本発明は主に左右の躯体間等の固定構造物の間の目地部に取り付けられる壁面用目地装置等の構造物を支持する固定構造物の間の構造物の支持装置に関する。
地震のときに左右の躯体(建物)が揺れ動き、衝突することを避けるために、予測される揺れ寸法以上にクリアランス(目地部)を設けることが従来から行われており、免震ビル等においては左右の揺れ幅は次第に大きくなり、そのクリアランスは2000mm程度必要となっている。
従来、左右の躯体の移動量(揺れ動き幅)は200〜300mmであったが、移動量が1000mmを超えるようになり、このような大きな移動量を吸収できるクリアランスを形成する場合、左右の躯体からそれぞれ目地装置等の構造物を持ち出し、しのいでいた。
しかしながら、今日では移動量が更に大きくなっており、この移動量の3倍以上のクリアランスを形成しなければならないことがあり、このような大きなクリアランスを塞ぐ構造物を設ける場合、その構造物自体が自身の荷重に耐えることができないという問題があった。
具体的には、躯体間に壁面用目地装置等の構造物を設置する場合、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている目地装置のように、躯体間のクリアランスが小さければ左右の躯体に取り付けたパンタグラフ状のリンク部材を用いて壁面用目地装置等を支持することができるものの、前述したように躯体間のクリアランスが大きい場合には、構造物の重量が大きくなるとともに、壁面用目地装置等の自重により中央部が下方へたわんでしまうという問題があった。
このような問題を解決するため、例えば地面に支柱等を固定し、構造物を底面から支持することが一般的に行われているが、構造物の下部が道路や通路等の場合、支柱を設けることにより、通路等の幅が狭くなり、車両等の通行が制限されてしまうという欠点があった。
特開2015−71908号公報
特開2009−108592号公報
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、重量が大きい構造物を支持することができるとともに、構造物の下部の通路等の通行を妨げない構造物の支持装置を提供することを目的としている。
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の固定構造物の間の構造物の支持装置は、固定構造物の間に取り付けられる伸縮可能な第1の支持部材と、前記第1の支持部材の略中央部に一端部が支持されて取り付けられ、前記第1の支持部材と略直交し、構造物と連結される支持バーと、前記支持バーを前記固定構造物の間の略中央に常時位置させる中央維持機構と、前記支持バーの他端部側を支持する第2の支持部材とで構成されることを特徴とする。
請求項2に記載の固定構造物の間の構造物の支持装置の前記第1の支持部材は、前記第1の支持部材の左右方向の略中間にその中央部が位置する中央支持アームと、前記中央支持アーム内部にスライド可能に挿入され、前記左右の躯体に取り付けられる取付具を有する1対の端部支持アームとで構成され、前記支持バーは、前記中央支持アームに取り付けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の固定構造物の間の構造物の支持装置の前記第2の支持部材は、目地部を介して設けられた左右の躯体間に取り付けられ、前記支持バーの他端部側に所定間隔を有して複数個設けられていることを特徴とする。
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)例えば目地部の略中央に位置する支持バーにより壁面用目地装置等の構造物を支持することができるので、重量の大きい様々な構造物を取り付けることができる。
(2)第1の支持部材を用いて支持バーを取り付けることにより、地震によって目地部の幅が変化しても躯体、第1の支持部材、第2の支持部材等が破損することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図9乃至図11は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
第1の実施形態の構造物の支持装置の正面図。
構造物の支持装置の平面図。
第1の支持部材の説明図。
第2の支持部材の説明図。
壁面用目地装置を支持した状態の正面図。
図5の6−6線断面図。
地震で目地部が狭くなった状態の平面視側からの説明図。
地震で目地部が広くなった状態の平面視側からの説明図。
第2の実施形態の構造物の支持装置の正面図。
壁面用目地装置を支持した状態の正面図。
図10の11−11線に沿う断面図。
