JP2021079629A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、滑り性に優れ、且つフィラーの脱落が抑制された積層フィルムを提供することである。【解決手段】表面層(A)と、表面層(A)に隣接する接着層(B)とを含み、接着層(B)はフィラーを含有し、表面層(A)の外表面の算術平均高さSaが0.23μm以上であることを特徴とする、積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、複数の層を積層した積層フィルムに関し、より詳細には、食品(例えば、肉類、加工肉類、水産物類、水産加工品)や機械部品等の包装に好適な積層フィルムに関する。
一般的に、食品、医療機器、機械部品等の包装には、延伸積層フィルムが用いられる。このような延伸積層フィルムの多くは、製袋や包装作業のようなフィルムの二次加工の工程を要する。ここで必要とされる特性として、フィルム原反の繰り出し易さ、ヒートシールバーへのフィルムの付着し難さ、フィルムと設備間の滑り易さが挙げられる。更に、製袋された袋において、積み重ねられた袋の取り出しやすさ、つまりはフィルムとフィルム間の滑り易さが要求される。
フィルムとフィルム間の滑り易さを付与する方法としては、フィルム表面に澱粉、コーンスターチ等の粉末を塗布(パウダリング)することが一般的である(特許文献1及び特許文献2)。また、最外層である外表面層にフィラー等の無機物や脂肪酸アミド等の有機物を添加する方法も知られている(特許文献3)。
特許第4848020号公報 特開2016−147373号公報 特開2018−176661号公報
しかしながら、粉末や最外層のフィラー及び脂肪酸アミドはフィルムから脱落又は転写しやすいため、周囲へ飛散又は転写することによる周辺環境や設備の汚染、作業者への吸入が懸念される。また、ヒートシールにてフィルムをシールする際に、シールバーに粉末が堆積して熱伝導が悪くなり、シール不良を引き起こす場合がある。
そこで、本発明は、滑り性に優れ、且つフィラーの脱落が抑制された積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、積層フィルムにおいて、表面層に隣接する接着層にフィラーを含有させ、表面層の算術平均高さを特定の範囲とすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
表面層(A)と、該表面層(A)に隣接する接着層(B)とを含み、
前記接着層(B)はフィラーを含有し、
前記表面層(A)の外表面の算術平均高さSaが0.23μm以上である
ことを特徴とする、積層フィルム。
[2]
前記表面層(A)の外表面の展開面積比Sdrが、0.10以上である、[1]に記載の積層フィルム。
[3]
前記表面層(A)の厚みが0.1〜3.0μmである、[1]又は[2]に記載の積層フィルム。
本発明によれば、滑り性に優れ、且つフィラーの脱落が抑制された積層フィルムを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
[積層フィルム]
本実施形態の積層フィルムは、表面層(A)と、該表面層(A)に隣接する接着層(B)とを含み、前記接着層(B)はフィラーを含有し、前記表面層(A)の算術平均高さSaが0.23μm以上であることを特徴とする。
本実施形態の積層フィルムは、接着層(B)にフィラーが含まれ、その接着層(B)の少なくとも一方の面側に表面層(A)が設けられてフィルム表面が形成される構成であることにより、表面層(A)の外表面であるフィルム表面にフィラーによる凹凸が形成されて優れた滑り性を発揮すると共に、最外層に表面層(A)が存在することにより、当該フィルム表面からのフィラーの脱落を抑制することができる。当該態様は、積層フィルムの少なくとも一部で存在していればよく、積層フィルム全体の面積の5面積%以上で存在することが好ましい
また、本実施形態の積層フィルムは、表面層(A)の外表面であるフィルム表面に凹凸を形成しやすいことから、表面層(A)と接着層(B)とは、直接接していることが特に好ましい。
本実施形態の積層フィルムは、表面層(A)及び接着層(B)の他に、必要に応じて各種の層を有することができる。特に、袋やその他包装材等として用いる場合、被収容物や被包装物側を内側として、外側から順に表面層(A)、接着層(B)、バリア層(C)、内表面層(D)が積層された4層構造、外側から順に表面層(A)、接着層(B)、バリア層(C)、接着層(E)、内表面層(D)が積層された5層構造等であることが好ましい。
また、上記5層構造等において、接着層(E)及び内表面層(D)の代わりに、それぞれ接着層(B)及び表面層(A)を積層することにより、積層フィルムの両面を表面層(A)で構成し、両面にフィラーによる凹凸を有する層構造としてもよい。
