JP2021054012A - プリント配線基板用積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】生産性に優れ、基材と金属箔とが強固に接着され、高い周波数帯が用いられる第5世代移動通信システムに対応可能なプリント配線基板用積層体を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂を含有する基材1と、上記基材の一方の面側に位置する改質層2と、上記改質層の上記基材とは反対の面側に位置し、熱硬化性樹脂を含有する接着層3と、上記接着層の上記改質層とは反対の面側に位置する金属箔4とを有する、プリント配線基板用積層体10。【選択図】図1

Description

本開示は、プリント配線基板用積層体に関する。
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化に伴い、各種プリント配線基板の需要が伸びている。プリント配線基板には、通常、基材上に金属箔からなる導電層が積層された金属積層板が用いられる。金属積層板の導電層がパターニングされて回路が形成されることで、プリント配線基板とされる。基材としてはポリイミドを用いたフィルムが一般的に用いられている。
現在、携帯電話端末に代表される移動通信システムは、第4世代(4G)から第5世代(5G)へ移行しようとしている。第5世代移動通信システムでは、第4世代移動通信システムに比べて高い周波数帯が用いられる。周波数が高くなるに従い、高周波回路での伝送損失も大きくなることから、第5世代移動通信システム用のプリント配線基板に対して、高周帯域の周波数に対応する優れた電気特性が求められている。
基材として使用されていた従来のポリイミドを、高周波の情報信号を扱うプリント配線基板に用いると、信号の伝送損失が大きくなりやすい。そこで、近年、液晶ポリマー(LCP)、フッ素系樹脂のような低誘電の熱可塑性樹脂を含有する基材を使用することが検討されている。
なお、ゴム成形体に用いられる積層フィルムに関する技術であるが、特許文献1には、フッ素系樹脂フィルムの一方の面に接着層を有する積層フィルムであって、該接着層は、有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物を用いて、プラズマ気相化学蒸着法により前記フッ素系樹脂フィルム上に形成した蒸着膜であることを特徴とする、積層フィルムが開示されている。
特許第5895468号明細書
基材に液晶ポリマー(LCP)、フッ素系樹脂のような熱可塑性樹脂を使用する場合、基材および金属箔を熱溶着させる方法が想定される。一方、液晶ポリマー(LCP)、フッ素系樹脂のような熱可塑性樹脂は、熱溶着の際に、通常300℃以上の高温が必要となり、生産性が低くなりやすい。一方、熱溶着の温度が低すぎると、基材および金属箔の接着性が不十分となりやすい。
本開示は、上記問題に鑑みてなされた発明であり、生産性に優れ、基材と金属箔とが強固に接着され、高い周波数帯が用いられる第5世代移動通信システムに対応可能なプリント配線基板用積層体を提供することを主目的とする。
本開示においては、熱可塑性樹脂を含有する基材と、上記基材の一方の面側に位置する改質層と、上記改質層の上記基材とは反対の面側に位置し、熱硬化性樹脂を含有する接着層と、上記接着層の上記改質層とは反対の面側に位置する金属箔と、を有する、プリント配線基板用積層体を提供する。
本開示においては、生産性に優れ、基材と金属箔とが強固に接着され、高い周波数帯が用いられる第5世代移動通信システムに対応可能なプリント配線基板用積層体とすることができる、という効果を奏する。
本開示におけるプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
以下、本開示における実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示における解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
また、本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
図1は、本開示におけるプリント配線基板用積層体を例示する概略断面図である。図1に示すように、プリント配線基板用積層体10は、熱可塑性樹脂を含有する基材1と、基材1の一方の面側に位置する改質層2と、改質層2の基材1とは反対の面側に位置し、熱硬化性樹脂を含有する接着層3と、接着層3の改質層2とは反対の面側に位置する金属箔4と、を有する。
本開示によれば、基材および金属箔の間に、改質層および接着層を有することから、生産性に優れ、基材と金属箔とが強固に接着され、高い周波数帯が用いられる第5世代移動通信システムに対応可能なプリント配線基板用積層体とすることができる。
上述したように、液晶ポリマー(LCP)、フッ素系樹脂のような熱可塑性樹脂は、熱溶着の際に、通常300℃以上の高温が必要となり、生産性が低くなりやすい。本発明者らは、基材と金属箔との接着に際し、高温での熱溶着を必要としない層構造について検討したところ、熱硬化性樹脂を含有する接着層を用いることで、比較的低温(例えば200℃以下)で、生産性良く基材と金属箔とを接着し得ることを見出した。一方、接着層を用いた場合であっても、基材と金属箔との接着性には改善の余地が見られたため、接着層および基材の間に、改質層を設けた。その結果、基材と金属箔とが強固に接着されたプリント配線基板用積層体が得られることを見出した。
