JP2021018158A - シグマ相の観察方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステンレス鋼のクリープ破壊の余寿命を評価するための、エッチングとレプリカによるシグマ相の観察方法を提供する。【解決手段】ステンレス鋼100におけるシグマ相102の観察方法であって、ステンレス鋼100を研磨し、研磨した箇所をシュウ酸水溶液を用いて電解エッチングし、エッチングした表面からレプリカ200を採取し、レプリカ200を光学的に観察して、シグマ相202の析出量を測定することを特徴とする。【選択図】図2
Description
本発明は、ステンレス鋼のクリープ破壊の余寿命を評価するためのエッチングとレプリカによるシグマ相の観察方法に関する。
火力発電ボイラにおいて、高温部の過熱器管や再熱器管には耐熱用ステンレス鋼が用いられる。このステンレス鋼は使用中に経年劣化するため、クリープ破壊の余寿命評価が求められる。経年劣化は温度・応力に依存するため、管の温度を推定する必要がある。管の温度は高温下で素材中に析出するシグマ相との相関が指摘されている。
従来は、主に金属片を切断してサンプルを採取し、そのシグマ相の析出量(例えば、面積率や粒子径)を測定することで、温度を推定や寿命評価がなされてきた。しかし、この試験は破壊試験であるため、抜管等を実施した後に補修作業が必要となり、工期やコストがかさむ。
シグマ相を観察するための代表的なエッチング液として、水酸化ナトリウム水溶液などがある。現出した鋼材の金属組織を顕微鏡によって観察し、微細組織の面積率、粒径などを調査する。特許文献1には、ナイタール液(1〜5%硝酸エタノール溶液)などを用いてエッチングし、現出した鋼材の金属組織を顕微鏡によって観察し、微細組織の面積率、粒径などを調査することが記載されている。
エッチングした後は、光学顕微鏡によって直接観察する方法もあるが、対象物を設置したまま現地に光学顕微鏡を持ち込むことは難しい。そこでレプリカ(フィルム)に金属組織を転写して観察することが行われている。
しかしながら、レプリカでは色による析出物の識別はできず、析出物が溶けて消失して大きな穴となった場合やエッチングによる凹凸の差が小さい場合は像がぼやけて観察が困難となる。さらに、シグマ相と、粒界炭化物など複数の析出相が混在する場合、区別がつきにくく、精度よくシグマ相を測定することが困難であった。例えば、火SUS304J1HTB鋼では、ニオブ系析出物はシグマ相と形状や大きさが似ているため、誤認しやすい。非破壊検査であるエッチングおよびレプリカ法でシグマ相を精度よく測定することができれば、サンプル採取に伴う補修等が必要なくなり、現場での評価も可能となる。
本発明は、このような課題に鑑み、ステンレス鋼のクリープ破壊の余寿命を評価するためのエッチングとレプリカによるシグマ相の観察方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるシグマ相の観察方法の代表的な構成は、ステンレス鋼におけるシグマ相の観察方法であって、ステンレス鋼を研磨し、研磨した箇所をシュウ酸水溶液を用いて電解エッチングし、エッチングした表面からレプリカを採取し、レプリカを光学的に観察してシグマ相の析出量を測定することを特徴とする。
上記構成によれば、シグマ相と形状が似ているニオブ系析出物は溶解せず、誤認せずに測定が可能である。また、粒界炭化物も殆ど変化せず、レプリカで観察されないため誤認されない。したがって、非破壊検査であるエッチングおよびレプリカ法でシグマ相を精度よく測定することが可能となる。
電解エッチングは、10%シュウ酸水溶液を用いて、1.5〜2Vで1秒から65秒で行うことが好ましい。
本発明にかかるシグマ相の観察方法によれば、非破壊検査であるエッチングおよびレプリカ法でシグマ相を精度よく測定することが可能となる。したがって火力発電ボイラ等においてサンプル採取に伴う補修を必要とすることなく、ステンレス鋼のクリープ破壊の余寿命を評価することが可能となる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
本発明にかかるシグマ相の観察方法は、例えば火力発電ボイラの高温部の過熱器管や再熱器管に用いられる耐熱用ステンレス鋼のような、ステンレス鋼に適用される。このようなステンレス鋼のクリープ破壊の余寿命評価のために、析出されたシグマ相を測定する。
