JP2021022662A - 量子型赤外線センサ - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、室温で動作でき、赤外線を高感度に検出できる量子型赤外線センサを提供する。【解決手段】量子型赤外線センサ1は、n型もしくはp型の何れか又は両方のドープ化合物半導体層2、3に挟まれたアンドープ化合物半導体層4を有する赤外線センサ1であって、アンドープ化合物半導体層4は、異種半導体のヘテロ接合で、ターゲットとする赤外線を吸収し得るバンドギャップのバンド内準位を形成する量子ドット領域7をヘテロ界面6に備える。そして、量子ドット領域7によって、フェルミ準位より低い伝導バンドのエネルギー準位が形成される。【選択図】図1

Description

本発明は、量子型赤外線センサに関するものである。
赤外線センサには焦電型と量子型があり、焦電型赤外線センサは熱で赤外線を感知し室温で動作できるが感度が低いという問題がある。一方、量子型赤外線センサは入射フォトン数に比例して高感度で検出できるが室温での動作が困難であるという課題がある。
量子型赤外線センサが室温で動作することが困難な主な理由としては、量子型赤外線センサでは化合物半導体結晶を用いるために、n型やp型の特性が現れるまで冷却する必要があることと、各種ノイズ成分の中で熱励起ノイズを減らす必要があることである。熱励起ノイズは、温度に対応した熱エネルギーにより価電子バンドから伝導バンドに熱的に励起されるキャリアの数の揺らぎである。熱励起ノイズは温度に対して変化するため、冷却することにより減らすことができる。
量子型赤外線センサでは、化合物半導体結晶のバンドギャップ(Eg)以上のエネルギー(hc/λ)の赤外線が照射された際に、量子ドット領域内の電子又は正孔の励起(伝導バンドに電子が励起され、価電子バンドに正孔が発生すること)によって生じ、これら電子や正孔のフォトキャリアを、バイアス電圧を印加して光電流として検出することにより赤外線を検知する。検知するターゲットの赤外線の波長域が3〜5μmの場合、バンドギャップ(Eg)が約250〜400meVである化合物半導体結晶を用いることになるが、室温300Kでの熱エネルギーが約26meVであり、価電子バンドから伝導バンドに熱的に励起されるキャリアによるノイズの影響が決して無視できず、冷却して熱エネルギーを小さくする必要がある。
近年では、量子構造の作製技術が向上し、量子ナノ構造を利用した室温で動作できる量子型赤外線センサの開発が盛んになっており、その用途は、常温で使用する環境モニタ、安全センシング、ガスセンシングなど広く応用が期待されている。
例えば、赤外線の検出感度をより向上させた量子型赤外線センサが知られている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1に開示された量子型赤外線センサでは、GaAs、AlGaAs、InGaAlAsなどの中間層と、この中間層に挟まれ、フォトキャリアに対するエネルギーポテンシャルが低いInGa1−xAs(0<x≦1)などの量子ドットを含む量子ドット層により形成される構造を有し、中間層と量子ドットを含む量子ドット層との界面の一方で、かつ、少なくとも量子ドットを覆うようにAlAs層が設けられ、量子ドットと中間層を構成する元素の相互拡散を防止して、量子ドットと中間層の界面を急峻にし、それによって赤外線の検出感度を向上するものである。通常、この量子ドットの構造は、繰り返し積層されることが好ましく、それによって光電流を積層数に応じて増大している。
また、ノイズを低減し、S/N比を向上させ信頼性の高い量子型赤外線センサが知られている(例えば特許文献2を参照)。特許文献2に開示された量子型赤外線センサでは、量子ドットを覆うように設けられた、量子ドットの下方の障壁層及び量子ドットの上方の障壁層と、下方の障壁層の更に下方に設けられた中間層を有する構造体が複数積層された構造を有し、上方の障壁層は第1領域と第2領域から成り、第2領域が中間層よりもAl濃度が低いものである。
