JP2014038078A - ステンレス鋼のl材と非l材との非破壊的簡易判別方法 - Google Patents

ステンレス鋼のl材と非l材との非破壊的簡易判別方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性が要求される各種部材に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼が塩素イオンなどのハロゲン元素で腐食トラブルを起した場合、或は、L規格材と非L規格材との判別が必要な場合には、簡易的でしかも精度の高い非破壊的な判別法が要求されるが、ここでは、その手法を提供するものである。
【解決手段】オーステナイト系ステンレス鋼に対してガスバーナーの火焔或はTIG溶接機などの電気的アーク焔を用いて、その表面を極部集中的に加熱することで非L材特有の鋭敏化現象を発生させ、この鋭敏化部を電解研磨及び電解腐食により、主として白色のリング状模様として出現させることにより、L規格材と非L規格材を判別する。
【選択図】図2

Description

本発明は、耐食性が要求される機器、例えば、化学プラントや各種産業用の容器や配管などに使用されているオーステナイト系ステンレス鋼で、化学成分は類似し、炭素含有量が微少に異なるステンレス鋼、例えばSUS304とSUS304L、また、SUS316とSUS316Lの如きL規格材と非L規格材との判別を非破壊的に実施し得る簡易判別法に関するものである。
ステンレス鋼部材が塩素イオンなどのハロゲン元素に起因する腐食現象を起した場合、或は、事前にその発生を防ぐ為にはL規格材と非L規格材との判別を正確に実施する必要がある。
L規格材と非L規格材との化学成分の大きな違いは炭素量である(L規格材:0.03%以下、非L規格材:0.08%以下)ことから、従来は、含有炭素量を重量法、容量法などの化学的分析法により定量化してL規格材と非L規格材の判別を行っていた。しかしながら、その分析に当っては、専門知識と特殊な分析装置とを必要とするとともに分析にも長時間を要し、更には被検体を非破壊的に分析することは不可能であった。
また、この手法以外にも磁気誘導法、電気抵抗法、接触起電力法あるいは火花検査法などがあるが、これらは何れの方法とも、物理的な現象を測定してL規格材か非L規格材かを判定するものであり、測定誤差が多く、正確な判定が困難な状況にあった。
本発明者は、従来法の欠点に鑑み種々研究を行って、「鉄鋼中炭素簡易定量法」特許第418868号を提案した。この発明の要旨とするところは、鉄鋼材料被検体の表面を直接陽極とし、これと電導性物質(陰極)との間の電解質溶液(例えば、硝酸塩など)を介して電解反応を起こさせ、陽極(被検体)から溶出したニトロ化合物(黄色乃至黄褐色を呈す)の色調を既知の標準色または標準試料などと比色することにより、鉄鋼材料被検体中に存在する炭素量を極めて簡易な装置にて迅速・正確かつ被検体を非破壊的に定量し得る方法である。しかしながら、ステンレス鋼の如く、含有炭素量が0.1%以下の鋼種では発色濃度が低くなることやステンレス鋼中のクロムイオンが妨害することから、ステンレス鋼には適用不可能であった。
更に、本発明者は、炭素含有量が0.1%以下で、かつその含有量差が非常に小さいステンレス鋼(L規格と非L規格材)について研究を行った結果、非破壊的にこれらを判別する方法を開発し、「ステンレス鋼L規格材の非破壊的簡易鑑別法」の名称のもとに特公平7−26935を取得した。この発明の要旨とするところは、ステンレス鋼被検体を所定の温度(結晶粒界にクローム炭化物を析出する温度:600〜800℃)に加熱した後、加熱部と非加熱部の自然発生電位の差を測定することにより、その差が零か若しくは殆ど零に近い場合は、L規格材であると判別する方法である。