JP7233957B2 - トナー - Google Patents
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Description
ワックスは、結着樹脂を可塑させる目的で添加される。熱によって溶融したワックスが結着樹脂と相溶することで、トナーの溶融時の粘度が下がり、優れた低温定着性が得られる。このような背景から、特許文献1~5では、エステルワックスを用いたトナーが提案されている。
さらに、トナーは低温定着性に優れると同時に、耐熱保存性も両立することが求められている。しかしながら、結着樹脂を可塑させる目的で添加されるワックスは、結着樹脂との相溶性が高く、かつ融点が低くなる傾向にある。そのため、高温環境下で保存した場合に、トナー中に含有された一部のワックスが溶融したり、トナー粒子表面に染み出したりして、保存性が低下する場合がある。
よって、ワックスを用いたトナーにおいて、さらなる低温定着性と分離性、耐熱保存性との両立が求められている。
特許文献1及び2に記載されたトナーでは、エステルワックスを用いることで低温定着性を向上させているが、エステルワックスと結着樹脂との相溶性を十分に高くするという観点では十分でない。また、現像性の改良に用いている被覆層の影響によって、エステルワックスによる低温定着性を十分に発揮できていない場合があり、改善の余地があることがわかった。
特許文献3に記載されたトナーでは、相溶性の高いエステルワックスを用いているが、トナーの溶融粘度を適切に制御して分離性を良好にするという観点では十分でない。具体的には、耐ホットオフセット性との両立のために架橋性の重合性単量体を添加しているが、その影響により、低温定着性が阻害される場合がある。また、保存性の改良として用いている被覆層の設計に関しては、被覆層とエステルワックスの相溶性については考慮されておらず、分離性に関して改善の余地があることがわかった。
また、特許文献4及び5に記載されたトナーでは、相溶性の高いエステルワックスを用
いているが、エステルワックスの融点を高く保ち耐熱保存性を良好にするという観点では十分でない。
本発明は、上記のような問題点を解決したトナーを提供するものである。
すなわち本発明は、低温定着性、分離性、及び耐熱保存性を両立したトナーを提供するものである。
該結着樹脂が、非晶性樹脂Aを含有し、
該トナー粒子が、表面に被覆層を有し、
該被覆層が、非晶性樹脂Bを含有し、
該非晶性樹脂Bのガラス転移温度が、60℃以上90℃以下であり、
該非晶性樹脂Bが、下記式(A)で表される構造を有するポリエステル樹脂を含み、
該トナーの動的粘弾性測定において、
周波数1Hzで測定し、損失弾性率G’’が1.00×106Paとなるときの温度をT(1Hz)とし、
周波数20Hzで測定し、損失弾性率G’’が1.00×106Paとなるときの温度をT(20Hz)とし、
周波数20Hzで測定したときの、損失弾性率G’’の貯蔵弾性率G’に対する比(tanδ)の、60℃以上90℃以下の範囲における最大値をtanδ(P)としたときに、
下記式(1)~(4)を満たす、
式(1) T(20Hz)-T(1Hz)≦7.0℃
式(2) 0.80≦tanδ(P)≦1.90
式(3) 60℃≦T(1Hz)≦80℃
式(4) 60℃≦T(20Hz)≦80℃
ことを特徴とするトナーに関する。
トナーの変形しやすさは、弾性率で表現することができる。弾性率はトナー等の材料を、一定量変形させるのに必要な力を数値化したものである。例えば、保存温度における弾性率が高いほど変形しにくく、保存性に優れると言える。また、トナーの溶融時の弾性率が低いほど、定着時のトナーの溶融粘度が低いため、定着性に優れると言える。
さらに、弾性率の測定パラメーターの一つに、変形速度がある。これは、弾性率を測定する際にトナーを変形させる速度のことであり、動的粘弾性測定装置を用いる際には周波数として設定される。例えば、トナーを一定量、速く変形させるには、大きな力が必要である。しかしながら、同じ変形量であっても、変形速度が遅くてもよければ、小さな力で変形可能である(図1)。
実際に、トナーの動的粘弾性測定において、周波数を変えて測定を行った例を図2に示す。周波数が低い条件で測定した場合に比べて、周波数が高い条件で測定した場合には、同じ測定温度であったとしても、より高い弾性率となっていることがわかる。
ナーの耐熱保存性は周波数の低い条件で測定した弾性率との相関が高いと考えた。一方で、定着工程においては、圧力が瞬間的にトナーにかかる。そのため、トナーの低温定着性は、周波数の高い条件で測定した弾性率との相関が高いと考えた。
以上の考えを基に検討を重ねた結果、周波数の低い条件で測定した弾性率の値が高く、かつ周波数の高い条件で測定した弾性率の値を低くすることで、耐熱保存性と低温定着性の両立が可能であることを見出した。
式(1) T(20Hz)-T(1Hz)≦7.0℃
具体的には、定着工程でトナーが加圧される時間は50ms程度であると想定されるため、周波数に換算すると20Hzになる。式(1)を満たすということは、周波数1Hzでの弾性率と、周波数20Hzでの弾性率の差が十分に小さいことを意味しており、耐熱保存性と低温定着性を高い水準で両立可能であることを意味している。
また、1.00×106Paという値は、トナーが定着可能な弾性率想定した数値である。
本発明のトナーの弾性率の測定結果の一例を図3に示す。T(20Hz)-T(1Hz)の値が小さく、T(1Hz)の値を上げて耐熱保存性を向上させた場合にも、T(20Hz)の値が上がりにくいため、優れた低温定着性を得ることができる。
一方で、ワックスのような結晶性材料は、弾性率の周波数依存性が小さい。結晶性材料の場合、融点以上の温度に加熱することで結晶が崩れ、融解する。このとき、分子の絡まりとは関係なく融解するため、周波数を変えたとしても、弾性率が低下する温度は変わらない(図4)。そのため、ワックスの融解に伴う粘度低下をトナーに持たせることで、周波数依存性が小さいという特性が得られる。
T(20Hz)-T(1Hz)は、4.5℃以下であることが好ましい。下限は特に制限されないが、好ましくは-1.0℃以上であり、より好ましくは0℃以上である。
式(2) 0.80≦tanδ(P)≦1.90
tanδ(P)は下記式(2’)を満たすことが好ましい。
式(2’) 1.00≦tanδ(P)≦1.90
