JP2021033155A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】トナーの低温定着性を改良させた場合においても、高温高湿環境で高速プリンターを長期間使用した際のベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制できるトナーを提供することにある。【解決手段】結着樹脂、ワックス、及び脂肪酸金属塩を含有するトナー粒子を含むトナーであって、ヘキサンを用いて、前記トナー粒子に対してソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される前記脂肪酸金属塩の量が、前記結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.18質量部以下であり、前記結着樹脂100質量部に対して、前記ワックスの含有量をA(質量部)とし、前記脂肪酸金属塩の含有量をB(質量部)としたとき、前記Aが10.0質量部以上40.0質量部以下であり、前記Bが0.04質量部以上0.43質量部以下であり、走査透過型電子顕微鏡で観察される前記トナー粒子の断面において、前記ワックスのドメインが存在し、前記ドメインの円相当個数平均径が、30nm以上1000nm以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、磁気記録法などに用いられるトナーに関する。
電子写真法としては多数の方法が知られているが、一般的には、種々の手段により、光導電性物質を利用した静電潜像担持体上に静電潜像を形成する。次いで、上記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成し、静電気力により紙などの記録媒体にトナー像を転写する。その後、転写されたトナーを、熱および/または圧力により、記録媒体上に定着して複写物を得る方法である。このような電子写真法を利用した画像形成装置としては、複写機やプリンターなどがある。
これら複写機やプリンターは、社会全体の省エネルギー化の要求に伴い、省電力化が求められている。その中で、トナーには低温で転写材に定着する低温定着性が求められている。
一方、高画質が要求される軽印刷(パソコンによる文書の編集からコピー、製本までの多品種少量印刷が可能なプリント・オン・デマンド用途)向けにプリンターが使われ始め、グラフや図など印字率の高いベタ画像に対する画質への要求も高まっている。
トナーの低温定着性は、トナー中に定着助剤として結晶性材料を含有させることや、トナーを構成する結着樹脂のガラス転移点を下げることで改善できる。一方で上記手法では、高速機においては、トナーが定着ニップを通過する時間が短くなるため、定着ニップ内でトナーが溶融せず、トナーが記録媒体に定着しないことがある。特に、印字率の高い画像は定着ニップでトナーを溶融させるのに必要な熱量が増加するため、トナーが記録媒体に定着しにくくなる。これに対して、トナー中の結晶性ポリエステルやワックスの分散ドメイン径を微分散化することで、トナー表層近傍をシャープメルト化する技術が提案されている(特許文献1)。
しかし、トナー中の結晶性ポリエステルやワックスの分散ドメイン径を微分散化させると、結晶性ポリエステルやワックス等の可塑剤がトナー表面に染み出しやすくなる。トナー表層に染み出してきた可塑剤は印字率の高いベタ画像の画質低下を引き起こす。トナー表層の可塑剤が引き起こすベタ画像の画質低下には、静電潜像担持体上のトナーが静電潜像担持体に固着するという現象(以下、ドラム融着と呼ぶ)により、ベタ画像の一部が欠けるという弊害がある。ドラム融着はトナー表層に染み出した可塑剤により、トナーと静電潜像担持体の非静電付着力が増大することにより起こる。ドラム融着が発生すると、静電潜像担持体に固着したトナーにより、トナー固着部位にトナーが現像されなくなるため、ベタ画像の一部が欠ける。
また、上記ドラム融着起因の以外のベタ画像の画質低下としては、可塑剤がトナー表層を被覆することにより、トナーの帯電特性が低下しベタ画像の濃度ムラが顕著になることがある。これは、静電潜像担持体上のトナーのうち、一部のトナーの表層を可塑剤が被覆することにより、静電潜像担持体上のトナー間付着力が増大することや帯電特性が低下することにより、転写工程で記録媒体に移行できないトナーが発生することで起こる。
特に、高速プリンターを高温高湿環境で使用した際には、定着工程で発生する熱により本体内が昇温しやすく、トナー表層に可塑剤が染み出しやすくなることで、ベタ画像の画像欠けや濃度ムラが発生しやすい。加えて、高温高湿環境で長期間使用した後に、低温低湿環境で使用した際には、トナー表層に染み出してきた可塑剤がトナー表層で結晶化することで、トナーの帯電特性が低下し、転写工程で記録媒体に移行できないトナーが発生することで、濃度ムラが顕著になる。このように、高速プリンターに求められる低温定着性に対応しつつ、高温高湿環境で長期間使用した場合や高温高湿環境で長期間使用した後に低温低湿環境で使用した場合のベタ画像の画質低下を抑制するには未だ改善の余地があった。
これに対して、近年、トナー中に含有されるワックスや結晶性樹脂などの可塑剤の結晶化を促進するために、結晶核剤を添加し、可塑剤の結晶化度を高める検討が行われている。特許文献2では、結晶性樹脂に最適な結晶核剤として脂肪酸金属塩を添加することで、結晶性樹脂の再結晶化を促進し、低温定着性と耐熱保存性を両立させる技術が提案されている。特許文献3では、エステルワックスに最適な結晶核剤としてリン酸エステル金属塩を添加することで、エステルワックスの再結晶化を促進し、低温定着性、耐熱保存性、及び定着器汚染を抑制させる技術が提案されている。
特開2002−287426号公報 特開2007−79329号公報 特開2018−138980号公報
しかしながら、これらの手法では、高速プリンターを高温高湿環境で長期間使用した際や、その後、低温低湿環境で使用した際にも、低温定着性に優れ、かつ、ベタ画像の画質低下を抑制するには十分ではなく、改善の余地があった。
本発明は、高速プリンターを高温高湿環境で長期間使用した際や、その後、低温低湿環境で使用した際にも、低温定着性に優れ、かつ、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制したトナーを提供するものである。
本発明は、結着樹脂、ワックス、及び脂肪酸金属塩を含有するトナー粒子を含むトナーであって、
ヘキサンを用いて、前記トナー粒子に対してソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される前記脂肪酸金属塩の量が、前記結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.18質量部以下であり、
前記結着樹脂100質量部に対して、前記ワックスの含有量をA(質量部)とし、前記脂肪酸金属塩の含有量をB(質量部)としたとき、前記Aが10.0質量部以上40.0質量部以下であり、前記Bが0.04質量部以上0.43質量部以下であり、
走査透過型電子顕微鏡で観察される前記トナー粒子の断面において、前記ワックスのドメインが存在し、前記ドメインの円相当個数平均径が、30nm以上1000nm以下であることを特徴とするトナーである。
本発明によれば、高速プリンターを高温高湿環境で長期間使用した際や、その後、低温低湿環境で使用した際にも、低温定着性に優れ、かつ、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制したトナーを提供することができる。
本発明者らは、高速プリンターを高温高湿環境で長期間使用した際や、その後、低温低湿環境で使用した際にも、低温定着性に優れ、かつ、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制できるトナーについて鋭意検討した。
これまで、高速プリンターにおける低温定着性改良は、トナーを定着ニップ内でシャープメルト化させるために、定着助剤として結晶性材料を多量に含有させることや、結晶性材料の分散ドメイン径を微粒子化することが行われてきた。
しかし、上記手法のように結晶性材料を多量に含有させることや、結晶性材料の分散ドメイン径を微粒子化させると、高温高湿環境では、結晶性材料がトナー表面に染み出してきてしまうため、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制することは難しい。
そこで、本発明者らは、結晶性材料としてワックス、結晶核剤として脂肪酸金属塩を添加したトナーを作製し、結晶性材料を結晶化させることにより、染み出しを抑制することを試みた。しかし、単純に脂肪酸金属塩を適量添加するだけでは、脂肪酸金属塩の核剤効果によりトナー表層に染み出してくる全ての結晶性材料を結晶化させることができず、結晶性材料のトナー表層への染み出しを抑制できていなかった。特に、脂肪酸金属塩の核剤効果を大きくするために、脂肪酸金属塩の含有量を増加させてしまうと、脂肪酸金属塩自体が結着樹脂を可塑化してしまい、トナー表層に脂肪酸金属塩が染み出してしまう。この結果、トナー表層で脂肪酸金属塩の核剤効果によりワックスが結晶化してしまい、トナーの抵抗値が低下してしまう。特に、高温高湿環境で長期間使用した後に低温低湿環境で使用した際には、トナー表層に染み出したワックスが脂肪酸金属塩の核剤効果により結晶化し、トナー表層にワックスが染み出したトナーは抵抗値が低下するため、帯電特性が低下する。この結果、転写工程において、記録媒体上に移行できないトナーが発生することにより、ベタ画像の濃度ムラが顕著になることが判明した。
さらに、低温定着性を良化させるためにワックスを多量添加した場合には、脂肪酸金属塩の添加量を調整したとしても、高温高湿環境で長期間使用した際にトナー表層に染み出してくるワックスが増加してしまうため、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けが悪化する。つまり、特許文献2及び特許文献3に記載の手法では、低温定着性を良化させつつ、高温高湿環境で使用した場合、及び高温高湿環境で使用した後に低温低湿環境で使用した場合におけるベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制することはできなかった。
この結果を受け、本発明者らはトナー粒子中の脂肪酸金属塩の分散性に関して更なる検討を進めた。その結果、トナー中のワックスの分散ドメイン径を微粒子化させると同時に、トナー表層近傍のワックスに含有される脂肪酸金属塩の量を適切に制御することにより、低温定着性に優れ、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けを抑制したトナーを提供できることを見出した。
すなわち本発明のトナーは、結着樹脂、ワックス、及び脂肪酸金属塩を含有するトナー粒子を含むトナーであって、
ヘキサンを用いて、前記トナー粒子に対してソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される前記脂肪酸金属塩の量が、前記結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.18質量部以下であり、
前記結着樹脂100質量部に対して、前記ワックスの含有量をA(質量部)とし、前記脂肪酸金属塩の含有量をB(質量部)としたとき、前記Aが10.0質量部以上40.0質量部以下であり、前記Bが0.04質量部以上0.43質量部以下であり、
走査透過型電子顕微鏡で観察される前記トナー粒子の断面において、前記ワックスのドメインが存在し、前記ドメインの円相当個数平均径が、30nm以上1000nm以下であることを特徴とする。
上記構成のトナーが、高速プリンターを高温高湿環境で長期間使用した場合や、高温高湿環境で長期間使用した後低温低湿環境で使用した場合にも、低温定着性に優れ、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制できるのは以下の3つの理由によると考えている。
(1−1)ワックスの含有量が多く、少ない脂肪酸金属塩でワックスを結晶化させること
(1−2)トナー中のワックスの分散ドメイン径が適度な大きさを有すること
(1−3)脂肪酸金属塩によりトナー表層近傍のワックスが結晶化されていること
(1−1)は、低温定着性に寄与するワックスの含有量を増やす一方、ワックスの結晶核剤である脂肪酸金属塩の含有量は極力減らし、脂肪酸金属塩自体の結着樹脂に対する可塑化を抑制することを意味する。これは、脂肪酸金属塩の性質が長鎖アルキル基を有すると共に、金属塩であるため、脂肪酸金属塩はワックスと結着樹脂の両方になじむ性質を持っていることが影響している。つまり、脂肪酸金属塩の含有量を多くしてしまうと、核剤効果によりワックスを結晶化すると共に結着樹脂を可塑化してしまい、トナー表層に脂肪酸金属塩が染み出してしまう。このため、脂肪酸金属塩をワックスの結晶核剤として効果的に使用するには、脂肪酸金属塩の結着樹脂に対する可塑化を抑制するため、脂肪酸金属塩の含有量は必要最低限にする必要がある。
