはArと3vol%H2 との混合ガスである。この加熱処理により、図2Aに示すと同様に、楔状の形状を有する細孔50を有するAl含有合金皮膜40が形成される。
次に、図3Aに示すと同様に、Al含有合金皮膜40が形成された金属基材10を酸化性雰囲気中で酸化することにより細孔50の内部に酸化物30を形成する。酸化温度は、Alの酸化により遷移アルミナ酸化物(γ、Θ、η等)が形成される温度、例えば750℃以上950℃以下である。酸化時間は、1時間以上20時間以内である。酸化性雰囲気は、例えば、O2 、空気、CO2 とO2 との混合ガス、H2 OとO2 との混合ガス、湿分(H2 O)を含む空気、等である。酸化は、電気炉等の炉内で金属基材10を上述のように不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉から金属基材10を取り出し、別の炉に入れて行ってもよいし、炉内で金属基材10を上述のように不活性ガス雰囲気中で加熱した後、炉内の雰囲気を酸化性雰囲気(例えば、湿分(H2 O)を含む空気)に置換してAl含有合金皮膜40を酸化してもよい。
以上により、図1Aに示すと同様に、Cu系金属からなる金属基材10の表面に、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物30を含有し、この酸化物30以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下の合金皮膜20が形成され、目的とする耐熱合金部材が製造される。
この第3の実施の形態によれば、金属基材10がCu系金属からなる場合に、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。この耐熱合金部材あるいはこの耐熱合金部材を用いた高温装置は、金属溶解炉、焼却炉、ボイラー、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス系部材、等に適用して好適なものである。
実施例1〜4は第1の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例1)
実施例1では、金属基材10としてFe基材を用いた。
実施例1では、金属基材10としてFe基材を用いた。
(1)二段階加熱処理
まず、Fe基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:50(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の加熱処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の加熱処理を行った。ここで、前期、すなわち一段目の加熱処理はAl拡散処理、後期、すなわち二段目の加熱処理はAl脱離処理であるので、二段階加熱処理は二段階Al処理と言い換えることもできる。
まず、Fe基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:50(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の加熱処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の加熱処理を行った。ここで、前期、すなわち一段目の加熱処理はAl拡散処理、後期、すなわち二段目の加熱処理はAl脱離処理であるので、二段階加熱処理は二段階Al処理と言い換えることもできる。
この二段階加熱処理において、前期、すなわちAl拡散処理後の試験片の表面に形成された合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散分光装置)で行った。合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図6Aに、各元素の濃度分布(図6Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図6Bに示す。表1は図6Bに示した各元素の濃度(原子%)をまとめた分析表である。
この二段階加熱処理の後期、すなわちAl脱離処理後の試験片の表面に形成されたAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図7Aに、各元素の濃度分布(図7Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)を図7Bに示す。表2は図7Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。
図6Aに示すように、楔状の細孔(空隙) は、一段目のAl拡散処理においても形成されているが、数密度が低いのに対して、続いて、二段目のAl脱離処理をすると、図7Aに示すように、数密度と細孔の幅が大幅に増加していることが分かる。
(2)酸化処理
次に、上述のようにして楔状細孔を有するAl含有合金皮膜を形成したFe基材を800℃、16時間、大気中で酸化処理した。酸化処理後のAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図8Aに、各元素の濃度分布(図8Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)を図8Bに示す。表3は図8Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。また、図8Aの一部を拡大した走査型電子顕微鏡写真を図9に示す。表4は図9に示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
次に、上述のようにして楔状細孔を有するAl含有合金皮膜を形成したFe基材を800℃、16時間、大気中で酸化処理した。酸化処理後のAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図8Aに、各元素の濃度分布(図8Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)を図8Bに示す。表3は図8Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。また、図8Aの一部を拡大した走査型電子顕微鏡写真を図9に示す。表4は図9に示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図8AおよびBならびに図9より、楔状の細孔内に形成された酸化物は、AlとFeとを含み、図9の測定点039はAl2 O3 、図9の測定点032、034、035、037はFe−Al酸化物(FeAl2 O4 )と推定される。Al含有合金皮膜のAl濃度は50〜52原子%(図9の測定点033、038)である。