まず、対象となるステンレス鋼の表面を研磨する。できる限り精密に、鏡面研磨することが望ましい。
図1は火SUS304J1HTBステンレス鋼を例として、エッチングの様子を示す図であり、図1(a)はエッチング前のステンレス鋼100の表面の電子顕微鏡写真であり、図1(b)はエッチング後の電子顕微鏡写真である。エッチングは、10%シュウ酸水溶液を用いて、1.5〜2Vで1秒から65秒の範囲で電解エッチングを行った。エッチング時間については、顕微鏡等でエッチングの程度を観察しつつ、時間を調整することが好ましい。
図1(a)では、シグマ相102、ニオブ系析出物104、Cu系析出物106、連なった粒界炭化物108が観察される。これに対しエッチング後のステンレス鋼100においては、図1(b)に示すように、エッチングによってシグマ相102とCu系析出物106が優先的に溶解し、その境界が顕著となっている。また、粒界炭化物108は、エッチング後のステンレス鋼100においては観察されない。
次にエッチング後の表面のレプリカを採取し、シグマ相を観察・測定する。レプリカの採取は周知の方法を採用することができる。周知のレプリカ採取方法は、例えば、エッチング処理された対象部位表面にアセトンなどを滴下し、直ちにアセチルセルロースフィルムを貼り付ける。乾燥した後に、アセチルセルロースフィルムを静かに剥がし取り、ガラス板などにセロハンテープなどを用いて固定する。
図2は金属面とレプリカの光学顕微鏡写真であり、図2(a)は金属面の組織の光学顕微鏡写真、図2(b)はレプリカ上の組織の光学顕微鏡写真である。図2(a)と図2(b)は同じ視野であるが、鏡面対象の写真である。図2(a)は図1(b)と同等の写真であり、縮尺が異なっている。
図2(a)を参照すると、ステンレス鋼100の上には、シグマ相102が黒い輪郭となって表れている。またニオブ系析出物104が橙色に表れたり、線状にみえる析出物110が観察される。このように、上記エッチング法では、シグマ相と形状が似ているニオブ系析出物は溶解しない。粒界炭化物108は組織として観察されず、Cu系析出物はサイズが小さいため、光学顕微鏡レベルでは殆ど無視できる。
このため、図2(b)に示されるレプリカ200の上では、シグマ相202は観察されるが、ニオブ系析出物や粒界析出物は観察されない。したがってシグマ相202だけを測定することが可能である。なお、一部にこれら以外の線状にみえる析出物210が観察されるが、シグマ相202とは明らかに形状が異なるために容易に区別することができる。
図3はレプリカ200に転写されたシグマ相202の面積を測定する例を示す。図3の光学顕微鏡写真で付した数字は、シグマ相202とみられる領域のインデックス(ナンバリング)である。このように領域を特定し、各領域の面積を測定・積算することにより、ステンレス鋼の劣化の程度、すなわちクリープ破壊の余寿命を評価することができる。
このように、本発明にかかるシグマ相の観察方法によれば、非破壊検査であるエッチングおよびレプリカ法でシグマ相を精度よく測定することが可能となる。これは、エッチングにおいてシグマ相を優先的に溶解させることができるためである。したがって火力発電ボイラ等においてサンプル採取に伴う補修を必要とすることなく、ステンレス鋼のクリープ破壊の余寿命を評価することが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、ステンレス鋼のクリープ破壊の余寿命を評価するためのエッチングとレプリカによるシグマ相の観察方法として利用することができる。
100…ステンレス鋼、102…シグマ相、104…ニオブ系析出物、106…Cu系析出物、108…粒界炭化物、110…線状にみえる析出物、200…レプリカ、202…シグマ相、210…線状にみえる析出物
Claims (2)
- ステンレス鋼におけるシグマ相の観察方法であって、
ステンレス鋼を研磨し、
研磨した箇所をシュウ酸水溶液を用いて電解エッチングし、
エッチングした表面からレプリカを採取し、
前記レプリカを光学的に観察してシグマ相の析出量を測定することを特徴とするシグマ相の観察方法。 - 前記電解エッチングは、10%シュウ酸水溶液を用いて、1.5〜2Vで1秒から65秒で行うことを特徴とする請求項1に記載のシグマ相の観察方法。
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