即ち、非L規格材では、500〜800℃に加熱した場合には結晶粒界にクローム炭化物が析出し、その周囲にフェライトが形成される。一方、L規格材においては、600〜800℃に加熱した場合においても、クローム炭化物の析出はなく、従って、フェライト形成もなく、均一なオーステナイト単相の組織状態となることに起因したものであることを付記しておく。このように本発明は非破壊的にL規格材と非L規格材を非破壊的に判別できるため、産業上有益な判別法であるが、大型装置への適用を考えた場合、600〜800℃に加熱することが難しいこと、更に溶接・溶断部位への適用においては、被検体の板厚、溶接(溶断)入熱などとの関連において、クローム炭化物の析出位置が変化すること、入熱次第ではクローム炭化物の析出がないことも考えられるなど、若干の問題があり、更に高精度な判別法の開発が強く要望されている状況にある。
特許第418868号 特公平7−26935
特許文献1では、既述したように従来法の欠点に鑑み鉄鋼材料被検体の電解反応にて被検体から溶出したニトロ化合物の色調を既知含有炭素量標準色または標準色と比色することにより被検体の炭素量を非破壊的に定量する工業的にも有用な方法を提案したが、ステンレス鋼の如く含有炭素量が0.1%以下の鋼種では発色濃度の関連からL材及び非L材の鑑別の精度が低下する懸念があった。特許文献2では、この問題点を解決するために種々研究を行い、含有炭素量が0.1%以下で、かつその含有量の相違が極微量なステンレス鋼(L材:0.03%以下、非L材:0.08%以下)の判別法として、L材と比較して、非L材が鋭敏化現象(600〜800℃に加熱した場合に結晶粒界にクローム炭化物ならびにその近傍にフェライトを析出しやすい)を起しやすいことに着目し、加熱部と非加熱部の自然発生電位を測定することで、その電位の差が零若しくは零に近い場合はL材と判別する工業上有効な方法を提案した。しかしながら、大型装置への適用、または、溶接・溶断部位への適用について、既述した如く若干の問題があり、更に高精度な判別法が要望されている。
本発明は、上記のような課題を解決するため、本出願人が提案した特許文献2を基本に種々研究を行った結果、600℃乃至はそれ以上に加熱保持する特定の加熱方法により、非L規格材のみが結晶粒界にクローム炭化物が析出する鋭敏化現象を発生し、L規格材は全く発生しないことを明らかにし、これを特定の電解研磨液及び特定の電解腐食液にて出現させることにより、L規格材及び非L規格材を判別する非破壊的簡易判別方法を提供するものである。
上記の目的を達成するため請求項1記載の発明は、被検体であるステンレス鋼表面に対し、ガスバーナーの火焔若しくはTIG溶接などの電気的アーク焔を局部的に吹き付けて、該部分の温度が好ましくは約600℃乃至はそれ以上に所定時間加熱保持する第1工程と、続いて該ステンレス鋼が直流電源か若しくは交直重乗電源の直流側に接続した状態で、燐酸の水溶液などのようにステンレス鋼に対して研磨効果を伴う溶液を用い、該ステンレス鋼に対峙させた陰極との間に通電処理して、電解焼け取りと電解研磨を伴う処理を施す第2工程、更に引続き該電解液を蓚酸などのようにステンレス鋼に対して腐食効果を伴う水溶液に代えて通電してエッチング処理を施す第3工程よりなり、非L材の場合には第1工程において生成する通称熱影響部(HAZ)が鋭敏化しているため、優先的に腐食乃至は粒界腐食割れ現象を生起し、主にリング状の輪を生じるが、炭素量の低いL材は全く変化しない外観変化の違いから鑑査することを特徴とするステンレス鋼のL材、非L材を非破壊的に判別することにある。
