JP2024044605A - 圧粉磁心用粉末、圧粉磁心用粉末の製造方法、圧粉磁心及び圧粉磁心の製造方法 - Google Patents

圧粉磁心用粉末、圧粉磁心用粉末の製造方法、圧粉磁心及び圧粉磁心の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温環境下に晒されても鉄損が増大し難い圧粉磁心用粉末、その製造方法、この圧粉磁心用粉末を用いた圧粉磁心、及びその製造方法を提供する。【解決手段】圧粉磁心用粉末は、軟磁性鉄粉末と、軟磁性鉄粉末の一部又は全部を被覆する混合層とを備える。混合層は、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとが混合されて成る。圧粉磁心は、この圧粉磁心用粉末を含む。この圧粉磁心用粉末は、軟磁性鉄粉末に、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとを同時に混合する混合工程と、混合工程の後、ジフェニルジメトキシシランの沸点より低温度下で乾燥する乾燥工程とを含む製造方法により製造される。圧粉磁心は、この圧粉磁心用粉末を加圧成型し、加圧成型工程を経た後の成型体を焼鈍することで製造される。【選択図】図1

Description

本発明は、圧粉磁心用粉末及びこの圧粉磁心用粉末を含む圧粉磁心に関する。
インダクタ又はリアクトルとも呼ばれるコイルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品である。コイルは、電力用途では特にリアクトルとも呼ばれ、ハイブリッド自動車や電気自動車、燃料電池車の駆動システム等をはじめ、OA機器、太陽光発電システム、自動車、無停電電源といった各種の分野で使用されている。
コイルには圧粉磁心のコアが多用されている。圧粉磁心は、圧粉磁心用粉末を押し固めた成型体を焼鈍したものである。圧粉磁心用粉末は、軟磁性金属の粉末である。軟磁性金属の粉末としては、鉄を主成分とするパーマロイ(Fe-Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe-Si合金)、センダスト合金(Fe-Si-Al合金)等の軟磁性鉄粉末が挙げられる。
圧粉磁心は、エネルギー交換効率の向上や低発熱などの要求から、小さな印加磁界で大きな磁束密度を得ることが出来る磁気特性と、磁束密度変化におけるエネルギー損失が小さいという磁気特性が求められる。磁束密度に関する磁気特性とは、具体的には透磁率(μ)である。エネルギー損失に関する磁気特性とは、具体的には鉄損(Pcv)である。鉄損(Pcv)は、ヒステリシス損失(Ph)と、渦電流損失(Pe)の和で表される。
ヒステリシス損失は周波数に比例し、渦電流損失は周波数の二乗に比例する。従って、高周波数領域でコイルを使用する場合には、渦電流損失がエネルギー損失に支配的に作用する。渦電流損失は、磁区幅の拡幅に伴って大きくなることが知られている。そこで、渦電流損失の低減方法の一つとして、軟磁性鉄粉末を絶縁する方法が挙げられる。軟磁性鉄粉末を絶縁層で覆うことにより軟磁性鉄粉末間が拡がり、磁区が細分化されて渦電流損失が低減する。
軟磁性鉄粉末を被覆する絶縁層にはシリコーンレジンが含有される。軟磁性鉄粉末の濡れ性を改質したり、シリコーンレジンと軟磁性鉄粉末との結合強度を上げるため、シリコーンレジンによる軟磁性鉄粉末の被覆前に、シランカップリング剤と軟磁性鉄粉末と混合及び乾燥させ、シリコーンレジンに対する下地層を形成しておく方法も提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2003-303711号公報
近年、電気部品の集積化に伴い、各電気部品の小型化が進展している。小型化された電気部品は放熱面積が下がるため、高耐熱性が要求される。軟磁性鉄粉末を被覆する絶縁層が熱劣化すると、渦電流損失低減性能が落ち、高温環境下に晒された圧粉磁心の鉄損を増大させてしまう。
