JP2021025083A - 軟磁性粉末、この軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心、軟磁性粉末の製造方法及び圧粉磁心の製造方法。 - Google Patents

軟磁性粉末、この軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心、軟磁性粉末の製造方法及び圧粉磁心の製造方法。 Download PDF

Info

Publication number
JP2021025083A
JP2021025083A JP2019143242A JP2019143242A JP2021025083A JP 2021025083 A JP2021025083 A JP 2021025083A JP 2019143242 A JP2019143242 A JP 2019143242A JP 2019143242 A JP2019143242 A JP 2019143242A JP 2021025083 A JP2021025083 A JP 2021025083A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
powder
soft magnetic
magnetic powder
irregular
crystal structure
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2019143242A
Other languages
English (en)
Other versions
JP7009425B2 (ja
Inventor
泰雄 大島
Yasuo Oshima
泰雄 大島
功太 赤岩
Kota Akaiwa
功太 赤岩
山本 豊
Yutaka Yamamoto
豊 山本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Tamura Corp
Original Assignee
Tamura Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Tamura Corp filed Critical Tamura Corp
Priority to JP2019143242A priority Critical patent/JP7009425B2/ja
Priority to CN202010146741.6A priority patent/CN111724965A/zh
Publication of JP2021025083A publication Critical patent/JP2021025083A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7009425B2 publication Critical patent/JP7009425B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

【課題】ヒステリシス損失、ひいては鉄損の低減を図ることができる軟磁性粉末、この軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心、軟磁性粉末の製造方法及び圧粉磁心の製造方法の提供。【解決手段】FeSiAl合金粉末から成る軟磁性粉末であって、FeSiAl合金粉末の結晶構造には、結晶構造が不規則な構造となる不規則構造が含まれ、結晶構造に占める前記不規則構造の割合は、5.70wt%以上31.74wt%以下であることを特徴とする軟磁性粉末。【選択図】図1