(3)高Al濃度拡散処理
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するFe基材を、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =6:2:50(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。高Al濃度拡散処理後のAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図10Aに、各元素の濃度分布(図10Aに示す写真の分析線LG7に沿っての濃度分布)を図10Bに示す。表5は図10Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表6は図10Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するFe基材を、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =6:2:50(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。高Al濃度拡散処理後のAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図10Aに、各元素の濃度分布(図10Aに示す写真の分析線LG7に沿っての濃度分布)を図10Bに示す。表5は図10Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表6は図10Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図10Bおよび表5、6より、合金皮膜のAl濃度は69.8〜71.2原子%である。同時に、(2)に示した酸化物(FeAl2 O4 )のAl濃度が増加し、Fe濃度は低下している。
(実施例2)
実施例2では、金属基材10としてSUH446(Fe−25Cr)基材を用いた。
実施例2では、金属基材10としてSUH446(Fe−25Cr)基材を用いた。
(1)二段階加熱処理
SUH446基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:40(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の処理を行った。
SUH446基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:40(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の処理を行った。
こうしてSUH446基材の表面に形成されたAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図11Aに、各元素の濃度分布(図11Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図11Bに示す。表7は図11Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表8は図11Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図11AおよびBならびに表7、8に示すように、楔状の細孔(空隙) は、表面から60〜70μmの深さに形成されており、Al含有合金皮膜のAl濃度は45.3〜49.1原子%である。
(2)酸化処理
二段階加熱処理に続き、実施例1と同様の条件下で酸化処理を行った。
二段階加熱処理に続き、実施例1と同様の条件下で酸化処理を行った。
(3)高Al濃度拡散処理
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUH446基材を、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUH446基材を、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。
酸化処理および高Al濃度拡散処理を行った後の合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図12Aに、各元素の濃度分布(図12Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図12Bに示す。表9は図12Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表10は図12Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図12AおよびBならびに表9、10より、合金皮膜のAl濃度は67.3〜74.3原子%であり、酸化物は(Fe、Cr)Al2 O4 である。
(実施例3)
実施例3では、金属基材10としてSUS304(Fe−18Cr−8Ni)基材を用いた。
実施例3では、金属基材10としてSUS304(Fe−18Cr−8Ni)基材を用いた。
(1)二段階加熱処理
SUS304基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:40(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の処理を行った。
SUS304基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:40(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の処理を行った。
こうしてSUS304基材の表面に形成されたAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図13Aに、各元素の濃度分布(図13Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)を図13Bに示す。表11は図13Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表12は図13Aに示す測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図13Aに示すように、楔状の細孔(空隙) は、表面から約30μmの深さに形成されており、図13Bおよび表11、12よりAl含有合金皮膜のAl濃度は45.0〜48.2原子%である。
