JP2003253423A - 耐高温腐食性に優れた耐熱合金材料およびその製造方法 - Google Patents
耐高温腐食性に優れた耐熱合金材料およびその製造方法Info
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Abstract
Al2O3皮膜を形成する場合、Al2O3皮膜の直下
の耐熱合金基材表層にAl濃度が低下したAl欠乏層が
生じ、Al2O3被覆形成に必要なAlソースとして働
かない。そのため、Al2O3皮膜に亀裂、剥離等の欠
陥が生じると、十分な量のAlが基材から供給されず、
欠陥部を起点にする腐食、酸化が急速に進展して表面全
体に広がる。Cr2O3,SiO2皮膜の形成について
も同様の問題がある。 【構成】 耐熱合金基材にAl,Cr,Siの群から選
ばれる金属を拡散浸透処理することにより生成した内層
および外層の複層構造をもつ皮膜が形成されている耐熱
合金材料であって、Al,Cr,Siの群から選ばれる
金属元素の濃度が外層より高い内層が該拡散浸透処理に
より形成されていること特徴とする耐高温腐食性に優れ
た耐熱合金材料。該複層構造をもつ皮膜はアップヒル拡
散現象により形成する。
Description
れた皮膜により耐久性を改善した耐熱合金材料およびそ
の製造方法に関する。
ン、ガスタービン、スペースプレイン等の高温雰囲気に
曝される構造材料には、TiAl系金属間化合物[Ti
3Al系(α2相)とTiAl系(γ相)]、耐熱チタ
ン材料[α+β型:Ti−6Al−4V合金、Ti−6
Al−4Mo−4Cr(その他、Zn、Sn)合金、n
ear α型:Ti−6Al−4Zr−2.8Sn合
金、near β型:Ti−5Al−3Mo−3Cr−
4Zr−2Sn合金]等の耐熱性Ti合金、超合金等の
Ni基、Co基、Fe基耐熱合金、Nb基、Ir基、R
e基等のその他の耐熱合金、炭素材料、各種金属間化合
物が使用されている。
素、水蒸気等の酸化性、腐食性成分を含むことがある。
腐食性の高温雰囲気に耐熱合金材料が曝されると、雰囲
気中の腐食性成分との反応によって酸化や高温腐食が進
行しやすい。雰囲気中から耐熱合金材料に浸透したO、
N、S、Cl、C等によって耐熱合金材料表面に内部腐
食が発生し、材料強度が低下する場合もある。
で耐熱合金材料の表面を被覆することにより防止でき
る。代表的な保護皮膜にAl2O3、SiO2、Cr2
O3等があり、酸化性雰囲気中で耐熱合金材料の基材か
ら表層にAl、Si、またはCrを拡散する方法、CV
D、溶射、反応性スパッタリング等によってAl
2O3、SiO2、またはCr2O3層を耐熱合金材料
表面に形成する方法が採用されている。Al2O3、S
iO2、Cr2O3の皮膜は、雰囲気中の酸化性成分と
耐熱合金材料の金属成分との反応を抑制し、耐熱合金の
有する本来の優れた高温特性を持続させる。
を表層に拡散させてAl2O3皮膜を形成する場合、耐
熱合金基材の表面のAlが皮膜形成に消費されるため、
Al2O3皮膜の直下の耐熱合金基材の表層にAl濃度
が低下した層(Al欠乏層)が生成する。
なAlソースとして働かない。そのため、耐熱合金材料
の表面のAl2O3皮膜に亀裂、剥離等の欠陥が生じる
と、十分な量のAlが耐熱合金基材から供給されず、欠
陥部を起点にする腐食、酸化が急速に進展して表面全体
に広がる。
って維持するために、Al欠乏層の生成に起因する耐熱
合金材料表層のAl濃度低下を考慮し、耐熱合金基材の
Al含有量を予め高く設定することが考えられる。しか
し、Al含有量の増加に伴い耐熱合金基材が脆化し、鍛
造、成形加工等が困難になる。耐熱合金基材の種類によ
っては、Al含有量を増加させると高温強度が低下する
ものもある。
2O3スケールを形成するためには、酸素ガス雰囲気で
はAl濃度は約50原子%以上必要であるのに対して、
空気中では55原子%以上のAl濃度が必要であると言
われている。特に、実用環境で遭遇する雰囲気には酸素
の他に、窒素、水蒸気、亜硫酸ガス等の腐食性ガス等が
含まれており、チタン酸化物の形成を阻止することが重
