JP6855252B2 - トナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット式記録法のような方法によって形成される静電潜像を現像してトナー画像を形成するために用いるトナーに関する。
近年、プリンターや複写機における画像の高品質化が求められている。具体的には、画質及び画像の耐久性の向上が求められている。これに対応するためには、光沢度(グロス)が高く、高品位な画像を形成できるトナー、擦れやキズに強い画像を形成できるトナーが好ましい。これらの特性に優れたトナーを得るために、ワックスをトナーに用い、画像のグロスや画像強度を向上させる検討がなされている。
ワックスは、定着時のオフセット現象を抑制するために添加される。ここで、オフセット現象とは、トナーと定着部材が付着することで、画像の一部が定着部材に付着する画像弊害を示す。また、同時に、画像上をワックスが覆うことで、より高グロスかつ耐久性に優れた画像を得ることができる。
また、プリンターや複写機の省エネルギー化に対応するために、低温定着性に優れたトナーも求められている。低温定着時にもワックスの効果を得るためには、従来以上にワックスを有効に活用することが重要となってくる。一方、紙側にワックスが溶出すると、低温定着性の低下を引き起こす場合もあるため、これらの両立が求められている。
これらの課題に対して、特許文献1及び2では、ワックスをトナーの表面近傍に配置したトナーが提案されている。
特許文献3でも同様に、ワックスをトナーの表面近傍に、島状に存在させたトナーが提案されている。
特許文献4〜6では、ワックスのアスペクト比などの形状を制御して、細長い状態でトナー内部に存在させたトナーが提案されている。
特開2015−148724号公報 特開2016−61966号公報 特開2007−192952号公報 特開2015−172722号公報 特開2015−194699号公報 特開2016−057591号公報
特許文献1及び2に記載されたトナーでは、紙側へのワックスの染み出しまで開示されていない。また、ワックスの形状まで記載されておらず、画像の強度やグロスを向上させるための効果が不明瞭であり、改善の余地があるものであった。
また、特許文献3に記載されたトナーでは、ワックスを島状に存在させているため、画像表面を均一に覆うことは開示されていない。
また、特許文献4〜6では、ワックスを細長い状態でトナー内部に存在させることで、ワックスを効率的に利用しているが、その配置状態に関連する詳細な記載はなく、後述する効果を開示するまでには至っていない。
また、上記特許文献は、画像の強度や高グロス化に着眼して検討されたものではない。したがって、画像の強度や高グロス化については、さらなる改善が必要である。
本発明は、従来の問題点を解決したトナーを提供するものである。
すなわち、本発明は、光沢度が高く、耐久性及び画質に優れた画像を形成でき、かつ離型性及び低温定着性に優れたトナーを提供するものである。
本発明は、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
透過型電子顕微鏡で観察される該トナーの断面において、
該ワックスの平均アスペクト比が、20以上200以下であり、
該ワックスの短軸方向の平均長さが、50nm以上300nm以下であり、
該ワックスの長軸方向の平均長さが、750nm以上5000nm以下であり、
該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の重心との距離の10%以内の領域に存在する該ワックスの割合が、該断面に存在する該ワックスの面積に対して、35面積%以上であり、
該トナー中の該ワックスの含有量が3.0質量%以上20.0質量%以下であることを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、光沢度が高く、耐久性及び画質に優れた画像を形成でき、かつ離型性及び低温定着性に優れたトナーを提供することができる。
透過型電子顕微鏡で観察されるトナー断面の一例を示す図(図面代用写真) 透過型電子顕微鏡で観察されるトナー断面の一例を示す他の図(図面代用写真) 本発明と従来技術の定着画像の状態を示す模式図 トナーの断面における、輪郭、表層、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域の関係を示す図
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○〜××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
本発明者らは、低い定着温度でも、画像表面を十分にワックスで覆うために、トナー中におけるワックスの存在状態について検討を重ねた結果、本発明に至った。
本発明は、結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
透過型電子顕微鏡で観察される該トナーの断面において、
該ワックスの平均アスペクト比が、15以上200以下であり、
該ワックスの短軸方向の平均長さが、50nm以上300nm以下であり、
該ワックスの長軸方向の平均長さが、750nm以上5000nm以下であり、
該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の重心との距離の10%以内の領域に存在する該ワックスの割合が、該断面に存在する該ワックスの面積に対して、35面積%以上であり、
該トナー中のワックスの含有量が、3.0質量%以上20.0質量%以下であることを特徴とするトナーである。
ワックスの平均アスペクト比は、15以上200以下であり、トナー断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域に存在するワックスの割合が、断面に存在するワックスの面積に対して、35面積%以上である。
これらを満たすことで、低い定着温度でもワックスはトナー表面に均一に染み出し、画像表面はワックスで均一に覆われる。その結果、光沢度が高く、耐久性に優れた画像が得られる。この理由は以下のように考える。
ワックスの平均アスペクト比は15以上200以下であり、15以上80以下であるこ
とが好ましい。これはワックスが板状又は線状の状態でトナー内部に存在することを意味する。
さらに、トナー断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域に存在するワックスの割合が、断面に存在するワックスの面積に対して、35面積%以上であり、35面積%以上70面積%以下であることが好ましい。
これはトナーの表面近傍に、ワックスが多く存在することを意味する。これらの条件を満たすということは、トナーの表面近傍に、トナーの輪郭に沿って板状又は線状のワックスが囲むように存在していることを意味している。
透過型電子顕微鏡で観察されるトナー断面の具体例を図1及び図2に示す。
このような存在状態であることで、低い定着温度でもワックスはトナー表面に均一に染み出し、結果として、画像表面はワックスで均一に覆われると考えられる。
従来技術では、画像表面のワックスの被覆状態まで詳細に考慮して、トナー中のワックスの存在状態を制御した例はない。
ワックスの平均アスペクト比が15未満であると、ワックスの形状は粒状のドメインに近い形になるため、定着時にワックスに覆われる部分と覆われない部分とがミクロに存在することになり、画像表面はワックスで均一に覆われにくい。
また、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域に存在するワックスの割合が、35面積%未満である場合には、低い定着温度でワックスが十分に染み出さないため、画像表面がワックスで十分に覆われにくい。
このような状態になると、結果として光沢度の高い画像が得られなかったり、擦りや引っ掻きに弱い画像になってしまったりする。
上記状態と、従来技術の状態の違いを示す模式図を図3に示した。
上述のように、トナー断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域に存在するワックスの割合が、70面積%以下であることが好ましい。70面積%以下であると、ワックスの染み出し量が適度になって、紙側に染み出しにくくなるため、結果として低温定着性が向上する。該ワックスの割合は、35面積%以上60面積%以下であることがより好ましい。