さらに、tanδ(P)は下記式(2’’)を満たすことが好ましい。
式(2’’) 1.00≦tanδ(P)≦1.70
tanδ(P)の値は、トナーの分子量、ガラス転移温度Tg、架橋度合い、カプセル化(被覆層)等によって制御することができる。低温定着性や耐熱保存性との両立の観点から、被覆層の制御によって達成することが好ましい。
式(3) 60℃≦T(1Hz)≦80℃
式(4) 60℃≦T(20Hz)≦80℃
T(1Hz)及びT(20Hz)が60℃よりも低い場合には、耐熱保存性が低下する。また、T(1Hz)及びT(20Hz)が80℃よりも高い場合には、優れた低温定着性が得られない。下記式(3’)、(4’)を満たすことが好ましい。
式(3’) 60℃≦T(1Hz)≦70℃
式(4’) 60℃≦T(20Hz)≦75℃
以上説明したように、式(1)~(4)を満たすことで、優れた低温定着性と耐熱保存性を両立しつつ、溶融時の粘度を下げたトナーに発生しがちである分離性の低下についても高いレベルで両立可能である。
なお、T(1Hz)、T(20Hz)及びtanδ(P)の測定方法については後述する。
該被覆層によって分離性を向上させようとした場合、該被覆層を構成する材料と該ワックスの相溶性が低いことが好ましい。相溶性が低いことで、定着時に該被覆層が該ワックスに可塑されることなく、優れた分離性を得ることができる。一方で、このような設計をすると、定着時に被覆層が硬い状態で存在し、結着樹脂を覆った状態になるため、低温定着性が低下する場合がある。
トナー粒子のT(20Hz)-T(1Hz)が小さいということは、定着時に圧力が瞬
間的にトナーにかかった場合でも、トナーの弾性率が十分に低下することを意味している。その結果、定着時にトナーが変形することで生じる、トナー粒子表面の被覆層のわずかな亀裂(隙間)からでも、結着樹脂が素早く染み出すことができるため、ワックスとの相溶性が低い被覆層を形成しても低温定着性が良好になると考えられる。
以上のように、T(20Hz)-T(1Hz)を小さくしたトナー粒子に、ワックスとの相溶性が低い被覆層を用いることで、低温定着性と分離性とをより両立させやすくなる。
被覆層の厚さは、被覆層に用いる材料の量によって制御することが簡便であり好ましい。
被覆層の有無、及び厚さの測定手法については後述する。
60℃以上であることで、トナーの保存温度や定着温度においても高い弾性率が得られるため、より優れた耐熱保存性と分離性が得られる。90℃以下であることで、トナー粒子の溶融温度と同じ温度領域で被覆層が軟化するため、トナーの定着温度における弾性率を下げることができ、より優れた低温定着性が得られる。
非晶性樹脂Bのガラス転移温度は、非晶性樹脂Bを構成する単量体の組成によって制御することができる。
非晶性樹脂Bのガラス転移温度の測定方法については後述する。
非晶性樹脂Bは、ポリエステル樹脂を含むことが好ましく、ポリエステル樹脂であることがより好ましい。ポリエステル樹脂は極性が高いため、ワックスとの相溶性が低い傾向にある。そのため、該被覆層がワックスによって可塑されにくくなり、tanδ(P)の制御や、トナーの保存時におけるワックスの染み出しを抑制することができる。結果としてより優れた分離性と耐熱保存性が得られる。
非晶性樹脂Bの重量平均分子量は、5000~30000であることが好ましい。
ポリエステル樹脂は、例えば、二塩基酸やその誘導体(カルボン酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物)と二価のアルコールに加え、必要に応じて三価以上の多塩基酸及びその誘導体(カルボン酸ハロゲン化物、エステル、酸無水物)、一塩基酸、三価以上のアルコール、一価のアルコールなどを脱水縮合して得ることができる。
二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカン-1,10-ジカルボン酸等の脂肪族二塩基酸;フタル酸、テトラヒドロフタ
ル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸、ヘット酸、ハイミック酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族の二塩基酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、cis-1-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸等の脂環式の二塩基酸等が挙げられる。
二塩基酸は、好ましくは芳香族の二塩基酸を含む。また、二塩基酸の誘導体としては、上記脂肪族二塩基酸、芳香族二塩基酸および脂環式二塩基酸のカルボン酸ハロゲン化物、エステル化物および酸無水物等が挙げられる。
二価のアルコールは、好ましくはビスフェノ-ルAアルキレンオキサイド付加物を含む。
このような構造を有する場合、ポリエステル樹脂中のエステル基の数が増えるため、極性の高いポリエステル樹脂となる。そのため、ワックスとの相溶性が下がり、該tanδ(P)を好ましい範囲に設計できる。結果として良好な分離性と、優れた低温定着性が得られる。
エチレングリコール、シュウ酸及びシュウ酸誘導体からなる群から選択される少なくとも一に由来する構造のポリエステル樹脂中の合計の含有量は、該ポリエステル樹脂の全モノマーユニットを基準としたモル%として、2.0モル%以上15.0モル%以下であることが好ましい。
素を有するため極性が高く、ワックスとの相溶性が低いポリエステル樹脂が得られる。さらに、イソソルビドは環状構造を有するため、ワックスが脂肪族のエステルワックスである場合、よりワックスと相溶性の低いポリエステル樹脂が得られる。結果として、さらに良好な分離性と、優れた低温定着性が得られる。
イソソルビドに由来する構造のポリエステル樹脂中の含有量は、該ポリエステル樹脂の全モノマーユニットを基準としたモル%として、2.5モル%以上30.0モル%以下であることが好ましい。
これは、結着樹脂がスチレンアクリル系樹脂を主成分とすることが好ましいことを意味する。スチレンアクリル系樹脂は、極性が高くないためワックスとの相溶性が高く、ワックスの可塑効果を有効活用しやすい。そのため、上記したT(20Hz)-T(1Hz)の値の制御が容易であり、低温定着性と耐熱保存性との両立が可能である。