要である。すなわち、Al濃度の増大とともに、Ti濃
度の低下が必要である。同様のことは、CrまたはSi
を拡散させてSiO2やCr2O3の皮膜を形成する場
合にも言える。
膜に及ぼす下地金属層の特異な拡散浸透現象を利用する
ことにより、酸化物皮膜の環境遮断機能を長期に亘って
良好に維持し、耐熱合金の有する本来の優れた高温特性
を十分に発現させることができ、上記の課題を解決でき
ることを見出した。
l,Cr,Siの群から選ばれる金属を拡散浸透処理す
ることにより生成した内層および外層の複層構造をもつ
皮膜が形成されている耐熱合金材料であって、Al,C
r,Siの群から選ばれる金属元素の濃度が外層より高
い内層が該拡散浸透処理により形成されていること特徴
とする耐高温腐食性に優れた耐熱合金材料である。
造は耐熱合金基材に形成されたアップヒル拡散を生ぜし
める金属めっき層を介して拡散浸透処理することにより
生成したものであること特徴とする上記の耐高温腐食性
に優れた耐熱合金材料である。
き層、Al,Cr,Siの群から選ばれる表面被覆金属
層の組み合わせが、Fe合金/Ni/Al、Co合金/
Ni/Al、Mo合金/Ni/Al、Mo合金/Cr/
Al、Zr合金/Cr/Al、Ti合金/Ni/Al、
Ti合金/Ni/Cr、TiAl系金属間化合物/Ni
/Al、Fe合金/Mn/Cr、Mo合金/Pd/S
i、Fe合金/Mn/Si、のいずれかであることを特
徴とする上記の耐高温腐食性に優れた耐熱合金材料であ
る。
ル拡散を生ぜしめる金属めっき層を形成した後、高活量
の蒸気拡散処理を行うことにより内層および外層の複層
構造を形成することを特徴とする上記の耐熱合金材料の
製造方法である。
r,Siの群から選ばれる金属を拡散浸透処理すること
により生成した内層および外層の複層構造をもつ皮膜が
形成されている耐熱合金材料であって、Al,Cr,S
iの群から選ばれる金属元素の濃度が外層より高い内層
が該拡散浸透処理により形成されていること特徴とする
耐高温腐食性に優れた耐熱合金材料において、内層およ
び外層の複層構造は耐熱合金基材にAl,Cr,Siの
群から選ばれる金属とアップヒル拡散を生ぜしめ金属と
の合金を溶融塩めっきすることにより生成したものであ
ることを特徴とする上記の耐高温腐食性に優れた耐熱合
金材料である。
l,Cr,Siの群から選ばれる金属とアップヒル拡散
を生ぜしめる金属との合金を溶融塩を用いてめっきする
ことにより内層および外層の複層構造を形成することを
特徴とする上記の耐熱合金材料の製造方法である。
とえば、高温(1000℃)でAl蒸気拡散処理する
と、図1に模式的に示すとおり、基材1の表面にTiA
l3、TiAl2、Ti(A1、Ni)3等からなるAl
濃度:約75原子%の内層2およびNi2Al3を主成
分とするAl濃度:約60原子%の外層3が生成され
る。外層3より内層2でAl濃度がより高くなることは
アップヒル拡散(up-hilldiffusion)によるものであ
り、めっきにより形成したNiはアップヒル拡散を生ぜ
しめる作用をし、Ti−Al−Niの三元状態図(図
2)を用いて次のように説明できる。
で液相を呈し、Ni−Al系ではNi2Al3相と共存
し、Ti−Al系ではTiAl3相と共存する。したが
って、NiめっきしたTi−Al合金をAl蒸気拡散す
ると、Niめっき層は、Alと反応してγ−Ni(A
l)→γ´−Ni3Al→β−NiAl→Ni2Al3
と変化し、最終的にはNiめっき層全体がNi2Al3
となった外層3が生成する。また、Al蒸気拡散の初期
には、Niめっき層とTiAlが反応する。図2のAl
の頂点から延びる4本の直線は、Al蒸気と平衡して存
在できる各相を示している、
化した後では、Niと基材のTi−Al合金の拡散領域
にAlが侵入し、Al−Ni−Tiの化合物層(内層
2)が生成される。Alの拡散侵入が更に進行すると、
基材1のTi−Al合金がTiAl2、更にはTiAl
3に変化する。
外層より高い内層2が生成するため、Alが外層から基
材側へ拡散するのを阻止し、かつ、外層のAlが酸化物