一方、ワックスのごく一部は結着樹脂に相溶し、外部に染み出さない。そのため、該ワックスの短軸方向の平均長さが50nm以上であることで、結着樹脂に相溶せずに外部に染み出す量を十分に確保できるため、上記効果が得られる。
また、300nm以下であることで、低い定着温度においてもワックスが十分に溶融し、溶け残りのない状態にできるため、上記効果が得られる。
なお、ワックスの短軸方向の平均長さは、50nm以上200nm以下であることが好ましい。
該ワックスの長軸方向の平均長さが750nm以上であることで、トナー断面の輪郭に沿ってワックスが均一に囲むように存在できるため、上記効果が得られる。該ワックスの長軸方向の平均長さは1500nm以上であることがより好ましい。また、該ワックスの長軸方向の平均長さは、トナー中に内包するという観点から5000nm以下であり、4000nm以下であることが好ましい。
上記ワックスの形状及び存在状態を実現するための具体的方法としては、特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
例えば、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、粉砕法、スプレードライ法などが挙げられる。製造安定性や簡便さを考慮すると懸濁重合法を用いることが好ましい。
懸濁重合法を採用し、ワックスの融点や製造工程の温度を制御することで、ワックスが相分離する前に結晶化させる手法をとることがより好ましい。具体的には以下に示す通り
である。
懸濁重合法では、水系媒体中で、結着樹脂を形成し得る重合性単量体及びワックスを含有する重合性単量体組成物の粒子を形成する造粒工程、該粒子中に含有される重合性単量体を重合する重合工程、を経てトナー粒子を製造する。
この時、ワックスは重合性単量体に均一に溶解しているが、重合工程を経て重合性単量体が結着樹脂を形成した後には、結着樹脂とワックスが相分離している。
すなわち、重合工程において、結着樹脂及び重合性単量体(以下、バインダー相ともいう)と、ワックスが徐々に相分離構造を形成していく。この、相分離構造の形成過程において、ワックスとバインダー相が相分離を起こす前に、ワックスを結晶化させることで、上記ワックスの形状及び存在状態を有するトナーが得られる。
より具体的には、造粒工程においては、重合性単量体中のワックスの融点以上の温度を維持し、重合工程において、重合温度が徐々にバインダー相中のワックスの融点以下になるような条件を設定する。このとき、重合性単量体がワックスの溶媒の役割を果たすため、重合性単量体中のワックスの融点は、ワックス単体の融点よりも低くなる。さらに、重合工程において重合性単量体が結着樹脂を形成していくと、溶媒として働く重合性単量体が減っていくので、重合性単量体中のワックスの融点は徐々に上がっていく挙動を示す。この現象を利用して、上記のような温度条件を設定するとよい。
該製造方法では、製造安定性に優れ、かつ、該ワックスがトナー表面に露出しにくいトナーを製造することができる。
上記製造方法において、ワックスの形状及び存在状態は、ワックスの融点、ワックスの種類などで制御することができる。また、後述するワックス分散剤の量によっても制御することができる。
具体的には、懸濁重合法や溶解懸濁法であれば、重合速度や脱溶剤速度が速いほどワックスの移動が起こりにくいため、ワックスは内部にとどまる傾向にある。一方、ワックスの融点が高いほど平均アスペクト比が高く、短軸方向の平均長さが短くなる傾向にある。すなわち、トナー断面において、細長い状態に観察される傾向にある。
また、ワックス分散剤の量が多いほど、ワックスは内部にとどまり、かつ、トナー断面において、細長い状態に観察される傾向にある。
上記したワックスの形状及び存在状態は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面を用いて特定する。詳細は後述する。
また、懸濁重合法を用いる場合、重合性単量体を重合反応させるための重合開始剤を使用してもよい。該重合開始剤の添加量は、該重合性単量体100質量部に対して、2.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤など様々なものが使用できる。
トナー中のワックスの含有量は、3.0質量%以上20.0質量%以下であり、5.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
ワックスの含有量が3.0質量%以上である場合、ワックスが画像表面を十分に覆うことができるため、上記効果が得られる。一方、ワックスの含有量が20.0質量%以下である場合、過剰に染み出すワックス量を抑えられるため、紙側へのワックスの染み出しを抑えつつ、上記効果が得られる。該ワックスの含有量は、トナーを作製する際の仕込み量で制御できる。なお、ワックスの含有量の測定方法については後述する。
トナーの断面において、該断面の輪郭の内側に、表層が存在することが好ましい。
表層が存在する場合の、断面の輪郭、表層、断面の輪郭から輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域の関係を図4に示した(図4において、20はトナーの断面、21は表層、22は輪郭、23は、断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内を
示す)。
断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域には、該表層も含まれる。該表層が存在する場合、トナー断面は最外層である表層、ワックス及び結着樹脂を含む層という順で多層化されて存在することが好ましい。
トナーが多層化されることにより、該表層が電荷を保持する役割を担い、ワックスが得られた電荷を適度に逃がす役割を担うため、より速やかに帯電するトナーが得られ、高品位な画像を得ることができる。
該表層の厚みは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上80nm以下であることがより好ましい。
表層の厚みが上記範囲にあることで、表層より内側に存在するワックスの帯電性への影響を適切に制御することができるため、より優れた帯電性を有するトナーが得られる。
表層の厚みは、表層を形成する材料の添加量で制御することができる。表層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーの断面を用いて算出する。その詳細は後述する。
該表層に用いられる材料としては、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、ポリエステル樹脂;スチレンアクリル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。
また、表層はポリエステル樹脂を含有することが好ましい。さらに、該ポリエステル樹脂の酸価は、4.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下であることが好ましく、4.0mgKOH/g以上16.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂の酸価が上記範囲にあることで十分な帯電量を得つつ、速やかな帯電を達成することができ、より高品位な画像を得ることができる。
該酸価は、ポリエステル樹脂を合成する際に使用するモノマーの種類や量、比率によって制御することができる。該酸価の測定方法については後述する。
該表層に用いられる材料の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
該ポリエステル樹脂は、常法により調製するとよい。具体例として、二塩基酸やその誘導体(カルボン酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物)と二価のアルコールとを必須として、必要に応じて三価以上の多塩基酸及びその誘導体(カルボン酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物)、一塩基酸、三価以上のアルコール、一価のアルコールなどを脱水縮合する方法が挙げられる。