例えば、ポリエステル樹脂;スチレンアクリル系樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂などが挙げられる。
スチレンアクリル系重合体部位を形成し得る重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンのようなスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルのような不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和カルボン酸;マレイン酸のような不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物のような不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルのようなニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルのような含ハロゲン系ビニル単量体;ニトロスチレンのようなニトロ系ビニル単量体など。これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルのような1価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、1価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートのような2価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、2価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;グリセリントリベヘネートのような3価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、3価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートのような4価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、4価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテ
ートのような6価のアルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、6価のカルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートのような多価アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、又は、多価カルボン酸と脂肪族アルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスのような天然エステルワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムのような石油系ワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスのようなポリオレフィンワックス及びその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸のような脂肪酸;酸アミドワックス。
これらのワックスを単独で用いてもよいし、複数の種類を用いてもよい。
また、直線性の高い化学構造であるため、融点と結晶性が高く、より優れた耐熱保存性が得られる。さらに、炭素数2のジオールと炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物を含有することがより好ましい。
ワックスの融点は、60℃~90℃であることが好ましい。
トナー中のワックスの含有量は、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。上記範囲にあることで、低温定着性と耐熱保存性とが両立しやすくなる。より好ましくは、8.0質量%以上15.0質量%以下である。トナー中のワックスの含有量の測定方法は後述する。
ブラック用着色剤としては、カーボンブラックなどが挙げられる。
イエロー用着色剤としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アンスラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物などに代表されるイエロー顔料が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー74,93,95,109,111,128,155,174,180,185などが挙げられる。
シアン用着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物;塩基染料レ-キ化合物などに代表されるシアン顔料が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66が挙げられる。
また、顔料とともに、着色剤として従来知られている種々の染料を用いることもできる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
外添剤としては、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子からなる群から選ばれる無機微粒子又はその複合酸化物などが挙げられる。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミニウム微粒子やチタン酸ストロンチウム微粒子などが挙げられる。
外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.01質量部以上8.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上4.0質量部以下であることがより好ましい。
トナーは、粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法など公知の方法で製造することが可能であり、製造方法は特に限定されるものではない。
