以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。また、以下では、図1〜図3に示すように、互いに直交する、前後方向、左右方向、及び上下方向を規定して説明する。図1に示すように、プリンタ1(記録装置)は、キャリッジ2、キャリッジ移動機構18、インクジェットヘッド3(記録ヘッド)、2つの用紙搬送ローラ4、エンコーダ5及び制御装置100(制御部:図4参照)などを備えている。キャリッジ移動機構18は、2本のガイドレール11,12、2つのプーリ13,14、ベルト15及びキャリッジモータ16によって構成されており、左右方向を走査方向としてキャリッジ2を往復移動させる。キャリッジ2は、左右方向に延びた2本のガイドレール11、12に支持されている。2本のガイドレールは、前後方向に互いに間隔をあけて配置されている。
ガイドレール12の上面の、左右方向における両端部には、プーリ13、14が設けられている。プーリ13、14には、ゴム材料などからなる無端状のベルト15が巻き掛けられている。キャリッジ2は、ベルト15のプーリ13とプーリ14との間に位置する部分に取り付けられている。また、右側のプーリ13には、キャリッジモータ16が接続されている。そして、キャリッジモータ16を正転及び逆転させると、プーリ13、14が回転することによってベルト15が走行し、キャリッジ2が走査方向(左右方向)に往復移動する。このとき、左側のプーリ14は、ベルト15の走行に伴い回転する。
インクジェットヘッド3は、キャリッジ2に搭載されており、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動する。また、インクジェットヘッド3の下面にはインクを吐出するための複数のノズル10が形成されている。2つの用紙搬送ローラ4は、前後方向におけるインクジェットヘッド3の両側に配置されている。2つの用紙搬送ローラ4は、搬送モータ17(図4参照)に駆動され、用紙Pを前方に搬送する。
そして、プリンタ1は、キャリッジ2の走査方向への1回の移動(パスともいう)の間にインクジェットヘッド3の複数のノズル10からインクを吐出させるインク吐出動作と、用紙搬送ローラ4によって用紙Pを前方に所定量搬送する搬送動作とを交互に行うことで、用紙Pに画像を記録する。即ち、プリンタ1は、いわゆる、シリアルタイプのインクジェットプリンタである。
また、本実施形態のプリンタでは、通常、キャリッジ2の走査方向の右方向へ移動するパスのとき(往動時)と、走査方向の左方向へ移動するパスのとき(復動時)とで、それぞれインクジェットヘッド3からインクを吐出させているが、キャリッジ2の走査方向の一方へ移動するパスのときのみインクジェットヘッド3からインクを吐出させ、キャリッジ2の走査方向の他方へ移動するパスのときにはインクジェットヘッド3からインクを吐出させなくてもよい。
エンコーダ5は、透過型のリニアエンコーダであり、図1及び図2に示すように、スケール21と、検出センサ22と、を有している。スケール21は、ガイドレール12の上面に配置され、キャリッジ2の移動可能領域にわたって走査方向に延びている。また、スケール21には、図2(a)に示すように、透過領域21aと非透過領域21bとが走査方向に沿って交互に複数配置されている。透過領域21a各々の走査方向における領域幅は全て同じ幅であり、同様に、非透過領域21b各々の走査方向における領域幅も全て同じ幅である。従って、スケール21上において、複数の透過領域21aは走査方向に沿って所定間隔(非透過領域21bの領域幅)毎に形成されており、複数の非透過領域21bは走査方向に沿って所定間隔(透過領域21aの領域幅)毎に形成されていることになる。また、透過領域21aは光を透過する領域である一方、非透過領域21bは光を透過しない領域である。
検出センサ22は、図2(b)に示すように、キャリッジ2に搭載されており、発光素子26と受光素子27とを有している。発光素子26と受光素子27とは、前後方向において、スケール21を挟むように配置されている。そして、発光素子26は、受光素子27に向けて光を照射する。受光素子27は、発光素子26から照射された光を受光する。
図2(b)に示すように、検出センサ22と対向するスケール21上の部分(発光素子26と受光素子27とで挟まれる部分)が透過領域21aである場合には、発光素子26から照射された光は、透過領域21aを透過して受光素子27により受光される。一方で、図2(c)に示すように、検出センサ22と対向するスケール21上の部分が非透過領域21bである場合には、発光素子26から照射された光は、非透過領域21bにより遮断されて、受光素子27には到達しない。このため、キャリッジ2が走査方向に移動すると、受光素子27は、発光素子26からの光を受光する状態と、発光素子26からの光を受光しない状態とを交互に繰り返す。
