JP2021067908A - マスクブランク、転写用マスク、及び半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

マスクブランク、転写用マスク、及び半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】マスクブランクから製造された転写用マスクを用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に対してArF露光光での繰り返しの露光転写を行ったときに、露光転写の繰り返し回数の増加数に対する薄膜パターンの平面視の位置の移動量の変化幅が低減されているマスクブランクを提供する。【解決手段】ガラス基板上に、パターン形成用の薄膜を備えるマスクブランクであって、前記薄膜を備えるガラス基板に対してArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件で照射し、前記光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、式(1)の関係を満たすことを特徴とするマスクブランク。式(1):ΔT<−3.576×10−5×t2+2.867×10−2×t+0.589【選択図】図3

Description

本発明は、マスクブランク、転写用マスク、及び半導体デバイスの製造方法に関する。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィー法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には通常何枚もの転写用マスクと呼ばれている基板が使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィーで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体装置製造の際の露光光源としては、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
特許文献1には、フォトリソグラフィー工程の過程で照射される光エネルギーの相当量が光遮断パターンによって吸収されること、さらにこれに起因して生じる現象が開示されている。すなわち、この光エネルギーを吸収することによって、光遮断パターン内に熱が発生する。その光遮断パターンから発生する熱は透光基板に伝達され、その結果、透光基板が温度上昇によって膨脹する現象が発生する。さらに、このような透光基板の膨脹によってフォトマスクのパターンの位置精度誤差が発生する。これによってウェハとフォトマスクとの間のオーバーレイ精度が確保できなくなる場合がある。
特開2015−152924号公報
昨今、半導体デバイスの微細化がさらに進み、マルチプルパターニング技術等の露光技術の適用も始まっている。1つの半導体デバイスを製造するのに用いられる転写用マスクセットの各転写用マスク同士における重ね合わせ精度に対する要求がより厳しくなってきている。このため、特許文献1に開示されている透光基板の膨張に伴うフォトマスクのパターンの位置精度誤差を低減することがより重要になってきている。
特許文献1では、この技術的課題を解決するために、フォトマスクブランクの透光基板と光遮断層の間に露光光を高い反射率で反射する高反射物質層を設けることが行われている。すなわち、高反射物質層と光遮断層の積層構造からなる薄膜パターンを透光基板(ガラス基板)上に形成したフォトマスクとすることが提案されている。この薄膜パターンは、遮光膜に適用した例、ハーフトーン位相シフト膜の場合にも適用できることも記載されている。特許文献1では、フォトマスクのガラス基板側から露光光を入射させたときの裏面反射率と、薄膜パターンを透過してガラス基板側とは反対側の表面から出射した露光光の透過率から、薄膜パターンが露光光を吸収した吸収率を導き出している。そして、この吸収率から薄膜パターンの発熱とそれに伴うガラス基板の熱膨張を推定している。
一般に、転写用マスクの微細なパターンをウェハ上のレジスト膜に露光転写する場合、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置が用いられる。ステップ・アンド・スキャン方式の露光転写では、スリットを通過した細長い形状の露光光が用いられる。転写用マスクが設置されたマスクステージが一方向に移動することで、露光光が転写用マスクの薄膜パターン(転写パターン)が形成されている領域に対してスキャンするように照射される。さらに、露光転写時、ウェハステージがマスクステージと同期してマスクステージの移動方向と反対方向に移動する。この一連の動作によって、ウェハステージ上の半導体ウェハのレジスト膜の1チップの領域内に、転写用マスクの微細な薄膜パターンが露光転写される。そして、その1チップの領域内に対する露光転写が終わると、ウェハステージが作動して、隣接する1チップの領域に露光光が照射されるようにウェハの位置をステップ移動する。その後、同様の動作によって、その隣接する1チップの領域のレジスト膜に微細な転写パターンが露光転写される。この動作を繰り返し行われることで、1枚の半導体ウェハ上にあるレジスト膜の全てのチップ領域に対して微細なパターンが露光転写される。
上記のとおり、ステップ・アンド・スキャン方式の露光転写では、半導体ウェハ上のレジスト膜の1チップの領域に対して露光光が照射されている間、転写マスクのパターンが形成されている薄膜の全ての領域に対して露光光が連続で照射されているわけではない。しかし、スループットの向上の観点や、転写パターンの微細化による露光光の通過光量の低下の観点から、露光光の照射量を従来よりも増加させている。このため、転写用マスクの露光光が照射された薄膜パターンの領域での発熱量は大きい。この薄膜パターンで発生する熱がガラス基板に伝達され、その熱によってガラス基板の熱膨張が起きる。それによって、そのガラス基板上での薄膜パターンの移動が起こる。
この薄膜パターンからガラス基板に伝達する熱が大きいことに加え、半導体ウェハ上にあるレジスト膜の1つ目のチップ領域への露光転写が行われてから、それに隣接する2つ目のチップ領域への露光転写が行われるまでの間隔が短い。このため、1つ目のチップ領域への露光転写が行われたときに生じた薄膜パターンおよびガラス基板の温度上昇が元に戻らないうちに、2つ目のチップ領域への露光転写が行われることになり、ガラス基板の温度がさらに上昇することになる。そして、1枚の半導体ウェハ上にあるレジスト膜の全てのチップ領域に対するパターンの露光転写が終わるまでの間、少なくとも転写用マスクのガラス基板の温度は上がり続けることになる。これによって、各チップ領域に対する繰り返しの露光転写を続けるに従い、転写用マスクのガラス基板の熱膨張量は大きくなっていく。さらに、そのガラス基板上にある薄膜パターンの平面視での移動量も大きくなっていく。
このような転写用マスクを用いた場合、半導体ウェハ上のレジスト膜に対する露光転写の繰り返し回数が増えるに従い、薄膜パターンのArF露光光の照射前後の平面視の位置の変化量が大きくなる問題がある。露光転写の繰り返し回数の増加数に対する薄膜パターンの平面視の位置の移動量の変化幅が大きすぎる場合、その薄膜パターンの平面視の位置の移動量を予め考慮して薄膜パターンを設計しても、レジスト膜に形成される転写パターンの転写精度を向上させることは難しくなる。
本発明は、ガラス基板上にパターン形成用の薄膜を備えたマスクブランクにおいて、このマスクブランクから製造された転写用マスクを用い、半導体ウェハ上のレジスト膜に対してArFエキシマレーザーの露光光(以下、ArF露光光という場合がある。)での繰り返しの露光転写を行ったとき、露光転写の繰り返し回数の増加数に対する薄膜パターンの平面視の位置の移動量の変化幅を低減することができるマスクブランクを提供することを目的としている。また、このマスクブランクを用いて製造される転写用マスクを提供することを目的としている。そして、本発明は、このような転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
ることを目的としている。
本発明は上記の課題を解決する手段として、以下の構成を有する。
(構成1)
ガラス基板上に、パターン形成用の薄膜を備えるマスクブランクであって、
前記薄膜を備えるガラス基板に対してArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件で照射し、前記光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、式(1)の関係を満たす
ことを特徴とするマスクブランク。
式(1):ΔT<−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
(構成2)
前記薄膜は、前記光の透過率が20%以下であることを特徴とする構成1記載のマスクブランク。