<トナーのT(1Hz)、T(20Hz)、tanδ(P)の測定方法>
測定装置としては、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMENTS社製)を用いる。
測定試料としては、トナーを0.1g秤量し、室温(25℃)の環境下で、錠剤成型器を用いて、直径8.0mm、厚さ1.5±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いる。
該試料を直径8.0mmのパラレルプレートに装着し、室温(25℃)から120℃に5分間で昇温して3分間保持し、10分間かけて50℃まで試料を冷却する。その後、30分間保持してから測定を開始する。この際、初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットする。また、以下に述べるように、その後の測定においては、自動テンション調整(Auto Tension Adjustment ON)にすることで、ノーマルフォースの影響をキャンセルできる。測定は、以下の条件で行った。
(1)直径8.0mmのパラレルプレートを用いた。
(2)周波数(Frequency):1Hz又は20Hz
(3)印加歪初期値(Strain)を0.2%に設定した。
(4)50℃以上120℃以下の温度範囲において、昇温速度(Ramp Rate)2.0[℃/分]で測定を行う。なお、測定においては、以下の自動調整モードの設定条件で行う。自動歪み調整モード(Auto Strain)で測定を行う。
(5)最大歪(Max Applied Strain)を20.0%に設定する。
(6)最大トルク(Max Allowed Torque)を200.0[g・cm]に設定し、最低トルク(Min Allowed Torque)を0.2[g・cm]に設定する。
(7)歪み調整(Strain Adjustment)を20.0% of Current Strainに設定する。測定においては、自動テンション調整モード(Auto Tension)を採用する。
(8)自動テンションディレクション(Auto Tension Direction)をコンプレッション(Compression)に設定する。
(9)初期スタティックフォース(Initial Static Force)を10gに設定し、自動テンションセンシティビティ(Auto Tension Sensitivity)を10.0gに設定する。
(10)自動テンション(Auto Tension)の作動条件は、サンプルモデュラス(Sample Modulus):1.00×106Pa以上とする。
上記条件で、周波数1Hzで測定した際の、損失弾性率G’’が1.00×106(Pa)となるときの温度をT(1Hz)とし、周波数20Hzで測定した際の、損失弾性率G’’が1.00×106(Pa)となるときの温度をT(20Hz)とする。
また、周波数20Hzで測定したときの、損失弾性率G’’の貯蔵弾性率G’に対する比(G’’/G’)(tanδ)の、60℃以上90℃以下の範囲における最大値をtanδ(P)とする。
トナー及び非晶性樹脂Bのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、サンプル1mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。モジュレーション測定モードを用い、昇温速度1℃/分、温度変調条件±0.6℃/60秒で0℃から100℃の範囲で測定を行う。昇温過程において比熱変化が得られるので、比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点をガラス転移温度(Tg)とする。
トナー中のワックスの含有量は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いて測定する。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、まずワックス単体の吸熱量を測定する。
トナーに用いたワックスを(複数用いた場合は、トナーに用いた比率で混合したワックス)1mg精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。昇温速度10℃/分で0℃から150℃に昇温し、150℃にて5分間維持する。その後、冷却速度10℃/分で150℃から0℃まで冷却を行う。続いて、0℃で5分間維持したのちに、昇温速度10℃/分で0℃から150℃まで昇温する。このときのDSC曲線における吸熱ピークの吸熱量ΔH1(J/g)をワックス単体の吸熱量とする。
続いて、トナーの吸熱量を測定する。トナーを1mg精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。昇温速度10℃/分で0℃から150℃に昇温し、このときのDSC曲線における吸熱ピークの吸熱量ΔH2(J/g)をトナーの吸熱量とする。
上記の方法で測定したワックス単体の吸熱量とトナーの吸熱量から、下記式に従ってトナー中のワックスの含有量を測定した。
トナー中のワックスの含有量(質量%)=ΔH2/ΔH1×100
被覆層の有無、被覆層の厚さの測定方法は、透過型電子顕微鏡で観察されるトナーの断面画像から測定する。透過型電子顕微鏡で観察されるトナーの断面は以下のようにして作
製する。
以下、ルテニウム染色されたトナーの断面の作製手順を説明する。
まず、カバーガラス(松波硝子社、角カバーグラス;正方形No.1)上にトナーを一層となるように散布し、オスミウム・プラズマコーター(filgen社、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs膜(5nm)及びナフタレン膜(20nm)を施す。
次に、PTFE製のチューブ(Φ1.5mm×Φ3mm×3mm)に光硬化性樹脂D800(日本電子社)を充填し、チューブの上にカバーガラスをトナーが光硬化性樹脂D800に接するような向きで静かに置く。この状態で光を照射して樹脂を硬化させた後、カバーガラスとチューブを取り除くことで、最表面にトナーが包埋された円柱型の樹脂を形成する。
超音波ウルトラミクロトーム(Leica社、UC7)により、切削速度0.6mm/sで、円柱型の樹脂の最表面からトナーの半径(例えば、重量平均粒径(D4)が8.0μmの場合は4.0μm)の長さだけ切削して、トナー中心部の断面を出す。