図3(a)に示すように、検出センサ22は、受光素子27が発光素子26からの光を受光しないときに電位がV1となり、受光素子27が発光素子26からの光を受光するときに電位がV2(V2<V1)となるパルス信号を出力する。即ち、検出センサ22から出力されるパルス信号は、電位がV1のときは検出センサ22が非透過領域21bを検出していることを表し、電位がV2のときは検出センサ22が透過領域21aを検出していることを表している。詳細は後述するが、制御装置100は、キャリッジ2の移動可能領域の左端を原点位置として、検出センサ22により検出される非透過領域21bの検出数をカウントすることで、キャリッジ2の、原点位置に対する相対位置の制御を行っている。なお、図3(a)において、パルス信号の下に示した「304」等の数値は、検出センサ22により検出された非透過領域21bの検出数を示すカウント値である。後で参照する図3(b、図5(b)〜(d)、図6(a)〜(d)それぞれにおいて、パルス信号の下に示した数値についても同様である。
図4に示すように、制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、ASIC(application specific integrated circuit)104、バス105等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。ASIC104には、インクジェットヘッド3、エンコーダ5、キャリッジモータ16、搬送モータ17等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。CPU101は、インクジェットヘッド3やキャリッジモータ16等を、ASIC104を介して制御して、用紙Pへの画像記録等の各種処理を実行する。なお、本実施形態では、制御装置100は、単一のCPUと単一のASICとの組み合わせにより各処理を実行するように構成されているが、単一のCPU、及び単一のASICの何れかにより一括して各処理を実行するように構成されていてもよく、複数のCPU及び複数のASICの何れかにより各処理を分担して実行するように構成されていてもよい。また、複数のCPUと複数のASICとの組み合わせにより各処理を実行するように構成されていてもよい。
次に、制御装置100が実行する、キャリッジ2の位置制御処理について説明する。上述したように、制御装置100は、キャリッジ2の原点位置から検出センサ22により検出される非透過領域21bの数をカウントすることで、キャリッジ2の、原点位置に対する相対位置の制御を行っている。RAM103には、キャリッジ2の原点位置からの、検出センサ22により検出される非透過領域21bの検出数を示すカウント値が記憶される。
制御装置100は、キャリッジ2が走査方向に沿って右方に移動する際に、検出センサ22により非透過領域21bが検出される毎に、RAM103に記憶されたカウント値を1だけカウントアップする。一方で、制御装置100は、キャリッジ2が走査方向に沿って左方に移動する際に、検出センサ22により非透過領域21bが検出される毎に、RAM103に記憶されたカウント値を1だけカウントダウンする。なお、本実施形態では、検出センサ22は、キャリッジ2が走査方向の右方又は左方に移動する際に、検出センサ22から出力されるパルス信号の電位が、V2からV1に立ち上がり、その後、V1からV2に立ち下がったときに、非透過領域21bを新たに検出したと判定している。変形例として、キャリッジ2が走査方向の右方に移動する際においては、検出センサ22から出力されるパルス信号の電位がV2からV1に立ち上がったときに非透過領域21bを新たに検出したと判定する。一方で、キャリッジ2が走査方向の左方に移動する際においては、検出センサ22から出力されるパルス信号の電位がV1からV2に立ち下がったときに非透過領域21bを新たに検出したと判定してもよい。
上記構成により、RAM103に記憶されたカウント値は、キャリッジ2の現在位置が原点位置から右方に離れるほど、大きな値となる。従って、制御装置100は、このRAM103に記憶されたカウント値を参照することで、キャリッジ2の、原点位置に対する現在の相対位置を認識することが可能となる。また、制御装置100は、キャリッジ2を目標位置(例えば、インクジェットヘッド3から用紙Pへの画像記録を開始する記録開始位置)まで移動させるときに、当該目標位置に対応するカウント値である目標値を求め、RAM103に記憶されたカウント値が、この目標値に達したときに、キャリッジ2が目標位置に到達したと判定している。
ところで、スケール21は、時間経過により、その一部に汚れや傷を要因とした異常が生じることがある。例えば、ノズル10からインクを吐出したときに発生するミスト、用紙搬送ローラ4による用紙Pの搬送に伴い発生する紙粉、ほこり等がスケール21に付着して汚れることがある。この汚れが付着した部分が非透過領域21bである場合には、非透過領域21bは、元々、光を遮断する領域であるため、非透過領域21b上の汚れにより、検出センサ22から出力されるパルス信号が、本来出力されるべきパルス信号と異なることはない。
一方で、汚れが付着した部分が透過領域21aである場合、発光素子26から照射された光は、透過領域21aの汚れにより遮断されて、受光素子27に到達しないことになる。その結果、透過領域21aの汚れにより、検出センサ22から出力されるパルス信号が、本来出力されるべきパルス信号と異なることになる。
