JP2019153614A - 圧粉磁心とその製造方法および磁心用粉末 - Google Patents

圧粉磁心とその製造方法および磁心用粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】低透磁率、高比抵抗(低損失)および高強度を高次元で満たす圧粉磁心が得られる製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、金型内へ充填した磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、成形工程後に得られた成形体を焼鈍する焼鈍工程とを備える圧粉磁心の製造方法である。磁心用粉末は、AlおよびSiを含む鉄合金からなる軟磁性粒子と軟磁性粒子を窒化雰囲気中または酸化雰囲気中で加熱して、軟磁性粒子の表面上に形成されたAlNまたはAl2O3からなる化合物層と化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる樹脂層とを有する被覆粒子からなる。成形工程は、磁心用粉末に潤滑剤を加えずに金型の内壁面に潤滑剤を付与して温間成形する金型潤滑温間成形法によりなされる。焼鈍工程は、成形体を700〜900℃に加熱する工程である。【選択図】図1A

Description

本発明は、所望範囲の透磁率(単に「低透磁率」という。)、高体積比抵抗値(以下単に「比抵抗」という。)および高強度を満たす圧粉磁心が得られる製造方法等に関する。
交番磁界を利用した電磁気製品は、通常、コイルと磁心(コア)を備える。磁心には、先ず、使用中の損失(以下、磁心の材質に拘らず単に「鉄損」という。)が少ないことが求められる。鉄損には、渦電流損失、ヒステリシス損失および残留損失があるが、交番磁界の周波数が高くなる程に大きくなる渦電流損失の低減が重要である。
渦電流損失を低減できる磁心として、絶縁被覆された軟磁性粒子(被覆粒子)を加圧成形した圧粉磁心が、従来の積層電磁鋼板からなる磁心に替えて多用されるようになってきた。圧粉磁心は、各軟磁性粒子間に介在する絶縁層により低鉄損化が図られている。
また、圧粉磁心は成形体からなるため形状自由度が高くて設計自由度に優れるが、信頼性の向上等を図るには高強度であることも重要である。
さらに、電気自動車やハイブリッド自動車のモータの高出力化に必要となる昇圧コンバータのリアクトルコアとして圧粉磁心を用いる場合、その磁心飽和を抑制して、昇圧に必要なインダクタンスの安定化も重要である。このような圧粉磁心では、(比)透磁率がある所定範囲内にあることが求められる。このような圧粉磁心に関連する記載が下記の特許文献にある。
特開2007−194273号公報 特開2015−220245号公報
特許文献1には、金属化合物層からなる表面をさらにシリコーン樹脂で被覆したアトマイズ純鉄粒子からなる圧粉磁心に関する記載がある。また、特許文献2には、粒子表面に窒化アルミニウムを有する水アトマイズ粉(Fe−1.5%Al)へ、シリコーン樹脂を加えて成形した圧粉磁心に関する記載がある。
しかし、それら特許文献に記載されている方法で得られる圧粉磁心では、比抵抗が不十分であり、鉄損を十分に低減できない。また、それらの特許文献では、圧粉磁心の透磁率や強度について考慮されていない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、透磁率、比抵抗(損失)および強度を高次元で満たす圧粉磁心が得られる製造方法等を提供することを目的とする。
