JP2021040557A - 麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強用組成物、甘味質増強用組成物を含有する蒸留酒、および蒸留酒の甘味質増強方法 - Google Patents
麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強用組成物、甘味質増強用組成物を含有する蒸留酒、および蒸留酒の甘味質増強方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
また、焼酎などの蒸留酒は、水ないし湯で割って飲用に供することが行われているが、これらの蒸留酒を水(湯も含む)で割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒の本来のコクなどが薄れ、味にしまりがなくなり、水っぽくなるという問題があった。このように、蒸留酒を水で希釈すると、飲料中の呈味成分等の割合が低くなり、風味やボディ感にかけ、味質のバランスに欠けたアルコール飲料となることがあった。
このように、2−メチル酪酸エステル等の短鎖分岐脂肪酸エステルが、酒類に香気を付与する成分であることは既に報告されているが、麹を原料とする蒸留酒のうまみ成分の一つであることは知られていなかった。
蒸留酒を長期間樽貯蔵した樽貯蔵酒(樽酒)には糖が含まれているが、樽貯蔵していない蒸留酒には糖が含まれていないため、樽貯蔵していない蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒本来の香りやコクが薄れるという問題点があった。また、従来から、甘味料、糖類、ジュース類などの新たな甘味を加えて味を濃くすることによって、できるだけ各飲用者の好みに合わせるようにしていたが、元の蒸留酒の官能評価を大きく変えてしまうという問題があった。
(1)麹を原料とする蒸留酒原酒が含有する麹のうまみ成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒のための甘味質付与組成物。
(2)前記麹のうまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、上記(1)に記載の甘味質付与組成物。
(3)先味と後味とで微妙に異なる甘味質を付与する、上記(1)または(2)に記載の甘味質付与組成物。
(4)前記蒸留酒原酒が、麹のうまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
(5)前記麹のうまみ成分が、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分である、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質付与組成物を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(7)前記蒸留酒が焼酎である、上記(6)に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(8)上記(6)または(7)に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(9)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質付与組成物を甘味質付与のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質付与方法。
また、蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させても、蒸留酒固有の甘味、うまみが薄まらないアルコール飲料を提供することができ、そうした呈味の改善により、水割りアルコール飲料を瓶詰あるいは罐詰のような製品として消費者に提供することができる。
本発明において甘味質とは、甘味そのものの質を意味する。香味からくる甘味ではなく、官能試験において、ノーズクリップにより匂いを感じない状態で知覚できる甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価した甘味(あまみ)をいう。また、雑味とは、甘味以外の味であって、苦味、渋味、酸味、および刺激味等をいう。
蒸留酒とは、醸造により得られたアルコール含有物をさらに蒸留して製造するアルコール濃度の高い酒である。原料として、米や大麦などの穀類、リンゴ、サクランボ、洋ナシなどの果実、その他にサトウキビ、リュウゼツラン、イモ類などを発酵させて製造したアルコール含有物を蒸留してアルコール濃度を高くしたものであり、スピリッツとも称される。その代表的な酒類としては、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、ウイスキー、ブランデー、焼酎、カルバドス、キルシュなどが知られている。
本発明で対象となる「麹を原料とする蒸留酒」とは、このような蒸留酒のうち、焼酎、スピリッツ、および原料用アルコールである透明な原酒であり、これら蒸留酒を長期間樽で貯蔵した樽貯蔵酒は含まない。
スピリッツ類
スピリッツ:清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)の酒類以外の酒類で、かつエキス分が2度未満のもの(雑酒を除く)のうち、原料用アルコール以外のもの。例:ジン、ラム、ウオッカ、テキーラ、ニュースピリッツや甲類スピリッツなど。
原料用アルコール:アルコール含有物を蒸留した酒類で、アルコール分が45%を越えるスピリッツ。
焼 酎
連続式蒸留焼酎(焼酎甲類):アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が36%未満のもの。
単式蒸留焼酎(焼酎乙類):アルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が45%以下のもの。