(2)酸化処理
上述のようにして楔状細孔を有するAl含有合金皮膜を形成したSUS304基材を900℃、16時間、大気中で酸化処理した。
上述のようにして楔状細孔を有するAl含有合金皮膜を形成したSUS304基材を900℃、16時間、大気中で酸化処理した。
(3)高Al濃度拡散処理
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS304基材を、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS304基材を、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。
酸化処理および高Al濃度拡散処理を行った後の合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図14Aに、各元素の濃度分布(図14Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)を図14Bに示す。表13は図14Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表14は図14Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。図14AおよびBならびに表13、14より、合金皮膜のAl濃度は67.3〜74.3原子%であり、酸化物はCrとNiとを含む(Fe、Cr、Ni)Al2 O4 である。
(実施例4)
実施例4では、金属基材10としてSUS310(Fe−25Cr−20Ni)基材を用いた。
実施例4では、金属基材10としてSUS310(Fe−25Cr−20Ni)基材を用いた。
(1)二段階加熱処理
SUS310基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:40(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の処理を行った。
SUS310基材を下記の混合粉末
Al:Fe:FeAl:NH4 Cl:Al2 O3 =6:12:18:2:40(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、7.5時間の処理を行い、続いて後期に、800℃、7.5時間の処理を行った。
こうしてSUS310基材の表面に形成されたAl含有合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図15Aに、各元素の濃度分布(図15Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)を図15Bに示す。表15は図15Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。
図15Aに示すように、楔状の細孔(空隙) は、表面から約20〜30μmの深さに形成されており、図15Bおよび表15よりAl含有合金皮膜のAl濃度は51.4〜54.2原子%である。
(2)酸化処理
上述のようにして楔状細孔を有するAl含有合金皮膜を形成した金属基材を900℃、16時間、大気中で酸化処理した。
上述のようにして楔状細孔を有するAl含有合金皮膜を形成した金属基材を900℃、16時間、大気中で酸化処理した。
(3)高Al濃度拡散処理
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS310基材を混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS310基材を混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。
酸化処理および高Al濃度拡散処理を行った後の合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図16Aに、各元素の濃度分布(図16Aに示す写真の分析線LG6に沿っての濃度分布)を図16Bに示す。表16は図16Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表17は図16Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。図16AおよびBならびに表16、17より、合金皮膜のAl濃度は72.3〜77.1原子%であり、酸化物はCr、Ni、Feを含む(Fe、Cr、Ni)Al2 O4 である。
実施例1〜4を比較すると、楔状の形状を有する細孔(空隙)の数密度は、Fe基材を用いた実施例1が最も高く、SUH446基材を用いた実施例2、SUS304基材を用いた実施例3、SUS310基材を用いた実施例4の順に低下している。
[高温酸化試験]
実施例1〜4の耐熱合金基材の高温酸化試験を行った。高温酸化試験は、加熱・冷却繰り返しの条件下で、大気中で行った。具体的には、水平移動式試料台(アルミナ棒) に試験片を載せ、1100℃に制御した電気炉内に挿入し、45分経過後、大気中で15分間冷却した後、再び電気炉に挿入する、いわゆるサイクル酸化試験である。
実施例1〜4の耐熱合金基材の高温酸化試験を行った。高温酸化試験は、加熱・冷却繰り返しの条件下で、大気中で行った。具体的には、水平移動式試料台(アルミナ棒) に試験片を載せ、1100℃に制御した電気炉内に挿入し、45分経過後、大気中で15分間冷却した後、再び電気炉に挿入する、いわゆるサイクル酸化試験である。
比較のために、表面に合金皮膜を形成していない無垢のFe基材(比較例1)、SUH446基材(比較例2)、SUS304基材(比較例3)、SUS310基材(比較例4)およびHustelloy −X(Ni−25Cr−20Fe−10Mo)基材(比較例5)に対しても同様な高温酸化試験を行った。
高温酸化試験の結果を図17に示す。
図17に示すように、無垢のFe基材(比較例1)はサイクル数が4サイクルから急激に酸化が進行するのに対して、実施例1の耐熱合金基材では、49サイクルから酸化が急速に進行する。すなわち、Fe基材に対して、実施例1の耐熱合金基材は約10倍の耐酸化性を有することが分かる。
また、無垢のSUS304基材(比較例3)はサイクル数が20サイクルから急激に酸化が進行するのに対して、実施例3の耐熱合金基材では、200サイクルから酸化が急速に進行する。すなわち、SUS304基材に対して、実施例3の耐熱合金基材は約10倍の耐酸化性を有することが分かる。
