以下、本発明に係るエレベータ用安全柵ユニット、およびエレベータ用安全柵の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<エレベータ用安全柵設置対象エレベータ>
図1は、実施形態に係るエレベータ用安全柵(以下、単に「安全柵」と言う)が設けられる機械室レスエレベータの概略構成を示す斜視図である。なお、図1において、安全柵およびかご上に設置された各種機器の図示は省略している。
機械室レスエレベータ10(以下、単に「エレベータ10」と言う)は、一側面に出入口12が設けられた、略直方体形状をしたかご14を有する。出入口12には、中央両開き式のかご扉16が設けられている。
エレベータ10は、かご14の外底部に付設された吊り車18、昇降路20の上部に設けられた第1返し車22、昇降路20の下部に設けられた巻上機24の駆動シーブ26、昇降路20の上部に設けられた第2返し車28、および釣合おもり30の吊り車32に、この順で掛け渡された主ロープ34を有する。主ロープ34の第1端部34aは、昇降路20の上部に設けられた高架梁36に、第2端部34bは同じく昇降路20の上部に設けられた高架梁38に、それぞれ取り付けられている。
上記の構成から分かるように、エレベータ10は、かご14をその直上で吊り下げない(直上に主ロープの無い)タイプのエレベータである。
昇降路20内には、また、かご14を上下方向に案内するかご用ガイドレール40、42および釣合おもり30を上下方向に案内する釣合おもり用ガイドレール44、46が、それぞれ立設されている。
上記の構成からなるエレベータ10において、巻上機24が駆動されて駆動シーブ26が矢印Aの向きに回転されると、第1端部34aから第1返し車22に至る主ロープ34部分で引き上げられて、かご14が上昇すると共に、釣合おもり30はその自重等によって下降する。これとは反対に駆動シーブ26が矢印Bの向きに回転されると、第2返し車28から第2端部34bに至る主ロープ34部分で引き上げられて、釣合おもり30が上昇すると共に、かご14はその自重等によって下降する。
ここで、方形をしたかご14頂部の4辺の各々を図1に示すように、第一辺14a、第二辺14b、第三辺14c、第四辺14dと称することとする。かご扉16の上方に対応するのが第一辺14aである。第一辺14aと対向する辺が第四辺14dである。
<実施形態1>
かご14の上には、保守点検の際に作業員のかご14上からの転落を防止するための安全柵80が設けられている(図1では不図示)。実施形態1に係る安全柵80の平面図を図2に、正面図を図3に、左側面図を図4に、右側面を図5に、それぞれ示す。なお、図4において、後述する安全柵ユニット300の図示は省略し、図5において、後述する安全柵ユニット200の図示は省略している。
安全柵80は、かご14頂部の上記4辺の内、かご扉16上方の第一辺14aを除く、三辺(第二辺14b、第三辺14c、第四辺14d)の各々に対応して設置された3台のエレベータ用安全柵ユニット100、200、300(以下、単に「安全柵ユニット100、200、300」と言う)を有する。
かご14は、上枠48(図2、図4、図5)、一対のたて枠、下枠(いずれも不図示)からなる方形のかご枠で支持されており、安全柵ユニット100、200、300は、上枠48に後述する部材を介して取付けられている。上枠48の両端部には、上枠48と直交する姿勢で、形鋼からなる支持部材50、52が接合されている。支持部材50、52の一端部間には、形鋼からなる梁54が掛け渡されている。梁54の両端部は、それぞれ、支持部材50、52に接合されている。なお、図3において、梁54は、背後に存する部材を示すため、二点鎖線で描いている。
安全柵ユニット100、200、300の各々は、基本的に2本の支柱と当該2本の支柱間に掛け渡された上桟、中桟とを含む。安全柵ユニット100と安全柵ユニット300とは、基本的に同じ構成であるので、安全柵ユニット100を代表に説明する。この場合に、対応する構成部材同士の符号の末尾2桁には同じ数字を付して、安全柵ユニット300の詳細な説明については省略し、適宜言及するに止める。
安全柵ユニット100は、図3に示すように、2本の支柱102、104を有する。支柱102と支柱104は、その基端部が第四辺14dに沿って設けられている(図2、図12)。支柱102と支柱104には、上桟106と中桟108が水平に掛け渡されている。上桟106は、2本の支柱102、104の先端部間に掛け渡されている。中桟108は2本の支柱102、104の先端部と基端部の中間部間に掛け渡されている。
安全柵ユニット100の上桟106は、溶接、リベット、ねじ等によって、支柱102、104に接合されている。一方、中桟108は、支柱102、104の長さ方向における移動が拘束された拘束状態と支柱102、104の長さ方向にスライド自在となるスライド状態とに切り換え可能に設けられている。
当該切り換え可能とする構成について、図3、図6、図7を参照しながら説明する。支柱102、支柱104には、それぞれ、図3に示すように、案内部材110、112が取り付けられている。案内部材110と案内部材112は、中桟108をスライド自在に案内するための部材であるが、両部材は、同じ構成であるため、案内部材110を代表に説明する。
図6(a)は、図3の一部を拡大した図であり、図6(b)は、図6(a)の左側面図である。図6に示すように、上桟106、中桟108には、本例では、角形鋼管が用いられている。なお、支柱102にも、角形鋼管が用いられている。
案内部材110には、不等辺山形鋼が用いられており、その一辺部分が支柱102の側面に密接した状態で支柱102に取り付けられている。案内部材110の他辺部分には、図6(a)に示すように、支柱102の長さ方向に沿って長孔110aが開設されている。
中桟108の両端部(図6(a)には、一方の端部が示されている)には、対向する2辺部分にボルト挿通孔(不図示)が開設されており、当該2個のボルト挿通孔には、ボルト114が挿入されている。ボルト114は、長孔110aにも挿入されていて、長孔110から突出したネジ部には、蝶ナット116が螺入されている。
蝶ナット116を締め付けることにより、中桟108を支柱102の長さ方向における移動が拘束された拘束状態とすることができる。一方、蝶ナット116を弛めると、拘束状態が解除されて、中桟108は、(ボルト114、案内部材110を介して)支柱102の長さ方向にスライド自在なスライド状態となる。すなわち、案内部材110、ボルト114、蝶ナット116で、中桟108を支柱102の長さ方向にスライド自在とするスライド機構が構成されている。