本発明のトナーは、結着樹脂100質量部に対して、ワックスの含有量をA(質量部)とし、脂肪酸金属塩の含有量をB(質量部)としたとき、Aが10.0質量部以上40.0質量部以下であり、Bが0.04質量部以上0.43質量部以下である。さらに、上記Aが15.0質量部以上35.0質量部以下、上記Bが0.05質量部以上0.40質量部以下であることがより好ましい。上記A及びBが本発明の範囲内であれば、低温定着性に必要なワックス量を含有すると共に、ワックスの結晶化を促進する脂肪酸金属塩の含有量を極力減らし、結着樹脂を可塑化する脂肪酸金属塩の量が少ないことを意味する。
(1−2)は、低温定着性のためにワックスの分散ドメイン径を小さくしつつ、微粒子化による弊害を抑制できる範囲にワックスの分散ドメイン径を制御することを意味する。ワックスの分散ドメイン径を微粒子化すると、ワックスと結着樹脂の界面が増加するため、迅速に結着樹脂を可塑することができ、高速プリンターのような定着ニップ通過時間が短い場合には低温定着性を良化させることができる。一方で、ワックスの添加量を変えずにワックスの分散ドメイン径を微粒子化していくと、ワックスと結着樹脂の界面が指数関数的に増加するため、高温高湿環境では一部のワックスがトナー表層に染み出してしまう。特に、高速プリンターにおいては、定着工程で発生する熱によりプリンター本体が昇温しやすく、トナー表層に染み出してくるワックス量が増加する。このため、ワックスのドメイン径を適度な大きさに制御する必要がある。
本発明のトナーは、走査透過型電子顕微鏡で観察されるトナー粒子の断面において、ワックスのドメインが存在し、ドメインの円相当個数平均径が、30nm以上1000nm以下である。ワックスのドメイン径が本発明の範囲内であるということは、高速プリンターにおける低温定着性を悪化させずに、ワックスのトナー表層への染み出しを抑制できることを意味する。
ワックスのドメインの円相当個数平均径は、ワックスの組成、ワックスの含有量、脂肪酸金属塩の組成、脂肪酸金属塩の含有量、及びトナー粒子の製造方法により制御することができる。
(1−3)の脂肪酸金属塩によるトナー表層近傍のワックスの結晶化は、脂肪酸金属塩の核剤効果を発揮させつつ、脂肪酸金属塩のトナー表層への染み出しによる弊害を抑制することを目的としている。
トナー表層近傍のワックスは、結着樹脂を可塑することによりトナー表層に染み出しやすいため、脂肪酸金属塩により結晶化度を高める必要がある。トナー粒子中の脂肪酸金属塩はワックスとの界面において、結晶核を形成するため、脂肪酸金属塩由来の結晶核をワックス中に形成させることができれば、結晶核を中心にワックスの結晶化が比較的容易に起きる。一方、トナー表層近傍の脂肪酸金属塩がワックスの結晶核として利用されていれば、脂肪酸金属塩が結着樹脂を可塑することで起きる、トナー表層への脂肪酸金属塩の染み出しを抑制することにもつながる。このため、脂肪酸金属塩をトナー表層近傍のワックス中に分散させて、ワックスとの界面で形成される脂肪酸金属塩由来の結晶核を増やす必要がある。
本発明のトナーは、ヘキサンを用いて、トナー粒子に対してソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される脂肪酸金属塩の量が、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.18質量部以下である。さらに、上記ヘキサン抽出分に含有される脂肪酸金属塩の量が、結着樹脂100質量部に対して、0.04質量部以上0.15質量部以下であることがより好ましい。ヘキサンを用いてソックスレー抽出を2時間行うと、トナー表層近傍のワックス、及びワックスの結晶核となっている脂肪酸金属塩のみを抽出することができる。ソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される脂肪酸金属塩を上記範囲内に制御すると、脂肪酸金属塩の核剤効果によりトナー表層近傍のワックスの結晶化度を高くでき、トナー表層へのワックス、及び脂肪酸金属塩の染み出しを抑制できる。
ヘキサンを用いてソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される脂肪酸金属塩の量は、脂肪酸金属塩の組成、脂肪酸金属塩の含有量、ワックスの組成、ワックスの添加量、及びトナー粒子の製造方法により制御することができる。
これら上記(1−1)〜(1−3)の相乗効果により初めて、高速プリンターを高温高湿環境で長期間使用した際や、高温高湿環境で長期間使用した後低温低湿環境で使用した際にも、低温定着性に優れ、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けを抑制できることが分かった。
上記記載のように、脂肪酸金属塩の核剤効果を高めると共に、トナー表層への脂肪酸金属塩の染み出しを抑制するには、脂肪酸金属塩とワックスの界面を増やすため、脂肪酸金属塩をトナー粒子に外添するのではなく、トナー粒子中に分散させることが好ましい。
結着樹脂100質量部に対して、ワックスの含有量をA(質量部)としたとき、Aが10.0質量部未満の場合、定着ニップ部においてワックスによりトナーを十分可塑することができなくなるため、低温定着性が低下する。特に、高速プリンターにおいては、定着ニップ通過時間が短くなるため、低温定着性が悪化しやすい。一方、Aが40.0質量部より大きい場合、ワックスのドメイン径によらず、トナー粒子中にワックスを内包できなくなってくるため、高温高湿環境で長期間使用した際に、ワックスがトナー粒子表面に染み出しくることにより、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けが悪化する。
結着樹脂100質量部に対して、脂肪酸金属塩の含有量をB(質量部)としたとき、Bが0.04質量部未満の場合、脂肪酸金属塩量の核剤効果によりワックスを十分結晶化させることができなくなるため、トナー粒子中のワックスの結晶化度が低下する。この結果、高温高湿環境で長期間使用した際に、ワックスがトナー表層に染み出してくることを抑制できず、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けが悪化する。一方、Bが0.43質量部より大きい場合、トナー粒子中に脂肪酸金属塩が必要以上に含有されているため、一部の脂肪酸金属塩が結着樹脂を可塑化することでトナー表層に染み出してきてしまう。この結果、高温高湿環境で長期間使用した後に低温低湿環境で使用すると、トナー表層に染み出してきたワックスが脂肪酸金属塩の核剤効果によりトナー表層で結晶化し、トナーの帯電特性低下に起因した濃度ムラが悪化する。特に、高速プリンターにおいては、定着工程で発生する熱により、プリンター本体が昇温しやすく、トナー表層に染み出してくるワックス及び脂肪酸金属塩が増加するため、濃度ムラ悪化が顕著になる。
走査透過型電子顕微鏡で観察されるトナー粒子の断面において、ワックスのドメインの円相当個数平均径が、30nm未満の場合、ワックスのドメイン数が指数関数的に増加することで、ワックスと結着樹脂の界面が増加し、結着樹脂が可塑化されやすくなる。特に、高速プリンターを高温高湿環境で長期間使用した際には、定着工程で発生する熱により本体内が昇温しやすく、トナー表層近傍のワックスがトナー表層に染み出してくることを抑制できず、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けが悪化する。一方、走査透過型電子顕微鏡で観察されるトナー粒子の断面において、ワックスのドメインの円相当個数平均径が、1000nmより大きい場合、高速プリンターの定着ニップ通過時間では、トナー中のワックスが結着樹脂を十分可塑化することが出来ないため、低温定着性が低下する。
前記ソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される脂肪酸金属塩の量が、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部より小さい場合、トナー表層近傍のワックスに含有される脂肪酸金属塩の量が少なくなりすぎることで、トナー表層近傍のワックスの結晶化度が低下する。この結果、高温高湿環境で長期間使用した際に、ワックスがトナー表層に染み出してくることを抑制できず、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けが悪化する。一方、前記ソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される脂肪酸金属塩の量が、結着樹脂100質量部に対して、0.18質量部より大きい場合、トナー表層近傍のワックスに含有される脂肪酸金属塩がワックスの結晶化に必要な量以上含有されていることを意味する。これにより、トナー表層近傍に存在するワックス中の脂肪酸金属塩の一部が、トナー表層近傍の結着樹脂を可塑化させ、脂肪酸金属塩が染み出してしまう。この結果、高温高湿環境で長期間使用した後低温低湿環境で評価すると、トナー表層に染み出してきた脂肪酸金属塩の核剤効果により、トナー表層でワックスが結晶化してしまい、帯電特性が低下する。この結果、転写工程において、静電潜像担持体上の一部のトナーが記録媒体に移行できず、濃度ムラが悪化する。特に、高速プリンターにおいては、定着工程で発生する熱により、プリンター本体が昇温しやすく、トナー表層に染み出してくるワックス及び脂肪酸金属塩が増加するため、濃度ムラ悪化が顕著になる。
本発明のトナーは、走査透過型電子顕微鏡で観察されるトナー粒子の断面において、ワックスのドメインが存在し、ドメインの円相当個数平均径が、30nm以上500nm以下であり、ドメインの平均個数が、20個以上3000個以下であることが好ましい。
トナー粒子中のワックスのドメイン径、ドメインの平均個数が上記範囲内であることで、低温定着性を悪化させずに、ワックスと結着樹脂の界面を減らすことができる。この結果、高速プリンターの定着ニップ通過時間でワックスが結着樹脂を十分可塑化することができるため、低温定着性を良化させつつ、高温高湿環境で長期間使用した際のベタ画像の濃度ムラや画像欠けを抑制することができる。
本発明のトナーは、ワックスの含有量Aに対する脂肪酸金属塩の含有量Bが、下記式(1)を満たすことが好ましく、下記式(1)’を満たすことがより好ましい。
0.002≦B/A≦0.025 式(1)
0.003≦B/A≦0.023 式(1)’
ワックスの含有量に対する脂肪酸金属塩の含有量が上記式(1)を満たすことは、ワックス中の脂肪酸金属塩由来の結晶核を形成させるのに最適な脂肪酸金属塩量のみ含有することを意味する。このため、ワックスの結晶化度を高めつつ、結着樹脂を可塑化する脂肪酸金属塩量をより一層減らすことができる。この結果、トナー表層に染み出してくる脂肪酸金属塩量を抑制することができる。このため、高温高湿環境で長期間使用した際にも、低温定着性を悪化させずに、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けを抑制することができる。
本発明のトナーは、ヘキサンを用いて、トナー粒子に対してソックスレー抽出を2時間行った際、2時間抽出したときのヘキサン可溶分をW2質量%、8時間抽出したときのヘキサン可溶分をW8質量%としたとき、下記式(2)、(3)を満たすことが好ましい。
8.0≦W2≦20.0 ・・・・式(2)
1.0≦W8−W2≦32.0 ・・・・式(3)
ヘキサンのソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン可溶分W2は、トナー粒子のトナー表層近傍に分散しているワックス量を示す。一方、ヘキサンのソックスレー抽出を8時間行った際のヘキサン可溶分W8は、トナー粒子のトナー表層からトナー中心付近にまで内包化されているワックス量を示す。このため、W2が式(2)を満たし、W2とW8の関係が式(3)を満たすことは、トナー中心付近だけでなく、トナー表層近傍にもワックスが分散していることを意味する。上記式(2)及び式(3)を満たすトナーは、高速プリンターのような短い定着ニップ通過時間で、トナー表層近傍のワックスが結着樹脂を可塑化することができるため、低温定着性をより一層向上させることができる。
本発明のトナー粒子は、着色剤を含有してもよい。該着色剤としては、従来知られている種々の染料や顔料などが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は以下に示すイエロー、マゼンタ、及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