二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン−1,10−ジカルボン酸などの脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸、ヘット酸、ハイミック酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族の二塩基酸;などが挙げられる。
また、二塩基酸の誘導体としては、上記脂肪族二塩基酸及び芳香族二塩基酸のカルボン酸ハロゲン化物、エステル化物及び酸無水物などが挙げられる。
一方、二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの非環式の脂肪族ジオール類;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などのビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物;キシリレンジグリコールなどのアラルキレングリコール類;などが挙げられる。
三価以上の多塩基酸やその無水物としては、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸などが挙げられる。
なかでも、表層に含有されるポリエステル樹脂としては、炭素原子と酸素原子の比率C/O比が4.70以下であることが好ましい。該C/O比が上記範囲にある場合、ポリエステル樹脂の極性が高く、ワックスとの相分離性が高いことを意味する。そのため、表層の効果がより好適に得られる。該C/O比はポリエステル樹脂を製造する際に用いる原材料の種類と比率によって制御できる。また、該C/O比の算出方法については後述する。
該トナーの示差走査熱量計(DSC)を用いた測定において、1回目の昇温時に得られるワックス由来の吸熱量をH1(J/g)とし、2回目の昇温時に得られるワックス由来の吸熱量をH2(J/g)としたときに、H2のH1に対する比(H2/H1)が0.80以上1.00以下であることが好ましい。
該(H2/H1)が0.80以上であるということは、ワックスと結着樹脂を加熱したときでも、ワックスと結着樹脂が相溶しにくいことを意味している。そのため、上記範囲にあることで、ワックスがトナー外部に染み出しやすく、より優れたワックスの効果が得られる。該(H2/H1)の値は0.90以上であることがより好ましい。
該(H2/H1)はワックスと結着樹脂の種類によって制御することができる。該(H2/H1)の測定方法については後述する。
該結着樹脂は、特に限定されることなく、下記のようなトナーに用いられる公知の樹脂を用いることができる。なお、結着樹脂とは、トナーを構成する全樹脂中の含有割合が、50質量%以上の樹脂をいう。
ポリエステル樹脂;スチレンアクリル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ワックスとの相分離性の観点からスチレンアクリル樹脂が好ましい。
該スチレンアクリル樹脂を形成し得る重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンのようなスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルのような不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和カルボン酸;マレイン酸のような不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物のような不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルのようなニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルのような含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレンのようなニトロ系ビニル単量体;などが挙げられる。これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
トナーの結着樹脂をスチレンアクリル樹脂とする場合、その含有量は、トナーを構成する樹脂全量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
なお、上記結着樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
該ワックスは、特に限定されることなく、下記のようなトナーに用いられる公知のワックスを用いることができる。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルのような1価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートのような2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステル、又は、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;グリセリントリベヘネートのような3価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル
;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートのような4価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステル、又は、4価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートのような6価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステル、又は、6価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートのような多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスのような天然エステルワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸;酸アミドワックス。
この中でも、結着樹脂との相分離性の高い、炭化水素ワックス、4価以上6価以下のアルコールと脂肪族モノカルボン酸のエステルワックス、又は、4価以上6価以下のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステルワックスが好ましい。
これらのワックスは、結着樹脂との相分離性が高く、かつ粘度が低いため、定着時に良好な離型性が得られる。この中でも、炭化水素ワックスであることがより好ましい。
炭化水素ワックスは、画像表面に染み出した時に、蝋状に画像表面を覆うため、光沢度がより高まり、また、擦りや引っ掻きに強い画像を得ることができる。
また、ワックスの融点は、60℃以上120℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。
ワックスの融点が上記範囲を満たすことで、低い温度で定着したときにでも十分に溶融して効果を発揮し、かつ紙側への染み出しを抑制できるため、低温定着性により優れたトナーが得られる。
融点は、炭化水素ワックスであれば、ワックスの分子量や分岐度で制御することができる。エステルワックスであれば分子構造によって制御することができる。融点の測定方法については後述する。
該トナー粒子は、ワックス分散剤を含有してもよい。
該ワックス分散剤は、結着樹脂とワックスの両方に親和性を有するものであれば特に限定されることはない。
上記のようにワックス分散剤は、結着樹脂とワックスの両方に親和性を有することから、ワックスの分散安定剤として作用する。該ワックス分散剤を添加することにより、トナー中のワックスを、より薄く、より細長い形状にすることができる。その結果、ワックスにかかる上記効果をより強く得ることができる。
ワックス分散剤の含有量は、ワックス100質量部に対して、5.0質量部以上100.0質量部以下であることが好ましい。
ワックス分散剤としては、結着樹脂とワックスの両方への親和性の観点から、結着樹脂と、炭化水素又は(メタ)アクリル酸アルキルとの反応物を含有することが好ましい。
