以下に本発明の実施例について、図面と共に説明する。
本実施例の画像形成装置1は、所謂インクジェットプリンタとして構成されるものであり、図1に示すように、給紙機構10と、給紙機構10に動力を付与する直流モータであるASFモータM1と、ASFモータM1を駆動するモータドライバDR1と、給紙機構10による用紙搬送量を検出するためのエンコーダE1と、給紙機構10から供給される用紙Qを印字位置に搬送する用紙搬送機構20と、用紙搬送機構20に動力を付与する直流モータであるLFモータM2と、LFモータM2を駆動するモータドライバDR2と、用紙搬送機構20による用紙搬送量を検出するためのエンコーダE2と、キャリッジ31を搬送するキャリッジ搬送機構30と、キャリッジ搬送機構30に動力を付与する直流モータであるCRモータM3と、CRモータM3を駆動するモータドライバDR3と、キャリッジ31の位置を検出するためのエンコーダE3と、キャリッジ31に搭載された光学センサSNと、キャリッジ31に搭載されたインク液滴を吐出する記録ヘッド(所謂インクジェットヘッド)40と、記録ヘッド40を駆動して、記録ヘッド40にインク液滴を吐出させるヘッド駆動回路DR4と、装置全体を統括制御する制御部50と、を備える。
給紙機構10は、図2に示すように、給紙トレイ101に収容された用紙Qを1枚ずつ分離して用紙搬送路下流に送出するものである。この給紙機構10は、給紙トレイ101に載置された用紙Qの表面に当接される給紙ローラ103を備え、この給紙ローラ103の回転により、給紙トレイ101最上部の用紙Qを分離して、用紙搬送機構20に繋がる用紙搬送路に送り出す。給紙ローラ103は、ASFモータM1によって駆動される。
この他、エンコーダE1(図1参照)は、ロータリエンコーダとして構成されるものであり、例えば、給紙ローラ103の回転軸又はASFモータM1の回転軸に取り付けられて、その回転に応じたエンコーダ信号を出力する。エンコーダE1から出力されるエンコーダ信号は、制御部50が備える給紙制御部60に入力される。給紙制御部60は、ASFモータM1の制御によって、用紙Qの給紙制御を実現するものであり、このエンコーダE1から入力されるエンコーダ信号に基づき、給紙機構10による用紙搬送量を特定し、特定された用紙搬送量に基づき、モータドライバDR1に対する制御信号を生成して、ASFモータM1に入力する駆動電流を調整する。これにより、給紙制御部60は、予め定められた目標位置又は速度又は加速度軌跡に従って、用紙Qが用紙搬送機構20に送り出されるようにする。
また、用紙搬送機構20は、図2に示すように、給紙機構10から供給された用紙Qを搬送ローラ201とピンチローラ202との間に挟持し、この用紙Qを、搬送ローラ201の回転により用紙搬送路下流に搬送するものである。搬送ローラ201よりも用紙搬送路下流には、この下流の用紙搬送路を構成するプラテン204が設けられており、プラテン204の上方には、キャリッジ31を通じて記録ヘッド40を主走査方向(用紙搬送方向である副走査方向とは垂直な方向であり、図2紙面法線方向に対応する。)に搬送するキャリッジ搬送機構30が設けられている。
即ち、プラテン204におけるキャリッジ搬送機構30の下方領域は、記録ヘッド40によるインク液滴の吐出領域、即ち、記録ヘッド40による印字位置に対応し、用紙搬送機構20は、給紙機構10から供給された用紙Qを、LFモータM2により駆動される搬送ローラ201の回転により副走査方向に搬送することにより、用紙Qを、記録ヘッド40による印字位置に送り出す。この印字位置を通過した用紙Qは、更に用紙搬送路下流に位置する排紙ローラ206とピンチローラ207との間に挟持され、排紙ローラ206の回転により、図示しない用紙搬送路の最下流に位置する排紙トレイに排出される。
尚、排紙ローラ206は、搬送ローラ201と共にLFモータM2に駆動されて、搬送ローラ201と同期回転する。この他、エンコーダE2(図1参照)は、ロータリエンコーダとして構成されるものであり、例えば、LFモータM2の回転軸又は搬送ローラ201の回転軸に取り付けられて、その回転に応じたエンコーダ信号を、制御部50が備える用紙搬送制御部70に入力する。用紙搬送制御部70は、LFモータM2の制御により、給紙機構10から供給された用紙Qの搬送制御を実現するものであり、エンコーダE2から入力されるエンコーダ信号に基づき、用紙搬送機構20による用紙搬送量を特定し、特定された用紙搬送量に基づき、モータドライバDR2に対する制御信号を生成して、LFモータM2に入力する駆動電流を調整する。これによって、用紙搬送制御部70は、予め定められた目標位置又は速度又は加速度軌跡に従って、用紙Qが所定量ずつ印字位置へと間欠搬送されるようにする。
この他、キャリッジ搬送機構30は、図3に示すように、記録ヘッド40及び光学センサSNを搭載するキャリッジ31を主走査方向に搬送するものであり、CRモータM3に駆動されて回転する駆動プーリ33と、従動プーリ34と、一対のプーリ33,34(駆動プーリ33及び従動プーリ34)の周囲に巻回されたベルト36と、主走査方向に延びるガイドレール38と、を備える。ガイドレール38は、キャリッジ31の移動を主走査方向(図2紙面の法線方向)に制限するものであり、キャリッジ31は、このガイドレール38に挿通される。また、キャリッジ31は、ベルト36に連結されており、CRモータM3からの動力を受けて回転する駆動プーリ33の当該回転に連動してベルト36が回転することによりCRモータM3からの動力を間接的に受けて、主走査方向に移動する。
尚、ベルト36は、ゴムやウレタンなどの材料により構成される。また、CRモータM3は、駆動プーリ33に連結されており、駆動プーリ33を回転駆動する。従動プーリ34は、ベルト36を通じて駆動プーリ33から発生する動力を受けて、駆動プーリ33及びベルト36に従動する。また、駆動プーリ33は、CRモータM3に対し、直接、又は、ギヤ等を介して間接的に接続される。
この他、エンコーダE3は、従動プーリ34の回転軸に取り付けられており、従動プーリ34の回転に応じたエンコーダ信号を出力する。具体的に、エンコーダE3は、周知のロータリエンコーダにより構成され、等角度にスリットが配列されたスリット円盤(図示せず)を、従動プーリ34の回転軸に備える。このエンコーダE3は、周知のロータリエンコーダと同様に、エンコーダ信号として、回転方向に応じた位相差を有するA相信号及びB相信号を出力する。具体的には、エンコーダ信号(A相信号及びB相信号)として、スリット間隔に対応する角度、スリット円盤(換言すれば従動プーリ34)が回転する度にパルスの発生するパルス信号を出力する。