の形成によって消費されるとき、内層2からAlが供給
されるため、保護的Al2O 3スケールの形成・維持と
剥離の際には再生する能力を長時間に亘って維持でき
る。
は、高活量のAl蒸気拡散で生成される。図2におい
て、Ni-Al系のNi2Al3相からAl-Ti系のTi
Al3相を破線で結んでいる。この破線の中に、2種類
の化合物A,Bが存在する。この2種類の化合物A,B
は、TiAl3相に近接しているAがTi(Al,Ni)3
相であり、また、中心部にある化合物BはAl2TiN
i相である。これらNi2Al3相、TiAl3相、Ti
(Al,Ni)3 相とAl2TiNi相にAl相より矢印で
結ばれている線がタイライン(共役線)であり、両者が
共存できることを意味する。すなわち、両者のAl活量
は等しいことになる。
コ−ティング皮膜の層構造の順番を示している。すなわ
ち、外側から、Ni2Al3 → Al2TiNi →Ti
(Al,Ni)3 → TiAl3 → TiAl2 → 基材
(TiAl)となる。これは、図3に示すAl拡散処理
した耐熱合金材料の表層部断面の構造と一致している。
の破線が引かれている。この中で、Al相に近い方の破
線は酸化時間36時間のときのもので、図4に示した結
果(層の相対的厚さは変化している)に対応して、皮膜
の構造は図2に示したものと同じ破線で与えられる。一
方、Al相から離れたもう1本の線は、900℃で長時
間(1000時間)酸化した図5の結果に対応する。こ
の結果から、NiAl→ Al2TiNi →TiAl2
→ 基材となり、この場合も、また アップヒル拡散と
なっている。すなわち、1000時間の酸化後も、Al
濃度は低下するが、アップヒル拡散を維持している。
ように、Al濃度の最も高い合金相はAl相と共存する
相である。Al−Ni系では、処理温度が900〜11
33℃ではNi2Al3相、Al−Ti系では、処理温
度が1387℃以下では、TiAl3相である。したが
って、この最もAl濃度の高いNi2Al3、TiAl
3相を生成できるのを「高活量」と定義する。図8のS
i−Mo系ではMoSi2相、Si−PdではPdSi
2相がそれぞれに対応し、図10のAl−Fe系ではA
l3Fe相、Al−Ni系ではNi2Al3相がそれぞ
れに対応する。
は、Ni2Al3より低Al濃度のβNiAl相、γ’
−Ni3Al相が、また、Al−Ti系では、TiAl
3より低濃度のTiAl2相、TiAl相を生成する場
合である。
気源として、純Al粉末+NH4Cl粉末+Al2O3
粉末の混合粉にNiめっきした基材を埋没させて、真空
または不活性ガス雰囲気で加熱する。または、純Al皮
膜を施して、高温に加熱する。Ni−Ti−Al系の状
態図で、Al相(660℃以上では液相であり、蒸気拡
散ではAl蒸気相となる)とタイライン(共役線)を結
ぶ皮膜を形成することが必要である。このタイラインで
結ばれている相は、濃度は異なるが、互いに等しい活量
を有している。
がβ−NiAlになり、外層3から内部に向けてγ’−
Ni3(Al,Ti)、Ni2AlTiの内層2を経て
基材のTiAlに至るが、内層2のAl濃度は55原子
%以下に過ぎず、アップヒル拡散が生じない。そのた
め、外層のAlは内層を経て基材に拡散し、外層3のA
l濃度は急速に低下する。すなわち、保護的Al2O3
スケールの維持、再生能力が失われる。
2は、アップヒル拡散が生じる系である限り、Ti−A
l合金に特定されるものではない。Ti−Al合金以外
に例えば、Fe合金、Co合金、Mo合金、Zr合金、
Ti合金、TiAl系金属間化合物等を基材1に使用し
た場合でも生成する。
方へ進行する。しかし、見掛け上、濃度の低い方から高
い方へ拡散する、逆拡散の現象が生じることがある。こ
のように濃度の低い方から高い方への拡散であることか
ら、アップヒル拡散と呼ばれている。この現象は、3元
素以上を含むいわゆる多元系拡散の時に現れる。
しては、次のように考えられている。まず、拡散の駆動
力は、濃度勾配ではなく、厳密には活量勾配であるとい