請求項1記載の発明によれば、本発明は、海水あるいは塩素イオンなどのハロゲン元素への耐食性が要求される機器、例えば化学プラントや各種機器の容器や配管に適用されているオーステナイト系ステンレス鋼、即ち、含有炭素量の低いL規格材ならびに含有炭素量の多い非L規格材に対して、一般的に使用されているガスバーナーの火焔若しくはTIG溶接などの電気的アーク焔を局部集中的に吹き付け、更に加熱された当該部分の熱影響部(HAZ)について電解処理を行うという極めて簡単な手法により、L材、非L材を非破壊的にかつ正確に判別することを可能としており工業的にも非常に価値あるものである。
オーステナイト系ステンレス鋼は、その表面に数十Å程度の不動態皮膜が形成されることから、耐食性に優れた鋼種であり、このことから耐食性が要求される各種部位に使われる。代表的鋼種は含有炭素量の少ないL規格材(SUS304L、SUS316L)及び含有炭素量の多い非L規格材(SUS304、SUS316)であり、溶接の有無、腐食環境の厳しさあるいは過去の腐食事例などを総合的に考慮して鋼種が選択される場合が多い。一方、実機に使用されていたステンレス鋼部材が何らかの原因により腐食トラブルを生じた場合やステンレス鋼素材の性状を正確に判断する場合、何らかの手法で判別する必要があるが、従来の方法では充分満足すべき結果は得られていない。これに対し本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼特有の鋭敏化現象、即ち、600℃近傍の温度領域に加熱保持した際に、加熱温度と保持時間で表示される鋭敏化線図に従って、含有炭素量が多い場合には比較的容易に結晶粒界にクローム炭化物が発生し、その周囲にフェライトが生起するが、含有炭素量が少ない場合にはこの現象が起こり難いというオーステナイト系ステンレス鋼特有あるいは材料の本質とも言える部分をついたものであり、従来の判別法に比べて精度的に格段に優位なものである。
本発明の加熱試験に係るガスバーナー及びTIG溶接機による加熱要領を撮影した写真である。 本発明の焼け取り、電解研磨及び電解腐食に係る鋭敏化調査要領を撮影した写真である。 本発明の実施例1に係る加熱試験後に板厚1mmの被検体の焼け取り、電解研磨・電解腐食後の鋭敏化発生状況を撮影した写真である。 本発明の実施例2に係る加熱試験後に板厚3mmの被検体の焼け取り、電解研磨・電解腐食後の鋭敏化発生状況を撮影した写真である。 本発明の実施例3に係る加熱試験後に板厚3mmの被検体の焼け取り、電解研磨・電解腐食後の鋭敏化発生状況を撮影した写真である 本発明の実施例4に係る加熱試験後に板厚1mmの被検体の焼け取り、電解研磨・電解腐食後の鋭敏化発生状況を撮影した写真である。 本発明の実施例5に係る加熱試験後に板厚3mmの焼け取り、電解研磨・電解腐食後の鋭敏化発生状況を撮影した写真である。 本発明の実施例6に係る加熱試験後に板厚5mmの焼け取り、電解研磨・電解腐食後の鋭敏化発生状況を撮影した写真である。 本発明の実施例7に係る加熱試験後に板厚10mmの焼け取り、電解研磨・電解腐食後の鋭敏化発生状況を撮影した写真である。
本発明は、ガスバーナーの火焔若しくはTIG溶接などの電気的アーク焔をステンレス鋼表面に比較的短時間集中的に吹きつけて、当該部分を通常の手法(機械研磨、アルミナ表面研磨に王水にてエッチング)にて組織観察を行った際、非L規格材の熱影響部のみにクローム炭化物析出による鋭敏化現象が発生し、L規格材ではこの現象が全く発生しないことが判明したことを基本として、本発明が提案する含有炭素量の低いL規格材(C:0.03%以下)及び含有炭素量の多い非L規格材(C:0.08%以下)の非破壊的な簡易判別法を見出したものである。