イエロー着色剤としては、モノアゾ化合物、ジスアゾ化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などが挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185などが挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、モノアゾ化合物、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレット19などが挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66などが挙げられる。
本発明のトナーは、着色剤として磁性体を含有することが好ましく、トナー粒子中に含有される磁性体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して40質量部以上100質量部以下であることが好ましい。トナー粒子中に磁性体を上記範囲含有させることで、磁性体によるフィラー効果によりトナー粒子の弾性率が向上し、トナー表層に存在する外添剤の埋め込みを抑制することができる。このため、高温高湿環境で長期間使用した際にも、外添剤のスペーサー効果により、静電潜像担持体上のトナーの非静電付着力増大や帯電特性低下を抑制できる。この結果、高温高湿環境で長期間使用した際にも、静電潜像担持体上のトナーが静電潜像担持体に固着するのを抑制でき、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けを抑制できる。
該磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトのような酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、又は、これらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物が挙げられる。
着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、及びトナー粒子中の分散性の観点から選択するとよい。着色剤は、単独又は混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。
本発明のトナーに用いられる脂肪酸金属塩としては、特段の制限なく従来公知の脂肪酸金属塩を用いることができる。具体的には以下のモンタン酸リチウム、モンタン酸ナトリウム等に代表される飽和脂肪酸と1価の金属からなる脂肪酸金属塩;ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム等に代表される飽和脂肪酸と2価の金属からなる脂肪酸金属塩;ステアリン酸アルミニウム等に代表される飽和脂肪酸と3価の金属からなる脂肪酸金属塩;12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛に代表されるヒドロキシル基で修飾された脂肪酸と2価の金属からなる脂肪酸金属塩;12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等に代表されるヒドロキシル基で修飾された脂肪酸と3価の金属からなる脂肪酸金属塩;オレイン酸リチウム等に代表される不飽和脂肪酸と1価の金属からなる脂肪酸金属塩;オレイン酸亜鉛等に代表される不飽和脂肪酸と2価の金属からなる脂肪酸金属塩;オレイン酸アルミニウム等に代表される不飽和脂肪酸と3価の金属からなる脂肪酸金属塩等が挙げられる。
上記記載の脂肪酸金属塩の中でも、2価または3価の金属と飽和脂肪酸からなる脂肪酸金属塩であることが好ましい。2価または3価の金属と飽和脂肪酸を有する脂肪酸金属塩は、長鎖アルキル基を複数有することで、脂肪酸金属塩自体の疎水性を高めることができる。これにより、脂肪酸金属塩とワックスの相溶性を向上させることができる。この結果、トナー中の脂肪酸金属塩の含有量を減らしたとしても、ワックス中の脂肪酸金属塩の核剤効果により、ワックスの結晶化度を高めることができるようになる。この結果、高温高湿環境で長期間使用した場合や高温高湿環境で長期間使用した後、低温低湿環境で使用した場合にも、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制できる。
本発明に用いられる脂肪酸金属塩は、脂肪酸金属塩の炭素鎖長分布において、含有量が最も多い炭素鎖長成分の含有量が60質量%以上であり、脂肪酸金属塩を示差走査熱量測定して得られるDSC曲線において、もっともピーク高さが高い冷結晶化ピークの温度をCfとし、ワックスを示差走査熱量測定して得られるDSC曲線において、もっともピーク高さが高い冷結晶化ピークの温度をCwとした時に、下記式(4)、(5)を満たすことが好ましい。
50≦Cf≦100 ・・・・式(4)
|Cf−Cw|≦30 ・・・・式(5)
脂肪酸金属塩の炭素鎖長分布において、含有量が最も多い炭素鎖長成分の含有量は、脂肪酸金属塩の純度を示している。このため、脂肪酸金属塩の炭素鎖長分布において、含有量が最も多い炭素鎖長成分の含有量が上記範囲内であるということは、脂肪酸金属塩の純度が高いことを表している。純度の高い脂肪酸金属塩は、トナー中の脂肪酸金属塩の含有量を少なくした場合でも、ワックス中で結晶核を形成しやすく、ワックスの結晶化度を高めることができる。一方、CfとCwが式(4)と式(5)を満たすということは、脂肪酸金属塩の結晶化温度とワックスの結晶化温度が比較的近く、ワックスの結晶化が起きるタイミングで脂肪酸金属塩の結晶化も起きることを意味する。ワックスが結晶化するのとほぼ同じタイミングで脂肪酸金属塩が結晶化することで、ワックス中で脂肪酸金属塩が相分離することを抑制でき、ワックス中で均一に結晶核を形成しやすい。このため、必要最低限の脂肪酸金属塩の含有量でトナー表層近傍のワックスの結晶化度を高めることができる。この結果、高温高湿環境で長期間使用した場合や、高温高湿環境で長期間使用した後、低温低湿環境で使用した場合にも、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制できる。
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、特段の制限なく従来公知のワックスを用いることができる。具体的には、以下の;ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル等に代表される単官能エステルワックス類;セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネート等に代表される二官能エステルワックス類;グリセリントリベヘネート等に代表される三官能エステルワックス類;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート等に代表される四官能エステルワックス類;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート等に代表される六官能エステルワックス類;ポリグリセリンベヘネート等に代表される多官能エステルワックス類;カルナバワックス、ライスワックス等に代表される天然エステルワックス類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド等に代表されるアミドワックス類;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;長鎖脂肪酸等が挙げられる。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、特段の制限なく従来公知の樹脂を用いることができる。具体的には、以下の;ビニル系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は混合して使用できる。なお、ビニル系樹脂としてはスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等に代表されるスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等に代表される不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等に代表される不飽和カルボン酸;マレイン酸等に代表される不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物等に代表される不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリル等に代表されるニトリル系ビニル単量体;塩化ビニル等に代表される含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレン等に代表されるニトロ系ビニル単量体;等の単量体の単重合体または共重合体を用いることができる。中でも、トナー中でのワックス、及び脂肪酸金属塩の分散性を考慮すると、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。結着樹脂としてビニル系樹脂、ポリエステル樹脂を用いることで、脂肪酸金属塩がワックス中に分散しやすくなり、トナーの定着ニップ内におけるシャープメルト化を維持しつつ、ワックスの結晶化度を高めることができる。この結果、低温定着性を悪化させずに、高温高湿環境で長期間使用した際のベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制することができる。
本発明に用いられるワックス及び結着樹脂は、上記ワックス、結着樹脂の中でも、2価以上3価以下のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、或いは、2価以上3価以下のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルを含有し、エステル及び結着樹脂の溶解度パラメーターをSPw、SPcとし、エステルの重量平均分子量をMwとしたときに、SPw、SPc、及びMwが下記式(6)の関係を満たすことが好ましい(但し、溶解度パラメーターの単位は(cal/cm31/2である)。
450≦(SPc−SPw)2×Mw≦780 ・・・・式(6)
上記式(6)の関係を満たすワックスを用いることにより、結着樹脂へのワックスの相溶性を向上させることができる。この結果、高速機の短い定着ニップ通過時間で、ワックスが結着樹脂を可塑化することができるため、低温定着性を向上させることができる。
本発明のトナーは、非晶性ポリエステル樹脂を含有していてもよく、非晶性ポリエステル樹脂としては、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はその両者を適宜選択して使用することが可能である。
本発明に使用される非晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分と酸成分から生成さ
れる通常のものが使用でき、両成分については以下に例示する。
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ブテンジオール、オクテンジオール、シクロヘキセンジメタノール、水素化ビスフェノールA、また下記(A)式で表わされるビスフェノール及びその誘導体;下記(B)式で示されるジオール類等が挙げられる。
Figure 2021033155
(式(A)において、Rは、エチレン又はプロピレン基である。x及びyは、それぞれ0以上の整数である。ただし、x+yの平均値は0以上10以下である。なお、プロピレン基は1,2−プロパンジオール由来の官能基である。)
Figure 2021033155
(式(B)において、R’は、上記(B1)〜(B3)のいずれかである。x’及びy’は、0以上の整数である。ただし、x’+y’の平均値は0以上10以下である。)
本発明において、非晶性ポリエステル樹脂Aは、式(A)のビスフェノール及びその誘導体が反応性の観点から好ましく、より好ましくは、式(A)のビスフェノール及びその誘導体のうちx+yの平均値が1以上4以下である化合物である。
非晶性ポリエステル樹脂の調製で用いることができる三価以上のアルコールとして、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
