JP7161456B2 - 積層構造体及び半導体装置並びに積層構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明に係る積層構造体1の一実施形態は、図1に示すように、タンタル酸リチウム結晶基板(タンタル酸リチウムを主成分とする結晶性基板)10の主面上に、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜20(具体的には、β-Ga2O3を主成分とするもの)が積層されている積層構造体1である。なお、タンタル酸リチウム結晶基板10と結晶性酸化物膜20との間には、バッファ層などが介在していてもよい。
タンタル酸リチウム結晶基板10は、結晶性酸化物膜20が積層されている主面が、a面、m面またはr面であるが、特にはa面またはm面が好ましく、a面であるのがさらに好ましい。
まず、本発明に係る積層構造体が有するタンタル酸リチウム結晶基板について説明する。
本発明に係る積層構造体における結晶性酸化物膜は、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜である。結晶性酸化物膜は、通常、金属と酸素から構成されるが、本発明においては、金属としてガリウムを主成分としていれば問題ない。ここで、本発明で「ガリウムを主成分とし」という場合、金属成分のうち50~100%がガリウムであることを意味する。ガリウム以外の金属成分としては、例えば、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、イリジウム、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種又は2種以上の金属を含んでもよい。なお、結晶性酸化物膜はベータガリア構造であれば、単結晶でも多結晶でもよい。
結晶性酸化物膜の面積は、基板と同様、100mm2以上が好ましく、より好ましくは口径が2インチ(50mm)以上である。
本発明に係る積層構造体の一実施形態は、少なくともガリウムを含有する水溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて基板へ搬送し、前記基板上で前記ミストを熱反応させて、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜を前記基板の主面上に成膜する方法であって、前記基板として、前記主面が、a面、m面またはr面のタンタル酸リチウム結晶基板を用いることを特徴とする。
原料溶液(水溶液)104aには、少なくともガリウムを含んでいれば特に限定されない。すなわち、ガリウムの他、例えば、鉄、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、イリジウム、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種又は2種以上の金属を含んでもよい。前記金属を錯体又は塩の形態で、水に溶解又は分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。また、上記金属を、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸等に溶解したものも塩の水溶液として用いることができる。溶質濃度は0.01~1mol/Lが好ましい。
ミスト化部120では、原料溶液104aを調製し、前記原料溶液104aをミスト化してミストを発生させる。ミスト化手段は、原料溶液104aをミスト化できさえすれば特に限定されず、公知のミスト化手段であってよいが、超音波振動によるミスト化手段を用いることが好ましい。より安定してミスト化することができるためである。
搬送部109は、ミスト化部120と成膜部140とを接続する。搬送部109を介して、ミスト化部120のミスト発生源104から成膜部140の成膜室107へと、キャリアガスによってミストが搬送される。搬送部109は、例えば、供給管109aとすることができる。供給管109aとしては、例えば石英管や樹脂製のチューブなどを使用することができる。
成膜部140では、ミストを加熱し熱反応を生じさせて、基板(結晶性基板)110の表面(主面)の一部又は全部に成膜を行う。成膜部140は、例えば、成膜室107を備え、成膜室107内には基板(結晶性基板)110が設置されており、該基板(結晶性基板)110を加熱するためのホットプレート108を備えることができる。ホットプレート108は、図2に示されるように成膜室107の外部に設けられていてもよいし、成膜室107の内部に設けられていてもよい。また、成膜室107には、基板(結晶性基板)110へのミストの供給に影響を及ぼさない位置に、排ガスの排気口112が設けられてもよい。
キャリアガス供給部130は、キャリアガスを供給するキャリアガス源102aを有し、キャリアガス源102aから送り出されるキャリアガス(以下、「主キャリアガス」という)の流量を調節するための流量調節弁103aを備えていてもよい。また、必要に応じて希釈用キャリアガスを供給する希釈用キャリアガス源102bや、希釈用キャリアガス源102bから送り出される希釈用キャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103bを備えることもできる。
次に、以下、図2を参照しながら、本発明に係る成膜方法の一例を説明する。まず、原料溶液104aをミスト化部120のミスト発生源104内に収容し、基板(結晶性基板)110をホットプレート108上に直接又は成膜室107の壁を介して設置し、ホットプレート108を作動させる。タンタル酸リチウムは熱膨張係数が大きいため、低温から徐々に昇温するのが好ましい。
結晶性基板を結晶性酸化物膜から剥離してもよい。剥離手段は特に限定されず、公知の手段であってもよい。例えば、機械的衝撃を与えて剥離する手段、熱を加えて熱応力を利用して剥離する手段、超音波等の振動を加えて剥離する手段、エッチングして剥離する手段、レーザーリフトオフなどが挙げられる。前記剥離によって、結晶性酸化物膜を自立膜として得ることができる。