例えば、結着樹脂がスチレンアクリル樹脂である場合は、スチレンアクリル樹脂と炭化水素又は(メタ)アクリル酸アルキルとの反応物であることが好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルとは、アクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルを意味する。
該炭化水素又は(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィンのような炭化水素;ポリベヘニルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレートのような長鎖アルキルアクリレート;ポリベヘニルメタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリラウリルメタクリレートのような長鎖アルキルメタクリレートが挙げられる。
トナー粒子は、着色剤を含有してもよい。該着色剤としては、ブラック用着色剤、イエ
ロー用着色剤、マゼンタ用着色剤、及びシアン用着色剤が挙げられる。
ブラック用着色剤としては、カーボンブラックなどが挙げられる。
イエロー用着色剤としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アンスラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物などに代表されるイエロー顔料が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185などが挙げられる。
マゼンタ用着色剤としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物などに代表されるマゼンタ顔料が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが挙げられる。
シアン用着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レ−キ化合物などに代表されるシアン顔料が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
また、顔料とともに、着色剤として従来知られている種々の染料を用いることもできる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤、荷電制御樹脂、可塑剤、顔料分散剤などの、公知の材料を含有してもよい。
また、トナー粒子は、必要により外添剤などを混合し表面に付着させることで、トナーとしてもよい。
該外添剤としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子から選ばれる無機微粒子又はその複合酸化物などが挙げられる。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミニウム微粒子やチタン酸ストロンチウム微粒子などが挙げられる。これら無機微粒子は、表面を疎水化処理して用いることが好ましい。
さらに、トナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内でさらに他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、及びポリフッ化ビニリデン粉末のような滑剤粉末、酸化セリウム粉末及び炭化硅素粉末などの研磨剤、ケーキング防止剤として用いることもできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
該外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上8.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上4.0質量部以下である。
トナーのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定された分子量分布において、ピーク分子量(Mp)は、5000以上35000以下であることが好ましく、8000以上30000以下であることがより好ましい。
ピーク分子量(Mp)が低いほど、結着樹脂とワックスの相溶性が上がるため、定着時にワックスがトナーの外に染み出しにくくなる。
一方、ピーク分子量(Mp)が大きいほど、結着樹脂が軟化しにくくなるため、同様に定着時におけるワックスの染み出しが遅くなる。
そのため、ピーク分子量(Mp)を上記範囲に制御することで、定着時により優れたワックスの染み出し状態を得ることができる。
該ピーク分子量(Mp)は、トナー及びトナーに用いられる結着樹脂を合成する際の温度や重合開始剤の量によって制御することができる。なお、該トナーの分子量分布の測定方法については後述する。
トナーの重量平均粒子径(D4)は、4.0μm以上9.0μm以下であることが好ましい。D4が上記範囲にあることで、ワックスが各トナー間に偏りなく、仕込んだ量が十分に内包される。
また、トナーにおいて、重量平均粒子径(D4)の個数平均粒子径(D1)に対する比(D4/D1)は、1.00以上1.35以下であることが好ましい。
(D4/D1)が1.35以下であることで、ワックスが各トナー間に偏りなく内包される。トナーの重量平均粒子径(D4)及び個数平均粒子径(D1)は、製造条件によって制御することができる。なお、トナーの重量平均粒子径(D4)及び個数平均粒子径(D1)の測定方法については後述する。
トナーは、そのまま一成分系現像剤として、あるいは磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
以下、トナー及び原材料の各物性の測定方法に関して記載する。
<ワックスの平均アスペクト比、短軸方向の平均長さ、長軸方向の平均長さ、トナーの断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域に存在するワックスの割合(以下、「10%以内の存在割合」ともいう)、及び表層の厚さの測定方法>
透過型電子顕微鏡で観察されるトナーの断面は以下のようにして作製する。
以下、ルテニウム染色されたトナーの断面の作製手順を説明する。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。
次に、PTFE製のチューブ(Φ1.5mm×Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上にカバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。
得られた薄片サンプルを、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、四酸化ルテニウム(RuO)ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、透過電子顕微鏡(TEM)(日本電子製 JEM2800)を用い、加速電圧200kVの条件でトナーのTEM画像を作製する。
TEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得する。
得られたTEM画像において、四酸化ルテニウムによりトナーの非晶部が強く染色される。その結果、ワックスがコントラストとして観察可能となる。具体的には、結着樹脂部分に対して、ワックス部分が白く観察される(図1及び図2を参照)。
また、結着樹脂と表層は、該トナーのTEM画像において異なるコントラストとして観察される。明暗の差は材料によって異なるが、本発明では結着樹脂とはコントラストの異なる部分として観察される部分を、表層とする。
観察するトナーは、重量平均粒径(D4)から±1.0μm以内のものを10個選んで
撮影を行う。また、観察倍率は20000倍とする。
以下に示す各種計測については、市販の画像解析ソフトウェア、例えば、WinROOF(三谷商事株式会社製)を用いる。
(1)ワックスの短軸方向の平均長さ、長軸方向の平均長さ
無作為に選んだ10個のトナーのTEM画像において、測定可能なワックスの短軸方向の長さ、及び、長軸方向の長さを全数計測し、その算術平均値を求める。