中桟108を支柱102の先端部までスライドさせると、図7に示すように、上桟106と中桟102を支柱102の長さ方向における上端部の一箇所にまとめることができる。上端部で蝶ナット116を締め付けると、当該位置で中桟108が支柱102の長さ方向における移動が拘束された拘束状態となることは言うまでもない。
また、前記スライド状態においても、中桟108は、案内部材110、ボルト114、および蝶ナット116によって支柱102に連結されているため、スライド中に中桟108が支柱102から離脱することがない。これにより、スライド中の中桟108が、かご14上の足場に不測に落下してしまうことを防止できる。すなわち、案内部材110、ボルト114、および蝶ナット116からなるスライド機構は、中桟108を支柱102に連結する連結手段としても機能する。
続いて、安全柵ユニット200について説明する。安全柵ユニット100(300)は、上桟106(306)が支柱102,104(302,304)に接合されており、中桟108(308)が支柱102,104(302,304)の長さ方向の移動に関し拘束状態とスライド状態とに切り換え可能に設けられていた。これに対し、安全柵ユニット200は、中桟が支柱に接合されていて、上桟が支柱の長さ方向の移動に関し拘束状態とスライド状態とに切り換え可能に設けられている。
図4に示すように、安全柵ユニット200も、2本の支柱202、204を有する。支柱202と支柱204には、上桟206と中桟208が水平に掛け渡されている。上桟206は、2本の支柱202、204の先端部に掛け渡されている。中桟208は、2本の支柱202、204の先端部と基端部の中間部に掛け渡されている。安全柵ユニット200の上桟206と中桟208は、安全柵ユニット100(図3)とは異なり、上桟206と中桟208の両端部がそれぞれ水平方向に支柱204、202から突出している。なお、安全柵ユニット300の上桟306と中桟308は、一端部(支柱302側端部)が支柱302から突出している(図5)。
中桟208は、溶接、リベット、ねじ等によって、支柱202、204に接合されている。一方、上桟206は、支柱202、204の長さ方向における移動が拘束された拘束状態と支柱202、204の長さ方向にスライド自在となるスライド状態とに切り換え可能に設けられている。
当該切り換え可能とする構成について、図4、図8、図9を参照しながら説明する。支柱202、204には、それぞれ、図4に示すように、案内部材210、212が取り付けられている。案内部材210と案内部材212は、上桟206をスライド自在に案内するための部材であるが、両部材は同じ構成であるため、案内部材210を代表に説明する。
図8(a)は、図4の一部を拡大した図であり、図8(b)は、図8(a)の左側面図である。図8に示すように、上桟206、中桟208には、本例では、角形鋼管が用いられている。なお、支柱202にも、角形鋼管が用いられている。
案内部材210には、不等辺山形鋼が用いられており、その一辺部分が支柱202の側面に密接した状態で支柱202に取り付けられている。また、当該一辺部分の上端部は、角形鋼管からなる上桟206の一辺に相当する長さ分、切除されている。前記長さ分だけ前記一辺部分よりも長くなった他辺部分がL字状に屈曲されて、当該他辺部分の上面が支柱202の頂部と面一になっている。以下、L字状に屈曲された他辺部分を「屈曲部210b」と称し、屈曲部210b以外の残部を「ストレート部210c」と称することとする。
案内部材210には、屈曲部210bを含むその長さ方向に長孔210aが開設されている(屈曲部210bの長孔210aは図に現れていない。)。
上桟206の一端部と中間部(図8(a)には、一端部が示されている)には、対向する2辺部分にボルト挿通孔(不図示)が開設されており、当該2個のボルト挿通孔には、ボルト214が挿入されている。ボルト214は、長孔210aにも挿入されていて、長孔210aから突出したネジ部には、蝶ナット216が螺入されている。
図8は、屈曲部210cの長孔210a(図には現れていない)にボルト214が位置する状態を示しており、上桟206は支柱202の頂部に載置された状態となっている。また、図8は、蝶ナット216が締め付けられて、上桟206が支柱202の頂部に載置された状態で、支柱202の長さ方向における移動が拘束された拘束状態を表している。
このように、上桟206は、支柱202の頂部に載置された状態で拘束されるため、例えば、作業状況によって、作業員が上桟206に乗りかかってしまったとしても、その荷重が支柱202によって十分に支持される。
安全柵ユニット200において、蝶ナット216を弛めると、拘束状態が解除されて、上桟206が、(ボルト214、案内部材210を介して)支柱202の長さ方向にスライド自在なスライド状態となるのは、安全柵ユニット100と同様である。
蝶ナット216を弛めて、上桟206を長孔210aに沿ってスライドさせると、上桟206は、図9(b)において二点鎖線で示すような姿勢で、屈曲部210bからストレート部210cへと移行し、中桟208に当接するまで移動させることができる。すなわち、図9に示すように、上桟206と中桟208を支柱204の長さ方向における中程の一箇所にまとめることができる。この状態で、蝶ナット216を締め付けると、中桟208に当接した状態で、上桟206が支柱202の長さ方向における移動が拘束された拘束状態となることは言うまでもない。
また、前記スライド状態においても、上桟206が、案内部材210、ボルト214、および蝶ナット216によって支柱201に連結されているため、スライド中に上桟206が支柱202から離脱することがないのは、安全柵ユニット100の中桟108と同様である。すなわち、案内部材210、ボルト214、および蝶ナット216からなるスライド機構は、上桟206を支柱202に連結する連結手段としても機能し、これにより、スライド中の上桟206の不測の落下を防止することができる。
安全柵80は、使用時、すなわち、作業員がかご14上で作業をする際には、図2〜図5に示すように、安全柵ユニット100、200、300の各々は立った状態(各支柱102、104、202、204,302、304が起立した状態)で用いられる。一方、不使用時(収納時)、すなわち、エレベータ10が通常運転される際には、安全柵ユニット100、200、300の各々がかご14上に向かって倒れて(各支柱102、104、202、204、302、304がその基端部を中心に回転してかご14上に向かって倒伏して)収納状態とされる。
各支柱102、104、202、204、302、304が起立状態と倒伏状態とに切り換えられる機構は、いずれも基本的に同様である。そこで、安全柵ユニット100を代表に説明し、安全柵ユニット200、300については、対応する部材の符号の下2桁に安全柵ユニット100の符号の下2桁と同一の番号を付して、その説明については省略する。また、安全柵ユニット100の支柱102と支柱104の内、支柱102を例に説明する。