1.基材
本開示における基材は、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、およびポリブテン等のポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66、およびポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド樹脂、液晶ポリマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。
本開示における基材は、フッ素系樹脂や液晶ポリマーのような低誘電の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるペルフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンコポリマー(EPE)、テトラフルオロエチレンとエチレン又はプロピレンとのコポリマー(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂(PCTFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、フッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、又はフッ化ビニル系樹脂(PVF)が挙げられる。基材は、フッ素系樹脂を1種のみ含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
液晶ポリマーは、光学的異方性を有する溶融相を形成しうるポリマーである。液晶ポリマーとしては、例えば、ポリアリレート系液晶ポリマー、全芳香族ポリエステル、半剛直性芳香族ポリエステル、ポリエステルアミドを挙げることができる。また、液晶ポリマーとして、(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物、(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸、(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸、(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸を原料とする共重合体が挙げられる。
また、良好な耐熱性が得られる点で、液晶ポリマーは、高分子主鎖が芳香族基からなり、これらの芳香族基がエステル結合(−C(O)O−または−OC(O)−)、アミド結合(−C(O)NH−または−NHC(O)−)とで連結されてなる、液晶ポリエステルまたは液晶ポリエステルアミドであることが好ましい。なお、上記芳香族基とは、単環芳香族基、縮合環芳香族基に加え、単環芳香族基または縮合環芳香族基が直接結合するか、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜6のアルキレン基、スルホニル基およびカルボニル基等の連結基を介して連結してなる基も含む概念である。基材は、液晶ポリマーを1種のみ含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
基材の厚さは、例えば10μm以上であり、20μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。一方、基材の厚さは、例えば300μm以下であり、200μm以下であってもよい。
基材の誘電率εは、例えば3.0以下であり、2.7以下であってもよく、2.4以下であってもよい。誘電率は、基材に対して、誘電率測定装置を用い、測定温度23℃、測定周波数10GHzにおける誘電率を求めた。基材の誘電正接tan δは、例えば0.01以下であり、0.006以下であってもよく、0.002以下であってもよい。誘電正接は、誘電率と同様の方法により測定することができる。
2.改質層
本開示における改質層は、上記基材の一方の面側に位置する。改質層は、基材と接触していることが好ましい。本開示においては、改質層が、炭素、珪素および酸素を含有する蒸着膜、または、基材の表面処理層であることが好ましい。
(1)炭素、珪素および酸素を含有する蒸着膜
本開示における改質層は、炭素、珪素および酸素を含有する蒸着膜であることが好ましい。さらに、上記蒸着膜は、シロキサン結合によって基材と接着していることが好ましい。上記蒸着膜は、有機珪素化合物を含む蒸着用ガス組成物(以下、「原料ガス」とも記載する)を用いた気相化学蒸着法(CVD法)により形成された層であることが好ましい。
蒸着膜は、主に炭素、珪素、および酸素を含む緻密で可撓性に富む連続層であることが好ましい。このような蒸着膜は、蒸着材料としてSi原子に直接結合したメチル基を含む有機珪素化合物モノマーを使用し、これよりなる蒸着用モノマーガス、および場合により酸素供給ガス、を含む蒸着用ガス組成物を用いて、CVD法により成膜することができる。また、CVD法には、熱CVD法や光CVD等のいくつかの方法があるが、低温成膜が可能で、基材の着色を生じにくいプラズマCVD法を採用することが好ましい。
蒸着膜の厚さは、例えば5nm以上であり、10nm以上であってもよい。一方、蒸着膜の厚さは、例えば100nm以下であり、50nm以下であってもよい。蒸着膜の厚さは、例えば、(株)リガク社製蛍光X線分析装置(機種名:RIX2000型)を用いて測定することができる。