本発明における希釈した蒸留酒としては、その製造工程の最終段階で割り水されてアルコール濃度が調整された焼酎、スピリッツ類、および原料用アルコールである。また、本発明における希釈した蒸留酒としては、「蒸留酒」または製造工程において割り水した「希釈した蒸留酒」を、飲用者が飲用する際に、さらに水、お湯、氷、その他果汁などの飲料を加えることで希釈した蒸留酒も含まれる。
イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチルは、それぞれ化学式がC6H12O2、C7H14O2、C7H14O2である短鎖分岐脂肪酸エチルエステルであり、それぞれ異なる果実香を有し香料として使われているが、酒類に甘味質を付与できる成分であることは知られていなかった。蒸留酒にこれら短鎖分岐脂肪酸エチルを含有させるためには、どのような工程および方法で含有させてもよく、例えば、蒸留酒に適量添加する方法や、蒸留酒の蒸留前の原料である醪に添加してもよい。また、これらの短鎖分岐脂肪酸エチルは麹を原料とする蒸留酒に含有されているため、これらを高含有する蒸留酒原酒の蒸留画分を甘味質付与組成物として、蒸留酒または希釈した蒸留酒に添加してもよい。
また、同じアルコール度数の蒸留酒でも含有させるこれらの短鎖分岐脂肪酸エチルの濃度によって、その先味、後味の甘味を変化させて改善できる。
エタノール水溶液または焼酎に、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを甘味質付与成分として添加して、甘味の総合評価を、6名から9名の社内のパネリスト訓練を経た酒類の専門評価者による官能試験により行った。官能試験は、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)の両方の状態で行った。また、それぞれの状態における先味と後味の両方について、官能評価を行った。本実施例における「先味」とは、口に入れた瞬間の呈味(風味)または口当たりの特性であり、「後味」とは、吐き出した後に残る持続性のある味または口当たりの特性と定義する。
[実施例1]
25%エタノール水溶液に2−メチル酪酸エチルを30.9ppb添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない25%エタノール水溶液を準備した。6もしくは8名の専門評価者により先味と後味を分けて2回繰り返して官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。先味は口に入れた瞬間の味、後味は吐き出した後に残る持続性のある味と定義した。また、匂いが味に影響を及ぼす可能性が考えるため、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表1に示す。
イソ吉草酸エチルを69.6ppb添加すること以外は実施例1と同様にして、イソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を6もしくは8名の専門評価者により評価した。官能評価の結果を表3に示す。
[実施例4]
実施例1と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる2−メチル酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。コメントはワードから選んだものではなく、自由想起したフリーワードである。なお、甘味の質とは甘味そのものの質を意味しており、得られたコメントにおけるフリーワードは、甘味のコク、厚み、まろやかさおよびクセの少なさを総合的に評価したものである。以下、同様である。
実施例1と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表4に示す。
実施例2と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。実施例2と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表5に示す。
実施例3と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ吉草酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。また、実施例3と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表6に示す。
減圧蒸留または常圧蒸留した麦焼酎に添加し、これらが麹由来の甘味に寄与するかを官能評価により評価した。
[実施例7]
麹歩合33%で減圧蒸留した麦焼酎A(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で減圧蒸留した麦焼酎B(アルコール度数25度)、および麦焼酎Aに麦焼酎Bの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを6.4ppb、イソ酪酸エチルを35.4ppb、イソ吉草酸エチルを2.3ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、表7に示す評価基準を用いて先味と後味における甘味の強度について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
麹歩合33%で常圧蒸留した麦焼酎C(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で常圧蒸留した麦焼酎D(アルコール度数25度)および麦焼酎Cに麦焼酎Dの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを17.2ppb、イソ酪酸エチルを71.7ppb、イソ吉草酸エチルを2.7ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、それ以外は実施例7と同様にして、9名の専門評価者により評価した。