特開2009−65142号公報 特開2019−21706号公報
上述の如く、量子型赤外線センサでは、冷却する必要があり、室温動作が困難とされていた。また、光電流を増大し感度を向上すべく、量子ドットの構造を繰り返し積層させ、赤外吸収強度を高めて感度を高めているが、実際のところ量子ドットの構造をあまり沢山積層することは困難であり、赤外吸収強度が十分確保できないといった実情がある。
かかる状況に鑑みて、本発明は、室温で動作でき、赤外線を高感度に検出できる量子型赤外線センサを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、化合物半導体のバンドギャップ内遷移のエンジニアリングを通じて、量子ナノ構造に電子のみを有効に閉じ込め、高い光学遷移確率でバンドギャップ内遷移を発生させることに成功した。そして、バンドギャップ内遷移が、近赤外から中赤外域までカバーできることを実証し、本発明を完成するに至ったものである。
本発明の量子型赤外線センサは、n型もしくはp型の何れか又は両方のドープ化合物半導体層に挟まれたアンドープ化合物半導体層を有する赤外線センサであって、アンドープ化合物半導体層は、異種半導体のヘテロ接合で、ターゲットとする赤外線を吸収し得るバンドギャップのバンド内準位を形成する量子ドット領域をヘテロ界面に備える。そして、量子ドット領域によって、フェルミ準位より低い伝導バンドのエネルギー準位が形成される。
フェルミ準位は、電子の存在する確率が50%になる場所であるが、ヘテロ界面において伝導バンドのエネルギー準位がフェルミ準位より低い場合には、ヘテロ界面に沢山の電子を溜めることができる。
ここで、フェルミ準位は、系(ドープ化合物半導体層の不純物濃度や膜厚、またそれらに挟まれたアンドープ化合物半導体層の組成や膜厚などデバイス構造)でユニークに決定されるものである。
本発明の量子型赤外線センサでは、アンドープ化合物半導体層のヘテロ界面に量子ドットがあることが重要な特徴であり、このヘテロ界面に沢山の電子を溜めることによって、高感度なセンシングを実現する。
理想的な二次元のヘテロ界面では、バンド内準位間の光学遷移は禁制であるが、ヘテロ界面に量子ドットを設けることによって、この禁制則を崩すことができる。一方、ヘテロ界面が無く、量子ドットを設けただけの構造の場合には、単純に量子ドット領域の積層数を増やさなければ、沢山の電子を溜めることができない。
なお、ヘテロ接合を構成する異なる半導体としては、II−VI族の異種化合物半導体、III−V族の異種化合物半導体、Si系、Ge系、C系などのIV族半導体が挙げられる。
また、本発明の量子型赤外線センサにおけるヘテロ接合は、ヘテロ界面を構成する異種半導体のバンドギャップの差がターゲットとする赤外線波長に対応し、かつ、ヘテロ界面に転位が発生しない組成と膜厚である。
ヘテロ接合の設計において、ヘテロ界面を構成する異種半導体のバンドギャップの差がターゲットとする赤外線波長に対応するように、異種半導体を選定する必要がある。加えて、ヘテロ界面に転位が発生しない組成と膜厚にする。ヘテロ界面に転位(結晶欠陥)が発生すると、転位によって作り出されたエネルギー準位において無輻射再結合が生じることから、これがシグナル強度の低下を生み出すことになる。なお、転位が発生しないとは、全く発生しないというのではなく、実質的に転位が発生しないという意味である。
ここで、ヘテロ界面に転位が発生するのは、ヘテロ界面を構成する異種半導体の組成による格子定数の不整合が一つの要因として挙げられるが、それだけでなく、膜厚もまた転位の発生に影響する。すなわち、格子不整合が小さいとしても、膜厚が厚いと転位が発生するし、逆に、格子不整合が大きいとしても膜厚が薄いと転位は発生しない。転位が発生する膜厚は、臨界膜厚と呼ばれ、格子不整合が大きくなるに伴って薄くなる。ヘテロ接合の設計においては、ヘテロ界面に転位が発生しない組成と膜厚にすることが重要である。