例えば、図3(b)に示すように、透過領域21aの全体に汚れが付着すると、この透過領域21aに対応する区間において、検出センサ22から出力されるパルス信号の電位がV2とならずにV1となる。そのため、検出センサ22が、この透過領域21a、及び、その両側に隣接する2つの非透過領域21bと対向している間、検出センサ22から出力されるパルス信号の電位がV1に保持される。この場合には、検出センサ22から出力されるパルス信号の電位がV1とV2との間で切り替わる回数が減少するため、RAM103に記憶されたカウント値が本来の値よりも小さい値となる。
このように、透過領域21aに汚れが付着すると、RAM103に記憶されたカウント値が正確な値とならず、走査方向におけるキャリッジ2の現在位置を正確に認識することができない。加えて、キャリッジ2の記録開始位置がずれると、所望の記録結果が得られなくなる。
そこで、本実施形態においては、制御装置100は、スケール21上の汚れなどの異常が生じている異常位置を検出する異常検出処理を行う。そして、制御装置100は、位置制御処理において、キャリッジ2がスケール21上の異常位置に対応する位置を通るときに、RAM103に記憶されたカウント値を補正する。以下、異常検出処理の詳細を説明するにあたり、まず、エンコーダ5の汚れによる、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔の変異について説明する。
図5(a)に示すように、キャリッジ2の1パスでの移動領域は、キャリッジ2の移動速度に関連して、加速領域、定速領域、及び減速領域の3つに分けられる。定速領域は、キャリッジ2が所定速度で移動する領域であり、インクジェットヘッド3から用紙Pに向けてインクを吐出する画像記録時に採用される領域である。一方で、加速領域は、例えば、停止しているキャリッジ2が所定速度まで加速するときの移動領域である。また、減速領域は、例えば、所定速度で走行するキャリッジ2が減速して停止するまでの移動領域である。なお、キャリッジ2を所定速度から停止させるときの速度変化率は、キャリッジ2を停止状態から所定速度にするときの速度変化率よりも大きいため、減速領域が加速領域よりも小さくなる。また、これら加速領域、定速領域、及び減速領域それぞれの位置は、各パスでの画像を記録する用紙P上の記録範囲に応じてパス毎に異なる。
定速領域ではキャリッジ2の移動速度は一定であるため、スケール21に汚れが付着していない場合には、図5(b)に示すように、検出センサ22が透過領域21a各々に対向している期間は全て同じとなり、検出センサ22が非透過領域21b各々に対向している期間も全て同じになる。その結果として、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔は全て同じ検出間隔Dc(以下、通常検出間隔Dcと称す)となる。なお、本実施形態において、非透過領域21bの検出間隔とは、パルス信号が電位V2から電位V1に立ち上がった時点を始点とし、パルス信号が次に電位V2からV1に立ち上がる時点を終点とした時間間隔であり、検出センサ22が一つの透過領域21aと一つの非透過領域21bに対向している時間を合算した間隔である。
一方で、スケール21上の何れかの透過領域21aに汚れが付着している場合、この汚れが付着している透過領域21aに検出センサ22が対向している期間に関わる検出間隔は、通常検出間隔Dcとは異なる間隔となる。従って、制御装置100は、定速領域において、検出センサ22により検出される検出間隔が、通常検出間隔Dcと異なる場合には、透過領域21aに汚れが付着していると判定することが可能となる。
詳細には、本実施形態では、制御装置100は、定速領域(但し、後述のサンプリング領域を除く)においては、スケール21上の異常をリアルタイムで検出するために、まず、通常検出間隔Dcの予測間隔である参照間隔Drを予め求める。この参照間隔Drは、当該定速領域における、検出センサ22により検出された最初の複数回の検出間隔をサンプリングし、このサンプリングした複数の検出間隔のうち、他の検出間隔とは値が大きく異なる検出間隔を除外した平均間隔である。なお、定速領域において検出間隔をサンプリングするサンプリング領域は、用紙Pに画像を記録する記録範囲とは異なる。
次に、制御装置100は、検出センサ22により検出された検出間隔各々と、参照間隔Drとを比較し、その比較結果に基づき、スケール21上の異常の有無及び異常位置を判定する。そして、その判定結果に応じて、RAM103に記憶されたカウント値を補正する。以下、具体的に説明する。