次に、膜厚100nmとなるように切削し、トナーの断面の薄片サンプルを作製する。このような手法で切削することで、トナー中心部の断面を得ることができる。
得られた薄片サンプルを、真空電子染色装置(filgen社、VSC4R1H)を用いて、四酸化ルテニウム(RuO4)ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、透過電子顕微鏡(TEM)(日本電子製 JEM2800)を用い、加速電圧200kVの条件でトナーのTEM画像を作製する。
TEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024×1024pixelにて画像を取得した。
該結着樹脂と該被覆層は、該トナーのTEM画像において異なるコントラストとして観察される。明暗の差は材料によって異なるが、本発明では該結着樹脂とはコントラストの異なる部分として観察される部分を、該被覆層とした。トナー粒子の輪郭線の長さのうち、80%以上に被覆層が存在する場合に、トナー粒子が被覆層を有すると判断する。
以下に示す該被覆層の厚さの計測については、市販の画像解析ソフトウェア、WinROOF(三谷商事株式会社製)を用いて行う。
無作為に選んだ10個のトナーのTEM画像において、各トナーについて、4点ずつ被覆層の厚みを計測する。具体的には、トナー断面の略中心で直行する2本の直線を引き、2本の直線上の、被覆層と交差する4点における、被覆層の厚みを計測する。被覆層の厚みは、トナーの断面の輪郭から、該結着樹脂と該被覆層の界面までの距離とする。全ての計測値の平均値を、トナーの被覆層の厚みとした。
樹脂やトナーなどの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC-8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:LF-604の2連[昭和電工(株)製]
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-8
0、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
トナーの粒度分布は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標商品名、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解させて濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに電解水溶液200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに電解水溶液30mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、及び有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2mL添加する。(4)前述(2)のビーカーを前述超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調製する。
(5)前述(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナーを、トナーが10mgになるよう少量ずつ電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前述(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散させた前述(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調製する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)及び個数平均粒子径(D1)を算出する。
実施例及び比較例に用いたワックスの名称及び物性を表1に示す。
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、単量体としてテレフタル酸1.00mol、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2mol付加物0.65mol、エチレングリコール0.35molを添加して、撹拌しながら温度130℃まで加熱した。その後、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫を、上記単量体100.00部に対して0.52部を加え、温度200℃に昇温し所望の分子量になるまで縮重合した。
さらに、無水トリメリット酸を上記単量体100.00部に対して3.00部を加え、ポリエステル樹脂1を得た。
得られたポリエステル樹脂1の重量平均分子量(Mw)は20000、ガラス転移温度(Tg)は75℃、酸価は8.2mgKOH/gであった。
表2に記載の通り、酸成分及びアルコール成分の種類とmol比を変更した以外は、ポリエステル樹脂1の製造例と同様にして、ポリエステル樹脂2~8を得た。
また、各ポリエステル樹脂の製造例において、所望の分子量になるよう、反応温度と時間を調整した。
得られたポリエステル樹脂1~8の物性について表3にまとめて示す。
ポリエステル樹脂6:144部
イソプロピルアクリルアミド(興人社製):16部
酢酸エチル:233部
水酸化ナトリウム水溶液(0.3mol/L):0.1部
上記成分を1000mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することによりポリエステル樹脂6微粒子分散液(固形分濃度:30質量%)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は110nmであった。
ポリエステル樹脂6微粒子分散液の製造例において、ポリエステル樹脂6をポリエステル樹脂7に変更した以外は、ポリエステル樹脂6微粒子分散液の製造例と同様にして、ポリエステル樹脂7微粒子分散液(固形分濃度:30質量%)を得た。分散液中の樹脂粒子の体積平均粒径は190nmであった。
スチレン:375部
ドデカンチオール:3.0部
