JP2021040557A - 麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強用組成物、甘味質増強用組成物を含有する蒸留酒、および蒸留酒の甘味質増強方法 - Google Patents

麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強用組成物、甘味質増強用組成物を含有する蒸留酒、および蒸留酒の甘味質増強方法 Download PDF

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Abstract

【課題】麹を原料とする蒸留酒に甘味質を付与することのできる甘味質付与組成物を提供すること、および該甘味質付与組成物を含有したあまみが増強された蒸留酒を提供する。【解決手段】麹を原料とする蒸留酒が有する麹のうまみ成分の一つを、甘味質付与組成物として蒸留酒に含有させることで、蒸留酒または希釈された蒸留酒に甘味と同時にうまみも付与することができ、この甘味質付与成分であるイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルは、麹を原料とする蒸留酒に元来含まれているものであるから、自然な味で元の蒸留酒の官能評価を大きく変えてしまうことがない。また、蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させても、蒸留酒固有の甘味、うまみが薄まらないアルコール飲料を提供することができる。【選択図】 なし

Description

本発明は、麹を原料とする焼酎などの蒸留酒に、麹のうまみ成分の一つである甘味(あまみ)を付与する甘味質付与組成物、および該甘味質付与組成物を含有する蒸留酒に関するものである。
麹を原料とする蒸留酒は、麹を原料の一つとして醸造により得られたアルコール含有物を蒸留することにより製造される。この麹を原料とする蒸留酒のうまみのベースの一つが、麹由来の甘味(あまみ)であることは知られていない。
また、焼酎などの蒸留酒は、水ないし湯で割って飲用に供することが行われているが、これらの蒸留酒を水(湯も含む)で割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒の本来のコクなどが薄れ、味にしまりがなくなり、水っぽくなるという問題があった。このように、蒸留酒を水で希釈すると、飲料中の呈味成分等の割合が低くなり、風味やボディ感にかけ、味質のバランスに欠けたアルコール飲料となることがあった。
このような欠点の改善のために、単式蒸留酒と連続式蒸留酒とを混和して香味が付与された混和蒸留酒とし、さらに高級脂肪酸エステルを添加して味わいを増強すること(特許文献1)が報告されている。また、低アルコール飲料にコクやボディ感を付与し味質を改善する方法として、たとえば、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどのノンカロリー、低カロリー素材を添加して、風味やボディ感のある低カロリーの酒類、醸造酒の製造方法(特許文献2)が開示されている。
一方、酒類の香気成分を付与する方法としては、麦芽使用酒類中のホップ由来香気成分である短鎖分岐脂肪酸エステルを、該エステル生産酵素遺伝子で形質転換された酵母を用いて高める方法(特許文献3)や、焼酎や清酒に、甘く、フルーティな香気を付与する成分として、2−メチル酪酸エステルを特定の酵母を用いて醸造酒類、蒸留酒類中に高含有させる方法(特許文献4)が報告されている。
このように、2−メチル酪酸エステル等の短鎖分岐脂肪酸エステルが、酒類に香気を付与する成分であることは既に報告されているが、麹を原料とする蒸留酒のうまみ成分の一つであることは知られていなかった。
特開2012−249587号公報 特開2003−47453号公報 特開2016−158541号公報 特許第4798780号明細書
麹を原料とする蒸留酒は、麹を原料の一つとして醸造により得られたアルコール含有物を蒸留することにより製造され、麹を原料とする蒸留酒の香気を付与する成分については多くの研究がなされているが、うまみ成分に焦点を合わせる報告はなかった。そのため、この麹を原料とする蒸留酒のうまみのベースの一つが、麹由来の甘味(あまみ)であり、蒸留酒に甘味質を付与する揮発性成分であることは知られていなかった。
蒸留酒を長期間樽貯蔵した樽貯蔵酒(樽酒)には糖が含まれているが、樽貯蔵していない蒸留酒には糖が含まれていないため、樽貯蔵していない蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒本来の香りやコクが薄れるという問題点があった。また、従来から、甘味料、糖類、ジュース類などの新たな甘味を加えて味を濃くすることによって、できるだけ各飲用者の好みに合わせるようにしていたが、元の蒸留酒の官能評価を大きく変えてしまうという問題があった。
本発明は、これらの問題点を解決するために、麹を原料とする蒸留酒または希釈した蒸留酒において、うまみ成分であり、甘味(あまみ)を付与することのできる甘味質付与組成物を提供することをその課題とする。また、本発明は、該甘味質付与組成物を含有することにより甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒や希釈した蒸留酒を提供すること、および該甘味質付与組成物を甘味質付与のために配合する、麹を原料とする蒸留酒の甘味質付与方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、麹を原料とする蒸留酒に甘味質を付与するための物質について鋭意検討を行った結果、麹由来のうまみ成分であるイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルが、蒸留酒に甘味(あまみ)を付与する成分であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の(1)ないし(5)の甘味質付与組成物に関する。
(1)麹を原料とする蒸留酒原酒が含有する麹のうまみ成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒のための甘味質付与組成物。
(2)前記麹のうまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、上記(1)に記載の甘味質付与組成物。
(3)先味と後味とで微妙に異なる甘味質を付与する、上記(1)または(2)に記載の甘味質付与組成物。
(4)前記蒸留酒原酒が、麹のうまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
(5)前記麹のうまみ成分が、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分である、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
また、本発明は、以下の(6)ないし(8)の蒸留酒に関する。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質付与組成物を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(7)前記蒸留酒が焼酎である、上記(6)に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(8)上記(6)または(7)に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
また、本発明は、以下の(9)の麹を原料とする蒸留酒の甘味質付与方法に関する。
(9)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質付与組成物を甘味質付与のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質付与方法。
本発明では、麹を原料とする蒸留酒が有する麹のうまみ成分を、甘味質付与組成物として蒸留酒に含有させることで、蒸留酒または希釈された蒸留酒に甘味と同時にうまみも付与することができる。この甘味質付与成分は、麹を原料とする蒸留酒に元来含まれているものであるから、甘味料、糖類、ジュース類などの新たな甘味を加える場合のように、元の蒸留酒の官能評価を大きく変えてしまうこともない。
また、蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させても、蒸留酒固有の甘味、うまみが薄まらないアルコール飲料を提供することができ、そうした呈味の改善により、水割りアルコール飲料を瓶詰あるいは罐詰のような製品として消費者に提供することができる。
本発明は、麹を原料とする蒸留酒のうまみのベースの一つが、甘味(あまみ)であることを発見したことに基づくものである。うまみ成分のうち、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルが、麹を原料とする蒸留酒に甘味質を付与できる成分であることを発見し、本発明を完成させた。