[実施例9]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度44度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール度数44度)を準備した。そして、表10に示す評価基準を用いて先味と後味における味もしくは口当たり付与の効果について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。さらに、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度25度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度25度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表14に示す。
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度5度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度5度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表17に示す。
また、焼酎などの蒸留酒は、水ないし湯で割って飲用に供することが行われているが、これらの蒸留酒を水(湯も含む)で割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒の本来のコクなどが薄れ、味にしまりがなくなり、水っぽくなるという問題があった。このように、蒸留酒を水で希釈すると、飲料中の呈味成分等の割合が低くなり、風味やボディ感にかけ、味質のバランスに欠けたアルコール飲料となることがあった。
このように、2−メチル酪酸エステル等の短鎖分岐脂肪酸エステルが、酒類に香気を付与する成分であることは既に報告されているが、麹を原料とする蒸留酒のうまみ成分の一つであることは知られていなかった。
蒸留酒を長期間樽貯蔵した樽貯蔵酒(樽酒)には糖が含まれていることがあるが、樽貯蔵していない蒸留酒には糖が含まれていないため、樽貯蔵していない蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させると、蒸留酒本来の香りやコクが薄れるという問題点があった。また、従来から、甘味料、糖類、ジュース類などの新たな甘味を加えて味を濃くすることによって、できるだけ各飲用者の好みに合わせるようにしていたが、元の蒸留酒の官能評価を大きく変えてしまうという問題があった。
(1) 麹を原料とする蒸留酒原酒が含有するうまみ成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒用の、うまみ成分の増量により甘味質を増強するための甘味質増強用組成物。
(2)前記うまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、上記(1)に記載の甘味質増強用組成物。
(3)先味と後味とで微妙に異なる甘味質を増強する、上記(1)または(2)に記載の甘味質増強用組成物。
(4)前記蒸留酒原酒が、うまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物。
(5)前記うまみ成分が、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分である、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物。
(6)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(7)前記蒸留酒が焼酎である、上記(6)に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(8)上記(6)または(7)に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(9)上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物を甘味質増強のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強方法。
また、蒸留酒を水などで割ってアルコール濃度を低下させても、蒸留酒固有の甘味、うまみが薄まらないアルコール飲料を提供することができ、そうした呈味の改善により、水割りアルコール飲料を瓶詰あるいは罐詰のような製品として消費者に提供することができる。
本発明において甘味質とは、甘味そのものの質を意味する。香味からくる甘味ではなく、官能試験において、ノーズクリップにより匂いを感じない状態で知覚できる甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価した甘味(あまみ)をいう。また、雑味とは、甘味以外の味であって、苦味、渋味、酸味、および刺激味等をいう。
蒸留酒とは、醸造により得られたアルコール含有物をさらに蒸留して製造するアルコール濃度の高い酒である。原料として、米や大麦などの穀類、リンゴ、サクランボ、洋ナシなどの果実、その他にサトウキビ、リュウゼツラン、イモ類などを発酵させて製造したアルコール含有物を蒸留してアルコール濃度を高くしたものであり、スピリッツとも称される。その代表的な酒類としては、ウオッカ、ラム、テキーラ、ジン、ウイスキー、ブランデー、焼酎、カルバドス、キルシュなどが知られている。
本発明で対象となる「麹を原料とする蒸留酒」とは、このような蒸留酒のうち、焼酎、スピリッツ、および原料用アルコールである透明な原酒であり、これら蒸留酒を長期間樽で貯蔵した樽貯蔵酒は含まない。
スピリッツ類
スピリッツ:清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒類、ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)の酒類以外の酒類で、かつエキス分が2度未満のもの(雑酒を除く)のうち、原料用アルコール以外のもの。例:ジン、ラム、ウオッカ、テキーラ、ニュースピリッツや甲類スピリッツなど。