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して左右に設けられた一方の躯体3と他方の躯体4(固定構造物3、4)間に設置された壁面用目地装置等、固定構造物3、4の間を接続する構造物5を支持する構造物の支持装置である。
なお、左右方向とは図1や図5(正面視)における左右方向であり、前後方向とは図6における上下方向をいい、上下方向とは図1における上下方向をいう。
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
この構造物の支持装置1は、図1及び図2に示すように、一方の躯体3に一端部が取り付けられ、前記一方の躯体3に目地部2を介して対向する他方の躯体4に他端部が取り付けられた水平姿勢の第1の支持部材6と、前記第1の支持部材6の略中央部に一端部、本実施形態においては、下端部が支持された状態で取り付けられ、前記第1の支持部材6と略直交_Hlk17294901し、構造物と連結される垂直状態の支持バー7_Hlk17294901と、前記支持バー7を左右方向の略中央(目地部2の左右方向の略中央部)に常時位置させることができるように、前記左右の躯体3、4に略水平状態で設けられた中央維持機構8と、前記支持バー7の他端部(上端部)側を支持することができるように、前記左右の躯体3、4に略水平状態で設けられた第2の支持部材9とで構成されている。
ところで、他端部側とは、本願においては第1の支持部材6よりも他端部側をいうものであり、他端部付近だけでなく、中間部付近や中間部よりも一端部寄りの部位を含むものである。
付言すると、本実施形態においては、第1及び第2の支持部材6、9が支持バー7を介して荷重を受けることにより、ともに一方及び他方の躯体(固定構造物)3、4の間に存在する伸縮可能な構造物5、例えば壁面用目地装置5が自重や暴風により受ける荷重(風圧)を分散することができ、構造物5が変形等することを防止することができる。
構造物の支持装置1は地震時に複数棟(例えば左右の躯体3、4)間に設ける、伸縮自在で、上下動にも対応する建物 又は通路、又は道路に使用する事を目的とする構造体である。
であるから、垂直荷重に対応する支持バー7は又外壁部分には風圧に対して強度が必要で、それぞれの左右の躯体3、4から相手側に向かって渡す第1の支持部材6は、伸縮式で水平線から見て、どちらかの床レベルが上下に変位しても追従でき、屋根や内壁、天井間の目地部2にも設けることができるものである。
それ故に、第1の支持部材6は、図3に示すように、この第1の支持部材6全体の左右方向の略中間にその中央部が位置する角パイプ状の中央支持アーム10と、前記中央支持アーム10内部にスライド可能に挿入され、前記一方と他方の左右の躯体3、4に取り付けられる取付具11を有する1対の端部支持アーム12とで構成されているおり、全体として左右方向に伸縮可能に構成されている。
また、前記中央支持アーム10は、断面四角形の角パイプ状に形成されており、その両端部側の内壁面には、端部支持アーム12のスライドをスムーズにするためのローラー等の滑動部材13が取り付けられている。
端部支持アーム12は、本実施形態においては、角柱状又は角パイプ状で左右1対の端部支持アーム本体14と、この1対の端部支持アーム本体14と中央支持アーム10の間にそれぞれ設けられた角パイプ状の中間支持アーム15とで構成されている。本実施形態においては、図1に示すように、一方の躯体3側から、端部支持アーム本体14、中間支持アーム15、中央支持アーム10、中間支持アーム15、端部支持アーム本体14の順に接続されて第1の支持部材6を構成している。このように内部寸法が異なる箱状又は筒状の部材を互いに入れ子のような構造で接続することにより第1の支持部材6を構成している。本実施形態においては、中央支持アーム15が最も大きい角管状の部材となり、断面寸法が、小、中、大、中、小となるように接続しているが、例えば、一方の躯体3側の端部支持アーム本体14が最も大きい断面寸法を有し、他方の躯体4側に向かうに従って断面寸法が小さくなるように構成してもよい(全体として先細り形状)。また、他方の躯体4側の端部支持アーム本体14が最も大きい断面寸法を有し、一方の躯体3側に向かうに従って断面寸法が小さくなるように構成した第1の支持部材6としてもよい。
なお、端部支持アーム12は、1対の端部支持アーム本体14のみで構成してもよいし、中間支持アーム15をそれぞれ複数個接続して構成してもよい。
この中間支持アーム15にも端部支持アーム本体14をスムーズにスライドさせる滑動部材13が設けられている。また、中間支持アーム15や端部支持アーム本体14には脱落防止のためのストッパー(図示せず)等を設けることが望ましい。