本発明は、上記のような課題を解決するために提案されたものであり、本発明の目的は、高温環境下に晒されても鉄損が増大し難い圧粉磁心用粉末、その製造方法、この圧粉磁心用粉末を用いた圧粉磁心、及びその製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するため、実施形態に係る圧粉磁心用粉末は、軟磁性鉄粉末と、前記軟磁性鉄粉末の一部又は全部を被覆する、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとが混合された混合層と、を備える。
前記ジフェニルジメトキシシランは、前記軟磁性鉄粉末に対する0.20wt%以上1.5wt%以下の割合で前記混合層内に含有するようにしてもよい。
前記混合層は、前記ジフェニルジメトキシシランが前記シリコーンレジンを架橋する架橋構造を有するようにしてもよい。
これらの圧粉磁心用粉末を含む圧粉磁心も本発明の一態様である。
また、上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る圧粉磁心用粉末の製造方法は、軟磁性鉄粉末に、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとを同時に混合する混合工程と、前記混合工程の後、前記ジフェニルジメトキシシランの沸点より低温度下で乾燥する乾燥工程と、を含む。
また、上記の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る圧粉磁心の製造方法は、軟磁性鉄粉末に、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとを同時に混合する混合工程と、前記混合工程の後、前記ジフェニルジメトキシシランの沸点より低温度下で乾燥する乾燥工程と、前記乾燥工程を経た後の粉末を加圧成型する加圧成型工程と、前記加圧成型工程を経た後の成型体を焼鈍すると共に、前記ジフェニルジメトキシシランを架橋反応させる焼鈍工程と、を含む。
本発明によれば、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損の増大を抑制できる。
実施例1と比較例1及び2の鉄損劣化率を示す棒グラフである。 実施例2と比較例3及び2の鉄損劣化率を示す棒グラフである。 ジフェニルジメトキシシランの添加量と鉄損劣化率との関係を示す散布図である。 ジフェニルジメトキシシランの添加量ごとの鉄損を示す散布図である。
以下、本実施形態に係る圧粉磁心用粉末及び圧粉磁心について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
(概略構成)
圧粉磁心は、インダクタ及びリアクトルとも呼ばれるコイルのコアに用いられる磁性体である。圧粉磁心は、圧粉磁心用粉末を押し固めて構成される。この圧粉磁心用粉末は、軟磁性鉄粉末を核とする。軟磁性鉄粉末は、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとを混合した混合層で被覆される。混合層は、軟磁性鉄粉末を絶縁する絶縁層であり、絶縁処理工程によって形成される。圧粉磁心は、この圧粉磁心用粉末を所望の形状に加圧成型して成型体を形成する成型工程と、成型体を焼鈍する焼鈍工程とを経て作製される。
(軟磁性鉄粉末)
軟磁性鉄粉末は鉄を主成分とする。軟磁性鉄粉末としては、純鉄粉、鉄を主成分とするパーマロイ(Fe-Ni合金)、Si含有鉄合金(Fe-Si合金)、センダスト合金(Fe-Si-Al合金)、又はこれら2種以上の粉末の混合粉等が挙げられる。
純鉄粉は、Feを99%以上含むものである。Si含有鉄合金には、Co、Al、Cr又はMnが含まれていてもよい。パーマロイ(Fe-Ni合金)を用いる場合、Feに対するNiの比率は50:50や25:75が好ましいが、他の比率であってもよい。例えば、Fe-80Ni、Fe-36Niでもよい。FeとNiの他にSi、Cr、Mo、Cu、Nb、Ta等を含んでいても良い。
Fe-Si合金粉末は、例えば、Fe-3.5%Si合金粉末、Fe-6.5%Si合金粉末が挙げられるが、Feに対するSiの比率は、3.5%や6.5%以外であっても良い。Fe-Si-Al合金は、鉄と珪素とアルミニウムからなる三元合金であり、例えば、Feに対して、6wt%から10wt%程度のSiと、4wt%から5wt%程度のAlとを含有させているが、Feに対して1wt%から3wt%程度のNiが含まれていてもよく、更にCo、Cr又はMnが含まれていてもよい。
