JP2021050196A - 除菌剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】大腸菌等を除菌する除菌剤を提供する。【解決手段】水を含んでおり、噴霧用レバーを有する容器に収容される除菌剤において、柑橘類の種子エキスと、前記除菌剤のpHを8以上10.5以下の弱アルカリ性とし、かつ、弱アルカリ性の状態を所定期間に亘って維持する重曹からなる弱アルカリ長期維持剤とを含有し、アルコールを含有していない。【選択図】図1

Description

本発明は、除菌剤に関する。
従来より、例えばノロウイルスによる感染性胃腸炎や食中毒を防止するため、各種ウイルス不活性化剤が用いられている。例えば特許文献1に開示されているように、グレープフルーツ種子抽出物とアルカリ電解水を含有するとともに、その全体のpHを11.5〜14とした抗ノロウイルス組成物が知られている。
特許第5388325号公報
ところで、本発明者は、pHが所定以上の弱アルカリで柑橘類種子エキスを配合することにより、ノンアルコールであってもノロウイルスに対して十分な効力を発揮できるウイルス不活性化剤が得られることを見出した。
ウイルス不活性化剤をpH8以上の弱アルカリとするにあたり、特許文献1のアルカリ電解水を用いる方法が考えられる。アルカリ電解水は、NaCl水溶液を電解したものなので、本質的にはNaOH水溶液であり、強塩基水溶液である。このため、特許文献1の抗ノロウイルス組成物を長期保存していると、空気中の二酸化炭素が組成物中に溶け込んでHイオンが流入することによってOHイオンが減少し、pHが酸性側に変化する傾向がある。
ここで、水溶液のpHが強アルカリ領域であれば、水溶液がOHイオンを豊富に含むため、水溶液に二酸化炭素が多少溶け込んだとしても、水溶液のpHが大きく変動することはないと考えられるが、弱アルカリ領域ではOHイオン濃度が低いため、アルカリ電解水で弱アルカリにpH調整した場合は、二酸化炭素の溶け込みによってOHイオンが減少したときにpHが大きく変動するおそれがある。このため、アルカリ電解水を用いた弱アルカリのウイルス不活性化剤は、経時的安定性が低く、所期の性能を長期間に亘って維持することが難しい場合がある。
水溶液のpHを安定化させる一般的な方法として緩衝液とすることが考えられるが、ウイルス不活性化剤として最適な緩衝液を見出すことは必ずしも容易ではなく、より簡便な方法でpHを安定化させたウイルス不活性化剤が求められている。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、緩衝液を用いることなく、簡便な方法で弱アルカリを長期間に亘って維持可能にし、特にノロウイルス等のノンエンベロープウイルスに対しても高い効力を持ったウイルス不活性化剤を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、水を含んでおり、噴霧用レバーを有する容器に収容される除菌剤において、柑橘類の種子エキスと、前記除菌剤のpHを8以上10.5以下の弱アルカリ性とし、かつ、弱アルカリ性の状態を所定期間に亘って維持する重曹からなる弱アルカリ長期維持剤とを含有し、アルコールを含有していない構成とした。
また、柑橘類の種子エキスと、強アルカリと弱酸の塩からなるpH調整剤と、水と、を少なくとも含有する構成もある。
この構成によれば、柑橘類の種子エキスによる高い除菌効果だけでなく、柑橘類の種子エキス及び強アルカリと弱酸の塩によるアルカリの相乗的な作用により、ノロウイルス等に対する高いウイルス除去効力が得られる。
ここで、塩のpHはその塩を構成する酸・塩基の組み合わせによって決定される。例えば、塩化ナトリウムのような強酸(塩酸)と強塩基(水酸化ナトリウム)の塩については、水に溶けたとき、ナトリウムイオン(Na)と塩化物イオン(Cl)に電離し、それ以上の反応は起こらない。