なお、ワックスの短軸方向の長さは、ワックスドメインの厚みに相当する。各ワックスドメインにおける、最も厚い部分を短軸方向の長さとして計測する。また、長軸方向の長さは、ワックスドメインの長さに相当する。各ワックスドメインは湾曲している場合もあるため、各ワックスドメインを直線としたときの長さを長軸方向の長さとして計測する。また、途中で分岐している場合は、分岐している部分を別のドメインとして計測する。
(2)ワックスの平均アスペクト比
アスペクト比は、(長軸方向の平均長さ/短軸方向の平均長さ)である。
上記(1)で得られた「長軸方向の平均長さ」及び「短軸方向の平均長さ」を上記に代入して求める。
(3)トナーの断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内の領域に存在するワックスの割合(10%以内の存在割合)
トナーのTEM画像において、重心から、トナー断面の輪郭上の点に対して線を引く。該線上において、輪郭から、該輪郭と該断面の重心との距離の10%の位置を特定する。
そして、トナー断面の輪郭に対して一周分、この操作を行い、トナー断面の輪郭から、該輪郭と該断面の重心との距離の10%の境界線を明示する。
該10%の境界線が明示されたTEM画像をもとに、1つのトナーの断面におけるワックスの面積(以下Aと称する)、及び、1つのトナーの断面における、トナー断面の輪郭から、該輪郭と該断面の重心との距離の10%以内の領域に存在するワックスの面積(以下Bと称する)を計測する。
次いで、以下の式により、1つのトナーの断面における10%以内の存在割合を算出する。
1つのトナーの断面における10%以内の存在割合={「B」/「A」}×100(%)
これを10個のトナーの断面について行い、その算術平均値を、トナーの断面における10%以内の存在割合(面積%)とする。
(4)表層の厚み
無作為に選んだ10個のトナーのTEM画像において、各トナーについて、4点ずつ表層の厚みを計測する。具体的には、トナー断面の略中心で直行する2本の直線を引き、2本の直線上の、表層と交差する4点における、表層の厚みを計測する。表層の厚みは、トナーの断面の輪郭から、結着樹脂と表層の界面までの距離とする。全ての計測値の平均値を、トナーの表層の厚みとする。
<樹脂の酸価の測定方法>
酸価は、試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。本発明における酸価は、JIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放
置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した水酸化カリウム溶液の量から求める。0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<分子量分布の測定方法>
トナー又は樹脂の分子量分布〔重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、ピーク分子量(Mp)〕は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、サンプルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調製する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10mL
サンプルの分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<ワックスの含有量、H2、H1、ガラス転移温度(Tg)、及び融点の測定方法>
ワックスの含有量、H2、H1、ガラス転移温度(Tg)、及び融点は、示差走査熱量計「Q1000」(TA Instruments社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料1mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。
まず、0℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で昇温し、この時に観測されるワックス由来の吸熱ピークの吸熱量をH1(J/g)とする。
150℃で15分間保持した後、150℃から0℃まで、降温速度10℃/分で冷却する。
さらに、0℃で10分間保持した後、0℃から150℃まで、昇温速度10℃/分で2回目の昇温し、この時に観測されるワックス由来の吸熱ピークの吸熱量をH2(J/g)とする。
なお、吸熱量は、吸熱ピークが現れる温度領域において、昇温で得られた吸熱ピークを示す示差走査熱量曲線と示差走査熱量曲線のベースラインにより囲われた面積より算出する。
また、上記の測定をワックス単独で同様にして行い、2回目の昇温過程における吸熱ピークのピーク温度をワックスの融点(℃)とし、吸熱量をHw(J/g)とする。
ここで、ワックスの含有量(質量%)は以下の計算式で求める。
ワックスの含有量(質量%)=100×H1/Hw
トナー又は樹脂のガラス転移温度(Tg)は、上記測定装置を用い、試料1mgについて、測定範囲20℃から140℃の間で、昇温速度1℃/min、振幅温度幅±0.318℃/minの設定でモジュレーション測定を行う。この昇温過程で、温度20℃から140℃の範囲において比熱変化が得られる。
ガラス転移温度は、得られた比熱変化曲線の比熱変化が出る前と出た後の、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線が交わる点の温度(℃)とする。
<トナー粒子の粒度分布の測定方法>
トナー粒子の粒度分布は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標商品名、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解させて濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30mLを入れる。この中に分散
剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、及び有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。(4)前述(2)のビーカーを前述超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調製する。
(5)前述(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子が10mgになるよう少量ずつ電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前述(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散させた前述(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調製する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)及び個数平均粒子径(D1)を算出する。
<C/O比の算出方法>
C/O比は、計算により算出することができる。
C/O比はその構造中の炭素原子数と酸素原子数を数えることにより求める。ポリエステル樹脂のC/O比は、ポリエステル樹脂を構成する単量体の構造とその導入モル比から求める。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例において部及び%は、特に断りのない限り質量基準である。
<ポリエステル樹脂1の製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、テレフタル酸100.0mol部、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物65.0mol部、エチレングリコール35.0mol部の比率で混合した混合物100.0部を添加して、撹拌しながら温度130℃まで加熱した。その後、エステル化触媒としてジ(2−エチルヘキサン酸)錫0.52部を加え、温度200℃に昇温し所望の分子量になるまで縮重合した。
さらに、無水トリメリット酸を3.0部加え、ポリエステル樹脂1を得た。
得られたポリエステル樹脂1の重量平均分子量(Mw)は12000、ガラス転移温度(Tg)は70℃、酸価は8.2mgKOH/gであった。
<ポリエステル樹脂2〜7の製造例>