この軟磁性鉄粉末は、粉砕法により作製されたものでも、アトマイズ法により作製されたものでも良い。アトマイズ法は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、水ガスアトマイズ法のいずれでも良い。水アトマイズ法は、現状、もっとも入手性が良く低コストである。水アトマイズ法を使用した場合は、その粒子形状がいびつであるので、それを加圧成型した粉末成型体の機械的強度を向上させやすいため、好ましい。ガスアトマイズ法は、ヒステリシス損失を効果的に低減でき、好ましい。
軟磁性鉄粉末は、比表面積が小さいものが好ましい。つまり、球形度が高いことが好ましい。比表面積が小さいと、軟磁性鉄粉末同士の隙間が少なくなり、密度及び透磁率の向上を図ることができる。ボールミル、メカニカルアロイング、ジェットミル、アトライター又は表面改質装置を用いて表面の凹凸を均すことで、粒子の平均円形度を上昇させることができる。
軟磁性鉄粉末は、非酸化雰囲気で熱処理しておくことが好ましい。非酸化雰囲気としては、雰囲気中の酸素濃度が0.01%等の低酸素雰囲気、不活性ガス雰囲気又は還元ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスとしてはArなどの貴ガスやNが挙げられる。また、還元ガスとしてはH等が挙げられる。加熱時間は、例えば1~6時間程度である。この熱処理工程では、500℃以上700℃以下の温度環境下に軟磁性鉄粉末を晒すことが好ましい。500℃以上700℃以下の温度環境下に軟磁性鉄粉末を晒すと、ヒステリシス損失の低減効果が得られる。
(絶縁層)
絶縁層は、軟磁性鉄粉末の粒子間の電気的絶縁性を確保し、圧粉磁心の渦電流損失を低下させる。絶縁層は、バインダー作用も兼ね備え、成型時の保形性を高め、更には焼鈍後の成型体の強度をより強固なものとし、また軟磁性鉄粉末の密度を向上させ、圧粉磁心の透磁率を上げる。
絶縁層は、軟磁性鉄粉末の全表面を覆うように付着していてもよく、粉末の一部の表面を覆うように付着していてもよいし、圧粉磁心用粉末中、これらの両方の態様が混在していてもよい。また、この絶縁層を構成する絶縁樹脂の各粒子が軟磁性鉄粉末の表面に付着していてもよいし、絶縁層を構成する絶縁樹脂の凝集体が軟磁性鉄粉末の表面に付着していてもよいし、圧粉磁心用粉末中、これらの両方の態様が混在していてもよい。絶縁層を構成する絶縁樹脂の粒子や凝集体が軟磁性鉄粉末の一部表面を覆うとき、絶縁層を構成する絶縁樹脂の粒子や凝集体は、点状に分散して付着していてもよいし、塊状に分散して付着していてもよいし、これらの態様が混在していてもよい。
絶縁層にはシリコーンレジンが含有している。シリコーンレジンは、シロキサン結合(Si-O―Si)を主骨格に持つ樹脂であり、例えば脱水縮合による熱硬化により三次元網目構造を有し、可撓性に優れつつ、硬い絶縁層を形成することができる。シリコーンレジンとしては、典型的には、メチル系、メチルフェニル系、プロピルフェニル系、エポキシ樹脂変性系、アルキッド樹脂変性系、ポリエステル樹脂変性系、ゴム系等が挙げられる。シリコーンレジンとして更に好ましくはメチルフェニル系のシリコーンレジンを用いた場合、加熱減量が少なく、耐熱性に優れた絶縁層を形成することができる。
シリコーンレジンの添加量は、軟磁性鉄粉末に対して、0.6wt%以上2.5wt%以下であることが好ましく、0.8wt%以上2.0wt%以下が更に好ましい。添加量が0.6wt%より少ないと絶縁層として機能せず、渦電流損失が増加することにより磁気特性が低下し、またシリコーンレジンがバインダーとしての機能が不足し、強度の低下を招く。添加量が2.5wt%より多いと圧粉磁心の密度低下を招く。
この絶縁層には、シリコーンレジンに加えてシラン化合物が含有する。絶縁層は、シリコーンレジンとシラン化合物とが混合されて同層となった混合層である。混合層の形成のため、絶縁処理工程は、軟磁性鉄粉末とシリコーンレジンとシラン化合物とを同時に混合する混合工程を有する。絶縁処理工程中の乾燥工程へは、軟磁性鉄粉末とシリコーンレジンとシラン化合物との混合後に移る。