本発明者は、この課題を解決すべく鋭意研究した結果、Fe−Si−Alからなる軟磁性粒子の表面にAlNまたはAlからなる均一的な化合物層およびシリコーン樹脂からなる樹脂層を形成した被覆粒子からなる磁心用粉末を用いて、その高密度成形体を比較的高温域で焼鈍することにより、低透磁率、高比抵抗および高強度な圧粉磁心を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《圧粉磁心の製造方法》
本発明は、金型内へ充填した磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、該成形工程後に得られた成形体を焼鈍する焼鈍工程と、を備える圧粉磁心の製造方法であって、前記磁心用粉末は、AlおよびSiを含む鉄合金からなる軟磁性粒子と該軟磁性粒子を窒化雰囲気中または酸化雰囲気中で加熱して該軟磁性粒子の表面上に形成されたAlNまたはAlからなる化合物層と該化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる樹脂層とを有する被覆粒子からなり、前記成形工程は、前記磁心用粉末に潤滑剤を加えずに前記金型の内壁面に潤滑剤を付与して温間成形する金型潤滑温間成形法によりなされ、前記焼鈍工程は、前記成形体を700〜900℃に加熱する工程である圧粉磁心の製造方法である。
本発明の製造方法によれば、高比抵抗、低透磁率および高強度を高次元で満たす圧粉磁心を得ることが可能となる。この理由は、現状、次のように推察される。先ず、本発明で用いた磁心用粉末は、Fe−Si−Al系合金(鉄合金)からなる軟磁性粒子の表面に、AlNまたはAlからなる化合物層とシリコーン樹脂からなる樹脂層を備える被覆粒子からなる。
化合物層は、AlおよびSiを含む軟磁性粒子を窒化雰囲気中または酸化雰囲気中で加熱することにより、軟磁性粒子の表面に均質的に薄く形成される。軟磁性粒子に含まれるSiが触媒的な作用をして、軟磁性粒子の表面近傍に僅かに存在するAlと雰囲気ガスとの反応を促進し、軟磁性粒子の表面にアルミニウム化合物(AlN、Al)を形成するためと考えられる。この化合物層は硬質なセラミックスからなり、成形後も各軟磁性粒子の絶縁性の安定的な維持に寄与する。
次に、化合物層はシリコーン樹脂に対する濡れ性または密着性にも優れる。このため、シリコーン樹脂は各軟磁性粒子の表面(化合物層表面)を均一的に被覆するようになり、また成形後は隣接する軟磁性粒子間(粒界)に均一的に存在するようになる。こうしてシリコーン樹脂は、軟磁性粒子間の大きな空隙(3重点)に偏析したりせず、化合物層上に均一的な樹脂層を形成するようになったと考えられる。この結果、厚さが均一的な粒界層(つまり絶縁層)が形成されるようになり、軟磁性粒子同士の直接的な接触が抑止されて、高比抵抗と低透磁率を発揮する圧粉磁心が得られるようになったと考えられる。
さらに本発明では成形体を比較的高温で焼鈍している。これにより軟磁性粒子間に均一的に存在している樹脂層は、Siの結合状態がT3構造からQ4構造となって結合力が向上し、圧粉磁心の強度を顕著に高める(参考文献:杉山昌揮,山口登士也,大河内智,岸本秀史,服部毅,齊藤貴伸:「車載リアクトルコア用高密度・低損失 圧粉磁心の開発」,素形材,Vol.51,No.12,(2010),p29)
以上のように、本発明に係る各構成要素が相乗的に作用して、高比抵抗、低透磁率および高強度を満たす圧粉磁心を得ることが可能になったと考えられる。なお、本発明の製造方法では、磁心用粉末の成形工程を内部潤滑剤を用いない金型潤滑温間成形法(参照文献:特許3309970号公報、特許4024705号公報等)により行っている。但し、内部潤滑剤を含む温間成形法(参考文献:特開2016−148100号公報等)により成形してもよい。いずれの成形方法を用いても圧粉磁心は、高密度で高磁気特性(高飽和磁束密度)を発揮し得る。
《磁心用粉末》