表1に記載の通り、酸成分及びアルコール成分の種類とmol比を変更した以外は、ポリエステル樹脂1の製造例と同様にして、ポリエステル樹脂2〜7を得た。
また、各ポリエステル樹脂の製造例において、所望の分子量になるよう、反応温度と時間を調整した。得られたポリエステル樹脂1〜7の物性を表2に示した。
Figure 0006855252
表1において、BPA−PO2mol付加物は、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物を、BPA−EO2mol付加物は、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2mol付加物を表す。
Figure 0006855252
<スチレンアクリル樹脂の製造例>
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、及び撹拌装置を備えたオートクレーブ中にキシレン(沸点144℃)300部を投入し、撹拌しながら装置内を十分に窒素で置換した後、昇温して還流させた。
この還流下で、スチレン91.2部、メチルメタクリレート2.5部、メタクリル酸3.0部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.8部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド(重合開始剤)2.0部の混合液を添加した後、反応時圧力を0.150MPaで重合温度を170℃にて重合を5時間行った。その後、減圧下にて脱溶剤工程を3時間行
い、キシレンを除去して、粉砕することで、スチレンアクリル樹脂(表4中では、StAcと記載する)を得た。
該スチレンアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は15000、ガラス転移温度(Tg)は90℃、酸価は20mgKOH/gであった。
<スチレンアクリル樹脂微粒子の分散液の製造例>
容器に、スチレン320部、n−ブチルアクリレート80部、1,10−デカンジオールジアクリレート1.4部、ドデカンチオール3.0部を投入後、混合及び溶解した。
これに、アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウ・ケミカル社製)8.0部をイオン交換水800部に溶解した溶液を加えて分散及び乳化し、10分間ゆっくりと混合及び撹拌した。さらに、過硫酸アンモニウム4.0部を溶解したイオン交換水50部を投入した。
次に、容器内の窒素置換を行った後、容器内の溶液を撹拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、スチレンアクリル樹脂微粒子の分散液を得た。スチレンアクリル樹脂微粒子の分散液中の粒子の体積平均粒径は80nm、固形分量は32%、ガラス転移温度(Tg)は65℃、重量平均分子量(Mw)は50000であった。
<ワックス分散剤の製造例>
撹拌機、温度計、窒素導入管、及び減圧装置を備えた反応容器に、キシレン600部、及びポリエチレンワックス(融点77℃、平均分子量489)240部を入れて十分溶解し、窒素置換を行った。これを175℃に昇温した後、スチレン1685部、n−アクリル酸ブチル475部、ジ−t−ブチルパーオキサイド78.0部、及びキシレン455部の混合溶液を3時間で滴下した。さらに、この温度で30分間保持して重合を行った。次いで脱溶媒を行い、ワックス分散剤を得た。
ワックス分散剤の重量平均分子量(Mw)は10000、ガラス転移温度(Tg)は65℃であった。
表3に、使用したワックスの種類と融点を示す。
Figure 0006855252
<トナー1の製造例>
・スチレン 60.0部
・着色剤 6.0部
(C.I.Pigment Blue 15:3、大日精化社製)
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、顔料分散液を得た。
・スチレン 18.0部
・n−ブチルアクリレート 22.0部
・ポリエステル樹脂1 5.0部
・ワックス1 6.0部
・ワックス分散剤 0.5部
上記材料を混合し、顔料分散液に加えた。得られた混合物を70℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmで攪拌し、均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.10mol/L−NaPO水溶液850.0部及び10%塩酸8.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、70℃に加温した。ここに、1.0mol/L−CaCl水溶液68.0部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を調製した。
水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入後、重合開始剤であるt−ブチルパーオキシピバレート7.0部を添加し、15000回転/分の回転数を維持しつつ10分間造粒した(造粒工程)。
その後、高速撹拌装置からプロペラ撹拌翼を備えた撹拌装置に変更し、還流しながら70℃で10時間重合反応を実施した(重合工程)。
重合反応終了後、得られたスラリーを冷却し、一部を抜き取り、粒度分布を測定した。
さらに、スラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの3倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級してトナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0部を加えて三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。
<トナー2〜20、26〜27の製造例>
表4に示すように、ワックスの種類と添加量、ワックス分散剤の量、ポリエステル樹脂の種類と添加量、重合開始剤の種類と添加量、造粒工程の温度、及び重合工程の温度を変更すること以外はトナー1の製造例と同様にして、トナー2〜20、26〜27を得た。
ただし、トナー12、13及び18の製造においては、下記に示すように一部の条件をさらに変更した。
トナー12の製造例においては、0.10mol/L−NaPO水溶液を0.12mol/L−NaPO水溶液に変更し、1.0mol/L−CaCl水溶液の添加量を81.6部に変更した。
トナー13の製造例においては、0.10mol/L−NaPO水溶液を0.08mol/L−NaPO水溶液に変更し、1.0mol/L−CaCl水溶液の添加量を54.4部に変更した。
トナー18の製造例においては、10%塩酸を添加せずに製造を行った。
Figure 0006855252
表4中の重合開始剤1(種類:No.1)はt−ブチルパーオキシピバレート(半減期温度58℃)であり、重合開始剤2(種類:No.2)は3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート(半減期温度37℃)である。
<トナー21の製造例(溶解懸濁法)>
(マスターバッチの調製)
40部のC.I.Pigment Blue 15:3(大日精化社製)、60部のポリエステル樹脂6、及び30部の水をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロールの表面温度を130℃に設定した2本ロールにより60分間混練を行ない、粉砕し、マスターバッチを得た。
(顔料・ワックス分散液の調製)
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、970部のポリエステル樹脂6、181部のワックス2、及び1450部の酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶液(60/40[体積%])を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した。
次いで、容器に500部のマスターバッチ、及び330部の酢酸エチル/メチルエチル
ケトン混合溶液(60/40[体積%])を仕込み、1時間混合し原料溶解液を得た。