(構成3)
前記ガラス基板の線膨張係数は、5.0×10−7以上であることを特徴とする構成1または2に記載のマスクブランク。
(構成4)
前記薄膜は、金属およびケイ素の少なくともいずれかを含有する材料からなることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成5)
前記ガラス基板は、合成石英からなることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成6)
前記薄膜は、前記光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記薄膜を透過した前記光に対して前記薄膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有する位相シフト膜であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成7)
前記光に対する前記薄膜の前記ガラス基板側の反射率は、20%以上であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
(構成8)
ガラス基板上に、転写パターンを有する薄膜を備える転写用マスクであって、
前記薄膜を備えるガラス基板に対してArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件で照射し、前記光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、式(1)の関係を満たす
ことを特徴とする転写用マスク。
式(1):ΔT<−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
(構成9)
前記薄膜は、前記光の透過率が20%以下であることを特徴とする構成8記載の転写用マスク。
(構成10)
前記ガラス基板の線膨張係数は、5.0×10−7以上であることを特徴とする構成8または9に記載の転写用マスク。
(構成11)
前記薄膜は、金属およびケイ素の少なくともいずれかを含有する材料からなることを特徴とする構成8から10のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成12)
前記ガラス基板は、合成石英からなることを特徴とする構成8から11のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成13)
前記薄膜は、前記光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記薄膜を透過した前記光に対して前記薄膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有する位相シフト膜であることを特徴とする構成8から12のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成14)
前記光に対する前記薄膜の前記ガラス基板側の反射率は、20%以上であることを特徴とする構成8から13のいずれかに記載の転写用マスク。
(構成15)
構成8から14のいずれかに記載の転写用マスクに対し、ArFエキシマレーザーの露光光を照射して半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明のマスクブランクは、ガラス基板上にパターン形成用の薄膜を備えたマスクブランクであって、このマスクブランクから製造された転写用マスクを用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に対してArF露光光での繰り返しの露光転写を行ったとき、露光転写の繰り返し回数の増加数に対する薄膜パターンの平面視の位置の移動量の変化幅を低減することができる。さらに、この転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造において、半導体デバイス上のレジスト膜等に精度良好にパターンを転写することが可能になる。
マスクブランクの実施形態の断面概略図である。 転写用マスクの製造工程を示す断面概略図である。 実施例1、2、比較例1、2におけるそれぞれの位相シフトマスクについて、ArFエキシマレーザー光の照射時間とガラス基板の温度上昇との関係を示すグラフである。 ArFエキシマレーザー光の照射試験装置の模式図である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、まず本発明に至った経緯について説明する。本発明者は、ガラス基板上に薄膜パターンを備えた転写用マスクを用いてArF露光光での繰り返しの露光転写を行ったときに、露光転写の繰り返し回数の増加数に対する薄膜パターンの平面視の位置の移動量の変化幅を低減することができる転写用マスク(その転写用マスクを製造するために用いられるマスクブランク。)の構成について鋭意検討した。その結果、ArFエキシマレーザーの光の照射時間の変化幅に対する薄膜パターンの温度上昇の変化幅(その薄膜パターンが接しているガラス基板の温度上昇の変化幅と実質同じ。)を小さくする(すなわち、ArFエキシマレーザーの光の照射時間に対する薄膜パターンの温度上昇の傾きを小さくする。)ことによって、上記の技術的課題を解決できるという考えに至った。
しかし、同じステップ・アンド・スキャン方式の露光装置であっても装置構成の相違によって、転写用マスクの照射するArF露光光の照射条件は変わる。また、同じ露光装置であっても、使用する転写用マスクの薄膜パターンの形状や半導体ウェハ上のレジスト膜の材料等によってもArF露光光の照射条件は変わる。このため、転写用マスクのArFエキシマレーザーの光の照射時間と、薄膜パターン(ガラス基板)の温度上昇との間の関係を規定するには、ArFエキシマレーザーの光の照射条件を選定が必要である。ArF露光光の照射条件に関わらず、ArFエキシマレーザーの光の照射時間に対する薄膜パターンの温度上昇の傾きを小さくするには、実際の露光装置での照射条件よりも厳しい条件を設定することが求められる。この点を考慮し、ArFエキシマレーザーの光の照射条件を薄膜パターンの同じ領域に連続的に照射することにした。ArFエキシマレーザーは、パルスレーザーであるので厳密には間欠的な照射である。ここでの連続的な照射とは、このパルスレーザーであるArFエキシマレーザーの光を薄膜パターンの同じ領域に照射し続けることをいう。
その前提でさらに鋭意研究を行った結果、ArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件を設定するという考えに至った。そして、この照射条件における、それぞれのマスクブランクに対するArF露光光の照射時間と温度上昇との関係を調べ、ガラス基板の熱膨張及び照射前後のパターンシフト量を測定した。その結果、上記の照射条件において、光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、下記の式(1)の関係を満たすものであれば、ガラス基板上にパターンが形成された薄膜に対してArF露光光が照射されたとき、薄膜の発熱によって生じるガラス基板の温度上昇の傾きが小さくなるような転写用マスクを提供することができることを見出した。ここで、式(1)は、
ΔT<−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
である。
以下、図面に基づいて、上述した本発明の詳細な構成を説明する。なお、各図において同様の構成要素には同一の符号を付して説明を行う。
〈マスクブランク〉
図1に、マスクブランクの実施形態の概略構成を示す。本実施形態においては、パターン形成用の薄膜を位相シフト膜とした場合について説明する。なお、パターン形成用の薄膜はこれに限定されるものではなく、例えば前記薄膜を遮光膜としてもよい。
図1に示すマスクブランク100は、ガラス基板1における一方の主表面上に、位相シフト膜2、遮光膜3、及び、ハードマスク膜4がこの順に積層された構成である。マスクブランク100は、必要に応じてハードマスク膜4を設けない構成であってもよい。また、マスクブランク100は、ハードマスク膜4上に、必要に応じてレジスト膜を積層させた構成であってもよい。以下、マスクブランク100の主要構成部の詳細を説明する。
[ガラス基板]
ガラス基板1は、リソグラフィーにおける露光工程で用いられる露光光に対して透過性が良好な材料で形成される。このような材料としては、合成石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)、その他各種のガラス基板を用いることができる。特に、合成石英ガラスからなる基板は、ArFエキシマレーザー光(波長:約193nm)に対する透過性が高いので、マスクブランク100のガラス基板1として好適に用いることができる。