例えば、1つの透過領域21aの全体に汚れが付着している場合(図3(b)参照)には、図5(c)に示すように、検出センサ22がこの透過領域21aと対向する期間はパルス信号の電位はV1に保持されることになるため、パルス信号の電位の切り替わりだけでは、汚れが付着した透過領域21aの両隣の2つの非透過領域21bを区別することができない。しかしながら、この場合には、電位がV1で保持される期間は汚れが付着していないときよりも長くなるため、検出センサ22により検出される非透過領域21bの検出間隔Dbは、通常検出間隔Dcよりも長くなる。具体的には、汚れが付着していない場合の上記通常検出間隔Dcは、1つの非透過領域21b及び1つの透過領域21aに対して検出センサ22が対向している期間である。一方で、汚れが付着している場合の検出間隔Dbは、2つの非透過領域21b及び1つの透過領域21aに対して検出センサ22が対向している期間よりも少なくとも長くなる。従って、1つの透過領域21aの全体に汚れが付着している場合の検出間隔Dbは、通常検出間隔Dcの予測値である参照間隔Drよりも長くなる。
このように、キャリッジ2の定速領域では、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔が参照間隔Drよりも大きい検出間隔Dbがあると、制御装置100は、検出間隔Dbの始点から参照間隔Dr経過した時点に、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bの始点があると判定することができる。
なお、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bがあると判定した場合には、図5(c)に示すように、検出間隔Dbの始点から参照間隔Dr経過した時点を、図5(d)に示すように、次の検出間隔の始点とする。この次の検出間隔の始点は、検出間隔Dbの始点から参照間隔Dr経過した時点にある非透過領域21bに対応して、本来、電位がV2からV1に立ち上がる時点である。これにより、例えば、走査方向に連続する複数の透過領域21aの全体に汚れが付着している場合には、上記次の始点から、次に電位がV2からV1に立ち上がる時点までの検出間隔についても、参照間隔Drよりも大きい検出間隔Dbとなる。従って、次の始点から参照間隔Drを経過した時点にも、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bがあると判定することができる。以降、検出間隔Dbの始点から参照間隔Dr経過した時点を、次の検出間隔の始点として、同様の処理を検出間隔が参照間隔Dr以下となるまで繰り返すことで、走査方向に連続する、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bの個数(以下、非検出数と称す)も求めることができる。以上のように、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔と参照間隔Drを比較することで、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bの位置を判定することができる。
そして、本実施形態では、キャリッジ2が走査方向に沿って右方に定速移動する際に、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔に基づき、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bがあると判定した場合には、非検出数を求め、この非検出数を補正値として、RAM103に記憶されたカウント値に対して補正値分だけ加算する。一方で、キャリッジ2が走査方向に沿って左方に定速移動する際に、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bがあると判定した場合には、RAM103に記憶されたカウント値から上記補正値分だけ減算する。
このように、キャリッジ2が定速で移動する定速領域においては、制御装置100が、検出センサ22により検出された検出間隔各々と、参照間隔Drとを比較することで、スケール21上の異常の有無及び異常位置を判定することができる。そして、その判定結果に応じて、RAM103に記憶されたカウント値を補正することで、キャリッジ2の位置をリアルタイムに正確に認識することができる。
変形例として、走査方向に連続する複数の透過領域21aの全体に汚れが付着している場合には、その検出間隔Dbは、全体に汚れが付着した透過領域21aの個数が1増える毎に、検出センサ22が一つの透過領域21aと一つの非透過領域21bに対向している期間だけ増える。従って、検出間隔Dbの参照間隔Drに対する比率により、検出センサ22により検出不可能な非透過領域21bの個数(非検出数)も求めることもできる。
加速領域では、キャリッジ2の移動速度は時間経過とともに速くなるため、スケール21に汚れが付着していない場合には、図6(a)に示すように、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔は時間経過とともに短くなる。従って、スケール21に汚れが付着していない場合でも、加速領域では検出センサ22により検出される非透過領域21bの検出間隔は全て異なることになる。