また、無垢のSUH446基材(比較例2)はサイクル数とともに徐々に酸化量が減少し、酸化物皮膜の剥離を伴う酸化が進行している。一方、実施例2の耐熱合金基材では、256サイクル時点では、酸化がゆっくりと進行しており、保護的Al2 O3 皮膜が形成・維持されていることが分かる。
また、無垢のSUS310基材(比較例4)は初期には耐酸化性を有するが、200サイクルを超えた時点で、酸化が急速に進行した。一方、実施例4の耐熱合金基材では、初期から酸化量が少なく、優れた耐酸化性を有し、256サイクル時点では、保護的Al2 O3 皮膜が形成・維持されていることが分かる。
所定の時間サイクル酸化した後、金属基材10/合金皮膜20施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。実施例1の耐熱合金基材に対して20サイクル酸化を行った試験片の断面の走査型電子顕微鏡写真を図18Aに、各元素の濃度分布(図18Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図18Bに示す。表18は図18Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。また、図18Aの一部を拡大した走査型電子顕微鏡写真を図19に示す。表19は図19に示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。図18Aおよび図19に示す合金皮膜の組織および構造を図10Aに示した合金皮膜の組織および構造と比較すると、楔状の酸化物が基材に密集して形成されており、酸化物はAl2 O3 主体となり、合金皮膜のAl濃度は13〜15原子%となっている。また、合金皮膜には亀裂や剥離が発生していないことが分かる。
実施例5、6は第2の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例5)
実施例5では、金属基材10としてSUS310(Fe−25Cr−20Ni)基材を用いた。
(実施例5)
実施例5では、金属基材10としてSUS310(Fe−25Cr−20Ni)基材を用いた。
(1)二段階加熱処理
まず、Al蒸気源粉末としてAl粉末を秤量し、これを乳鉢で混練した後、有機溶剤とエタノールとを含む液に投入することによりAl粉末含有スラリーを調製した。Al粉末のAl粉の粒径は約50μmである。このAl粉末含有スラリーをSUS310基材の表面に塗布した。塗布量は24.74mg/cm2 とした。
まず、Al蒸気源粉末としてAl粉末を秤量し、これを乳鉢で混練した後、有機溶剤とエタノールとを含む液に投入することによりAl粉末含有スラリーを調製した。Al粉末のAl粉の粒径は約50μmである。このAl粉末含有スラリーをSUS310基材の表面に塗布した。塗布量は24.74mg/cm2 とした。
こうしてAl粉末含有スラリーを表面に塗布したSUS310基材を、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、4.5時間の加熱処理を行い、続いて後期に、700℃、7.5時間の加熱処理を行った。
(2)酸化処理
上述のようにしてAr+3vol%H2 雰囲気中、700℃、7.5時間の加熱処理を行った後、加熱処理に用いた炉内に温度を700℃に保ったまま湿分(H2 O)を含む空気を微量導入することにより、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気から酸化性雰囲気に変更し、7.5時間の酸化処理を行った。
上述のようにしてAr+3vol%H2 雰囲気中、700℃、7.5時間の加熱処理を行った後、加熱処理に用いた炉内に温度を700℃に保ったまま湿分(H2 O)を含む空気を微量導入することにより、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気から酸化性雰囲気に変更し、7.5時間の酸化処理を行った。
この加熱処理および酸化処理後の試験片の表面に形成された合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図20Aに、各元素の濃度分布(図20Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図20Bに示す。表20は図20Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。
(3)高Al濃度拡散処理
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS310基材の表面にAl粉末含有スラリーを4.8mg/cm2 の塗布量で塗布した後、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。高Al濃度処理後の合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図21Aに、各元素の濃度分布(図21Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図21Bに示す。表21は図21Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS310基材の表面にAl粉末含有スラリーを4.8mg/cm2 の塗布量で塗布した後、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。高Al濃度処理後の合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図21Aに、各元素の濃度分布(図21Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図21Bに示す。表21は図21Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。
(実施例6)
実施例6では、金属基材10としてSUS310(Fe−25Cr−20Ni)基材を用いた。
実施例6では、金属基材10としてSUS310(Fe−25Cr−20Ni)基材を用いた。
(1)二段階加熱処理
まず、Al蒸気源粉末としてAl粉末を秤量し、これを乳鉢で混練した後、有機溶剤とエタノールとを含む液に投入することによりAl粉末含有スラリーを調製した。Al粉末のAl粉の粒径は約50μmである。このAl粉末含有スラリーをSUS310基材の表面に塗布した。塗布量は38.97mg/cm2 とした。