本発明は、上述した圧粉磁心の製造に好適な磁心用粉末としても把握できる。つまり本発明は、AlおよびSiを含む鉄合金からなる軟磁性粒子と該軟磁性粒子の表面上に形成されたAlNまたはAlからなる化合物層と該化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる樹脂層とを有する被覆粒子からなる磁心用粉末でもよい。
なお、本発明は、その磁心用粉末の製造方法としても把握できる。つまり本発明は、AlおよびSiを含む鉄合金からなる軟磁性粒子を窒化雰囲気中または酸化雰囲気中で加熱して該軟磁性粒子の表面上にAlNまたはAlからなる化合物層を形成する工程(第1被覆工程)と、該化合物層上にシリコーン樹脂からなる樹脂層を形成する工程(第2被覆工程)とを備える磁心用粉末の製造方法でもよい。
《圧粉磁心》
本発明は、上述した製造方法により得られた圧粉磁心または上述した磁心用粉末を用いて得られた圧粉磁心としても把握できる。つまり本発明は、軟磁性粒子と該軟磁性粒子の隣接間に形成される粒界層とを有する圧粉磁心であって、前記軟磁性粒子はAlおよびSiを含む鉄合金からなり、前記粒界層は前記軟磁性粒子の表面上に形成されたAlNまたはAlからなる化合物層と該化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる樹脂層とからなる圧粉磁心でもよい。
《その他》
(1)化合物層は、AlNまたはAlの完全な結晶構造からなる場合の他、不完全な結晶構造を部分的に含んでもよい。つまり、AlとNの原子比が厳密に1:1、またはAlとOの原子比が厳密に2:3でなくてもよい。化合物層の組成や構造を厳格に特定したり規定することは容易ではない。そこで本明細書では、少量の不完全な化合物(Al−N化合物層、Al−O化合物層)も含めて、単に「AlN」または「Al」という。ちなみに、化学物層がAlNのみからなる場合、絶縁性、濡れ性を損なわない範囲で、AlN以外に酸化物や窒化物を含むものでもよく、例えば、Alを含んだものでもよい。また、化合物層がAlのみからなる場合、絶縁性、濡れ性を損なわない範囲で、Al以外に窒化物や酸化物を含むものでもよく、例えば、AlNを含んだものでもよい。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
試料2の圧粉磁心の断面組織を観察した反射電子像写真である。 試料C2の圧粉磁心の断面組織を観察した反射電子像写真である。 試料2に係る圧粉磁心の粒界層近傍を観察した二次電子像写真である。 各試料の圧粉磁心に係る比抵抗とシリコーン樹脂量の関係を示すグラフである。 各試料の圧粉磁心に係る最大透磁率とシリコーン樹脂量の関係を示すグラフである。 各試料の圧粉磁心に係る圧環強度とシリコーン樹脂量の関係を示すグラフである。 各試料の圧粉磁心に係る圧環強度と最大透磁率の関係を示す散布図である。 各試料の圧粉磁心に係る圧環強度と比抵抗の関係を示す散布図である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、製造方法のみならず、圧粉磁心や磁心用粉末にも適宜該当し得る。方法に関する内容も、物に関する構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等により異なる。
《軟磁性粒子(軟磁性粉末)》
(1)組成
軟磁性粒子(軟磁性粉末)は、AlとSiを含む鉄合金(主成分がFe)からなる。Alは、軟磁性粒子の表面にAlNまたはAlからなる化合物層を形成するために必要である。鉄合金全体を100質量%(単に「%」という。)としたときに、Al:1.5〜6%、2〜5%さらには3〜4%とするとよい。Alが過少であると化合物層の形成が不十分となり、Alが過多になると薄い均質的な化合物層の形成が困難となる。