他方、酢酸ナトリウムのような弱酸(酢酸)と強塩基(水酸化ナトリウム)の塩についてはまず水中でほとんど完全に電離し、酢酸イオン(CHC00)とナトリウムイオン(Na)になる。このときナトリウムイオンは水中において、ほぼ完全に電離しており酸や塩基としての働きは持たない。一方、酢酸イオンと酢酸の間には水中で以下の式1に示す平衡が存在しており、酢酸イオンは塩基としての振る舞いを示す。
CHCOO+HO←→CHCOOH+OH 式1
このようにして水溶液中で水酸化物イオンを生じる平衡が存在することにより、弱酸と強塩基の塩については水に溶かすと塩基性となる。そして、このときのpHは平衡定数に従った一定の値で落ち着く。
このような平衡の存在から、弱酸と強塩基の塩の水溶液は、外部から二酸化炭素のような酸の供給源が液中にやってきた場合、同pHの強塩基(水酸化ナトリウムなど)の水溶液と比較して比較的pHが下がりづらくなっている。
酸が水溶液中に入ってくる場合、水素イオン(H)が水溶液中に流入することになる。通常の強塩基水溶液の場合は、水素イオンが増加すると水酸化物イオンが減少し、pH低下が起こるが、上述したような弱酸と強塩基の塩については、消費された水酸化物イオンが、平衡の存在により溶液中の弱酸イオンが水と結びつくことで供給され、pHの低下が穏やかとなる。
特に、このpHの安定性はpHと効力とが密接に結びついた本剤については非常に有用である。
また、pH8以上に調整されていることを特徴とする。
この構成によれば、大腸菌等の菌類だけでなく、エンベロープという脂質性の膜を持たないノンエンベロープウイルス等に対する効力も高めることができる。
また、前記pH調整剤が、電離した際に炭酸イオンを生じる構成もある。
また、前記pH調整剤が、電離した際に炭酸水素イオンを生じる構成もある。
また、前記pH調整剤が、両性電解質である構成もある。両性電解質としては、例えば炭酸水素ナトリウム(重曹)等を挙げることができ、両性電解質を用いることでpHがより一層安定する。
また、pH11.0以下に調整されている構成もある。
この構成によれば、強アルカリを示さなくなるので、取り扱い時の安全性が高くなる。また、ウイルス不活性化剤は、pH10.5以下に調整されていてもよい。また、ウイルス不活性化剤は、pH8.5以上に調整されていてもよい。また、ウイルス不活性化剤は、pH10.0以上に調整されていてもよい。pH8.5以上またはpH10.0以上とすることで、例えばノンエンベロープウイルスに対する接触時間が短時間であっても、高いウイルス除去効力を得ることができる。
また、アルコールを含まない構成もある。
本発明によれば、99.99%以上の除菌効果を得ることができる。
pH調整剤の濃度とpHとの関係を示すグラフである。 抗ウイルス試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
本発明の実施形態に係るウイルス不活性化剤は、柑橘類の種子エキスとしてのグレープフルーツ種子抽出物と、強アルカリと弱酸の塩からなるpH調整剤と、水とを少なくとも含有している。ウイルス不活性化剤は、pH調整剤によりpH8以上に調整されているものである。グレープフルーツ種子抽出物の水溶液にpH調整剤が含有されたウイルス不活性化剤ということもできる。グレープフルーツ種子抽出物の水溶液は、グレープフルーツ種子抽出物をイオン交換水に溶解させたものである。この水溶液中のグレープフルーツ種子抽出物の濃度は、0.1質量%〜5.0質量%の範囲で設定することができる。また、グレープフルーツ種子抽出物の濃度の下限値は、0.15質量%とするのが好ましく、より好ましいのは0.2質量%である。また、グレープフルーツ種子抽出物の濃度の上限値は、3.0質量%とするのが好ましく、より好ましいのは、0.8質量%である。
グレープフルーツ種子抽出物は、グレープフルーツの果実の種子から抽出精製されたものであって、一般に食品添加物として認められたものである。グレープフルーツ種子抽出物をグレープフルーツから得る場合には、収穫したグレープフルーツから種子を取り出し、取り出した種子を粉砕し、その粉砕したものから抽出することができる。このとき、未乾燥状態の粉砕物からグレープフルーツ種子抽出物を抽出してもよいし、凍結乾燥させた状態の粉砕物からグレープフルーツ種子抽出物を抽出してもよい。