また、ガラス基板1の線膨張係数は、5.0×10−7以上である。
尚、ここで言うリソグラフィーにおける露光工程とは、このマスクブランク100を用いて作製された位相シフトマスクを使用したリソグラフィーにおける露光工程であり、露光光とは、特に断りの無い限り、ArFエキシマレーザー光(波長:193nm)を指すものとする。
ガラス基板1を形成する材料の露光光における屈折率は、1.5以上1.6以下であることが好ましく、1.52以上1.59以下であるとより好ましく、1.54以上1.58以下であるとさらに好ましい。
[位相シフト膜]
位相シフト膜2には、ArF露光光に対する透過率が1%以上であることが求められる。位相シフト膜2の内部を透過した露光光と空気中を透過した露光光との間で十分な位相シフト効果を生じさせるには、露光光に対する透過率が少なくとも1%は必要である。位相シフト膜2の露光光に対する透過率は、3%以上であると好ましく、4%以上であるとより好ましい。他方、位相シフト膜2の露光光に対する透過率が高くなるにつれて、裏面反射率を高めることが難しくなる。このため、位相シフト膜2の露光光に対する透過率は、30%以下であると好ましく、20%以下であるとより好ましく、10%以下であるとさらに好ましい。
位相シフト膜2は、適切な位相シフト効果を得るために、この位相シフト膜2を透過した露光光に対し、この位相シフト膜2の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した露光光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能を有するように調整されていることが好ましい。位相シフト膜2における前記位相差は、155度以上であることがより好ましく、160度以上であるとさらに好ましい。他方、位相シフト膜2における位相差は、195度以下であることがより好ましく、190度以下であるとさらに好ましい。
位相シフト膜2は、ガラス基板1上に位相シフト膜2のみが存在する状態において、ArF露光光に対するガラス基板1側(裏面側)の反射率(裏面反射率)が少なくとも20%以上であることが求められ、25%以上であると好ましく、30%以上であるとより好ましい。ガラス基板1上に位相シフト膜2のみが存在する状態とは、このマスクブランク100から位相シフトマスク200(図2(g)参照)を製造した時に、位相シフトパターン2aの上に遮光パターン3bが積層していない状態(遮光パターン3bが積層していない位相シフトパターン2aの領域)のことをいう。ガラス基板1側から位相シフト膜2に対して照射されたArF露光光は、大別すると、ガラス基板1と位相シフト膜2との界面で反射光として一部が反射され、位相シフト膜2の内部で一部が吸収され、位相シフト膜2の反対側の表面(ガラス基板1側とは反対側の表面。)から大気中に透過光として出射する。位相シフト膜2は、ArF露光光を所定の透過率で透過させることが求められる。そして、その所定の透過率を超えた透過率で透過させることはできないか、もしくは行わない。位相シフト膜2の内部で吸収された光は、ほとんどが熱に変換される。位相シフト膜2の裏面反射率を高くすることで、位相シフト膜2の内部で吸収するArF露光光の光量を少なくすることができ、ArF露光光の照射時の位相シフト膜の温度上昇を低減することができる。
他方、位相シフト膜2のみが存在する状態での裏面反射率が高すぎると、このマスクブランク100から製造された位相シフトマスク200を用いて転写対象物(半導体ウェハ上のレジスト膜等)へ露光転写を行ったときに、位相シフト膜2の裏面側の反射光によって露光転写像に与える影響が大きくなるため、好ましくない。この観点から、位相シフト膜2のArF露光光に対する裏面反射率は、45%以下であることが好ましい。
位相シフト膜2は、上述した所望の光学特性を得るためには複数層で形成することが好ましい。例えば、位相シフト膜2を上層と下層の2層で構成する場合には、下層の屈折率nは、2.30未満であることが好ましく、2.25以下であるとより好ましく、2.20以下であるとさらに好ましい。また、下層の屈折率nは、1.00以上であると好ましく、1.10以上であるとより好ましい。下層の消衰係数kは、1.40以上であることが好ましく、1.50以上であるとより好ましい。また、下層の消衰係数kは、3.00以下であると好ましく、2.90以下であるとより好ましい。なお、下層の屈折率nおよび消衰係数kは、下層の全体を光学的に均一な1つの層とみなして導出された数値である(後述する他の層においても同様である)。下層の厚さは、15nm以下であると好ましく、14nm以下であるとより好ましい。また、下層の厚さは、3nm以上であることが好ましく、4nm以上であるとより好ましく、5nm以上であるとさらに好ましい。
また、上層の屈折率nは、2.30以上であることが好ましく、2.35以上であるとより好ましい。また、上層の屈折率nは、2.80以下であると好ましく、2.70以下であるとより好ましい。上層の消衰係数kは、1.00以下であることが好ましく、0.90以下であると好ましく、0.70以下であるとより好ましい。また、上層の消衰係数kは、0.20以上であると好ましく、0.30以上であるとより好ましい。上層の厚さは、下層の厚さの4倍以上であることが好ましく、4.5倍以上であるとより好ましい。また、上層の厚さは、下層の厚さの10倍以下であるとより好ましい。上層の厚さは80nm以下であると好ましく、70nm以下であるとより好ましい。また、上層の厚さは、50nm以上であることが好ましく、55nm以上であるとより好ましい。
また、例えば、位相シフト膜2をガラス基板1側から順に第1層、第2層、第3層、第4層の4層で構成する場合には、第1層の屈折率nは、2.0未満であることが好ましく、1.95以下であるとより好ましい。第1層の屈折率nは、0.95以上であることが好ましく、1.0以上であるとより好ましい。第1層の消衰係数kは、1.0以上であると好ましく、1.2以上であるとより好ましい。また、第1層の消衰係数kは、3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。第1層の厚さは10nm以下であると好ましく、8nm以下であるとより好ましく、6nm以下であるとさらに好ましい。また、第1層の厚さは、1nm以上であることが好ましく、2nm以上であるとより好ましい。
また、第2層の屈折率nは、2.3以上であることが好ましく、2.4以上であると好ましい。また、第2層の屈折率nは、3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。第2層の消衰係数kは、0.5以下であると好ましく、0.4以下であるとより好ましい。また、第2層の消衰係数kは、0.16以上であると好ましく、0.2以上であるとより好ましい。第2層の厚さは、50nm以下であると好ましく、48nm以下であるとより好ましく、46nm以下であるとさらに好ましい。また、第2層の厚さは、10nm以上であることが好ましく、12nm以上であるとより好ましい。
また、第3層の屈折率nは、2.3未満であることが好ましく、2.2以下であるとより好ましい。また、第3層の屈折率nは、1.8以上であることが好ましく、2.0以上であると好ましい。第3層の消衰係数kは、0.15以下であると好ましく、0.14以下であるとより好ましい。また、第3層の消衰係数kは、0.00以上であると好ましく、0.02以上であるとより好ましい。第3層の厚さは、30nm以下であると好ましく、25nm以下であるとより好ましい。第3層の厚さは、5nm以上であることが好ましく、10nm以上であるとより好ましく、15nm以上であるとさらに好ましい。
また、第4層の屈折率nは、2.3以上であることが好ましく、2.4以上であると好ましい。また、第4層の屈折率nは、3.0以下であると好ましく、2.8以下であるとより好ましい。第4層の消衰係数kは、0.5以下であると好ましく、0.4以下であるとより好ましい。また、第4層の消衰係数kは、0.16以上であると好ましく、0.2以上であるとより好ましい。第4層の厚さは、45nm以下であると好ましく、40nm以下であるとより好ましい。また、第4層の厚さは、10nm以上であることが好ましく、15nm以上であるとより好ましい。
位相シフト膜2を含む薄膜の屈折率nと消衰係数kは、その薄膜の組成だけで決まるものではない。その薄膜の膜密度や結晶状態なども屈折率nや消衰係数kを左右する要素である。このため、反応性スパッタリングで薄膜を成膜するときの諸条件を調整して、その薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kとなるように成膜する。位相シフト膜2を、上記の屈折率nと消衰係数kの範囲にするには、反応性スパッタリングで成膜する際に、貴ガスと反応性ガス(酸素ガス、窒素ガス等)の混合ガスの比率を調整することだけに限られない。反応性スパッタリングで成膜する際における成膜室内の圧力、スパッタリングターゲットに印加する電力、ターゲットとガラス基板1との間の距離等の位置関係など多岐にわたる。これらの成膜条件は成膜装置に固有のものであり、形成される薄膜が所望の屈折率nおよび消衰係数kになるように適宜調整されるものである。