Description

本発明は、軟磁性粉末、この軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心、軟磁性粉末の製造方法及び圧粉磁心の製造方法に関する。
リアクトルは、ハイブリッド自動車、電気自動車や燃料電池車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。このリアクトルのコアとして、例えば、圧粉磁心が使用される。圧粉磁心は、軟磁性粉末とこの軟磁性粉末を覆う絶縁被膜とを加圧成形することにより形成される。
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、エネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。エネルギー損失に関する磁気特性とは、具体的には鉄損(Pcv)である。鉄損(Pcv)は、ヒステリシス損失(Ph)と、渦電流損失(Pe)の和で表される。
特開2009−147252号公報
一般的に、軟磁性粉末の結晶構造に占める不規則構造を減らし、規則的な構造であるDO構造を増やすことで、ヒステリシス損失、ひいては鉄損を低減できるといわれている。そして、粉末を熱処理する温度を高温にすると、粉末の結晶構造に占める不規則構造の割合が減少し、DO構造が増加することが知られている。そのため、例えば900℃といった高温で粉末の熱処理を行い、ヒステリシス損失の低減を図っていた。
しかし、本発明者は、鋭意研究の結果、上記技術常識とは異なり、粉末熱処理によって一定程度不規則構造を残すことで、不規則構造を残す割合が少ない場合よりも、ヒステリシス損失、ひいては鉄損の低減を図ることができるという知見を得た。
本発明の軟磁性粉末は、FeSiAl合金粉末から成る軟磁性粉末であって、前記FeSiAl合金粉末の結晶構造には、前記結晶構造が不規則な構造となる不規則構造が含まれ、前記結晶構造に占める前記不規則構造の割合は、5.70wt%以上31.74wt%以下であること、を特徴とする。
また、本発明の軟磁性粉末の製造方法は、FeSiAl合金粉末から成る軟磁性粉末を500℃以上700℃以下で熱処理する粉末熱処理工程を有し、前記粉末熱処理工程を経たFeSiAl合金粉末の結晶構造において、前記結晶構造が不規則な構造となる不規則構造が含まれ、前記結晶構造に占める前記不規則構造の割合は、5.70wt%以上31.74wt%以下であること、を特徴とする。
また、上記軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心、当該圧粉磁心の製造方法も本発明の一態様である。
本発明によれば、ヒステリシス損失、ひいては鉄損の低減を図ることができる軟磁性粉末、この軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心、軟磁性粉末の製造方法及び圧粉磁心の製造方法を提供することにある。
本実施形態の圧粉磁心の製造工程を示すフローチャートである。 粉末熱処理温度とDO構造、B2構造及び不規則構造の割合を示すグラフである。 不規則構造の割合と鉄損Pcvの関係を示すグラフである。 不規則構造の割合とヒステリシス損失Phの関係を示すグラフである。 保磁力Hcと鉄損Pcvの関係を示すグラフである。
(実施形態)
本実施形態の圧粉磁心は、所定の温度で熱処理をした軟磁性粉末を加圧成形することで所定の形状のコアとして形成される。圧粉磁心は、リアクトルの磁性体として使用される。この圧粉磁心の製造方法について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の圧粉磁心の製造工程を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の圧粉磁心の製造方法は、(1)粉末熱処理工程、(2)絶縁処理工程、(3)潤滑剤混合工程、(4)成形工程、(5)焼鈍工程を有する。
(1)粉末熱処理工程(ステップS01)
粉末熱処理工程は、軟磁性粉末を熱処理する工程である。軟磁性粉末は、FeSiAl合金から成る。このFeSiAl合金粉末を熱処理することで、FeSiAl合金粉末の結晶構造を変化させる。
具体的には、粉末熱処理を行う前のFeSiAl合金粉末の結晶構造は、規則的な構造であるDO構造及びB2構造と、不規則的な構造である不規則構造とを有する。そして、FeSiAl合金粉末を熱処理することで、FeSiAl合金粉末の結晶構造に占める不規則構造の割合は、5.70wt%以上31.74wt%以下にする。この不規則構造の割合は、リートベルト解析法によるX線回折によって算出する。具体的には、X線回折により算出された格子定数によって判断する。格子定数が2.8〜2.9程度の場合には不規則構造と、5.7程度である場合にはB2構造及びDO構造と判断する。このように、格子定数の違いから不規則構造を検出し、FeSiAl合金粉末の結晶構造全体に占める不規則構造の割合を算出することができる。