まず、Al蒸気源粉末としてAl粉末を秤量し、これを乳鉢で混練した後、有機溶剤とエタノールとを含む液に投入することによりAl粉末含有スラリーを調製した。Al粉末のAl粉の粒径は約50μmである。このAl粉末含有スラリーをSUS310基材の表面に塗布した。塗布量は38.97mg/cm2 とした。
こうしてAl粉末含有スラリーを表面に塗布したSUS310基材を、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では1000℃、4.5時間の加熱処理を行い、続いて後期に、700℃、7.5時間の加熱処理を行った。
(2)酸化処理
上述のようにしてAr+3vol%H2 雰囲気中、700℃、7.5時間の加熱処理を行った後、加熱処理に用いた炉内に温度を700℃に保ったまま湿分(H2 O)を含む空気を微量導入することにより、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気から酸化性雰囲気に変更し、7.5時間の酸化処理を行った。
上述のようにしてAr+3vol%H2 雰囲気中、700℃、7.5時間の加熱処理を行った後、加熱処理に用いた炉内に温度を700℃に保ったまま湿分(H2 O)を含む空気を微量導入することにより、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気から酸化性雰囲気に変更し、7.5時間の酸化処理を行った。
この加熱処理および酸化処理後の試験片の表面に形成された合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図22Aに、各元素の濃度分布(図22Aに示す写真の分析線LGに沿っての濃度分布)を図22Bに示す。表22は図22Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。
(3)高Al濃度拡散処理
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS310基材の表面にAl粉末含有スラリーを9.3mg/cm2 の塗布量で塗布した後、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。高Al濃度拡散処理後の合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図23Aに、各元素の濃度分布(図23Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)を図23Bに示す。表23は図23Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表24は図23Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
上記(2)で形成した酸化物を含むAl含有合金皮膜を有するSUS310基材の表面にAl粉末含有スラリーを9.3mg/cm2 の塗布量で塗布した後、混合粉末
Al:NH4 Cl:Al2 O3 =15:5:80(重量比)
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、800℃、1時間の処理を行った。高Al濃度拡散処理後の合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図23Aに、各元素の濃度分布(図23Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)を図23Bに示す。表23は図23Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表24は図23Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
[高温酸化試験]
実施例5、6の耐熱合金基材の高温酸化試験を行った。ただし、高温酸化試験は、二段階加熱処理後に耐熱合金基材を切断して合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とを行った耐熱合金基材と、二段階加熱処理後に耐熱合金基材を切断せずに連続して高Al濃度拡散処理を行った耐熱合金基材とについて行った。高温酸化試験の条件は実施例1〜4の耐熱合金基材の高温酸化試験と同じである。
実施例5、6の耐熱合金基材の高温酸化試験を行った。ただし、高温酸化試験は、二段階加熱処理後に耐熱合金基材を切断して合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とを行った耐熱合金基材と、二段階加熱処理後に耐熱合金基材を切断せずに連続して高Al濃度拡散処理を行った耐熱合金基材とについて行った。高温酸化試験の条件は実施例1〜4の耐熱合金基材の高温酸化試験と同じである。
比較のために、実施例5における高Al濃度拡散処理を行っていないSUS310基材(比較例6)および実施例6における高Al濃度拡散処理を行っていないSUS310基材(比較例7)に対しても同様な高温酸化試験を行った。
高温酸化試験の結果を図24に示す。
図24に示すように、実施例5、6とも、初期の酸化を除くと、104サイクルまで、いずれも優れた耐サイクル酸化性を示した。なお、耐熱合金基材を切断してから高Al濃度拡散処理を行った実施例5、6(切断)では切断面にコーティングが行われていないため、切断を行っていない実施例5、6に比べてSUS310基材の酸化が進行している。
104回サイクル酸化を行った後、金属基材10/合金皮膜20施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。実施例5の耐熱合金基材に対して104サイクル酸化を行った試験片の断面の走査型電子顕微鏡写真を図25Aに、各元素の濃度分布(図25Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)を図25Bに示す。表25は図25Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表26は図25Aに示す測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。図25Aおよび表25より、楔状の酸化物が基材に密集して形成されており、酸化物は(Al、Cr、Fe)酸化物や(Al、Fe、Ni)酸化物などが主体となり、合金皮膜のAl濃度は1.6〜44.4原子%となっている。また、合金皮膜には亀裂や剥離が発生していないことが分かる。