うことに起因する。従って、アップヒル拡散の場合で
も、濃度ではなく、活量で考えると、活量の高いほうか
ら低い方へ拡散は生じている。濃度が高いにもかかわら
ず、活量が低いのは熱力学的には合金を構成する元素同
士の結合が強く、元素が互いに拘束しあっている場合に
発生する。熱力学的には、活量係数として表現される。
すなわち、濃度は高いが活量が低い場合は、活量係数が
小さいことになる。
すように、Al蒸気源と同じAl活量を有する合金は、
Ni2Al3相とTiAl3相の他に2種類のAlNi
Ti相がある。すなわち、これら各相のAl濃度は異な
るが、Al活量はほとんど等しい。
に説明される。今、Niめっき層を施したTi−Al合
金に対してAl蒸気拡散すると、AlはNi側から順に
拡散浸透することになり、Alの活量はNi側から順に
上昇することになる。すなわち、Al蒸気源側から、N
i2Al3相、2種類のAlNiTi相、TiAl
3相、TiAl2相の順に生成されることになる。
の、「より高い」というのは、原理的には少しでも高け
ればよいということであるが、高活量処理では、上記の
説明から分かるように、生成される層がNi2Al3、
TiAl3等の組成が定比である金属間化合物である場
合が多いので、外層がNi2Al3の場合、内層はTi
Al3、TiAl2が対応する関係になり、階段状の濃
度変化でより高いということになる。
を高活量で蒸気拡散することによっても、同様なメカニ
ズムで内層2のCr濃度やSi濃度は外層3よりも高く
なる。Cr濃度やSi濃度の高い内層2は、Alの場合
と同じ原理により、外層から基材側へのCrやSiの拡
散を阻止し、同時に、外層へのCrやSiのサプライヤ
ーとしての機能を有する。その結果、外層3は、長時間
に亘り、保護的なCr 2O3やSiO2スケールを形成
・維持し、剥離の際には再生する能力を保持することが
できる。したがって、耐熱合金材料の高温腐食が抑制さ
れ、耐熱合金の有する本来の優れた高温特性が発現され
る。
には、TiAl系金属間化合物[Ti3Al系(α
2相)とTiAl系(γ相)]、耐熱チタン材料[α+
β型:Ti−6Al−4V合金、Ti−6Al−4Mo
−4Cr(その他、Zn、Sn)合金、near α
型:Ti−6Al−4Zr−2.8Sn合金、near
β型:Ti−5Al−3Mo−3Cr−4Zr−2S
n合金]等の耐熱性Ti合金、Fe基、Ni基、Co基
耐熱合金や超合金、その他のMo基、Zr基、Nb基、
Ir基、Re基耐熱合金等がある。
しめる金属めっき層を形成して拡散浸透処理することに
より上記のとおりの外層および内層を生成させることが
できる。具体的な耐熱合金基材、金属めっき層、Al,
Cr,Siの群から選ばれる表面被覆金属層の組み合わ
せとしては、Fe合金/Ni/Al、Co合金/Ni/
Al、Mo合金/Ni/Al、Mo合金/Cr/Al、
Zr合金/Cr/Al、Ti合金/Ni/Al、Ti合
金/Ni/Cr、TiAl系金属間化合物/Ni/A
l、Fe合金/Mn/Cr、Mo合金/Pd/Si、F
e合金/Mn/Si等が挙げられる。以下、具体例とし
て、耐熱合金基材に、Niめっき層を形成する場合につ
いて説明する。
ものではない。めっき前には、汚れ、酸化物皮膜の除去
等を耐水研磨紙による研磨、サンドブラスト等により適
宜行う。Niめっき層は、電気めっき、無電解めっき、
溶射、PVD、CVD、スパッタリング等、適宜の方法
が採用される。Niめっき層は、Al、Cr、Si等の
蒸気拡散で高Al、Cr、Si濃度の内層2を生成する
ために必要な膜厚で設けられるものであり、Al、C
r、Si等の蒸気拡散量にもよるが通常は10〜20μ
mの膜厚に調整される。
Si等の層を形成し、合金基材方向へのこれらの金属の
拡散処理をする。温度600〜1100℃(AlとSi
は低めの温度、Crは高めの温度)、望ましくは温度8
00〜1000℃の範囲での溶融塩浴や高温スパッタリ
ングでは、Al、Cr、Si層の形成と同時に合金基材
方向へのこれらの金属の拡散が進行する。
ン法、電気めっき法、スパッタリング法等が採用され