本発明の第1工程である約600℃乃至はそれ以上に所定時間加熱保持する工程に関して、ガスバーナーの火焔によるステンレス鋼表面の加熱には、主として、市販のガスバーナー(外形寸法:長さ223×幅55×径φ30mm、火焔の最高温度:2000℃、ガス:LPG可燃性ガス)を用い、電気的アーク焔による加熱には市販のアルゴンガスTIG溶接機(トーチ形状:70°アングル型、最大使用電流:200A)を用いた。被検体の形状は、基本的には50mm幅×100mm長さとし、板厚の影響を明らかにするため、板厚は1mm、3mm、5mm及び10mmの4種のステンレス鋼素材を用い、L規格材としては、SUS304L及びSUS316Lの2種、比較のための非L規格材としては、SUS304及びSUS316の2種とした。更に加熱時間は作業効率の観点から、いずれの加熱方法ともに数分以内を目標としたが、ガスバーナーでの加熱時間は、被検体の板厚が1〜5mmの場合は、1〜2分、10mmでは3分程度が良いことが確認された。一方、TIG溶接機での加熱の場合は、同様に作業効率の観点から数分以内の加熱を目処としたが、すべての板厚において、1分の加熱で充分であることが確認された。図1にガスバーナー及びTIG溶接機を用いた被検体の加熱状況を示す。
本発明の第2工程で既述したが、ガスバーナーの火焔若しくはアルゴンガスTIG溶接機にて加熱処理した被検体表面には酸化皮膜が形成されているため、被検体を直流電源か若しくは交直乗重電源の陽極側にセットした状態で被検体に対峙させた陰極との間に通電処理して電解焼け取りと次に電解研磨効果を伴う電解液にて電解研磨を実施した。電解焼け取りには、硫酸ナトリウムを主体とした電解液を用い、被検体表面の酸化皮膜部を20〜30秒間通電処理しながら焼け取りを行った。焼け取り後は、被検体表面に対し、リン酸を主体とした電解液を用いて電解研磨処理を行った。加熱処理による鋭敏化の有無を明らかにするためには、表面の状態にもよるが数分間程度の電解研磨が必要とされる。上記加熱処理にて鋭敏化現象が発生していれば、結晶粒界にクローム炭化物とその周囲にフェライトが析出しているため、電解研磨を行っている際、鋭敏化部位において優先的に腐食現象が生じて、これらの部位の色調が白っぽい領域として出現することが明らかになった。
本発明の第3工程では、電解研磨により白っぽい領域として出現した部位を更に明確に際立たせるために、蓚酸などのようにステンレス鋼に対して腐食効果を伴う水溶液を用いて、被検体を上記と同様に直流電源か若しくは交直重乗電源の陽極側にセットした状態で被検体に対峙させた陰極との間に対して通電処理を行った。通常は、約10%蓚酸水溶液にて10秒以内の電解腐食処理でよく、電解研磨処理にて出現した白っぽい鋭敏化部位は、更に優先的に腐食ないしは粒界腐食割れ現象が加速されて明確な白色領域として出現する。一方、含有炭素量が低いL材では、非L材と同様な加熱処理を行っても鋭敏化現象が全く発生せず均一なオーステナイト組織であることに起因して、このような外観変化は全く起こらないことが明確となった。図2に加熱処理後のステンレス鋼表面に生成した酸化物の焼け取り状況及びその後の電解研磨、電解腐食の作業状況を一括して示す。なお、TIG溶接機にて加熱処理したステンレス鋼の作業状況については割愛するが、バーナー加熱と全く同様な方法にて実施する。以下、ガスバーナーにより加熱試験を実施した結果を実施例として記述する。
ステンレス鋼素材として、オーステナイト系ステンレス鋼の非L規格材としては代表的な鋼種であるSUS304、L規格材としてはSUS304Lの2種を被検体として、断熱材上(イソライト)で火焔温度max2000℃のガスバーナーを用いて同一条件にて加熱試験を行った。被検体の板厚はそれぞれの鋼種とも1mmとし、加熱時間は現地における作業効率(短時間加熱)を考慮して1分とした。また、ガスバーナーでの加熱は、最も火焔温度が高いと推定される還元焔先端近傍で行った。
加熱試験後の被検体は表面に酸化皮膜が生成しており、いずれの被検体とも図1に示した要領で表面の焼け取り、電解研磨、さらに電解腐食を順次実施し、鋭敏化発生の有無を詳細に調査した。その結果、非L規格材においては、リング状の白っぽい鋭敏化領域の発生が認められたが、全く同一条件にて処理したL規格材では、これらの白っぽい鋭敏化領域の発生は全く認められないことが明確となった。図3に観察結果を示す。