この取付具11は、一方の躯体3又は他方の躯体4に固定される受け金具28と、この受け金具28に前後方向に回転可能に挿入される取付金具29とで構成されており、この取付金具29の取付部が端部支持アーム本体14とピン30等により取り付けられており、端部支持アーム本体14はこのピン30を支点に上下方向に回動可能になっている。そのため、端部支持アーム本体14は上下方向及び前後方向に回転可能に取り付けられている。
なお、1対の端部支持アーム本体14はそれぞれ上下方向に回動可能に取り付けられているものの、中間支持アーム15や中央支持アーム10と略直線的に接続されているため、通常時において上下方向等に回動することはない。
バー状の支持バー7は、本実施形態においては、四角柱状で金属製の部材で、上下方向に延在するように設けられている。この支持バー7の下端部は中央支持アームの略中央部の上面に固定されて支持されている。また、他端部側は上端部付近及び中央部付近に設けられた第2の支持部材9により支持されている。
この支持バー7と例えば壁面用目地装置5を連結することにより、壁面用目地装置5の荷重を支持バー7を介して第1の支持部材6が受けることができ、重量の大きい壁面用目地装置5等であってもその荷重を受けることができるとともに、左右の寸法が大きい場合にも、中央部が下方へたわむことを防止できる。
支持バー7の他端部(上端部)付近に、例えば目地部2に設けられる笠木装置や屋上用目地装置等を接続し支持してもよい。また、支持バー7に床用目地装置を接続し支持することもできる。
中央維持機構8は、その略中央部に枢支部16を有し、その両端部が回動可能に左右の躯体3、4に取り付けられたリンク部材17と、リンク部材17の枢支部16に設けられ、前記支持バー7に連結される連結部材18とで構成されている。リンク部材17の中央部は常時目地部2の中央部に位置するため、この連結部材18により前記枢支部16と支持バー7が接続されることにより、支持バー7も常時目地部2の略中央部に位置する。
なお、リンク部材17は好ましくは所定間隔を有して複数個設けることが望ましく、本実施形態においては、上下方向に所定間隔を有して2つ設けられている。
第2の支持部材9は、本実施形態においては、図4に示すように、第1の支持部材6と略同一の構成のアーム状の部材で、中央支持アーム10aと、前記中央支持アーム10a内部にスライド可能に挿入され、前記一方と他方の左右の躯体3、4に取り付けられる取付具11aを有する1対の端部支持アーム12aで構成されており、この端部支持アーム12aも、端部支持アーム本体14a及び中央支持アーム10の間にそれぞれ設けられた角パイプ状の中間支持アーム15aで構成されている。取付具11aについても、第1の支持部材6に用いられているものと略同一の構成であり、受け金具28aと、取付金具29aとピン30aで構成されている。
この第2の支持部材9は、支持バー7の他端部付近(上端部付近)及び中央部付近に設けられており、第2の支持部材9の中央支持アーム10aの側面には、支持金具19が固定され、この支持金具19で第2の支持部材9と支持バー7を接続し、支持バー7の他端部側を第2の支持部材9で支持している。
本発明の構造物の支持装置1の使用状態の説明を構造物5として壁面用目地装置5を支持する場合について図5乃至図8に示す。
この壁面用目地装置(構造物)5は、両端部が左右の躯体3、4に上下方向に所定間隔を有して複数個取り付けられ、それぞれ復数の取付部20(枢支部)を有するパンタグラフ状のリンク機構21と、このリンク機構21の取付部20にそれぞれ略垂直に取り付けられた複数個のバー状の目地プレート取付部材22と、この目地プレート取付部材22にそれぞれ取り付けられた目地プレート23とで構成されている。
この壁面用目地装置5のリンク機構21の略中央に位置する取付部(中央枢支部)20aは、構造物の支持装置1の支持バー7に連結ピン24等により接続されリンク機構21にかかる荷重の一部を前記連結ピン24を介して構造物の支持装置1が支持する。これにより、重量の大きい壁面用目地装置5であっても荷重を分散することができるとともに、リンク機構21の中央部が自重により下方へたわむことを防止することができる。また、暴風雨により目地プレート23等にかかる荷重にも耐えることができる。
ところで、床用目地装置や天井用目地装置、屋上用目地装置等の構造物5を左右の躯体3、4間に設置する場合には、壁面用目地装置5と同様に、これらの構造物を支持バー7に接続してもよい。この場合、1つの構造物の支持装置1にすべての構造物5を接続してもよいし、複数個の構造物の支持装置1を用いて天井用目地装置等の構造物5をそれぞれ支持してもよい。