上記成分を混合溶解したものに、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウ・ケミカル社製)8.0部をイオン交換水800部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で分散、乳化し、10分間ゆっくりと混合撹拌しながら、さらに、過硫酸アンモニウム6.0部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次に、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を撹拌しながらオイルバスで70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、スチレンアクリル系樹脂微粒子分散液1を得た。スチレンアクリル系樹脂微粒子分散液1中の粒子の体積平均粒径は90nm、固形分量は30質量%、Tgは100℃、重量平均分子量Mwは30000であった。
スチレン:225部
n-ブチルアクリレート:75部
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート:0.5部
ドデカンチオール:3.0部
上記成分を混合溶解したものに、アニオン性界面活性剤ダウファックス(ダウ・ケミカル社製)8.0部をイオン交換水800部に溶解した溶液を加えてフラスコ中で分散、乳化し、10分間ゆっくりと混合撹拌しながら、さらに、過硫酸アンモニウム4.0部を溶解したイオン交換水50部を投入した。次に、フラスコ内の窒素置換を行った後、フラスコ内の溶液を撹拌しながらオイルバスで65℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、スチレンアクリル系樹脂微粒子分散液2を得た。スチレンアクリル樹脂微粒子分散液2中の粒子の体積平均粒径は80nm、固形分量は30質量%、Tgは54℃、重量平均分子量Mwは30000であった。
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、及び、減圧装置を備えた反応容器に、セバシン酸1.0mol、1,6‐ヘキサンジオール1.0molを添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシドを、上記単量体100.0部に対して0.7部加えた後、温度180℃に昇温し、減圧させながら所望の分子量となるまで反応させ、結晶性ポリエステルを得た。結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は15000、融点(Tm)は68.1℃であった。
以下にトナーの製造例を示す。トナー1~17を実施例として、トナー18~24を比較例として製造した。
・スチレン 60.0部
・着色剤 6.0部
(C.I.Pigment Blue 15:3、大日精化社製)
上記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5時間分散させて、顔料分散液を得た。
・スチレン 15.0部
・n-ブチルアクリレート 25.0部
・ポリエステル樹脂1 8.0部
・ワックス1 15.0部
・炭化水素ワックスHNP-9(日本精蝋製、融点74℃) 3.0部
・ジビニルベンゼン 0.5部
上記材料を混合し、顔料分散液に加えた。得られた混合物を60℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmで攪拌し、均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
一方、高速撹拌装置クレアミックス(エム・テクニック社製)を備えた容器中に0.10mol/L-Na3PO4水溶液850.0部及び10%塩酸8.0部を添加し、回転数を15000rpmに調整し、70℃に加温した。ここに、1.0mol/L-CaCl2水溶液68.0部を添加し、リン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を調製した。
水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入後、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート7.0部を添加し、15000回転/分の回転数を維持しつつ10分間造粒した。その後、高速撹拌機からプロペラ撹拌翼に撹拌機を変え、還流しながら70℃で5時間反応させた後、液温85℃とし、さらに2時間反応させた。
重合反応終了後、得られたスラリーを冷却し、さらに、スラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの3倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級してトナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0部を加えて三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー1を得た。
表4に示すように、ワックス又は結晶性ポリエステルの種類と添加量、ポリエステル樹脂の種類と量、ジビニルベンゼンの量を変更すること以外はトナー1の製造例と同様にして、トナー2~7、10~15、18~23、25、26を得た。
ただし、トナー7及び25の製造においては、ポリエステル樹脂1を添加せずに、サリチル酸アルミニウム化合物(ボントロンE-88:オリエント化学社製)を1.0部添加した。
トナー1の製造例と同様にして、トナー粒子のスラリーを製造した。
上記トナー粒子のスラリーに、撹拌下、ポリエステル樹脂6微粒子分散液(トナー粒子固形分100部に対して、ポリエステル樹脂6固形分5.0部)を添加し、30分間撹拌を続けた後、温度55℃に昇温した。
次いで、上記スラリーのpHが毎分0.1下がるように0.2モル/リットルの塩酸水溶液を滴下し、上記スラリーのpHを1.5とした。上記温度を保持しながら、さらに2時間撹拌を続けた後、攪拌下、1モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を10.0質量部/分の滴下速度で、上記スラリーのpHが7.2になるまで滴下した。