なお、膜厚を変えると、空間電荷数が変わるのでフェルミ準位も変化する。従って、ヘテロ接合を有するデバイスの設計をする上で、膜厚の制御は、歪の制御とフェルミ準位の制御の2つの面を有しており、デバイス設計ごとに膜厚の最適化を行うことが必要である。
量子型赤外線センサにおけるアンドープ化合物半導体層(以下、i層ともいう)は、n型ドープ化合物半導体層(以下、n層ともいう)とp型ドープ化合物半導体層(以下、p層ともいう)の何れかで挟まれる構造、すなわち、n層−i層−n層、p層−i層−p層、n層−i層−p層、p層−i層−n層の何れかの構造を成す。好ましくは、フェルミ準位を制御するn層にi層が挟まれる態様である。
本発明の量子型赤外線センサにおいて、量子ドット領域は、単層乃至複数層で構成され、厚みが50nm以下である。従来知られた量子型赤外線センサでは、幾層もの量子ドット領域を積層しなければ、検知感度が上がらなかったが、本発明の量子型赤外線センサでは量子ドット領域が単層であっても十分な感度が得られる。
本発明の量子型赤外線センサにおいて、ヘテロ接合は、III−V族化合物半導体で構成され、量子ドット領域はInAs,InSb,InGaAs,GaSb,Ge又はHgCdTeの何れかの量子ドットで形成されることが好ましい態様である。
本発明の量子型赤外線センサにおいて、アンドープ化合物半導体層は、具体的には、AlaGa1-aAs(0<a≦1)とGaAsのヘテロ接合であり、量子ドット領域はInAsの量子ドットで形成される。かかるアンドープ化合物半導体層の構成の場合には、ターゲットとする赤外線が1〜14μmの波長範囲である。ターゲットとする赤外線が1〜7μmの波長範囲とすることもできる。
本発明の量子型赤外線センサは、低温で動作するのみならず、室温であっても動作可能である。本発明の量子型赤外線センサでは、一つのヘテロ界面に大量の電子を溜めて、それを赤外光によって、量子ドット領域に形成されるバンド内準位に励起させることを特徴としている。そのため、いったんヘテロ界面から抜け出すと光電流として検出できる。また、バルクのヘテロ界面の状態密度は、量子ドットの状態密度に比べて桁違いに大きい。本発明の量子型赤外線センサでは、状態密度が非常に大きいヘテロ界面に蓄積できる高密度な電子を利用する。
一方、従来の量子型赤外線センサのように、ヘテロ界面の高密度な電子を利用するのではなく、通常の量子ドットを多層に積層するものでは、量子ドットの積層数に応じてバンド内準位に励起されるキャリア数は増えるが、同時に伝導方向に続いている量子ドットによる再捕獲があり、ロスが大きい構造になっている。このため、従来の量子型赤外線センサでは、室温動作における高感度の実現は困難なのである。
本発明の量子型赤外線センサを用いた撮像素子は、上述した本発明の量子型赤外線センサと、かかる赤外線センサを駆動する駆動回路を備える。
本発明の量子型赤外線センサの製造方法は、以下の1)、2)のステップを備える。
1)ヘテロ界面を構成する異種半導体のバンドギャップの差がターゲットとする赤外線波長に対応し、かつ、ヘテロ界面に転位が発生しない異種半導体の組成と膜厚を選定するステップ。
2)ターゲットとする赤外線を吸収し得るバンドギャップのバンド内準位を形成し、かつ、フェルミ準位より低い伝導バンドのエネルギー準位を形成する量子ドット領域を、ヘテロ界面に形成するステップ。
本発明の量子型赤外線センサによれば、室温で動作でき、ターゲットとする赤外線を高感度で検出できるといった効果がある。
実施例1の量子型赤外線センサの概略構成図 実施例1の量子型赤外線センサの構成説明図 実施例1の量子型赤外線センサにおけるバンド図と電界分布図 実施例1の量子型赤外線センサのヘテロ界面のバンド状態の説明図 実施例1の量子型赤外線センサのバンド状態の説明図 各種バイアス電圧の違いに伴うバンド状態の変化の説明図 赤外線センサの回路図 実施例1の量子型赤外線センサの赤外光応答スペクトル 異なるバイアス電圧を印加した際の暗電流を示すグラフ バイアス電圧の違いによる各種温度におけるΔJ/Pスペクトル 異なるバイアス電圧下での光電流(ΔI)及びΔI/Iを示すグラフ バイアス電圧下でのΔIの赤外光出力密度依存性を示すグラフ 295Kと15Kにおける赤外光応答スペクトル