グレープフルーツ種子抽出物を抽出する際には、水やアルコール等の溶液を用いることができる。抽出用の溶媒として用いるアルコールは、例えばエタノール等を挙げることができる。グレープフルーツ種子抽出物を抽出する際、種子を例えば30℃以上に加温してもよい。グレープフルーツ種子抽出物には、脂肪酸やフラボノイド等が含有されている。グレープフルーツ種子抽出物は、食品グレードのものが好ましいが、必ずしも食品グレードで無くてもよい。
柑橘類の種子エキスは、グレープフルーツ種子抽出物以外のものであってもよく、レモン等の柑橘類の種子から同様にして抽出された種子エキスを用いることもできる。
pH調整剤は、電離した際に炭酸イオンを生じるものや、電離した際に炭酸水素イオンを生じるものを使用することができる。また、pH調整剤は、両性電解質を用いることもでき、pH安定化のため、炭酸水素ナトリウム(重曹)等の両性電解質が好ましい。pH調整剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムを使用することができる。
pH調整剤の量によってウイルス不活性化剤のpHを調整することができる。この実施形態では、ウイルス不活性化剤のpHが8以上になるように、pH調整剤の含有量を設定している。pH調整剤の含有量は、ウイルス不活性化剤のpHが8.5以上になるように設定するのが好ましく、さらに好ましいのはウイルス不活性化剤のpHが10.0以上になるように設定することである。pH調整剤の含有量を決定する際には、ウイルス不活性化剤のpHを測定しながらpH調整剤を添加していき、所望のpHになった時点のpH調整剤の含有量を把握しておけばよい。
また、ウイルス不活性化剤のpHの上限値は、例えば11.5とすることができ、pH11.5以下となるようにpH調整剤の含有量を設定するのが好ましい。より好ましいのは、pH11.0である。これにより、ウイルス不活性化剤が強アルカリを示さなくなるので、取り扱い時の安全性が高くなる。
pH調整剤として強アルカリと弱酸の塩を用いることにより、緩衝液にすることなく、アルカリ電解水でpH調整した場合と比べてpHの経時的安定性を高めることができる。強アルカリと弱酸の塩を用いた場合、緩衝液のように一定のpHに安定するわけではないが、弱酸は水中でOHイオンを供給する平衡が生じるため、空気中の二酸化炭素が溶け込んでもpHが変動しにくい。
すなわち、塩化ナトリウムのような強酸(塩酸)と強塩基(水酸化ナトリウム)の塩については、水に溶けたとき、ナトリウムイオン(Na)と塩化物イオン(Cl)に電離し、それ以上の反応は起こらないが、酢酸ナトリウムのような弱酸(酢酸)と強塩基(水酸化ナトリウム)の塩についてはまず水中でほとんど完全に電離し、酢酸イオン(CHC00)とナトリウムイオン(Na)になる。このときナトリウムイオンは水中において、ほぼ完全に電離しており酸や塩基としての働きは持たない。一方、酢酸イオンと酢酸の間には水中で上記式1に示す平衡が存在しており、酢酸イオンは塩基としての振る舞いを示す。
このようにして水溶液中で水酸化物イオンを生じる平衡が存在することにより、弱酸と強塩基の塩については水に溶かすと塩基性となる。そして、このときのpHは平衡定数に従った一定の値で落ち着く。
このような平衡の存在から、弱酸と強塩基の塩の水溶液は、外部から二酸化炭素のような酸の供給源が水溶液中に流入してきた場合、同pHの強塩基(水酸化ナトリウムなど)の水溶液と比較して比較的pHが下がりづらくなっている。
酸が水溶液中に入ってくる場合、水素イオン(H)が水溶液中に流入することになる。通常の強塩基水溶液の場合は、水素イオンが増加すると水酸化物イオンが減少し、pH低下が起こるが、上述したような弱酸と強塩基の塩については、消費された水酸化物イオンが、平衡の存在により溶液中の弱酸イオンが水と結びつくことで供給され、pHの低下が穏やかとなる。
空気中の二酸化炭素がウイルス不活性化剤に溶け込むスピードには限度があるので、ウイルス不活性化剤の通常の保管環境や使用環境であれば、pHの低下は極めて緩やかなものになる。