尚、シリコーンレジンの混合器への投入とシラン化合物の混合器への投入との間に乾燥工程が非介在であれば、その工程は同時混合に含まれる。シリコーンレジン又はシラン化合物の一方と軟磁性鉄粉末を混合し、更に他方を投入して混合し、この後に乾燥工程に移ってもよいし、シリコーンレジンとシラン化合物とを混合器に投入した後に混合処理を施し、この後に乾燥工程に移ってもよい。
ここで、シラン化合物として、ジフェニルジメトキシシランが用いられる。即ち、混合層は、シリコーンレジンとジフェニルジメトキシシランが混合した同層である。ジフェニルジメトキシシランは304℃の高沸点を有する高沸点シラン化合物である。絶縁処理工程中の乾燥工程では、混合物をジフェニルジメトキシシランの沸点以下の温度環境下で乾燥でき、ジフェニルジメトキシシランの揮発を抑制できる。
ジフェニルジメトキシシランが絶縁処理工程中の乾燥工程で揮発しなければ、圧粉磁心の成型体を焼鈍する焼鈍工程において、ジフェニルジメトキシシランの架橋反応を促進できる。そのため、シリコーンレジンの三次元網目構造には、シリコーンレジンをジフェニルジメトキシシランで架橋する架橋構造が加わる。この架橋構造の追加により、絶縁層は補強され、また絶縁層に高耐熱性が加わる。この架橋構造を実現するためにも、シラン化合物は、シリコーンレジンのメトキシ基及びフェニル基を有し、高沸点のフェニルジメトキシシランとする。
シラン化合物の層とシリコーンレジンの層とを分けると、シラン化合物の層が軟磁性鉄粉末の濡れ性を改質し、シラン化合物の層が軟磁性鉄粉末とシリコーンレジンの層の結合性を向上させる。しかし、シリコーンレジンの層を補強できず、シリコーンレジンの層の耐熱性を向上させることができない。そのため、シラン化合物はジフェニルジメトキシシランとし、シリコーンレジンと同時混合してジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとが混合した混合層を形成し、焼鈍工程でジフェニルジメトキシシランを架橋剤として機能させる。
また、絶縁処理工程中の乾燥工程でシラン化合物の架橋反応が促進されてしまうと、絶縁層の柔軟性が低下し、圧粉磁心を製造する加圧成型工程で絶縁層が損傷してしまい、圧粉磁心の渦電流損失が増加する虞がある。そこで、乾燥工程における架橋反応を抑制すべく、シラン化合物としてジフェニルジメトキシシランを用いる。
ジフェニルジメトキシシランの添加量は、軟磁性鉄粉末に対して0.20wt%以上が好ましい。0.20wt%以上になると、絶縁層の耐熱性が更に向上して、高熱に対して劣化せず、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損の増大が更に抑制される。また、ジフェニルジメトキシシランの添加量は、軟磁性鉄粉末に対して1.5wt%以下が好ましい。1.5wt%以下の範囲では、鉄損自体が低く抑えられ、且つ高温環境下において圧粉磁心の鉄損の増大が抑制される。
このように、シリコーンレジンとジフェニルジメトキシシランが混合した混合層は、耐熱性に優れ、高熱環境下においても絶縁性能の低下を抑える。そのため、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損の増大を抑えることができる。尚、乾燥温度は、120℃以上250℃以下が好ましい。乾燥時間は、例えば2時間程度である。
(圧粉磁心)
圧粉磁心は、圧粉磁心用粉末を所望の形状に加圧成型して成型体を形成する成型工程と、成型体を焼鈍する焼鈍工程とを経て作製される。成型時の圧力は7~20ton/cmであり、平均で12~15ton/cm程度が好ましい。成型工程に先立って、圧粉磁心用粉末に潤滑剤を添加する潤滑剤添加工程を経ていると、成型時の上パンチを離型させる際の抜き圧も低減し、圧粉磁心用粉末が金型への焼き付きくことも防止され、成型体の品質が向上する。また、成型工程に先立って、軟磁性鉄粉末の凝集を解消する目的で所定の目開きの篩に通しておくとよい。