実施例5の耐熱合金基材(切断なし)に対して104回サイクル酸化を行った試験片の断面の走査型電子顕微鏡写真を図26Aに、各元素の濃度分布(図26Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)を図26Bに示す。表27は図26Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図26Aおよび表27より、楔状の酸化物が基材に密集して形成されており、酸化物は(Al、Cr、Fe)酸化物が主体となり、合金皮膜のAl濃度は0.4〜33.4原子%となっている。また、合金皮膜には亀裂や剥離が発生していないことが分かる。
比較例6の耐熱合金基材に対して104回サイクル酸化を行った試験片の断面の走査型電子顕微鏡写真を図27Aに、各元素の濃度分布(図27Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図27Bに示す。表28は図27Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表29は図27Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。図27Aおよび表28より、楔状の酸化物が基材に密集して形成されており、酸化物は(Cr、Al、Fe)酸化物が主体となり、合金皮膜のAl濃度は0.1〜27.4原子%となっている。また、合金皮膜には亀裂や剥離が発生していないことが分かる。
実施例6の耐熱合金基材に対して104回サイクル酸化を行った試験片の断面の走査型電子顕微鏡写真を図28Aに、各元素の濃度分布(図28Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)を図28Bに示す。表30は図28Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図28Aおよび表30より、楔状の酸化物が基材に密集して形成されており、酸化物はAl2 O3 が主体となり、合金皮膜のAl濃度は0.4〜68.7原子%となっている。また、合金皮膜には亀裂や剥離が発生していないことが分かる。
実施例6の耐熱合金基材(切断なし)に対して104サイクル酸化を行った試験片の断面の走査型電子顕微鏡写真を図29Aに、各元素の濃度分布(図29Aに示す写真の分析線LG4に沿っての濃度分布)を図29Bに示す。表31は図29Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表32は図29Aに示す測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。図29Aおよび表31より、楔状の酸化物が基材に密集して形成されており、酸化物は(Al、Cr、Fe)酸化物が主体となり、合金皮膜のAl濃度は0.2〜68.5原子%となっている。また、合金皮膜には亀裂や剥離が発生していないことが分かる。
比較例7の耐熱合金基材に対して104サイクル酸化を行った試験片の断面の走査型電子顕微鏡写真を図30Aに、各元素の濃度分布(図30Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図30Bに示す。表33は図30Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表34は図30Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。図30Aおよび表33より、楔状の酸化物が基材に密集して形成されており、酸化物は(Al、Fe、Si)酸化物、(Al、Fe)酸化物などが主体となり、合金皮膜のAl濃度は0.2〜8.0原子%となっている。また、合金皮膜には亀裂や剥離が発生していないことが分かる。
実施例7〜10は第3の実施の形態に対応する実施例である。
(実施例7)
実施例7では、金属基材10として無酸素銅(C1020)基材(Fe0.13原子%、Cu99.87原子%)を用いた。
実施例7では、金属基材10として無酸素銅(C1020)基材(Fe0.13原子%、Cu99.87原子%)を用いた。
(1)二段階加熱処理
まず、無酸素銅基材を混合粉末
15gAl粉末+5gNH4 Cl+80gAl2 O3
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では600℃、4.5時間の加熱処理を行い、続いて後期に、550℃、7.5時間の加熱処理を行った。
まず、無酸素銅基材を混合粉末
15gAl粉末+5gNH4 Cl+80gAl2 O3
に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中、前期では600℃、4.5時間の加熱処理を行い、続いて後期に、550℃、7.5時間の加熱処理を行った。
(2)酸化処理
上述のようにしてAr+3vol%H2 雰囲気中、550℃、7.5時間の加熱処理を行った後、加熱処理に用いた炉内に温度を550℃に保ったまま湿分(H2 O)を含む空気を微量導入することにより、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気から酸化性雰囲気に変更し、7.5時間の酸化処理を行った。
上述のようにしてAr+3vol%H2 雰囲気中、550℃、7.5時間の加熱処理を行った後、加熱処理に用いた炉内に温度を550℃に保ったまま湿分(H2 O)を含む空気を微量導入することにより、炉内の雰囲気を不活性ガス雰囲気から酸化性雰囲気に変更し、7.5時間の酸化処理を行った。
この加熱処理および酸化処理後の試験片の表面に形成された合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図31Aに、各元素の濃度分布(図31Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)を図31Bに示す。表35は図31Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表36は図31Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図31AおよびBならびに表35、36より、楔状の細孔内に形成された酸化物は(Cu、Al)酸化物を含み、合金皮膜のAl濃度は37.7〜39.0原子%であり、合金皮膜中の不純物はCr、Mn、Fe、Niである。
(実施例8)