位相シフト膜2は、金属およびケイ素の少なくともいずれかを含有する材料からなることが好ましい。位相シフト膜2の全体膜厚を薄くするために、非金属元素とケイ素と遷移金属を含有する材料で位相シフト膜2を形成してもよい。この場合に含有させる遷移金属としては、例えば、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。一方、位相シフト膜2は、非金属元素とケイ素とからなる材料、または、半金属元素と非金属元素とケイ素とからなる材料で形成されていることが好ましい。
特に、窒素、炭素、水素といった軽元素は、不可避的に5原子%以下の範囲までは、許容される。
ガラス基板1上に設けられた位相シフト膜2は、ガラス基板1に対してArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件で照射し、この光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、後述する実施例1、2、比較例1、2から把握されるように、式(1)の関係を満たすものであることが好ましい。
式(1):ΔT<−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
また、式(A0)を満たすものであることがより好ましい。
式(A0):ΔT≦−3.125×10−5×t+2.500×10−2×t+0.513
なお、位相シフト膜2は、上述のように複数層で形成されるものであってもよく、厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
[遮光膜]
マスクブランク100は、位相シフト膜2上に遮光膜3を備える。一般に、位相シフトマスクでは、転写パターンが形成される領域(転写パターン形成領域)の外周領域は、露光装置を用いて半導体ウェハ上のレジスト膜に露光転写した際に外周領域を透過した露光光による影響をレジスト膜が受けないように、所定値以上の光学濃度(OD)を確保することが求められている。位相シフトマスクの外周領域は、ODが2.8以上であると好ましく、3.0以上であるとより好ましい。上述のように、位相シフト膜2は所定の透過率で露光光を透過する機能を有しており、位相シフト膜2だけでは所定値の光学濃度を確保することは困難である。このため、マスクブランク100を製造する段階で位相シフト膜2の上に、不足する光学濃度を確保するために遮光膜3を積層しておくことが必要とされる。このようなマスクブランク100の構成とすることで、位相シフトマスク200(図2参照)を製造する途上で、位相シフト効果を使用する領域(基本的に転写パターン形成領域)の遮光膜3を除去すれば、外周領域に所定値の光学濃度が確保された位相シフトマスク200を製造することができる。
遮光膜3は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれも適用可能である。また、単層構造の遮光膜3および2層以上の積層構造の遮光膜3の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。
図1に記載の形態におけるマスクブランク100は、位相シフト膜2の上に、他の膜を介さずに遮光膜3を積層した構成としている。この構成の場合の遮光膜3は、位相シフト膜2にパターンを形成する際に用いられるエッチングガスに対して十分なエッチング選択性を有する材料を適用する必要がある。この場合の遮光膜3は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。遮光膜3を形成するクロムを含有する材料としては、クロム金属のほか、クロムに酸素、窒素、炭素、ホウ素およびフッ素から選ばれる一以上の元素を含有する材料が挙げられる。
また、位相シフト膜2を形成する材料との間でドライエッチングに対するエッチング選択性が得られるのであれば、ケイ素を含有する材料で遮光膜3を形成してもよい。特に、遷移金属とケイ素を含有する材料は遮光性能が高く、遮光膜3の厚さを薄くすることが可能である。遮光膜3に含有させる遷移金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、パラジウム(Pd)等のいずれか1つの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。遮光膜3に含有させる遷移金属元素以外の金属元素としては、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、スズ(Sn)およびガリウム(Ga)などが挙げられる。
一方、遮光膜3として、位相シフト膜2側からクロムを含有する材料からなる層と遷移金属とケイ素を含有する材料からなる層がこの順に積層した構造を備えてもよい。この場合におけるクロムを含有する材料および遷移金属とケイ素を含有する材料の具体的な事項については、上記の遮光膜3の場合と同様である。
[ハードマスク膜]
ハードマスク膜4は、遮光膜3の表面に接して設けられている。ハードマスク膜4は、遮光膜3をエッチングする際に用いられるエッチングガスに対してエッチング耐性を有する材料で形成された膜である。このハードマスク膜4は、遮光膜3にパターンを形成するためのドライエッチングが終わるまでの間、エッチングマスクとして機能することができるだけの膜の厚さがあれば十分であり、基本的に光学特性の制限を受けない。このため、ハードマスク膜4の厚さは遮光膜3の厚さに比べて大幅に薄くすることができる。
このハードマスク膜4は、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合は、ケイ素を含有する材料で形成されることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、有機系材料のレジスト膜との密着性が低い傾向があるため、ハードマスク膜4の表面をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施し、表面の密着性を向上させることが好ましい。なお、この場合のハードマスク膜4は、SiO、SiN、SiON等で形成されるとより好ましい。
また、遮光膜3がクロムを含有する材料で形成されている場合におけるハードマスク膜4の材料として、前記のほか、タンタルを含有する材料も適用可能である。この場合におけるタンタルを含有する材料としては、タンタル金属のほか、タンタルに窒素、酸素、ホウ素および炭素から選ばれる一以上の元素を含有させた材料などが挙げられる。たとえば、Ta、TaN、TaO、TaON、TaBN、TaBO、TaBON、TaCN、TaCO、TaCON、TaBCN、TaBOCN、などが挙げられる。また、ハードマスク膜4は、遮光膜3がケイ素を含有する材料で形成されている場合、前記のクロムを含有する材料で形成されることが好ましい。
[レジスト膜]
マスクブランク100において、ハードマスク膜4の表面に接して、有機系材料のレジスト膜が100nm以下の膜厚で形成されていることが好ましい。DRAM hp32nm世代に対応する微細パターンの場合、遮光膜3に形成すべき遮光パターンに、線幅が40nmのSRAF(Sub-Resolution Assist Feature)が設けられることがある。しかし、この場合でも上述のようにハードマスク膜4を設けたことによってレジスト膜の膜厚を抑えることができ、これによってこのレジスト膜で構成されたレジストパターンの断面アスペクト比を1:2.5と低くすることができる。したがって、レジスト膜の現像時、リンス時等にレジストパターンが倒壊や脱離することを抑制することができる。なお、レジスト膜は、膜厚が80nm以下であることがより好ましい。レジスト膜は、電子線描画露光用のレジストであると好ましく、さらにそのレジストが化学増幅型であるとより好ましい。
[マスクブランクの製造手順]
以上の構成のマスクブランク100は、次のような手順で製造する。先ず、ガラス基板1を用意する。このガラス基板1は、端面及び主表面が所定の表面粗さ(例えば、一辺が1μmの四角形の内側領域内において自乗平均平方根粗さRqが0.2nm以下)に研磨され、その後、所定の洗浄処理及び乾燥処理を施されたものである。