本発明において甘味質とは、甘味そのものの質を意味する。香味からくる甘味ではなく、官能試験において、ノーズクリップにより匂いを感じない状態で知覚できる甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価した甘味(あまみ)をいう。また、雑味とは、甘味以外の味であって、苦味、渋味、酸味、および刺激味等をいう。
本発明者らは、大麦焼酎の製造に使用する原料における麹の比率(麹歩合)が焼酎の酒質に及ぼす影響について研究する中で、麹歩合が高くなるにつれて濃度が増加する成分中に、甘味(あまみ)に寄与する成分があることがわかった。
[蒸留酒]
蒸留酒とは、醸造により得られたアルコール含有物をさらに蒸留して製造するアルコール濃度の高い酒である。原料として、米や大麦などの穀類、リンゴ、サクランボ、洋ナシなどの果実、その他にサトウキビ、リュウゼツラン、イモ類などを発酵させて製造したアルコール含有物を蒸留してアルコール濃度を高くしたものであり、スピリッツとも称される。その代表的な酒類としては、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、ウイスキー、ブランデー、焼酎、カルバドス、キルシュなどが知られている。
本発明で対象となる「麹を原料とする蒸留酒」とは、このような蒸留酒のうち、焼酎、スピリッツ、および原料用アルコールである透明な原酒であり、これら蒸留酒を長期間樽で貯蔵した樽貯蔵酒は含まない。
下記に、本発明で対象となる麹を原料とする蒸留酒について、さらに酒税法をもとに詳細に示す。
スピリッツ類
スピリッツ:清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)の酒類以外の酒類で、かつエキス分が2度未満のもの(雑酒を除く)のうち、原料用アルコール以外のもの。例:ジン、ラム、ウオッカ、テキーラ、ニュースピリッツや甲類スピリッツなど。
原料用アルコール:アルコール含有物を蒸留した酒類で、アルコール分が45%を越えるスピリッツ。
焼 酎
連続式蒸留焼酎(焼酎甲類):アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が36%未満のもの。
単式蒸留焼酎(焼酎乙類):アルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が45%以下のもの。
[希釈した蒸留酒]
本発明における希釈した蒸留酒としては、その製造工程の最終段階で割り水されてアルコール濃度が調整された焼酎、スピリッツ類、および原料用アルコールである。また、本発明における希釈した蒸留酒としては、「蒸留酒」または製造工程において割り水した「希釈した蒸留酒」を、飲用者が飲用する際に、さらに水、お湯、氷、その他果汁などの飲料を加えることで希釈した蒸留酒も含まれる。
[イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチル]
イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチルは、それぞれ化学式がC12、C14、C14である短鎖分岐脂肪酸エチルエステルであり、それぞれ異なる果実香を有し香料として使われているが、酒類に甘味質を付与できる成分であることは知られていなかった。蒸留酒にこれら短鎖分岐脂肪酸エチルを含有させるためには、どのような工程および方法で含有させてもよく、例えば、蒸留酒に適量添加する方法や、蒸留酒の蒸留前の原料である醪に添加してもよい。また、これらの短鎖分岐脂肪酸エチルは麹を原料とする蒸留酒に含有されているため、これらを高含有する蒸留酒原酒の蒸留画分を甘味質付与組成物として、蒸留酒または希釈した蒸留酒に添加してもよい。
蒸留酒または希釈された蒸留酒に甘味質付与成分として含有させるこれら短鎖分岐脂肪酸エチルの濃度は、蒸留酒の種類およびアルコール度数によって適切な範囲が異なるが、それぞれの蒸留酒およびアルコール度数に好適な量を含有させることができ、例えば、0.05〜5000ppbの範囲の量で含有させることが好ましい。
また、同じアルコール度数の蒸留酒でも含有させるこれらの短鎖分岐脂肪酸エチルの濃度によって、その先味、後味の甘味を変化させて改善できる。
[甘味質付与の官能試験]
エタノール水溶液または焼酎に、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを甘味質付与成分として添加して、甘味の総合評価を、6名から9名の社内のパネリスト訓練を経た酒類の専門評価者による官能試験により行った。官能試験は、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)の両方の状態で行った。また、それぞれの状態における先味と後味の両方について、官能評価を行った。本実施例における「先味」とは、口に入れた瞬間の呈味(風味)または口当たりの特性であり、「後味」とは、吐き出した後に残る持続性のある味または口当たりの特性と定義する。
実施例1〜17での官能評価は、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加していない「ブランク」(対照)では感じることがなかったが、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加した試料では感じた甘味を含む呈味(甘味、コク、苦味、酸味、旨味等)および口当たり(なめらか、まるい、荒い、刺激、きれ、もたつく、粉っぽい等)の特性について、複数コメントを許可する条件で、各専門評価者からのコメントを1と数えて評価した。コメントは決められたワードから選んだものではなく、自由想起によるフリーワードである。甘味の質についてコメントも同様のフリーワードである。
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例でアルコール濃度については単位を明記していなくとも「容量%」を意味するものとする。
以下の実施例1〜3では、アルコール濃度が25%のエタノール水溶液に、それぞれイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加し、呈味および風味を官能評価により評価した。
[実施例1]
25%エタノール水溶液に2−メチル酪酸エチルを30.9ppb添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない25%エタノール水溶液を準備した。6もしくは8名の専門評価者により先味と後味を分けて2回繰り返して官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。先味は口に入れた瞬間の味、後味は吐き出した後に残る持続性のある味と定義した。また、匂いが味に影響を及ぼす可能性が考えるため、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表1に示す。
Figure 2021040557
実施例1の結果から、繰り返し評価で2回とも複数得られた味もしくは口当たりのコメントとしてノーズクリップ着用において先味、後味ともに甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においても先味、後味ともに甘味が確認された。よって、2−2-メチル酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない、感じる状態に関わらず先味、後味ともに甘味を増強することがわかった。
[実施例2]
イソ酪酸エチルを69.7ppb添加すること以外は実施例1と同様にして、イソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を6もしくは8名の専門評価者により評価した。官能評価の結果を表2に示す。
Figure 2021040557
実施例2の結果から、繰り返し評価で2回とも複数得られた味もしくは口当たりのコメントとしてノーズクリップ着用において先味、後味ともに甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味のみ甘味が確認された。よって、イソ酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味、後味で甘味を増強することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味で甘味を増強することがわかった。
[実施例3]
イソ吉草酸エチルを69.6ppb添加すること以外は実施例1と同様にして、イソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を6もしくは8名の専門評価者により評価した。官能評価の結果を表3に示す。
Figure 2021040557
