JP2021014572A - ポリオレフィン微多孔膜および電池用セパレータ - Google Patents

ポリオレフィン微多孔膜および電池用セパレータ Download PDF

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敏彦 金田
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Abstract

【課題】セパレータとして用いた際にホットボックス特性と機械方向の弾性に優れ、電池用セパレータとして用いた場合に高い工程搬送性と電池安全性を有するポリオレフィン微多孔膜を提供する。【解決手段】機械方向における損失正接の幅方向における損失正接に対する比率(MD/TDtanδ比)が0.60以上0.85以下であるポリオレフィン微多孔膜であって、示差走査型熱量測定で観測される融解ピーク温度をy軸とし、昇温速度の自然対数をx軸とするx−y平面上において、前記昇温速度を5℃/min、20℃/min、100℃/min、300℃/minと変えて観測された前記融解ピーク温度の値を最小二乗法により直線回帰して求められる近似式y=ax+bの傾きaが2.5以上3.2以下であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。また、当該ポリオレフィン微多孔膜を含むことを特徴とする電池用セパレータ。【選択図】なし

Description

本発明は、電池用セパレータ等に用いられるポリオレフィン微多孔膜に関するものである。
微多孔膜は、ろ過膜、透析膜などのフィルター、電池用セパレータや電解コンデンサー用のセパレータなどの種々の分野に用いられる。これらの中でも、ポリオレフィンを樹脂材料とする微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度などに優れ、シャットダウン特性を有するため、二次電池用セパレータとして広く用いられる。
近年、電池容量の増加に伴い、二次電池は安全性指標となる釘刺試験やホットボックス試験、耐衝撃試験などでより厳しい条件が求められている。これに伴い二次電池用セパレータにはこれまで以上に安全性能が求められる。
特許文献1には、少なくとも三層からなり、メルトダウン温度が159〜200℃の範囲であり、透気度が50〜300秒の範囲であり、突き刺し強度が100〜550gfの範囲であり、内層にのみポリプロピレンを含有し、表層を形成する少なくとも1層が、メルトフローレートが50〜150g/10min、融点が120〜130℃の樹脂を含むポリオレフィン製積層微多孔膜が記載されている。そして、電池の釘刺し試験に代表されるような安全性試験において、優れた安全性を達成できることが開示されている。
特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする多孔質基材と、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を含有する多孔質層とを含む積層体であって、多孔質基材は、特定の式(X=100×|MDtanδ−TDtanδ|÷{(MDtanδ+TDtanδ)÷2})にて算出されるパラメータXが20以下である非水電解液二次電池用セパレータが記載されている。そして、多孔質基材の粘弾性測定で得られた損失正接(tanδ)の異方性が小さいほど、カールの発生がなく、非水電解液二次電池における充放電サイクル試験前後の内部抵抗の増加率を抑制できることが開示されている。
特許文献3には、機械(MD)方向(長手方向)の弾性率が1,000〜1,600MPaであり、MD方向と幅(TD)方向の弾性率の比(MD/TD)が0.9以上、2.0未満であることを特徴とする二軸配向多孔性ポリプロピレンフィルムが記載されている。そして、搬送時の張力によりカールやシワが発生せず、なおかつ生産性に優れることが開示されている。
特開2015−208894号公報 特開2017−103041号公報 特開2014−141644号公報
微多孔膜の搬送性は生産性向上に寄与することから電池巻回体を製造する時の微多孔膜の搬送性はもちろんのこと、近年では、微多孔膜にコーティングを施した電池用セパレータが広く用いられるようになり、コーティング時の微多孔膜の搬送性も重視されるようになってきている。そのため微多孔膜には機械方向の機械強度や弾性の向上が求められる。
しかしながら、機械方向の機械強度や弾性の向上に伴い、セパレータの安全性能の1つであるシャットダウン温度が上昇し、電池の安全性能が失われていく。そのため特許文献1〜3のセパレータでは、搬送性とホットボックス試験により評価される安全性能(ホットボックス特性ともいう。)のバランスが十分とれていない。
本発明は、上記事情に鑑みて、搬送性に優れ、電池用セパレータとして用いた場合、ホットボックス特性に優れたポリオレフィン微多孔膜を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、機械方向に高度に延伸された微多孔膜は、急速加熱時の融解ピーク温度上昇が高く、高度に延伸されていない微多孔膜と比較して融解挙動が起こりにくいため高シャットダウン温度となり、搬送性とホットボックス特性の両立が難しいことを見出した。そして、示差走査熱量計(DSC)で観測される昇温速度に対する融解ピーク温度上昇の傾きと幅方向における損失正接に対する機械方向における損失正接の比率(MD/TDtanδ比)を所定の値とすることで微多孔膜の構造バランスと機械方向の弾性を両立して上記課題を解決することができることを明らかにし、本発明を完成するに至った。
本発明の第1の態様のポリオレフィン微多孔膜は、機械方向における損失正接の幅方向における損失正接に対する比率(MD/TDtanδ比)が0.60以上0.85以下であって、
示差走査型熱量測定で観測される融解ピーク温度をy軸とし、昇温速度の自然対数をx軸とするx−y平面上において、前記昇温速度を5℃/min、20℃/min、100℃/min、300℃/minと変えて観測された前記融解ピーク温度の値を最小二乗法により直線回帰して求められる近似式y=ax+bの傾きaが2.5以上3.2以下であることを特徴とする。