また、不規則構造の割合は、X線回折によって検出される結晶構造の配置位置から算出することも可能である。即ち、不規則構造は、体心立方格子構造(「bcc構造」ともいう)において、Fe原子、Si原子及びAl原子が不規則に配置されている。一方、DO構造は、bcc構造において立方体形の単位格子の頂点及び体心の位置には、Fe原子のみが配置され、その他の位置にSi原子及びAl原子が不規則に配置されるのに対し、B2構造は、単位格子の頂点にはFe原子のみが配置され、体心位置及びその他の位置に、Fe原子、Si原子及びAl原子が不規則に配置される。このように結晶構造の違いから、不規則構造、B2構造及びDO構造の各構造を検出することができ、FeSiAl合金粉末の結晶構造全体に占める不規則構造の割合を算出することができる。
粉末熱処理工程では、例えば、真空雰囲気や不活性ガス雰囲気である非酸化雰囲気又は大気雰囲気中で1〜6時間加熱する。不活性ガスとしては、HやNが挙げられる。熱処理温度としては、500℃以上700℃以下が好ましい。熱処理温度をこの範囲にすることで、FeSiAl合金粉末の結晶構造に占める不規則構造の割合を、5.70wt%以上31.74wt%以下にすることができ、鉄損の低減を図ることができる。
FeSiAl合金粉末は、ガスアトマイズ粉末であることが好ましい。ガスアトマイズ粉末を用いることで、ヒステリシス損失を効果的に低減できる。また、FeSiAl合金粉末の保磁力Hcは、0.43A/cm以上1.81A/cm以下であることが好ましい。保磁力をこの範囲にすると、ヒステリシス損失の低減を図ることができる。
(2)絶縁処理工程(ステップS02)
絶縁処理工程は、FeSiAl合金粉末の表面に絶縁被膜を形成する工程である。絶縁被膜としては、シランカップリング剤、シリコーンオリゴマー、シリコーンレジンなどを用いることができる。本実施形態の絶縁処理工程では、(a)シランカップリング剤混合工程、(b)シリコーンレジン混合工程の2つの工程を有する。
(a)シランカップリング剤混合工程
シランカップリング剤混合工程では、シランカップリング剤を混合して、熱処理を行ったFeSiAl合金粉末の表面を被覆する工程である。シランカップリング剤の種類としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、イソシアヌレート系のシランカップリング剤を使用することができ、特に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが良い。
シランカップリング剤の添加量としては、軟磁性粉末に対して、0.25wt%〜1.0wt%が好ましい。シランカップリング剤の添加量をこの範囲にすることで、成形された圧粉磁心の密度の標準偏差、磁気特性、強度特性を向上させることができる。
シランカップリング剤の乾燥温度は、25℃〜200℃である。乾燥温度が25℃より低いと、溶剤が残留し被膜が不完全となる場合があるためである。一方、乾燥温度が200℃より高いと、分解が進み被膜として形成されなくなる場合があるためである。乾燥時間は、2時間程度である。
(b)シリコーンレジン混合工程
シリコーンレジン混合工程では、シランカップリング剤によって被覆されたFeSiAl合金粉末に対して、シリコーンレジンを所定量添加し、大気雰囲気中、所定の温度で乾燥させる工程である。シリコーンレジン混合工程により、シランカップリング剤による被膜の外側にシリコーンレジン層が形成される。
シリコーンレジンはシロキサン結合(Si−O−Si)を主骨格に持つ樹脂である。シリコーンレジンを用いることで可撓性に優れた被膜を形成することができる。シリコーンレジンは、メチル系、メチルフェニル系、プロピルフェニル系、エポキシ樹脂変性系、アルキッド樹脂変性系、ポリエステル樹脂変性系、ゴム系等を用いることができる。この中でも特に、メチルフェニル系のシリコーンレジンを用いた場合、加熱減量が少なく、耐熱性に優れたシリコーンレジン層を形成することができる。
シリコーンレジンの添加量は、軟磁性粉末に対して、1.0〜3.0wt%であることが好ましい。添加量が1.0wt%より少ないと絶縁被膜として機能せず、渦電流損失が増加することにより磁気特性が低下する場合があるためである。添加量が3.0wt%より多いとコアが膨張することにより成形体の密度が低下し、透磁率が低下する場合があるためである。
シリコーンレジンの乾燥温度は、100℃〜200℃が好ましい。乾燥温度が100℃より小さいと膜の形成が不完全となり、渦電流損失が高くなる場合があるためである。一方、乾燥温度200℃より大きいと粉末が無機物となりバインダとしての役割を果たさず、保形成が悪くなり、成形体の密度及び透磁率が低下する場合があるためである。乾燥時間は、2時間程度である。
(3)潤滑剤混合工程(ステップS03)