実施例3の結果から、繰り返し評価で2回とも複数得られた味もしくは口当たりのコメントとしてノーズクリップ着用において先味で甘味およびコク、後味で甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味、後味ともに甘味が確認された。よって、イソ吉草酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味で甘味およびコク、後味で甘味を増強することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味、後味ともに甘味を増強することがわかった。
以下の実施例4〜6では、アルコール濃度が25%のエタノール水溶液に、それぞれイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加し、それぞれどのような甘味の質を呈するかを官能評価により評価した。
[実施例4]
実施例1と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる2−メチル酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。コメントはワードから選んだものではなく、自由想起したフリーワードである。なお、甘味の質とは甘味そのものの質を意味しており、得られたコメントにおけるフリーワードは、甘味のコク、厚み、まろやかさおよびクセの少なさを総合的に評価したものである。以下、同様である。
実施例1と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表4に示す。
Figure 2021040557
実施例4の結果から、複数得られた甘味の質に対するコメントとしてノーズクリップ着用において先味でさわやかな甘味および濃厚な甘味、後味でふくよかな甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味でふくよかな甘味およびさわやかな甘味、後味で口に残るような甘味が確認された。よって、2−メチル酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味でさわやかな甘味および濃厚な甘味、後味でふくよかな甘味を呈することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味でふくよかな甘味およびさわやかな甘味、後味で口に残るような甘味を呈することがわかった。
[実施例5]
実施例2と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。実施例2と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表5に示す。
Figure 2021040557
実施例5の結果から、複数得られた甘味の質に対するコメントとしてノーズクリップ着用において先味でショ糖(さとう)のような甘味、後味で穏やかな甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味でさわやかな甘味、後味でショ糖(さとう)のような甘味が確認された。よって、イソ酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味でショ糖(さとう)のような甘味、後味で穏やかな甘味を呈することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味でさわやかな甘味、後味でショ糖(さとう)のような甘味を呈することがわかった。
[実施例6]
実施例3と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ吉草酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。また、実施例3と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表6に示す。
Figure 2021040557
実施例6の結果から、複数得られた甘味の質に対するコメントとして、ノーズクリップ着用において先味でまろやかな甘味、後味でさわやかな甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味で濃厚な甘味、後味で口に残るような甘味が確認された。よって、イソ吉草酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味でまろやかな甘味、後味でさわやかな甘味を呈することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味で濃厚な甘味、後味で口に残るような甘味を呈することがわかった。
以下の実施例7、8では、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および/または2−メチル酪酸エチルを
減圧蒸留または常圧蒸留した麦焼酎に添加し、これらが麹由来の甘味に寄与するかを官能評価により評価した。
[実施例7]
麹歩合33%で減圧蒸留した麦焼酎A(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で減圧蒸留した麦焼酎B(アルコール度数25度)、および麦焼酎Aに麦焼酎Bの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを6.4ppb、イソ酪酸エチルを35.4ppb、イソ吉草酸エチルを2.3ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、表7に示す評価基準を用いて先味と後味における甘味の強度について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
Figure 2021040557
官能評価の結果を表8に示す。
Figure 2021040557
実施例7の結果から、麦焼酎Aに2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルをそれぞれ、もしくはすべて添加することにより、先味もしくは後味で甘味強度の評価値が麦焼酎Bの甘味強度に近づくことが確認された。よって、2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルは、減圧蒸留の麦焼酎において麹由来の甘味を増強することがわかった。
[実施例8]
麹歩合33%で常圧蒸留した麦焼酎C(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で常圧蒸留した麦焼酎D(アルコール度数25度)および麦焼酎Cに麦焼酎Dの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを17.2ppb、イソ酪酸エチルを71.7ppb、イソ吉草酸エチルを2.7ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、それ以外は実施例7と同様にして、9名の専門評価者により評価した。
Figure 2021040557
実施例8の結果から、麦焼酎Cに2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルをそれぞれ、もしくはすべて添加することにより、先味もしくは後味で甘味強度の評価値が麦焼酎Dの甘味強度に近づくことが確認された。よって、2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルは、常圧蒸留の麦焼酎において麹由来の甘味を増強することがわかった。
次の実施例9〜17では、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルの、甘味や口当たりの良さを付与できる濃度範囲について、アルコール濃度44度、25度または5度の麦焼酎を用いて官能評価により評価した。
[実施例9]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度44度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール度数44度)を準備した。そして、表10に示す評価基準を用いて先味と後味における味もしくは口当たり付与の効果について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。さらに、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
Figure 2021040557
官能評価の結果を表11に示す。
Figure 2021040557
実施例9の結果から、特に2−メチル酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜5ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、2−メチル酪酸エチルはアルコール度数44%の麦焼酎で匂いを感じない状態において0.5〜5ppb、匂いを感じる状態で0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例10]