1500部の原料溶解液を容器に移し、アトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、顔料・ワックス分散液を得た。顔料・ワックス分散液の固形分濃度が50%となるように酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶液(60/40[体積%])を加えて調整した。さらに、原料溶解液を80℃に加熱した。
(水相の調製)
高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.10mol/L−NaPO水溶液850.0部及び10%塩酸8.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、80℃に加温した。ここに1.0mol/L−CaCl水溶液68.0部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水相を調製した。
(造粒・脱溶剤)
水相中に顔料・ワックス分散液200.0部を投入し、そのまま高速撹拌装置にて、80℃、15000回転/分を維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌装置からプロペラ撹拌翼を備えた撹拌装置に変更し、80℃で5時間脱溶剤を行い、スラリーを得た。
(微粒子付着工程)
得られたスラリーに、スチレンアクリル樹脂微粒子の分散液を固形分比で1:0.03になるように加え、65℃に加熱した。
(洗浄・乾燥・外添)
スラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの3倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級してトナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理され、トナー粒子と同極性(負極性)に摩擦帯電する疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m/g)2.0部を加えて三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー21を得た。
<トナー22の製造例(溶解懸濁法)>
トナー21の製造例において、酢酸エチル/メチルエチルケトン混合溶液をトルエンに変更する以外は、トナー21の製造例と同様にしてトナー22を得た。
<トナー23の製造例(粉砕法)>
・ポリエステル樹脂6 70.0部
・スチレンアクリル樹脂 30.0部
・着色剤 8.0部
(C.I.Pigment Blue 15:3、大日精化社製)
・ワックス1 5.0部
・ワックス分散剤 0.5部
上記材料をヘンシェルミキサ(三井三池化工機社製)で前混合した後、PCM−30(池貝鉄工所社製)を用い、吐出口における溶融物温度が180℃になるように温度を設定し、溶融混練した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製)にて1mm以下に粗粉砕した後、粉砕機としてターボミルT250(ターボ工業社製)を用いて微粉砕した。
得られた微粉砕物を、コアンダ効果を利用した多分割分級機(日鉄鉱業社製:EJ−L−3型)を用いて分級した。その後、トナー1の製造例と同様にして外添剤を添加し、トナー23を得た。
<トナー24の製造例(乳化凝集法)>
(ポリエステル樹脂分散液の調製)
・ポリエステル樹脂7 144.0部
・イソプロピルアクリルアミド 16.0部
・酢酸エチル 233.0部
・水酸化ナトリウム水溶液(0.3mol/L) 0.1部
上記材料を1000mLのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーターにより撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することによりポリエステル樹脂分散液(固形分濃度:30%)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は160nmであった。
(ワックス分散液の調製)
・ワックス1 180.0部
・アニオン界面活性剤(ネオゲンR、第一工業製薬(株)製) 4.5部
・イオン交換水 410.0部
以上を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散処理し、イオン交換水で濃度を調整して、体積平均粒径が200nmのワックス粒子が分散された、ワックス分散液(ワックス粒子の固形分濃度が30.0%)を調製した。
(着色剤分散液の調製)
ステンレス容器に、イオン交換水を280.0部とアニオン界面活性剤33.0部を入れ、充分に界面活性剤を溶解させた後、
・着色剤 250.0部
(C.I.Pigment Blue 15:3、大日精化社製)
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC) 33.0部
・イオン交換水 750.0部
上記成分をすべて投入し、十分に撹拌した。その後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、6000回転で20分間分散した後、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。この着色剤分散液中の粒子の体積平均粒径は150nmであった。
(トナーの製造)
・イオン交換水 215.0部
・ポリエステル樹脂分散液 228.0部
・着色剤分散液(固形分濃度20%) 20.0部
・アニオン界面活性剤 2.8部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、固形分濃度20%)
上記材料を、温度計、pH計、及び撹拌機を備えた反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、撹拌回転数150rpmにて、30分間保持した。その後、0.3mol/L硝酸水溶液を添加し、pHを3.0に調整した。
さらに、ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラックスT50)で分散しながら、ポリ塩化アルミニウム0.7部をイオン交換水7.0部に溶解させた水溶液を添加し、撹拌しながら、50℃まで昇温した。その後、体積平均粒径が5.0μmとなるまで撹拌した。
さらに、ポリエステル樹脂分散液30.0部及びワックス分散液15.0部の配合液を追添加した。30分後さらにポリエステル樹脂分散液47.0部を追添加し、凝集粒子の表面にワックス分散液とポリエステル樹脂を付着させた。
続いて、10%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70:キレスト株式会社製)を20部加えた後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、30℃まで冷却して、ろ過して粗トナー粒子を得た。これをさらにイオン交換水にて再分散し、ろ過するこ
とを繰り返して、洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。その後、トナー1の製造例と同様にして外添剤を添加し、トナー24を得た。
<トナー25の製造例>
トナー24の製造例において、ワックス1をワックス6に変更する以外は、トナー24の製造例と同様にしてトナー25を得た。
得られたトナー1〜27について前述の方法を用いて、各物性を測定した。結果をまとめて表5に示した。
Figure 0006855252
表5中の、「N.C.」は、計測不能を意味する。
<実施例1〜20、及び、比較例1〜7>
得られたトナー1〜27について以下の方法に従って性能評価を行った。結果を表6に示した。実施例4、11、19、20は、それぞれ参考例4、11、19、20とする。
[低温定着性]
低温定着性の評価は、定着画像に視認可能な画像不良が発生しなくなる最低定着温度を評価することによって行う。
なお、低温定着時に発生する視認可能な画像不良としては、トナーが溶融しないことによって発生するコールドオフセット、トナーの溶融が足りず、かつ定着ローラーとトナーの付着力が高い状態で発生するブリスターが主に挙げられる。
なお、ブリスターとは、定着工程で定着画像の一部が定着ローラーによって剥離する火膨れ状の画像欠陥であり、定着画像としては微小な白抜けとして視認される。