非晶性ポリエステル樹脂の調製で用いることができる二価のカルボン酸として、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸などのアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類、又はその無水物、低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類又はその無水物、低級アルキルエステル;等のジカルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。本発明においては、ハンドリング性や反応性の観点から、テレフタル酸、イソフタル酸等のようなベンゼンジカルボン酸類が好適に用いられる。
非晶性ポリエステル樹脂の調製で用いることができる三価以上の多価カルボン酸成分として、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル;下記式(C)
Figure 2021033155
(式(C)において、Xは、アルキレン基又はアルケニレン基を表す。ただし、Xは、炭素数3以上の側鎖を1個以上有する炭素数5以上30以下の置換基である。)
で表わされるテトラカルボン酸等、及びこれらの無水物、低級アルキルエステル等の多価カルボン酸類及びその誘導体が挙げられる。本発明においては反応性や樹脂酸価の調整し易さの点から、トリメリット酸が好適に用いられる。
さらに、アルコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの如き多価アルコールが挙げられ、酸成分としてトリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の多価カルボン酸が挙げられる。
本発明のトナーは、懸濁重合法を利用して製造することができる。懸濁重合法は、水とトナー材料との極性のバランスを利用して、トナー表面近傍におけるワックスと脂肪酸金属の存在状態を容易に制御することができる。そのため懸濁重合法は、トナー中のワックス及び脂肪酸金属塩の分散性、及びワックスの結晶化度を良好なものとするという点で、より好ましい形態である。以下に懸濁重合法を利用したトナー製造方法について詳細を説明する。
本発明のトナーはトナー粒子が懸濁重合法で製造されたトナー粒子であり、トナー粒子が非晶性ポリエステル樹脂を含有し、非晶性ポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下であることが好ましい。水系媒体中でトナー粒子を形成する懸濁重合法では、疎水性の高いワックスをトナー粒子に内包化しやすくなるため、ワックスのトナー表層への染み出しを抑制することができる。さらに、非晶性ポリエステル樹脂の酸価を上記範囲内にすることで、懸濁重合法の水系媒体中でトナー粒子を形成する工程において、非晶性ポリエステル樹脂がトナー粒子表層を均一に被覆できるため、ワックスのトナー表層への染み出しを抑制することができる。この結果、高温高湿環境で長期間使用した場合や、高温高湿環境で長期間使用した後に低温低湿環境で使用した場合にも、トナー表層に染み出してくるワックス及び脂肪酸金属塩を抑制し、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けの発生を抑制することができる。
本発明に用いられる非晶性ポリエステル樹脂は、下記式(7)で示されるイソソルビドユニットを、非晶性ポリエステル樹脂を構成する全モノマーユニットを基準として、0.10mol%以上30.00mol%以下含有することが好ましい。なお、「モノマーユニット」とは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
Figure 2021033155
式(7)のイソソルビドユニットを有する非晶性ポリステル樹脂は、ワックスとの親和性が低く、トナー表層へのワックスの染み出しをより一層抑制することができると考えられる。式(7)のイソソルビドユニットは、従来から使用されるアルコールモノマー(例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、エチレンオキサイド付加物)よりも酸素原子が外側を向いていることから分極しやすい構造であると考えられる。式(7)のユニットが、非晶性ポリエステル樹脂中に上記範囲内含有されていると、上述した分極によりワックスとの親和性が低下し、ワックスの染み出しを抑制できることで、高温高湿環境で長期間使用した際にも、ベタ画像の濃度ムラや画像欠けを抑制できる。
本発明において、式(7)のイソソルビドユニットを構成成分として含む非晶性ポリエステル樹脂は、二価のカルボン酸又はその無水物と、下記式(8)で示されるイソソルビド及び二価のアルコールとを縮合させることで調製される。具体的には、カルボキシル基が残存する組成比率で、窒素雰囲気中、180〜260℃の反応温度で脱水縮合する方法などにより調製することができる。また、必要に応じて下記式(8)のイソソルビド以外の一価又は二価以上のアルコールを併用してもよい。前記二価のアルコールとしては、上記記載の材料を用いることができる。また、一価や、三価以上のカルボン酸成分又はその無水物などを用いてもよい。前記記載の一価、二価、三価カルボン酸としては、上記記載の材料を用いることができる。
Figure 2021033155
該非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して、0.10質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、0.50質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
本発明のトナー粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。該荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
有機金属化合物、キレート化合物、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、ノンメタルカルボン酸系化合物及びその誘導体、スルホン酸基、スルホン酸塩基、又は、スルホン酸エステル基を有するスルホン酸樹脂。
具体的には、負帯電用荷電制御剤として以下のものが挙げられる。
サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などに代表される芳香族カルボン酸の金属化合物;スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体;アゾ染料又はアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;ホウ素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなど。
一方、正帯電用荷電制御剤としては以下のものが挙げられる。
四級アンモニウム塩、四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物;グアニジン化合物;ニグロシン系化合物;イミダゾール化合物など。
これらのうち、負帯電用荷電制御剤を用いることが多い。
また、該スルホン酸基、スルホン酸塩基又はスルホン酸エステル基を有する重合体又は共重合体としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、メタクリルスルホン酸などに代表されるスルホン酸基含有ビニル系モノマーの単重合体又は他のビニル系モノマーと該スルホン酸基含有ビニル系モノマーの共重合体などが挙げられる。
該荷電制御剤の含有量は、結着樹脂又は結着樹脂を生成する重合性単量体100.0質量部に対して、0.01質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
該トナーは、画質向上の観点より、トナー粒子に外添剤が添加されていることが好まし
い。外添剤としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子、及び酸化アルミニウム微粒子のような無機微粒子が挙げられる。該無機微粒子は、シランカップリング剤、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
外添剤の含有量は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
以下に、本発明のトナー粒子の製造方法として懸濁重合法について詳細を説明するが、これに限定されるわけではない。
(重合性単量体組成物Aの調製工程)
重合性単量体組成物Aの調製工程として、非晶性ポリエステル樹脂、ワックス、脂肪酸金属塩、及び重合性単量体を含有する重合性単量体組成物Aを作製する工程を有することが好ましい。重合性単量体組成物Aの調製工程において、温度、及び撹拌動力を調整することにより、脂肪酸金属塩、及びワックスの分散性を制御することができる。
また、上記記載の材料以外、必要に応じて着色剤、及び荷電制御剤などの他の成分を混合し、重合性単量体組成物を調製してもよい。なお、着色剤は予め媒体撹拌ミルなどで重合性単量体又は有機溶媒中に分散させた後に他の組成物と混合してもよいし、全ての組成物を混合した後に分散させてもよい。
(重合性単量体組成物Aの粒子の造粒工程)
重合性単量体組成物Aの粒子の造粒工程として、水系媒体中に重合性単量体組成物Aを添加し、水系媒体中に重合性単量体組成物Aの粒子が分散された分散液Bを作製する工程を有することが好ましい。重合性単量体組成物Aの粒子の造粒工程において、温度、分散安定剤の種類を適切に選択することで、脂肪酸金属塩、及びワックスの分散性を制御することができる。
造粒工程で用いる分散安定剤としては、公知の界面活性剤や有機分散剤、無機分散剤を使用することができる。これらの中でも無機分散剤は重合温度や時間経過によっても安定性が崩れにくく、洗浄も容易でトナーに影響を与えにくいため、好適に使用することができる。
該無機分散剤としては、以下のものが挙げられる。
リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛のようなリン酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのような炭酸塩;メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのような無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム;シリカ、ベントナイト、アルミナのような無機酸化物。
該無機分散剤は、重合終了後に酸又はアルカリを加えて溶解することにより、ほぼ完全に取り除くことができる。
(重合工程)
重合工程として、分散液Bに重合開始剤を添加して、分散液B中に含まれる前記重合性単量体Aを重合し、水系媒体中にトナー粒子が分散された分散液Cを作製する工程を有することが好ましい。反応工程において、反応温度を調整することにより、分散液B中に含有される重合性単量体Aを短時間で重合することができ、結着樹脂の分子量を制御できる。
重合温度は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上90℃以下であることがより好ましい。重合温度は終始一定でもよいが、所望の分子量分布を得る目的で重合工程後半に昇温してもよい。重合工程では温度調整可能な一般的な撹拌槽を用いることができる。撹拌に用いられる撹拌翼は樹脂粒子分散液を滞留させることなく浮遊させ、かつ槽内の温度を均一に保てるようなものならばどのようなものを用いてもよい。
(揮発成分の除去工程)
重合工程が終了した分散液Cから未反応の重合性単量体などを除去するために、揮発成分除去工程を行ってもよい。揮発成分の除去工程は、分散液Cを撹拌手段が設置された撹拌槽で加熱、撹拌することによって行う。揮発成分の除去工程の加熱条件は、重合性単量体など除去したい成分の蒸気圧を考慮し適宜調節される。揮発成分の除去工程は常圧又は減圧下で行うことができる。
(冷却工程)
冷却工程として、揮発成分除去工程が終了した分散液Cを次の工程に送る前に液温を下げるために冷却工程を行うことが好ましい。冷却工程の条件によってワックスのドメイン中に結晶核を形成することができ、ワックスの存在状態を変化させることができる。冷却の条件は、冷却開始温度、冷却速度、冷却終了温度によって決めることができる。
冷却開始温度としては、分散液Cを、ワックスの冷結晶化ピーク温度、脂肪酸金属塩の冷結晶化ピーク温度もしくはトナー粒子のガラス転移温度のいずれか高い方の温度より高い温度Ta(℃)で保持する工程を有することが好ましい。冷却開始温度をこの範囲に制御することで、トナー粒子中にワックス、及び脂肪酸金属塩をトナー粒子中に溶解させておくができ、ワックス、及び脂肪酸金属塩の分散性を向上させることができる。これにより、次工程の冷却工程中に脂肪酸金属塩をワックス中に分散させておくことができ、ワックス中に結晶核を生成しやすく、ワックスのドメインの数を増やすことができる。