蒸着膜を成膜するためには、例えば、被蒸着体(基材)を真空槽内に導入する。そして、真空槽内に、有機珪素化合物からなる蒸着用モノマーガスと、場合により酸素供給ガスとを含む蒸着用ガス組成物を一定割合で導入し、CVD法により表面上に蒸着膜を形成する。
有機珪素化合物としては、例えば、シリコン(Si)原子に直接結合したCHを含む有機珪素化合物が挙げられ、具体例として、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、オクタメチリシクロテトラシロキサン、メチルシラン、ジメチルシラン、トエリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシランが挙げられる。
他の有機珪素化合物としては、有機化合物であって常温で適当な蒸気圧を持ち、CVD法(特にプラズマCVD法)を実施することが可能な材料であればどのような材料でもよい。したがって、例えばC基等の炭素数が3以上の官能基をもつ材料を用いて、CH基およびC基のいずれかを少なくとも含む蒸着膜を、CVD法(特にプラズマCVD法)により製造することも理論的には可能である。
一方、酸素供給ガスとしては、例えば酸素ガスが用いられる。酸素ガスの代わりに、オゾンガスまたは笑気ガス(NOガス)を使用することも可能であるが、成膜効率やコストの面から、酸素ガスを用いることが最も好ましい。
また、蒸着用ガス組成物中に、蒸着用モノマーガスを効率よく真空槽中に導入するためのガス(キャリアガス)や、プラズマを発生させたりプラズマを増強させたりする目的のガスを増強して導入することも、必要に応じて行ってもよい。
例えばプラズマCVD法として最も一般的な方法は、平行平板電極間に13.56MHzの電界を印加する方式である。すなわち、真空槽内に蒸着用ガス組成物を導入することで一定圧力に維持し、真空槽内に設置した平板電極と該平板電極と平行に対向して設置したアース電極との間に13.56MHzのRF交流電圧を印加する。
例えば、300Wの電力を投入することで、グロー放電プラズマを発生させ、そのプラズマ流を利用することで蒸着用ガス組成物を化学的に反応させることにより、蒸着膜を形成可能である。被蒸着フィルム(基材)は、通常、アース電極の表面に設置するが、RF電圧を印加する平板電極側に設置してもよい。
本開示においては、13.56MHzのRF交流電圧を印加する代わりに、より低い周波数(40kHzや50kHz等)を印加したり、より高い周波数(2.45GHz等)を印加したりすることも可能である。また、直流電圧を印加してもよい。平板電極の代わりに、ガスの吹き出しによりプラズマ流を発生させるようなホローカソード電極を利用したり、外部コイルから誘導プラズマを発生させたりすることも可能である。磁界を用いたり、ECR共鳴現象(電場と磁場とを適切に調節することで、プラズマ中の電子をサイクロトロン共鳴させる現象)を用いたりして、プラズマ密度を高めたりすることも可能である。
プラズマCVD法の成膜条件には、投入電力、ガス流量、成膜圧力、電極間距離、成膜時間等の様々なパラメータがあり、所望の接触角を示す蒸着膜が得られるように、これらのパラメータを適宜に調製することができる。投入電力は、例えば20W以上であり、50W以上であってもよい。一方、投入電力は、例えば1000W以下であり、800W以下であってもよい。
さらに、本開示においては、CVD法の後に、プラズマ処理を行うことが好ましい。プラズマ処理としては、電子ビームによる処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理等があげられる。生産性の観点からコロナ処理、大気圧プラズマ処理、低圧プラズマ処理等が好ましく、特に、プラズマ雰囲気の制御のしやすさから、低圧下での酸素プラズマ処理が好ましい。
蒸着膜の表面における水の接触角は、例えば1°以上である。一方、上記水の接触角は、例えば35°以下であり、30°以下であってもよく、25°以下であってもよく、20°以下であってもよい。水の接触角は、接触角試験機を用いて20℃、50%RHの条件下で測定した値である。
(2)基材の表面処理層
本開示における改質層は、基材の表面処理層であってもよい。表面処理層は、基材に対して、表面処理を行うことにより得られる層である。表面処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理、フレーム処理が挙げられる。
表面処理層の厚さは、例えば1nm以上であり、5nm以上であってもよい。一方、表面処理層の厚さは、例えば50nm以下であり、30nm以下であってもよい。表面処理層の厚さは、例えば、(株)リガク社製蛍光X線分析装置(機種名:RIX2000型)を用いて測定することができる。
表面処理層を形成するためには、例えば、基材の脱ガス処理を行い、その後、基材表面に対する真空放電処理を行う。脱ガス処理および真空放電処理は、真空状態を保持しながら、一連の工程として連続的に行うことが好ましい。
基材の脱ガス処理としては、例えば、基材を酸素濃度0.01%以下の不活性ガス気流中で1.0×10−1Pa以下の真空度に保持する処理が挙げられる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガス;窒素ガスが挙げられる。不活性ガスの酸素濃度は、0.001%以下であってもよい。不活性ガス気流中での真空度(ガス圧)は、5.0×10−2Pa以下であってもよく、1.0×10−2Pa以下であってもよい。一方、真空度は、例えば1.0×10−4Pa以上である。