原料用アルコール:アルコール含有物を蒸留した酒類で、アルコール分が45%を越えるスピリッツ。
焼酎
連続式蒸留焼酎(焼酎甲類):アルコール含有物を連続式蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が36%未満のもの。
単式蒸留焼酎(焼酎乙類):アルコール含有物を連続式蒸留機以外の蒸留機で蒸留したもので、アルコール分が45%以下のもの。
本発明における希釈した蒸留酒としては、その製造工程の最終段階で割り水されてアルコール濃度が調整された焼酎、スピリッツ類、および原料用アルコールである。また、本発明における希釈した蒸留酒としては、「蒸留酒」または製造工程において割り水した「希釈した蒸留酒」を、飲用者が飲用する際に、さらに水、お湯、氷、その他果汁などの飲料を加えることで希釈した蒸留酒も含まれる。
イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチルは、それぞれ化学式がC6H12O2、C7H14O2、C7H14O2である短鎖分岐脂肪酸エチルエステルであり、それぞれ異なる果実香を有し香料として使われているが、酒類に甘味質を増強できる成分であることは知られていなかった。蒸留酒にこれら短鎖分岐脂肪酸エチルを含有させるためには、どのような工程および方法で含有させてもよく、例えば、蒸留酒に適量添加する方法や、蒸留酒の蒸留前の原料である醪に添加してもよい。また、これらの短鎖分岐脂肪酸エチルは麹を原料とする蒸留酒に含有されているため、これらを高含有する蒸留酒原酒の蒸留画分を甘味質増強組成物として、蒸留酒または希釈した蒸留酒に添加してもよい。イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、2−メチル酪酸エチルは、単独で使用しても併用してもよい。
また、同じアルコール度数の蒸留酒でも含有させるこれらの短鎖分岐脂肪酸エチルの濃度によって、その先味、後味の甘味を変化させて改善できる。
エタノール水溶液または焼酎に、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、または2−メチル酪酸エチルを甘味質付与成分として添加して、甘味の総合評価を、6名から9名の社内のパネリスト訓練を経た酒類の専門評価者による官能試験により行った。官能試験は、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)の両方の状態で行った。また、それぞれの状態における先味と後味の両方について、官能評価を行った。本実施例における「先味」とは、口に入れた瞬間の呈味(風味)または口当たりの特性であり、「後味」とは、吐き出した後に残る持続性のある味または口当たりの特性と定義する。
[実施例1]
25%エタノール水溶液に2−メチル酪酸エチルを30.9ppb添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない25%エタノール水溶液を準備した。6もしくは8名の専門評価者により先味と後味を分けて2回繰り返して官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。先味は口に入れた瞬間の味、後味は吐き出した後に残る持続性のある味と定義した。また、匂いが味に影響を及ぼす可能性が考えるため、匂いを感じない状態(ノーズクリップ着用)と匂いを感じる状態(ノーズクリップ未着用)でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表1に示す。
イソ吉草酸エチルを69.6ppb添加すること以外は実施例1と同様にして、イソ吉草酸エチルの味および口当たりへの効果を6もしくは8名の専門評価者により評価した。官能評価の結果を表3に示す。
[実施例4]
実施例1と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じる2−メチル酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。コメントはワードから選んだものではなく、自由想起したフリーワードである。なお、甘味の質とは甘味そのものの質を意味しており、得られたコメントにおけるフリーワードは、甘味のコク、厚み、まろやかさおよびクセの少なさを総合的に評価したものである。以下、同様である。
実施例1と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表4に示す。
実施例2と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ酪酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。実施例2と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表5に示す。
実施例3と同じ試料を用いて7名の専門評価者により先味と後味を分けて官能評価を行い、対照にはなく調整した試料に感じるイソ吉草酸エチルが呈する甘味の質についてコメントを求めた。また、実施例3と同様に、ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。官能評価の結果を表6に示す。
減圧蒸留または常圧蒸留した麦焼酎に添加し、これらが麹由来の甘味に寄与するかを官能評価により評価した。
[実施例7]
麹歩合33%で減圧蒸留した麦焼酎A(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で減圧蒸留した麦焼酎B(アルコール度数25度)、および麦焼酎Aに麦焼酎Bの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを6.4ppb、イソ酪酸エチルを35.4ppb、イソ吉草酸エチルを2.3ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、表7に示す評価基準を用いて先味と後味における甘味の強度について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