このエンコーダE3から出力されるエンコーダ信号は、制御部50が備える印字制御部80(図1参照)に入力される。印字制御部80は、記録ヘッド40によるインク液滴の吐出制御を実行する一方、CRモータM3の回転制御によって、キャリッジ31の搬送制御を実現するものであり、エンコーダE3から入力されるエンコーダ信号に基づき、キャリッジ31の搬送路における位置(即ち、搬送位置)及び速度を特定し、特定されたキャリッジ31の位置及び速度に基づき、モータドライバDR3に対する制御信号を生成して、CRモータM3に入力する駆動電流を調整する。これによって、印字制御部80は、予め定められた目標位置又は速度又は加速度軌跡に従って、キャリッジ31を折返し地点から折返し地点へと搬送し、キャリッジ31を往復運動させる。図3の上段には、キャリッジ31を折返し地点から折返し地点へと搬送するプロセスにおけるキャリッジ31の目標加速度軌跡及び目標速度軌跡を示す。
即ち、印字制御部80は、図3に示すように、搬送開始地点に対応する上流側の折返し地点からキャリッジ31を所定速度まで加速させた後、キャリッジ31を定速搬送する制御を行い、その後、搬送停止地点に対応する下流側の折返し地点でキャリッジ31が停止するように、キャリッジ31を減速させる搬送制御を、キャリッジ31の搬送方向を切り替えて繰返し行う。
印字制御部80は、用紙搬送制御部70での用紙Qの搬送制御により、用紙Qが所定量搬送される度に、このようなキャリッジ31の搬送制御を行い、キャリッジ31を折返し地点から折返し地点まで片道分搬送する。また、この搬送過程では、ヘッド駆動回路DR4を通じたインク液滴の吐出制御を、上記特定されたキャリッジ31の位置及び速度に基づき実行することにより(即ち、記録ヘッド40によるインク液滴の吐出タイミングを上記特定されたキャリッジ31の位置及び速度に基づき決定することにより)、用紙Qに、PC3からインタフェース90(図1参照)を通じて入力された画像データに基づく画像を形成する。
このようにして、印字制御部80は、キャリッジ31を片道分搬送する度、用紙搬送制御部70による用紙Qの紙送り量に対応した幅のライン画像を用紙Qに形成する。制御部50は、このような用紙搬送制御部70による用紙Qの搬送制御と、印字制御部80によるキャリッジ31の搬送制御及びインク液滴の吐出制御と、を繰返し実行することにより、プラテン204上において用紙QにPC3から入力された画像データに基づく一連の画像を形成する。以下では、キャリッジ31が駆動プーリ33側の折返し地点から従動プーリ34側の折返し地点まで搬送されるプロセスを、順方向の搬送プロセスと表現し、キャリッジ31が従動プーリ34側の折返し地点から駆動プーリ33側の折返し地点まで搬送されるプロセスを、逆方向の搬送プロセスと表現する。
また、印字制御部80には、上記光学センサSNから出力されるセンサ信号が入力される(図1参照)。このセンサ信号は、エンコーダE3から入力されるエンコーダ信号に基づき特定されるキャリッジ31の位置の精度向上を図るために用いられる。
本実施例で用いられる光学センサSNは、周知のインクジェットプリンタで用いられるメディアセンサにより構成される。メディアセンサは、プラテンを通過する用紙の左右縁端を検出するのに用いられ、光を出力し、その反射光を受光し、この受光結果に従って、光の反射面における色の濃淡を検出し、その検出結果に従うハイ/ロー信号をセンサ信号として出力する。
本実施例の光学センサSNは、光をプラテン204に向けて出力するように配置されており、センサ信号として、出力光のプラテン204からの反射光の受光強度に応じたハイ/ロー信号を出力する。受光強度が閾値以上であれば、ハイ信号、受光強度が閾値未満であれば、ロー信号を出力するといった具合である。この光学センサSNは、従来装置ではメディア(用紙Q)の左右縁端を検出するのに用いられるが、本実施例では、プラテン204に形成されたマークZ1〜Z4を検出するのにも用いられる(図3参照)。
用紙搬送路を構成するプラテン204は、キャリッジ31との対向面が黒色に構成されており、マークZ1〜Z4の夫々は、この黒色に構成されたキャリッジ31の面において白色のマークとして構成される。例えば、マークZ1〜Z4の夫々は、副走査方向(図3紙面法線方向)に延びるライン状のマークとして構成される。
具体的に、マークZ1は、主走査方向に往復運動するキャリッジ31が駆動プーリ33側の折返し地点に到達した際に、キャリッジ31に搭載された光学センサSNがマークZ1を検出可能な位置に設けられる。また、マークZ4は、キャリッジ31が従動プーリ34側の折返し地点に到達した際に、キャリッジ31に搭載された光学センサSNがマークZ4を検出可能な位置に設けられる。
この他、マークZ2は、順方向の搬送プロセスにおいて、キャリッジ31が加速状態から定速状態に遷移する時点で、キャリッジ31に搭載された光学センサSNがマークZ2を検出可能な位置に設けられる。また、マークZ3は、順方向の搬送プロセスにおいて、キャリッジ31が定速状態から減速状態に遷移する時点で、キャリッジ31に搭載された光学センサSNがマークZ3を検出可能な位置に設けられる。尚、マークZ3が形成されたプラテン204上の位置は、逆方向の搬送プロセスにおいて、キャリッジ31が加速状態から定速状態に遷移する地点に対応し、マークZ2が形成されたプラテン204上の位置は、逆方向の搬送プロセスにおいて、キャリッジ31が定速状態から減速状態に遷移する地点に対応する。
続いて、印字制御部80の詳細構成を説明する。図4(a)は、印字制御部80の詳細構成を表すブロック図である。図4(a)に示すように、印字制御部80は、信号処理部801と、内部時計802と、位置・速度特定部803と、制御本体部805と、補正係数記憶部807と、座標記憶部809と、を備える。PC3や図示しない装置本体の操作部を介して、ユーザから記録が指示されると、印字制御部80の各部は、定められた処理の実行を開始する。