次に、このガラス基板1上に、スパッタリング法によって位相シフト膜2を成膜する。位相シフト膜2を成膜した後には、所定の加熱温度でのアニール処理を適宜行う。次に、位相シフト膜2上に、スパッタリング法によって上記の遮光膜3を成膜する。そして、遮光膜3上にスパッタリング法によって、上記のハードマスク膜4を成膜する。スパッタリング法による成膜においては、上記の各膜を構成する材料(膜が複数層で構成される場合には各層を構成する材料)を所定の組成比で含有するスパッタリングターゲット及びスパッタリングガスを用い、さらに必要に応じて上述の貴ガスと反応性ガスとの混合ガスをスパッタリングガスとして用いた成膜を行う。この後、このマスクブランク100がレジスト膜を有するものである場合には、必要に応じてハードマスク膜4の表面に対してHMDS(Hexamethyldisilazane)処理を施す。そして、HMDS処理がされたハードマスク膜4の表面上に、スピンコート法等の塗布法によってレジスト膜を形成し、マスクブランク100を完成させる。
〈位相シフトマスクの製造方法〉
図2に、上記実施形態のマスクブランク100から製造される本発明の実施形態に係る位相シフトマスク200とその製造工程を示す。図2(g)に示されているように、位相シフトマスク200は、マスクブランク100の位相シフト膜2に転写パターンである位相シフトパターン2aが形成され、遮光膜3に遮光帯を含むパターンを有する遮光パターン3bが形成されていることを特徴としている。マスクブランク100にハードマスク膜4が設けられている構成の場合、この位相シフトマスク200の作成途上でハードマスク膜4は除去される。
本発明の実施形態に係る位相シフトマスク200の製造方法は、前記のマスクブランク100を用いるものであり、ドライエッチングにより遮光膜3に転写パターンを形成する工程と、転写パターンを有する遮光膜3をマスクとするドライエッチングにより位相シフト膜2に転写パターンを形成する工程と、遮光パターンを有するレジスト膜(レジストパターン6b)をマスクとするドライエッチングにより遮光膜3に遮光パターン3bを形成する工程とを備えることを特徴としている。以下、図2に示す製造工程にしたがって、本発明の位相シフトマスク200の製造方法を説明する。なお、ここでは、遮光膜3の上にハードマスク膜4が積層したマスクブランク100を用いた位相シフトマスク200の製造方法について説明する。また、遮光膜3にはクロムを含有する材料を適用し、ハードマスク膜4にはケイ素を含有する材料を適用した場合について述べる。
まず、マスクブランク100におけるハードマスク膜4に接して、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。次に、レジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき転写パターン(位相シフトパターン)である第1のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、位相シフトパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(図2(a)参照)。続いて、第1のレジストパターン5aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(図2(b)参照)。
次に、レジストパターン5aを除去してから、ハードマスクパターン4aをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成する(図2(c)参照)。続いて、遮光パターン3aをマスクとして、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつハードマスクパターン4aを除去した(図2(d)参照)。
次に、マスクブランク100上にレジスト膜をスピン塗布法によって形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜3に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを電子線で露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した(図2(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスを用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成した(図2(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(図2(g)参照)。
前記のドライエッチングで使用される塩素系ガスとしては、Clが含まれていれば特に制限はない。たとえば、Cl、CHCl、CHCl、CCl、BCl等があげられる。また、前記のドライエッチングで使用されるフッ素系ガスとしては、Fが含まれていれば特に制限はない。たとえば、CHF、CF、C、C、SF等があげられる。特に、Cを含まないフッ素系ガスは、ガラス基板に対するエッチングレートが比較的低いため、ガラス基板へのダメージをより小さくすることができる。
図2に示す製造方法によって製造された位相シフトマスク200は、ガラス基板1上に、転写パターンを有する位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)を備えた位相シフトマスクである。
また、この位相シフトマスク200は、転写パターンを有する位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)を備えるガラス基板1に対してArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件で照射し、前記光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、式(1)の関係を満たすものである。
式(1):ΔT<−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
このように位相シフトマスク200を製造することにより、ガラス基板1上に転写パターンを有する位相シフト膜2(位相シフトパターン2a)に対してArF露光光が照射されたとき、位相シフト膜2の発熱によって生じるガラス基板1の温度上昇の傾きが小さくなるような位相シフトマスク200を提供することができる。
さらに、本発明の半導体デバイスの製造方法は、前記の位相シフトマスク200を用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴としている。
本発明の位相シフトマスク200やマスクブランク100は、上記の通りの効果を有する。このため、ArFエキシマレーザーを露光光とする露光装置のマスクステージに位相シフトマスク200をセットし、半導体デバイス上のレジスト膜の各チップ領域に転写パターンを繰り返しの露光転写する際、露光転写の繰り返し回数の増加数に対する位相シフトパターン2aの平面視の位置の移動量の変化幅を低減することができる。これにより、ガラス基板の熱膨張に起因する位相シフトパターン2aの移動量をある程度見込んで、位相シフトパターン2aを形成した位相シフトマスク200を製造することができる。このような位相シフトマスク200を用いて、半導体デバイス上のレジスト膜の各チップ領域に転写パターンを繰り返しの露光転写することで、レジスト膜に高精度でパターンを形成することができる。さらに、このレジスト膜のパターンをマスクとして、その下層膜をドライエッチングして回路パターンを形成した場合、パターンシフト量に起因する配線短絡や断線のない高精度の回路パターンを形成することができる。
以下、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明するための、実施例1〜2および比較例1〜2について述べる。
〈実施例1〉
[マスクブランクの製造]
主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mmの合成石英ガラスからなるガラス基板1を準備した。このガラス基板1は、端面及び主表面を所定の表面粗さに研磨され、その後、所定の洗浄処理および乾燥処理を施されたものである。このガラス基板1の光学特性を測定したところ、屈折率nが1.556、消衰係数kが0.00であった。
次に、枚葉式RFスパッタ装置内にガラス基板1を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、ガラス基板1の表面に接してケイ素および窒素からなる位相シフト膜2の下層(SiNx膜 Si:N=68原子%:32原子%)を11nmの厚さで形成した。続いて、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、下層上に、ケイ素および窒素からなる位相シフト膜2の上層(Si膜 Si:N=43原子%:57原子%)を57nmの厚さで形成した。以上の手順により、ガラス基板1の表面に接して下層と上層が積層した位相シフト膜2を68nmの厚さで形成した。なお、下層および上層の組成は、X線光電子分光法(XPS)による測定によって得られた結果である。以下、他の膜に関しても同様である。