この使用状態において、地震で一方と他方の左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなった場合には、図7に示すように、構造物の支持装置1の第1の支持部材6が収縮するとともに、壁面用目地装置5のリンク機構21が収縮して複数個の目地プレート23の重なり幅が大きくなり、地震による揺れ動きを吸収する。
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図8に示すように、構造物の支持装置1の第1の支持部材6が伸長するとともに、壁面用目地装置5のリンク機構21が伸長して複数個の目地プレート23の重なり幅が小さくなり、地震による揺れ動きを吸収する。
ところで、付勢具やリンク等(図示せず)によって第1の支持部材6の中間支持アーム15のスライド移動を調整し、端部支持アーム本体14、中間支持アーム15及び中央支持アーム10の重なり幅が略同じになるように(均等に伸縮するように)構成してもよい。
なお、図示しないが地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動いた場合についても第1の支持部材6は取付具11の取付金具29を支点に前後方向に回動し、揺れ動きを吸収する。また、左右の躯体3、4が異なる上下方向に揺れ動いた場合には、第1の支持部材6は取付具11のピン30を支点に上下方向に回動し、揺れ動きを吸収する。
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図9乃至図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図9乃至図11に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、1対のラック25とこのラック25のネジ部26と噛み合い、常時目地部2の略中央部に位置するピニオン27と、このピニオン27の中心と略同軸となるように取り付けられた連結部材18とからなる中央維持機構8Aを用いた点で、このような構造物の支持装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、第2の支持部材については第1の支持部材と略同一の構成のアーム状の部材を用いるものについて説明したが、例えば支持バーの上方に天井等がある場合には、天井に吊金具等を設け、この吊金具と支持バーの他端部付近を接続して支持バーの他端部側を支持する支持部材を第2の支持部材としてもよいし、このような吊り金具とアーム状の支持部材を混在させた第2の支持部材としてもよい。
また、本発明の実施形態においては、支持バーが略垂直となるように設置する形態について説明したが、例えば支持バーが略水平に支持されるように左右の躯体に第1の支持部材を取り付けて床用目地装置や壁面用目地装置を支持してもよい。このように略水平に支持バーが支持されるように取り付け、この支持バーに小部屋や渡り通路等の構造物を目地部の中央部に支持させることができる。このような従来であれば地面から支柱等を介して支持される構造物を支持させることにより、地面に支柱等を設けなくてもよく、目地部の下方が道路等である場合には、支柱等により車両等の通行を妨げることを防止できる。このような構造物を設ける場合、この構造物と左右の躯体(固定構造物)との間には、床用目地装置や壁面用目地装置等も併せて設けられる。
本発明の実施形態においては、左右の躯体に両端部が取り付けられたリンク機構の中央の取付部を支持バーと連結してリンク機構の荷重を支持しているが、例えば、一端部を一方の躯体に取り付け他端部を支持バーに取り付けた一方のリンク機構と、一端部を他方の躯体に取り付け、他端部を支持バーに取り付けた他方のリンク機構を用いて、この一方と他方のリンク機構の取付部に目地プレート取付部材を介して目地プレートを取り付けてもよい。
本発明は壁面用目地装置や床用目地装置等の構造物を支持する構造物の支持装置を製造する産業で利用される。
1、1A:構造物の支持装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:構造物、 6:第1の支持部材、
7:支持バー、 8、8A:中央維持機構、
9:第2の支持部材、 10:中央支持アーム、
11:取付具、 12:端部支持アーム、
13:滑動部材、 14:端部支持アーム本体、
15:中間支持アーム、 16:枢支部、
17:リンク部材、 18:連結部材、
19:支持金具、 20:取付部、
21:リンク機構、 22:目地プレート取付部材、
23:目地プレート、 24:連結ピン、
25:ラック、 26:ネジ部、