信号処理部801は、エンコーダE3から入力されるエンコーダ信号としてのA相信号及びB相信号の位相差に基づき、スリット円盤の回転方向、即ち、キャリッジ31の移動方向を検出すると共に、A相信号の特定パルスエッジが入力される度に、カウント値Nを、キャリッジ31の移動方向に応じて1加減算することにより、キャリッジ31の位置を、エンコーダE3から入力されたパルスのカウント値Nの情報として、検出するものである。
例えば、信号処理部801は、キャリッジ31の移動方向が順方向である場合、A相信号の立ち上がりエッジが入力される度、自己が保持するカウント値Nを1加算し、移動方向が逆方向である場合には、A相信号の立ち上がりエッジが入力される度に、自己が保持するカウント値Nを1減算する構成にすることができる。
このようにして、信号処理部801は、周知のインクリメンタル方式と同方式にて、キャリッジ31の位置を、カウント値Nとして検出する。そして、このカウント値Nを、キャリッジ31の移動方向の情報と共に、位置・速度特定部803に入力する。また、信号処理部801は、上記カウント値Nを更新する度に、その更新時点での内部時計802が示す時刻Tの情報を取得し、この時刻Tの情報を、位置・速度特定部803に入力する。
一方、位置・速度特定部803は、信号処理部801から入力されるカウント値N、移動方向、及び、時刻Tの情報、並びに、光学センサSNから入力されるセンサ信号に基づき、キャリッジ31の詳細な位置X及び速度Vを特定し、この位置X及び速度Vの情報を、制御本体部805に入力する(詳細後述)。
また、制御本体部805は、位置・速度特定部803から入力されるキャリッジ31の位置X及び速度Vに基づき、予め定められたタイミングごとにモータドライバDR3に対する制御信号を生成し、CRモータM3に入力する駆動電流を調整する。即ち、制御本体部805は、位置・速度特定部803から入力されるキャリッジ31の位置X及び速度Vに基づき、キャリッジ31の位置X及び速度Vを、予め定められた目標速度及び加速度軌跡(図3参照)に従う位置及び速度に制御し、これによって、図3に示す軌跡に沿って折返し地点から折返し地点までキャリッジ31が搬送されるようにする。
また、制御本体部805は、位置・速度特定部803から入力されるキャリッジ31の位置X及び速度Vに基づき、ヘッド駆動回路DR4に対する制御信号を生成することにより、キャリッジ31の位置X及び速度Vに好適なタイミングで記録ヘッド40にインク液滴を吐出させる。
また、補正係数記憶部807は、位置・速度特定部803においてキャリッジ31の位置X及び速度Vを特定する際に用いられる補正係数Kを、キャリッジ31の搬送方向毎、及び、折返し地点から折返し地点までのキャリッジ31の搬送経路における定義されたエリア毎に、記憶するものである。尚、搬送経路は、前述した通り、キャリッジ31の搬送過程においてキャリッジ31が通過する領域のことである。
本実施例では、マークZ1〜Z4によって、折返し地点から折返し地点までのキャリッジ31の搬送経路が、3つのエリアに区画化される。即ち、折返し地点から折返し地点までのキャリッジ31の搬送経路は、マークZ1とマークZ2との間に挟まれる第一のエリアR1(図3参照)、マークZ2とマークZ3との間に挟まれる第二のエリアR2、及び、マークZ3とマークZ4との間に挟まれる第三のエリアR3によって区画化される。第一のエリアR1及び第三のエリアR3は、キャリッジ31が非定速搬送されるエリアに対応し、第二のエリアR2は、キャリッジ31が定速搬送されるエリアに対応する。更に言えば、第一のエリアR1は、順方向の搬送プロセスにおいて、キャリッジ31が加速を伴って搬送される加速エリアに対応し、逆方向の搬送プロセスにおいて、キャリッジ31が減速を伴って搬送される減速エリアに対応する。同様に、第三のエリアR3は、順方向の搬送プロセスにおいて、減速エリアに対応し、逆方向の搬送プロセスにおいて、加速エリアに対応する。
補正係数記憶部807は、このような搬送状態の変化する地点で区切られた三つの上記エリアR1,R2,R3に対してキャリッジ31の搬送方向毎に、補正係数Kを記憶する。図4(b)は、補正係数記憶部807が記憶する補正係数Kのテーブル構成を示す図である。
本実施例の位置・速度特定部803は、キャリッジ31の位置X及び速度Vを特定する処理を繰返し実行し、この処理の各実行サイクルでは、前サイクルからのカウント値Nの変化量δと、スリット間隔D及び補正係数Kとに基づき、前サイクルからのキャリッジ31の移動量L=K・D・δを算出し、前サイクルでのキャリッジ31の位置X=Xpに、上記算出した移動量Lを加算することにより、現在のキャリッジ31の位置X=Xp+Lを特定する。また、キャリッジ31の速度Vについては、変化量δだけカウント値Nが変化するのに要した時間長ΔTで上記移動量Lを除算することにより、特定する(キャリッジ31の速度V=L/ΔT)。
ここで、位置X及び速度Vの特定に用いられるスリット間隔Dは、スリット円盤が1スリット分回転してカウント値が1増減するときのキャリッジ31の標準移動距離に対応するものである。但し、スリット円盤が1スリット分回転してカウント値が1増減するときのキャリッジ31の実移動距離は、ベルト36の撓み等による影響を受けて変化する(詳細後述)。
このため、本実施例では、補正係数Kを用いて、ベルト36の撓みの変化によるキャリッジ31の位置Xの誤差を抑えるようにしている。補正係数記憶部807が記憶する補正係数Kは、このような目的で使用される。
また、補正係数Kを複数設けているのは、ベルト36の撓みが、キャリッジ31の搬送過程における搬送状態の変化によって様々に変化するため、一律の補正係数Kでは、キャリッジ31の位置X及び速度Vを高精度に特定(算出)することが難しいためである。
例えば、キャリッジ31の加減速時には、キャリッジ31の定速搬送時と比較して、ベルト36に大きな引張力が働くが、引張力が大きく働く状況では、図5に示すように、引張力が小さい状況と比較して、プーリ33,34の周囲でのベルト36の撓みが少なくなる。
このように、ベルト36の撓みは、加減速の有無による引張力の違いによって、加減速の行われるエリア(第一のエリアR1又は第三のエリアR3)にキャリッジ31が位置する場合と、キャリッジ31が定速搬送されるエリア(第二のエリアR2)に位置する場合とで異なる。