半導体装置を構成するために必要となる電極の形成は、一般的な方法を用いることができる。すなわち、蒸着、スパッタ、CVD、めっきなどの他、樹脂等と一緒に接着させる印刷法など、いずれを用いてもかまわない。電極材料としては、Al、Ag、Ti、Pd、Au、Cu、Cr、Fe、W、Ta、Nb、Mn、Mo、Hf、Co、Zr、Sn、Pt、V、Ni、Ir、Zn、In、Ndなどの金属の他、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェンまたはポリピロールなどの有機導電性化合物、いずれを用いてもかまわないし、これらの2種以上の合金、混合物でもかまわない。電極の厚さは、1~1000nmが好ましく、より好ましくは10~500nmである。
図1に示す成膜装置(ミストCVD装置)により、上述の積層構造体の製造方法を実施するため、以下の条件で酸化ガリウムの成膜を行った。
まずガリウムアセチルアセトナートと塩化スズ(II)を超純水に混合し、ガリウムに対するスズの原子比が1:0.002およびガリウムアセチルアセトナートが0.05モル/Lとなるように水溶液を調整し、さらに塩酸を体積比で1.5%を含有させ、これを原料溶液とした。次に原料溶液を霧化器(ミスト発生源内)に充填した。
次に2.4MHzの超音波振動子で霧化器内の原料溶液を霧化した。この後、霧化器にキャリアガスの窒素を1.5L/minで、さらに希釈ガスの窒素を5L/minでそれぞれ導入して混合気を形成し、成膜室へ供給して大気圧下で120分間成膜した。
基板としてr面LT基板(すなわち、成膜する主面がr面)を用いたこと以外は、実施例1と同様に積層構造体の形成と評価を行った。
基板としてm面LT基板(すなわち、成膜する主面がm面)を用いたこと以外は、実施例1と同様に積層構造体の形成と評価を行った。
基板として面方位<013>のLT基板を用いたこと以外は、実施例1と同様に積層構造体の形成と評価を行った。
実施例1と同じ条件で成膜を行った後、基板を中心で2分割し、それぞれ試料A、試料Bとした。次いで、試料Bを600℃で3時間アニール処理した。
この後、分割したままの試料Aと、アニール処理した試料BについてXRD法で結晶相を評価し、さらにホール効果測定により電気的特性を評価した。その結果、試料Aと試料Bとの間で膜の結晶性及び電気的特性に違い(アニール処理による変化)は見られなかった。
基板としてc面サファイアを用いた。これ以外は実施例4と同じ条件で成膜、評価を行った。
試料Aではβ-Ga2O3のピークは出現せず、代わりにα-Ga2O3のピークが出現した。一方、試料Bでは、膜の結晶構造が部分的に変化し、β-Ga2O3のピークが出現した。またキャリア移動度は検出下限未満であった。
101…成膜装置、 102a…キャリアガス源、
102b…希釈用キャリアガス源、 103a…流量調節弁、
103b…流量調節弁、 104…ミスト発生源、 104a…原料溶液、
105…容器、 105a…水、 106…超音波振動子、 107…成膜室、
108…ホットプレート、 109…搬送部、 109a…供給管、
110…基板(結晶性基板)、 112…排気口、 116…発振器、
120…ミスト化部、130…キャリアガス供給部、140…成膜部。
Claims (13)
- 結晶性基板と、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜とを有する積層構造体であって、
前記結晶性基板が、体積抵抗率が1.0×10 11 Ω・cm以上、2.0×10 13 Ω・cm以下で、コングルエント組成のタンタル酸リチウム結晶基板であり、該タンタル酸リチウム結晶基板の主面上に、β-Ga2O3を主成分として含む前記結晶性酸化物膜が積層されており、
前記タンタル酸リチウム結晶基板の前記主面が、a面、m面またはr面であることを特徴とする積層構造体。 - 前記結晶性酸化物膜がドーパントを含むことを特徴とする請求項1に記載の積層構造体。
- 前記ドーパントは、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム又はニオブから選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の積層構造体。
- 前記結晶性酸化物膜の膜厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の積層構造体。
- 前記結晶性酸化物膜の面積が100mm2以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の積層構造体。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層構造体を含むことを特徴とする半導体装置。
- 少なくともガリウムを含有する水溶液を霧化又は液滴化して生成されたミストを、キャリアガスを用いて基板へ搬送し、前記基板上で前記ミストを熱反応させて、ガリウムを主成分としベータガリア構造を有する結晶性酸化物膜を前記基板の主面上に成膜する方法であって、
前記基板として、体積抵抗率が1.0×10 11 Ω・cm以上、2.0×10 13 Ω・cm以下で、コングルエント組成であり、前記主面が、a面、m面またはr面のタンタル酸リチウム結晶基板を用いることを特徴とする積層構造体の製造方法。 - 前記結晶性酸化物膜をβ―Ga2O3を主成分とするものとすることを特徴とする請求項7に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記水溶液にドーパントを含有させておき、前記結晶性酸化物膜の成膜時にドーピングすることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記ドーパントを、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム又はニオブから選ばれる1種以上とすることを特徴とする請求項9に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記熱反応の温度を250~900℃とすることを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記結晶性酸化物膜の膜厚を1μm以上とすることを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
- 前記基板として、前記主面の面積が100mm2以上のものを用いることを特徴とする請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の積層構造体の製造方法。
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