イソ酪酸エチルを添加すること以外は実施例9と同様にして、8名の専門評価者によりイソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表12に示す。
Figure 2021040557
実施例10の結果から、特にイソ酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜50ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜500ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ酪酸エチルはアルコール度数44%の麦焼酎で匂いを感じない状態において0.5〜50ppb、匂いを感じる状態で0.05〜500ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例11]
イソ吉草酸エチルを添加すること以外は実施例9と同様にして、8名の専門評価者によりイソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表13に示す。
Figure 2021040557
実施例11の結果から、特にイソ吉草酸エチルをノーズクリップ着用、未着用ともに0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ吉草酸エチルはアルコール度数44%の麦焼酎で匂いを感じない状態および感じる状態において0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例12]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度25度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度25度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表14に示す。
Figure 2021040557
実施例12の結果から、特に2-メチル酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜500ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜500ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、2−メチル酪酸エチルはアルコール度数25%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態において0.5〜500ppb、匂いを感じる状態で0.05〜500ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例13]
イソ酪酸エチルを添加すること以外は実施例12と同様にして、8名の専門評価者によりイソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表15に示す。
Figure 2021040557
実施例13の結果から、特にイソ酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.05〜500ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜5000ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ酪酸エチルはアルコール度数25%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態において0.05〜500ppb、匂いを感じる状態で0.05〜5000ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例14]
イソ吉草酸エチルを添加すること以外は実施例12と同様にして、8名の専門評価者によりイソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表16に示す。
Figure 2021040557
実施例14の結果から、特にイソ吉草酸エチルをノーズクリップ着用、未着用ともに0.5〜500ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ吉草酸エチルはアルコール度数25%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態および感じる状態において0.5〜500ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例15]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度5度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度5度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表17に示す。
Figure 2021040557
実施例15の結果から、特に2−メチル酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.05〜500ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、2−メチル酪酸エチルはアルコール度数5%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態において0.05〜500ppb、匂いを感じる状態で0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例16]
イソ酪酸エチルを添加すること以外は実施例15と同様にして、7名の専門評価者によりイソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表18に示す。
Figure 2021040557
実施例16の結果から、特にイソ酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜5000ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜5000ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ酪酸エチルはアルコール度数5%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態におい0.5〜5000ppb、匂いを感じる状態で0.05〜5000ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例17]
イソ吉草酸エチルを添加すること以外は実施例15と同様にして、8名の専門評価者によりイソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表19に示す。
Figure 2021040557
実施例17の結果から、特にイソ吉草酸エチルをノーズクリップ着用、未着用ともに0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ吉草酸エチルはアルコール度数5%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態および感じる状態において0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
本発明によれば、麹を原料とする蒸留酒において、甘味(あまみ)を付与することのできる甘味質付与組成物を提供するものであり、該甘味質付与組成物を含有することにより甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒や希釈した蒸留酒を提供するものである。この甘味質付与組成物は麹のうまみ成分でもあることから、麹を原料とする蒸留酒に自然な甘味とうまみを付与できる。
本発明は、麹を原料とする焼酎などの蒸留酒に、そのうまみ成分の一つである甘味(あまみ)を増強する甘味質増強用組成物、および該甘味質増強用組成物を含有する蒸留酒に関するものである。
麹を原料とする蒸留酒は、麹を原料の一つとして醸造により得られたアルコール含有物を蒸留することにより製造される。この麹を原料とする蒸留酒のうまみのベースの一つが、麹由来の甘味(あまみ)であることは知られていない。
また、焼酎などの蒸留酒は、水ないし湯で割って飲用に供することが行われているが、これらの蒸留酒を水(湯も含む)で割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒の本来のコクなどが薄れ、味にしまりがなくなり、水っぽくなるという問題があった。このように、蒸留酒を水で希釈すると、飲料中の呈味成分等の割合が低くなり、風味やボディ感にかけ、味質のバランスに欠けたアルコール飲料となることがあった。