麹歩合33%で常圧蒸留した麦焼酎C(アルコール濃度25度)、麹歩合100%で常圧蒸留した麦焼酎D(アルコール度数25度)および麦焼酎Cに麦焼酎Dの含有量相当になるように2−メチル酪酸エチルを17.2ppb、イソ酪酸エチルを71.7ppb、イソ吉草酸エチルを2.7ppbそれぞれ、もしくは3成分すべて添加して試料を調整した。そして、それ以外は実施例7と同様にして、9名の専門評価者により評価した。
[実施例9]
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度44度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール度数44度)を準備した。そして、表10に示す評価基準を用いて先味と後味における味もしくは口当たり付与の効果について官能評価を行った。評価値は、7名の専門評価者の平均値を採用した。さらに、対照にはなく調整した試料に感じる味および口当たりの特性についてコメントを求めた。ノーズクリップを用いて匂いを感じない状態と感じる状態でそれぞれ評価した。
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度25度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度25度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表14に示す。
実施例7で使用した麦焼酎A(アルコール濃度5度)に2−メチル酪酸エチルを所定量添加して試料を調整した。対照として、2−メチル酪酸エチルを添加していない麦焼酎A(アルコール濃度5度)を準備した。7名の専門評価者により実施例9と同様に2−メチル酪酸エチルの味および口当たりへの効果を評価した。官能評価の結果を表17に示す。
(1)麹を原料とする蒸留酒原酒が含有するうまみ成分である、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒用の、うまみ成分の増量により甘味質を増強するための甘味質増強用組成物。
(2)前記うまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、上記(1)に記載の甘味質増強用組成物。
(3)先味と後味とで微妙に異なる甘味質を増強する、上記(1)または(2)に記載の甘味質増強用組成物。
(4)前記蒸留酒原酒が、うまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物。
(5)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物(ただし、甘味質付与成分が2−メチル酪酸エチルのみである組成物を除く。)を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(6)前記蒸留酒が焼酎である、上記(5)に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(7)上記(5)または(6)に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
(8)上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の甘味質増強用組成物を甘味質増強のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強方法。
Claims (9)
- 麹を原料とする蒸留酒原酒が含有する麹のうまみ成分を有効成分とする、麹を原料とする蒸留酒のための甘味質付与組成物。
- 前記麹のうまみ成分が、甘味のコク、厚み、まろやかさ、およびクセの少なさを総合的に評価して、香りとは無関係のあまみそのものの質をベースとする甘味質付与成分である、請求項1に記載の甘味質付与組成物。
- 先味と後味とで微妙に異なる甘味質を付与する、請求項1または2に記載の甘味質付与組成物。
- 前記蒸留酒原酒が、麹のうまみ成分を通常の蒸留酒よりも多量に含有する蒸留酒原酒である、請求項1ないし3のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
- 前記麹のうまみ成分が、イソ酪酸エチル、イソ吉草酸エチル、および2−メチル酪酸エチルからなる群から選ばれる一以上の甘味質付与成分である、請求項1ないし4のいずれかに記載の甘味質付与組成物。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の甘味質付与組成物を配合成分とする、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
- 上記蒸留酒が焼酎である、請求項6に記載の甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
- 請求項6または7に記載の蒸留酒を水で希釈した、甘味質が増強された、麹を原料とする蒸留酒。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の甘味質付与組成物を甘味質付与のために配合することを特徴とする、麹を原料とする蒸留酒の甘味質付与方法。
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JP2019166131A JP6721771B1 (ja) | 2019-09-12 | 2019-09-12 | 麹を原料とする蒸留酒の甘味質増強用組成物、甘味質増強用組成物を含有する蒸留酒、および蒸留酒の甘味質増強方法 |
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