非L規格材のSUS304は、火焔中心から同心円状に白色のリング模様が明確に形成されているが、同一条件にて加熱したL規格材のSUS304Lにはこのような状況が全く認められないことが判明した。また、光学顕微鏡にてその状況を観察した結果、SUS304の白色部では鋭敏化現象に起因した粒界腐食現象が観察されたが、白色部以外ならびにSUS304Lでは、このような状況は全く観察されず、フルオーステナイト組織であることも明確となった。
続いて、SUS304及びSUS304L、板厚3mmの被検体について、ガスバーナーでの加熱試験及びその後の焼け取り、電解研磨及び電解腐食試験を実施した。試験要領は前述の1mm被検体と同様な方法及び条件にて行った。図4に観察結果を示す。
非L規格材のSUS304は火焔中心近傍に白色領域が形成されているが、L規格材のSUS304Lでは、この状況は全く観察されないことが確認される。光学顕微鏡観察の結果、SUS304の白色部では鋭敏化現象に起因した粒界腐食現象が、白色部以外ならびにSUS304Lではこのような状況は全く観察されず、フルオーステナイト組織であることが明確になった。
更に、材質の異なるSUS316及びSUS316Lについて同様な試験を行った。被検体の板厚は3mmとし、加熱要領などは前述の通りであるが、SUS304に比べて鋭敏化現象を起し難いことが想定されたため、加熱時間は1分と2分で行った。加熱試験後の焼け取り、電解研磨及び電解腐食の要領は前述の通りである。
図5に加熱時間2分の観察結果を示す。非L規格材のSUS316では火焔中心から同心円状にしかもリング状に白色領域が認められる。一方、L規格材のSUS316Lではこのような状況は全く観察されない。光学顕微鏡観察の結果、SUS316の白色部では鋭敏化現象に起因した粒界腐食現象が顕著に認められたが、白色部以外の部分あるいはSUS316Lではこの種組織状況は全く観察されず、フルオーステナイト組織であることが明確となった。なお、加熱時間1分では顕著な鋭敏化現象が認められなかった。次に、TIG溶接機による加熱試験結果について実施例として記述する。
オーステナイト系ステンレス鋼の非L規格材としてSUS304、SUS316を、L規格材として、SUS304L及びSUS316Lの板厚1mmの素材を被検体とし、アルゴンガスTIG溶接機を用い、既述の通りの要領にて加熱試験を行った。加熱時間は作業効率の観点から1分とし、電流は予備試験結果を参考として25Aとした。図6に加熱試験後の観察結果を示す。なお、加熱試験及び加熱試験後の焼け取り、電解研磨及び電解腐食試験要領は既述の通りである。
図6からも明らかであるが、非L規格材であるSUS304及びSUS316は、いずれの鋼種とも加熱溶融部近傍の熱影響部に白色リング状の鋭敏化領域の発生が認められる。一方、L規格材のSUS304LならびにSUS316Lについては、その熱影響部にこのような状況は全く観察されない。光学顕微鏡を用いて白色リング状部分も含めて全体の組織を観察した結果、白色部では鋭敏化現象に起因した粒界腐食が認められたが、白色部以外の部分及びL規格材ではこのような状況は全く観察されず、フルオーステナイト組織であることが確認された。また、非L規格材のSUS304及びSUS316の鋭敏化発生状況を比較した場合、SUS304の方が鋭敏化領域も大きく、SUS316よりも鋭敏化し易い材質であることも解る。
続いて、非L規格材(SUS304、SUS316)及びL規格材(SUS304L、SUS316L)、板厚:3mmの被検体について、1mm被検体と同様な試験を行った。試験要領などは1mm被検体と同じであるが、TIG溶接機での加熱試験時の電流は、予備試験結果を参考にして60Aとし、加熱時間は1分とした。