27:ピニオン、 28:受け金具、
29:取付金具、 30:ピン。
本発明は主に左右の躯体間等の固定構造物の間の目地部に取り付けられる壁面用目地装置等の構造物を支持する固定構造物の間の構造物の支持装置に関する。
地震のときに左右の躯体(建物)が揺れ動き、衝突することを避けるために、予測される揺れ寸法以上にクリアランス(目地部)を設けることが従来から行われており、免震ビル等においては左右の揺れ幅は次第に大きくなり、そのクリアランスは2000mm程度必要となっている。
従来、左右の躯体の移動量(揺れ動き幅)は200〜300mmであったが、移動量が1000mmを超えるようになり、このような大きな移動量を吸収できるクリアランスを形成する場合、左右の躯体からそれぞれ目地装置等の構造物を持ち出し、しのいでいた。
しかしながら、今日では移動量が更に大きくなっており、この移動量の3倍以上のクリアランスを形成しなければならないことがあり、このような大きなクリアランスを塞ぐ構造物を設ける場合、その構造物自体が自身の荷重に耐えることができないという問題があった。
具体的には、躯体間に壁面用目地装置等の構造物を設置する場合、例えば特許文献1や特許文献2に記載されている目地装置のように、躯体間のクリアランスが小さければ左右の躯体に取り付けたパンタグラフ状のリンク部材を用いて壁面用目地装置等を支持することができるものの、前述したように躯体間のクリアランスが大きい場合には、構造物の重量が大きくなるとともに、壁面用目地装置等の自重により中央部が下方へたわんでしまうという問題があった。
このような問題を解決するため、例えば地面に支柱等を固定し、構造物を底面から支持することが一般的に行われているが、構造物の下部が道路や通路等の場合、支柱を設けることにより、通路等の幅が狭くなり、車両等の通行が制限されてしまうという欠点があった。
特開2015−71908号公報
特開2009−108592号公報
本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、重量が大きい構造物を支持することができるとともに、構造物の下部の通路等の通行を妨げない構造物の支持装置を提供することを目的としている。
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の固定構造物の間の構造物の支持装置は、固定構造物の間に取り付けられる伸縮可能な第1の支持部材と、前記第1の支持部材の略中央部に下端部が支持されて取り付けられ、前記第1の支持部材と略直交し、構造物と連結される支持バーと、前記支持バーを前記固定構造物の間の略中央に常時位置させる中央維持機構と、前記支持バーの上端部側を支持する第2の支持部材とで構成され、前記支持バーの下端部は、前記第1の支持部材の略中央部の上面に固定されて支持されていることを特徴とする。
請求項2に記載の固定構造物の間の構造物の支持装置の前記第1の支持部材は、前記第1の支持部材の略中間にその中央部が位置する中央支持アームと、前記中央支持アーム内部にスライド可能に挿入され、前記固定構造物に取り付けられる取付具を有する1対の端部支持アームとで構成され、前記支持バーは、前記中央支持アームの略中央部の上面に固定されていることを特徴とする。
請求項3に記載の固定構造物の間の構造物の前記第2の支持部材は、前記支持バーの他端部側に所定間隔を有して複数個設けられていることを特徴とする。
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)例えば目地部の略中央に位置する支持バーにより壁面用目地装置等の構造物を支持することができるので、重量の大きい様々な構造物を取り付けることができる。
(2)第1の支持部材を用いて支持バーを取り付けることにより、地震によって目地部の幅が変化しても躯体、第1の支持部材、第2の支持部材等が破損することなく地震による揺れ動きを吸収することができる。
図1乃至図8は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図9乃至図11は本発明の第2の実施形態を示す説明図である。
第1の実施形態の構造物の支持装置の正面図。
構造物の支持装置の平面図。
第1の支持部材の説明図。
第2の支持部材の説明図。
壁面用目地装置を支持した状態の正面図。
図5の6−6線断面図。
地震で目地部が狭くなった状態の平面視側からの説明図。
地震で目地部が広くなった状態の平面視側からの説明図。
第2の実施形態の構造物の支持装置の正面図。
壁面用目地装置を支持した状態の正面図。
図10の11−11線に沿う断面図。
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