そして、加速領域において、スケール21の透過領域21aに汚れが付着していた場合、定速領域と同様に検出センサ22から出力されるパルス信号は本来のパルス信号とは異なることになる。しかしながら、上述したように、スケール21に汚れが付着していない場合でも、加速領域では検出センサ22により検出される非透過領域21bの検出間隔は全て異なるため、パルス信号からでは、スケール21上の異常の有無などを判定することは、定速領域と比べて非常に困難である。例えば、図6(b)に示すパルス信号において、「306」のカウント値に対応する検出間隔の方が、「305」のカウント値に対応する検出間隔よりも長くなっており、上記非検出数を正確に判定することが非常に困難である。
さらに本実施形態においては、制御装置100が検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔と透過領域21a及び非透過領域21bの合計幅とに基づいてキャリッジ2の移動速度を検出し、予め記憶された速度プロファイル(停止したキャリッジ2が所定速度に達するまでの速度プロファイル)に対して誤差範囲内に入っているかを判定し、誤差範囲を超えている場合は移動速度が速度プロファイルの誤差範囲内に入るようにキャリッジモータ16をフィードバック制御する。このため、加速領域において、スケール21の透過領域21aに汚れが付着していた場合、非透過領域21bの検出間隔を正確に得ることができないため、検出されたキャリッジ2の移動速度自体が正確性にかける。したがって、キャリッジ2の移動速度を所定速度とする精度が低下する。
また、減速領域ではキャリッジ2の移動速度は時間経過とともに遅くなるため、スケール21に汚れが付着していない場合には、図6(c)に示すように、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔は時間経過とともに長くなる。この減速領域についても、スケール21に汚れが付着していない場合には、検出センサ22により検出される非透過領域21bの検出間隔も全て異なることになる。そして、減速領域において、スケール21の透過領域21aに汚れが付着していた場合、図6(d)に示すように、「306」のカウント値に対応する検出間隔の方が、「307」のカウント値に対応する検出間隔よりも短くなっており、定速領域と同様に検出センサ22から出力されるパルス信号は本来のパルス信号とは異なる。そして、加速領域と同様に、減速領域では、スケール21上の異常の有無などをパルス信号から判定することは、定速領域と比べて非常に困難である。
以上のように、キャリッジ2が加速又は減速して移動する際に、検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔に基づいてスケール21の異常を検出することは、非常に困難である。そこで、制御装置100は、キャリッジ2を走査方向に定速で移動させる定速領域において、このキャリッジ2の定速移動中における検出センサ22による非透過領域21bの検出間隔に基づいてスケール21の異常を検出し、その異常情報をRAM103に記憶する異常検出処理を実行する。この異常情報には、図7に示すように、スケール21上の異常位置に対応するカウント値、異常内容、及び、そのカウント値に対して補正する補正値が含まれる。
そして、制御装置100は、異常検出処理後に、受信した記録指令に基づいて、キャリッジ2を所定速度まで加速させてから定速移動させつつインクジェットヘッド3により用紙Pに画像を記録させた後にキャリッジ2を減速させる記録動作を、キャリッジ2を走査方向に往復移動させながら複数回行う記録処理を行う際に、検出センサ22により検出される非透過領域21bの検出間隔に加えて、RAM103に記憶された異常情報に基づいて、キャリッジ2の位置を制御するように構成されている。
例えば、あるパスにおいてキャリッジ2を走査方向に沿って移動させているときに、RAM103に記憶されたカウント値が「150」に当該パスでなった場合には、図7に示すように、RAM103には当該カウント値に関連付けて、異常内容としての非検出による補正値が1である異常情報が記憶されているため、当該カウント値を「150」から補正値分の1だけ加算して「151」にする。なお、カウント値が「557」に当該パスでなった場合も、上述と同様に、補正値分の1だけ加算して「558」にする。
以上のように構成することで、定速領域において、RAM103に記憶されたスケール21の異常情報を参照してカウント値を補正することで、キャリッジ2の位置の制御を正確に実行することができる。
そこで、本実施形態では、過去の異常検出処理における検出範囲についても、RAM103に記憶している。この検出範囲は、キャリッジ2の移動可能範囲において、過去の異常検出処理の何れかにおいて非透過領域21bの検出が行われたスケール21の範囲である。従って、カウント値「21」〜「300」に対応する非透過領域21bの検出を行った異常検出処理と、カウント値「151」〜「558」に対応する非透過領域21bの検出を行った異常検出処理とを過去に実行している場合には、検出範囲はカウント値「21」〜「558」に対応するスケール上の範囲となる。