図10(a)は、支柱102の基端部およびその近傍を拡大した拡大図である。図10(b)は、図10(a)の右側面図である。図10(c)は、図10(a)におけるA・A線断面図である。図10(d)は、支柱102を起立状態から収納状態とされる過程を説明するための図である。
支柱102は、筒状をしたスタンド118に差し込まれて起立している。スタンド118は、横断面が「コ」字状をした溝形部材120と長方形のプレート122が接合されて、図10に示すように筒状をなしたものである。
スタンド118の下端部は、溶接(不図示)などによって、基台124に接合されている。基台124は、梁54(図3)に固定されている。溝形部材120の上端部部分において、「コ」字の対向する2辺部間の1辺部分が切除されている。また、前記2辺部の各々には、長手方向(上下方向)に長孔120aがそれぞれ開設されている。
支柱102は、スタンド118の中空部に差し込まれている。角形鋼管からなる支柱102の下端部分には、対向する2辺部に2個の貫通孔102aが開設されている。貫通孔102aには、図10(c)に示すように、ピン126が圧入されている。ピン126の支柱102から突出した両端部は、溝形部材120の長孔120aに挿入されている。
上記の構成において、安全柵ユニット100の使用時には、筒状をしたスタンド118の中空部に支柱102が差し込まれて、支柱102が起立状態とされる。起立状態から収納状態とするには、先ず、ピン126が長孔120aの上端に到達するまで支柱102を上方へ引き上げる。支柱102が引き上げられて、ピン126が長孔120aの上端に到達した状態が図10(d)に示す状態である。
次に、支柱102をその基端部(ピン126)を中心にかご上に向かって、支柱102の側面がプレート122の上端に当接するまで回転させて倒伏させる。倒伏した状態を図11に示す。図11において、一点鎖線で示すのは、支柱102の起立状態および倒伏状態に至る途中の姿勢を示している。
図10、図11に示す例では、倒伏した状態で支柱102は略水平である。すなわち、支柱102の基端部と先端部が略同じ高さになるが、これに限らず、プレート122の高さを低くして、基端部よりも先端部の方が低くなる(基端部の方が先端部よりも高くなる)ようにしても構わない。
また、安全柵ユニット100、200、300間で、プレート122の高さに差を設けても構わない。例えば、安全柵ユニット100のプレート122の高さを安全柵ユニット200、300のスタンド218、318を構成するプレートの高さよりも、少なくとも支柱102の1辺の長さ分低くし、スタンド218とスタンド318のプレートの高さは同じにしても構わない。
安全柵80を収納状態にする際、安全柵ユニット100は、中桟108をスライドさせて上桟106に重ねた状態とする。安全柵ユニット200は、上桟206をスライドさせて中桟208に重ねた状態とする。安全柵ユニット300は、中桟308をスライドさせて上桟306に重ねた状態とする。
上記のように何れか一方の桟がスライドされて、支柱に接合された他方の桟に重ねられた状態(支柱の長さ方向における一箇所にまとめられた状態)のまま、安全柵ユニット100、200、300の各支柱102、104、202、204、302、304をその基端部を中心に回転させて、かご14上に倒伏させる。
倒伏は、本例では、最初に安全柵ユニット100、次に、安全柵ユニット300、最後に安全柵ユニット200の順序で行われる。全ての安全柵ユニット100、200、300が倒伏されて収納状態となった安全柵80の平面図を図12に示す。
安全柵ユニット100のスタンド118のプレート122が、安全柵ユニット200、300のスタンド218、318のプレートよりも、上述したように低く設定されているため、支柱202と支柱104、支柱302、304と支柱102の無用な干渉が回避されている。すなわち、収納状態において(立体)交差する支柱同士の無用な干渉が回避されている。
図12に示すように、先ず、安全柵ユニット100の中桟108が上桟106までスライドしているため、かご14上には、安全柵ユニット100と干渉しない第1領域(支柱102、支柱104、および中桟108で囲まれた領域)が確保されている。また、安全柵ユニット300の中桟308が上桟306までスライドしているため、上記第1領域の内、図中斜線で示す、安全柵ユニット300と干渉しない第2領域(主として、支柱302、支柱304、支柱102および中桟308で囲まれた領域)が確保されている。そして、安全柵ユニット200の上桟206が中桟208までスライドされていて、上桟206が第2領域に進入するのが回避されている。
かご14上において、上記のようにして確保された比較的広い第2領域(斜線の領域)には、かご14上に設置される各種機器の内、一般的に最も多くのスペースが必要とされるかご14室内のための空気調整装置(不図示)が設置される。図12から分かるように、仮に、安全柵ユニット100、200、300のいずれの桟もスライド不可の構成とすると、安全柵ユニット100、200、300を倒伏させたときに、中桟108、中桟308、および上桟206が第2領域に進入して、第2領域に設置された機器(例えば、上記空気調整装置)と干渉してしまうところ、本例では、これらの桟をスライド可能とすることで、中桟108、中桟308、および上桟206の第2領域への進入を回避し、もって前記機器との干渉を防止している。
これにより、エレベータ10が通常運転される際には、安全柵ユニット100、200、300の各々をかご14上に向かって倒伏させて収納することができるため、オーバーヘッド寸法を可能な限り短縮することができる。
〔安全柵ユニットの変形例〕
エレベータ用安全柵ユニットは、上記した安全柵ユニット100、200、300に限らず、以下のような変形例とすることもできる。
(変形例1)
安全柵ユニット100(安全柵ユニット300も同様)では、案内部材110、ボルト114、および蝶ナット116で、中桟108を支柱102の長さ方向にスライド自在とするスライド機構と中桟108の支柱201の長さ方向における移動を拘束する拘束手段の両方を構成したが、スライド機構と拘束手段とは個別に設けても構わない。
そのように構成したエレベータ用安全柵ユニット400(以下、単に「安全柵ユニット400」と言う)を、図13、図14、図15に示す。図13は、使用状態における安全柵ユニット400の要部拡大図であり、図14は収納状態における安全柵ユニット400の要部拡大図である。図15(a)は、図13におけるB・B線に沿って後述する案内部材410のみを切断した断面図である。図15(b)は、図13におけるC・C線に沿って切断した断面図である。図15(c)は、図14におけるD・D線に沿って切断した断面図である。