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
図1は、本発明の一実施形態における量子型赤外線センサの概略構成図を示している。図1に示すように、本発明の量子型赤外線センサ1は、n型ドープ化合物半導体層2とn型ドープ化合物半導体層3と、それらに挟まれたアンドープ化合物半導体層4と、電極5を備えた構造を有する。アンドープ化合物半導体層4が、異種半導体のヘテロ接合で構成されており、ヘテロ界面6に量子ドット領域7を備えることが特徴である。n型ドープ化合物半導体層3の下部には半導体基板8があり、その下に裏面電極52がある。また、n型ドープ化合物半導体層2の上部には電極51があり、上方から入射する赤外光のエネルギーをアンドープ化合物半導体層4で変換し、光電流として検出する。
アンドープ化合物半導体層4の量子ドット領域7では、赤外光により励起された電子が、量子ドットの井戸から抜け出し、ヘテロ界面6に沢山の電子が溜まり、それらを光電流として取り出すことができる。
実施例1の赤外線センサのデバイスの具体的な構成について説明する。
実施例1の赤外線センサは、図2に示すように、n−i−n構造を有し、n型ドープ化合物半導体層2としてn−Al0.3Ga0.7As、n型ドープ化合物半導体層3としてn−GaAs、アンドープ化合物半導体層4として、Al0.3Ga0.7AsとGaAsのヘテロ接合がなされ、ヘテロ界面6にはInAsの量子ドットの量子ドット領域7が形成されている。n−i−n構造の膜厚、キャリア密度、量子ドット濃度については、図2の模式図の中に示している。n−i−n構造は、n−GaAs半導体基板8の上に順に積層されており、上面と下面には、それぞれ電極5が設けられている。実施例1では、量子ドット領域7は単層であるが、複数の量子ドット領域7が積層されるものでも構わない。
図3は、作製した赤外線センサのデバイス表面に、バイアス電圧0Vで300Kにおけるバンド図(図3a;上図)と、赤外線センサのデバイス表面に−1V、0V及び1Vのバイアス電圧を印加したときの電界分布(図3b;下部)を示している。
図3下側に示すように、ヘテロ界面付近では内部電界が強く、励起電子はAl0.3Ga0.7Asのバリア側に引き抜かれやすい。効率的なバンド内遷移は、任意の方向からの光に対する感度とヘテロ界面での三次元電子閉じ込めを有する量子ドット領域7(以下、QD層ともいう)を挿入することによって生じさせることができる。
実施例1の赤外線センサのデバイスの製造方法について説明する。
実施例1の赤外線センサのデバイスは、固体源の分子線エピタキシーを用いてn−GaAs(001)基板上に製造されたものである。まず、厚さ400nmのn−GaAs層をバッファ層として上記基板上に結晶成長させた。結晶成長中は、赤外線高温計を用いて基板温度のモニタリングを行った。その後、n−GaAs層のバッファ層の上に、アンドープ化合物半導体層として、厚さ300nmのGaAsを堆積し、QD層を形成し、さらにGaAsを10nm堆積し、厚さ20nmのAl0.3Ga0.7Asを堆積し、Al0.3Ga0.7As/GaAsのヘテロ結合の化合物半導体の構造を有する真性キャリア層を作製した。
InAsの公称厚さは0.64nm(2.1単層)であった。InAsの量子ドットを成膜する前の基板温度は550℃である。InAsのQD層とそれに続く10nmのGaAsキャッピング層を490℃で成長させた。最後に、コンタクト層として、n−Al0.3Ga0.7As、n−GaAs層を基板温度500℃で成長させた。Asフラックスのビーム換算圧力は1.15×10−3Paであった。次に、Au−Ge/Au電極を上面と下面にそれぞれ形成した。