このような欠点の改善のために、単式蒸留酒と連続式蒸留酒とを混和して香味が付与された混和蒸留酒とし、さらに高級脂肪酸エステルを添加して味わいを増強すること(特許文献1)が報告されている。また、低アルコール飲料にコクやボディ感を付与し味質を改善する方法として、たとえば、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどのノンカロリー、低カロリー素材を添加して、風味やボディ感のある低カロリーの酒類、醸造酒の製造方法(特許文献2)が開示されている。
一方、酒類の香気成分を付与する方法としては、麦芽使用酒類中のホップ由来香気成分である短鎖分岐脂肪酸エステルを、該エステル生産酵素遺伝子で形質転換された酵母を用いて高める方法(特許文献3)や、焼酎や清酒に、甘く、フルーティな香気を付与する成分として、2−メチル酪酸エステルを特定の酵母を用いて醸造酒類、蒸留酒類中に高含有させる方法(特許文献4)が報告されている。
このように、2−メチル酪酸エステル等の短鎖分岐脂肪酸エステルが、酒類に香気を付与する成分であることは既に報告されているが、麹を原料とする蒸留酒のうまみ成分の一つであることは知られていなかった。
特開2012−249587号公報 特開2003−47453号公報 特開2016−158541号公報 特許第4798780号明細書
麹を原料とする蒸留酒は、麹を原料の一つとして醸造により得られたアルコール含有物を蒸留することにより製造され、麹を原料とする蒸留酒の香気を付与する成分については多くの研究がなされているが、うまみ成分に焦点を合わせる報告はなかった。そのため、この麹を原料とする蒸留酒のうまみのベースの一つが、麹由来の甘味(あまみ)であり、蒸留酒に甘味質を付与する揮発性成分であることは知られていなかった。
蒸留酒を長期間樽貯蔵した樽貯蔵酒(樽酒)には糖が含まれていることがあるが、樽貯蔵していない蒸留酒には糖が含まれていないため、樽貯蔵していない蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒本来の香りやコクが薄れるという問題点があった。また、従来から、甘味料、糖類、ジュース類などの新たな甘味を加えて味を濃くすることによって、できるだけ各飲用者の好みに合わせるようにしていたが、元の蒸留酒の官能評価を大きく変えてしまうという問題があった。
本発明は、これらの問題点を解決するために、麹を原料とする蒸留酒または希釈した蒸留酒において、うまみ成分であり、甘味(あまみ)を増強することのできる甘味質増強用組成物を提供することをその課題とする。また、本発明は、該甘味質増強用組成物を含有することにより甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒や希釈した蒸留酒を提供すること、および該甘味質増強用組成物を甘味質増強のために配合する、麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、麹を原料とする蒸留酒に甘味質を付与するための物質について鋭意検討を行った結果、麹由来のうまみ成分であるイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルが、蒸留酒に甘味(あまみ)を増強する成分であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の(1)ないし(5)の甘味質増強用組成物に関する。
(1) 麹を原料とする蒸留酒原酒が含有するうまみ成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒用の、うまみ成分の増量により甘味質を増強するための甘味質増強用組成物。
(2)前記うまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、上記(1)に記載の甘味質増強用組成物。
(3)先味と後味とで微妙に異なる甘味質を増強する、上記(1)または(2)に記載の甘味質増強用組成物。
(4)前記蒸留酒原酒が、うまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物。
(5)前記うまみ成分が、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分である、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物。
また、本発明は、以下の(6)ないし(8)の蒸留酒に関する。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(7)前記蒸留酒が焼酎である、上記(6)に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(8)上記(6)または(7)に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
また、本発明は、以下の(9)の麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強方法に関する。
(9)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物を甘味質増強のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強方法。
本発明では、麹を原料とする蒸留酒が有するうまみ成分を、甘味質増強用組成物として蒸留酒に含有させることで、蒸留酒または希釈された蒸留酒に甘味と同時にうまみも増強することができる。この甘味質付与成分は、麹を原料とする蒸留酒に元来含まれているものであるから、甘味料、糖類、ジュース類などの新たな甘味を加える場合のように、元の蒸留酒の官能評価を大きく変えてしまうこともない。
また、蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させても、蒸留酒固有の甘味、うまみが薄まらないアルコール飲料を提供することができ、そうした呈味の改善により、水割りアルコール飲料を瓶詰あるいは罐詰のような製品として消費者に提供することができる。
本発明は、麹を原料とする蒸留酒のうまみのベースの一つが、甘味(あまみ)であることを発見したことに基づくものである。うまみ成分のうち、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルが、麹を原料とする蒸留酒に甘味質を増強できる成分であることを発見し、本発明を完成させた。
本発明において甘味質とは、甘味そのものの質を意味する。香味からくる甘味ではなく、官能試験において、ノーズクリップにより匂いを感じない状態で知覚できる甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価した甘味(あまみ)をいう。また、雑味とは、甘味以外の味であって、苦味、渋味、酸味、および刺激味等をいう。
本発明者らは、大麦焼酎の製造に使用する原料における麹の比率(麹歩合)が焼酎の酒質に及ぼす影響について研究する中で、麹歩合が高くなるにつれて濃度が増加する成分中に、甘味(あまみ)に寄与する成分があることがわかった。
[蒸留酒]
蒸留酒とは、醸造により得られたアルコール含有物をさらに蒸留して製造するアルコール濃度の高い酒である。原料として、米や大麦などの穀類、リンゴ、サクランボ、洋ナシなどの果実、その他にサトウキビ、リュウゼツラン、イモ類などを発酵させて製造したアルコール含有物を蒸留してアルコール濃度を高くしたものであり、スピリッツとも称される。その代表的な酒類としては、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、ウイスキー、ブランデー、焼酎、カルバドス、キルシュなどが知られている。
本発明で対象となる「麹を原料とする蒸留酒」とは、このような蒸留酒のうち、焼酎、スピリッツ、および原料用アルコールである透明な原酒であり、これら蒸留酒を長期間樽で貯蔵した樽貯蔵酒は含まない。
下記に、本発明で対象となる麹を原料とする蒸留酒について、さらに酒税法をもとに詳細に示す。
スピリッツ類
スピリッツ:清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)の酒類以外の酒類で、かつエキス分が2度未満のもの(雑酒を除く)のうち、原料用アルコール以外のもの。例:ジン、ラム、ウオッカ、テキーラ、ニュースピリッツや甲類スピリッツなど。
原料用アルコール:アルコール含有物を蒸留した酒類で、アルコール分が45%を越えるスピリッツ。
焼酎
連続式蒸留焼酎(焼酎甲類):アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が36%未満のもの。
単式蒸留焼酎(焼酎乙類):アルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が45%以下のもの。
[希釈した蒸留酒]