これらの画像不良の発生温度としては、コールドオフセットのほうがより低温で発生し、定着温度を上げていくとブリスターの発生領域になり、さらに定着温度を上げると画像不良のない良好な画像が得られる。評価は以下のように行った。
定着ユニットを外したカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、代わりに評価するトナーを充填した。
次いで、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー;64g/m)上に、充填したトナーを用いて、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(トナー載り量:0.9mg/cm)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。
次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(23℃、60%RH)、プロセススピードを230mm/sに設定し、初期温度を155℃として設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行った。得られた定着画像について、コールドオフセットが発生せず、かつブリスター由来の白抜けが2個以内となる定着温度を最低定着温度として、以下の基準に基づき、低温定着性の評価を行った。
A:最低定着温度が160℃以下
B:最低定着温度が165℃又は170℃
C:最低定着温度が175℃又は180℃
D:最低定着温度が185℃又は190℃
[離型性]
上記定着試験において、下記評価基準に従って離型性を評価した。
高温オフセット(H.O.)とは、高温定着時に一部のトナーが定着ローラーに融着する現象であり、離型性が低いトナーほど、低い定着温度で発生しやすい。
評価基準は以下の通りである。
高温オフセットが発生しない最高温度が、
A:最低定着温度プラス50℃以上である
B:最低定着温度プラス40℃以上50℃未満である
C:最低定着温度プラス30℃以上40℃未満である
D:最低定着温度プラス20℃以上30℃未満である
[画像の光沢度]
上記定着試験において、最低定着温度よりも10℃高い設定温度における定着画像について、ハンディ光沢度計グロスメーターPG−3D(日本電色工業製)を用いて、光の入射角75°の条件で画像の光沢度(グロス)を測定し、以下の基準で評価した。
A:画像部の光沢度が25以上である
B:画像部の光沢度が20以上25未満である
C:画像部の光沢度が15以上20未満である
D:画像部の光沢度が10以上15未満である
[画像の強度;耐擦り性]
上記定着試験において、最低定着温度よりも10℃高い設定温度における定着画像について、定着画像濃度と、定着画像を50g/cmの荷重をかけたシルボン紙で5回摺擦した後の画像濃度を測定し、その濃度低下率を求めた。
なお、濃度の測定には「X−Riteカラー反射濃度計(color refledtion densitometer X−Rite404A)」を用いた。
求めた濃度低下率について、以下の基準で評価した。
A:濃度低下率が3.0%未満である
B:濃度低下率が3.0%以上7.0%未満である
C:濃度低下率が7.0%以上10.0%未満である
D:濃度低下率が10.0%以上15.0%未満である
E:濃度低下率が15.0%以上である
[画質]
以下のようにしてゴースト現象の評価を行うことで、画質の評価を行った。
市販のカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を、一色のプロセスカートリッジだけの装着でも作動するよう改造して評価を行った。
このカラーレーザープリンターに搭載されていたシアンカートリッジから中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、代わりに評価するトナー(200g)を充填した。常温常湿環境下(23℃、60%RH)、受像紙として、キヤノン製オフィスプランナー(64g/m)を用い、印字率1%チャートを2000枚連続して画出しした。
その後、ベタ白画像を300枚プリントアウト後に、ゴースト判定画像を出力した。ゴースト判定画像とは、転写紙の上端から5mmの位置に15mm×15mmのベタ画像を15mm間隔で横一列に7個並べ、該ベタ画像から下をトナー載り量0.20mg/cmのハーフトーン画像としたものである。
該画像のハーフトーン部における、1周目でベタ黒画像が形成された場所(黒印字部)と、されない場所(非画像部)での、マクベス濃度反射計により測定された反射濃度の差を下記のごとく算出した。
「反射濃度差」=(現像ローラー1周目に非画像部だった部分の画像の反射濃度)−(現像ローラー1周目に黒印字部だった部分の画像の反射濃度)
反射濃度差が小さいほどゴーストの発生が少ないと評価される。
該反射濃度差について、以下の基準で評価した。
A:0.00以上0.03未満である
B:0.03以上0.06未満である
C:0.06以上0.10未満である
D:0.10以上0.15未満である
E:0.15以上である
Figure 0006855252
20:トナーの断面、21:表層、22:輪郭、23:断面の輪郭から、輪郭と断面の重心との距離の10%以内

Claims (10)

  1. 結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
    透過型電子顕微鏡で観察される該トナーの断面において、
    該ワックスの平均アスペクト比が、20以上200以下であり、
    該ワックスの短軸方向の平均長さが、50nm以上300nm以下であり、
    該ワックスの長軸方向の平均長さが、750nm以上5000nm以下であり、
    該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の重心との距離の10%以内の領域に存在する該ワックスの割合が、該断面に存在する該ワックスの面積に対して、35面積%以上であり、
    該トナー中の該ワックスの含有量が、3.0質量%以上20.0質量%以下であることを特徴とするトナー。
  2. 前記トナーの断面において、前記断面の輪郭の内側に表層が存在する、請求項1に記載のトナー。
  3. 前記表層の厚みが、10nm以上100nm以下である、請求項2に記載のトナー。
  4. 前記表層が、ポリエステル樹脂を含有し、
    該ポリエステル樹脂の酸価が、4.0mgKOH/g以上20.0mgKOH/g以下である、請求項2又は3に記載のトナー。
  5. 前記断面の輪郭から、該輪郭と該断面の重心との距離の10%以内の領域に存在する該ワックスの割合が、該断面に存在する該ワックスの面積に対して、35面積%以上70面積%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナー。
  6. 前記トナーの示差走査熱量計を用いた測定において、
    1回目の昇温時に得られる前記ワックス由来の吸熱量をH1(J/g)とし、
    2回目の昇温時に得られる前記ワックス由来の吸熱量をH2(J/g)としたときに、
    該H2のH1に対する比(H2/H1)が0.80以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。
  7. 前記ワックスが、炭化水素ワックスを含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の
    トナー。
  8. 前記トナー粒子が、ワックス分散剤を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナー。
  9. 前記ワックスの融点が、60℃以上120℃以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載のトナー。
  10. 前記断面の輪郭から、前記輪郭と前記断面の重心との距離の10%以内の領域に存在する前記ワックスの割合が、前記断面に存在する前記ワックスの面積に対して、35面積%以上60面積%以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のトナー。
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