図13に示すように、安全柵ユニット400も、2本の支柱402、404を有する。支柱402と支柱404には、上桟406と中桟408が水平に掛け渡されている。上桟406は、支柱402、404の先端部間に掛け渡されており、溶接、リベット、ねじ等によって、支柱402、404に接合されている。
中桟408を支柱402、404の長さ方向にスライド自在に保持するスライド機構を構成する案内部材410、412が、それぞれ支柱402、404に取り付けられている。案内部材410、412を含むスライド機構は、いずれも同様の構成なので、案内部材410を含むスライド機構を代表に説明する。
案内部材410には、溝形鋼が用いられており、一方の側面が支柱402の側面に密接した状態で支柱402に取り付けられている。溝形をした案内部材410の底部には、支柱402の長さ方向に沿って長孔410aが開設されている。
中桟408には、対向する2辺部分にボルト挿通孔(不図示)が開設されており、当該2個のボルト挿通孔には、図15(a)に示すように、ボルト414が挿入されている。中桟408から突出したボルト414のネジ部には、円筒状をしたスペーサ426、平ワッシャ428が外挿されている。平ワッシャ428よりもネジ部の先端側には、ナット430が螺入されていて、ボルト414とナット430が締め付けられている。
スペーサ426の外径は長孔410aの幅よりも小さく、高さは案内部材410の前記底部の厚みよりも大きく設定されていて、スペーサ426は、その高さ方向の一部が長孔410aに嵌っている。平ワッシャ428の外径は、長孔410aの幅よりも大きく設定されている。
上記の構成から明らかなように、案内部材410、ボルト414、スペーサ426、平ワッシャ428、およびナット430で、中桟408を支柱402の長さ方向にスライド自在に保持するスライド機構が構成されている。また、当該スライド機構は、中桟408を支柱402に連結する連結手段としても機能する。
なお、本例では、使用時における中桟408の支柱402の上下方向における位置決め、および、当該位置において中桟408を安定させる目的のため、受け部材432を設けている。受け部材432は、短冊状をした鋼板が、図15に示すように、鉤状に屈曲されてなるものであり、第1端片部432a、中間片部432b、第2端片部432cを有する。受け部材432は、図15(a)に示すように、第1端片部432aを支柱402の側面に密接した状態で、支柱402に接合されている。使用時に、中桟408は、中間片部432bで受け止められて、支柱402の上下方向における位置決めがなされる。
続いて、受け部材432で受け止められている中桟408が、不測に跳ね上がらないようにする手段、すなわち、支柱402の長さ方向における移動を拘束する拘束手段について説明する。
当該拘束手段は、L字金具434を含む。L字金具434は、短冊状をした鋼板がL字状に屈曲されてなるものであり、第1片部434aと第2片部434bを有する。L字金具434は、図13、図14、図15(a)、図15(b)に示すように、第1片部434aを支柱402に密接した状態で、支柱402に接合されている。
第2片部434bには、図15(b)、図15(c)に示すように、その厚み方向に貫通する孔434cが開設されている。また、第2片部434bには、孔434cと雌ネジ部が連通するようにナット436が、スポット溶接(不図示)等で接合されている。
ナット436には、蝶ボルト438が螺入されている。中桟408には、図15(b)に示す使用状態において(受け部材432で受け止められている状態において)、孔434cと連通する孔408aが開設されている(図14も参照)。そして、蝶ボルト438のネジ部がL字金具434の孔434cと中桟408の孔408aの両方に挿入されている。
以上の構成により、使用時には、L字金具434、ナット436、蝶ボルト438を含む拘束手段により、中桟408は、支柱402の長さ方向における移動が拘束された拘束状態とされる。
収納時には、ネジ部が中桟408の孔408aから脱出するまで、蝶ボルト438を緩め、拘束手段による拘束を解除する。そして、中桟408を上向きにスライドさせる。中桟408の上面には、永久磁石440が取り付けられており、永久磁石440が上桟406の下面に当接するまで中桟408をスライドさせて、上桟406と中桟408を支柱402の長さ方向における上端部の一箇所にまとめる。この場合、永久磁石440の吸着力によって、中桟408は、支柱402の長さ方向における移動が拘束された拘束状態となる。なお、永久磁石は、中桟408ではなく、上桟406の下面に取り付けても構わない。また、上桟406と中桟408を磁石が吸着しない材質(例えば、アルミニウムやプラスチック、木材などの非金属材料)で作製する場合には、一方に永久磁石を他方に鋼製のプレートを取り付けることとしても構わない。あるいは、両方に永久磁石を取り付けても構わない。
なお、2本の支柱402、404を、使用時には起立し、収納時には基端部を中心に回転してかご24上に向かって倒伏した収納状態に切り換え可能にする構成は、上述した安全柵ユニット100.200.300と同様なので、その説明については省略する。
(変形例2)
安全柵ユニット200(図4、図8、図9)では、支柱202、204の長さ方向にスライド自在とされた上桟206を、使用時に拘束状態とする場合、上桟206を支柱202、204の頂部に載置する構成としたが、これに限らず、図16、図17、図18に示すような構成のエレベータ用安全柵ユニット500(以下、単に「安全柵ユニット500」と言う)としても構わない。
図16は、使用状態における安全柵ユニット500の要部拡大図であり、図17は収納状態における安全柵ユニット500の要部拡大図である。図18(a)は、図17において矢印Eの向きに視た平面図である。図18(b)は、図17においてF・F線で切断した断面図である。
図16に示すように、安全柵ユニット500も、2本の支柱502、504を有する。支柱502と支柱504には、上桟506と中桟508が水平に掛け渡されている。中桟508は、支柱502、504の先端部と基端部との中間部間に掛け渡されており、溶接、リベット、ねじ等によって、支柱502、504に接合されている。
上桟506をスライド自在に保持するスライド機構を構成する案内部材510、512が、それぞれ支柱502、504に取り付けられている。案内部材510、512を含むスライド機構は、いずれも同様の構成なので、案内部材510を含むスライド機構を代表に説明する。