また、冷却速度と冷却終了温度としては、分散液Cを、40.0℃/分以上の冷却速度で、トナー粒子のTg(℃)以下の温度まで冷却する工程を有することが好ましい。
冷却速度が上記範囲内であると、結着樹脂が十分に速く固化するため、結着樹脂中に溶融したワックスは過飽和状態になることで、結晶化されるやすくなる。これにより、冷却工程において結着樹脂中のワックスが脂肪酸金属塩由来の結晶核を中心にワックスが結晶化されることで、ワックスのドメイン径を小径化することができる。加えて、冷却速度を上記範囲内にすることで、トナー表層近傍で脂肪酸金属塩由来の結晶核を中心にしたワックスドメインを形成させやすくなり、少ない脂肪酸金属塩量でトナー表層近傍のワックスに含有される脂肪酸金属塩量を増やすことができる。
また、冷却終了温度を、結着樹脂のガラス転移温度(Tg)以下とすると、冷却工程において、冷却終了時に結着樹脂を硬化させることができるため、冷却工程において生成したワックスドメインの合一を抑制することができる。この結果、ワックスのドメイン径を小径化することができる。
(アニール工程)
冷却工程を経た分散液Cを、ワックスの結晶化を促進するためにアニール工程を行うとよい。アニール工程において、冷却工程で形成した結晶核を中心にワックスの結晶化度を高めることができる。このため、冷却工程でワックスとの界面に形成した脂肪酸金属塩由来の結晶核によりワックスの結晶化度を向上させることができる。
アニールの条件は、アニール温度、アニール時間によって決めることができる。アニール温度、及びアニール時間としては、分散液Cを、Tg−10℃以上Tg+10℃以下の温度領域に、30分間以上保持する工程を有することが好ましい。
アニール温度が上記範囲内であると、結着樹脂の熱運動性を高めることができるため、アニール工程において、結着樹脂中に可塑したワックスを結晶化することができると共に、形成したワックスドメインの合一を抑制することができる。
(固液分離工程、洗浄工程及び乾燥工程)
トナー粒子表面に付着した分散安定剤を除去する目的で、分散液Cを酸又はアルカリで処理してもよい。トナー粒子から分散安定剤を除去した後、一般的な固液分離法によりトナー粒子を水系媒体と分離するが、酸又はアルカリ、及びそれらに溶解した分散安定剤成分を完全に取り除くため、再度水を添加してトナー粒子を洗浄することが好ましい。この洗浄工程を何度か繰り返し、十分な洗浄が行われた後に、再び固液分離してトナー粒子を得ることができる。得られたトナー粒子は必要であれば公知の乾燥手段により乾燥してもよい。
得られたトナー粒子の重量平均粒子径は3μm以上10μm以下であることが好ましく、4μm以上8μm以下であることがより好ましい。トナー粒子の重量平均粒子径は、造粒工程に用いる分散安定剤の添加量により制御することができる。
(外添工程)
得られたトナー粒子に対して、流動性や帯電性、耐ケーキング性などを向上させる目的で、外添剤を添加してもよい。外添工程は、外添剤とトナー粒子を、高速回転する羽根を備えた混合装置に入れ、十分混合することによって行う。
以下に、本発明で規定する各物性値の計算方法及び測定方法を記載する。
<トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法>
トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量については、ヘキサンを用いたソックスレー抽出を行った後、ソックスレー抽出により得られたヘキサン抽出分(ワックスとワックス中の脂肪酸金属塩の混合物)をMALDI−TOF MSで分析すること。及び、上記ソックスレー抽出により得られたヘキサン抽出残分から結着樹脂中の脂肪酸金属塩を抽出した後、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で脂肪酸金属塩を分取し、MALDI−TOF MSで分析することにより算出することができる。
(1)トナーからの、外添剤とトナー粒子の分離
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。次に、遠心分離用チューブをシェイカーにて振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。
この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナー粒子と水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、トナー粒子を採取して減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、外添剤が分離されたトナー粒子を得る。
(2)ヘキサンを用いたトナーのソックスレー抽出
トナー約1.5gを精秤(X1[g])し、予め精秤した円筒濾紙(商品名:No.86R、サイズ28×100mm、アドバンテック東洋社製)に入れてソックスレー抽出器にセットする。
溶媒としてn−ヘキサン200mLを用いて18時間抽出する。その際に溶媒の抽出サイクルが約5分に一回になるような還流速度で抽出を行う。
抽出終了後、円筒ろ紙を取り出して風乾した後、50℃で24時間真空乾燥し、抽出残分を含む円筒濾紙の質量を秤量し、円筒濾紙の質量を差し引くことにより、抽出残分の質量(X2[g])を算出する。
次に、樹脂以外の成分の含有量(X3[g])を以下の手順で求める。
予め秤量した30mLの磁性るつぼに約2gのトナーを精秤(Xa[g])する。
磁性るつぼを電気炉に入れ、約900℃で約3時間加熱し、電気炉中で放冷し、常温下でデシケーター中に1時間以上放冷し、焼却残灰分を含むるつぼの質量を秤量し、るつぼの質量を差し引くことにより焼却残灰分(Xb[g])を算出する。
そして、下記式(A)により、試料X1[g]中の焼却残灰分の質量(X3[g])を算出する。
X3=X1×(Xb/Xa) (A)
この場合、トナー中のワックスとワックス中の脂肪酸金属塩を合わせた含有量は、下記式(B)で求められる。
Y(質量%)={1−(X2−X3)/(X1−X3)}×100 (B)
(3)ヘキサン抽出分のMALDI−TOF MSの測定
(2)ヘキサンを用いたソックスレー抽出により得られたヘキサン抽出分(ろ液)を乾燥した後、ヘキサン抽出物として全量回収する。前記ヘキサン抽出物をサンプル溶液として用いてMALDI−TOF MSにより、トナー中に含有されるワックス、及びワックス中の脂肪酸金属塩の含有量を算出する。
(MALDI−TOF MS測定条件)
前記ヘキサン抽出物をMALDI−TOF MSにて測定する際、選択するマトリックスは材料種によって最適なものを選び、マトリックスのピークと材料由来のピークが重ならないように配慮する。
MALDI−TOF MSで得られたピークのうち、含有されるワックスと同じワックスの原材料を標品として測定した際に検出される全てのピークを見出し、それらピークの中で面積が最大のものをワックスに由来するピークとし、その面積をS1とする。同様に、含有される脂肪酸金属塩と同じ脂肪酸金属塩の原材料を標品として測定した際に検出される全てのピークを見出し、それらピークの中で面積が最大のものを脂肪酸金属塩に由来するピークとし、その面積をS2とする。
次に、含有されるワックスと同じワックスの原材料の標品に、含有される脂肪酸金属塩と同じ脂肪酸金属塩の原材料の標品を、ワックス100質量部に対して0.1質量部添加して、コーヒーミルにより混合する。混合後、上記同様にMALDI−TOF MSで測定し、検出される全てのピークを見出し、それらピークの中で面積が最大のものを脂肪酸金属塩に由来するピークとし、その面積をS3とする。同様の操作を、脂肪酸金属塩を、ワックス100質量部に対して0.5質量部、1.0質量部添加混合したサンプルにおいても、脂肪酸金属塩の強度を求める(S4,S5)。S1〜S5を用いて、標準添加法によりワックス中の脂肪酸金属塩の含有量α(質量%)を計算する。
本発明で規定されるトナー中のワックスの含有量Z1は、(Z1=Y×(1−α/100))で算出される値である。また、ワックス中の脂肪酸金属塩の含有量Z2は、(Z2=Y×α/100)で算出される値である。
(4)ヘキサン抽出残分のMALDI−TOF MSの測定
(2)ヘキサンを用いたソックスレー抽出により得られたヘキサン抽出残分(ろ紙残分)をさらに加熱したo-ジクロロベンゼンにより脂肪酸金属塩を抽出し、結着樹脂と脂肪酸金属塩の混合物を得る。上記結着樹脂と脂肪酸金属塩の混合物を乾燥し、重量(β[g])を測定する。下記条件で高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により結着樹脂中の脂肪酸金属塩を分取する。
[高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーのサンプル調整]
ゲルクロマトグラフ用のo−ジクロロベンゼンに、特級2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を濃度が0.10wt/vol%となるように添加し、室温で溶解する。サンプルビンに上記結着樹脂と脂肪酸金属塩の混合物と上記のBHTを添加したo−ジクロロベンゼン10mlとを入れ、135℃に設定した恒温槽で加熱する。得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。このサンプル溶液を用いて、測定する。
[高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの分取条件]
装置:HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
検出器:高温用RI
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 2連(東ソー社製)
温度:135.0℃
溶媒:ゲルクロマトグラフ用o−ジクロロベンゼン(BHT 0.10wt/vol%添加)
流速:1.0ml/min
注入量:0.4ml
含有される脂肪酸金属塩と同じ脂肪酸金属塩の標品を測定した際に検出されるピークの溶出時間でサンプルを分取し、分取したサンプルを乾燥し、重量(γ[g])を測定する。「(3)ヘキサン抽出分のMALDI−TOF MSの測定」と同様に上記分取したサンプルを測定する。MALDI−TOF MSの測定により得られる脂肪酸金属塩のピークと、結着樹脂に対して脂肪酸金属塩を添加する標準添加法により、上記結着樹脂と脂肪酸金属塩の混合物中に含有される脂肪酸金属塩の含有量δ(質量%)を計算する。結着樹脂中の脂肪酸金属塩の含有量Z3は、(Z3=(100−Y)×γ/β×δ/100)で算出される値である。
本発明で規定されるトナー中の脂肪酸金属塩の含有量Z4は、(Z4=Z3+Z4)で算出される値である。脂肪酸金属塩の構造については、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法(IR)、蛍光X線測定を用いて決定する。
<ヘキサン抽出分中の脂肪酸金属塩の含有量の測定方法>
ヘキサン抽出分中の脂肪酸金属塩の含有量については、上記「トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法」と同様に、ヘキサンを用いたソックスレー抽出を行った後、ソックスレー抽出により得られたヘキサン抽出分をMALDI−TOF MSで測定することにより算出することができる。
(1)ヘキサンを用いたトナーのソックスレー抽出
上記「トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法」に記載された通り、ヘキサンを用いて2時間ソックスレー抽出を行い、ソックスレー抽出器に残ったヘキサンをヘキサン抽出物として全量回収する。
(2)ヘキサン抽出物中に含有される脂肪酸金属塩の含有量の測定
(1)で得られたヘキサン抽出物(ろ液)を乾燥させて、ワックス中の脂肪酸金属塩の抽出物を得る。上記ワックス中の脂肪酸金属塩の抽出物をサンプル溶液として、上記「トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法」に記載された通りMALDI−TOF MSで測定する。
<走査透過型電子顕微鏡におけるトナー粒子の断面の観察>
トナー粒子中でのワックスの存在状態は、走査透過型電子顕微鏡を用いトナー粒子の断面を観察することにより確認する。
走査透過型電子顕微鏡を用いたトナー粒子の断面画像において、ワックスはドメインとして観察される。このワックスのドメインの個数及び形状を計測することにより、ワックスの存在状態を特定する。