Siは、軟磁性粒子自体の保磁力の低減や比抵抗の増加に寄与して、圧粉磁心の鉄損の低減に寄与し得る。またSiは、Al化合物の形成に対して触媒的作用を発揮し、上述のようにAl含有量の少ない軟磁性粒子の表面にも、薄い均一的な化合物層の形成を可能とする。鉄合金全体を100%としたときに、Si:1〜5%、1.5〜4%さらには2〜3.5%とするとよい。Siが過少であると上述した効果が不十分となり、Siが過多になると成形性や圧粉磁心の密度が低下し得る。
AlとSiは、鉄合金全体を100%として、合計量が10%以下、8.5%以下さらには7%以下とするとよい。その合計量が過大になると、圧粉磁心の成形性や密度が低下し得る。なお、合計量は、2%以上、3%以上さらには4%以上とするとよい。
さらに、AlとSiの合計量に対するAl量の割合(Al/Al+Si)であるAl比率が0.45以上、0.50以上、0.55以上であるとよい。これにより、軟磁性粒子の表面に、Si化合物よりもAl化合物(化合物層)が優先的に形成され易くなる。
鉄合金は、上述したAlおよびSiを含み、残部がFeおよび不純物からなる他、Feの一部が他の強磁性元素(Co、Ni)や改質元素(Mn、Mo、Ti、Ni、Cr等)で少量(例えば、合計で2%以下さらには1%以下)置換されたものでもよい。
(2)形態
軟磁性粒子は、粒度が10〜300μmさらには50〜250μmであると好ましい。軟磁性粒子が過大であると比抵抗の低下または渦電流損失の増加を招く。軟磁性粒子が過小であるとヒステリシス損失の増加等を招く。
なお、本明細書でいう粒度は、特に断らない限り、所定のメッシュサイズを有する篩いを用いて分級する篩い分法により規定される。目開きがx(μm)の篩いを通過する粉末は最大粒径がxμm未満となり、「−xμm」と表示する。目開きがy(μm)の篩いを通過しない粉末は最小粒径がyμm超となり、「(+)yμm」と表示する。「y−xμm」は、目開きy(μm)の篩いを通過せず、x(μm)の篩いを通過する粒子(粉末)であることを意味する。
軟磁性粉末は、例えば、アトマイズ法により得られるが、噴霧した溶解原料の冷却媒体により、その粒形態が異なる。本発明に係る軟磁性粉末は、略球状粒子からなるガスアトマイズ粉でも、擬球状粒子からなるガス水アトマイズ粉でも、異形粒子からなる水アトマイズ粉でもよい。絶縁層の破壊抑制と粒子の絡み合いにより、高比抵抗と高強度を高次元で両立させ得るガスアトマイズ粉やガス水アトマイズ粉を用いると好ましい。なお、本発明に係る軟磁性粉末は、単種の粉末からなる場合のほか、粒度、製法、組成等の異なる複数種の粉末を混合したものでもよい。
《化合物層》
化合物層は、軟磁性粒子の表面に形成されたAlNまたはAlからなる。AlNからなる化合物層は、軟磁性粒子を窒化雰囲気中で加熱することにより形成される。具体的にいうと、例えば、窒素ガス雰囲気中で800〜1150℃さらには900〜1050℃で軟磁性粒子を加熱する窒化工程により、AlNからなる化合物層が軟磁性粒子の表面に形成される。
Alからなる化合物層は、軟磁性粒子を酸化雰囲気中で加熱することにより形成される。具体的にいうと、例えば、酸素ガス雰囲気(大気雰囲気等)中で800〜1100℃さらには900〜1050℃で軟磁性粒子を加熱する酸化工程により、Alからなる化合物層が軟磁性粒子の表面に形成される。なお、各熱処理雰囲気は、不活性ガス等で希釈して濃度調整されたものでもよい。
ちなみに、加熱時間は、各雰囲気中のガス濃度や加熱温度にも依るが、例えば、0.5〜10時間、1〜7時間さらには3〜5時間とするとよい。化合物層の厚さ(層厚)は、ガス濃度、加熱温度、加熱時間等の調整により制御し得るが、10〜500nmさらには50〜250nm程度でよい。
《樹脂層》