また、安全柵ユニット500のスライド機構と安全柵ユニット400(図13、図14、図15)のスライド機構とは、スライド対象(上桟506か中桟408か)および案内部材510、案内部材410に開設された長孔の形状が異なる以外は、基本的に同様の構成をしている。よって、以下、異なる点を中心に説明し、機能的に共通する構成要素同士については、下2桁に同じ番号の符号を付し、適宜、簡単に言及するに止める。
図16、図17に示すように、案内部材510は、正面視で、倒立した略L字形をしており、同L字状をした長孔510aが開設されている。すなわち、長孔510aは、支柱502の長さ方向に沿って開設された縦孔部510vと縦孔部510vの上端部から横に延伸された横孔部510hとを含んでいる。
安全柵ユニット500では、案内部材510、ボルト514、スペーサ526、平ワッシャ528、およびナット530(図18(b))で、上桟506を長孔510aに沿ってスライド自在に保持するスライド機構が構成されている。当該スライド機構により、上桟506は、縦孔部510vでは、上桟506の長さ方向に沿って、横孔部510hでは、前記長さ方向と直交する横方向に沿って、スライド自在に保持される。また、当該スライド機構は、上桟506を支柱502に連結する連結手段としても機能する。
使用時には、図16に示すように、ボルト514等が横孔部510hに位置される。すなわち、上桟506は、支柱502と支柱504の先端部間に掛け渡された状態となる。この状態で、上桟506に対し、図16の紙面に向かって左向きの外力が加わったとしても、上桟506が左向きにずれ、ひいては、ボルト514(スペーサ526)が縦孔部510vに進入して、上桟506が下方へ落下してしまうことを防止するため、上桟506の移動を拘束する拘束手段が設けられている。
この拘束手段は、上桟506を支柱502に固定するものである。当該拘束手段は、支柱502の中空部上端を閉塞するように設けられた、略正方形をした受けプレート542を含む。受けプレート542の中央には、厚み方向に貫通した雌ネジが形成されている。
また、受けプレート542に、平面視で一部を重ねるようにして、長方形をした押えプレート544が設けられている。押えプレート544には厚み方向に孔544aが開設されている。押えプレート544は、平面視で、孔544aが受けプレート542の雌ネジに連通するように、受けプレート542に重ねられている。
さらに、拘束手段は、蝶ボルト546を含み、蝶ボルト546のネジ部は、孔544aを通って、受けプレート542の雌ネジに螺入されている。
一方、上桟506の上面には、略長方形をした被固定プレート548が接合されている。被固定プレート548には、図18(a)に示すように、上桟506の長さ方向と平行に切り込まれたU字状のスリット548aが設けられている。
使用時には、スリット548aが蝶ボルト546のネジ部に進入し、被固定プレート548が受けプレート542と押えプレート544で挟まれた状態で、蝶ボルト546が締め付けられる。これにより、被固定プレート548、ひいては、上桟506が支柱502に固定される。
収納時には、蝶ボルト546を緩め、上桟506を、図16の紙面に対し左向きにスライドさせた後、下向きにスライドさせる。上桟506の下面には、永久磁石540が取り付けられており、永久磁石540が中桟508の上面に当接するまで上桟506をスライドさせて、上桟506と中桟508を支柱502の長さ方向における上端部と基端部の間の中間部の一箇所にまとめる。この場合、永久磁石540の吸着力によって、上桟506は、支柱502の長さ方向における移動が拘束された拘束状態となる。
なお、永久磁石540の取付け態様等のバリエーションは、上述した安全柵ユニット400と同様なので、その説明については省略する。また、2本の支柱502、504を、使用時には起立し、収納時には基端部を中心に回転してかご24上に向かって倒伏した収納状態に切り換え可能にする構成も、上述した安全柵ユニット100.200.300と同様なので、その説明については省略する。
〔安全柵の変形例〕
安全柵は、以下のような変形例として、かご14上に設置する機器の大きさや設置場所に対応するようにしてもよい。
(変形例1)
上記実施形態では、安全柵ユニット200は、支柱202、204に対し、中桟208を接合し、上桟206がスライド自在となる構成とし、安全柵ユニット300は、支柱302、304に対し、上桟306を接合し、中桟308がスライド自在となる構成としたが、接合とスライド自在の関係をこれとは、逆の関係となるように、構成しても構わない。
すなわち、安全柵ユニット200は、支柱202、204に対し、上桟206を接合し、中桟208がスライド自在となる構成とし、安全柵ユニット300は、支柱302、304に対し、中桟308を接合し、上桟306がスライド自在となる構成としても構わない。
そうすることにより、安全柵の収納時には、上記実施形態の第2領域(斜線領域)と左右対称となる位置に機器を設置するスペースを確保することが可能となる。
すなわち、主として、中桟108、支柱104、支柱202、および上桟208で囲まれる領域を機器の設置スペースとして確保できる。
(変形例2)
上記実施形態の安全柵ユニット300は、支柱302、304に対し、上桟306を接合し、中桟308がスライド自在となる構成としたが、安全柵ユニット200と同様にして、中桟308を接合し、上桟306がスライド自在となる構成としても構わない。
そうすることにより、安全柵の収納時には、上記実施形態の第2領域(斜線領域)よりも、紙面に向かって左側のかご14上の中央寄りに機器を設置するスペースを確保することが可能となる。
すなわち、主として、中桟108、上桟306、支柱202、および上桟206で囲まれる領域を機器の設置スペースとして確保できる。
<実施形態2>
上記実施形態では、2本の支柱に対し、上桟と中桟のいずれか一方を接合し、他方がスライド自在となる構成としたが、これに限らず、上桟と中桟の両方がスライド自在となる構成としても構わない。
そのような構成とした、実施形態2に係るエレベータ用安全柵ユニット600(以下、単に「安全柵ユニット600」と言う)について、図19、図20を参照しながら説明する。図19(a)は、安全柵ユニット600を構成する2本の支柱の内、1本の支柱602の一部を拡大し、図6(a)に倣って描いた図であり、図19(b)は、図19(a)の左側面図である。
支柱602ともう一本の支柱(不図示)の間には、上桟606と中桟608が掛け渡されている。上桟606と中桟608は、2本の支柱の長さ方向における移動が拘束された拘束状態と当該支柱の長さ方向にスライド自在となるスライド状態とに切り換えられる構造となっている。当該構造は、2本の支柱に共通なので、支柱602を代表に説明する。また、当該構造は、安全柵ユニット100、300と同様の構成であるので簡単に説明するに止める。