次に、この位相シフト膜2が形成されたガラス基板1に対して、位相シフト膜2の膜応力を低減するための加熱処理を行った。位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、加熱処理後の位相シフト膜2の波長193nmの光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が6.1%、位相差が177.31度(deg)であった。この位相シフト膜2の下層および上層の各光学特性を測定したところ、下層は屈折率nが1.70、消衰係数kが2.07であり、上層は、屈折率nが2.61、消衰係数kが0.36であった。位相シフト膜2の波長193nmの光に対する裏面反射率(ガラス基板1側の反射率)は37.0%であった。
次に、枚葉式DCスパッタ装置内に位相シフト膜2が形成されたガラス基板1を設置し、クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、位相シフト膜2上にCrOCNからなる遮光膜3(CrOCN膜 Cr:O:C:N=55原子%:22原子%:12原子%:11原子%)を46nmの厚さで形成した。この位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における波長193nmの光に対する光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。また、別のガラス基板1を準備し、同じ成膜条件で遮光膜3のみを成膜し、その遮光膜3の光学特性を測定したところ、屈折率nが1.95、消衰係数kが1.53であった。
次に、枚葉式RFスパッタ装置内に、位相シフト膜2および遮光膜3が積層されたガラス基板1を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとし、RFスパッタリングにより遮光膜3の上に、ケイ素および酸素からなるハードマスク膜4を5nmの厚さで形成した。以上の手順により、ガラス基板1上に、2層構造の位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4が積層した構造を備えるマスクブランク100を製造した。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例1のマスクブランク100を用い、以下の手順で実施例1の位相シフトマスク200を作製した。最初に、ハードマスク膜4の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜4の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚80nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜2に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理および洗浄処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターン5aを形成した(図2(a)参照)。
次に、第1のレジストパターン5aをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜4に第1のパターン(ハードマスクパターン4a)を形成した(図2(b)参照)。その後、第1のレジストパターン5aを除去した。
続いて、ハードマスクパターン4aをマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=10:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第1のパターン(遮光パターン3a)を形成した(図2(c)参照)。次に、遮光パターン3aをマスクとし、フッ素系ガス(SF+He)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜2に第1のパターン(位相シフトパターン2a)を形成し、かつ同時にハードマスクパターン4aを除去した(図2(d)参照)。
次に、遮光パターン3a上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターン6bを形成した(図2(e)参照)。続いて、第2のレジストパターン6bをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜3に第2のパターン(遮光パターン3b)を形成した(図2(f)参照)。さらに、第2のレジストパターン6bを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、位相シフトマスク200を得た(図2(g)参照)。
作製した実施例1のハーフトーン型位相シフトマスク200における遮光パターン3bが積層していない位相シフトパターン2aの領域に対し、ArFエキシマレーザー光の照射試験を行った。図4は、ArFエキシマレーザー光の照射試験装置の模式図である。同図に示されるように、照射試験装置20は、ArFエキシマレーザーの照射する光源21と、略直方体形状のチャンバ22と、該チャンバ22の両側面に設けられたクォーツ製の窓23、24と、チャンバ22内にガスを導入するガス入口26と、チャンバ22内からガスを排出するガス出口27とを備えている。これらのガス入口26、ガス出口27を介して、所定の湿度(略40%)を有するエアが、チャンバ22内に導入・排出される。
チャンバ22内には、試料保持部(不図示)が設けられている。試料保持部は、サーボモータ等の移動機構(不図示)によって位置の調整が可能である。この移動機構によって、試料保持部に保持された位相シフトマスク200における遮光パターンが積層していない位相シフトパターン2aの領域(以下、単に位相シフトパターンという)に、光源21からの照射光28が照射されるように、位置が調整されている。
この照射試験装置20の試料保持部に、作製した実施例1の位相シフトマスク200をセットした。そして、この位相シフトマスク200における位相シフトパターン2aに、ArFエキシマレーザー光の照射試験を行った。このArFエキシマレーザー光の照射条件は、2mJ/pulseかつ500pulse/secとし、ArFエキシマレーザー光を所定時間、中断せずに連続照射を行った。また、ArFエキシマレーザー光の照射エリアは、0.32cm×0.6cm(0.192cm)とした。
次に、実施例1の位相シフトマスク200について、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間とガラス基板1の温度上昇との関係を求めた。ガラス基板1の温度を照射開始から所定時間毎に測定し、図3に示すように各測定値が含まれる曲線を算出した。その結果、実施例1において、ArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板1の温度変化ΔTとの式(A)は、以下のようになった。
式(A):ΔT=−3.125×10−5×t+2.500×10−2×t+0.513
実施例1の位相シフトマスク200は、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板1の温度変化ΔTとの上記式(1)を満たすものであった。
次に、測定した実施例1のガラス基板1の温度の測定値から、式(X)を用いて位相シフトパターン2aの移動量ΔL(ガラス基板の膨張量と等価。)を算出した。式(X)において、αは、ガラス基板1の線膨張係数であり、ここではα=5.1×10−7 deg−1 とした。また、Lはガラス基板の膨張前の長さであり、ここでは位相シフトマスク200に対するArFエキシマレーザー光の照射エリアを考慮してL=6.8mmとした。
式(X):ΔL=α×L×ΔT
その結果、実施例1の位相シフトマスク200における、ArFエキシマレーザー光の照射開始から60sec経過時での位相シフトパターンの2aの移動量ΔLは6.5nmであり、180sec経過時での移動量ΔLは13.6nmであった。また、180sec経過時での移動量ΔLと60sec経過時での移動量ΔLの間での移動量ΔLの差分値は7.1nmであった。この移動量ΔLの差分値は、後述のほぼ同じ透過率の位相シフト膜である比較例1の位相シフトパターンの移動量ΔLの差分値に比べて十分に低減されている。
以上のことから、この実施例1のマスクブランクから製造された位相シフトマスク200は、露光装置にセットして、半導体ウェハ上のレジスト膜に対してArFエキシマレーザーの露光光による繰り返しの露光転写を通常よりも厳しい条件で行っても、各チップ領域間での熱膨張に起因するパターン移動量の変化幅を低減することができる。半導体ウェハ上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができる。