本発明における希釈した蒸留酒としては、その製造工程の最終段階で割り水されてアルコール濃度が調整された焼酎、スピリッツ類、および原料用アルコールである。また、本発明における希釈した蒸留酒としては、「蒸留酒」または製造工程において割り水した「希釈した蒸留酒」を、飲用者が飲用する際に、さらに水、お湯、氷、その他果汁などの飲料を加えることで希釈した蒸留酒も含まれる。
[イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチル]
イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチルは、それぞれ化学式がC12、C14、C14である短鎖分岐脂肪酸エチルエステルであり、それぞれ異なる果実香を有し香料として使われているが、酒類に甘味質を増強できる成分であることは知られていなかった。蒸留酒にこれら短鎖分岐脂肪酸エチルを含有させるためには、どのような工程および方法で含有させてもよく、例えば、蒸留酒に適量添加する方法や、蒸留酒の蒸留前の原料である醪に添加してもよい。また、これらの短鎖分岐脂肪酸エチルは麹を原料とする蒸留酒に含有されているため、これらを高含有する蒸留酒原酒の蒸留画分を甘味質増強組成物として、蒸留酒または希釈した蒸留酒に添加してもよい。イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチルは、単独で使用しても併用してもよい。
蒸留酒または希釈された蒸留酒に甘味質増強成分として含有させるこれら短鎖分岐脂肪酸エチルの濃度は、蒸留酒の種類およびアルコール度数によって適切な範囲が異なるが、それぞれの蒸留酒およびアルコール度数に好適な量を含有させることができ、例えば、0.05〜5000ppbの範囲の量で含有させることが好ましい。
また、同じアルコール度数の蒸留酒でも含有させるこれらの短鎖分岐脂肪酸エチルの濃度によって、その先味、後味の甘味を変化させて改善できる。
[甘味質増強の官能試験]
エタノール水溶液または焼酎に、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを甘味質付与成分として添加して、甘味の総合評価を、6名から9名の社内のパネリスト訓練を経た酒類の専門評価者による官能試験により行った。官能試験は、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)の両方の状態で行った。また、それぞれの状態における先味と後味の両方について、官能評価を行った。本実施例における「先味」とは、口に入れた瞬間の呈味(風味)または口当たりの特性であり、「後味」とは、吐き出した後に残る持続性のある味または口当たりの特性と定義する。
実施例1〜17での官能評価は、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加していない「ブランク」(対照)では感じることがなかったが、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加した試料では感じた甘味を含む呈味(甘味、コク、苦味、酸味、旨味等)および口当たり(なめらか、まるい、荒い、刺激、きれ、もたつく、粉っぽい等)の特性について、複数コメントを許可する条件で、各専門評価者からのコメントを1と数えて評価した。コメントは決められたワードから選んだものではなく、自由想起によるフリーワードである。甘味の質についてコメントも同様のフリーワードである。
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例でアルコール濃度については単位を明記していなくとも「容量%」を意味するものとする。
以下の実施例1〜3では、アルコール濃度が25%のエタノール水溶液に、それぞれイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加し、呈味および風味を官能評価により評価した。
[実施例1]
25%エタノール水溶液に2−メチル酪酸エチルを30.9ppb添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない25%エタノール水溶液を準備した。6もしくは8名の専門評価者により先味と後味を分けて2回繰り返して官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。先味は口に入れた瞬間の味、後味は吐き出した後に残る持続性のある味と定義した。また、匂いが味に影響を及ぼす可能性が考えるため、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表1に示す。
Figure 2021040557
実施例1の結果から、繰り返し評価で2回とも複数得られた味もしくは口当たりのコメントとしてノーズクリップ着用において先味、後味ともに甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においても先味、後味ともに甘味が確認された。よって、2−2-メチル酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない、感じる状態に関わらず先味、後味ともに甘味を増強することがわかった。
[実施例2]
イソ酪酸エチルを69.7ppb添加すること以外は実施例1と同様にして、イソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を6もしくは8名の専門評価者により評価した。官能評価の結果を表2に示す。
Figure 2021040557
実施例2の結果から、繰り返し評価で2回とも複数得られた味もしくは口当たりのコメントとしてノーズクリップ着用において先味、後味ともに甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味のみ甘味が確認された。よって、イソ酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味、後味で甘味を増強することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味で甘味を増強することがわかった。
[実施例3]
イソ吉草酸エチルを69.6ppb添加すること以外は実施例1と同様にして、イソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を6もしくは8名の専門評価者により評価した。官能評価の結果を表3に示す。
Figure 2021040557
実施例3の結果から、繰り返し評価で2回とも複数得られた味もしくは口当たりのコメントとしてノーズクリップ着用において先味で甘味およびコク、後味で甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味、後味ともに甘味が確認された。よって、イソ吉草酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味で甘味およびコク、後味で甘味を増強することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味、後味ともに甘味を増強することがわかった。
以下の実施例4〜6では、アルコール濃度が25%のエタノール水溶液に、それぞれイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを添加し、それぞれどのような甘味の質を呈するかを官能評価により評価した。
[実施例4]
実施例1と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる2−メチル酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。コメントはワードから選んだものではなく、自由想起したフリーワードである。なお、甘味の質とは甘味そのものの質を意味しており、得られたコメントにおけるフリーワードは、甘味のコク、厚み、まろやかさおよびクセの少なさを総合的に評価したものである。以下、同様である。
実施例1と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表4に示す。
Figure 2021040557
実施例4の結果から、複数得られた甘味の質に対するコメントとしてノーズクリップ着用において先味でさわやかな甘味および濃厚な甘味、後味でふくよかな甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味でふくよかな甘味およびさわやかな甘味、後味で口に残るような甘味が確認された。よって、2−メチル酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味でさわやかな甘味および濃厚な甘味、後味でふくよかな甘味を呈することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味でふくよかな甘味およびさわやかな甘味、後味で口に残るような甘味を呈することがわかった。
[実施例5]