脱ガス処理は、基材を加熱した状態で行ってもよい。加熱温度は、例えば30℃以上であり、40℃以上であってもよく、50℃以上であってもよい。一方、加熱温度は、例えば100℃以下であり、90℃以下であってもよく、80℃以下であってもよい。脱ガス処理の処理時間は、例えば20秒間以上であり、30秒間以上であってもよく、40秒間以上であってもよい。一方、脱ガス処理の処理時間は、例えば90秒間以下であり、80秒間以下であってもよく、70秒間以下であってもよい。
真空放電処理は、基材の表面を清浄化するとともに、改質する工程である。真空放電処理としては、例えば、コロナ放電処理およびグロー放電処理が挙げられるが、特に低圧下でのグロー放電処理が好ましい。
真空放電処理は、脱ガス処理を行った基材の表面に対して、酸素濃度0.01%以下の不活性ガス気流中で1.0×10−3Pa以上1.0×10−2Pa以下の真空度を保持しながら、直流電界を印加すると同時に、0.2W/cm以上の印加パワーで10秒間以上真空放電処理を行う処理であることが好ましい。不活性ガスの酸素濃度は、0.001%以下であってもよい。不活性ガス気流中での真空度(ガス圧)は、例えば1.0×10−3Pa以上であり、3.0×10−3Pa以上であってもよく、5.0×10−3Pa以上であってもよい。一方、不活性ガス気流中での真空度(ガス圧)は、例えば1.0×10−2Pa以下であり、9.0×10−3Pa以下であってもよい。
真空放電処理では、通常、交流の電界を印加する。交流の周波数は、数十kHz以上、数百MHz以下であることが好ましい。交流の電界の印加パワーは、例えば0.2W/cm以上であり、0.3W/cm以上であってもよく、0.4W/cm以上であってもよい。一方、交流の電界の印加パワーは、例えば1.0W/cm以下であり、0.9W/cm以下であってもよく、0.8W/cm以下であってもよい。
真空放電処理の処理時間は、例えば10秒間以上であり、15秒間以上であってもよく、20秒間以上であってもよい。一方、真空放電処理の処理時間は、例えば100秒間以下であり、70秒間以下であってもよく、50秒間以下であってもよい。
本開示においては、基材の表面を改質するために、真空放電処理と同時に、直流の電界を印加してもよい。直流の電界は、カチオン化した不活性ガス原子を、基材の表面に対して強制的に誘引する方向に印加する。直流の電界を基材に印加するに、基材の処理面とは反対側に設置された電極にマイナスを、それと対向して置かれた電極に相対的にプラスとなるように印加することが好ましい。
直流の電界の電界強度は、例えば10V/cm以上であり、30V/cm以上であってもよく、50V/cm以上であってもよく、70V/cm以上であってもよい。一方、直流の電界の電界強度は、例えば200V/cm以下であり、150V/cm以下であってもよい。
3.接着層
本開示における接着層は、上記改質層の上記基材とは反対の面側に位置し、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂は、接着剤として機能し、通常、硬化した状態である。また、接着層は、改質層と接触していることが好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ケトン樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、炭化水素樹脂(芳香族系および脂肪族系)、ゴム系樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。また、熱硬化性樹脂の硬化温度は、例えば250℃以下であり、200℃以下であってもよい。
接着層の誘電率εは、例えば3.0以下であり、2.7以下であってもよく、2.4以下であってもよい。誘電率は、接着層(硬化後)に対して、誘電率測定装置を用い、測定温度23℃、測定周波数10GHzにおける誘電率を求めた。接着層の誘電正接tan δは、例えば0.01以下であり、0.006以下であってもよく、0.002以下であってもよい。誘電正接は、誘電率と同様の方法により測定することができる。
接着層の厚さは、例えば1μm以上であり、5μm以上であってもよい。一方、接着層の厚さは、例えば300μm以下であり、200μm以下であってもよい。
4.金属箔
本開示における金属箔は、上記接着層の上記改質層とは反対の面側に位置する。金属箔は、接着層と接触していることが好ましい。金属箔の金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ステンレス、チタン、ニッケルが挙げられる。これらの中でも加工性やコストの観点から、銅(銅箔)が好ましい。さらに、銅箔は、圧延銅箔であってもよく、電解銅箔であってもよい。
金属箔の厚さは、例えば1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、金属箔の厚さは、例えば200μm以下であり、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
金属箔は、表面が平滑な平滑金属箔であることが好ましい。渦電流による表皮効果で金属箔の表面に電流が流れるが、金属箔の表面の粗度が大きいと経路が長くなり損失が大きくなりやすい。そのため、金属箔の表面が平滑であることで上記損失を抑制できる。特に、第5世代移動通信システムに用いられるプリント配線基板の場合、導体損失を低減することが重要になるため、金属箔は平滑金属箔であることが好ましい。