る。パックセメンテーション法では、Niめっきした耐
熱合金基材をAl+NH4Cl+Al2O3の混合粉末
に埋没させ、真空、不活性ガス、水素等の非酸化性雰囲
気中で800〜1000℃に加熱することによりAl層
を形成する。電気めっき法では、Niめっきした耐熱合
金基材を溶融塩浴または非水系の電気めっき浴に浸漬
し、電気めっきすることによりAl層またはAl−Ni
層を形成する。スパッタリング法では、AlまたはAl
−Ni合金をターゲットとしてスパッタリングすること
によりAl層またはAl−Ni層を形成する。
とえば、Cr粉末+NH4Cl粉末+Al2O3の混合
粉末、800〜1000℃、1〜10時間の条件での処
理、Si粉末+NH4Cl粉末+Al2O3の混合粉
末、800〜1000℃、1〜10時間の条件での処
理、または水溶液からのCr電気めっき等の手段を採用
できる。
めの温度、Crは高めの温度)、望ましくは温度800
〜1000℃の範囲での溶融塩浴中でAl、Cr、Si
等を析出させる場合、析出したAl、Cr、Si等はN
i層に直接拡散浸透する。他方、析出温度が低い非水系
電気めっき浴やスパッタリング法でAl、Cr、Si等
をめっきさせる場合、めっき皮膜を施した基材を高温の
不活性ガス雰囲気で加熱処理することによって、めっき
皮膜と基材がNiめっきを介して相互拡散する。高温め
っき、低温めっきのいずれも高活量型の皮膜が形成され
る。
として、NH4Cl+Al2O3粉末の混合粉を用い
て、800〜1000℃の温度範囲で、不活性ガス雰囲
気で加熱することで、高活量型となる。なお、低活量型
は、純金属粉に代えて、合金粉末を使用するとよい。
でAl、Cr、Si等の濃度がより高い複層構造の皮膜
が耐熱合金基材表面に形成される。使用環境下でAl、
Cr、Si濃度の高い内層2は外層3に対するAl、C
r、Si等の供給源となる。そのため、使用環境下で外
層3がダメージを受けても、内層2から供給されるA
l、Cr、またはSi等で外層3の欠陥部が修復され、
異常酸化、高温腐食等のトラブルを発生させることなく
耐熱合金の有する本来の高温特性が活用される。しか
も、従来の保護皮膜で生じがちであった皮膜直下のAl
欠乏層等に起因する欠陥も解消される。
るNiめっきをして溶融塩を用いてAlをめっきする方
法について具体的に説明したが、この方法に代えて、耐
熱合金基材に直接溶融塩を用いてAl−Niの合金めっ
きを行うことにより内層および外層を生成することも可
能である。この場合、水溶液からNiをめっきする工程
を省くことができる。この場合のAl−Ni合金のNi
含有量は、Al+Ni 2Al3の間で、望ましくは25
〜38原子%Niである。さらに、NiおよびNi−A
l合金の微粒子を含む溶融塩を用いてAlめっき(すな
わち、複合めっき)を行ってもよい。このめっきの後に
800〜1000℃程度で、1〜5時間程度の加熱処理
を行うことが望ましい。すなわち、耐熱合金基材に直
接、Al,Cr,Siの群から選ばれる金属とアップヒ
ル拡散を生ぜしめる金属との合金を溶融塩を用いてめっ
きすることにより内層および外層の複層構造を形成する
方法でも、Al,Cr,Siの群から選ばれる金属元素
の濃度が外層より高い内層を形成した耐高温腐食性に優
れた耐熱合金材料を製造することができる。
(組成:NiSO4・6H2Oを330g、NiCl2
・6H2Oを45g、H3BO3を40g、を1リット
ルの水に溶解した浴)を用いて電気めっきし、膜厚10
〜20μmのNiめっき層を形成した後、60mol%の
AlCl3、25mol%のKCl、15mol%のNaCl
の混合溶融塩浴に該Ti−Al合金を浸漬した。溶融塩
浴を160℃に維持し、該Ti−Al合金を陰極として
電流密度0.02A/cm2で電気めっきすることによ
り、付着量50g/m2でAlを該Ti−Al合金のN
iめっき層表面に析出させた。
ス雰囲気、1000℃の温度で、5時間、加熱処理し
た。なお、昇温過程で、600℃から700℃の間はA
l皮膜層が溶融落下しないように、比較的ゆっくりと昇