図7に加熱試験後の観察結果を示す。非L規格材ではSUS304及びSUS316ともに加熱溶融部近傍の熱影響部に白色の鋭敏化領域がリング状に形成されているが、L規格材のSUS304L及びSUS316Lでは、このような状況は全く観察されない。この白色部を光学顕微鏡にて観察した結果、鋭敏化現象に起因した粒界腐食現象が生じていることが明確になった。一方、白色以外の部分ならびにL規格材については、この種状況は全く観察されず均一なオーステナイト組織であることも確認できた。
更に続いて、板厚:5mmの被検体を対象にして同様な試験を行った。加熱試験などの条件は被検体1mm、3mmと同じであるが、TIG溶接機での加熱試験時の電流は、予備試験から100Aとし、加熱時間は1分とした。図8に観察結果を示す。
非L規格材(SUS304、SUS316)では、板厚1mm、3mmの観察結果と同じように、加熱溶融部近傍の熱影響部にリング状の白色領域が形成されていることが確認されるが、L規格材(SUS304L、SUS316L)ではこのような状況は全く観察されないことが明らかになった。この白色部には、すでに述べた如く鋭敏化現象に起因した粒界腐食現象が生じていることが確認できた。なお、白色部以外の部分さらにはL規格材ではこの状況は全く確認されず均一なオーステナイト組織であることも明らかとなった。更に、SUS316に比較して、SUS304の白色部のほうが大きく、SUS304が鋭敏化現象を起し易いことも明らかである。
板厚10mmの被検体についても同様な試験を実施した。加熱試験などの諸条件は、被検体1mm、3mm及び5mmと同じにしたが、TIG溶接機における加熱試験時の電流は入熱を大きくするため予備試験結果に基づき150Aで行い、加熱時間は1分とした。図9に観察結果を示す。
非L規格材(SUS304、SUS316)では、板厚1mm、3mm及び5mmの観察結果と同じように、加熱溶融部近傍の熱影響部にリング状の白色領域が形成されていることが特徴的に観察される。一方、L規格材(SUS304L、SUS316L)ではこの種状況は全く観察されていないことが明らかである。光学顕微鏡観察においても、白色部のみが鋭敏化現象に起因した粒界腐食現象を生じていることを確認した。
本発明は、耐食性が要求される機器、例えば、化学プラントや各種機器の容器ならびに配管などに使用されているオーステナイト系ステンレス鋼で、化学成分が類似した同種のステンレス鋼、例えば、SUS304とSUS304L、また、SUS316とSUS316Lの如き、L規格材と非L規格材とを非破壊的になし得る簡易判別法を提供するものであり、産業上の貢献度は極めて高い。

Claims (1)

  1. 判別すべきステンレス鋼の表面に対し、ガスバーナーの火焔若しくはTIG溶接などの電気的アーク焔を局部集中的に吹きつけて、該部分の温度が好ましくは約600℃乃至はそれ以上に所定時間加熱保持する第1工程と、続いて該ステンレス鋼が直流電源か若しくは交直重乗電源の直流側に接続した状態で、燐酸の水溶液などのようにステンレス鋼に対して研磨効果を伴う溶液を用い、該ステンレス鋼に対峙させた陰極との間に通電処理して電解焼け取りと電解研磨効果とを伴う処理を施す第2工程、更に引続き該電解液を蓚酸などのようにステンレス鋼に対して腐食効果を伴う水溶液に代えて通電してエッチング処理を施す第3工程とよりなり、非L材の場合には該1工程に於いて生成する通称熱影響部(HAZ)が鋭敏化しているため、優先的に腐食乃至は粒界腐食割れ現象を生起し、リング状の白色の輪を生じるが、炭素量の低いL材は全く変化しない外観変化の違いから鑑査することを特徴とするステンレス鋼のL材と非L材との非破壊的鑑別方法。
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