また、インクジェットヘッド3により用紙Pへの画像記録を行う記録パスにおいて、定速領域におけるキャリッジ2の移動速度が所定速度であるか否かが正確でない場合、その記録パスにおけるインク吐出タイミングにズレが生じることになり、用紙Pに記録される画像の品質が劣化する。定速領域におけるキャリッジ2の移動速度が精度よく所定速度に達するようにするためには、加速領域中に異常位置が含まれていないことが望ましい。そこで、本実施形態では、高画質モードで画像記録する際、加速領域中に異常位置が含まれないように、加速開始位置を変更する変更処理が行われる。
なお、本実施形態の異常検出処理における上記検出範囲「21」〜「558」はキャリッジ2の移動範囲において、最も広い検出範囲である。この最大検出範囲と記録可能範囲(すなわち、最大定速領域)とは同じ範囲となる。また、カウント値「0」〜「20」までは検出範囲を最大にしたときの加速領域となり、当該領域において画像記録は実行されない。つまり、カウント値が「0」のときからキャリッジ2を加速させて所定速度に達するときにはカウント値が「20」となる。そして、カウント値が「558」を超える領域が検出範囲を最大にしたときの減速領域となり、当該減速領域においても画像記録は実行されない。また、異常検出処理における検出範囲が最大になっていない場合、検出していない範囲において異常位置が存在することがある。このため、記録前に今回の記録動作で検出していない範囲を移動する場合は、事前に当該検出していない範囲について、異常検出処理を実行することが望ましい。
以下、プリンタ1の、記録指令に基づく一枚の用紙Pに対する画像記録について、図8〜図10を参照しつつ説明する。なお、図8の動作フロー開始時において、記録前異常検出処理は既に行われており、RAM103には異常情報が記憶されているものとする。また、このときの記録前異常検出処理においては、最大検出範囲について行われていることとする。
まず、制御装置100は、S1において、記録指令を受信したか否かを判定する。そして、記録指令を受信した場合(YES)、S2に進み、記録指令を受信しない場合(NO)、そのままS1を繰り返す。なお、本実施形態の記録指令は、後述の第1の記録動作と第2の記録動作とを実行させるものである。
次に、S2において、受信した記録指令に基づく画像記録が高画質モードであるか否かを判定する(モード判定処理)。本実施形態においては、通常モードの画像記録と高画質モードの画像記録とを選択可能であり、高画質モードは、画像記録の搬送動作において、用紙Pの前方への搬送量が通常モードのときの半分の搬送量となり、搬送方向の画像ドットピッチが細かい高画質となるモードである。それ以外は通常モードと同様である。なお、変形例として、高画質モードが、キャリッジ2の移動速度が通常モードのときの半分の速度となり、走査方向の画像ドットピッチが細かい高画質となるモードであってもよい。さらに高画質モードが、ノズルから吐出するインク滴を通常モードのときよりも小さくし、画像ドットの細かい高画質となるモードであってもよい。また、高画質モードが、走査方向のパスが通常モードのときよりも多い一往復以上行われることで、高画質となるモードであってもよい。そして、高画質モードである場合(S2:YES)、S3に進み、通常モードである場合(S2:NO)、S7に進む。
次に、S3において、制御装置100は、第1の記録動作の次の第2の記録動作の加速領域において検出センサ22が異常位置を通過するか否かを判定する通過判定処理を実行する。ここで通過判定処理について、図9を参照しつつ以下に説明する。本実施形態において、記録指令に基づく第1の記録動作では、図9(a)に示すように、キャリッジ2を原点位置から所定速度まで加速させた後、キャリッジ2を定速で移動させつつカウント値50〜カウント値151までインクジェットヘッド3からインクを吐出して画像を記録し、その後、キャリッジ2を減速させて停止させる。なお、カウント値150の位置は、図7に示す異常位置となっている。この後、記録指令に基づく第2の記録動作では、図9(b)に示すように、キャリッジ2を第1の記録動作で停止した位置から左方に移動させつつ所定速度まで加速させた後、キャリッジ2を定速で移動させつつカウント値140〜カウント値20までインクジェットヘッド3からインクを吐出して画像を記録し、その後、キャリッジ2を減速させて停止させる。つまり、S3において、制御装置100は、今回の記録指令に基づく、第2の記録動作の加速領域において検出センサ22が異常位置を通過すると判定する。この場合(S3:YES)、S4に進む。加速領域において検出センサ22が異常位置を通過しない場合(S3:NO)、S7に進む。
次に、S4において、制御装置100は、第2の記録動作における加速開始位置を変更可能であるか否かを判定する変更判定処理を実行する。変更判定処理においては、図9(a)に示すように、第1の記録動作の実線で示す変更前の減速領域が二点鎖線で示す変更後の減速領域となるように、第1の記録動作の減速開始位置を右方に遅らせることで、図9(b)に示すように、第2の記録動作の二点鎖線で示す変更後の加速領域において検出センサ22が異常位置を通過しないようにすることができるか否かを判定する。換言すると、制御装置100は、第2の記録動作におけるキャリッジ2の移動方向(ここでは左方向)が第1の記録動作とは逆方向(左方向)において検出センサ22が加速領域中において異常位置を通過しないように、第2の記録動作における加速開始位置を変更可能であるか否かを判定する。本実施形態においては、制御装置100は、第2の記録動作における加速開始位置を変更可能であると判定し、S5に進む。なお、変更が不可能である場合(NO)、S6に進む。