金属箔の表面粗度(Ra)は、特に限定されないが、例えば10μm以下であり、5μm以下であってもよい。一方、金属箔の表面粗度(Ra)は、通常、500nm以上である。金属箔の表面粗度(Ra)は、JIS B 0601:2013に準拠して測定した値である。
5.プリント配線基板用積層体
本開示におけるプリント配線基板用積層体は、上述した基材、改質層、接着層および金属箔を有する。
基材と金属箔との層間接着強度は、例えば4N/cm以上であり、7N/cm以上であってもよく、10N/cm以上であってもよい。層間接着強度は、JIS K 6854−2に準拠して、積層体から10mm幅に切り出した試験片を用いて、23℃、30%RHの条件下で、引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、型番:STB−1225S)を用いて、引張速度50mm/分、剥離角180°で引張って測定した値である。
本開示におけるプリント配線基板用積層体の用途は、特に限定されないが、高周帯域の周波数に対応する優れた電気特性を有するため、特に、第5世代移動通信システムに用いられるプリント配線基板を作製するための積層体として好適に使用される。
6.プリント配線基板用積層体の製造方法
本開示におけるプリント配線基板用積層体の製造方法は、特に限定されないが、基材の一方の面側に改質層を形成する改質層形成工程と、改質層および金属箔を、熱硬化性樹脂を含有する接着層を介して接着する接着工程と、を有する製造方法が挙げられる。
(1)改質層形成工程
改質層形成工程は、基材の一方の面側に改質層を形成する工程である。改質層の形成方法は、上述した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
(2)接着工程
接着工程は、改質層および金属箔を、熱硬化性樹脂を含有する接着層を介して接着する工程である。これにより、基材、改質層、接着層および金属箔が、厚さ方向において、この順に積層された積層体が得られる。
接着層の形成方法としては、例えば、未硬化の熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を塗工し、その後、未硬化の熱硬化性樹脂を熱により硬化させる方法が挙げられる。樹脂組成物は、基材上に形成された改質層に塗工してもよく、金属箔に塗工してもよく、その両者に塗工してもよい。塗工方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、熱硬化性樹脂を硬化させる際の加熱温度は、例えば250℃以下であり、200℃以下であってもよい。
(3)その他の工程
本開示においては、金属箔の表面を平滑化する平滑化工程を有していてもよい。渦電流による表皮効果で金属箔の表面に電流が流れるが、金属箔の表面の粗度が大きいと経路が長くなり損失が大きくなりやすい。そのため、金属箔の表面を平滑化することで上記損失を抑制できる。
金属箔の表面を平滑化する方法としては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング法のエッチングを用いたハーフエッチング法が挙げられる。エッチング条件については、金属箔の種類に応じて適宜設定される。また、平滑化工程は、接着工程の前に行ってもよく、接着工程の後に行ってもよい。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
1 … 基材
2 … 改質層
3 … 接着層
4 … 金属箔
10 … プリント配線基板用積層体

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂を含有する基材と、
    前記基材の一方の面側に位置する改質層と、
    前記改質層の前記基材とは反対の面側に位置し、熱硬化性樹脂を含有する接着層と、
    前記接着層の前記改質層とは反対の面側に位置する金属箔と、を有する、プリント配線基板用積層体。
  2. 前記改質層が、炭素、珪素および酸素を含有する蒸着膜である、請求項1に記載のプリント配線基板用積層体。
  3. 前記改質層が、前記基材の表面処理層である、請求項1に記載のプリント配線基板用積層体。
  4. 前記金属箔が、銅箔である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のプリント配線基板用積層体。
  5. 前記接着層は、誘電率が3.0以下であり、誘電正接が0.01以下である、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載のプリント配線基板用積層体。
  6. 前記熱可塑性樹脂が、フッ素系樹脂および液晶ポリマーの少なくとも一種を含む、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載のプリント配線基板用積層体。
  7. 前記基材は、誘電率が3.0以下であり、誘電正接が0.01以下である、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載のプリント配線基板用積層体。
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