このスラリーを70℃に加熱し、さらに2時間攪拌した。上記スラリーを20℃まで冷却した後、スラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの3倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級してトナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0部を加えて三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー8を得た。
ポリエステル樹脂6微粒子分散液を、ポリエステル樹脂7微粒子分散液に変更し、ポリエステル樹脂7微粒子分散液の添加量を、トナー粒子固形分100部に対して、ポリエステル樹脂7固形分8.0部に変更する以外は、トナー8の製造例と同様にしてトナー9を得た。
トナー23の製造例で得られたトナー粒子のスラリーに対し、トナー8の製造例と同様にして樹脂微粒子の添加・付着及び外添を行い、トナー17を得た。ただし、ポリエステル樹脂6微粒子分散液を、スチレンアクリル系樹脂微粒子分散液1に変更し、スチレンアクリル系樹脂微粒子分散液1の添加量を、トナー粒子固形分100部に対して、スチレンアクリル系樹脂の固形分10.0部とした。
トナー23の製造例と同様にして、トナー粒子のスラリーを製造した。
得られたトナースラリーに、メチルメタクリレート1.5部、及びイオン交換水20部に溶解した2,2’‐アゾビス(2‐メチル‐N‐(2‐ヒドロキシエチル)‐プロピオンアミド)(和光純薬社製、商品名「VA‐086」)0.15部を添加した。その後、さらに3時間、90℃に加熱して重合させた。上記スラリーを20℃まで冷却した後、スラリーに塩酸を加えpHを1.4にし、1時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解させた。その後、スラリーの3倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級してトナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0部を加えて三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー24を得た。
ワックス1:180部
アニオン界面活性剤(ネオゲンR、第一工業製薬(株)製):4.5部
イオン交換水:410部
以上を110℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径が0.20μmのワックス粒子を分散させ、イオン交換水で濃度を調整し、ワックス粒子の固形分濃度が30.0%のワックス分散液を調製した。
C.I.Pigment Blue 15:3(大日精化社製):250部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンSC):33部(有効成分60%、着色剤に対して8%)
イオン交換水:280部
以上をステンレス容器に加え、撹拌機を用いて濡れていない顔料がなくなるまで撹拌するとともに、充分に脱泡させた。脱泡後に残りのイオン交換水:470部を加え、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて、5000回転で10分間分散した後、撹拌器で1昼夜撹拌させて脱泡した。
続けて、分散液を高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン社製、HJP30006)を用いて、圧力240MPaで分散した。得られた分散液を24時間放置して沈殿物を除去し、イオン交換水を加えて、固形分濃度を20%に調製した。この着色剤分散液中の粒子の体積平均粒径は135nmであった。
イオン交換水:315部
スチレンアクリル系樹脂微粒子分散液2:333部(固形分30質量%)
着色剤分散液:29部(固形分20%)
ワックス分散液:50部(固形分30%)
アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20%):3.8部
上記成分を、温度計、pH計、撹拌機を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、撹拌回転数150rpmにて、30分間保持した。その後0.3mol/L硝酸水溶液を添加し、凝集工程でのpHを3.0に調整した。
ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラックスT50)で分散しながら、ポリ塩化アルミニウム(王子製紙(株)製:30%粉末品)1.0部をイオン交換水10部に溶解させたポリ塩化アルミニウム水溶液を添加した。その後、撹拌しながら、50℃まで昇温し、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径を5.6μmとした。その後ポリエステル樹脂6微粒子分散液40部(固形分30%)を追添加し、30分撹拌した。
続いて、10%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70:キレスト株式会社製)を30部加えた後、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、30℃まで冷却した。これを更にイオン交換水にて再分散し、ろ過することを繰り返して、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー粒子を得た。
その後、トナー粒子100.0部に対して、外添剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で疎水化処理されたシリカ微粒子(1次粒子の個数平均粒径:10nm、BET比表面積:170m2/g)2.0部を加えて三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製)を用い、3000rpmで15分間混合してトナー16を得た。
得られたトナー1~26について前述の方法を用いて、各物性を測定した。結果をまとめて表5に示す。尚、実施例7及び13は参考例として評価を行った。