作製した試料表面は、図3では位置=0nmとして定義され、Al0.3Ga0.7Asバリアの高さは約230meVである。正(負)のバイアスが印加されると、赤外光によって励起された電子は、n−Al0.3Ga0.7As(GaAs)側にドリフトする。ヘテロ界面(位置=400nm)では、図中の破線で示す電子のフェルミ準位(E)は、伝導バンドの底準位(E)よりも高く、これは電子が高密度で存在していることを示している。図4には、図3上側のバンド図におけるヘテロ界面(位置=400nm)の部分を拡大して示すが、量子ドット領域によって、フェルミ準位(E)より低い伝導バンドのエネルギー準位(E)が形成されている。この部分に大量に電子が溜まることになる。この位置において、バイアス電圧0Vの場合、伝導バンドの底準位(E)−電子のフェルミ準位(E)=−0.0014(eV)であり、電子のキャリア密度は、3.5×1017cm−3である。
図5は、バンド図の表示向きを変えて、模式図の位置と合せて表記したものである。ヘテロ界面(位置=400nm)にInAsの量子ドットがドープされた箇所で、急峻にバンドギャップが変化し、フェルミ準位(E)より低い伝導バンドのエネルギー準位(E)が形成されることで、このヘテロ界面にキャリア電子を大量に溜めることができるため、光電流量を増やすことができ、感度を高めることができる。
図6は、実施例1のバイアス電圧(+1V,−1V)下でのバンド状態の変化を示している。図中の破線は電子のフェルミ準位(E)を、伝導バンドの底準位(E)又は価電子バンドの準位(E)を示している。
赤外線センサのデバイスにバイアス電圧を印加し、デバイスに対して赤外線を入射させた際に発生する光電流を検出する回路について、図7に示す。デバイスから出力される光電流量を測定し、赤外線を検知する。
図8は、室温(295K)における実施例1の赤外線センサのデバイスの赤外光応答スペクトルを示す。図8からわかるように、実施例1の赤外線センサのデバイスでは、ヘテロ構造でのバンド内遷移に対応して、3μm、4.5μm、6.5μm付近に3箇所のピークがスペクトルに現れている。従来の赤外線センサの赤外光応答スペクトルの場合、1〜5μmの短波長ないし中波長の赤外線の入射による光電流量が少なかったが、実施例1の赤外線センサのデバイスの場合には、短波長ないし中波長の赤外線の入射による光電流量が約10倍に増大し、赤外線の検出感度が10倍程度向上している。
図9は、図2の模式図に示される赤外線センサのデバイスにおける15Kと290Kの異なるバイアス電圧での暗電流を示している。デバイス表面に電圧を印加すると、電子はそれぞれ正(負)のバイアスでAl0.3Ga0.7As(GaAs)側から引き出され、電流を生成する。
次に、Al0.3Ga0.7Asのバッファ層(障壁層)の電子に対する影響を確認するために、波長700〜1000nmにおける光応答の温度依存性を測定した。図10は、±1Vにおける光学応答ΔI/Pの温度依存性の結果を示す。ここで、ΔIは光電流を表し、Pは光強度を表している。この波長におけるGaAsとInAsの濡れ層の吸収端を確認できた。
すなわち、−1Vにおいて、GaAsのバンド間遷移によって励起された電子は、電界によって電極に到達する。低温では、GaAsの吸収端は比較的急峻である。温度が上昇すると、吸収端がシフトし、InAsの濡れ層に起因するギャップ以下の状態がはっきりと現れる。バイアス電圧1V、室温付近で、GaAsの吸収端が観測されるが、極低温ではそれははっきりと観測されない。このことは、GaAsで励起された電子がAl0.3Ga0.7Asの障壁によってブロックされ、したがって低温での電流のために外部に引き出すことができないことを示している。
その結果、電界によるキャリア引出しが少なくなり、ヘテロ界面に電子が高密度に分布することが予想される。160Kを超えると、GaAsの吸収端は、温度の上昇につれて徐々に現れる。いくつかの電子は熱励起の影響で取り出される。これらの結果から、本実施例の赤外線センサのデバイスのn−i−n層構造におけるAl0.3Ga0.7Asの障壁の効果と、バイアス電圧の正負を変えることによる電子の取り出し方の違いが明らかになった。
次に、バンド内遷移による赤外光のレスポンスについて説明する。