潤滑剤混合工程は、絶縁処理されたFeSiAl合金粉末に対して、潤滑剤を添加し、混合する工程である。本工程を経ることで、シリコーンレジン層の表面に潤滑剤が被覆される。潤滑剤としては、ステアリン酸及びその金属塩並びにエチレンビスステアルアミド、エチレンビスステアラマイド、エチレンビスステアレートアミドなどのワックスが使用できる。潤滑剤を混合することにより、粉末同士の滑りをよくすることができるので、成形密度を高くすることができる。さらに、成形時の上パンチの抜き圧低減、金型と粉末の接触によるコア壁面の縦筋の発生を防止することが可能である。潤滑剤の添加量は、軟磁性粉末に対して、0.1wt%〜0.6wt%程度であることが好ましい。
(4)成形工程(ステップS04)
成形工程では、表面に絶縁被膜が形成された軟磁性粉末を加圧成形することにより、成形体を形成する。成形時の圧力は10〜20ton/cmであり、平均で15ton/cm程度が好ましい。
(5)焼鈍工程(ステップS05)
焼鈍工程では、成形工程を経た成形体に対して、Nガス中又はN+Hガス非酸化性雰囲気中、大気中にて、600℃以上且つ軟磁性粉末に被覆した絶縁被膜が破壊される温度(例えば、800℃とする)以下で、熱処理を行う。この焼鈍工程を経ることで圧粉磁心が作製される。
(実施例)
本発明の実施例を表1及び図2〜図5を参照しつつ説明する。実施例1−5及び比較例1−4は、下記(1)の粉末熱処理温度のみを変えて、その他は同一の条件で作製した。
(1)平均粒子径19.8μm(メジアン径(D50))のFeSiAl合金粉末を用いた。このFeSiAl合金粉末を熱処理なし及び400℃〜1000℃の異なる熱処理温度で熱処理を行った。熱処理の条件としては、窒素雰囲気中で2時間熱処理を行った。
(2)熱処理したFeSiAl合金粉末に対して、シランカップリング剤を1.0wt%添加し、200℃で2時間乾燥した。その後、塊を解砕するため目開き250μmで篩通しを行った。
(3)シランカップリング剤を添加したFeSiAl合金粉末に対して、シリコーンレジン(メチルフェニル系)を1.5wt%添加し、150℃で2時間乾燥した。その後、塊を解砕するため目開き250μmで篩通しを行った。
(4)上記のように作製されたFeSiAl合金粉末に、潤滑剤としてエチレンビスステアルアミド(Acrawax(登録商標))を0.5wt%添加した。そして、これらを外径16.5mm、内径11.0mm、高さ5.0mmのトロイダル形状の容器に充填し、成形圧力15ton/cmで成形体を作製した。
(5)最後に、上記のように作製した成形体を750℃の温度で2時間、大気雰囲気で焼鈍処理を行い、圧粉磁心を作製した。
(測定項目)
以上のように作製した実施例1−5及び比較例1−4について、結晶構造に占めるDO構造、B2構造及び不規則構造の割合、格子定数、保磁力Hc及び鉄損Pcv(ヒステリシス損失Ph及び渦電流損失Pe)を測定した。結晶構造に占めるDO構造、B2構造及び不規則構造の各割合、格子定数、保磁力は、上記(1)の各温度で粉末熱処理を経たFeSiAl合金粉末を測定して算出した。
結晶構造に占めるDO構造、B2構造及び不規則構造の各割合及び格子定数は、X線回折によって、FeSiAl合金粉末の結晶構造評価を行って、格子定数、DO構造、B2構造及び不規則構造の割合を算出した。X線回折装置は、ブルカー社製の装置(BRUKER D2 PHASER 2nd Gen、X線:Cu−Kα線)を使用した。また、保磁力は、HCメーター(東北特殊鋼株式会社製、K−HC1000)により測定した。
一方、鉄損Pcvは、上記(1)〜(5)の工程を経た後、作製した圧粉磁心にφ0.5mmの銅線で1次巻線16ターン、2次巻線8ターンの巻線を巻回し、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY−8219)を用いて測定した。測定条件は、周波数100kHz、最大磁束密度Bm=100mTの条件下で行い、ヒステリシス損失(Ph)と渦電流損失(Pe)を算出した。この算出は、損失の周波数曲線を次の(1)〜(3)式で最小2乗法により、ヒステリシス損係数(Kh)、渦電流損係数(Ke)を算出することで行った。
Pcv =Kh×f+Ke×f・・(1)
Ph =Kh×f・・(2)
Pe =Ke×f・・(3)
Pcv:鉄損
Kh :ヒステリシス損失係数
Ke :渦電流損失係数
f :周波数
Ph :ヒステリシス損失
Pe :渦電流損失
以上の測定結果を表1及び図2−図5に示す。図2は、粉末熱処理温度とDO構造、B2構造と不規則構造の割合を示すグラフである。図3は、不規則構造の割合と鉄損Pcvの関係を示すグラフである。図4は、不規則構造の割合とヒステリシス損失Phの関係を示すグラフである。図5は、保磁力Hcと鉄損Pcvの関係を示すグラフである。
Figure 2021025083
(不規則構造と鉄損の関係)
表1及び図2に示すように、400℃で粉末熱処理を行った比較例2の粉末の結晶構造に占める不規則構造の割合は、40.13wt%で最大となり、ここから熱処理温度を高温にするにつれて、不規則構造の割合は減少している。そして、1000℃で粉末熱処理を行うと、比較例4に示すように、不規則構造の割合は、2.03wt%となり、粉末に占める不規則構造はほとんどなくなることが分かる。