次に、S4からS5に進むと、制御装置100は、図9(a)に示すように、減速領域を実線で示す位置から右方の二点鎖線で示す位置に変更するように、第1の記録動作の減速開始位置を遅らせるように、第1の記録動作を設定する(変更処理)。これにより、第2の記録動作の加速領域が実線で示す位置から右方の二点鎖線で示す位置に変更され、加速開始位置も変更される。
ここで、上述の第1及び第2の記録動作の変形例について以下に説明する。本変形例に係る、記録指令に基づく第1の記録動作では、図10(a)に示すように、キャリッジ2を原点位置から所定速度まで加速させた後、キャリッジ2を定速で移動させつつカウント値500〜カウント値558までインクジェットヘッド3からインクを吐出して画像を記録し、その後、キャリッジ2を減速させて停止させる。なお、カウント値557の位置は、図7に示す異常位置となっている。また、本変形例に係る、記録指令に基づく第2の記録動作では、図10(b)に示すように、キャリッジ2を第1の記録動作で停止した位置から左方に移動させつつ所定速度まで加速させた後、キャリッジ2を定速で移動させつつカウント値548〜カウント値500までインクジェットヘッド3からインクを吐出して画像を記録し、その後、キャリッジ2を減速させて停止させる。このような記録指令について以下に説明する。このときも、記録前異常検出処理が既に行われており、RAM103にはカウント値557において非検出(異常内容)による異常情報が記憶されているとする。
このような変形例においても、上述と同様にS1〜S3に進み、S3において、制御装置100により、通過判定処理が実行される。この場合、制御装置100は、今回の記録指令に基づく、第2の記録動作の加速領域において検出センサ22が異常位置(カウント値557→補正値558)を通過すると判定する。つまり、S3からS4に進み、制御装置100により、変更判定処理が実行される。この場合、第1の記録動作で減速して停止したキャリッジ2は、左端部に位置するため、図10(a)中二点鎖線で示すように第1の記録動作の減速開始位置を可能な限り遅らせても、図10(b)中二点鎖線で示すように第2の記録動作の加速領域の終端において検出センサ22が異常位置を通過することがある。つまり、S4の変更判定処理において、制御装置100は、変更が不可能であると判定し、S6に進む。
S6において、制御装置100は、図10(b)中実線で示す第2の記録動作を行わず、実線で示す加速領域を経て所定速度で記録範囲を超えて二点鎖線で示す減速領域を経由してキャリッジ2を停止させる新たな移動専用のパスを追加設定する。この移動専用のパスでキャリッジ2を移動させるときは、インクジェットヘッド3からインクは吐出されない。つまり、制御装置100は、キャリッジ2が第2の記録動作における記録範囲を通過するように第1の記録動作とは逆方向(ここでは左方向)に移動させて、第2の記録動作の加速開始位置を変更するように設定する(変更処理)。この結果、第2の記録動作が、図10(c)に示すように、キャリッジ2を移動専用のパスで停止した位置からキャリッジ2を右方(第1の記録動作のときのキャリッジ2の移動方向と同じ方向)に移動させて所定速度まで加速させた後、キャリッジ2を定速で移動させつつカウント値500〜カウント値548までインクジェットヘッド3からインクを吐出して画像を記録し、その後、キャリッジ2を減速させて停止させることとなる。
次に、S7において、制御装置100は、搬送モータ17、キャリッジモータ16,インクジェットヘッド3を制御して、記録処理を実行する。S5又はS6からS7に進む場合の記録処理は、まず、インクジェットヘッド3で用紙Pに画像を記録可能な位置まで用紙Pを搬送する。この後、設定変更された第1の記録動作を実行する。そして、用紙Pを前方に単位距離(通常モードの半分の搬送量)だけ搬送する。この後、S5からS7に進む場合の記録処理では、設定変更された第2の記録動作を実行する。S6からS7に進む場合の記録処理では、追加設定された移動専用のパスを実行してから、設定変更された第2の記録動作を実行する。なお、記録処理における定速領域において、検出センサ22が異常位置を通過する際は、カウント値を補正することでキャリッジ2の位置制御を実行しつつ、インクジェットヘッド3からインクを吐出する。
S2からS7に進む場合の記録処理は、まず、インクジェットヘッド3で用紙Pに画像を記録可能な位置まで用紙Pを搬送する。この後、受信した記録指令に基づく第1の記録動作を実行する。そして、用紙Pを前方に単位距離(通常モードの搬送量)だけ搬送した後、受信した記録指令に基づく第2の記録動作を実行する。つまり、本実施形態においては、通常モードが選択されている場合は、定速領域におけるキャリッジ移動速度の精度が低下した状態で画像記録が行われる。なお、このときの記録処理における定速領域においても、検出センサ22が異常位置を通過する際は、カウント値を補正することでキャリッジ2の位置制御を実行しつつ、インクジェットヘッド3がインクを吐出する。
