JP2021038118A - 積層構造体及び半導体装置並びに積層構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
なお、上記のオフ角とは、基板表面と結晶成長面とのなす角をいう。
本発明に係る積層構造体1の一実施形態は、図1に示すように、タンタル酸リチウムを主成分とする結晶性基板(具体的には、タンタル酸リチウムを主成分とする単結晶基板)10上に、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜20が積層されている積層構造体1である。なお、結晶性基板10と結晶性酸化物膜20との間には、バッファ層などが介在していてもよい。
また、上記のタンタル酸リチウムを主成分とする単結晶基板は0.2°〜18.0°のオフ角を有している。このとき、オフ角が6°〜18°であると、より一層、膜表面の平滑性やキャリア移動度が優れるため好ましい。なお、この基板へのオフ角の付与の方法は特に限定されず、例えば研磨などの方法を用いて付与することができる。
まず、本発明に係る積層構造体が有するタンタル酸リチウムを主成分とする単結晶基板について説明する。
本発明に係る積層構造体における結晶性酸化物膜は、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜である。結晶性酸化物膜は、通常、金属と酸素から構成されるが、本発明においては、金属としてガリウムを主成分としていれば問題ない。ここで、本発明で「ガリウムを主成分とし」という場合、金属成分のうち50〜100%がガリウムであることを意味する。ガリウム以外の金属成分としては、例えば、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、イリジウム、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種又は2種以上の金属を含んでもよい。なお、結晶性酸化物膜はベータガリア構造であれば、単結晶でも多結晶でもよい。
また、結晶性酸化物膜がドーパントを含むのであれば、電気特性がより優れた積層構造体となる。
本発明に係る積層構造体の一実施形態は、少なくともガリウムを含有する水溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて基板へ搬送し、前記基板上で前記ミストを熱反応させて、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜を成膜する方法であって、前記基板として、タンタル酸リチウムを主成分とし、0.2°〜18.0°のオフ角を有する単結晶基板を用いることを特徴とする。
原料溶液(水溶液)104aには、少なくともガリウムを含んでいれば特に限定されない。すなわち、ガリウムの他、例えば、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、イリジウム、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種又は2種以上の金属を含んでもよい。前記金属を錯体又は塩の形態で、水に溶解又は分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。また、上記金属を、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸等に溶解したものも塩の水溶液として用いることができる。溶質濃度は0.01〜1mol/Lが好ましい。
ミスト化部120では、原料溶液104aを調製し、前記原料溶液104aをミスト化してミストを発生させる。ミスト化手段は、原料溶液104aをミスト化できさえすれば特に限定されず、公知のミスト化手段であってよいが、超音波振動によるミスト化手段を用いることが好ましい。より安定してミスト化することができるためである。
搬送部109は、ミスト化部120と成膜部140とを接続する。搬送部109を介して、ミスト化部120のミスト発生源104から成膜部140の成膜室107へと、キャリアガスによってミストが搬送される。搬送部109は、例えば、供給管109aとすることができる。供給管109aとしては、例えば石英管や樹脂製のチューブなどを使用することができる。
成膜部140では、ミストを加熱し熱反応を生じさせて、基板(結晶性基板)110の表面の一部又は全部に成膜を行う。成膜部140は、例えば、成膜室107を備え、成膜室107内には基板(結晶性基板)110が設置されており、該基板(結晶性基板)110を加熱するためのホットプレート108を備えることができる。ホットプレート108は、図2に示されるように成膜室107の外部に設けられていてもよいし、成膜室107の内部に設けられていてもよい。また、成膜室107には、基板(結晶性基板)110へのミストの供給に影響を及ぼさない位置に、排ガスの排気口112が設けられてもよい。
なお、上述したように、この基板(結晶性基板)110はタンタル酸リチウムを主成分とする単結晶基板であり、0.2°〜18.0°のオフ角を有し、好ましくは6°〜18°のオフ角を有するものである。またその主面が、a面、m面、r面またはc面であり、該主面上に成膜するように設置するのがより好ましい。