また、本実施例では、駆動プーリ33に、CRモータM3が取り付けられ、従動プーリ34にエンコーダE3が取り付けられていることから、図6(a)上段に示すように、順方向の搬送プロセスにおける加速時や逆方向の搬送プロセスにおける減速時には、従動プーリ34の周囲に大きな引張力が働いて、エンコーダE3の周囲に位置するベルト36の領域(図6(a)上段一点鎖線で示す領域)が張った状態となる。一方、図6(a)下段に示すように、順方向の搬送プロセスにおける減速時や逆方向の搬送プロセスにおける加速時には、キャリッジ31から駆動プーリ33までのベルト36の領域(図6(a)下段一点鎖線で示す領域)に大きな引張力が働いて、この領域が張った状態になり、エンコーダE3の周囲に位置するベルト領域の張りについては、順方向の搬送プロセスにおける加速時や逆方向の搬送プロセスにおける減速時に比べて弱まる。
このように、ベルト36の撓みは、加減速に伴ってキャリッジ31に作用させる引張力の向きの違いによって、キャリッジ31が第一のエリアR1にある場合とキャリッジ31が第三のエリアR3にある場合とで異なる。
この他、図7(a)上段には、順方向の搬送プロセスにおける加速エリア(第一のエリアR1)でのキャリッジ31とエンコーダE3との位置関係を示し、下段には、順方向の搬送プロセスにおける減速エリア(第三のエリアR3)でのキャリッジ31とエンコーダE3との位置関係を示し、図7(b)上段には、逆方向の搬送プロセスにおける減速エリア(第一のエリアR1)でのキャリッジ31とエンコーダE3との位置関係を示し、図7(b)下段には、逆方向の搬送プロセスにおける加速エリア(第三のエリアR3)でのキャリッジ31とエンコーダE3との位置関係を示す。
キャリッジ31とエンコーダE3との位置関係は、順方向及び逆方向の搬送プロセスの夫々において、キャリッジ31の移動と共に変化するが、キャリッジ31とエンコーダE3とが離れている場合(キャリッジ31が第一のエリアR1に存在する場合)には、キャリッジ31とエンコーダE3との間のベルト36の伸びに起因する撓み量が、キャリッジ31とエンコーダE3とがあまり離れていない場合(キャリッジ31が第三のエリアR3に存在する場合)と比較して大きくなる。
このように、本実施例の画像形成装置1におけるベルト36の撓みは、キャリッジ31とエンコーダE3との位置関係の違いよって、キャリッジ31が第一のエリアR1にある場合とキャリッジ31が第三のエリアR3にある場合とで異なる。更に言えば、同様の理由により、キャリッジ31が第一のエリアR1、第二のエリアR2、及び、第三のエリアR3のいずれかに位置するかによって、ベルト36の撓み量は異なる。
また、キャリッジ31の搬送方向が異なれば、キャリッジ31に作用する摩擦力等の向きも異なる。このため、キャリッジ31の搬送方向に応じて、加減速時や定速搬送時にキャリッジ31に作用させるべき力も変化し、それによってベルト36の撓みも変化する。
即ち、本実施例の画像形成装置1においては、上述した原因を含む複合的な原因により、キャリッジ31の搬送方向、キャリッジ31の位置、及び、キャリッジ31の速度変化に対応して、ベルト36の撓みも変化する。
このため、本実施例では、搬送方向毎及びエリア毎、換言すれば、異なる搬送状態毎に、適切な補正係数Kを補正係数記憶部807に記憶させることにより、高精度にキャリッジ31の位置X及び速度Vを特定できるようにしているのである。
また、本実施例の印字制御部80は、座標記憶部809に、マークZ1〜Z4夫々のキャリッジ31の搬送路における実位置であって、位置・速度特定部803によって特定されるキャリッジ31の位置Xの座標系と同一の座標系(尺度)で表される位置が記憶されている。ここでは、マークZ1,Z2,Z3,Z4の実位置を夫々X1,X2,X3,X4と表現する。図4(c)は、座標記憶部809が記憶するマーク位置X1〜X4のテーブル構成を示す図である。このマークZ1〜Z4の実位置X1〜X4の情報は、例えば、上記補正係数記憶部807が記憶する搬送方向毎及びエリア毎の補正係数Kを更新するために用いられる(詳細後述)。
続いて、位置・速度特定部803が繰返し実行する位置特定処理及び速度特定処理について図8(a)及び図8(b)を用いて説明する。印字制御部80がキャリッジ31の搬送制御を開始すると、位置・速度特定部803は、所定タイミング毎に図8(a)に示す位置特定処理を実行して、キャリッジ31の詳細な位置Xを特定する。
図8(a)に示す位置特定処理を開始すると、位置・速度特定部803は、光学センサSNから入力されるセンサ信号に基づき、キャリッジ31がマークZ1〜Z4のいずれかが形成された地点(以下、マーク地点と表現する。)に到達した否かを判断する。具体的には、センサ信号がハイであれば、肯定判断し、センサ信号がローであれば否定判断することができる(S110)。
そして、マーク地点に到達していないと判断すると(S110でNo)、キャリッジ31の位置Xの再特定タイミング(更新タイミング)が到来したか否かを判断し(S115)、到来していない場合には(S115でNo)、S110に戻って、キャリッジ31がマーク地点に到達するか、位置Xの再特定タイミングが到来するまで待機する。S115では、例えば、前回の位置Xの特定タイミングから一定時間が経過する度、再特定タイミングが到来したと判断することができる。
そして、位置・速度特定部803は、キャリッジ31がマーク地点に到達したと判断すると(S110でYes)、この地点からキャリッジ31が進入するエリアが、第一のエリアR1、第二のエリアR2及び第三のエリアR3のいずれであるかを判別する(S120)。具体的には、マーク地点に到達したと判断する度、現在認識している進入エリアを、キャリッジ31の搬送方向下流のエリアに更新することにより、新たな進入エリアを判別することができる。この他、現在把握しているキャリッジ31の位置X、及び、その時点でのキャリッジ31の移動方向に基づき、進入エリアを判別することも可能である。
その後、位置・速度特定部803は、上記判別した進入エリアの補正係数であって、進入エリアでのキャリッジ31の搬送方向に対応した補正係数を、補正係数記憶部807から読み出し、キャリッジ31の位置Xの特定に用いる補正係数Kを、読み出した値に設定する(S130)。更には、到達したマーク地点に対応する位置を、座標記憶部809から読み出し、当該読み出した位置を、現在のキャリッジ31の位置Xであると特定する(S140)。