樹脂層は、化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる。シリコーン樹脂は、磁心用粉末または圧粉磁心の全体を100質量%(単に「%」という。)として、0.1〜4%、0.3〜3.5%、0.7〜2.5%さらに1.2〜1.8%含まれると好ましい。シリコーン樹脂が過少では、圧粉磁心の比抵抗や強度を十分に高められない。シリコーン樹脂が過多になると、圧粉磁心の密度や強度が低下し得る。
磁心用粉末中(被覆層中)の樹脂層と圧粉磁心中(粒界層中)の樹脂層は実質的に同一でもよい。もっとも、通常、圧粉磁心の樹脂層は焼鈍工程の加熱により、磁心用粉末の樹脂層よりも硬化が進行している。具体的にいうと、圧粉磁心の樹脂層は、シリコーン樹脂中の官能基が焼鈍加熱により反応して、シロキサン結合(−Si−O−Si−結合)による架橋、縮合、硬化が生じている。本発明で用いるシリコーン樹脂の官能基数に制限はないが、3または4の官能基数のシリコーン樹脂の方が、架橋密度が高くなり好ましい。本明細書では、便宜上、硬化前のシリコーン樹脂と硬化後のシリコーン樹脂(変質したものも含む)との両方を単に「シリコーン樹脂」という。
本発明に係るシリコーン樹脂は、焼鈍工程前に官能基の結合状態がT2構造またはT3構造であっても、700℃以上に加熱したときに4本の結合手全てが−O−Siとなる加熱硬化型シリコーン樹脂が好ましい。勿論、本発明に係るシリコーン樹脂は、種類、分子量、官能基が異なる2種類以上のシリコーン樹脂を適当な割合で混合したものでもよい。
樹脂層の形成は、シリコーン樹脂の態様に応じてなされるとよい。シリコーン樹脂が液状またはゾル状であれば、化合物層が形成された軟磁性粒子とシリコーン樹脂をそのまま混合、撹拌、乾燥(または加熱)等して行うことができる。シリコーン樹脂が固形または粉末状の場合、それらと化合物層が形成された軟磁性粒子とを混合、撹拌、乾燥(または加熱)等をしても良いし、(有機)溶媒に溶解させたシリコーン樹脂液と化合物層が形成された軟磁性粒子とを混合、撹拌、乾燥(または加熱)等して樹脂層を形成することが可能である。
なお、樹脂層の厚さ(層厚)は、シリコーン樹脂量により異なるが、0.3〜3μmさらには0.8〜2μm程度でよい。
《圧粉磁心の製造》
(1)成形工程
成形工程は、磁心用粉末に潤滑剤を加えずに金型の内壁面に潤滑剤を付与して温間成形する金型潤滑温間成形法(特許3309970号公報、特許4024705号公報等参照)によりなされると好ましい。
金型潤滑温間成形法によれば、金型寿命を延しつつも超高圧成形が可能となり、高密度な圧粉磁心も量産可能となる。成形圧力は、例えば、1000〜1800MPa、1250〜1700MPaさらには1400〜1600MPaとするとよい。
なお、成形温度は、金型潤滑温間成形法を行える範囲内(潤滑剤が付与された金型の内壁面で金属石鹸が生成される温度)であればよく、例えば、70℃〜200℃さらには100〜180℃とするとよい。
(2)焼鈍工程
焼鈍工程により、成形工程中に軟磁性粒子に導入された残留歪みや残留応力が除去され、圧粉磁心の保磁力低減またはヒステリシス損失低減が図られる。焼鈍工程で成形体を700℃以上に加熱することにより、樹脂層を形成していたシリコーン樹脂の硬化が進行して、強固な粒界層を有する圧粉磁心が得られるようになる。
焼鈍温度は、700〜900℃さらには730〜780℃とするとよい。焼鈍温度が過小では、圧粉磁心の強度向上やヒステリシス損失低減を十分に図れない。焼鈍温度が過大では、シリコーン樹脂がSi化合物(SiO等)に変質して、逆に、圧粉磁心の低透磁率、高比抵抗、高強度を高次元で実現できなくなる。
加熱時間は、例えば0.3〜3時間さらには0.7〜2時間程度でよい。加熱雰囲気は不活性雰囲気(窒素雰囲気を含む)で行うと好ましい。
《圧粉磁心》
(1)粒界層