温した方が良い。加熱処理後、該Ti−Al合金の断面
をEPMAで観察したところ、該Ti−Al合金の表面
に内層、外層の複層構造をもつ皮膜が形成されていた
(図3a)。X−線回折による結果では、内層はTiA
l3、TiAl2、Al2TiNi、Ti(Al,N
i)3等からなり、外層がNi2Al3からなってい
た。皮膜の濃度分布をEPMAで元素分析したところ、
図3(b)に示すように、Al濃度は内層で約75原子
%、外層で約60原子%となっていた。Ni濃度は内層
よりも外層が高く、Ti濃度は内層から外層に向けて低
下していた。この濃度分布は、X−線の回折結果と良く
一致している。
を耐熱試験に供し、表面皮膜の有効性を調査した。耐熱
試験では、大気中で室温〜900℃の加熱・冷却を繰り
返した。耐熱試験36時間後に表層断面を観察すると共
に、EPMAにより表層部の厚み方向の濃度分布を測定
した。図4の測定結果にみられるように、内層にあるT
iAl3の一部がTiAl2に変化していることを除
き、保護皮膜の構造および各元素の厚み方向の濃度分布
は耐熱試験前に比較して本質的な相違が検出されなかっ
た。
時間の耐熱試験後も同様に維持されていた(図5)。図
5を図3と比較すると、1000時間の耐熱試験後に外
層はNi2Al3からβ−NiAlに変化し、内層はT
iAl3が消失してAl2TiNiの中間層とTiAl
2に変化している。しかし、Al濃度は、内層で63原
子%、中間層で56原子%、外層で54原子%と、依然
として外層よりも内層のAl濃度が高かった。
の侵入が非常に少なく、Ni2Al 3とNiAl(50
原子%以上のAlを含む)へのTiの固溶が0.5原子
%以下であることが確認され、Ti侵入の抑制により、
保護皮膜を形成・維持および再生させる顕著な作用が奏
されることが分かった。
Ni+TiAl3+TiAl2)/基材において、高温
(900℃)に加熱すると、内層からAlが基材側へ、
基材側からTiが内層側に拡散する結果、先ず、最初に
内層のTiAl3がTiAl 2相に変化する。続いて、
外層のAlが内層側へ拡散して、Ni2Al3からNi
Alへ変化する。前述のように、外層と内層ではAl濃
度に逆差があるが、活量は外層より内層でほんの少しで
あるが低下するので、外層のAlは基材側に拡散するこ
とになる。
TiAl、TiAl2の中のAl活量(Al濃度は異な
るが)は互いに近いと推定されることから、外層から内
層、さらに、基材側へのAlの拡散は非常にゆっくりと
進行することになる。この状態でも、アップヒル拡散が
行われていることになる。
大気中で900℃に保持し、酸化増量の時間依存性を調
査した。図7の調査結果にみられるように、Niめっき
後にAl拡散処理した本発明例では、長時間加熱後にも
酸化増量が極僅かであった。これに対し、無処理のTi
−Al合金では加熱時間が長くなるに応じて酸化増量が
急激に増加し、硫化処理やCr/Alで蒸気拡散したT
i−Al合金でも大きな酸化増量を示した。図7の対比
から、本発明の耐熱合金材料の保護皮膜は、Ti−Al
合金の高温腐食や異常酸化を防止し、耐熱合金の有する
本来の高温特性維持に有効なことが確認された。
きで膜厚10μmのPd(パラジウム)めっき層を形成
した後、40原子%Siを含むPd−Si合金粉末:N
H4Cl:Al2O3の各粉末を13:2:85の重量
割合で混合した粉末中に、埋没し、不活性ガス雰囲気中
で、1200℃で10時間加熱処理した。その結果、付
着量200g/m2でSiを基材表面に析出させた。S
iは高活量の蒸気となって、Pd層に浸透した。
EPMAで観察したところ、合金の表面に内層と外層の
複層構造をもつ皮膜が形成されていた。X−線回折によ
る結果では、内層がMo(Pd)Si2相であり、外層
はPd(Mo)2Si相であった。皮膜の濃度分布をE
PMAで測定した結果を表1に示す。
原子%となっていた。Pd濃度は内層よりも外層が高
く、Moは内層から外層に向かって低下していた。この
濃度分布はX線回折の結果と一致している。
す。これより、Si相とタイラインを結ぶ相はMoSi