また、S140でのキャリッジ31の位置Xの特定後には、このマーク地点への到達時点で信号処理部801から通知されていたカウント値Nを、基準カウント値Npとして記憶保持する(S190)。その後、当該特定処理を一旦終了する。
一方、位置・速度特定部803は、位置Xの再特定タイミングが到来したと判断すると(S115でYes)、S150に移行し、現時点で信号処理部801から通知されている最新のカウント値N=Ncと、現時点で記憶保持する最新の基準カウント値Np(換言すれば、前回キャリッジ31の位置Xを特定したときのカウント値Nc)との差分δ=Nc−Npを算出し、基準カウント値Npに対応する地点から現在地点までのキャリッジ31の移動量Lを、次式に従って算出する(S160)。
L=K・D・δ
上式で表現されるKは、S130で設定されたキャリッジ31の現在位置に対応するエリアの補正係数Kであり、Dは、エンコーダE3のスリット間隔に対応する。即ち、位置・速度特定部803は、差分δに対応するキャリッジ31の搬送エリアに対して定義された補正係数Kであって、キャリッジ31の搬送方向に対応した補正係数Kを用いて、上式に従い、移動量Lを算出する。
その後、位置・速度特定部803は、前回特定されたキャリッジ31の位置Xに移動量Lを加算し、キャリッジ31の位置Xを再特定する(S180)。
X←X+L
更に、今回の差分δの計算に用いたカウント値Ncを、最新の基準カウント値Npとして記憶保持する(S190)。その後、当該位置特定処理を一旦終了する。
位置・速度特定部803は、このような位置特定処理を繰返し実行することにより、キャリッジ31の搬送過程において、各期間の移動量Lを順次特定し、特定した移動量Lを積算して、各地点でのキャリッジ31の位置Xを高精度に特定する。尚、ここで言う「期間」は、位置特定処理におけるキャリッジ位置Xの特定タイミングであって、時間的に隣り合う二つの特定タイミングの間の期間のことであり、特定タイミングが固定周期で到来する場合の上記「各期間の移動量L」は、一定時間毎の移動量Lに対応する。位置特定処理においてキャリッジ31の位置Xを特定する周期は、例えば、CRモータM3の制御周期に一致させることができる。
また、位置・速度特定部803は、上記位置特定処理と並列に、図8(b)に示す速度特定処理を繰返し実行することにより、キャリッジ31の詳細な速度Vを特定する。
図8(b)に示す速度特定処理を開始すると、位置・速度特定部803は、光学センサSNから入力されるセンサ信号に基づき、S110での処理と同様、キャリッジ31がマーク地点に到達したか否かを判断する(S210)。そして、マーク地点に到達していないと判断すると(S210でNo)、速度Vの再特定タイミングが到来したか否かを判断し(S215)、到来していない場合には(S215でNo)、S210に戻って、キャリッジ31がマーク地点に到達するか、速度Vの再特定タイミングが到来するまで待機する。S215では、例えば、前回の速度Vの特定タイミングから、カウント値Nが1以上の一定量変化する度、速度Vの再特定タイミングが到来したと判断することができる。
そして、位置・速度特定部803は、キャリッジ31がマーク地点に到達したと判断すると(S210でYes)、S120での処理と同様、この地点からキャリッジ31が進入するエリアが、第一のエリアR1、第二のエリアR2及び第三のエリアR3のいずれであるかを判別し(S220)、上記判別した進入エリアの補正係数であって、進入エリアでのキャリッジ31の搬送方向に対応した補正係数を、補正係数記憶部807から読み出し、キャリッジ31の速度Vの特定に用いる補正係数Kを、読み出した値に設定する(S230)。尚、S210,S220,S230の処理については、位置特定処理におけるS110,S120,S130と同一であるので、位置特定処理と共通化することができる。そして、S230での処理を終えると、位置・速度特定部803は、当該速度特定処理を一旦終了する。
一方、位置・速度特定部803は、速度Vの再特定タイミングが到来したと判断すると(S215でYes)、S250に移行し、現時点で信号処理部801から通知されている最新のカウント値N=Ncと、現時点で記憶保持する最新の基準カウント値Nr(換言すれば、前回キャリッジ31の速度Vを特定したときのカウント値Nc)との差分δ=Nc−Nrを算出し、基準カウント値Nrに対応する地点から現在地点までのキャリッジ31の移動量Lを、式L=K・D・δに従って算出する(S260)。
尚、基準カウント値Nrは、キャリッジ31の搬送開始時に、搬送開始時点で信号処理部801が保持するカウント値Nに初期化される。上式で表現されるKは、S230で設定されたキャリッジ31の現在位置に対応するエリアの補正係数Kであり、Dは、エンコーダE3のスリット間隔に対応する。
更に、位置・速度特定部803は、現時点で信号処理部801から通知されている時刻Tであって、上記最新のカウント値N=Ncが信号処理部801において得られた時刻T=Tcと、現時点で記憶保持する最新の基準時刻Tr(換言すれば、前回キャリッジ31の速度Vを特定したときに用いられたカウント値Ncが信号処理部801において得られた時刻Tc)との差分Tc−Trを、時間長ΔTとして算出する(S270)。この時間長ΔTは、カウント値NがS250で算出されたδ変化するのに要した時間長に対応する。
そして、位置・速度特定部803は、S260で算出された移動量Lを、S270で算出された時間長ΔTで除算することにより、キャリッジ31の速度Vを再特定する(S280)。
V←L/ΔT
その後、位置・速度特定部803は、今回の差分δの計算に用いたカウント値Ncを、最新の基準カウント値Nrとして記憶保持すると共に、今回の時間長ΔTの算出に用いた時刻Tcを、最新の基準時刻Trとして記憶保持する(S290)。その後、当該速度特定処理を一旦終了する。
位置・速度特定部803は、このような速度特定処理を繰返し実行することにより、キャリッジ31の搬送過程において、各期間の移動量Lを順次特定し、特定した移動量Lを、その移動に要した時間長ΔTで除算することにより、各地点でのキャリッジ31の速度Vを高精度に特定する。尚、ここで言う「期間」は、速度特定処理における速度Vの特定タイミングであって、時間的に隣り合う二つの特定タイミングの間の期間のことである。