S3からS7に進む場合の記録処理は、まず、インクジェットヘッド3で用紙Pに画像を記録可能な位置まで用紙Pを搬送する。この後、受信した記録指令に基づく第1の記録動作を実行する。そして、用紙Pを前方に単位距離(通常モードの半分の搬送量)だけ搬送した後、受信した記録指令に基づく第2の記録動作を実行する。
以上のような第2の記録動作が終了後、キャリッジ2が原点位置に戻され、用紙Pを前方に排出することで記録処理が終了する。こうして、当該記録指令に基づく画像記録が終了する。
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、制御装置100は、S3で異常位置を通過すると判定した場合に、S5又はS6において、第2の記録動作における加速開始位置を変更する。このため、第2の記録動作における加速領域で検出センサ22が異常位置を通過しなくなり、第2の記録動作において、キャリッジ22が加速領域で精度よく所定速度に達し、定速移動時の速度が安定する。したがって、用紙Pに記録された画像品質の低下を抑制することが可能となる。
また、制御装置100は、S5での加速開始位置の変更が可能か否かをS4で判定する。これにより、第2の記録動作におけるキャリッジ2の移動方向が第1の記録動作における移動方向の逆方向において加速開始位置を変更可能であるか否かを判定可能となる。
また、制御装置100は、S4からS5に進む場合、第1の記録動作における減速開始位置を遅らせることで第2の記録動作の加速開始位置を変更する。これにより、簡単な制御で画像品質の低下を抑制することが可能となる。
また、制御装置100は、S6に進む場合、キャリッジ2を第2の記録動作における記録範囲を通過するように戻して、第2の記録動作の加速開始位置を変更する。これにより、第1記録動作で移動したキャリッジ2を逆方向に戻してから定速移動時の速度が安定した第2の記録動作を行うことが可能となる。
また、制御装置100は、S4において加速開始位置の変更が可能でないと判定した場合、S6に進み、キャリッジ2を第2の記録動作における記録範囲を通過するように一旦戻してから第2記録動作を行うことが可能となる。
また、加速領域が減速時間よりも長い構成においても、第2の記録動作における加速開始位置を効果的に変更することが可能となる。
また、制御装置100は、受信した記録指令のモードが高画質モードであるとき、S3で通過判定処理を実行することが可能となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、S3で異常位置を通過する際、S4に進むが、直接、S5又はS6の変更処理に進んでもよい。また、制御装置100は、S5及びS6のいずれかだけを実行可能であり、S3で異常位置を通過すると判定された場合、実行可能なS5及びS6のいずれかに進んでもよい。また、制御装置100は、S3で異常位置を通過すると判定された場合、第2の記録動作の加速開始位置を変更可能であれば、S5及びS6以外の変更処理が実行されてもよい。このときの変更処理としては、例えば、第2の記録動作を行う前に第1の記録動作におけるキャリッジ2の移動方向と同じ方向に移動させる移動専用のパスを設定してもよい。こうすることでも、第2の記録動作の加速開始位置を変更することが可能となり、上述の実施形態と同様な効果を得ることが可能となる。
また、制御装置100は、受信した記録指令のモードが通常モードであっても、S3を実行してもよい。また、記録動作における加速領域が、減速領域以下であってもよい。
例えば、上述の実施形態では、検出センサ22は、エンコーダ5の非透過領域21bを指標として検出するように構成されていたが、透過領域21aを指標として検出するように構成されていてもよい。また、エンコーダ5がいわゆる透過型のリニアエンコーダであったが、特にこれには限られるものではなく、いわゆる反射型のリニアエンコーダであってもよい。この場合、上述の非透過領域21bを、光を反射しない非反射領域に変え、透過領域21aを、光を反射する反射領域に変える。そして、検出センサ22の発光素子26及び受光素子27を共にスケール21の前方側又は後方側に配置することで、検出センサ22から上述の実施形態と同様な、パルス信号を出力することは可能である。さらに、エンコーダは、光学式以外のエンコーダであってもよく、例えば、磁気エンコーダを用いてもよい。この場合、上述の非透過領域21bを磁気を帯びた領域、透過領域21aを磁気を帯びていない領域などにすればよい。
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって画像記録を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られず、種々の記録装置に本発明を適用することも可能である。