特に、pH8付近においては、アルカリ電解水で調整しようとすると、OHの濃度が低すぎて安定しないが、本実施形態に係るpH調整剤によれば、pHの低下は極めて緩やかになるので、効果がより一層顕著なものになる。
pH調整剤を、電離によって炭酸イオンまたは炭酸水素イオンを生じる塩、即ち炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムとすることで、水溶液中で電離したときに、水溶液中に炭酸イオンまたは炭酸水素イオンが大量に存在することになるので、二酸化炭素が溶け込んで炭酸イオンないし水酸化イオンが発生する方向に平衡が移動しにくい。結果として二酸化炭素が溶け込みにくくなり、二酸化炭素の影響を受け難くなるので好ましい。
図1は、炭酸水素ナトリウムをpH調整剤として用いてpH調整する場合と、アルカリ電解水でpH調整する場合とをpH8付近で示したグラフである。炭酸水素ナトリウムをpH調整剤として用いた場合、pH8付近、特にpH8.3を取る付近では、炭酸水素ナトリウム濃度を変更してもpHは殆ど変化しない。すなわち、pH8.3付近を取る濃度範囲が広いので、pH8.3付近で安定する。
一方、水酸化ナトリウム水溶液に二酸化炭素が溶け込んだときにOHイオンが消費されてしまうと、炭酸水素ナトリウムの場合のようなOHイオンの供給がないのでpHがすぐに変動してしまう。したがって、水酸化ナトリウム水溶液をこのような低濃度に調整することは極めて困難である。
また、電解水はNaCl水溶液を電解したものなので、アルカリ側の電解水はNaOH水溶液と同じ状態になっている。従って、アルカリ電解水はNaOH換算で考えることができて、上記と同じ理屈が成り立ち、pH8.3付近では極めて不安定である。
ウイルス不活性化剤は、噴霧用レバーを有する容器に収容して各種物品等に噴霧して使用することができる。噴霧用レバーを有する容器としては、従来から用いられている各種容器を挙げることができ、どのような容器であってもよい。また、手押し式ポンプや電動ポンプを備えた噴霧装置によってウイルス不活性化剤を噴霧させることもできる。また、ウイルス不活性化剤は、物品に塗布したり、滴下させることによって使用することもできる。ウイルス不活性化剤は、例えば、まな板や包丁等の調理器具、調理台、食器、ふきん、タオルなどに直接噴霧して使用することもできる。ウイルス不活性化剤は、衣類、床、壁、便器、洗面台、自動車の室内に噴霧して使用することもできる。ウイルス不活性化剤を手に噴霧してもよい。
また、ウイルス不活性化剤には、アルコールが含有されていない。すなわち、ウイルス不活性化剤は、アルコールによる除菌効果や抗ウイルス効果はなく、pH値及びグレープフルーツ種子抽出物によって除菌効果及び抗ウイルス効果を発揮する。
(pH安定性試験)
本発明の実施例1に係るウイルス不活性化剤が含有する柑橘類の種子エキスは、例えば、グレープフルーツ種子抽出物(グレープフルーツ種子エキス)である。pH調整剤は、炭酸水素ナトリウムであり、濃度は0.21%である。残部はイオン交換水である。実施例1の初期pHは8.3付近に調整しておく。また、比較例1としてアルカリ電解水をpH調整剤として用いたものを用意し、この比較例の初期pHは10.0とした。
pH安定性試験方法については以下に示す。
1.各試料をガラスバイアルに入れる。
2.試料が入ったガラスバイアルを60℃恒温庫の中で保存する。
3.恒温庫の中ガラスバイアルを一定期間ごとに取り出し、pH測定及び外観確認を行う。
60℃恒温庫を使用している理由は、いわゆる加速試験結果を得るためである。
本発明の実施例1の場合、3週間経過後のpHは8.0程度であり、初期pHに対する差は殆ど見られなかった。一方、アルカリ電解水を使用した比較例1の場合、1週間経過後のpHが9.3程度であり、3週間経過後のpHが8.2程度であり、初期pHからの低下率が極めて大きかった。以上のことから、本実施形態に係るウイルス不活性化剤の経時安定性が高いことが分かる。
(抗ウイルス試験)