本実施形態の積層フィルムの形状及び大きさは、特に限定されず、被包装物の形状及び大きさ等に応じて定まる。
本実施形態の積層フィルムの厚みも、特に限定されないが、フィルムのバリア性、強度、生産性の観点から、20〜150μmであることが好ましく、25〜85μmであることがより好ましい。積層フィルムの厚みは、例えば、後述のインフレーション法を用いて積層フィルムを製造する場合、同時二軸延伸における面積延伸倍率を調整することにより制御することができ、面積延伸倍率が高いほど積層フィルムの厚みは薄くなる。
[[表面層(A)]]
本実施形態の積層フィルムに含まれる表面層(A)は、積層フィルムの強度を保持するための層の1つである。
表面層(A)は、溶解温度が比較的高い樹脂、例えば、アミド系樹脂、エステル共重合体、プロピレン系樹脂等を含むことが好ましい。
アミド系樹脂の具体例としては、ナイロン−6、ナイロン−12等の脂肪族アミド樹脂;ナイロン−6,66、ナイロン−6,12等の脂肪族アミド共重合体;ナイロン−6,66,12等の脂肪族三元共重合体等が挙げられ、中でも、フィルムの透明性、光沢性、生産性の観点から、ナイロン−6,66,12が好ましい。
エステル共重合体の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体及び/又はプロピレン系共重合体を使用でき、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−α―オレフィン共重合体、プロピレンとエチレンとα―オレフィンとの3元共重合体等が挙げられる。
なお、これらの樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、表面層(A)は、添加剤として、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤等の界面活性剤;酸化防止剤;帯電防止剤;石油樹脂、ミネラルオイル、脂肪酸アミド系の滑剤等の熱収縮性フィルムや袋用フィルムの分野において公知の各種添加剤を含有していてもよい。中でも、滑剤として脂肪酸アミドを添加すると、フィルム表面のベタツキが抑えられ、フィルムの滑り性が良好となる。
表面層(A)中の添加剤の含有量は、本発明の効果に影響しない範囲であれば特に限定されないが、2.5質量%以下とすることが好ましい。
また、表面層(A)は、フィラーを1.5質量%以下でのみ含んでいてもよい。
表面層(A)の厚みは、0.1〜3.0μmであることが好ましく、0.1〜2.0μmであることがより好ましく、0.1〜1.0μmであることが更に好ましい。表面層(A)の厚みが上記範囲であると、表面層(A)に、接着層(B)に含まれるフィラーにより凹凸を形成しやすくなる。また、表面層(A)に含まれる樹脂がアミド系樹脂のような硬度の高い樹脂であっても、成形及び加工が容易になる。
(表面層(A)の外表面の算術平均高さSa)
表面層(A)の外表面の算術平均高さSaは、値がゼロに近いほど表面層(A)の外表面が平面に近くなるため滑りにくく、また、値が大きいほど表面層(A)の外表面の凸凹が大きく、動摩擦係数(対金属鏡面)が小さくなり、滑りやすいことを意味する。
表面層(A)の外表面の算術平均高さSaは、0.23μm以上であり、0.29〜3.0μmであることが好ましく、0.33〜3.0μmであることがより好ましい。表面層(A)の算術平均高さSaが上記範囲であると、動摩擦係数(対金属鏡面)が小さく、滑り性に優れる傾向にある。
表面層(A)の外表面の算術平均高さSaを制御する方法としては、接着層(B)中のフィラーの平均粒子径を調整することが挙げられ、平均粒子径の大きいフィラーであるほど、表面層(A)の算術平均高さSaは大きくなる。また、表面層(A)の厚みを調整することが挙げられ、表面層(A)の厚みが薄いほど、表面層(A)の算術平均高さSaは大きくなる。
なお、本開示で、算術平均高さSaは、ISO25178に準拠して、形状解析レーザー顕微鏡(KEYENCE社製「VK−X1000」)を用いて測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
(表面層(A)の外表面の界面の展開面積比Sdr)
表面層(A)の外表面の界面の展開面積比Sdrは、値がゼロに近いほど表面層(A)の外表面が平面に近くなるため滑りにくく、また、値が大きいほど表面層(A)の外表面の凸凹が多く、動摩擦係数(対積層フィルム)が小さくなり、滑りやすいことを意味する。
表面層(A)の外表面の界面の展開面積比Sdrは、0.10〜1.0であることが好ましく、0.12〜1.0であることがより好ましい。表面層(A)の界面の展開面積比Sdrが上記範囲であると、動摩擦係数(対積層フィルム)が小さく、滑り性に優れる傾向にある。