不等辺山形鋼からなる案内部材610の1辺部分が支柱602の側面に密接した状態で支柱602に取り付けられている。案内部材610の他辺部分には、図19(a)に示すように、支柱602の長さ方向に沿って長孔610aが開設されている。
上桟606、中桟608の両端部(図19(a)には、一方の端部が示されている)には、対向する2辺部分にボルト挿通孔(不図示)が開設されており、当該2個のボルト挿通孔の各々には、ボルト614が挿入されている。ボルト614は、長孔610aにも挿入されていて、長孔610aから突出したネジ部には、蝶ナット616が螺入されている。
蝶ナット616の各々を締め付けることにより、上桟606、中桟608を支柱602の長さ方向における移動が拘束された拘束状態とすることができ、一方、蝶ナット616の各々を弛めると、拘束状態が解除されて、上桟606、中桟608は、(ボルト614、案内部材610を介して)支柱602の長さ方向にスライド自在なスライド状態となる。
上記の構成によれば、安全柵ユニット600を収納する際には、上桟606と中桟608の両方をスライドさせて、図20に示すように、上桟606と中桟608を支柱602の長さ方向における任意の一箇所にまとめることができる。これにより、かご14上に設けられる各種機器の配置位置の自由度も高くなる。なお、上記任意の位置で蝶ナット616の各々を締め付けると、当該位置で、上桟606と中桟608が支柱602の長さ方向における移動が拘束された拘束状態となるのは、これまでと同様である。
また、案内部材610、ボルト614、および蝶ナット616が上桟606、中桟608を支柱602に連結する連結手段として機能し、スライド中における上桟606、中桟608の不測の落下を防止することができるのも、これまでと同様である。
(変形例)
上記した安全柵ユニット600では、上桟606と中桟608の両方を案内部材610によって、スライド自在とする構成としたが、実施形態2の変形例に係るエレベータ用安全柵ユニット700(以下、単に「安全柵ユニット700」と言う)では、上桟706を安全柵ユニット600とは異なる構成によってスライド自在としている。
なお、安全柵ユニット700の中桟708をスライド自在とする構成は、実施形態1の変形例1に係る安全柵ユニット400の中桟408(図13、図14、図15)と同様なので、共通する構成要素にはその下2桁に同じ番号の符号を付して、その詳細な説明については省略し、適宜、言及するに止める。
安全柵ユニット700は、例えば、かご14上の第四辺14d(図2)に設置される安全柵ユニットである。使用時における安全柵ユニット700の正面図を図21(a)に、同左側面図を図21(b)に示す。収納に際し、上桟706と中桟708が一箇所にまとめられ、かご14上に倒伏される前の状態の安全柵ユニット700の正面図を図22(a)に、同左側面図を図22(b)に示す。図23は、図21(a)におけるG・G線で切断した断面図である。
安全柵ユニット700は、2本の支柱702、704を有する。支柱702は、本体部702aとスライド部702bとからなる。本体部702aとスライド部702bには、共に角形鋼管が用いられている。スライド部702bに用いられている角形鋼管は、本体部702aに用いられている角形鋼管よりも一回りサイズが小さく、スライド部702bが本体部702aに挿入された、入れ子構造となっている。
支柱704も支柱702と同じ構造である。すなわち、角形鋼管からなる本体部704aに、これよりも一回り小さいサイズの角形鋼管からなるスライド部704bが挿入された入れ子構造となっている。
上桟706は、スライド部702bとスライド部704bの先端に溶接等で接合されて、図21に示すように、当該先端部間に掛け渡されている。
案内部材710は本体部702aに、案内部材712は本体部704aにそれぞれ取り付けられていて、案内部材710、712を含むスライド機構により、中桟708が、支柱702、704の長さ方向にスライド自在に保持されている。
使用時において、中桟708の両端を受け止める受け部材732が本体部702a、704aの各々に接合されている(図21(b)、図23、但し、本体部704aに接合された受け部材は、図には現れていない)。本例では、中桟708に掛かる重力と受け部材732とで、使用時において中桟708の支柱702、704の長さ方向における移動を拘束する拘束手段として機能している。中桟708の上面には、永久磁石740が取り付けられている。永久磁石740の役割については後述する。
続いて、上桟706を支柱702、704の長さ方向にスライド自在とする構成について説明する。当該構成は、支柱702、704の上述した入れ子構造による。当該入れ子構造は、支柱702と支柱704で同様なので、支柱702を代表に説明する。
本体部702aの側面には、図23に示すように厚み方向に貫通する孔702cが開設されている。また、前記側面には、ナット736が、その雌ネジが孔702cと連通する位置にスポット溶接(不図示)などで接合されている。ナット736には、蝶ボルト738が螺入されている。
スライド部702bの側面には、厚み方向に貫通する2個の孔702d、702eが、その長さ方向に間隔を空けて開設されている。安全柵ユニット700の使用時には、図23に示すように、蝶ボルト738の雄ネジ部が孔702dに進入している。これにより、スライド部702bの下方への移動が拘束され、ひいては、上桟706の支柱702の長さ方向における移動が拘束される。
図21に示す使用時の状態から、収納する際には、蝶ボルト738を緩めて、その雄ネジ部を孔702dから退出させる。そして、上桟706の下面が本体部702aの先端(上端面)に当接するまでスライドさせる。上桟706の下面が本体部702aの先端に当接した状態で、孔702eが孔702cおよびナット736の雌ネジ部と連通するような位置に孔702eが開設されている。孔702eが孔702cおよびナット736が連通した状態で、蝶ボルト738を締め付けてその雄ネジ部を孔702eに進入させる。これにより、上桟706の支柱702の長さ方向における移動が拘束される。
一方、中桟708は、上向きにスライドさせる。中桟708の上面に設けられた2個の永久磁石740に対応させて、上桟706の側面にL字金具742がそれぞれ固定されている。永久磁石740がL字金具742の下面に当接するまでスライドさせて、上桟706と中桟708を支柱702の長さ方向における一箇所にまとめる。この場合、永久磁石740の吸着力によって、中桟708は、支柱702の長さ方向における移動が拘束された拘束状態となる。
上桟706と中桟708が支柱702の長さ方向における一箇所にまとめられた状態で、支柱702と支柱704を、その基端部を中心に回転させてかご24上に向かって倒伏した収納状態とする。なお、2本の支柱702、704を、使用時には起立し、収納時には基端部を中心に回転してかご24上に向かって倒伏した収納状態に切り換え可能にする構成は、上述した安全柵ユニット100.200.300と同様なので、その説明については省略する。