図1乃至図8に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は目地部2を介して左右に設けられた一方の躯体3と他方の躯体4(固定構造物3、4)間に設置された壁面用目地装置等、固定構造物3、4の間を接続する構造物5を支持する構造物の支持装置である。
なお、左右方向とは図1や図5(正面視)における左右方向であり、前後方向とは図6における上下方向をいい、上下方向とは図1における上下方向をいう。
また、本発明において躯体とは、建物、道路、スラブ、エレベーターシャフト等の目地プレートを設置可能な建造物をいい、出入口とはドアや扉の設けられた出入口だけではなく、人や車両等が通行できる通路も含むものである。
この構造物の支持装置1は、図1及び図2に示すように、一方の躯体3に一端部が取り付けられ、前記一方の躯体3に目地部2を介して対向する他方の躯体4に他端部が取り付けられた水平姿勢の第1の支持部材6と、前記第1の支持部材6の略中央部に一端部、本実施形態においては、下端部が支持された状態で取り付けられ、前記第1の支持部材6と略直交し、構造物と連結される垂直状態の支持バー7と、前記支持バー7を左右方向の略中央(目地部2の左右方向の略中央部)に常時位置させることができるように、前記左右の躯体3、4に略水平状態で設けられた中央維持機構8と、前記支持バー7の他端部(上端部)側を支持することができるように、前記左右の躯体3、4に略水平状態で設けられた第2の支持部材9とで構成されている。
ところで、他端部側とは、本願においては第1の支持部材6よりも他端部側をいうものであり、他端部付近だけでなく、中間部付近や中間部よりも一端部寄りの部位を含むものである。
付言すると、本実施形態においては、第1及び第2の支持部材6、9が支持バー7を介して荷重を受けることにより、ともに一方及び他方の躯体(固定構造物)3、4の間に存在する伸縮可能な構造物5、例えば壁面用目地装置5が自重や暴風により受ける荷重(風圧)を分散することができ、構造物5が変形等することを防止することができる。
構造物の支持装置1は地震時に複数棟(例えば左右の躯体3、4)間に設ける、伸縮自在で、上下動にも対応する建物 又は通路、又は道路に使用する事を目的とする構造体である。
であるから、垂直荷重に対応する支持バー7は又外壁部分には風圧に対して強度が必要で、それぞれの左右の躯体3、4から相手側に向かって渡す第1の支持部材6は、伸縮式で水平線から見て、どちらかの床レベルが上下に変位しても追従でき、屋根や内壁、天井間の目地部2にも設けることができるものである。
それ故に、第1の支持部材6は、図3に示すように、この第1の支持部材6全体の左右方向の略中間にその中央部が位置する角パイプ状の中央支持アーム10と、前記中央支持アーム10内部にスライド可能に挿入され、前記一方と他方の左右の躯体3、4に取り付けられる取付具11を有する1対の端部支持アーム12とで構成されているおり、全体として左右方向に伸縮可能に構成されている。
また、前記中央支持アーム10は、断面四角形の角パイプ状に形成されており、その両端部側の内壁面には、端部支持アーム12のスライドをスムーズにするためのローラー等の滑動部材13が取り付けられている。
端部支持アーム12は、本実施形態においては、角柱状又は角パイプ状で左右1対の端部支持アーム本体14と、この1対の端部支持アーム本体14と中央支持アーム10の間にそれぞれ設けられた角パイプ状の中間支持アーム15とで構成されている。本実施形態においては、図1に示すように、一方の躯体3側から、端部支持アーム本体14、中間支持アーム15、中央支持アーム10、中間支持アーム15、端部支持アーム本体14の順に接続されて第1の支持部材6を構成している。このように内部寸法が異なる箱状又は筒状の部材を互いに入れ子のような構造で接続することにより第1の支持部材6を構成している。本実施形態においては、中央支持アーム15が最も大きい角管状の部材となり、断面寸法が、小、中、大、中、小となるように接続しているが、例えば、一方の躯体3側の端部支持アーム本体14が最も大きい断面寸法を有し、他方の躯体4側に向かうに従って断面寸法が小さくなるように構成してもよい(全体として先細り形状)。また、他方の躯体4側の端部支持アーム本体14が最も大きい断面寸法を有し、一方の躯体3側に向かうに従って断面寸法が小さくなるように構成した第1の支持部材6としてもよい。
なお、端部支持アーム12は、1対の端部支持アーム本体14のみで構成してもよいし、中間支持アーム15をそれぞれ複数個接続して構成してもよい。