なお、本開示で、界面の展開面積比Sdrは、ISO25178に準拠して形状解析レーザー顕微鏡(KEYENCE社製「VK−X1000」)を用いて測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
表面層(A)の内表面(表面層(A)と、表面層(A)に直接接する層との界面)は、接着層(B)に含まれるフィラーの形状に沿った凹凸を有することが好ましく、この場合、表面層(A)の外表面は、上記内表面の凹凸に沿った凹凸(上記内表面の凹凸形成に伴って形成された凹凸)を有する。
また、接着層(B)に含まれるフィラーの直径が接着層(B)の厚みよりも大きい場合等には、表面層(A)の内表面が当該フィラーによって分断された状態(フィラーの一部が表面層(A)内に入り込んで存在する状態)となることがあるが、この場合には、表面層(A)の外表面は当該フィラーの形状に沿った凹凸を有する。
[[接着層(B)]]
本実施形態の積層フィルムに含まれる接着層(B)は、表面層(A)に積層されて表面層(A)と他の層とを接着する層であることが好ましい。接着層(B)を設けることで、層間の接着力が向上する。
接着層(B)は、表面層(A)とバリア層(C)を接着する層であることが特に好ましく、層間接着強度の観点から、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン;ポリエチレンアイオノマー;ポリプロピレン;エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体等のエチレン共重合体や変性ポリオレフィン等が挙げられる。中でも、層間接着強度、生産性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
なお、これらのポリオレフィン系樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、接着層(B)はフィラーを含有する。
フィラーの種類は、特に限定されず、有機フィラー、無機フィラー、有機無機複合フィラーのいずれであってもよい。溶融押出時の熱による形状(粒径)の変化が少ないという観点から、無機フィラーが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子や炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。中でも、透明性、包装される食品の安全性の観点からゼオライト粒子が好ましい。
有機フィラーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチルやスチレン−アクリル酸メチル共重合体等のアクリル系樹脂粒子;スチレン樹脂粒子;ポリエステル粒子;ナイロン粒子;フッ素樹脂粒子等が挙げられる。
なお、これらのフィラーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
フィラーの形状は、特に限定されないが、表面層(A)の外表面であるフィルム表面に凹凸を形成しやすいことから、タルクのような無定形のものよりも、粒子状、立方体状等の定形のものが好ましい。
フィラーの平均粒子径は、表面層(A)の外表面であるフィルム表面に凹凸を形成しやすいことから、4.5〜15.0μmであることが好ましく、7.0〜15.0μmであることがより好ましく、10.0〜15.0μmであることが更に好ましい。
なお、本開示で、フィラーの平均粒子径は、コールター法によって決定される平均粒子径をいい、ISO13319に準拠して測定することができる。
フィラーの含有量は、接着層(B)100質量%に対して、1〜10質量%であることが好ましく、2〜8質量%であることがより好ましく、3〜5質量%であることが更に好ましい。フィラーの含有量が上記範囲であると、フィルムの滑り性が良好となる傾向にある。
なお、接着層(B)は、添加剤として、グリセリン脂肪酸エステル系界面活性剤等の界面活性剤;酸化防止剤;帯電防止剤;石油樹脂、ミネラルオイル、脂肪酸アミド系の滑剤等の熱収縮性フィルムや袋用フィルムの分野において公知の各種添加剤等を含有していてもよい。
接着層(B)中の添加剤の含有量は、本発明の効果に影響しない範囲であれば特に限定されないが、0.05〜2.5質量%とすることが好ましい。
接着層(B)の厚みは、層間接着強度、生産性の観点から、5〜60μmであることが好ましく、7〜40μmであることがより好ましく、9〜30μmであることが更に好ましい。
以下、本実施形態の積層フィルムが、表面層(A)、接着層(B)、バリア層(C)、接着層(E)、及び内表面層(D)がこの順に積層された5層構造である場合の、表面層(A)及び接着層(B)以外の層について説明する。
[[バリア層(C)]]