<実施形態3>
実施形態1、2およびその変形例では、上桟と中桟のいずれか一方または両方を、支柱の長さ方向における移動が拘束された拘束状態と支柱の長さ方向にスライド自在となるスライド状態とに切り換え可能に構成した。これに対し、実施形態3に係るエレベータ用安全柵ユニット800(以下、単に「安全柵ユニット800」と言う)では、上桟と下桟の各々を、さらに、その長さ方向(水平方向)に伸縮自在とする構成とした。
安全柵ユニット800は、例えば、図1に示すかご14とは異なり、かご扉の間口に比して奥行きの長い、いわゆる縦長のかごのかご上のかご扉側から見て左右の位置(第二辺14b、第三辺14cに相当)に設置される。
使用時における安全柵ユニット800の正面図を図24(a)に、同平面図を図24(b)に、同左側面図を図24(c)に示す。また、収納に際し、上桟806と中桟808が一箇所にまとめられ、さらに、上桟806と中桟808が、後述するように、縮長された状態であって、かご14上に倒伏される前の状態の安全柵ユニット800の正面図を図25(a)に、同平面図を図25(b)に、同左側面図を図25(c)に示す。なお、図24(b)、図25(b)では、支柱802、804の下端部に設けたスタンド等の図示は省略している。
図26(a)は、図24(b)の拡大図であって、上桟806等の中間部を省略した図である。図26(b)は、図24(a)の上部の拡大図であって、上桟806等の中間部を省略し、上桟806のみを図26(a)におけるH・H線に沿って切断した図である。図26(c)は、後述するように、上桟806を縮長する過程を説明するための図である。
図24に示すように、安全柵ユニット800は、2本の支柱802、804を有する。支柱802と支柱804の先端部間には上桟806が掛け渡されている。支柱802と支柱804の先端部と基端部との中間部には、中桟808が掛け渡されている。
安全柵ユニット800も、案内部材810、812を含み、中桟808を支柱802、804の長さ方向にスライド自在に保持するスライド機構を有する。当該スライド機構は、一方の案内部材812が支柱802ではなく、上桟806の一方の端部に取り付けられている以外は、基本的に、上述した安全柵ユニット700において中桟708をスライド自在とするスライド機構と同様の構成なので、その詳細についての説明は省略し、適宜言及するに止める。
安全柵ユニット800の上桟806は、本体部806aとスライド部806bとからなる。本体部806aとスライド部806bには、共に角形鋼管が用いられている。スライド部806bに用いられている角形鋼管は、本体部806aに用いられている角形鋼管よりも一回りサイズが小さく、スライド部806bが本体部806aに挿入された、入れ子構造となっている。
中桟808も上桟806と同じ構造である。すなわち、角形鋼管からなる本体部808aに、これよりも一回り小さいサイズの角形鋼管からなるスライド部808bが挿入された入れ子構造となっている。
上桟806は、それぞれ、本体部806aが支柱802、804に、溶接、ボルト、リベット等(不図示)によって接合されている。中桟808は、直接的には、本体部808aが、案内部材810、812を含むスライド機構によって、支柱802、804の長さ方向にスライド自在に保持されている。
上桟806と中桟808は、その長さ方向(水平方向)に伸縮自在に構成されている。当該構成は、上桟806と中桟808の上述した入れ子構造による。当該入れ子構造は、上桟806と中桟808で同様である。当該入れ子構造によって、本体部806a、808aに対し、スライド部806b、808bが相対的にスライドされて、上桟806、中桟808の各々がその長さ方向(水平方向)に伸縮、すなわち、伸長されたり縮長されたりする。この場合、安全柵ユニット800の使用時には、伸長され(図24)、収納時には縮長される(図25)。
この場合、伸長状態と縮長状態において、スライド部806b、808bの前記水平方向の移動を拘束し、スライド部806a、808bが不測にスライドされることを防止する拘束手段が、上桟806に設けられている。前記拘束手段について、図26を参照しながら説明する。
当該拘束手段は、本体部806aの上面に設けられたストッパ850を含む。ストッパ850は、固定プレート852と可動プレート854を含む。固定プレート852は、本体部806aの上面に固定されている。
固定プレート852の上面には、バネ取付けプレート856が取り付けられていて、バネ取付けプレート856には、ねじりコイルバネ858(以下、単に「バネ858」と言う)の一端部が不図示の金具によって固定されている。可動プレート854の上面にも、バネ取付けプレート860が取り付けられていて、バネ取付けプレート860には、バネ858の他端部が不図示の金具によって固定されている。上記の構成により、可動プレート854は、バネ取付けプレート860、バネ858、バネ取付けプレート856によって、固定プレート852に連結されている。バネ858は、図26(b)に示す矢印Kの向きに復元力が作用する、すなわち、可動プレート854を本体部806aの上面に押圧する向きに付勢するように設けられている。
可動プレート854の、バネ取付けプレート860が取り付けられているのとは反対側の端部部分には、その厚み方向に貫通する孔(不図示)が開設されていて、当該貫通孔に雄ネジ部が挿入された形で、図26に示すように、蝶ボルト862がナット864によって取り付けられている。
スライド部806bの上面には、厚み方向に貫通する2個の孔806d、806eが、その長さ方向に間隔を空けて開設されている。安全柵ユニット800の使用時には、図26(b)に示すように、蝶ボルト862の先端部が孔806dに進入している。これにより、本体部808aに対するスライド部808bの水平方向の移動が拘束され、使用時において、上桟806の伸長された状態が保持される。
図24に示す使用時の状態から、収納する際には、先ず、(i)中桟808を上方へスライドさせる。中桟808の上面には、2個の永久磁石840が取り付けられており、永久磁石840が、上桟806の下面に吸着するまで、中桟808をスライドさせる。これにより、中桟808と上桟806が支柱802、804の長さ方向における一箇所(支柱802、804の上端部)にまとめられことになる。