〈実施例2〉
[マスクブランクの製造]
実施例2のマスクブランク100は、位相シフト膜2以外については、実施例1と同様の手順で製造した。この実施例2の位相シフト膜2は、ガラス基板1側から順に、第1層、第2層、第3層、第4層の4つの層で構成している。具体的には、ガラス基板1の表面に接して位相シフト膜2の第1層(SiN膜)を2.7nmの膜厚で形成し、第2層(Si膜)を16.0nmの膜厚で形成した。次に、アルゴン(Ar)、酸素(O)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、ケイ素、窒素および酸素からなる位相シフト膜2の第3層(SiON膜 Si:O:N=40原子%:34原子%:26原子%)を16.0nmの厚さで形成した。さらに、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、第3層上に、ケイ素および窒素からなる位相シフト膜2の第4層(Si膜 Si:N=43原子%:57原子%)を34.0nmの厚さで形成した。
次に、この位相シフト膜2が形成されたガラス基板1に対して、位相シフト膜2の膜応力を低減するための加熱処理を行った。位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、加熱処理後の位相シフト膜2の波長193nmの光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が18.3%、位相差が177.0度(deg)であった。さらに、この位相シフト膜2の第1層、第2層、第3層および第4層の各光学特性を測定したところ、第1層は屈折率nが1.65、消衰係数kが1.86であり、第2層は屈折率nが2.61、消衰係数kが0.34であり、第3層は屈折率nが2.06、消衰係数kが0.07であり、第4層は屈折率nが2.61、消衰係数kが0.34であった。位相シフト膜2の波長193nmの光に対する裏面反射率(ガラス基板1側の反射率)は32.1%であった。
以上の手順により、ガラス基板1上に、SiN膜の第1層と、Si膜の第2層と、SiON膜の第3層と、Si膜の第4層とからなる位相シフト膜2、遮光膜3およびハードマスク膜4が積層した構造を備える実施例2のマスクブランク100を製造した。この位相シフト膜2と遮光膜3の積層構造における波長193nmの光に対する光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この実施例2のマスクブランク100を用い、実施例1と同様の手順で、実施例2の位相シフトマスク200を作製した。
そして、実施例1と同様に、図4に示した照射試験装置の試料保持部に、作製した実施例2の位相シフトマスク200をセットした。さらに、この実施例2の位相シフトマスク200における位相シフトパターン2aに、実施例1と同じ照射条件でArFエキシマレーザー光の照射試験を行った。
次に、実施例1と同様に、実施例2の位相シフトマスク200について、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間とガラス基板1の温度上昇との関係を求めた。その結果、実施例2において、ArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板1の温度変化ΔTとの式(B)は、以下のようになった。
式(B):ΔT=−2.813×10−5×t+2.233×10−2×t+0.451
実施例2の位相シフトマスク200は、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板1の温度変化ΔTとの上記式(1)を満たすものであった。
次に、実施例1と同様に、測定した実施例2のガラス基板1の温度の測定値から、式(X)を用いて位相シフトパターン2aの移動量ΔL(ガラス基板の膨張量と等価。)を算出した。その結果、実施例2の位相シフトマスク200における、ArFエキシマレーザー光の照射開始から60sec経過時での位相シフトパターンの2aの移動量ΔLは5.7nmであり、180sec経過時での移動量ΔLは12.1nmであった。また、180sec経過時での移動量ΔLと60sec経過時での移動量ΔLの間での移動量ΔLの差分値は6.4nmであった。この移動量ΔLの差分値は、後述のほぼ同じ透過率の位相シフト膜である比較例2の位相シフトパターンの移動量ΔLの差分値に比べて十分に低減されている。
以上のことから、この実施例2のマスクブランクから製造された位相シフトマスク200は、露光装置にセットして、半導体ウェハ上のレジスト膜に対してArFエキシマレーザーの露光光による繰り返しの露光転写を通常よりも厳しい条件で行っても、各チップ領域間での熱膨張に起因するパターン移動量の変化幅を低減することができる。そして、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことができるといえる。
〈比較例1〉
[マスクブランクの製造]
この比較例1のマスクブランクは、位相シフト膜以外については、実施例1と同様の手順で製造した。この比較例1の位相シフト膜は、単層構造に変更している。具体的には、枚葉式RFスパッタ装置内にガラス基板を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、ガラス基板の表面に接してケイ素および窒素からなる位相シフト膜の層(SiNx膜 Si:N=58原子%:42原子%)を61.3nmの厚さで形成した。
また、実施例1と同様の処理条件で、この比較例1の位相シフト膜に対しても加熱処理を行った。位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、その位相シフト膜の波長193nmの光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が6.1%、位相差が176.9度(deg)であった。さらに、この位相シフト膜の光学特性を測定したところ、屈折率nが2.60、消衰係数kが0.65であった。位相シフト膜の波長193nmの光に対する裏面反射率(ガラス基板側の反射率)は17.0%であった。
以上の手順により、ガラス基板上に、位相シフト膜、遮光膜およびハードマスク膜が積層した構造を備える比較例1のマスクブランクを製造した。この位相シフト膜と遮光膜の積層構造における波長193nmの光に対する光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この比較例1のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例1の位相シフトマスクを作製した。そして、実施例1と同様に、図4に示した照射試験装置の試料保持部に、作製した比較例1の位相シフトマスクをセットした。さらに、この比較例1の位相シフトマスクにおける位相シフトパターンに、実施例1と同じ照射条件でArFエキシマレーザー光の照射試験を行った。
次に、実施例1と同様に、比較例1の位相シフトマスクについて、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間とガラス基板の温度上昇との関係を求めた。その結果、比較例1において、ArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板の温度変化ΔTとの式(C)は、以下のようになった。
式(C):ΔT=−4.236×10−5×t+3.383×10−2×t+0.693
比較例1の位相シフトマスクは、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板の温度変化ΔTとの上記式(1)を満たすものではなかった。
次に、実施例1と同様に、測定した比較例1のガラス基板の温度の測定値から、式(X)を用いて位相シフトパターンの移動量ΔL(ガラス基板の膨張量と等価。)を算出した。その結果、比較例1の位相シフトマスクにおける、ArFエキシマレーザー光の照射開始から60sec経過時での位相シフトパターンの移動量ΔLは8.7nmであり、180sec経過時での移動量ΔLは18.4nmであった。また、180sec経過時での移動量ΔLと60sec経過時での移動量ΔLの間での移動量ΔLの差分値は9.7nmであった。この移動量ΔLの差分値は、前述のほぼ同じ透過率の位相シフト膜である実施例1の位相シフトパターンの移動量ΔLの差分値に比べて大分大きい。
以上のことから、この比較例1のマスクブランクから製造された位相シフトマスクは、露光装置にセットして、半導体ウェハ上のレジスト膜に対してArFエキシマレーザーの露光光による繰り返しの露光転写を行った場合、各チップ領域間での熱膨張に起因するパターン移動量の変化幅が大きくなってしまうといえる。そして、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことは困難といえる。