2相とPd2Si相であり、X線回折とEPMA分析の
結果と一致する。なお、PdSi相は融点が1100℃
以下であることから、皮膜層には現れない。続いて、S
i拡散処理したPdめっき/Mo−Si合金を耐熱試験
に供し、表面皮膜の有効性を調査した。耐熱試験では、
大気中、600℃、1300℃で行い、表層断面を観察
するとともに、EPMAにより外層と内層の濃度を測定
した。600℃で240時間加熱試験した際の、外層と
内層の濃度分析の結果を表2に示す。
0℃では外層および内層の濃度には殆ど変化がないこと
が明らかとなった。1300℃で24時間および240
時間加熱処理した結果を表3に示す。
間の酸化で33原子%、240時間の酸化では32原子
%となるが、内層は66原子%であり、依然として、外
層よりも内層のSi濃度が高かった。酸化増量の結果を
表4に示す。なお、比較のために、Mo−40原子%S
i合金を用意し、その酸化増量を測定した。
Si合金は、600℃付近の比較的低温で異常腐食が認
められ、ぺストコロージョンと言われている。本発明の
耐熱合金材料では、薄いSiO2スケールが形成するの
みで、異常腐食は観察されない。また、1300℃にお
いても、Pdめっき後にSi蒸気拡散処理した本発明例
では、長時間加熱後にも酸化増量は極わずかであった。
これに対して、通常のMo−40原子%Si合金は、高
温になると、MoO3が形成されてガスとして蒸発し、
質量増加は小さいが苛酷な酸化が生じ、長時間では、質
量減少に至る。
−Si系合金の高温腐食や異常酸化を防止し、耐熱合金
の有する本来の高温特性の維持に有効であることが確認
された。
きで膜厚10μmのNiめっき層を形成した後、Al粉
末:NH4Cl:Al2O3の各粉末を13:2:85
の重量割合で混合した粉末中に、埋没し、不活性ガス雰
囲気中、800℃で10時間加熱処理した。その結果、
付着量100g/m2でAlを基材表面に析出させた。
Alは高活量の蒸気となって、Ni層に浸透した。Al
拡散処理後、Fe−Al合金の断面をEPMAで観察し
たところ、合金の断面には内層と外層の複層構造をもつ
皮膜が形成されていた。その結果を図9に示す。
l3相(75原子%Al)であり、外層はNi2Al3
相(60原子%Al)であった。皮膜の濃度分布をEP
MAで測定した結果を図9に示す。
原子%となっていた。Ni濃度は内層よりも外層が高
く、Feは外層には殆ど含まれていない。この濃度分布
はX線回折の結果と一致している。
示す。これより、Al拡散処理が800℃であることか
ら、FeとNiの拡散が無視できるほど小さく、Alの
一方的拡散が行われたことが分かる。続いて、Al拡散
処理したNiめっき/Fe−Al合金を耐熱試験に供
し、表面皮膜の有効性を調査した。耐熱試験では、大気
中、1000℃で、100時間行い、表層断面を観察す
るとともに、EPMAにより外層と内層の濃度を測定し
た。
皮膜は、外層と内層の間(中間層)、および内層と基材
の間(遷移層)にそれぞれ新しい相、中間層が生成して
いた。この皮膜の断面構造とEPMAによる各元素の分
布を図11に示す。
000℃で100時間加熱すると、Fe、Ni、Alの
相互拡散が多少進行している。しかし、内層、中間層、
遷移層のいずれの層も外層よりも高いAl濃度を維持し
ている。
時の酸化増量の結果を表5に示す。なお、比較のため
に、Fe−40原子%Al合金を用意し、その酸化増量
を測定した。
金では、Al2O3スケールの剥離のため、質量減少が
観察されるのに対して、本明の耐熱合金材料では、保護
的な密着性のAl2O3スケールが形成した。
−Al系合金の高温腐食を抑制し、耐熱合金の有する本
来の高温特性の維持に有効であることが確認された。
金材料は、環境遮断能の大きなAl2O3、SiO2、
またはCr2O3等の供給源となるAl、Cr、または
Si等の濃度を外層よりも内層で高くしているので、使
用環境下で外層がダメージを受けた場合にあっても内層
から供給されるAl、Cr、またはSi等でAl
2O3、SiO2、またはCr2O3等の保護皮膜が形