実施例2と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。実施例2と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表5に示す。
Figure 2021040557
実施例5の結果から、複数得られた甘味の質に対するコメントとしてノーズクリップ着用において先味でショ糖(さとう)のような甘味、後味で穏やかな甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味でさわやかな甘味、後味でショ糖(さとう)のような甘味が確認された。よって、イソ酪酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味でショ糖(さとう)のような甘味、後味で穏やかな甘味を呈することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味でさわやかな甘味、後味でショ糖(さとう)のような甘味を呈することがわかった。
[実施例6]
実施例3と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ吉草酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。また、実施例3と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表6に示す。
Figure 2021040557
実施例6の結果から、複数得られた甘味の質に対するコメントとして、ノーズクリップ着用において先味でまろやかな甘味、後味でさわやかな甘味が確認された。ノーズクリップ未着用においては、先味で濃厚な甘味、後味で口に残るような甘味が確認された。よって、イソ吉草酸エチルは25%エタノール水溶液で匂いを感じない状態において先味でまろやかな甘味、後味でさわやかな甘味を呈することがわかった。匂いを感じる状態においては、先味で濃厚な甘味、後味で口に残るような甘味を呈することがわかった。
以下の実施例7、8では、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および/または2−メチル酪酸エチルを
減圧蒸留または常圧蒸留した麦焼酎に添加し、これらが麹由来の甘味に寄与するかを官能評価により評価した。
[実施例7]
麹歩合33%で減圧蒸留した麦焼酎A(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で減圧蒸留した麦焼酎B(アルコール度数25度)、および麦焼酎Aに麦焼酎Bの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを6.4ppb、イソ酪酸エチルを35.4ppb、イソ吉草酸エチルを2.3ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、表7に示す評価基準を用いて先味と後味における甘味の強度について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
Figure 2021040557
官能評価の結果を表8に示す。
Figure 2021040557
実施例7の結果から、麦焼酎Aに2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルをそれぞれ、もしくはすべて添加することにより、先味もしくは後味で甘味強度の評価値が麦焼酎Bの甘味強度に近づくことが確認された。よって、2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルは、減圧蒸留の麦焼酎において麹由来の甘味を増強することがわかった。
[実施例8]
麹歩合33%で常圧蒸留した麦焼酎C(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で常圧蒸留した麦焼酎D(アルコール度数25度)および麦焼酎Cに麦焼酎Dの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを17.2ppb、イソ酪酸エチルを71.7ppb、イソ吉草酸エチルを2.7ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、それ以外は実施例7と同様にして、9名の専門評価者により評価した。
Figure 2021040557
実施例8の結果から、麦焼酎Cに2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルをそれぞれ、もしくはすべて添加することにより、先味もしくは後味で甘味強度の評価値が麦焼酎Dの甘味強度に近づくことが確認された。よって、2−メチル酪酸エチル、イソ酪酸エチルおよびイソ吉草酸エチルは、常圧蒸留の麦焼酎において麹由来の甘味を増強することがわかった。
次の実施例9〜17では、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルの、甘味や口当たりの良さを付与できる濃度範囲について、アルコール濃度44度、25度または5度の麦焼酎を用いて官能評価により評価した。
[実施例9]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度44度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール度数44度)を準備した。そして、表10に示す評価基準を用いて先味と後味における味もしくは口当たり付与の効果について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。さらに、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
Figure 2021040557
官能評価の結果を表11に示す。
Figure 2021040557
実施例9の結果から、特に2−メチル酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜5ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、2−メチル酪酸エチルはアルコール度数44%の麦焼酎で匂いを感じない状態において0.5〜5ppb、匂いを感じる状態で0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例10]
イソ酪酸エチルを添加すること以外は実施例9と同様にして、8名の専門評価者によりイソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表12に示す。
Figure 2021040557
実施例10の結果から、特にイソ酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜50ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜500ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ酪酸エチルはアルコール度数44%の麦焼酎で匂いを感じない状態において0.5〜50ppb、匂いを感じる状態で0.05〜500ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例11]
イソ吉草酸エチルを添加すること以外は実施例9と同様にして、8名の専門評価者によりイソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表13に示す。
Figure 2021040557
実施例11の結果から、特にイソ吉草酸エチルをノーズクリップ着用、未着用ともに0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ吉草酸エチルはアルコール度数44%の麦焼酎で匂いを感じない状態および感じる状態において0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例12]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度25度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度25度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表14に示す。
Figure 2021040557
実施例12の結果から、特に2-メチル酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜500ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜500ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、2−メチル酪酸エチルはアルコール度数25%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態において0.5〜500ppb、匂いを感じる状態で0.05〜500ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例13]