図9(a)は、順方向の搬送プロセスにおいて、各エリアR1〜R3で用いられる補正係数Kを、図4(b)に示すテーブルと対応させて記述したものであり、図9(b)は、逆方向の搬送プロセスにおいて、各エリアR1〜R3で用いられる補正係数Kを、図4(b)に示すテーブルと対応させて記述したものである。本実施例の画像形成装置1によれば、このようにキャリッジ31の搬送過程におけるキャリッジ31の搬送状態の変化に応じて、補正係数Kを切り替えて用いて、キャリッジ31の位置X及び速度Vを特定するので、搬送過程の全区間において一律な補正係数Kを用いる場合よりも、高精度にキャリッジ31の位置X及び速度Vを特定することができる。
続いて、補正係数記憶部807が記憶する搬送方向毎及びエリア毎の補正係数Kを、適切な値とするために、位置・速度特定部803が実行する係数更新処理について、図10を用いて説明する。位置・速度特定部803は、例えば、画像形成装置1の電源投入時に、図10に示す係数更新処理を実行して、補正係数記憶部807が記憶する搬送方向毎及びエリア毎の補正係数Kを更新することにより、補正係数Kを適切な値に調整する。
図10に示す係数更新処理を開始すると、位置・速度特定部803は、制御本体部805を通じてキャリッジ31を順方向の搬送プロセスにおける搬送開始位置にセットする(S310)。
その後、制御本体部805を通じて順方向へのキャリッジ31の搬送制御を開始し(S320)、キャリッジ31がマーク地点に到達する度に(S330でYes)、マーク地点への到達時において信号処理部801から通知されているカウント値Nを、履歴情報として一時記憶する(S340)。そして、キャリッジ31が折返し地点に到達し、片道分のキャリッジ31の搬送制御が完了すると(S335でYes)、S350に移行する。尚、S340では、搬送制御開始時にキャリッジ31が位置するマーク地点でのカウント値N、及び、搬送制御完了時にキャリッジ31が位置するマーク地点でのカウント値についても、履歴情報として一時記憶するものとする。
S350に移行すると、位置・速度特定部803は、直前の搬送プロセスである順方向の搬送プロセスにおいて得られた各マーク地点でのカウント値Nに基づいて、加速エリア(第一のエリアR1)にキャリッジ31が進入してから、このエリアを脱出するまでのカウント値Nの変化量δ1、定速エリア(第二のエリアR2)にキャリッジ31が進入してから、このエリアを脱出するまでのカウント値Nの変化量δ2、及び、減速エリア(第三のエリアR3)にキャリッジ31が進入してから、当該キャリッジ31が折返し地点に到達するまでのカウント値Nの変化量δ3を算出する。尚、ここで言う変化量は、該当エリアからの脱出時のカウント値Nから該当エリアへの進入時のカウント値Nを引いて算出される。
その後、位置・速度特定部803は、算出した変化量に基づき、各エリアに対応する順方向の補正係数Kの適値を算出し、補正係数記憶部807が記憶する各エリアの順方向の補正係数Kを、算出した上記適値に更新する(S360)。
具体的には、算出した変化量δ1に対応するキャリッジ31の標準移動量L1=D・|δ1|と、座標記憶部809に記憶されたマークZ1の位置X1及びマークZ2の位置X2から特定される第一のエリアR1のキャリッジ搬送方向に沿う長さである幅W1=|X2−X1|と、に基づいて、順方向の加速エリア(第一のエリアR1)における補正係数Kの適値K1を、式K1=W1/L1に従って算出する。同様に、算出した変化量δ2に対応するキャリッジ31の標準移動量L2=D・|δ2|と、座標記憶部809に記憶されたマークZ2の位置X2及びマークZ3の位置X3から特定される第二のエリアR2の幅W2=|X3−X2|と、に基づいて、順方向の定速エリア(第二のエリアR2)における補正係数Kの適値K2を、式K2=W2/L2に従って算出する。同様に、算出した変化量δ3に対応するキャリッジ31の標準移動量L3=D・|δ3|と、座標記憶部809に記憶されたマークZ3の位置X3及びマークZ4の位置X4から特定される第三のエリアR3の幅W3=|X4−X3|と、に基づいて、順方向の減速エリア(第三のエリアR3)における補正係数Kの適値K3を、式K3=W3/L3に従って算出する。
また、この処理を終えると、位置・速度特定部803は、逆方向への搬送プロセスが完了しているか否かを判断し(S370)、完了していない場合には(S370でNo)、制御本体部805を通じて逆方向へのキャリッジ31の搬送制御を開始した後(S380)、S330に移行する。
S330に移行した後には、上述したように、キャリッジ31がマーク地点に到達する度に(S330でYes)、マーク地点への到達時において信号処理部801から通知されているカウント値Nを、履歴情報として一時記憶し(S340)、キャリッジ31が折返し地点に到達し、逆方向へのキャリッジ31の搬送制御が完了すると(S335でYes)、S350に移行する。
そして、S350では、直前の搬送プロセスである逆方向の搬送プロセスにおいて得られた各マーク地点でのカウント値Nに基づいて、逆方向の搬送プロセスにおいて、加速エリア(第三のエリアR3)にキャリッジ31が進入してから、このエリアを脱出するまでのカウント値Nの変化量δ4、定速エリア(第二のエリアR2)にキャリッジ31が進入してから、このエリアを脱出するまでのカウント値の変化量δ5、及び、減速エリア(第一のエリアR1)にキャリッジ31が進入してから、当該キャリッジ31が折返し地点に到達するまでのカウント値Nの変化量δ6を算出する。
その後、位置・速度特定部803は、算出した変化量δ4,δ5,δ6に基づき、上述した手法で、各エリアに対応する逆方向の補正係数Kの適値を算出し、補正係数記憶部807が記憶する各エリアの逆方向の補正係数Kを、算出した上記適値に更新する(S360)。例えば、算出した変化量δ4に対応するキャリッジ31の標準移動量L4=D・|δ4|と、第三のエリアR3の幅W3=|X4−X3|と、に基づいて、逆方向の加速エリア(第三のエリアR3)における補正係数Kの適値K4を、式K4=W3/L4に従って算出する。その後、位置・速度特定部803は、当該係数設定処理を終了する。