この中間支持アーム15にも端部支持アーム本体14をスムーズにスライドさせる滑動部材13が設けられている。また、中間支持アーム15や端部支持アーム本体14には脱落防止のためのストッパー(図示せず)等を設けることが望ましい。
この取付具11は、一方の躯体3又は他方の躯体4に固定される受け金具28と、この受け金具28に前後方向に回転可能に挿入される取付金具29とで構成されており、この取付金具29の取付部が端部支持アーム本体14とピン30等により取り付けられており、端部支持アーム本体14はこのピン30を支点に上下方向に回動可能になっている。そのため、端部支持アーム本体14は上下方向及び前後方向に回転可能に取り付けられている。
なお、1対の端部支持アーム本体14はそれぞれ上下方向に回動可能に取り付けられているものの、中間支持アーム15や中央支持アーム10と略直線的に接続されているため、通常時において上下方向等に回動することはない。
バー状の支持バー7は、本実施形態においては、四角柱状で金属製の部材で、上下方向に延在するように設けられている。この支持バー7の下端部は中央支持アームの略中央部の上面に固定されて支持されている。また、他端部側は上端部付近及び中央部付近に設けられた第2の支持部材9により支持されている。
この支持バー7と例えば壁面用目地装置5を連結することにより、壁面用目地装置5の荷重を支持バー7を介して第1の支持部材6が受けることができ、重量の大きい壁面用目地装置5等であってもその荷重を受けることができるとともに、左右の寸法が大きい場合にも、中央部が下方へたわむことを防止できる。
支持バー7の他端部(上端部)付近に、例えば目地部2に設けられる笠木装置や屋上用目地装置等を接続し支持してもよい。また、支持バー7に床用目地装置を接続し支持することもできる。
中央維持機構8は、その略中央部に枢支部16を有し、その両端部が回動可能に左右の躯体3、4に取り付けられたリンク部材17と、リンク部材17の枢支部16に設けられ、前記支持バー7に連結される連結部材18とで構成されている。リンク部材17の中央部は常時目地部2の中央部に位置するため、この連結部材18により前記枢支部16と支持バー7が接続されることにより、支持バー7も常時目地部2の略中央部に位置する。
なお、リンク部材17は好ましくは所定間隔を有して複数個設けることが望ましく、本実施形態においては、上下方向に所定間隔を有して2つ設けられている。
第2の支持部材9は、本実施形態においては、図4に示すように、第1の支持部材6と略同一の構成のアーム状の部材で、中央支持アーム10aと、前記中央支持アーム10a内部にスライド可能に挿入され、前記一方と他方の左右の躯体3、4に取り付けられる取付具11aを有する1対の端部支持アーム12aで構成されており、この端部支持アーム12aも、端部支持アーム本体14a及び中央支持アーム10の間にそれぞれ設けられた角パイプ状の中間支持アーム15aで構成されている。取付具11aについても、第1の支持部材6に用いられているものと略同一の構成であり、受け金具28aと、取付金具29aとピン30aで構成されている。
この第2の支持部材9は、支持バー7の他端部付近(上端部付近)及び中央部付近に設けられており、第2の支持部材9の中央支持アーム10aの側面には、支持金具19が固定され、この支持金具19で第2の支持部材9と支持バー7を接続し、支持バー7の他端部側を第2の支持部材9で支持している。
本発明の構造物の支持装置1の使用状態の説明を構造物5として壁面用目地装置5を支持する場合について図5乃至図8に示す。
この壁面用目地装置(構造物)5は、両端部が左右の躯体3、4に上下方向に所定間隔を有して複数個取り付けられ、それぞれ復数の取付部20(枢支部)を有するパンタグラフ状のリンク機構21と、このリンク機構21の取付部20にそれぞれ略垂直に取り付けられた複数個のバー状の目地プレート取付部材22と、この目地プレート取付部材22にそれぞれ取り付けられた目地プレート23とで構成されている。
この壁面用目地装置5のリンク機構21の略中央に位置する取付部(中央枢支部)20aは、構造物の支持装置1の支持バー7に連結ピン24等により接続されリンク機構21にかかる荷重の一部を前記連結ピン24を介して構造物の支持装置1が支持する。これにより、重量の大きい壁面用目地装置5であっても荷重を分散することができるとともに、リンク機構21の中央部が自重により下方へたわむことを防止することができる。また、暴風雨により目地プレート23等にかかる荷重にも耐えることができる。
ところで、床用目地装置や天井用目地装置、屋上用目地装置等の構造物5を左右の躯体3、4間に設置する場合には、壁面用目地装置5と同様に、これらの構造物を支持バー7に接続してもよい。この場合、1つの構造物の支持装置1にすべての構造物5を接続してもよいし、複数個の構造物の支持装置1を用いて天井用目地装置等の構造物5をそれぞれ支持してもよい。