本発明に係る粒界層は、AlNまたはAlからなる化合物層とシリコーン樹脂からなる樹脂層とにより形成される。それらを合計した粒界層の厚さは、例えば、0.5〜3μmさらには1〜2μm程度であると好ましい。なお、本明細書でいう各層の厚さは電子顕微鏡の観察像を画像解析した相加平均値により特定される。
(2)特性
圧粉磁心の比抵抗は、例えば、10μΩ・m以上、10μΩ・m以上、10μΩ・m以上さらには10μΩ・m以上であると好ましい。圧粉磁心の圧環強度は、例えば、40MPa以上、50MPa以上さらには60MPa以上であると好ましい。圧粉磁心の最大透磁率は、例えば、30〜220、40〜170さらには50〜150であると好ましい。
圧粉磁心の密度は、6.3〜7.5g/cmさらには6.6〜7.2g/cmであると好ましい。真密度(ρ)に対する嵩密度(ρ)の比である密度比(100×ρ/ρ)でいうなら、圧粉磁心の密度比は85%以上、90%以上さらには95%以上であると好ましい。
(3)用途
圧粉磁心は、その形態を問わず、各種の電磁機器、例えば、リアクトル、モータ、アクチュエータ、トランス、誘導加熱器(IH)、スピーカ等に利用可能である。もっとも、本発明の圧粉磁心は、低透磁率、高比抵抗および高強度を発揮し得るため、リアクトルコアの少なくとも一部に用いられると好ましい。特に、電気自動車やハイブリッド自動車のモータの高出力化に必要となる昇圧コンバータ等のリアクトルコアとして好適である。
粒界層の異なる複数の圧粉磁心を製造し、それらの特性を測定すると共にそれらの組織も観察した。これらに基づいて、本発明をより具体的に説明する。
《磁心用粉末の製造》
(1)軟磁性粒子(原料粉末)
表1に示す各組成(全体組成とAl比率)を有する鉄合金からなるガスアトマイズ粉を軟磁性粉末として用いた。各粉末の粒度も表1に併せて示した。
(2)化合物層(第1被覆工程)
軟磁性粒子の表面に、AlNまたはAlからなる化合物層を形成した。AlNからなる化合物層は、軟磁性粉末をNフロー中で加熱することにより形成した。このときの加熱温度および加熱時間は表1に併せて示した。Alからなる化合物層は、軟磁性粉末を大気中で加熱することにより形成した。このときの加熱温度および加熱時間も表1に併せて示した。
(3)樹脂層(第2被覆工程)
化合物層形成後の軟磁性粉末を入れたビーカーに、秤量したシリコーン樹脂を投入した。配合したシリコーン樹脂量も表1に併せて示した。なお、表1に示したシリコーン樹脂量は、化合物層形成後の軟磁性粉末(原料粉末100g)に対する質量割合である。また、投入前のシリコーン樹脂は粉末の状態であった。
ビーカーに入った軟磁性粉末とシリコーン樹脂を攪拌しながら130℃まで加熱し、その状態(130℃での撹拌状態)で15分間保持後、冷却を経て、樹脂層を被覆することで、流動性の良い軟磁性粒子が得られた。なお、加熱は、マントルヒータにビーカを設置して行った。
こうして化合物層および樹脂層で被覆された軟磁性粒子(被覆粒子)からなる種々の磁心用粉末(試料1〜12)を得た。
(4)比較試料(試料C1〜C12)
比較試料として、上述した化合物層または樹脂層の一方だけで被覆された軟磁性粒子からなる磁心用粉末も用意した。このとき用いた各試料に係る軟磁性粉末の組成および製造条件も表1に併せて示した。
《圧粉磁心の製造》
各種の磁心用粉末を、内壁面に潤滑剤(ステアリン酸リチウム水分散液:濃度1%)を塗布した金型へ充填し(充填工程)、金型潤滑温間高圧成形法により加圧成形した(成形工程)。このとき、金型温度:130℃、成形圧力:1568MPa(16t/cm)とした。得られたリング状の成形体(φ39mm×φ30mm×5mm)を、Nフロー下で750℃×1時間加熱した(焼鈍工程)。こうして供試材となる圧粉磁心を製造した。
《測定》