以上、本実施例の画像形成装置1の構成について説明したが、本実施例によれば、搬送方向毎及びエリア毎の補正係数Kを用いることで、搬送状態の変化によるベルト36の撓みの変化の影響を抑えて、エンコーダ信号に基づきキャリッジ31の移動量Lを高精度に特定し、その結果に基づいて、高精度にキャリッジ31の位置X及び速度Vを特定することができるようにした。従って、本実施例の画像形成装置1によれば、精度よくキャリッジ31を搬送することができ、又、キャリッジ31の移動に合わせて適切にインク液滴を記録ヘッド40に吐出させることができ、用紙Qに形成される画像の品質を向上させることができる。また、キャリッジ31を折返し地点に精度よく停止させることができるので、キャリッジ31がオーバーランしたときの衝撃音(他の部品に衝突したときの衝撃音等)により、画像形成装置1を使用するユーザにストレスを与えてしまうのを抑えることができる。
特に、本実施例の画像形成装置1によれば、上述した手法で補正係数記憶部807が記憶する補正係数Kを適宜補正するので、経時変化によりベルト36の撓みが変化しても、高精度にキャリッジ31の位置X及び速度を特定することができる。
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。例えば、エンコーダE3は、CRモータM3と共に、駆動プーリ33の回転軸に取り付けられてもよい。図6(b)は、エンコーダE3が駆動プーリ33の回転軸に取り付けられた変形例の画像形成装置において、キャリッジ31の加減速時にベルト36が張る領域を示した図である。具体的に、図6(b)上段は、順方向の搬送プロセスにおける加速時又は逆方向の搬送プロセスにおける減速時でのベルト36の張りの態様を示した図であり、図6(b)下段は、順方向の搬送プロセスにおける減速時又は逆方向の搬送プロセスにおける加速時でのベルト36の張りの態様を示した図である。
図6(b)からも理解できるように、エンコーダE3が駆動プーリ33の回転軸に取り付けられた画像形成装置においても、キャリッジ31の搬送状態の変化によって、ベルト36の撓みの状態が変化する。よって、このような画像形成装置に、上記実施例と同様の構成を採用すると、キャリッジ31の位置Xや速度Vの特定精度が上がる。
この他、上記実施例では、加速エリア及び減速エリアに対応する第一のエリアR1及び第三のエリアR3の夫々に対して異なる補正係数Kを定義したが、第一のエリアR1及び第三のエリアR3に対しては、一つのエリア(非定速エリア)とみなして同一の補正係数Kを定義してもよい。
また、上記実施例では、キャリッジ31の搬送過程において逐次正確なキャリッジ31の位置Xや速度Vを特定するために、補正係数Kの切替が生じる間隔よりも十分短いサイクルで移動量Lを算出し、この算出値を用いてキャリッジ31の位置Xや速度Vを特定するようにしたが、例えば、位置Xや速度Vを短い間隔で特定する必要がない場合には、補正係数Kの切替が生じる搬送状態の変化毎に、移動量Lを算出してもよい。
この他、上記実施例では、光学センサSNから入力されるセンサ信号から特定されるキャリッジ31の位置(存在エリア)に基づき、補正係数Kを切り替えるようにしたが、位置・速度特定部803は、現時点までに特定されたキャリッジ31の速度の変化に基づき、キャリッジ31が加速状態、定速状態、及び、減速状態のいずれの状態にあるのかを特定し、この状態の変化に応じ、使用する補正係数Kを切り替える構成されてもよい。この他、制御本体部805は、予め定められた目標軌跡に従ってキャリッジ31を搬送するので、搬送開始時点からの経過時間で、キャリッジ31が加速状態、定速状態、及び、減速状態のいずれの状態にあるのかを概ね特定することができる。従って、位置・速度特定部803は、搬送開始時点からの経過時間に応じて、使用する補正係数Kを切り替える構成にされてもよい。
搬送開始時点からの経過時間に応じて使用する補正係数Kを切り替える場合には、補正係数記憶部807で、エリア毎ではなく、加速状態、定速状態、減速状態のそれぞれの状態で使用する、これら状態毎の補正係数を記憶する。即ち、補正係数記憶部807においては、搬送方向毎、並びに、加速状態、定速状態、及び減速状態のこれら状態毎の補正係数K(K1〜K6)を記憶する。
そして、位置・速度特定部803が実行する位置特定処理又は速度特定処理では、図11に示すように、マーク地点にキャリッジ31が到達したか否かを判断するS110又はS210の処理に代えて、S111又はS211において、キャリッジ31の搬送開始時点からの経過時間が、予め設定された時間に到達したか否かを判断する。図11には、搬送開始時点からの経過時間に応じて使用する補正係数Kを切り替える場合の位置特定処理及び速度特定処理のフローチャートを示す。
尚、ここで言う「搬送開始時点」は、往復動するキャリッジ31の往路及び復路それぞれの搬送過程におけるキャリッジ31の搬送開始時点を示す。また、「予め設定された時間」とは、時間対位置、時間対速度、又は時間対加速度の目標軌跡(図3参照)から定まる搬送開始時点(加速状態の開始時点)から定速状態へ変化するまでの所要時間(以下、「定速状態到達時間」と表現する。)、及び、搬送開始時点(加速状態の開始時点)から減速状態に変化するまでの所要時間(以下、「減速状態到達時間」と表現する。)のことである。
そして、経過時間が予め設定された時間としての定速状態到達時間及び減速状態到達時間のいずれにも到達していないと判断すると(S111又はS211でNo)、S115又はS215に移行し、位置X又は速度Vの特定タイミングが到来したか否かを判断する。そして、位置X又は速度Vの特定タイミングが到来したと判断すると(S115又はS215でYes)、上記実施例と同様に、後続の処理を実行して、移動量Lを算出し、キャリッジ31の位置X又は速度Vを特定する。
尚、マークZ1〜Z4を用いない場合には、上記実施例のように、これらマークZ1〜Z4によって、キャリッジ31の位置Xの初期値を特定することはできない。そこで、マークZ1〜Z4を用いない場合には、例えば、位置・速度特定部803により、次のような初期値設定処理を、印字に伴うキャリッジ31の往復動前に実行することで、キャリッジ31の位置Xの初期値を設定するとよい。