実施例8では、金属基材10としてクロム銅(Cu−Cr合金)(Z3234)基材(Cr1.25原子%、Mn0.01原子%、Fe0.11原子%、Cu98.63原子%)を用いた。
実施例8では、金属基材10としてクロム銅(Cu−Cr合金)(Z3234)基材(Cr1.25原子%、Mn0.01原子%、Fe0.11原子%、Cu98.63原子%)を用いた。
(1)二段階加熱処理
二段階加熱処理は、クロム銅基材を用いて実施例7と同様に行った。
二段階加熱処理は、クロム銅基材を用いて実施例7と同様に行った。
(2)酸化処理
酸化処理は、実施例7と同様に行った。
酸化処理は、実施例7と同様に行った。
この加熱処理および酸化処理後の試験片の表面に形成された合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図32Aに、各元素の濃度分布(図32Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)を図32Bに示す。表37は図32Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表38は図32Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図32AおよびBならびに表37、38より、楔状の細孔内に形成された酸化物は(Cu、Al)酸化物を含み、合金皮膜のAl濃度は37.3〜40.3原子%、Cr濃度は0.0〜2.6原子%、残Cuであり、合金皮膜中の不純物はCr、Mn、Fe、Niである。
(実施例9)
実施例9では、金属基材10としてCu−Zn合金(真鍮)(C2801P)基材(Cr0.07原子%、Cu98.63原子%、Zn39.24原子%)を用いた。
実施例9では、金属基材10としてCu−Zn合金(真鍮)(C2801P)基材(Cr0.07原子%、Cu98.63原子%、Zn39.24原子%)を用いた。
(1)二段階加熱処理
二段階加熱処理は、真鍮基材を用いて実施例7と同様に行った。
二段階加熱処理は、真鍮基材を用いて実施例7と同様に行った。
(2)酸化処理
酸化処理は、実施例7と同様に行った。
酸化処理は、実施例7と同様に行った。
この加熱処理および酸化処理後の試験片の表面に形成された合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図33Aに、各元素の濃度分布(図33Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)を図33Bに示す。表39は図33Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表40は図33Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図33AおよびBならびに表39、40より、楔状の細孔内に形成された酸化物は(Cu、Al、Zn)酸化物を含み、合金皮膜は外層と内層とからなり、外層はAl30.6原子%、Zn8.7原子%、残Cuであり、内層はAl13.4原子%、Zn23.0原子%、残Cuであり、合金皮膜中の不純物はFe、Niである。
(実施例10)
実施例10では、金属基材10としてCu−Zn−Pb合金(黄銅)(C3604)基材(Fe0.17原子%、Cu60.03原子%、Zn38.15原子%、Pb0.83原子%)を用いた。この黄銅基材は丸棒である。
実施例10では、金属基材10としてCu−Zn−Pb合金(黄銅)(C3604)基材(Fe0.17原子%、Cu60.03原子%、Zn38.15原子%、Pb0.83原子%)を用いた。この黄銅基材は丸棒である。
(1)二段階加熱処理
二段階加熱処理は、黄銅基材を用いて実施例7と同様に行った。
二段階加熱処理は、黄銅基材を用いて実施例7と同様に行った。
(2)酸化処理
酸化処理は、実施例7と同様に行った。
酸化処理は、実施例7と同様に行った。
この加熱処理および酸化処理後の試験片の表面に形成された合金皮膜の断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM−EDX装置で行った。合金皮膜の断面の走査型電子顕微鏡写真を図34Aに、各元素の濃度分布(図34Aに示す写真の分析線LG5に沿っての濃度分布)を図34Bに示す。表41は図34Bに示した各元素の濃度をまとめた分析表である。表42は図34Aに示す各測定点における各元素の濃度をまとめた分析表である。
図34AおよびBならびに表41、42より、楔状の細孔内に形成された酸化物はAl酸化物(Al2 O3 )や(Pb、Zn)酸化物を含み、合金皮膜は外層と内層とからなり、外層は24.6原子%Al、14.7原子%Zn、残Cuであり、内層は11.4原子%Al、24.4原子%Zn、残Cuであり、合金皮膜中の不純物はFe、Ni、Si、Crである。
[高温酸化試験]
実施例7〜10の耐熱合金基材の高温酸化試験を行った。高温酸化試験は、加熱・冷却繰り返しの条件下で、大気中で行った。具体的には、水平移動式試料台(アルミナ棒) に試験片を載せ、750℃に制御した電気炉内に挿入し、45分経過後、大気中で15分間冷却した後、再び電気炉に挿入する、いわゆるサイクル酸化試験である。
実施例7〜10の耐熱合金基材の高温酸化試験を行った。高温酸化試験は、加熱・冷却繰り返しの条件下で、大気中で行った。具体的には、水平移動式試料台(アルミナ棒) に試験片を載せ、750℃に制御した電気炉内に挿入し、45分経過後、大気中で15分間冷却した後、再び電気炉に挿入する、いわゆるサイクル酸化試験である。
比較のために、表面に合金皮膜を形成していない無垢の無酸素銅基材(比較例8)、クロム銅基材(比較例9)、真鍮基材(比較例10)および黄銅基材(比較例11)に対しても同様な高温酸化試験を行った。なお、実施例7〜10の耐熱合金基材はそれぞれ比較例8〜11の金属基材と比較して表面形態に変化(剥離、亀裂)は見られない。
比較例8〜11の金属基材の高温酸化試験の結果を図35に、実施例7〜10の耐熱合金基材の高温酸化試験(8サイクル)の結果を図36に示す。
図35に示すように、比較例8の無酸素銅基材および比較例9のクロム銅基材は酸化物皮膜の剥離のため、サイクル数に比例して重量減少を示す。Znを含む比較例10の真鍮基材および同じくZnを含む比較例11の黄銅基材は耐酸化性を有し、特に、Pbを含む黄銅基材は優れた耐酸化性を示す。
図36に示すように、実施例7〜10の耐熱合金基材は、いずれも比較例8〜11に比べて桁違いに耐酸化性が改善されており、合金皮膜の剥離は観察されない。取り分け、無酸素銅基材を用いた実施例7では耐酸化性の改善が顕著である。具体的には、比較例8の無垢の無酸素銅基材では重量減少は−70mg/cm2 であったのに対し、実施例7の耐熱合金基材では8サイクルでも重量減少は+0.2mg/cm2 と大幅に改善されている。