従来においては、粉末の結晶構造に占める不規則構造をなくし、規則的な構造であるDO構造を増やすことで鉄損Pcvを低減できると考えられていた。そのため、粉末熱処理温度は、例えば、900℃以上といった高温で行い、粉末の結晶構造に占める不規則構造を除去していた。
しかし、表1及び図3、4に示すように、鉄損Pcvは、粉末熱処理を行っていない比較例1の330(kW/m)と比べると、熱処理温度を上げるにつれて減少する傾向にあるが、850℃以上(比較例3及び4)で粉末熱処理を行うと343(kW/m)以上となり、比較例1より鉄損が増加する。一方、500℃〜700℃の範囲で粉末熱処理を行った実施例1−5の鉄損は、比較例1−4の鉄損よりも低減している。即ち、不規則構造の割合を5.70wt%以上31.74wt%以下にした場合に、鉄損Pcvが低減する。これは、表1及び図4に示すように、実施例1−5は、渦電流損失Peは良好な数値を維持しつつ、比較例1−4と比較してヒステリシス損失Phが低減していることに起因する。
このように、本発明者らは、鋭意研究の結果、粉末の熱処理工程において、敢えて粉末の結晶構造に不規則構造を残すことで、鉄損Pcvを低減できるという従来の考えとは真逆の知見を得た。そして、上記のとおり、不規則構造の割合を5.70wt%以上31.74wt%以下すると、不規則構造の割合を5.70wt%よりも少なくした場合に比べて、鉄損Pcvが低減する。
これは、敢えて粉末の結晶構造に不規則構造を残すことで、圧粉磁心を作製する焼鈍工程時に、原子が結晶内を動きやすくなり、焼鈍することで、結晶構造が規則的な構造であるDO構造になりやすいためと推察する。一般的に、圧粉磁心を作製する場合、加圧して成形体を得るため、その加圧によって粉末の結晶構造に歪が生じ、不規則な構造となる。その後、成形体を焼鈍することで、この歪を除去して、粉末の結晶構造を規則的な構造であるDO構造に戻すことで、鉄損Pcvの低減を図っている。
従来のように、粉末熱処理工程の段階で、規則的な構造であるDO構造の割合を多くすると、加圧する方向は一方向なので、歪も加圧方向に沿って一方向に生じやすい。そのため、成形体を焼鈍する際に、原子は一方向にしか移動できず、多方向に移動できず、規則的な構造に配列しづらくなる。よって、焼鈍後の圧粉磁心の結晶構造においては、完全なDO構造にはなりにくく、鉄損の低減には限界がある。
一方、本発明のように、粉末熱処理後の時点において、敢えて不規則構造を上記の数値範囲を残すことで、成形体には加圧の際に生じる歪も多方向に生じやすい。それに加えて、不規則構造も残しているので、原子は多方向に移動することができる。そのため、焼鈍工程において成形体を焼鈍すると、原子は多方向に移動し、規則的な構造に配列しやすい。即ち、焼鈍工程を経て作製された圧粉磁心は、規則的な構造であるDO構造になりやすい。よって、ヒステリシス損失、ひいては鉄損の低減を図ることができると推察する。
(不規則構造と保磁力の関係)
表1及び図5に示すように、粉末の熱処理温度を上げると、保磁力Hcは低減する。従来は、粉末内の不規則構造の割合を減らし、保磁力Hcを減少させることで、ヒステリシス損失Phは低減すると考えられてきた。
たしかに、保磁力Hcの数値が一番高い比較例1の3.89から実施例4の0.53(A/cm)までは、鉄損は減少傾向にある。しかし、保磁力Hcが0.43(A/cm)に至ると、鉄損Pcvは増加傾向が見られ、寧ろ、保磁力Hcが低い比較例3及び4の保磁力Hcは、保磁力が最も高い比較例1よりも鉄損が増加している。
このことから、保磁力Hcを減少させるだけでは、鉄損Pcvの低減を図ることに限界があることが分かる。そして、本実施例では、保磁力Hcを0.43(A/cm)以上1.81(A/cm)以下とすることで、特に、鉄損Pcvの低減を図ることできることが示されている。
(他の実施形態)
本明細書においては、本発明に係る実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。上記のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
本実施形態では、絶縁処理工程は、(a)シランカップリング剤混合工程を有し、(a)シランカップリング剤混合工程においてシランカップリング剤を混合させたが、これに限定されない。例えば、シランカップリング剤に代えてシリコーンオリゴマーを混合させてもよい。シリコーンオリゴマーとしては、アルコキシシリル基を有し、反応性官能基を有さないメチル系、メチルフェニル系のものや、アルコキシシリル基及び反応性官能基を有するエポキシ系、エポキシメチル系、メルカプト系、メルカプトメチル系、アクリルメチル系、メタクリルメチル系、ビニルフェニル系のもの、アルコキシシリル基を有さずに、反応性官能基を有する脂環式エポキシ系のもの等を用いることができる。