トナー粒子の断面の観察手順は以下の通りである。
トナー粒子を可視光硬化性包埋樹脂(D−800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(UC7、ライカ社製)により70nm厚に切削した。
得られた薄片サンプルのうち、トナー粒子断面の直径がトナー粒子の重量平均粒径(D4)±2.0μm以内のものを任意に10個選択する。
選択された薄片サンプルを、真空染色装置(VSC4R1H、フィルジェン社製)を用いて、RuO4ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、走査透過型電子顕微鏡(JEM2800、JEOL社)の走査像モードを用いて、STEM画像を作成する。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得した。また、明視野像のDetector ControlパネルのContrastを1425、Brightnessを3750、Image ControlパネルのContrastを0.0、Brightnessを0.5、Gammmaを1.00に調整して、STEM画像を取得する。
得られたSTEM画像は、画像処理ソフト「Image−Pro Plus (Media Cybernetics社製)」にて2値化(閾値120/255段階)を行い、ワックスのドメインと結着樹脂の領域の区別を明確化する。
2値化の閾値を210とした場合に白く見える部分がワックスのドメインである。
<ワックスのドメインの平均個数、円相当個数平均径の算出方法>
選択された10個のトナー粒子断面のSTEM画像において、各々のワックスのドメイン数をカウントし、その平均値をドメインの平均個数とする。
また、選択された10個のトナー粒子断面のSTEM画像において、各々、任意に2μm×2μmの領域を選択し、そこに含まれるドメインの円相当径をすべて計測し、その平均値をドメインの円相当個数平均径とする。
<トナーのヘキサン可溶分の含有量W2及びW8の測定方法>
トナーのヘキサン可溶分の含有量W2及びW8については、上記「トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法」と同様に、ヘキサンを用いたソックスレー抽出を行い、W2及びW8を算出することができる。
(1)ヘキサンを用いたトナーのソックスレー抽出
上記「トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法」に記載された通り、ヘキサンを用いて2時間ソックスレー抽出を行う。
(2)トナーのヘキサン可溶分の含有量W2及びW8の算出
上記「トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法」に記載された通り、抽出残分の質量(X2[g])、及び樹脂以外の成分の含有量(X3[g])を算出する。
トナー中のn−ヘキサン可溶分の含有量W2は、(W2(質量%)={1−(X2−X3)/(X1−X3)}×100)で求められる。
トナー中のn−ヘキサン可溶分の含有量W8は、上記ソックスレー抽出時間を8時間にする以外は同様の操作を行うことで、求めることができる。
<脂肪酸金属塩の炭素鎖長分布のうち、含有量が最も多い炭素鎖長成分の測定方法>
脂肪酸金属塩の炭素鎖長分布のうち、含有量が最も多い炭素鎖長成分の含有量は、上記「トナー中のワックス、及び脂肪酸金属塩の含有量の測定方法」と同様に高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
具体的な手法としては、ゲルクロマトグラフ用のo−ジクロロベンゼンに、特級2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を濃度が0.10wt/vol%となるように添加し、室温で溶解する。サンプルビンに脂肪酸金属塩0.01gと上記のBHTを添加したo−ジクロロベンゼン10mlとを入れ、135℃に設定した恒温槽で加熱し、脂肪酸金属塩を溶解する。得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
[分析条件]
装置:HLC−8121GPC/HT(東ソー社製)
検出器:高温用RI
カラム:TSKgel GMHHR−H HT 2連(東ソー社製)
温度:135.0℃
溶媒:ゲルクロマトグラフ用o−ジクロロベンゼン(BHT 0.10wt/vol%添加)
流速:1.0ml/min
注入量:0.4ml
脂肪酸金属塩の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<脂肪酸金属塩の冷結晶化ピーク温度Cf、及びワックスの冷結晶化ピーク温度Cw、トナーのガラス転移温度の測定方法>
脂肪酸金属塩の冷結晶化温度Cf、ワックスの冷結晶化温度Cw、及びトナーのガラス転移点温度は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。
測定温度範囲を−10℃〜200℃とし、昇温速度10℃/minで測定を行う。なお、測定においては、一度、−10℃から200℃まで昇温速度10℃/minで昇温し、続いて200℃から−10℃まで降温速度10℃/minで降温する。
その後、−10℃から200℃まで昇温速度10℃/minで再度昇温を行う。
冷結晶化ピーク温度は、該1度目の降温時の温度200℃から10℃の範囲におけるDSC曲線から得る。
該1回目の降温時のDSC曲線において、比熱変化が出る前と出た後をベースラインとして、もっともピーク高さが高い温度を試料の冷結晶化ピーク温度とする。
ガラス転移温度は、該2度目の昇温時の温度20℃から100℃の範囲におけるDSC曲線から得る。
該2回目の昇温時のDSC曲線において、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線とDSC曲線との交点における温度(℃)を、トナーのガラス転移温度とする。
<重量平均粒子径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒子径(D4)は、以下のようにして測定する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)である。
<溶解度パラメータ(SP値)の計算方法>
溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorsの式(9)を用いて求める。
下記Δei、及び、Δviの値は、「コーティングの基礎科学、54〜57頁、1986年(槇書店)の表3−9に記載された、原子及び原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)」を参考にする。
なお、SP値の単位は、(cal/cm31/2であるが、1(cal/cm31/2=2.046×103(J/m31/2によって(J/m31/2の単位に換算することができる。
δi=(Ev/V)1/2=(Δei/Δvi)1/2 式(9)
Ev:蒸発エネルギー
V:モル体積
Δei:i成分の原子又は原子団の蒸発エネルギー
Δvi:i成分の原子又は原子団のモル体積
<ワックス、及び非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法>
ワックスの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、室温で、ワックス、及び非晶性ポリエステル樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF−604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6mL/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成された分子量校正曲線を使用する。
<非晶性ポリエステル樹脂の酸価の測定方法>
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、以下の操作により求められる。基本操作はJIS K0070に属する極性樹脂の酸価は以下の方法により測定することができる。
酸価は、試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価は、JIS K 0070−1992に準じて測定した。具体的には、以下の手順に従って測定した。
(1−1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて液量を100mlとすることで、フェノールフタレイン溶液を得た。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて液量を1lとした。次に、この溶液を炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得た。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管した。なお、前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/lの塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定したときに、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求めた。このとき用いた0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作製されたものを用いた。
(1−2)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解させる。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(1−3)
得られた結果を下記式(10)に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S (10)
式(10)において、Aは、酸価(mgKOH/g)を表し、Bは、空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)を表し、Cは、本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)を表す。fは、水酸化カリウム溶液のファクターを表し、Sは、試料の量(g)を表す。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例において部は、特に断りのない限り質量基準である。
(脂肪酸金属塩1〜6の製造例)
脂肪酸金属塩1〜6として表1に記載の物性の脂肪酸金属塩を用意した。
Figure 2021033155
(ワックス1の製造例)
・ステアリン酸 100.00部
・エチレングリコール 48.00部
・p−トルエンスルホン酸 0.50部
還流下にて上記材料を加え、6時間120℃にてエステル化反応を進行させた。この間、生成する水はトルエン/水共沸にて系中より除いた。反応終了後にp−トルエンスルホン酸を、炭酸水素ナトリウムを用いて中和した。得られた溶液をエバポレーションすることでトルエンを除去した。生成物を90℃に加熱後セライトろ過することによりp−トルエンスルホン酸ナトリウムを除去し、ワックス1を得た。ワックス1の融点、冷結晶化ピーク温度を表2に示した。
(ワックス2〜8の製造例)
ワックス1の製造例において、使用する酸モノマー、アルコールモノマーの種類、量を表2に記載の通り変更する以外はワックス1の製造例と同様にしてワックス2〜8を得た。ワックス2〜8の融点および冷結晶化ピーク温度を表2に示した。
Figure 2021033155
(疎水化処理磁性体1の製造例)
〔未処理磁性体の製造方法〕
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.1モル当量の苛性ソーダ溶液と、鉄元素に対してケイ素元素換算で0.60質量%となる量のSiO2と、鉄元素に対してリン元素換算で0.15質量%となる量のリン酸ソーダと、を混合した。このようにして、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。次に、水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し1.0モル当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液のpHを7.5に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめることで、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。このスラリーを濾過、洗浄、乾燥し解砕処理することで、個数平均一次粒径(D1)が0.21μmの未処理磁性体を得た。