得られたトナー1~26について以下の方法に従って性能評価を行った。結果を表6に示す。
低温定着性の評価は、定着画像に視認可能な画像不良が発生しなくなる最低定着温度を評価することによって行う。
低温定着性の評価は、定着画像に視認可能な画像不良が発生しなくなる最低定着温度を評価することによって行う。
なお、低温定着時に発生する視認可能な画像不良としては、トナーが溶融しないことによって発生するコールドオフセットが主に挙げられる。
評価は以下のように行った。
定着ユニットを外したカラーレーザープリンター(HP Color LaserJet 3525dn、HP社製)を用意し、シアンカートリッジからトナーを取り出して、代わりに評価するトナーを充填した。
次いで、受像紙(キヤノン製オフィスプランナー;64g/m2)上に、充填したトナーを用いて、縦2.0cm横15.0cmの未定着のトナー画像(トナー載り量:0.9mg/cm2)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。
次いで、取り外した定着ユニットを定着温度とプロセススピードを調節できるように改造し、これを用いて未定着画像の定着試験を行った。
まず、常温常湿環境下(23℃、60%RH)、プロセススピードを300mm/sに設定し、初期温度を150℃として、230℃まで設定温度を5℃ずつ順次昇温させながら、各温度で上記未定着画像の定着を行った。得られた定着画像について、コールドオフセットが発生しない定着温度を最低定着温度として、以下の基準に従って低温定着性の評価を行った。D以上を本発明の効果が得られていると判断した。
A:最低定着温度が150℃
B:最低定着温度が155℃
C:最低定着温度が160℃
D:最低定着温度が165℃
E:最低定着温度が170℃
F:最低定着温度が175℃以上
定着部材との分離性は、定着時に、紙が定着部材に巻き付かずに通紙可能な定着温度範を評価することで行う。
上記定着試験において、以下の基準に従って定着部材との分離性の評価を行った。
評価基準は以下の通りである。D以上を本発明の効果が得られていると判断した。
A:最低定着温度プラス45℃でも定着部材への巻き付きは発生しない
B:最低定着温度プラス45℃で定着部材への巻き付きが発生するが、プラス40℃又は35℃で定着部材への巻き付きは発生しない
C:最低定着温度プラス35℃で定着部材への巻き付きが発生するが、プラス30℃又は25℃で定着部材への巻き付きは発生しない
D:最低定着温度プラス25℃で定着部材への巻き付きが発生するが、プラス20℃又は15℃で定着部材への巻き付きは発生しない
E:最低定着温度プラス15℃で定着部材への巻き付きが発生するが、プラス10℃又は5℃で定着部材への巻き付きは発生しない
F:定着部材への巻き付きが発生しない温度が、最低定着温度のみか、定着部材への巻き付きが発生しない温度がない
評価トナーサンプル5.0gが入った樹脂製カップ(100mL)を、高温環境下(温度50℃/相対湿度50%)において、3日間静置した。その後、常温常湿環境下(温度23℃/相対湿度50%)に移し、1時間静置した。測定装置は、「パウダーテスターPT-X」(ホソカワミクロン(株)製)を使用し、目開き75μmの篩を用いて、常温常湿環境(温度23℃/相対湿度50%)下でトナー残量の測定を行った。篩の振幅を1.00mm(peak-to-peak)になるように調整し、篩上に評価用のトナーをのせ、40秒間振動を加えた。その後、篩上に残ったトナーの凝集物の量から耐熱保存性を評価し、下記の評価基準にて耐熱保存性を評価した。
A:メッシュ上のトナー残量が0.10g以下である。
B:メッシュ上のトナー残量が0.10gを超え、0.20g以下である。
C:メッシュ上のトナー残量が0.20gを超え、0.30g以下である。
D:メッシュ上のトナー残量が0.30gを超え、0.40g以下である。
E:メッシュ上のトナー残量が0.40gを超え、0.50g以下である。
F:メッシュ上のトナー残量が0.50gを超えている。
Claims (6)
- 結着樹脂及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該結着樹脂が、非晶性樹脂Aを含有し、
該トナー粒子が、表面に被覆層を有し、
該被覆層が、非晶性樹脂Bを含有し、
該非晶性樹脂Bのガラス転移温度が、60℃以上90℃以下であり、
該非晶性樹脂Bが、下記式(A)で表される構造を有するポリエステル樹脂を含み、
該トナーの動的粘弾性測定において、
周波数1Hzで測定し、損失弾性率G’’が1.00×106Paとなるときの温度をT(1Hz)とし、
周波数20Hzで測定し、損失弾性率G’’が1.00×106Paとなるときの温度をT(20Hz)とし、
周波数20Hzで測定したときの、損失弾性率G’’の貯蔵弾性率G’に対する比(tanδ)の、60℃以上90℃以下の範囲における最大値をtanδ(P)としたときに、
下記式(1)~(4)を満たす、
式(1) T(20Hz)-T(1Hz)≦7.0℃
式(2) 0.80≦tanδ(P)≦1.90
式(3) 60℃≦T(1Hz)≦80℃
式(4) 60℃≦T(20Hz)≦80℃
ことを特徴とするトナー。 - 前記被覆層の厚さが、10nm以上200nm以下である、請求項1に記載のトナー。
- 前記非晶性樹脂Aが、スチレンアクリル系重合体部位を有する樹脂であり、
前記結着樹脂中の該スチレンアクリル系重合体部位を有する樹脂の含有量が、50質量%以上である、請求項1又は2に記載のトナー。 - 前記ワックスが、炭素数2以上6以下のジオールと炭素数14以上22以下の脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記トナー中の前記ワックスの含有量が、5.0質量%以上20.0質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
- 前記ワックスが、エチレングリコールジステアレート、エチレングリコールジパルミテート、及びエチレングリコールジベヘネートからなる群より選択されるエステル化合物を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のトナー。
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