Claims (6)

  1. FeSiAl合金粉末から成る軟磁性粉末であって、
    前記FeSiAl合金粉末の結晶構造には、前記結晶構造が不規則な構造となる不規則構造が含まれ、
    前記結晶構造に占める前記不規則構造の割合は、5.70wt%以上31.74wt%以下であること、
    を特徴とする軟磁性粉末。
  2. 前記FeSiAl合金粉末がガスアトマイズ粉末であること、
    を特徴とする請求項1に記載の軟磁性粉末。
  3. 保磁力が、0.43A/cm以上1.81A/cm以下であること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の軟磁性粉末。
  4. 前記1乃至3の何れかに記載された軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心。
  5. FeSiAl合金粉末から成る軟磁性粉末を500℃以上700℃以下で熱処理する粉末熱処理工程を有し、
    前記粉末熱処理工程を経たFeSiAl合金粉末の結晶構造において、前記結晶構造が不規則な構造となる不規則構造が含まれ、
    前記結晶構造に占める前記不規則構造の割合は、5.70wt%以上31.74wt%以下であること、
    を特徴とする軟磁性粉末の製造方法。
  6. 前記請求項5記載の前記軟磁性粉末によって構成された圧粉磁心の製造方法であって、
    前記粉末熱処理工程を経た前記軟磁性粉末を加圧成形して成形体を作製する成形工程と、
    前記成形体を600℃以上800℃以下で焼鈍する焼鈍工程と、
    を有すること、
    を特徴とする圧粉磁心の製造方法。
JP2019143242A 2019-03-22 2019-08-02 圧粉磁心の製造方法 Active JP7009425B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019143242A JP7009425B2 (ja) 2019-08-02 2019-08-02 圧粉磁心の製造方法
CN202010146741.6A CN111724965A (zh) 2019-03-22 2020-03-05 软磁性粉末及其制造方法、压粉磁芯及其制造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019143242A JP7009425B2 (ja) 2019-08-02 2019-08-02 圧粉磁心の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021025083A true JP2021025083A (ja) 2021-02-22
JP7009425B2 JP7009425B2 (ja) 2022-01-25