潤滑剤は、軟磁性鉄粉末を被覆した絶縁層の表面を被覆する。潤滑剤としては、これに限定されないが、例えば、ステアリン酸及びその金属塩並びにエチレンビスステアルアミド、エチレンビスステアロアマイド、エチレンビスステアレートアミドなどが挙げられる。潤滑剤の添加量は、軟磁性鉄粉末に対して、0.2wt%~0.8wt%程度であることが好ましい。さらに好ましくは、潤滑剤の添加量は、軟磁性鉄粉末に対して、0.3wt%~0.6wt%程度である。この範囲にすることで、軟磁性鉄粉末間の滑りをより向上させることができる。潤滑剤は、絶縁処理工程でシラン化合物、シリコーンレジン又はこれらの複数を添加及び混合する際に用いられてもよい。
焼鈍工程では、成型工程を経た成型体を加熱して歪を除去する。また、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとの架橋反応を促進させ、ジフェニルジメトキシシランによるシリコーンレジンの架橋構造を形成する。加熱環境は、窒素ガス中、窒素と水素の混合ガス、若しくは0.01%等の低酸素雰囲気等の非酸化性雰囲気中、又は大気中であり、600℃以上且つ圧粉磁心用粉末に被覆した絶縁層が破壊される温度(例えば、800℃とする)よりも低い。
このような圧粉磁心用粉末及び圧粉磁心では、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとが混合された混合層が高耐熱性を有し、高温環境下で劣化し難くなるため、高熱に晒されることによる鉄損の増大が抑制されるものである。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
次のように、実施例1の圧粉磁心用粉末を作製し、この圧粉磁心用粉末を用いて圧粉磁心を作製した。軟磁性鉄粉末としてFe-Si合金粉末が用いられた。絶縁処理工程において、Fe-Si合金粉末に対して、0.5wt%のジフェニルジメトキシシランと、1.2wt%のシリコーンレジンを添加及び混合し、200℃の温度環境下で2時間乾燥させた。尚、ジフェニルジメトキシシランは、分子量が244.4、比重が1.08、沸点が304℃である信越化学工業株式会社製の型番KBM-202SSを用いた。
絶縁処理の後、凝集解消を目的に、圧粉磁心用粉末に篩通しを行った。そして、圧粉磁心用粉末に対して、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を0.45wt%添加及び混合した。潤滑剤を添加した圧粉磁心用粉末を金型に充填し、プレス成型を行い、外径16.5mm、内径11.0mm、高さ5.0mmのトロイダル状の成型体を得た。プレス成型の圧力は、9.5ton/cmで行った。成型体が作製された後、この成型体を5%の水素が存在する還元雰囲気下に置き、640℃で2時間焼成した。これにより、実施例1の圧粉磁心が作製された。
また、比較例1の圧粉磁心を作製した。比較例1の圧粉磁心では、ジフェニルジメトキシシランの絶縁層とシリコーンレジンの絶縁層とを別層とした。まず、Fe-Si合金粉末に対して、0.5wt%のジフェニルジメトキシシランを添加及び混合し、150℃の温度環境下で2時間乾燥させた。
ジフェニルジメトキシシランの絶縁層を軟磁性鉄粉末の表面に形成した後、シリコーンレジンの絶縁層で外殻から更に覆った。即ち、ジフェニルジメトキシシランの絶縁層の乾燥を終えた後、ジフェニルジメトキシシランの絶縁層を有する軟磁性鉄粉末に対し、1.2wt%のシリコーンレジンを添加及び混合し、200℃の温度環境下で2時間乾燥させた。
ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンを別々に混合し、絶縁層を別層とした点を除き、比較例1の圧粉磁心用粉末の製造方法、製造条件及び組成、並びに圧粉磁心の製造方法、製造条件及び組成は、実施例1と同一である。
また、比較例2の圧粉磁心を作製した。比較例2の圧粉磁心用粉末の絶縁層は、シリコーンレジンを含有し、シラン化合物は非含有とした。シラン化合物が非含有である点を除き、比較例2の圧粉磁心用粉末の製造方法、製造条件及び組成、並びに圧粉磁心の製造方法、製造条件及び組成は、実施例1と同一である。
実施例1、比較例1及び比較例2の圧粉磁心を、250℃の温度環境下に晒した。そして、この高温試験前後における圧粉磁心の鉄損(Pcv)を計測し、Pcv劣化率を計算した。高温試験前の初期の鉄損と、250℃の温度環境下に100時間晒した後の鉄損を計測した。