成される。そのため、耐熱合金材料は、高温腐食や異常
酸化を起こすことなく、耐熱合金の有する本来の優れた
高温特性を長期間にわたって維持する。
が形成された本発明の耐熱合金材料の表層部断面を示す
模式図である。
Al−Ti−Ni三元状態図である。
合金をAl拡散処理した耐熱合金材料の表層部断面の構
造を示す図面代用顕微鏡写真(a)および表層部の厚み
方向に沿った各元素の濃度分布を示すグラフ(b)であ
る。
36時間加熱した後の表層部断面の構造を示す図面代用
顕微鏡写真(a)および表層部の厚み方向に沿った各元
素の濃度分布を示すグラフ(b)である。
1000時間加熱した後の表層部断面の構造を示す図面
代用顕微鏡写真(a)および表層部の厚み方向に沿った
各元素の濃度分布を示すグラフ(b)である。
長時間に亘って維持される理由を説明するためのAl−
Ti−Ni三元状態図である。
合金をAl拡散処理した耐熱合金材料の酸化増量を無処
理のTi−Al合金、硫化処理したTi−Al合金、C
r/Alで蒸気拡散したTi−Al合金と比較したグラ
フである。
Mo−Pd−Si三元状態図である。
合金をAl拡散処理した耐熱合金材料の表層部断面の構
造を示す図面代用顕微鏡写真(a)および表層部の厚み
方向に沿った各元素の濃度分布を示すグラフ(b)であ
る。
のFe−Al−Ni三元状態図である。
℃に100時間加熱した後の表層部断面の構造を示す図
面代用顕微鏡写真(a)および表層部の厚み方向に沿っ
た各元素の濃度分布を示すグラフ(b)である。
Claims (6)
- 【請求項1】 耐熱合金基材にAl,Cr,Siの群か
ら選ばれる金属を拡散浸透処理することにより生成した
内層および外層の複層構造をもつ皮膜が形成されている
耐熱合金材料であって、Al,Cr,Siの群から選ば
れる金属元素の濃度が外層より高い内層が該拡散浸透処
理により形成されていること特徴とする耐高温腐食性に
優れた耐熱合金材料。 - 【請求項2】 内層および外層の複層構造は耐熱合金基
材に形成されたアップヒル拡散を生ぜしめる金属めっき
層を介して拡散浸透処理することにより生成したもので
あること特徴とする請求項1記載の耐高温腐食性に優れ
た耐熱合金材料。 - 【請求項3】 耐熱合金基材、金属めっき層、Al,C
r,Siの群から選ばれる表面被覆金属層の組み合わせ
が、Fe合金/Ni/Al、Co合金/Ni/Al、M
o合金/Ni/Al、Mo合金/Cr/Al、Zr合金
/Cr/Al、Ti合金/Ni/Al、Ti合金/Ni
/Cr、TiAl系金属間化合物/Ni/Al、Fe合
金/Mn/Cr、Mo合金/Pd/Si、Fe合金/M
n/Si、のいずれかであることを特徴とする請求項1
記載の耐高温腐食性に優れた耐熱合金材料。 - 【請求項4】 内層および外層の複層構造は耐熱合金基
材にAl,Cr,Siの群から選ばれる金属とアップヒ
ル拡散を生ぜしめ金属との合金を溶融塩めっきすること
により生成したものであることを特徴とする請求項1記
載の耐高温腐食性に優れた耐熱合金材料。 - 【請求項5】 耐熱合金基材にアップヒル拡散を生ぜし
める金属めっき層を形成した後、高活量の蒸気拡散処理
を行うことにより内層および外層の複層構造を形成する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の
耐熱合金材料の製造方法。 - 【請求項6】 耐熱合金基材に直接、Al,Cr,Si
の群から選ばれる金属とアップヒル拡散を生ぜしめる金
属との合金を溶融塩を用いてめっきすることにより内層
および外層の複層構造を形成することを特徴とする請求
項4記載の耐熱合金材料の製造方法。
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- 2002-03-05 JP JP2002059271A patent/JP3810330B2/ja not_active Expired - Fee Related
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