1319nmの波長を有する固体レーザーを使用してバンド内遷移を引き起こし、290Kで異なるバイアス電圧での光電流の光強度依存性を測定した結果について、図11(1)(2)の上側のグラフに示す。レーザースポットサイズは、約0.012cmであった。光電流は、正および負の両方について、光強度およびバイアス電圧の増加と共に増加した。図11(1)(2)の下側のグラフは、ΔI/Iのバイアス依存性を示している。△I/Iは全電流に対する光電流の比を表す。△I/Iは、±0.2Vにピークを有する。電圧を印加することによって、励起されたキャリア電子の引出しが増加する。
一方、ある電界を超えると、電界によるキャリア引出しによる電流が支配的になり、△I/Iが減少する。つまり、バイアス電圧±0.2Vが電界により最も効率よく励起されたキャリア電子を引き抜くことができることが示された。図12は、290Kおよび15KにおけるΔJの赤外光−励起パワー依存性を示す。励起パワーと共に増加する励起キャリア電子は、増加した電場によって効果的に引き出される。各温度における結果を比較すると、暗電流は、図9と比較して変化したが、光電流はほぼ同じであり、赤外光の照射によって観察された光電流は、熱アーチファクトによるものではないことを示している。
次に、PLスペクトルを測定し、295Kでの量子準位を計算すると、InAs量子ドットの基底準位E(=1.042eV)を基準にして、各励起準位と基底準位のエネルギー差は、E−E=65meV、E−E=128meVおよびE−E=198meVであった。
また、295Kと15Kにおける短波長赤外線(1.0〜1.8μm)および中波長赤外線(1.8〜7.0μm)に対する実施例1の赤外線センサのデバイスの赤外光応答スペクトルを図13に示す。励起用に320mmシングルモノクロメータによって分散されたSiCランプを用いた。ヘテロ構造でのバンド内遷移に対応する幾つかのピークがスペクトルに現れるため、実施例1の赤外線センサのデバイスは、室温でも中波長赤外線に非常に敏感であることがわかる。図13に示すように、295Kと15Kの何れの場合においても、3μm、4.5μm、6.5μm付近に3箇所のピークが観察された。特に、3μmと6.5μmの付近にブロードなピークが現れた。最大感度は0.62A/Wであった。3μm付近のピークは、各バイアスでの量子ドットのエネルギー準位(E、E)からAl0.3Ga0.7As(GaAs)伝導バンド端へのバンド内遷移から生じたものである。さらに、6.5μm付近のピークは、ヘテロ界面で形成された閉じ込め状態から1VでのAl0.3Ga0.7Asの伝導バンド端へのバンド内遷移から派生したものである。表面付近では、GaAs伝導バンド端をAl0.3Ga0.7Asの伝導バンド端に遷移させる。6.5μm付近のスペクトルの低下は、HOによる吸収によるものである。
本発明の赤外線センサは、高温での赤外光検出用にAl0.3Ga0.7As/GaAsのヘテロ界面に挿入された量子ドットで増感された新しいタイプの赤外光センサである。上述の光電変換特性に示すように、バイアス電圧が正か負であるかに応じて、ヘテロ構造による電子の抽出方法の違いが示される。表面に正のバイアスが印加されると、Al0.3Ga0.7Asの障壁が電子をブロックするので、電子は高密度に分布する。それ故、効率的な赤外線吸収が期待できる。また赤外光の応答測定では、295Kで約3μmと6.5μm、特に、1Vで約6.5μmの最大光学応答0.62A/Wに明確なピークが観測され、本発明の赤外線センサのAl0.3Ga0.7As/GaAsのヘテロ界面に量子ドットを挿入した構造が、室温でも動作可能で高感度な赤外線センサとして機能することが示された。
(その他の実施例)
(1)実施例1では、アンドープ化合物半導体層(i層)が、n型ドープ化合物半導体層(n層)に挟まれたn−i−nの構成であるが、これに限定されるものではなく、i型層がp型ドープ化合物半導体層(p層)に挟まれるp−i−pの構成、又は、赤外線の入射方向から順に、n層、i層、p層のn−i−pの構成、或は、p層、i層、n層のp−i−nの構成であっても構わない。
(2)実施例1では、ヘテロ界面の量子ドット領域は単層であるが、複数の量子ドット領域7を積層し多層にすることができる。