鉄損の測定に際しては、圧粉磁心にφ0.5mmの銅線を1次巻線として17ターン巻回し、また2次巻線として17ターン巻回した。そして、磁気計測機器であるBHアナライザ(岩通計測株式会社:SY-8219)を用いて、周波数が100kHz及び最大磁束密度Bmが100mTの測定条件にて鉄損Pcv(kW/m)の測定を行った。Pcv劣化率は、高温試験後の鉄損から高温試験前の鉄損を差し引いた差分値を、高温試験前の初期の鉄損で除算し、百分率に換算することとで算出した。
下表1は、実施例1、比較例1及び比較例2の初期の鉄損、250℃の温度環境下に100時間晒した後の鉄損、及びPcv劣化率を示している。表中、初期の鉄損は、Pcv:0hrの欄に示され、250℃の高温度環境下に100時間晒した後の鉄損は、Pcv:100hrの欄に示される。
(表1)
Figure 2024044605000002
図1は、上表1に基づく、実施例1、比較例1及び比較例2の鉄損劣化率を示す棒グラフである。表1及び図1の比較例1及び比較例2からわかるように、シリコーンレジンの絶縁層と軟磁性鉄粉末との間に、シラン化合物の絶縁層を介在させると、250℃の高温環境下に圧粉磁心を晒してもPcv劣化率を低く抑えることができる。シラン化合物の層が軟磁性鉄粉末の濡れ性を改質し、シラン化合物の層が軟磁性鉄粉末とシリコーンレジンの層の結合性を向上させているためである。しかしながら、比較例1の圧粉磁心は、鉄損の絶対値が高く、250℃の高温環境下に晒されると、鉄損の絶対値は比較例2と同等になってしまう。
一方、表1及び図1の実施例1と比較例1が示すように、実施例1は、250℃の高温環境下に晒されていてもPcv劣化率が、比較例1よりも更に低く抑えられている。しかも、実施例1の鉄損は、絶対値が低く、またPcv劣化率が低いため、250℃の高温環境下に晒された場合、比較例1との差を拡大させて良好さを維持している。このように、シラン化合物とシリコーンレジンを混合した混合層で軟磁性鉄粉末を被覆すると、絶縁層の耐熱性が向上し、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損が低く抑制されることが確認された。
更に、実施例2と比較例3の圧粉磁心を作製した。比較例3の圧粉磁心では、シリコーンレジンと共に混合層に混合されるシラン化合物が、実施例1と異なり、メチルトリメトキシシランである。メチルトリメトキシシランには、分子量が136.2、比重が0.95、沸点が102℃である旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の型番TES28を用いており、圧粉磁心用粉末の製造工程中、乾燥温度である200℃よりも沸点が低い。
実施例2と比較例3では、シラン化合物をFe-Si合金粉末に対して0.35wt%の割合で混合した。その他の圧粉磁心用粉末の製造方法、製造条件及び組成、並びに圧粉磁心の製造方法、製造条件及び組成において、実施例2と比較例3は実施例1と同一である。
実施例2、比較例2及び比較例3の圧粉磁心を、250℃の温度環境下に晒した。そして、この高温試験前後における圧粉磁心の鉄損(Pcv)を計測し、Pcv劣化率を計算した。高温試験前の初期の鉄損と、250℃の温度環境下に100時間晒した後の鉄損を計測した。鉄損の測定方法及びPcv劣化率の算出方法は、実施例1と同一である。
下表2は、実施例2、比較例2及び比較例3の初期の鉄損、250℃の温度環境下に100時間晒した後の鉄損、及びPcv劣化率を示している。表中、初期の鉄損は、Pcv:0hrの欄に示され、250℃の高温度環境下に100時間晒した後の鉄損は、Pcv:100hrの欄に示される。
(表2)
Figure 2024044605000003
図2は、上表2に基づく、実施例2、比較例3及び比較例2の鉄損劣化率を示す棒グラフである。表2及び図2の比較例2及び比較例3からわかるように、シラン化合物とシリコーンレジンを混合した混合層で軟磁性鉄粉末を被覆した場合、シラン化合物がジフェニルジメトキシシランでなければ、絶縁層の耐熱性が大きく低下してしまい、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損が著しく増大してしまうことが確認された。