イソ酪酸エチルを添加すること以外は実施例12と同様にして、8名の専門評価者によりイソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表15に示す。
Figure 2021040557
実施例13の結果から、特にイソ酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.05〜500ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜5000ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ酪酸エチルはアルコール度数25%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態において0.05〜500ppb、匂いを感じる状態で0.05〜5000ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例14]
イソ吉草酸エチルを添加すること以外は実施例12と同様にして、8名の専門評価者によりイソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表16に示す。
Figure 2021040557
実施例14の結果から、特にイソ吉草酸エチルをノーズクリップ着用、未着用ともに0.5〜500ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ吉草酸エチルはアルコール度数25%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態および感じる状態において0.5〜500ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例15]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度5度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度5度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表17に示す。
Figure 2021040557
実施例15の結果から、特に2−メチル酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.05〜500ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、2−メチル酪酸エチルはアルコール度数5%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態において0.05〜500ppb、匂いを感じる状態で0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例16]
イソ酪酸エチルを添加すること以外は実施例15と同様にして、7名の専門評価者によりイソ酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表18に示す。
Figure 2021040557
実施例16の結果から、特にイソ酪酸エチルをノーズクリップ着用において0.5〜5000ppb、ノーズクリップ未着用において0.05〜5000ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ酪酸エチルはアルコール度数5%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態におい0.5〜5000ppb、匂いを感じる状態で0.05〜5000ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
[実施例17]
イソ吉草酸エチルを添加すること以外は実施例15と同様にして、8名の専門評価者によりイソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表19に示す。
Figure 2021040557
実施例17の結果から、特にイソ吉草酸エチルをノーズクリップ着用、未着用ともに0.05〜50ppb添加することにより、先味もしくは後味で味・口当たり付与の効果の評価値が4.5以上になることが確認された。よって、イソ吉草酸エチルはアルコール度数5%になるように水を加えた麦焼酎で匂いを感じない状態および感じる状態において0.05〜50ppbの濃度を添加した際に味もしくは口当たりに良い効果を付与することがわかった。
本発明によれば、麹を原料とする蒸留酒において、甘味(あまみ)を増強することのできる甘味質増強用組成物を提供するものであり、該甘味質増強用組成物を含有することにより甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒や希釈した蒸留酒を提供するものである。この甘味質増強用組成物はうまみ成分でもあることから、麹を原料とする蒸留酒に自然な甘味とうまみを付与できる。
本発明は、以下の(1)ないし()の甘味質増強用組成物に関する。
(1)麹を原料とする蒸留酒原酒が含有するうまみ成分であるイソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒用の、うまみ成分の増量により甘味質を増強するための甘味質増強用組成物。
(2)前記うまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、上記(1)に記載の甘味質増強用組成物。
(3)先味と後味とで微妙に異なる甘味質を増強する、上記(1)または(2)に記載の甘味質増強用組成物。
(4)前記蒸留酒原酒が、うまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物。
また、本発明は、以下の()ないし()の蒸留酒に関する。
)上記(1)ないし()のいずれかに記載の甘味質増強用組成物(ただし、甘味質付与成分が2−メチル酪酸エチルのみである組成物を除く。)を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
)前記蒸留酒が焼酎である、上記()に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
)上記()または()に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
また、本発明は、以下の()の麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強方法に関する。
)上記(1)ないし()のいずれかに記載の甘味質増強用組成物を甘味質増強のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強方法。

Claims (9)

  1. 麹を原料とする蒸留酒原酒が含有する麹のうまみ成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒のための甘味質付与組成物。
  2. 前記麹のうまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、請求項1に記載の甘味質付与組成物。
  3. 先味と後味とで微妙に異なる甘味質を付与する、請求項1または2に記載の甘味質付与組成物。
  4. 前記蒸留酒原酒が、麹のうまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、請求項1ないし3のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
  5. 前記麹のうまみ成分が、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分である、請求項1ないし4のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の甘味質付与組成物を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
  7. 上記蒸留酒が焼酎である、請求項6に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
  8. 請求項6または7に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
  9. 請求項1ないし5のいずれかに記載の甘味質付与組成物を甘味質付与のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質付与方法。
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