実施例7〜10の耐熱合金基材の表面分析を行った結果、2サイクルから8サイクルのサイクル酸化を行った後には、いずれもAlおよびZnの濃度が増大し、Al2 O3 (ZnO)が形成されていることが確認された。
図37は、実施例7〜10の耐熱合金基材に対して750℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合と850℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合とについて酸化量を比較して示したものである。図37に示すように、850℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合の酸化量は、750℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合に比べて約2倍となっているが、耐熱合金基材に使用する金属基材に対する依存性は750℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合と類似の結果となっている。黄銅基材を用いる実施例10の酸化量は無視できる程僅少である。なお、850℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合の実施例7〜10の耐熱合金基材はいずれも表面形態に変化(剥離、亀裂)は見られないが、酸化前と比較すると表面はCuを含んだ色調に変化している。
図38は、実施例7〜10の耐熱合金基材に対して750℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合と850℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合と950℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合とについて酸化量を比較して示したものである。図38に示すように、950℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合の酸化量は減少(酸化物皮膜の剥離)に転じ、特に真鍮基材を用いた実施例9の耐熱合金基材では大幅な減少となっている。なお、黄銅基材を用いた実施例10の耐熱合金基材では酸化量は増大している。しかし、真鍮基材を用いた実施例9の耐熱合金基材および黄銅基材を用いた実施例10の耐熱合金基材では、950℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合に基材が溶融しているので、実施例9、10の耐熱合金基材は850℃以上の温度で使用することができない。なお、950℃、8サイクルのサイクル酸化を行った場合、無酸素銅基材を用いた実施例7の耐熱合金基材は表面および裏面とも表面形態に変化(剥離、亀裂)は見られず、クロム銅基材を用いた実施例8の耐熱合金基材は裏面は表面形態に変化(剥離、亀裂)が見られないが、表面は酸化物皮膜の剥離が観察された。
図39は実施例7〜10の試験片の高温酸化試験(750℃、サイクル数100まで)の結果を示す。図39に示すように、実施例7〜10の試験片のいずれも、酸化は放物線則に従って進行している。これは試験片の表面に保護的Al2 O3 皮膜が形成されることによるものである。実施例7〜10の中でも、無酸素銅基材を用いた実施例7が無垢の無酸素銅基材に比べて耐酸化性の向上が顕著である。82サイクルまで高温酸化試験を行った後に実施例7〜10の試験片を炉から取り出し、その際の冷却過程における試験片の変化を写真撮影(簡易サーモビュー)で観察したところ、剥離等は観察されなかった。
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
10…金属基材、20…合金皮膜、30…酸化物、40…Al含有合金皮膜、50…細孔、60…スラリー
Claims (8)
- Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材。 - Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
を有する耐熱合金部材の製造方法。 - 上記金属基材を前期および後期の二段階で加熱し、上記後期の加熱の温度が上記前期の加熱の温度より低温である請求項2記載の耐熱合金部材の製造方法。
- 上記前期の加熱の温度が580℃以上620℃以下、上記後期の加熱の温度が530℃以上600℃以下である請求項3記載の耐熱合金部材の製造方法。
- Cu系金属からなる金属基材の表面に形成された合金皮膜であって、
その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下であることを特徴とする合金皮膜。 - Cu系金属からなる金属基材の表面に形成され、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である合金皮膜の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程と、
を有する合金皮膜の製造方法。 - Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材
を有する高温装置。 - Cu系金属からなる金属基材と、
上記金属基材の表面に形成された合金皮膜とを有し、
上記合金皮膜は、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する、Alを主体とする酸化物を含有し、かつ当該酸化物以外の部分のAl濃度が20原子%以上45原子%以下である耐熱合金部材
を有する高温装置の製造方法であって、
上記金属基材をAl粉末とFe粉末、Ni粉末およびFeAl粉末からなる群より選ばれた少なくとも一種とからなるAl蒸気源粉末とNH4 Cl粉末とAl2 O3 粉末との混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、その表面から内部に延在する楔状の形状を有する細孔を有し、Alを含有するAl含有合金皮膜を形成する工程と、
上記Al含有合金皮膜を酸化性雰囲気中で酸化することにより上記細孔の内部に上記酸化物を形成する工程とを実行することにより耐熱合金部材を製造する工程を有する高温装置の製造方法。
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