一方、表2及び図2の実施例2及び比較例3からわかるように、シラン化合物がジフェニルジメトキシシランであると、絶縁層の耐熱性が向上し、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損の増大が抑制されている。総じて、シラン化合物がジフェニルジメトキシシランであり、且つジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンを混合した混合層で軟磁性鉄粉末を被覆した場合には、絶縁層の耐熱性が向上し、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損の増大が抑制されたことが確認された。
次に、ジフェニルジメトキシシランの添加量を下表3のように変化させ、各添加量における初期の鉄損、250℃の温度環境下に100時間晒した後の鉄損を計測すると共に、Pcv劣化率を計算した。シラン化合物添加量は、軟磁性鉄粉末に対する重量比である。シリコーンレジン添加量は、軟磁性鉄粉末に対する重量比である。
(表3)
Figure 2024044605000004
図3は、上表3に基づく、ジフェニルジメトキシシランの添加量ごとの鉄損劣化率を示す散布図である。また、図4は、上表3に基づく、ジフェニルジメトキシシランの添加量ごとの鉄損(図中、Pcv:0hr)を示す散布図である。表3及び図3に示すように、ジフェニルジメトキシシランの添加量が0.20wt%以上になると、Pcv劣化率が特に低くなり、絶縁層の耐熱性が向上し、高温環境下においても圧粉磁心の鉄損の増大が抑制されたことが確認された。また、表3及び図4に示すように、ジフェニルジメトキシシランの添加量が1.5wt%以下であると、鉄損自体が特に低く抑えられていることが確認された。
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施形態及び実施例は例として提示したものであって、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。上記実施形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。そして、実施形態、実施例及びその変形は本発明の範囲に含まれるものである。

Claims (6)

  1. 軟磁性鉄粉末と、
    前記軟磁性鉄粉末の一部又は全部を被覆する、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとが混合された混合層と、
    を備えること、
    を特徴とする圧粉磁心用粉末。
  2. 前記ジフェニルジメトキシシランは、前記軟磁性鉄粉末に対する0.20wt%以上1.5wt%以下の割合で前記混合層内に含有すること、
    を特徴とする請求項1記載の圧粉磁心用粉末。
  3. 前記混合層は、前記ジフェニルジメトキシシランが前記シリコーンレジンを架橋する架橋構造を有すること、
    を特徴とする請求項1記載の圧粉磁心用粉末。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載の圧粉磁心用粉末を含むこと、
    を特徴とする圧粉磁心。
  5. 軟磁性鉄粉末に、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとを同時に混合する混合工程と、
    前記混合工程の後、前記ジフェニルジメトキシシランの沸点より低温度下で乾燥する乾燥工程と、
    を含むこと、
    を特徴とする圧粉磁心用粉末の製造方法。
  6. 軟磁性鉄粉末に、ジフェニルジメトキシシランとシリコーンレジンとを同時に混合する混合工程と、
    前記混合工程の後、前記ジフェニルジメトキシシランの沸点より低温度下で乾燥する乾燥工程と、
    前記乾燥工程を経た後の粉末を加圧成型する加圧成型工程と、
    前記加圧成型工程を経た後の成型体を焼鈍すると共に、前記ジフェニルジメトキシシランを架橋反応させる焼鈍工程と、
    を含むこと、
    を特徴とする圧粉磁心の製造方法。
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