バリア層(C)は、ガスバリア性、特に酸素バリア性を有することで、積層フィルムを袋やその他包装材としたときの内容物の酸化劣化を防止する機能を果たす層である。
バリア層(C)の材料は、特に限定されないが、酸素バリア性能の観点から塩化ビニリデン共重合体を含むことが好ましい。
塩化ビニリデン共重合体とは、塩化ビニリデンとその他モノマーとの重合体である。その他モノマーの種類は、特に限定しないが、塩化ビニルモノマー又はメチルアクリレートモノマーが好ましい。
塩化ビニリデン共重合体における塩化ビニリデンの含有量は、60〜95質量%であることが好ましく、70〜93質量%であることがより好ましい。
塩化ビニリデン共重合体以外のバリア性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、塩化ビニリデン単独重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂が挙げられる。
なお、これらのバリア性樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
内容物の品質維持のため、バリア層(C)の酸素透過率は400cc/m2・day・MPa(23℃×65%RH)以下であることが好ましい。
なお、バリア層(C)は、溶融加工を容易にし、安定的に製造するために、熱安定剤や可塑剤等の添加剤を含有していてもよい。更に、脂肪酸アミド系滑剤等の滑剤や、酸化珪素、炭酸カルシウム、タルク等の紛体を含有していてもよい。
バリア層(C)中の添加剤の含有量は、本発明の効果に影響しない範囲であれば特に限定されないが、1〜10質量%とすることが好ましい。
バリア層(C)の厚みは、良好な酸素透過率の観点から、積層フィルム全体の厚みを100%として、5〜30%であることが好ましく、6〜20%であることがより好ましく、7〜17%であることが更に好ましい。
[[内表面層(D)]]
内表面層(D)は、袋に加工した場合やその他包装材として被包装物を包装した場合に最も内側となる層であり、袋及びその他包装材を密封する際のヒートシール層となる層である。
内表面層(D)は、重ねシール性の観点から、表面層(A)に使用する樹脂よりも融点が65〜150℃低い樹脂を含むことが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリエチレン;エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体等、或いはそれらの混合物等が挙げられる。中でも、延伸性、ヒートシール性に優れることから、エチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。
なお、これらの樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、内表面層(D)は、添加剤として、グリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤;酸化防止剤;帯電防止剤;石油樹脂、ミネラルオイル、脂肪酸アミド等の滑剤;酸化珪素、炭酸カルシウム、タルク等のアンチブロッキング剤;抗菌剤等を含有していてもよい。
内表面層(D)中の添加剤の含有量は、シール性、透明性を損なわない程度であれば特に限定されないが、0.05〜2.5質量%とすることが好ましい。
内表面層(D)の厚みは、ヒートシール性や高い熱収縮性の観点から、積層フィルム全体の厚みを100%として、5〜60%であることが好ましく、10〜40%であることがより好ましく、15〜25%であることが更に好ましい。
[[接着層(E)]]
接着層(E)は、バリア層(C)と内表面層(D)とを接着する層である。接着層(E)を設けることで、層間の接着力が向上する。
接着層(E)は、上述の接着層(B)と同様にポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、中でも、層間接着強度、生産性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
接着層(E)の厚みは、安定な延伸性が得られる観点から、5〜60μmであることが好ましく、7〜40μmであることがより好ましく、9〜30μmであることが更に好ましい。
[積層フィルムの製造方法]
本実施形態の積層フィルムの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法で製造することができるが、例えば、各層の構成材料である樹脂又は樹脂組成物をシート状又は筒状等に溶融押出し、必要に応じて延伸することにより製造することができる。
上記の樹脂組成物(例えば、接着層(B)の場合は、樹脂とフィラーとを含む樹脂組成物)を得る際の混合方法は、特に限定されず、公知の混合機、例えば、ヘンシェルミキサー、ブレンダー等を使用して混合することができる。