この使用状態において、地震で一方と他方の左右の躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が狭くなった場合には、図7に示すように、構造物の支持装置1の第1の支持部材6が収縮するとともに、壁面用目地装置5のリンク機構21が収縮して複数個の目地プレート23の重なり幅が大きくなり、地震による揺れ動きを吸収する。
地震で躯体3、4が左右方向に揺れ動き目地部2が広くなると、図8に示すように、構造物の支持装置1の第1の支持部材6が伸長するとともに、壁面用目地装置5のリンク機構21が伸長して複数個の目地プレート23の重なり幅が小さくなり、地震による揺れ動きを吸収する。
ところで、付勢具やリンク等(図示せず)によって第1の支持部材6の中間支持アーム15のスライド移動を調整し、端部支持アーム本体14、中間支持アーム15及び中央支持アーム10の重なり幅が略同じになるように(均等に伸縮するように)構成してもよい。
なお、図示しないが地震で左右の躯体3、4が異なる前後方向に揺れ動いた場合についても第1の支持部材6は取付具11の取付金具29を支点に前後方向に回動し、揺れ動きを吸収する。また、左右の躯体3、4が異なる上下方向に揺れ動いた場合には、第1の支持部材6は取付具11のピン30を支点に上下方向に回動し、揺れ動きを吸収する。
[発明を実施するための異なる形態]
次に、図9乃至図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図9乃至図11に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、1対のラック25とこのラック25のネジ部26と噛み合い、常時目地部2の略中央部に位置するピニオン27と、このピニオン27の中心と略同軸となるように取り付けられた連結部材18とからなる中央維持機構8Aを用いた点で、このような構造物の支持装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、第2の支持部材については第1の支持部材と略同一の構成のアーム状の部材を用いるものについて説明したが、例えば支持バーの上方に天井等がある場合には、天井に吊金具等を設け、この吊金具と支持バーの他端部付近を接続して支持バーの他端部側を支持する支持部材を第2の支持部材としてもよいし、このような吊り金具とアーム状の支持部材を混在させた第2の支持部材としてもよい。
また、本発明の実施形態においては、支持バーが略垂直となるように設置する形態について説明したが、例えば支持バーが略水平に支持されるように左右の躯体に第1の支持部材を取り付けて床用目地装置や壁面用目地装置を支持してもよい。このように略水平に支持バーが支持されるように取り付け、この支持バーに小部屋や渡り通路等の構造物を目地部の中央部に支持させることができる。このような従来であれば地面から支柱等を介して支持される構造物を支持させることにより、地面に支柱等を設けなくてもよく、目地部の下方が道路等である場合には、支柱等により車両等の通行を妨げることを防止できる。このような構造物を設ける場合、この構造物と左右の躯体(固定構造物)との間には、床用目地装置や壁面用目地装置等も併せて設けられる。
本発明の実施形態においては、左右の躯体に両端部が取り付けられたリンク機構の中央の取付部を支持バーと連結してリンク機構の荷重を支持しているが、例えば、一端部を一方の躯体に取り付け他端部を支持バーに取り付けた一方のリンク機構と、一端部を他方の躯体に取り付け、他端部を支持バーに取り付けた他方のリンク機構を用いて、この一方と他方のリンク機構の取付部に目地プレート取付部材を介して目地プレートを取り付けてもよい。
本発明は壁面用目地装置や床用目地装置等の構造物を支持する構造物の支持装置を製造する産業で利用される。
1、1A:構造物の支持装置、 2:目地部、
3:一方の躯体、 4:他方の躯体、
5:構造物、 6:第1の支持部材、
7:支持バー、 8、8A:中央維持機構、
9:第2の支持部材、 10:中央支持アーム、
11:取付具、 12:端部支持アーム、
13:滑動部材、 14:端部支持アーム本体、
15:中間支持アーム、 16:枢支部、
17:リンク部材、 18:連結部材、
19:支持金具、 20:取付部、
21:リンク機構、 22:目地プレート取付部材、
23:目地プレート、 24:連結ピン、
25:ラック、 26:ネジ部、
27:ピニオン、 28:受け金具、
29:取付金具、 30:ピン。