次に、可動プレート854に取り付けられた蝶ボルト862を指でつまみ、バネ858の付勢力に抗して持ち上げ(図26(c)の矢印Lの向き)、蝶ボルト862の雌ネジ部を孔806dから退出させる(図26(c))。そして、(ii)スライド部806b、808bを本体部806a、808aに押し込む(図24(a))。この場合、孔806dが蝶ボルト862の雌ネジ部の下方位置からずれると、蝶ボルト862は、放しても構わない。そうすると、蝶ボルト862の雄ネジ部の下端がスライド部806bの上面に相対的に摺動しながら、スライド部806bが本体部806bに押し込まれることとなる。
スライド部806b、808bを本体部806a、808aに押し込むと、スライド部806b、808bに取り付けられている案内部材812も、図24(a)の紙面に向かって左向きに移動する。案内部材812の側面には、永久磁石844が取り付けられており、永久磁石844が、支柱804の側面に吸着するまで、スライド部806b、808bを押し込む。これにより、収納に際し、上桟806と中桟808が縮長されることとなる。縮長された状態(本例では、永久磁石844が支柱804の側面に吸着した状態)で、上記摺動してきた蝶ボルト862の雄ネジ部の下端部が嵌り込む位置に孔806eが開設されていて、縮長時には、当該雄ネジ部が孔806eに進入した状態となる(不図示)。これにより、本体部808aに対するスライド部808bの水平方向の移動が拘束され、使用時において、上桟806、ひいては中桟808の縮長された状態が保持される。
上桟806と中桟808が支柱802、804の長さ方向における一箇所にまとめられ、上桟806、中桟808が縮長された状態で、支柱802と支柱804を、その基端部を中心に回転させてかご24上に向かって倒伏した収納状態とする。なお、2本の支柱802、804を、使用時には起立し、収納時には基端部を中心に回転してかご24上に向かって倒伏した収納状態に切り換え可能にする構成は、上述した安全柵ユニット100.200.300と同様なので、その説明については省略する。
収納状態から使用状態に切り換える場合は、上述したのと逆の手順に従う。すなわち、蝶ボルト862を持ち上げて、その雄ネジ部を孔806eから退出させた状態で、(iii)本体部806a、808aからスライド部806b、808bを引き出す(図25(a))。この場合、孔806eが蝶ボルト862の雌ネジ部の下方位置からずれると、蝶ボルト862から手を放し、蝶ボルト862の雄ネジ部の下端をスライド部806bの上面に相対的に摺動させる。そして、当該雄ネジ部の先端部が孔806eに進入するまで(嵌るまで)、スライド部806bを本体部806bから引き出して、支柱802、804を伸長状態とする。
次に、(iv)支柱802、804の各々に取り付けられた受け部材832で受け止められるまで、中桟808を下方へスライドさせる。
上述した安全柵ユニット800では、中桟808を支柱802、804の長さ方向における移動が拘束された拘束状態と支柱802、804の長さ方向にスライド自在となるスライド状態とに切り換え可能に設けたが、これに限らず、上桟806を前記拘束状態と前記スライド状態とに切り換え可能に設けた構成としても構わない。当該構成は、安全柵ユニット800の上桟806、中桟808の構成と安全柵ユニット200(図4、図8、図9)や安全柵ユニット500(図16、図17、図18)の構成を適宜に組み合わせることで実現できる。
あるいは、上桟806と中桟808の両方を前記拘束状態と前記スライド状態とに切り換え可能に設けた構成としても構わない。当該構成は、安全柵ユニット800の上桟806、中桟808の構成と安全柵ユニット600(図19、図20)や安全柵ユニット700(図21、図22、図23)の構成を適宜に組み合わせることにより実現できる。
また、安全柵ユニット800では、上桟806と中桟808を、長さ方向に伸縮自在に構成することにより、使用時と収納時とでその長さを変更することとした。しかし、長さの変更は、前記構成に限らない。例えば、同じサイズの2本の角形鋼管の一端部同士を蝶番で連結して横桟(上桟または中桟)を構成しても構わない。
そして、2本の角形鋼管の内、一方の角形鋼管を固定桟、他方の角形鋼管を可動桟とし、固定桟に対し、可動桟が蝶番を中心に回動できる構成とする。安全柵ユニットの使用時には、固定桟と可動桟が一直線に並ぶ状態(直列状態)とし、収納時には、固定桟と可動桟が横並び状態(並列状態)になるよう折りたたんで用いるのである。なお、直列状態と並列状態とに切り換える際、可動桟を水平面内で回動させる構成としても、垂直面内で回動させる構成としても構わない。
以上、本発明を実施形態およびその変形例に基いて説明してきたが、本発明は上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態としても構わない。
(1)上記実施形態では、支柱の長手方向に沿った長孔を有する不等辺山形鋼からなる案内部材を用いて上桟と中桟のいずれか一方または両方を支柱の長さ方向にスライド自在とするスライド機構を構成した。
しかし、スライド機構は、これに限らず、例えば、以下の構成としても構わない。
(a)支柱の対向する二側面に、その長さ方向に長い長孔を開設する。
(b)上桟、中桟に挿通したボルトを、前記二側面の内の一方の側面の長孔から他方の側面の長孔に挿入する。
(c)前記他方の側面から突出した、前記ボルトのネジ部に蝶ナットを螺合させる。
上記(a)〜(c)のようにしてスライド機構を構成することで、蝶ナットを締め付ければ、上桟、中桟を支柱の長さ方向における移動が拘束された拘束状態とすることができる。また、蝶ナットを弛めれば、上桟、中桟を支柱の長さ方向にスライド自在となるスライド状態とすることができる。
また、スライド状態の際、上桟、中桟は、ボルトと蝶ナットで支柱に連結された状態が維持されるため、スライド中における上桟、中桟の脱落(落下)を防止することができる。
(2)上記実施形態では、スタンド118に支柱102を連結する連結部材として、ピン126を用いたが、前記連結部材は、これに限らず、例えば、ボルト・ナットを用いても構わない。要は、2個の貫通孔102a、2個の長孔120aに挿入されて、これらの貫通孔102a、長孔120aから容易に抜け出ないような軸体であれば構わないのである。
(3)上記実施形態では、ボルトに蝶ナットを螺合させたが、これに限らず、六角ナットを螺合させても構わない。
(4)上記実施形態においては、2本の支柱で安全柵ユニットを構成したが、支柱の本数は2本に限らない。かごのサイズ、すなわち、横桟(上桟、中桟)の長さに応じて、3本で構成して構わないし、4本以上でも構わない。本発明に係るエレベータ用安全柵ユニットは、少なくとも2本の支柱を含む安全柵ユニットに適用できるのである。
(5)安全柵を構成する3台の安全柵ユニットの組み合わせは、ここまでに掲げた例に限らない。安全柵ユニット100、200、300、400、600、700、800、およびその変形例を適宜に組み合わせて、安全柵を構成することができる。