各原材料を混練機に加える順序は、特に限定されず、例えば、1種ずつ又は複数種ずつ混練機に加えてもよいし、一度に全ての原材料を加えてもよい。
上記各層の構成材料を溶融押出し、延伸する方法は、特に限定されないが、例えば、公知の溶融押出機を用いて上記各構成材料をチューブ状に共押出した後、インフレーション法を用いて延伸する方法等が挙げられる。
インフレーション法としては、シングルバブルインフレーション法、ダブルバブルインフレーション法、トリプルバブルインフレーション法、テンター法等が挙げられる。得られるフィルムの諸物性のバランスから、ダブルバブルインフレーション法、トリプルバブルインフレーション法が好ましく、得られる諸物性のバランスの観点から、ダブルバブルインフレーション法が特に好ましい。
本実施形態の積層フィルムは、延伸の前に電離性放射線を照射してもよい。これにより、特に接着層(B)が架橋され、フィルムの延伸性が付与される。電離性放射線の効果深度は、加速電圧で調節することが一般的である。電離性放射線としては、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等が挙げられる。
以下、共押出及びダブルバブルインフレーション法を用いた製造方法について、その概略を説明する。
各層の構成材料である樹脂又は樹脂組成物(のペレット)を、樹脂の融解温度以上で溶融し、層数に対応した台数の押出機を用いて各層を同時に押出する。押出された各層の樹脂又は樹脂組成物をフィードパイプを通じてダイスに送り、ダイスを介して各層が積層したチューブ状の積層フィルム(パリソン)を作製する。これを水冷等により冷却固化する。
次に、パリソンの表面層(A)側から電離性放射線を照射し、接着層(B)を所望のゲル分率に架橋する。照射条件は、延伸性の観点から、加速電圧を150〜300kVで、照射量を20〜150kGyとすることが好ましい。
次に、パリソンをダブルバブルインフレーション法により延伸する。フィルムの延伸倍率は、熱収縮性、良好な滑り性、生産安定性の観点から、流れ方向(MD)及び幅方向(TD)共に2.0〜6.0倍とすることが好ましく、2.5〜4.0倍がより好ましい。また、延伸に先立ち、60〜98℃で予熱するとより好ましい。なお、MD方向の延伸倍率は、バブル間のピンチロールの速度比で調節することができ、TD方向の延伸倍率は、バブルに封入するエアーの体積により調節することができる。
積層フィルムの延伸温度は、製袋加工をした後の寸法安定性、熱収縮性、収縮後の良好な透明性を得るため、50〜90℃とするのが好ましく、60〜80℃がより好ましい。
なお、延伸温度は、バブルインフレーション法の場合であれば、インフレーションバブルの延伸し始めのネック部と呼ばれる部分のフィルム表面を温度計で実測することにより測定することができる。
本実施形態においては、延伸後にヒートセットと呼ばれる熱処理を40〜80℃の温度で数秒間行うことが好ましい。ヒートセットを行うと、連続製袋機での使用時、スリット時、袋詰め時等の操作性を損なうフィルムのカールを抑制することができる。
さらに、本実施形態の積層フィルムは、必要に応じて、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理、印刷処理が行われてもよい。
[積層フィルムの滑り性(動摩擦係数)]
本実施形態の積層フィルムの滑り性を示す動摩擦係数は、値が大きいほど滑り性に劣ることを意味する。
本実施形態の積層フィルムについて、積層フィルム対積層フィルムで測定した場合の動摩擦係数は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。動摩擦係数が上記範囲であると、重ねられた積層フィルム間の滑りが良好となり、例えば、製袋後に積み重ねられた袋の束からの個々の袋の取り出しが容易となる。
また、積層フィルム対金属鏡面(ステンレス板)で測定した場合の動摩擦係数は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下である。動摩擦係数が上記範囲であると、積層フィルムと成形・加工設備間の滑りが良好となり、例えば、フィルム原反の繰り出し易さ、フィルムの搬送し易さ、ヒートシールバーへのフィルムの付着し難さに繋がる。
なお、本開示で、積層フィルムの動摩擦係数は、JIS−K−7125に準拠して測定される値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法について、以下に説明する。
(1)フィラーの平均粒子径
実施例及び比較例で用いたフィラーについて、ISO13319に準拠して、粒子測定装置(日科機株式会社製「コールターマルチサイザー粒子測定装置TA−II型」)を用いて粒子径を測定した。得られた測定値から、JIS Z 8819−2に準拠して平均粒子径(μm)を求めた。