次に、ウイルス不活性化剤の処理前後のウイルス感染価測定試験について説明する。本試験ではネコカリシウイルスを用いるが、このネコカリシウイルスは、構造が良く似たノロウイルスの代替として試験に用いられている。ノロウイルスは培養が難しく、感染価を簡単に評価する方法が未だ確立されていないためである。即ち一般的に、ネコカリシウイルスを用いた試験で十分な抗ウイルス性を示す剤であれば、ノロウイルスに対しても十分な抗ウイルス性を示すものと考えられている。
ウイルス感染価測定試験を行う際、まず、細胞増殖培地を用いて、細胞を細胞培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養する。細胞はCRFK細胞である。その後、この単層培養細胞に、ネコカリシウイルス(FCV)を、希釈したウイルス浮遊液を接種させ、37℃±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度:5%)内で1時間、細胞に吸着させた後に、ウイルス接種液を除いて細胞維持培地を加えて4〜7日間培養する。そして、アミドブラック染色し、細胞の生死を確認して、Reed−Muench法により50%組織培養感染価量(TCID50/ml)を算出するものであり、この値が低いほど感染力は低い。
また、一般的に、ネコカリシウイルス等のノンエンベロープウイルスは、インフルエンザウイルス等のエンベロープウイルスに比べて、各種消毒剤・抗菌剤に対する抵抗力が強い。従って、ノンエンベロープウイルスに効力がある剤であれば、エンベロープウイルスに対してはより短時間で効力を発揮する可能性が高い。
供試剤は表1に示すとおりである。残部はイオン交換水である。
Figure 2021050196
ウイルス感染価測定試験結果を図2に示す。グラフ中、「30秒」は、供試剤とウイルスとの接触時間が30秒であることを示し、また、「120秒」は、供試剤とウイルスとの接触時間が120秒であることを示している。「30秒」の場合、短時間接触試験と呼ぶことができ、「120秒」の場合、長時間接触試験と呼ぶことができる。なお、グラフの値は感染価TCID50/mlのlog値(logTCID50/ml)である。コントロールとしては減菌水を用いた。供試剤のlogTCID50/mlがコントロールに比べて低いほど、抗ウイルス性が高いと言える。
図2に示すように、pH7.0の比較例2は、「30秒」及び「120秒」の両方で、コントロールからのlogTCID50/mlの低下が0.5以下であった。一方、pH8.0の実施例2は、「120秒」の場合におけるlogTCID50/mlのコントロールからの低下が、2.5という極めて大きい値を示している。実施例2は、実施例1の液剤を、グレープフルーツ種子抽出物0.36%水溶液で希釈し、pHを8.0としたものである。
また、pH8.5の実施例3、pH9.0の実施例4、pH10.0の実施例5では、それぞれ「120秒」の場合に、コントロールからのlogTCID50/mlの低下が3.0以上であり、十分な抗ウイルス性を持っていた。尚、実施例3のpH調整剤は炭酸ナトリウムである。
また、pH8.5の実施例3、pH9.0の実施例4、pH10.0の実施例5では、それぞれ「120秒」の場合にlogTCID50/mlが3.0以上であり、十分な抗ウイルス性を持っていた。尚、実施例3のpH調整剤は炭酸ナトリウムである。
さらに、pH8.5の実施例3、pH9.0の実施例4、pH10.0の実施例5では、それぞれ「30秒」の場合に、コントロールからのlogTCID50/mlの低下が1.5以上であり、接触時間が短時間であっても十分な抗ウイルス性を持っていた。特に、pH10.0の実施例5では、「30秒」の場合にコントロールからのlogTCID50/mlの低下が3.0以上であり、接触時間が短時間であっても極めて高い抗ウイルス性を持っていた。また、図示しないが、pH10.5、pH11.0の場合も実施例5と同程度の高い抗ウイルス性を持っている。