キャリアガス供給部130は、キャリアガスを供給するキャリアガス源102aを有し、キャリアガス源102aから送り出されるキャリアガス(以下、「主キャリアガス」という)の流量を調節するための流量調節弁103aを備えていてもよい。また、必要に応じて希釈用キャリアガスを供給する希釈用キャリアガス源102bや、希釈用キャリアガス源102bから送り出される希釈用キャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103bを備えることもできる。
次に、以下、図2を参照しながら、本発明に係る成膜方法の一例を説明する。まず、原料溶液104aをミスト化部120のミスト発生源104内に収容し、基板(結晶性基板)110をホットプレート108上に直接又は成膜室107の壁を介して設置し、ホットプレート108を作動させる。タンタル酸リチウムは熱膨張係数が大きいため、低温から徐々に昇温するのが好ましい。
結晶性基板を結晶性酸化物膜から剥離してもよい。剥離手段は特に限定されず、公知の手段であってもよい。例えば、機械的衝撃を与えて剥離する手段、熱を加えて熱応力を利用して剥離する手段、超音波等の振動を加えて剥離する手段、エッチングして剥離する手段、レーザーリフトオフなどが挙げられる。前記剥離によって、結晶性酸化物膜を自立膜として得ることができる。
半導体装置を構成するために必要となる電極の形成は、一般的な方法を用いることができる。すなわち、蒸着、スパッタ、CVD、めっきなどの他、樹脂等と一緒に接着させる印刷法など、いずれを用いてもかまわない。電極材料としては、Al、Ag、Ti、Pd、Au、Cu、Cr、Fe、W、Ta、Nb、Mn、Mo、Hf、Co、Zr、Sn、Pt、V、Ni、Ir、Zn、In、Ndなどの金属の他、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェンまたはポリピロールなどの有機導電性化合物、いずれを用いてもかまわないし、これらの2種以上の合金、混合物でもかまわない。電極の厚さは、1〜1000nmが好ましく、より好ましくは10〜500nmである。
上述の積層構造体の製造方法に基づいて、βガリア構造を有する酸化ガリウム(β−Ga2O3)の成膜を行い、積層構造体を得た。
臭化ガリウム濃度は、1.0×10−1mol/Lとし、臭化ガリウムと塩化スズをガリウム、スズの原子数比で1:0.02となるように水溶液を調整した。調製した溶液に、体積比で10%の48%臭化水素酸溶液を加え原料溶液104aを調製した。
また、成膜した結晶性酸化物膜に関して、相の同定、キャリア移動度、RaおよびP−V値について評価を行った。その評価方法および結果については、他の実施例および比較例と共に後述する。
オフ角の異なるc面タンタル酸リチウム基板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、結晶性酸化物膜を得た。
なお、オフ角は、実施例2が0.5°であり、実施例3が3.0°であり、実施例4が4.0°であり、実施例5が6.0°であり、実施例6が9.0°であり、実施例7が14.0°であり、実施例8が18.0°であった。
得られた結晶性酸化物膜の膜厚は、それぞれ、実施例2が1.2μmであり、実施例3が1.1μmであり、実施例4が1.5μmであり、実施例5が1.3μmであり、実施例6が1.0μmであり、実施例7が1.4μmであり、実施例8が1.3μmであった。
オフ角を有さないc面タンタル酸リチウム単結晶基板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして結晶性酸化物膜を得た。
得られた膜の膜厚は1.2μmであった。
オフ角が22.0°であること以外は実施例1と同様にして成膜を行った。
得られた膜の表面は一部が白濁した。得られた膜の膜厚は1.5μmであった。
オフ角が26.0°であること以外は実施例1と同様にして成膜を行った。
得られた結晶性酸化物膜の表面は全面が白濁した。得られた膜の膜厚は0.9μmであった。
基板としてオフ角が5.0°であるm面タンタル酸リチウム単結晶基板を用いたこと、成膜温度を500℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして結晶性酸化物膜を得た。
得られた膜の膜厚は1.8μmであった。
基板としてオフ角を有さないm面タンタル酸リチウム単結晶基板を用いたこと以外は、実施例9と同様にして結晶性酸化物膜を得た。
得られた結晶性酸化物膜の膜厚は1.2μmであった。
基板としてオフ角が4.0°であるa面タンタル酸リチウム単結晶基板を用いたこと、臭化ガリウムの代わりにヨウ化ガリウムを用いたこと、成膜温度を600℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして結晶性酸化物膜を得た。
得られた結晶性酸化物膜の膜厚は2.3μmであった。
基板としてオフ角を有さないa面タンタル酸リチウム単結晶基板を用いたこと以外は、実施例10と同様にして結晶性酸化物膜を得た。
得られた結晶性酸化物膜の膜厚は1.5μmであった。
基板としてオフ角が3.0°であるr面タンタル酸リチウム単結晶基板を用いたこと以外は、実施例1と同様にして結晶性酸化物膜を得た。
得られた膜の膜厚は1.2μmであった。
成膜した薄膜の相の同定は、XRD回折装置を用いて、10度から120度まで2θ/ωスキャンを行うことによって行った。測定はCuKα線を用いて行った。