(2)表面粗さ
実施例及び比較例で得られた積層フィルムから、10cm×10cmの試験片を切り出した。形状解析レーザー顕微鏡(KEYENCE社製「VK−X1000」)を用い、ISO25178に準拠して、試験片の表面層(A)の外表面の算術平均高さSa(μm)及び界面の展開面積比Sdrを求めた。
測定準備:「観察アプリケーション」を起動し、試験片を、表面層(A)側を上にして形状解析レーザー顕微鏡の回転ステージに設置した。
測定方法の設定:対物レンズの倍率を20倍(23型モニター上の倍率は480倍)に設定し、フィルム表面にフォーカスを合わせた後、操作パネルにて画像をカメラ画像からレーザー画像に切り替えた。
3D画像の作製:ツールバーの「基本測定」からスキャンモードを「レーザーコンフォーカル」に設定して明るさを調整した。対物レンズを動かして測定する表面層(A)の上限と下限を設定し、測定を開始した。測定終了後、得られた3D画像を保存した。なお、「レーザーコンフォーカル」は、レーザーから照射された光が試料表面で反射し、その反射光の強弱から合焦点位置(高さ情報)を検出して形状を測定するスキャン方法である。
画像の傾き補正:「マルチ解析アプリケーション」を起動して、上記3D画像のデータを選択した。画像処理ウィンドウから「面形状補正」を選択し、画像表示領域を「全領域」、補正方法を「うねり除去」とした。なお、「うねり除去」は、領域内の高さデータに対して帯域通過フィルターをかけることで面内の複雑なうねり形状を除去する補正方法である。
表面粗さの計測:ツールバーから「表面粗さ」を選択して表面粗さ計測ウィンドウを表示し、「領域の追加」から「全領域」を選択した。ガウシアンフィルターを適用し、算術平均高さSa(μm)及び展開面積比Sdrを得た。
(3)滑り性
実施例及び比較例で得られた積層フィルムについて、JIS−K−7125に準拠して、摩擦測定機(東洋精機製作所製「TR−2」)を用いて積層フィルム表面の動摩擦係数を測定した。具体的には、積層フィルムの表面層(A)側の表面の動摩擦係数を、積層フィルム対積層フィルム(積層フィルム同士)、及び積層フィルム対金属鏡面(ステンレス板SUS304、200g)について測定した。試験条件として、移動速度100mm/min、滑り距離130mm、接触面積63mm×63mmを使用した。3回測定し、それらの平均を測定値とした。
動摩擦係数の値が大きいほど、滑り性に劣ることを意味する。
また、以下の評価基準により、滑り性の官能評価を行った。
<評価基準>
〇(優れる):製袋後に積み重ねられた袋の束からの個々の袋の取り出しが容易であり、個々の袋同士が密着していない。
△(良好):製袋後に積み重ねられた袋の束からの個々の袋の取り出しがやや困難であり、個々の袋同士がやや密着している。
×(不良):製袋後に積み重ねられた袋の束からの個々の袋の取り出しが困難であり、個々の袋同士が密着している。
(4)フィラーの脱落性
実施例及び比較例で得られた積層フィルムを厚み方向に切断し、フィルムの切断面が上になるようにマイクロスコープ(キーエンス社製デジタルマイクロスコープ「VHX−6000」)のステージに設置した。フィルムの断面を観察し、以下の評価基準でフィラーの脱落性を評価した。
<評価基準>
〇(良好):フィラーを目視で確認できた。
×(不良):フィラーを目視で確認できず、脱落した跡が見られた。
実施例及び比較例で用いた原材料について、以下に説明する。
(1)樹脂
・N6/N66/N12:ナイロン−6,66,12共重合体
・N6/N66:ナイロン−6,66共重合体
・EVAC:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル:18質量%)
・VDC/VC:塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体(塩化ビニリデン単位の含有量/塩化ビニル単位の含有量=72.5質量%/27.5質量%)
・EAO:エチレン−α−オレフィン共重合体
(2)フィラー
・AMT100R:立方体状ゼオライト粒子(水澤化学工業社製「シルトンAMT100R」、平均粒子径:10.0μm)
・JC−70:球状ゼオライト粒子(水澤化学工業社製「シルトンJC−70」、平均粒子径:7.0μm)
・JC−50:球状ゼオライト粒子(水澤化学工業社製「シルトンJC−50」、平均粒子径:5.0μm)
・タルク:タルク(松村産業社製「ハイフィラー#5000PJ」、平均粒子径:4.5μm)
なお、フィルムの成形前後でフィラーの平均粒子径は変化しないことを確認した。