〈比較例2〉
[マスクブランクの製造]
この比較例2のマスクブランクは、位相シフト膜以外については、実施例1と同様の手順で製造した。この比較例2の位相シフト膜は、単層構造に変更している。具体的には、枚葉式RFスパッタ装置内にガラス基板を設置し、ケイ素(Si)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)および窒素(N)の混合ガスをスパッタリングガスとする反応性スパッタリング(RFスパッタリング)により、ガラス基板の表面に接してケイ素および窒素からなる位相シフト膜の層(Si膜 Si:N=43原子%:57原子%)を61.0nmの厚さで形成した。
また、実施例1と同様の処理条件で、この比較例2の位相シフト膜に対しても加熱処理を行った。位相シフト量測定装置(レーザーテック社製 MPM193)を用いて、その位相シフト膜の波長193nmの光に対する透過率と位相差を測定したところ、透過率が18.6%、位相差が178.5度(deg)であった。さらに、この位相シフト膜の光学特性を測定したところ、屈折率nが2.61、消衰係数kが0.36であった。位相シフト膜の波長193nmの光に対する裏面反射率(ガラス基板側の反射率)は16.6%であった。
以上の手順により、ガラス基板上に、位相シフト膜、遮光膜およびハードマスク膜が積層した構造を備える比較例2のマスクブランクを製造した。この位相シフト膜と遮光膜の積層構造における波長193nmの光に対する光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。
[位相シフトマスクの製造と評価]
次に、この比較例2のマスクブランクを用い、実施例1と同様の手順で、比較例2の位相シフトマスクを作製した。そして、実施例1と同様に、図4に示した照射試験装置の試料保持部に、作製した比較例2の位相シフトマスクをセットした。さらに、この比較例2の位相シフトマスクにおける位相シフトパターンに、実施例1と同じ照射条件でArFエキシマレーザー光の照射試験を行った。
次に、実施例1と同様に、比較例2における位相シフトマスクについて、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間とガラス基板の温度上昇との関係を求めた。その結果、比較例2において、ArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板の温度変化ΔTとの式(D)は、以下のようになった。
式(D):ΔT=−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
比較例2の位相シフトマスクは、上述した照射条件におけるArFエキシマレーザー光の照射時間tと、ArFエキシマレーザー光の照射前後のガラス基板の温度変化ΔTとの上記式(1)を満たすものではなかった。
次に、実施例1と同様に、測定した比較例2のガラス基板の温度の測定値から、式(X)を用いて位相シフトパターンの移動量ΔL(ガラス基板の膨張量と等価。)を算出した。その結果、比較例2の位相シフトマスクにおける、ArFエキシマレーザー光の照射開始から60sec経過時での位相シフトパターンの移動量ΔLは7.4nmであり、180sec経過時での移動量ΔLは15.6nmであった。また、180sec経過時での移動量ΔLと60sec経過時での移動量ΔLの間での移動量ΔLの差分値は8.2nmであった。この移動量ΔLの差分値は、前述のほぼ同じ透過率の位相シフト膜である実施例2の位相シフトパターンの移動量ΔLの差分値に比べて大分大きい。
以上のことから、この比較例2のマスクブランクから製造された位相シフトマスクは、露光装置にセットして、半導体ウェハ上のレジスト膜に対してArFエキシマレーザーの露光光による繰り返しの露光転写を行った場合、各チップ領域間での熱膨張に起因するパターン移動量の変化幅が大きくなってしまうといえる。そして、半導体デバイス上のレジスト膜に対して高精度で露光転写を行うことは困難といえる。
1 ガラス基板
2 位相シフト膜
2a 位相シフトパターン
3 遮光膜
3a,3b 遮光パターン
4 ハードマスク膜
4a ハードマスクパターン
5a レジストパターン
6b レジストパターン
20 照射試験装置
21 光源
22 チャンバ
23 窓
24 窓
26 ガス入口
27 ガス出口
28 照射光
29 透過光
100 マスクブランク
200 位相シフトマスク

Claims (15)

  1. ガラス基板上に、パターン形成用の薄膜を備えるマスクブランクであって、
    前記薄膜を備えるガラス基板に対してArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件で照射し、前記光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、式(1)の関係を満たす
    ことを特徴とするマスクブランク。
    式(1):ΔT<−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
  2. 前記薄膜は、前記光の透過率が20%以下であることを特徴とする請求項1記載のマスクブランク。
  3. 前記ガラス基板の線膨張係数は、5.0×10−7以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のマスクブランク。
  4. 前記薄膜は、金属およびケイ素の少なくともいずれかを含有する材料からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク。
  5. 前記ガラス基板は、合成石英からなることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク。
  6. 前記薄膜は、前記光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記薄膜を透過した前記光に対して前記薄膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有する位相シフト膜であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク。
  7. 前記光に対する前記薄膜の前記ガラス基板側の反射率は、20%以上であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク。
  8. ガラス基板上に、転写パターンを有する薄膜を備える転写用マスクであって、
    前記薄膜を備えるガラス基板に対してArFエキシマレーザーの光を2mJ/pulseかつ500pulse/secの照射条件で照射し、前記光の照射時間tと、前記光の照射前後の前記ガラス基板の温度変化ΔTとを測定したとき、式(1)の関係を満たす
    ことを特徴とする転写用マスク。
    式(1):ΔT<−3.576×10−5×t+2.867×10−2×t+0.589
  9. 前記薄膜は、前記光の透過率が20%以下であることを特徴とする請求項8記載の転写用マスク。
  10. 前記ガラス基板の線膨張係数は、5.0×10−7以上であることを特徴とする請求項8または9に記載の転写用マスク。
  11. 前記薄膜は、金属およびケイ素の少なくともいずれかを含有する材料からなることを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の転写用マスク。
  12. 前記ガラス基板は、合成石英からなることを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の転写用マスク。
  13. 前記薄膜は、前記光を1%以上の透過率で透過させる機能と、前記薄膜を透過した前記光に対して前記薄膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した前記光との間で150度以上210度以下の位相差を生じさせる機能とを有する位相シフト膜であることを特徴とする請求項8から12のいずれかに記載の転写用マスク。
  14. 前記光に対する前記薄膜の前記ガラス基板側の反射率は、20%以上であることを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載の転写用マスク。
  15. 請求項8から14のいずれかに記載の転写用マスクに対し、ArFエキシマレーザーの露光光を照射して半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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