(1)密度
実測した質量と寸法(体積)に基づいて各圧粉磁心の密度(嵩密度)を求めた。
(2)比抵抗(電気特性)
各圧粉磁心について、デジタルマルチメータ(株式会社エーディーシー製R6581)を用いて4端子法(JIS K7194)により電気抵抗値を測定した。その電気抵抗値と、各圧粉磁心を採寸して求めた体積とに基づいて、各圧粉磁心の比抵抗を算出した。
(3)圧環強度
各圧粉磁心の圧環強度は、JISZ 2507に準ずる方法により測定した。
(4)最大透磁率
印加磁場:20kA/mとしたときの各圧粉磁心の磁化曲線を、直流自記磁束計(メーカ:東英工業(株)製TRF−5A−PC)により測定した。得られた磁化曲線に基づいて、初磁化曲線の最大透磁率(μmax=B/H)を求めた。本明細書では最大透磁率を単に「透磁率」ともいう。
(5)鉄損
各圧粉磁心の鉄損を、BHカーブトレーサ(岩崎通信機(株)製SY−8219)を用いて測定した。この際、最大磁束密度(Bm)=1T、周波数:800Hzとして測定した。上述した測定により得られた圧粉磁心の各特性を表1にまとめて示した。
《観察》
電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製SU3500/SEM、S−5500/FE−SEM)により、CP(クロスセクションポリッシャ)法にて研磨した各圧粉磁心の断面を観察した。この際、撮影モードは二次電子像または反射電子像とした。
《評価》
(1)圧粉磁心の断面組織
図1Aは試料2に係る圧粉磁心の断面組織を観察した反射電子像である。図1Bは試料C2に係る圧粉磁心の断面組織を観察した反射電子像である。
図1Aから明らかなように、試料2に係る圧粉磁心では、均一的な厚さの粒界層が軟磁性粒子間に形成されており、軟磁性粒子が直接的に接触(短絡)している部分は殆どないことがわかる。また、軟磁性粒子の三重点におけるシリコーン樹脂の偏析も少ない。
一方、図1Bから明らかなように、試料C2に係る圧粉磁心では、粒界層が不均一であり、軟磁性粒子間で短絡している部分が多い。また、軟磁性粒子の三重点に、シリコーン樹脂の偏析や空隙も多く観られた。
(2)粒界層
図2は、試料2に係る圧粉磁心の粒界層近傍を観察した二次電子像である。図2から明らかなように、軟磁性粒子の表面に厚さ約500nm以下の第1層が生成されていることがわかる。第1層をエネルギー分散型X線分光法(EDX)で点分析したところ、AlとNが検出された。第1層は、AlNからなる化合物層であることが確認された。
図2から明らかなように、隣接する軟磁性粒子の第1層間に,コントラストの暗い第2層が生成していることがわかる。第2層をEDXにより点分析したところ、SiとOが検出された。第2層は、シリコーン樹脂からなる樹脂層であることが確認された。
(3)各特性とシリコーン樹脂量の関係
表1に基づいて、圧粉磁心に係る比抵抗とシリコーン樹脂量の関係を図3Aに示した。図3Aから明らかなように、粒界層が化合物層(AlN層)と樹脂層からなる場合、シリコーン樹脂量が僅かでも、比抵抗が桁違いに大きくなることがわかった。逆に、樹脂層のみの場合(化合物層がない場合)、シリコーン樹脂量が少ないと、比抵抗は非常に小さくなることもわかった。
また、圧粉磁心に係る最大透磁率とシリコーン樹脂量の関係を図3Bに示した。図3Bから明らかなように、粒界層が化合物層(AlN層)と樹脂層からなる場合、シリコーン樹脂量が少なくても、透磁率が所定範囲で安定していることがわかった。逆に、樹脂層のみの場合、シリコーン樹脂量が少ないと、透磁率が非常に大きくなることもわかった。