フィルム成形後のフィラーの粒子径は、以下のように測定できる。得られた積層フィルムから、流れ方向の幅が1cmの試験片を切り出し、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製「VHX−6000」)を用いて、試験片の断面を上にしてマイクロスコープの回転ステージに設置する。対物レンズの倍率を2000倍に設置し、粒子径を測定する。10個の粒子径を測定し、平均値を平均粒子径(μm)とする。
(3)その他
・澱粉粉末:公知のものを使用した。
[実施例1]
ダブルバブルインフレーション法を用いて、表面層(A)、接着層(B)、バリア層(C)、接着層(E)、内表面層(D)をこの順に積層した5層の積層フィルムを作製した。
具体的には、表1に示す各層の原材料である樹脂又は樹脂組成物(樹脂及びフィラーの混合物)のペレットを、樹脂の融解温度以上で溶融し、5台の押出機を用いて各層を同時に押出した。押出された各層の樹脂又は樹脂組成物をフィードパイプを通じてダイスに送り、ダイスを介して各層が積層したチューブ状の積層フィルム(パリソン)を作製した。これを水冷等により冷却固化した。樹脂押出量は、厚み比率が、表面層(A)=0.5%、接着層(B)=34.5%、バリア層(C)=15%、接着層(E)=25%、内表面層(D)=25%となるように調整した。
なお、接着層(B)の原材料の樹脂組成物は、EVAC97質量%とゼオライト粒子(AMT100R)3質量%とを混合することにより準備した。
次に、電子線照射装置を用いて、加速電圧210kVにて表面層(A)側からパリソンに電子線を照射した。
積層フィルムを80℃で予熱した後、ダブルバブルインフレーション法を用いて延伸し、平均厚み55μmの積層フィルムを得た。フィルムの延伸倍率は、流れ方向(MD)及び幅方向(TD)共に3倍とし、延伸温度は60〜100℃とした。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例2]
積層フィルムの平均厚みを40μmとした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例3]
フィラーの含有量を1質量%とした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例4]
積層フィルムの延伸倍率をMD方向4倍、TD方向4倍とした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例5]
積層フィルムの延伸倍率をMD方向2倍、TD方向2倍とした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例6]
表面層(A)の原材料をN6/N66とした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例7]
フィラーをゼオライト粒子(JC−70)とした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例8]
積層フィルムの平均厚みを70μmとした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[実施例9]
フィラーをゼオライト粒子(JC−50)とした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[比較例1]
フィラーをタルクとした以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[比較例2]
タルクを接着層(B)ではなく表面層(A)に含有させた以外は、比較例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
[比較例3]
フィラーを用いず、表面層(A)に澱粉粉末を塗布した以外は、実施例1と同様に実施した。
表1に各物性の測定・評価結果を示す。
Figure 2021079629
本発明の積層フィルムは、滑り性に優れ、フィラーの脱落が抑制されたフィルムであるため、食品、機械部品等の包装材として好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. 表面層(A)と、該表面層(A)に隣接する接着層(B)とを含み、
    前記接着層(B)はフィラーを含有し、
    前記表面層(A)の外表面の算術平均高さSaが0.23μm以上である
    ことを特徴とする、積層フィルム。
  2. 前記表面層(A)の外表面の展開面積比Sdrが、0.10以上である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記表面層(A)の厚みが0.1〜3.0μmである、請求項1又は2に記載の積層フィルム。
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