(3)実施例1では、ヘテロ界面にInAsの量子ドットを形成したが、他のナローバンドギャップ半導体のInSb、InAsSb、GaSb、Ge又はHgCdTeの量子ドットを形成することができる。
(4)実施例1では、アンドープ化合物半導体層(i層)として、AlGaAs/GaAsのヘテロ接合を用いたが、他のIII−V族の半導体、又は、II−VI族の半導体、Si系、Ge系、C系などのIV族半導体を用いることができる。
本発明は、室温動作の量子型赤外線センサとして有用である。室温において高感度な量子型赤外線センサが実用化すれば、これまで広く用いられている低感度で応答速度の遅い焦電型センサに置き換わり、大きな市場変化が生じると期待できる。
1 量子型赤外線センサ
2 n型ドープ化合物半導体層(表面側)
3 n型ドープ化合物半導体層
4 アンドープ化合物半導体層
5,51,52 電極
6 ヘテロ界面
7 量子ドット領域
8 半導体基板

Claims (9)

  1. n型もしくはp型の何れか又は両方のドープ化合物半導体層に挟まれたアンドープ化合物半導体層を有する赤外線センサであって、
    前記アンドープ化合物半導体層は、異種半導体のヘテロ接合で、ターゲットとする赤外線を吸収し得るバンドギャップのバンド内準位を形成する量子ドット領域をヘテロ界面に備え、
    前記量子ドット領域によって、フェルミ準位より低い伝導バンドのエネルギー準位が形成されたことを特徴とする量子型赤外線センサ。
  2. 前記ヘテロ接合は、前記ヘテロ界面を構成する異種半導体のバンドギャップの差が前記ターゲットとする赤外線波長に対応し、かつ、前記ヘテロ界面に転位が発生しない組成と膜厚であることを特徴とする請求項1に記載の量子型赤外線センサ。
  3. 前記アンドープ化合物半導体層は、前記フェルミ準位を制御するn型ドープ化合物半導体層に挟まれたことを特徴とする請求項1又は2に記載の量子型赤外線センサ。
  4. 前記量子ドット領域は、単層乃至複数層で構成され、厚みが50nm以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の量子型赤外線センサ。
  5. 前記ヘテロ接合は、III−V族化合物半導体で構成され、
    前記量子ドット領域はInAs,InSb,InGaAs,GaSb,Ge又はHgCdTeの何れかの量子ドットで形成されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の量子型赤外線センサ。
  6. 前記アンドープ化合物半導体層は、AlaGa1-aAs(0<a≦1)とGaAsのヘテロ接合で、前記量子ドット領域はInAsの量子ドットで形成され、前記ターゲットとする赤外線が1〜14μmの波長範囲であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の量子型赤外線センサ。
  7. 室温で動作可能であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の量子型赤外線センサ。
  8. 請求項1〜7の何れかの量子型赤外線センサと、前記赤外線センサを駆動する駆動回路を備えたことを特徴とする量子型赤外線センサを用いた撮像素子。
  9. 請求項1〜7の何れかの量子型赤外線センサの製造方法であって、
    前記ヘテロ界面を構成する異種半導体のバンドギャップの差が前記ターゲットとする赤外線波長に対応し、かつ、前記ヘテロ界面に転位が発生しない異種半導体の組成と膜厚を選定するステップと、
    前記ターゲットとする赤外線を吸収し得るバンドギャップのバンド内準位を形成し、かつ、フェルミ準位より低い伝導バンドのエネルギー準位を形成する量子ドット領域を、前記ヘテロ界面に形成するステップ、
    を備えたことを特徴とする量子型赤外線センサの製造方法。
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