その結果、得られた結晶性酸化物膜は、実施例1−8および比較例1では、(−201)面を主面とするβ−酸化ガリウムであり、実施例9および比較例4ではc面β−酸化ガリウムであり、実施例10および比較例5ではb面β−酸化ガリウムであり、実施例11ではa面β−酸化ガリウムであった。
また、比較例2および3で見られた白濁部ではアモルファス相が成長していた。
なお、比較例2、3では半値幅の測定は行わなかった。
実施例1−11および比較例1−5において得られた結晶性酸化物膜につき、van der pauw法により、ホール効果測定を実施した。測定したキャリア移動度を表1に示す。
実施例1−11および比較例1−5において得られた結晶性酸化物膜につき、AFMを用いて表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)および、最大高低差(P−V値)を測定した。測定した結果を表1に示す。
101…成膜装置、 102a…キャリアガス源、
102b…希釈用キャリアガス源、 103a…流量調節弁、
103b…流量調節弁、 104…ミスト発生源、 104a…原料溶液、
105…容器、 105a…水、 106…超音波振動子、 107…成膜室、
108…ホットプレート、 109…搬送部、 109a…供給管、
110…基板(結晶性基板)、 112…排気口、 116…発振器、
120…ミスト化部、130…キャリアガス供給部、140…成膜部。
Claims (16)
- 結晶性基板と、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜とを有する積層構造体であって、
前記結晶性基板が、タンタル酸リチウムを主成分とする単結晶基板であり、0.2°〜18.0°のオフ角を有するものであることを特徴とする積層構造体。 - 前記結晶性基板のオフ角が6°〜18°であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
- 前記結晶性基板が、a面、m面、r面またはc面を主面として有するタンタル酸リチウム基板であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の積層構造体。
- 前記結晶性酸化物膜の膜厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層構造体。
- 前記結晶性酸化物膜の膜表面の表面粗さRaが50nm以下であり、最大高低差P−V値が100nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層構造体。
- 前記結晶性酸化物膜が半導体膜であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに1項に記載の積層構造体。
- 前記結晶性酸化物膜がドーパントを含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の積層構造体。
- 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の積層構造体を含むことを特徴とする半導体装置。
- 少なくともガリウムを含有する水溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて基板へ搬送し、前記基板上で前記ミストを熱反応させて、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜を成膜する方法であって、
前記基板として、タンタル酸リチウムを主成分とし、0.2°〜18.0°のオフ角を有する単結晶基板を用いることを特徴とする積層構造体の製造方法。 - 前記基板として、6°〜18°のオフ角を有するものを用いることを特徴とする請求項9に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記基板として、a面、m面、r面またはc面を主面として有するタンタル酸リチウム基板を用いることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記熱反応の温度を250℃〜900℃とすることを特徴とする請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記結晶性酸化物膜の膜厚を1μm以上とすることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記結晶性酸化物膜の成膜時に、膜表面の表面粗さRaが50nm以下であり、最大高低差P−V値が100nm以下のものを成膜することを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記結晶性酸化物膜を半導体膜とすることを特徴とする請求項9から請求項14のいずれかに1項に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記水溶液にドーパントを含有させておき、前記結晶性酸化物膜の成膜時にドーピングすることを特徴とする請求項9から請求項15のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
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