Family

ID=74662849

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019143242A Active JP7009425B2 (ja) 2019-03-22 2019-08-02 圧粉磁心の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7009425B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022201964A1 (ja) * 2021-03-26 2022-09-29 株式会社豊田自動織機 軟磁性粉末、それを含有する圧粉磁心、及び軟磁性粉末の製造方法
JP7405817B2 (ja) 2021-12-09 2023-12-26 株式会社タムラ製作所 軟磁性粉末及び圧粉磁心

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003068513A (ja) * 2001-08-30 2003-03-07 Sanyo Special Steel Co Ltd メタルコンポジットコア用軟磁性粉末
JP2003109810A (ja) * 2001-09-28 2003-04-11 Nec Tokin Corp 圧粉磁芯及びその製造方法
JP2009147252A (ja) * 2007-12-18 2009-07-02 Panasonic Corp 複合磁性材料およびその製造方法

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003068513A (ja) * 2001-08-30 2003-03-07 Sanyo Special Steel Co Ltd メタルコンポジットコア用軟磁性粉末
JP2003109810A (ja) * 2001-09-28 2003-04-11 Nec Tokin Corp 圧粉磁芯及びその製造方法
JP2009147252A (ja) * 2007-12-18 2009-07-02 Panasonic Corp 複合磁性材料およびその製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2022201964A1 (ja) * 2021-03-26 2022-09-29 株式会社豊田自動織機 軟磁性粉末、それを含有する圧粉磁心、及び軟磁性粉末の製造方法
JP7387670B2 (ja) 2021-03-26 2023-11-28 株式会社豊田中央研究所 軟磁性粉末、それを含有する圧粉磁心、及び軟磁性粉末の製造方法
JP7405817B2 (ja) 2021-12-09 2023-12-26 株式会社タムラ製作所 軟磁性粉末及び圧粉磁心

Also Published As

Publication number Publication date
JP7009425B2 (ja) 2022-01-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6471260B2 (ja) 軟磁性材料、軟磁性材料を用いた圧粉磁心、圧粉磁心を用いたリアクトル
WO2006077957A1 (ja) 軟磁性材料および圧粉磁心
JP2019151909A (ja) 軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法
JP7009425B2 (ja) 圧粉磁心の製造方法
JP2015095570A (ja) 低騒音リアクトル、圧粉磁心およびその製造方法
KR101436720B1 (ko) 압분 자심용 혼합 분말
KR20150038299A (ko) 압분자심용 철분 및 압분자심의 제조 방법
JP7079749B2 (ja) 圧粉磁心の製造方法
JP6578266B2 (ja) 軟磁性材料、軟磁性材料を用いた圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法
JP2017054910A (ja) 軟磁性金属圧粉コア
JP7307603B2 (ja) 圧粉磁心及び圧粉磁心の製造方法
JP7418194B2 (ja) 圧粉磁心の製造方法
JP2019153614A (ja) 圧粉磁心とその製造方法および磁心用粉末
JP7377076B2 (ja) 圧粉磁心の製造方法
CN111724965A (zh) 软磁性粉末及其制造方法、压粉磁芯及其制造方法
JP2021040083A (ja) 樹脂磁性コア
JP2022029569A (ja) 圧粉磁心及びその製造方法
JP6713018B2 (ja) 軟磁性材料、圧粉磁心、及び圧粉磁心の製造方法
JP7405817B2 (ja) 軟磁性粉末及び圧粉磁心
JP7405659B2 (ja) 圧粉成形体、圧粉成形体の製造方法及び圧粉磁心の製造方法、
JP7049752B2 (ja) 圧粉成形体及び圧粉磁心の製造方法
JP2023137624A (ja) 圧粉磁心用粉末、圧粉磁心用粉末の製造方法、圧粉磁心及び圧粉磁心の製造方法
JP2018190799A (ja) 軟磁性材料、軟磁性材料を用いた圧粉磁心、圧粉磁心を用いたリアクトル、及び圧粉磁心の製造方法
JP2024044605A (ja) 圧粉磁心用粉末、圧粉磁心用粉末の製造方法、圧粉磁心及び圧粉磁心の製造方法
CN114864209A (zh) 压粉磁心用粉末及压粉磁心

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200903

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210810

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20211004

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211202

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220104

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220112

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7009425

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150