さらに、圧粉磁心に係る圧環強度とシリコーン樹脂量の関係を図3Cに示した。図3Cから明らかなように、粒界層が化合物層(AlN層)と樹脂層からなる場合、安定した高強度が確保されることがわかった。逆に、樹脂層のみの場合、強度が低く、特にシリコーン樹脂量が多くなると、シリコーン樹脂の偏析が多くなり、軟磁性粒子の3重点、あるいは軟磁性粒子間に空隙が多く発生し、実用的な強度を確保できないこともわかった。
(4)圧環強度と透磁率・比抵抗の関係
各圧粉磁心について、最大透磁率と圧環強度の関係を図4Aに、比抵抗と圧環強度の関係を図4Bにそれぞれ示した。図4A、4Bから明らかなように、粒界層が化合物層(AlN層またはAl層)と樹脂層からなる場合、低透磁率、高比抵抗および高強度が高次元で満たされることがわかった。逆に、それ以外の場合、透磁率、比抵抗および強度を所望範囲で同時に満たす圧粉磁心が得られないこともわかった。

Claims (10)

  1. 金型内へ充填した磁心用粉末を加圧成形する成形工程と、
    該成形工程後に得られた成形体を焼鈍する焼鈍工程と、
    を備える圧粉磁心の製造方法であって、
    前記磁心用粉末は、AlおよびSiを含む鉄合金からなる軟磁性粒子と該軟磁性粒子を窒化雰囲気中または酸化雰囲気中で加熱して該軟磁性粒子の表面上に形成されたAlNまたはAlからなる化合物層と該化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる樹脂層とを有する被覆粒子からなり、
    前記成形工程は、前記磁心用粉末に潤滑剤を加えずに前記金型の内壁面に潤滑剤を付与して温間成形する金型潤滑温間成形法によりなされ、
    前記焼鈍工程は、前記成形体を700〜900℃に加熱する工程である圧粉磁心の製造方法。
  2. 前記鉄合金は、その全体を100質量%(単に「%」という。)として、AlとSiの合計量が10%以下であると共に該合計量に対するAl量の割合(Al/Al+Si)であるAl比率が0.45以上である請求項1に記載の圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記鉄合金は、Al:1.5〜6%、Si:1〜5%である請求項1または2に記載の圧粉磁心の製造方法。
  4. 前記AlNからなる化合物層は、前記軟磁性粒子を窒素ガス中で800〜1150℃で加熱する窒化工程により形成される請求項1〜3のいずれかに記載の圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記Alからなる化合物層は、前記軟磁性粒子を大気中で800〜1100℃で加熱する酸化工程により形成される請求項1〜3のいずれかに記載の圧粉磁心の製造方法。
  6. 前記シリコーン樹脂は、前記磁心用粉末全体を100質量%(単に「%」という。)として、0.1〜4%含まれる請求項1〜5のいずれかに記載の圧粉磁心の製造方法。
  7. 前記シリコーン樹脂は、前記磁心用粉末全体を100%として、0.3〜1.8%含まれる請求項6に記載の圧粉磁心の製造方法。
  8. AlおよびSiを含む鉄合金からなる軟磁性粒子と該軟磁性粒子の表面上に形成されたAlNまたはAlからなる化合物層と該化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる樹脂層とを有する被覆粒子からなる磁心用粉末。
  9. 軟磁性粒子と該軟磁性粒子の隣接間に形成される粒界層とを有する圧粉磁心であって、
    前記軟磁性粒子は、AlおよびSiを含む鉄合金からなり、
    前記粒界層は、前記軟磁性粒子の表面上に形成されたAlNまたはAlからなる化合物層と該化合物層上に形成されたシリコーン樹脂からなる樹脂層とからなる圧粉磁心。
  10. リアクトルコアを構成する請求項9に記載の圧粉磁心。
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