〔シラン化合物の調製〕
イソブチルトリメトキシシラン20部をイオン交換水80部に対して撹拌しながら滴下して水溶液を調製した。その後、この水溶液のpHを5.5とし、温度40℃に保持ながら、ディスパー翼を用いて0.46m/sで2時間分散させて加水分解を行うことで、加水分解物を含有する水溶液であるシラン化合物を得た。得られたシラン化合物の加水分解率は90%、シロキサン率は4%であった。
〔疎水化処理磁性体〕
未処理磁性体をヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社)に入れた後、回転速度34.5m/sで未処理磁性体を分散させた状態で、シラン化合物(未処理磁性体100部に対し3.8部)を噴霧させながら加えた。次に、そのまま10分間分散させた後、シラン化合物1が吸着した磁性体を取り出し、160℃で2時間静かに置いた状態で処理後磁性体を乾燥すると共にシラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、目開き100μmの篩を通過させた磁性体を疎水化処理磁性体1として得た。
(非晶性ポリエステル樹脂1の製造例)
無水トリメリット酸以外の原材料モノマーを、下記表3に示した仕込み量で混合した混合物100部と、触媒であるジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52部とを、窒素導入ラインと、脱水ラインと、撹拌機とを装備した重合タンクに入れた。次に、十号タンク内を窒素雰囲気にした後、200℃で加熱しながら6時間かけて重縮合反応を行った。更に、210℃に昇温した後、無水トリメリット酸を添加し、重合タンク内を40kPaまで減圧した後で更に縮合反応を行った。得られた樹脂の酸価、水酸基価、分子量は表3のようになった。この樹脂を非晶性ポリエステル樹脂1とする。
なお、表中のイソソルビドとは、上記式(7)の構造を持つ化合物である。
(非晶性ポリエステル樹脂2〜5の製造例)
下記表3の原材料モノマー仕込み量にて、非晶性ポリエステル樹脂1と同様の操作を行い、非晶性ポリエステル樹脂2〜5を製造した。その際、逐次サンプリング及び測定を行い、所望の酸価になったところで重合反応を停止させ、重合タンクから取り出した。得られた樹脂の物性を下記表3に示す。
Figure 2021033155
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
TMA:無水トリメリット酸
BPA:ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物
EG:エチレングリコール
(非晶性ポリエステル樹脂6の製造例)
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(2.2mol付加) 60.0部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(2.2mol付加) 40.0部
・テレフタル酸 77.0部
・無水トリメリット酸 13.0部
上記ポリエステルモノマー混合物をモノマー総量に対して、0.2質量%のジブチル錫オキシドとともに5リットルオートクレーブに仕込み、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び撹拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。所望の軟化点になるように反応時間を調整し、反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して非晶性ポリエステル樹脂6を得た。非晶性ポリエステル樹脂6のガラス転移温度(Tg)は56℃、軟化点(Tm)は136℃であり、後述のトナー粒子28及び29では結着樹脂として用いた。
(トナー粒子1の製造例)
・スチレン 78.0部
・n−ブチルアクリレート 22.0部
・非晶性ポリエステル樹脂1 3.0部
・疎水化処理磁性体1 80.0部
・脂肪酸金属塩1 0.11部
・帯電制御剤 ボントロンE−88(オリエント化学社製) 1.0部
・ワックス1 21.0部
上記処方を、アトライター(日本コークス工業株式会社)を用いて均一に分散混合した。この単量体組成物を温度60℃に加温し、これに重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を10.0部投入して混合液内で混合/溶解させることで、重合性単量体組成物を調製した。
クレアミックス(エム・テクニック株式会社)にて33m/sで撹拌しながら、イオン交換水720部に0.1mol/L−Na3PO4水溶液450部を投入し温度60℃に加温した後、1.0mol/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して分散安定剤を含む水系媒体を得た。
前記水系媒体中に前記重合性単量体組成物を投入し、温度60℃、N2雰囲気下においてクレアミックス(エム・テクニック株式会社)にて33m/sで15分間撹拌し、造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌し、反応温度70℃にて300分間重合反応行った。重合反応終了後、懸濁液を100℃まで昇温させ、2時間、保持し、加熱減圧下で残存モノマーを除去した。次いで、冷却工程として、懸濁液を120℃/分で95℃から45℃まで冷却した。冷却後、アニール工程として、懸濁液を55℃まで昇温し、120分間保持した。アニール工程後に塩酸を添加してpHを2.0以下まで低下させることで無機微粒子を溶解させた。さらに水洗浄を数回繰り返した後、乾燥機を用いて40℃にて72時間乾燥し、その後、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級することで、トナー粒子1を得た。
得られたトナー粒子1は、重量平均粒径(D4)が7.6μm、(SPc−SPw)2×Mwは548であった。
(トナー粒子2〜28、及びトナー粒子31〜33の製造例)
トナー粒子1の製造において、非晶性ポリエステル樹脂1、脂肪酸金属塩1、及びワックス1の種類及び量を表4のように変更したこと以外は同様に操作し、トナー粒子2〜28、及びトナー粒子31〜33を得た。得られたトナー粒子2〜28、及びトナー粒子31〜33の物性を表5に示す。
(トナー粒子29の製造例)
下記材料を、アトライター(日本コークス工業株式会社)を用いて混合し、2時間撹拌して極性樹脂を溶解させ、極性樹脂含有単量体組成物を得た。
・スチレン 36.00部
・アクリル酸n−ブチル 28.00部
・非晶性ポリエステル樹脂4 3.00部
・帯電制御剤 ボントロンE−88(オリエント化学社製) 1.00部
また、下記材料を混合し、アトライター(三井鉱山社製)にてジルコニアビーズ(3/
16インチ)とともに1.7m/sで3時間撹拌し、ビーズを分離して着色剤分散液を得
た。
・スチレン 36.00部
・着色剤1(C.I.Pigment Blue 15:3(大日精化社製))
6.00部
・脂肪酸金属塩2 0.11部
次いで、極性樹脂含有単量体組成物 75.00部
・着色剤分散液 42.25部
上記材料を混合した。続いて混合物を60℃に加温し、21.00部のワックス6を加えた。次いで、重合開始剤 2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を10.0部添加し、5分間撹拌して重合性単量体組成物を得た。
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.1mol/L−Na3PO4水溶液850部および10%塩酸8.0部を添加し、回転数を33m/sに調整し、60℃に加温した。ここに1.0mol/L−CaCl2水溶液68部を添加し、微小な難水溶性分散剤Ca3(PO42を含む水系媒体を調製した。
上記重合開始剤投入の5分後に、60℃の重合性単量体組成物を温度60℃に加温した水系媒体に投入し、クレアミックスを33m/sで回転させながら15分間造粒した。
その後、プロペラ式撹拌装置で撹拌しつつ、温度70℃で5時間反応させた後、温度85℃まで昇温し、更に4時間反応を行い、トナー粒子を製造した。重合反応終了後、懸濁液を100℃まで昇温させ、2時間、保持し、加熱減圧下で残存モノマーを除去した。次いで、冷却工程として、懸濁液を120℃/分で95℃から45℃まで冷却した。冷却後、アニール工程として、懸濁液を55℃まで昇温し、120分間保持した。アニール工程後に塩酸を添加してpHを2.0以下まで低下させることで無機微粒子を溶解させた。さらに水洗浄を数回繰り返した後、乾燥機を用いて40℃にて72時間乾燥し、その後、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級することで、トナー粒子29を得た。
得られたトナー粒子29は、重量平均粒径(D4)が7.2μm、(SPc−SPw)2×Mwは784であった。
(トナー粒子30、及びトナー粒子37、38の製造例)
トナー粒子29の製造において、非晶性ポリエステル樹脂4、脂肪酸金属塩2、及びワックス6の種類及び量を表4のように変更したこと以外は同様に操作し、トナー粒子30、及びトナー粒子37、38を得た。得られたトナー粒子30、及びトナー粒子37、38の物性を表5に示す。
(トナー粒子34の製造例)
・非晶性ポリエステル樹脂6 100.0部
・磁性酸化鉄粒子(八面体形状) 60.0部
(個数平均粒径が0.13μm、保持力Hcが11.5kA/m、磁化σsが88Am2/kg、残留磁化σrが14Am2/kg[磁気特性は外部磁場10kOe印加時における値])
・ワックス 11.0部
(フィッシャートロプシュワックス、融点77℃、冷結晶化ピーク温度Cw:76℃)
・脂肪酸金属塩3 0.05部
・電荷制御剤(T−77、保土谷化学工業社製) 2.0部
上記材料をヘンシェルミキサーで前混合した後、二軸混練押し出し機(池貝鉄工(株)製PCM−30型))によって、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗粉砕した後、機械式粉砕機(ターボ工業(株)製T−250)で粉砕し、得られた微粉砕粉末を、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、トナー粒子34を得た。
得られたトナー粒子34は、重量平均粒径(D4)が7.2μm、(SPc−SPw)2×Mwは0であった。
(トナー粒子35の製造例)
トナー粒子34の製造において、脂肪酸金属塩3の量を0.43部に変更したこと以外は同様に操作し、トナー粒子35を得た。得られたトナー粒子35の物性を表5に示す。
(トナー粒子36の製造例)
トナー粒子1の製造において、非晶性ポリエステル樹脂1、脂肪酸金属塩1、及びワックス1の種類及び量を表4のように変更し、重合性単量体組成物中に結晶性ポリエステル樹脂(1,9−ノナンジオールとセバシン酸の重合物:Mw:19000、融点:74℃、酸価:2.0mgKOH/g、冷結晶化ピーク温度:55℃)を5部添加したこと以外は同様に操作し、トナー粒子36を得た。得られたトナー粒子36の物性を表5に示す。
Figure 2021033155
Figure 2021033155
Figure 2021033155
(トナー1の製造例)
得られたトナー粒子1(100部)に対して、BET法による比表面積が200m2/gである疎水性シリカ1.0部を、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社(旧三井三池化工機(株))にて外添を行なうことで、トナー1を得た。
得られたトナー1は、重量平均粒径(D4)が7.5μm、ガラス転移点が55℃、ワックスの含有量が20.0質量%、脂肪酸金属塩の含有量が0.10質量%、ソックスレー抽出を2時間行った時のヘキサン抽出分に含有される脂肪酸金属塩の量が0.08部、ワックスのドメインの円相当個数平均径が320nm、ワックスドメインの平均個数が312個、ワックスの含有量に対する脂肪酸金属塩の含有量が0.005、ソックスレー抽出を2時間行った時のヘキサン可溶分W2が14.0質量%、及びソックスレー抽出を8時間行った時のヘキサン可溶分W8が5.1質量%であった。
(トナー2〜38の製造例)
トナー1の製造において、トナー粒子1を表6に記載のトナー粒子に変更したこと以外は同様に操作し、トナー粒子2〜38を得た。得られたトナー2〜38の物性を表6に示す。