即ち、キャリッジ31を往復動させる前に、キャリッジ31を、画像形成装置1内においてキャリッジ31が移動可能な領域の端である画像形成装置1のフレームに当接する地点まで移動させる。そして、この当接地点を、キャリッジ31の位置Xの原点として取扱い、キャリッジ31の位置Xをゼロに設定すると共に、この当接地点でのエンコーダE3による検出位置(信号処理部801による上記カウント値N)を、基準カウント位置Npとして記憶保持する。このような内容の処理を、初期値設定処理として実行する。
この初期値設定処理を実行した後に位置特定処理を繰返し実行すれば、キャリッジ31の位置Xを、上記当接地点を原点とする絶対座標系で特定することができる。また、初期値設定処理実行直後のキャリッジ31の搬送過程に続く、後続のキャリッジ31の搬送過程では、前回の搬送過程において位置特定処理により更新された最新のキャリッジ31の位置X及び基準カウント値Npを引き継いで、位置特定処理を実行することにより、初期値設定処理を実行しなくとも、キャリッジ31の位置Xを正確に特定することができる。
ちなみに、往路及び復路の各搬送プロセスの開始前には、その搬送プロセスでのキャリッジ31の搬送方向に対応した加速状態の補正係数を、使用する補正係数Kに設定することで、往路及び復路の各搬送プロセスの開始初期から適切な補正係数Kを用いて移動量Lを算出することができる。尚、上述した原点検出方法は、公知の技術であるため、ここでは、これ以上の説明を省略する。
また、位置・速度特定部803は、搬送開始時点からの経過時間が予め設定された時間としての上記定速状態到達時間及び減速状態到達時間のいずれかに到達したと判断すると(S111又はS211でYes)、キャリッジ31の次の搬送状態を判別する(S121又はS221)。本実施例では、搬送開始時点から順に、加速状態、定速状態、減速状態へと状態変化するので、この状態変化のパターンに従って、搬送開始時点からの経過時間によりキャリッジ31の次の搬送状態を判別することができる。但し、現時点以降の目標軌跡から、次の搬送状態が定速状態なのか、減速状態なのかを判別してもよい。
そして、上記判別した搬送状態の補正係数であって、キャリッジ31の搬送方向に対応した補正係数を、補正係数記憶部807から読み出し、キャリッジ31の位置X又は速度Vの特定に用いる補正係数Kを読み出した値に設定する(S131又はS231)。
補正係数Kを設定すると、位置・速度特定部803は、一旦、位置特定処理又は速度特定処理を終了する。尚、搬送開始時点からの経過時間に応じて使用する補正係数Kを切り替える本実施例では、プラテン204上のマークZ1〜Z4を検出して補正係数Kを切り替える場合と異なり、切替時点でのキャリッジ31の位置XをマークZ1〜Z4に基づいて特定することは基本的にできない。従って、S131の処理により補正係数Kを切り替えた後には、S140,S190の処理を実行することなく、速度特定処理と同様に、当該位置特定処理を終了する。
そして、再度実行する位置特定処理又は速度特定処理では、位置X又は速度Vの特定タイミングまで待機し(S115又はS215)、位置X又は速度Vの特定タイミングが到来すると(S115又はS215でYes)、上記実施例と同様に後続の処理を実行することによって、上記切替後の補正係数Kである現時点での搬送状態に対応した補正係数Kを用いて移動量Lを算出し、キャリッジ31の位置X又は速度Vを特定する。
以上に、搬送開始時点からの経過時間に基づき、補正係数Kを切り替える例について説明したが、このような搬送開始時点からの経過時間に応じて使用する補正係数Kを切り替える技術は、主走査方向の幅が異なる複数種類の用紙Qに画像を記録する画像形成装置や、用紙サイズ等に応じてキャリッジ31の定速領域が変化する画像形成装置に適用されると、特に有効である。この他、用紙に形成する画像の空白領域等に応じて、キャリッジ31の搬送開始地点や停止地点、即ち2つの折返し地点を、キャリッジ31の搬送毎に切り替える画像形成装置にも有効である。つまり、搬送毎に、加速状態、定速状態及び減速状態の各状態に切り替わる地点が異なる場合には、マークを指標とせずに、時間を指標にして上述のように補正係数Kを切り替えると、搬送状態の変化に応じて適切な補正係数Kを用いて適切にキャリッジ31の位置Xを特定することができる。
また、搬送開始時点からの経過時間に基づき、補正係数Kを切り替える実施例に対しては、次のような変形例が考えられる。
例えば、以上にはキャリッジ31を画像形成装置1のフレームに当接させて原点検出を行う例について説明したが、エンコーダE3の原点を検出可能な構成を採用したり、キャリッジ31が特徴的な位置に存在することを検出できる構成を採用したりして、キャリッジ31の位置Xを特定し、この位置Xでの信号処理部801によるカウント値Nを基準に、その後の移動量L及び位置Xを特定してもよい。
この他、マークを少なくとも一つプラテン204に設けて、このマークに基づいて、キャリッジ31の位置Xの初期値を設定されてもよい。即ち、キャリッジ31の位置Xが不明な状態では、マークを検出し、そのマーク検出時点でのキャリッジ31の位置Xを原点として定義して、この原点での信号処理部801のカウント値Nを基準カウント値Npとして記憶保持し、その後の移動量Lを算出してもよい。このようにすることで、キャリッジ31の位置Xを、マークによって定まる絶対座標系で特定することができる。
また、以上には、搬送開始時点からの経過時間に基づいて補正係数Kを切り替えるようにしたが、補正係数Kを切り替えた時点からの経過時間に基づき、次の補正係数Kの切替を行ってもよいことは言うまでもない。例えば、キャリッジ31の加速開始時点から定速状態に移行するまでの時間である加速時間、定速状態の開始時点から減速状態に移行するまでの時間である定速時間、減速状態の開始時点から停止するまでの時間である減速時間、の各時間が経過する度に、S111又はS211で予め設定された時間が経過したと判断して、補正係数Kの切替を行ってもよい。
この他、本発明は、画像形成装置1に限らず、読取装置やその他のキャリッジ搬送機構を備えた種々の電気的装置に適用することができる。
最後に、用語間の対応関係について説明する。本実施例の制御本体部805は、制御手段の一例に対応し、信号処理部801が実行する処理及び位置・速度特定部803が実行する位置特定処理及び速度特定処理は、特定手段によって実現される処理の一例に対応し、本実施例における座標記憶部809は、区画情報記憶手段の一例に対応する。