尚、pH10の炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム水溶液で、グレープフルーツ種子抽出物を含まない製剤の場合、コントロールに比べてlogTCID50/mlが低下しておらず、抗ウイルス効果は認められなかった。また図示しないが、pH3でグレープフルーツ種子抽出物を0.18質量%含有している製剤の場合、「120秒」のときにコントロールからのlogTCID50/mlの低下が0.3程度、pH3でグレープフルーツ種子抽出物を0.36質量%含有している製剤の場合、「120秒」のときにコントロールからのlogTCID50の低下が0.5程度、pH3でグレープフルーツ種子抽出物を0.54質量%含有している製剤の場合、「120秒」のときにコントロールからのlogTCID50/mlの低下が1.0程度であった。また、pH10の炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム水溶液で、グレープフルーツ種子抽出物を含まない製剤の場合、−0.5であり、抗ウイルス効果が低かった。
また、インフルエンザウイルス(A/Udorn/72(H3N2))を用いた試験の場合、細胞をMDCK細胞として細胞維持培地にトリプシンを添加すればよい。実施例1〜5の液剤は、インフルエンザウイルスに対しても、ネコカリシウイルスと同等な抗ウイルス性を発揮した。
このように、本実施例のウイルス不活性化剤は、インフルエンザウイルス等のエンベロープウイルスのみならず、ネコカリシウイルス等のノンエンベロープウイルスに対しても十分な効力を発揮する。またネコカリシウイルスに対して十分な抗ウイルス性を示したので、本実施形態のウイルス不活性化剤は、十分な抗ノロウイルス性を有する抗ノロウイルス剤であると言うことができる。
(抗菌試験)
次に、抗菌試験について説明する。抗菌試験を行う際には、まず、10cfu/mlの大腸菌菌液0.1mlを供試剤10mlに加え、10cfu/mlとする。このとき、コントロールとして供試剤の代わりに生理食塩水10mlを使用したものも用意する。液液接触にて10秒間経過後、1mlを抜き出してSCDLP液体培地9mlに入れ、不活化させる。その後、段階希釈を行い、200μlをSCDLP寒天培地に播種する。コントロール、及び各供試剤についてコロニー数をカウントし除菌率を測定する。供試剤のコロニー数/コントロールのコロニー数の式より除菌率を計算する。供試剤としては、実施例1〜5、比較例1、2を用意した。抗菌試験結果は、実施例1〜5、比較例1、2の全てで99.99%以上であった。
(汚染性)
次に、汚染性について説明する。汚染性については、供試剤を例えば黒い対象物に噴霧し、完全に乾燥した後、目視にて粉残りが見られたか否かによって判定することができる。粉残りが見られた場合には、汚染性有りと判定することができ、粉残りが見られなかった場合には、汚染性無しと判定することができる。汚染性については、実施例1〜5、比較例1、2の全てで汚染性無しであった。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係るウイルス不活性化剤は、柑橘類の種子エキスと、強アルカリと弱酸の塩からなるpH調整剤と、水とを少なくとも含有しているので、緩衝液を用いることなく、簡便な方法で弱アルカリを長期間に亘って維持することができ、特にノロウイルス等のノンエンベロープウイルスに対しても高い効力を経時的に安定して得ることができる。
特に、pH調整剤として炭酸水素ナトリウムを使用する場合には、ウイルス不活性化剤のpHを8〜8.5の間で調整する場合の安定性を高くすることができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明に係るウイルス不活性化剤は、例えば、調理器具等に噴霧して使用することができる。

Claims (1)

  1. 水を含んでおり、噴霧用レバーを有する容器に収容される除菌剤において、
    柑橘類の種子エキスと、
    前記除菌剤のpHを8以上10.5以下の弱アルカリ性とし、かつ、弱アルカリ性の状態を所定期間に亘って維持する重曹からなる弱アルカリ長期維持剤とを含有し、
    アルコールを含有していないことを特徴とする除菌剤。
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