Figure 2021033155
〔実施例1〕
トナー1を以下のようにして評価した。評価結果を表7に示す。
特に記載がない場合は、評価紙はPB PAPER(キヤノンマーケティングジャパン社製、坪量66g/cm2、レター)を用いた。また、評価機としては、HP LaserJet Enterprise M606dnをプロセススピード400mm/secとなるように改造して用いた。
<評価1:耐久後の画像濃度>
上記改造機を用いて評価を行った。カートリッジのトナーを空にした後、トナー1をカートリッジに300g充填した。
印字率が1.5%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンが一旦停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、5,000枚の画出し試験を実施した。評価は高温高湿環境下(温度32.5℃、湿度85%RH)で行った。
5,001枚目において、先端余白5mm、左右余白5mmで、左、右、中央の3箇所、さらにこれを長手方向に30mm間隔で3箇所、合計で9個に5mm×5mmのベタ黒パッチ画像を有するチェック画像を出力した。
このチェック画像の9箇所のベタ黒パッチ画像部分の画像濃度を測定し、平均値を求めた。画像濃度は反射濃度計であるマクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して測定し、以下の基準で評価を行った。本発明ではC以上を許容レベルとする。
A.画像濃度が1.40以上。
B.画像濃度が1.30以上1.40未満。
C.画像濃度が1.20以上1.30未満。
D.画像濃度が1.20未満。
<評価2:低温定着性;擦り濃度低下率>
擦り濃度低下率は、上記評価機の定着器を外部に取り出し、定着器の温度を任意に設定可能にし、プロセススピードを400mm/secとなるように改造した外部定着器を用いた。
上記装置を用い、低温低湿環境下(温度15℃、湿度10%RH)において、単位面積当たりのトナー載り量を0.5mg/cm2に設定した先端余白5mm、左右余白5mmのベタ黒の未定着画像を、150℃に温調した上記定着器に通した。なお、記録媒体には「プローバーボンド紙」(105g/m2、フォックスリバー社製)を用いた。得られた定着画像を4.9kPa(50g/cm2)の荷重をかけたシルボン紙で摺擦し、摺擦前後での画像濃度の低下率(%)で評価した。以下に判定基準を示す。本発明ではC以上を許容レベルとする。
A:画像濃度の低下率が10.0%未満である。
B:画像濃度の低下率が10.0%以上15.0%未満である。
C:画像濃度の低下率が15.0%以上20.0未満である。
D:画像濃度の低下率が20.0%以上である。
<評価3:耐久後の画質;濃度ムラ>
画像形成装置としては、上記「評価1:耐久後の画像濃度」の評価に用いた改造機を、更に現像バイアスを調整できるように調整した。以下の評価手順で評価を行った。
(評価3−1:低温低湿環境における、耐久後の画質(濃度ムラ))
印字率が1.5%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンが一旦停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、5,000枚の画出し試験を実施した。上記耐久試験は、高温高湿環境下(温度32.5℃、湿度80%RH)で行った。
その後、評価機を低温低湿環境(温度15.0℃、湿度10%RH)に移動させた。耐久試験後に、低温低湿環境に移動させることで、耐久試験でトナー表層に染み出したワックスが結晶化しやすくなる。特に、ワックスだけでなく脂肪酸金属塩がトナー表層に染み出してきたトナーでは、脂肪酸金属塩を核としてワックスの結晶成長が促進されるため、厳しくなる。
低温低湿環境に24時間放置した後、ベタ画像の画像濃度がマクベス濃度計で1.50以上1.55以下となるように現像バイアスを調整した。さらに低温低湿環境において1時間放置した後に、調整したバイアス設定でベタ画像を10枚出力した後、1枚目、5枚目、10枚目の濃度を上端から下端までを等間隔に5分割し、更に左右も等間隔に4分割した領域の濃度を測定した。合計60個の濃度測定値の最大値と最小値の差を見ることで、濃度ムラを評価した。以下に判定基準を示す。本発明ではC以上を許容レベルとする。
A;濃度差が0.5以下
B;濃度差が0.6以上0.8以下
C;濃度差が0.9以上1.1以下
D;濃度差が1.2以上
(評価3−2:高温高湿環境における、耐久後の画質(濃度ムラ))
上記「評価3−1:低温低湿環境における、耐久後の画質(濃度ムラ)」において、耐久試験後の評価を高温高湿環境(温度32.5℃、湿度80%RH)にする以外は同様に操作し、評価を行った。耐久試験後の評価を高温高湿環境で実施することで、静電潜像担持体とトナーの非静電付着力が上昇しやすくなる。特に、トナー表層にワックスが染み出してきたトナーでは、ワックスによりトナーの非静電付着力が上昇するため、厳しくなる。
以下に判定基準を示す。本発明ではC以上を許容レベルとする。
A;濃度差が0.3以下
B;濃度差が0.4以上0.6以下
C;濃度差が0.7以上0.8以下
D;濃度差が0.9以上
<評価4:耐久後の画質;画像欠け>
画像形成装置としては、上記「評価3:耐久後の画質;濃度ムラ」の評価に用いた改造機を使用した。
印字率が1.5%となる横線パターンを2枚/1ジョブとして、ジョブとジョブの間にマシンが一旦停止してから次のジョブが始まるように設定したモードで、5,000枚の画出し試験を実施した。上記耐久試験は、高温高湿環境下(温度32.5℃、湿度80%RH)で行った。
その後、ベタ画像の画像濃度がマクベス濃度計で1.50以上1.55以下となるように現像バイアスを調整した。高温高湿環境において24時間放置した後に、調整したバイアス設定でベタ画像を10枚出力した。出力したベタ画像10枚にドラム融着起因の画像欠けが発生しているか目視で評価した。以下に判定基準を示す。本発明ではC以上を許容レベルとする。
A:画像欠けが発生していない
B:画像欠けが1個以上4個以下
C:画像欠けが5個以上8個以下
D:画像欠けが9個以上
<評価5:苛酷保存性>
トナー1を50mLのポリエステル製カップに5g取り、温度55℃/相対湿度10%で3日間放置し、凝集塊の有無を調べ、下記の基準で評価した。以下に判定基準を示す。本発明ではC以上を許容レベルとする。
(評価基準)
A:凝集塊発生せず
B:軽微な凝集塊が発生、軽く指で押すと崩れる
C:凝集塊が発生、軽く指で押しても崩れない
D:完全に凝集
〔実施例2〜28、比較例1〜6〕
トナー1を表7に記載したトナーに変更する以外、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表7に示す。
〔実施例29〜30、比較例7〜8〕
トナー1を表7に記載したトナーに変更し、かつ、評価機について、HP LaserJet Enterprise M553Xをプロセススピード400mm/secとなるように改造して用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表7に示す。
Figure 2021033155

Claims (9)

  1. 結着樹脂、ワックス、及び脂肪酸金属塩を含有するトナー粒子を含むトナーであって、
    ヘキサンを用いて、前記トナー粒子に対してソックスレー抽出を2時間行った際のヘキサン抽出分に含有される前記脂肪酸金属塩の量が、前記結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.18質量部以下であり、
    前記結着樹脂100質量部に対して、前記ワックスの含有量をA(質量部)とし、前記脂肪酸金属塩の含有量をB(質量部)としたとき、前記Aが10.0質量部以上40.0質量部以下であり、前記Bが0.04質量部以上0.43質量部以下であり、
    走査透過型電子顕微鏡で観察される前記トナー粒子の断面において、前記ワックスのドメインが存在し、前記ドメインの円相当個数平均径が、30nm以上1000nm以下であることを特徴とするトナー。
  2. 走査透過型電子顕微鏡で観察される前記トナー粒子の断面において、前記ワックスのドメインが存在し、前記ドメインの円相当個数平均径が、30nm以上500nm以下であり、前記ドメインの平均個数が、20個以上3000個以下である請求項1に記載のトナー。
  3. 前記ワックスの含有量Aに対する前記脂肪酸金属塩の含有量Bが、下記式(1)を満たす請求項1または2に記載のトナー。
    0.002≦B/A≦0.025 ・・・・式(1)
  4. ヘキサンを用いて、前記トナー粒子に対してソックスレー抽出を2時間行った際、2時間抽出したときのヘキサン可溶分をW2質量%、8時間抽出したときのヘキサン可溶分をW8質量%としたとき、
    下記式(2)、(3)を満たす請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトナー。
    8.0≦W2≦20.0 ・・・・式(2)
    1.0≦W8−W2≦32.0 ・・・・式(3)
  5. 前記脂肪酸金属塩が、2価または3価の金属と飽和脂肪酸からなる脂肪酸金属塩である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のトナー。
  6. 前記脂肪酸金属塩の炭素鎖長分布において、含有量が最も多い炭素鎖長成分の含有量が60質量%以上であり、前記脂肪酸金属塩を示差走査熱量測定して得られるDSC曲線において、もっともピーク高さが高い冷結晶化ピークの温度をCfとし、前記ワックスを示差走査熱量測定して得られるDSC曲線において、もっともピーク高さが高い冷結晶化ピークの温度をCwとした時に、下記式(4)、(5)を満たす請求項1乃至5のいずれか1項に記載のトナー。
    50≦Cf≦100 ・・・・式(4)
    |Cf−Cw|≦30 ・・・・式(5)
  7. 前記ワックスが、2価以上3価以下のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、或いは、2価以上3価以下のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステルを含有し、前記エステル、及び前記結着樹脂の溶解度パラメーターをSPw、SPcとし、前記エステルの重量平均分子量をMwとしたときに、前記SPw、SPc、及びMwが下記式(6)の関係を満たす(但し、溶解度パラメーターの単位は(cal/cm31/2である)請求項1乃至6のいずれか1項に記載のトナー。
    450≦(SPc−SPw)2×Mw≦780 ・・・・式(6)
  8. 前記トナー粒子が懸濁重合トナー粒子であり、前記トナー粒子が非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
    前記非晶性ポリエステル樹脂の酸価が3.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下であり、前記非晶性ポリエステル樹脂が下記式(7)で示されるイソソルビドユニットを、前記非晶性ポリエステル樹脂を構成する全モノマーユニットを基準として、0.10mol%以上30.00mol%以下含有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載のトナー。
    Figure 2021033155
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載のトナーの製造方法であって、
    a)非晶性ポリエステル樹脂、ワックス、脂肪酸金属塩、及び重合性単量体を含有する重合性単量体組成物Aを作製する工程、
    b)水系媒体中に前記重合性単量体組成物Aを添加し、水系媒体中に重合性単量体組成物Aの粒子が分散された分散液Bを作製する工程、
    c)前記分散液Bに重合開始剤を添加して、前記分散液B中に含まれる前記重合性単量体Aを重合し、水系媒体中にトナー粒子が分散された分散液Cを作製する工程、
    d)前記分散液Cを、ワックスの結晶化温度、脂肪酸金属塩の結晶化温度もしくはトナー粒子のガラス転移温度Tg(℃)のいずれか高い方の温度より高い温度Ta(℃)で保持する工程、
    e)工程dを経た前記分散液Cを、温度Taから、トナー粒子のTg(℃)以下の温度まで、40.0℃/分以上の冷却速度で冷却する工程、
    f)工程eを経た前記分散液Cを、Tg−10℃以上Tg+10℃以下の温度領域に、30分間以上保持する工程、
    を有することを特徴とするトナーの製造方法。
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