また、上記ポリオレフィン微多孔膜は、機械方向における引張強度の幅方向における引張強度に対する比率(MD/TD引張強度比)が0.90以上2.0以下であってもよい。
また、上記ポリオレフィン微多孔膜は、幅方向の120℃、1時間における熱収縮率が10%以下であってもよい。
また、上記ポリオレフィン微多孔膜は、重量平均分子量が30万以上80万以下のポリオレフィンを含むものであってもよい。
また、上記ポリオレフィン微多孔膜は、前記ポリオレフィン樹脂組成物がポリエチレン樹脂組成物であってもよい。
また、上記ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン微多孔膜とは異なる多孔膜が表面に積層されていてもよい。
本発明の第2の態様の電池用セパレータは、上記ポリオレフィン微多孔膜を含んでなる。
本発明によれば、搬送性に優れ、電池用セパレータとして用いた場合、ホットボックス特性に優れたポリオレフィン微多孔膜を提供することができる。
以下、本発明の本実施形態について説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明によるポリオレフィン微多孔膜は、機械方向における損失正接の幅方向における損失正接に対する比率(MD/TDtanδ比)が0.60以上0.85以下であるポリオレフィン微多孔膜であって、示差走査型熱量測定で観測される融解ピーク温度をy軸とし、昇温速度の自然対数をx軸とするx−y平面上において、前記昇温速度を5℃/min、20℃/min、100℃/min、300℃/minと変えて観測された前記融解ピーク温度の値を最小二乗法により直線回帰して求められる近似式y=ax+bの傾きaが2.5以上3.2以下である。
(MD/TDtanδ比)
ポリオレフィン微多孔膜の幅方向における損失正接に対する機械方向における損失正接の比率(MD/TDtanδ比)は、0.60以上0.85以下である。MD/TDtanδ比が0.60未満であると機械方向の弾性が高すぎるため、幅方向との構造バランスが悪くなり、電池安全性が懸念される。0.85を超えると機械方向の弾性が幅方向よりも十分高くなく、搬送性の悪化が懸念される。ポリオレフィン微多孔膜のMD/TDtanδ比が上記範囲にあると、機械方向の弾性が幅方向より十分に高く、搬送性に優れる。電池安全性向上の観点から0.7以上0.82以下がさらに好ましい。ポリオレフィン微多孔膜のMD/TDtanδ比は後述する動的粘弾性測定法より求めることができる。
MD/TDtanδ比は、製造過程において、ポリオレフィンの構成成分の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
(示差走査型熱量測定(DSC)で観測される昇温速度の自然対数に対する融解ピーク温度上昇の傾向を示す直線近似式の傾き)
ポリオレフィン微多孔膜のDSCにより4点の昇温速度(5℃/min、20℃/min、100℃/min、300℃/min)で融解ピーク温度を観測し、融解ピーク温度yを縦軸に、昇温速度xを横軸にプロットして(横軸は対数プロット)、昇温速度の自然対数xに対する融解ピーク温度yの関係を最小二乗法により直線回帰して求められる近似式y=ax+bの傾きaは2.5以上3.2以下である。ここでyは各昇温速度(5℃/min(試料量約5mg)、20℃/min(試料量約2mg)、100℃/min(試料量約0.7mg)、300℃/min(試料量約0.4mg))で得られたDSC曲線から0℃と200℃を結ぶ直線をベースラインとして読み取った融解吸熱ピーク時の温度である。前記傾きaは、2.6以上3.1以下であることが好ましく、2.7以上3.1以下であることがより好ましい。前記範囲とすることで、結晶領域と非晶領域の秩序性が高すぎず適度な秩序性を有することで微多孔膜は構造バランスが良好となり、特に急速加熱時における電池安全性に優れる。前記傾きaが2.5以上であると微多孔膜の構造バランスが良好となり、車載高温部近傍に配置された場合の電池安全性に優れる。また、3.1以下であると、融解ピーク温度上昇を抑制されているため、電池温度が急速に上昇した際にも、シャットダウンしやすいなど、電池安全性に優れる。ポリオレフィン微多孔膜のDSCで観測される昇温速度の自然対数に対する融解ピーク温度上昇の傾向を示す直線近似式の傾きaは示差走査型熱量測定により求める。
また、DSCで観測される昇温速度の自然対数に対する融解ピーク温度上昇の傾向を示す直線近似式の傾きaは、製造過程において、ポリオレフィンの構成成分の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
1.ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン微多孔膜はポリオレフィン樹脂を主成分として含み、ポリオレフィン微多孔膜100質量%に対して90質量%以上含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂はポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリエチレンとしては、種々のポリエチレンを用いることができ、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、分岐高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。ポリエチレンは、エチレン単独重合体であってもよく、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体であってもよい。α−オレフィンとしては、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。ポリエチレンはポリオレフィン微多孔膜100質量%に対して50質量%以上含むことができる。ポリプロピレンはポリオレフィン微多孔膜100質量%に対して50質量%以下含むことが好ましい。ポリプロピレンの含有量が上記範囲であると、シャットダウン特性が向上し、電池安全性に優れる。
高密度ポリエチレン(密度が0.920g/m以上0.970g/m以下)は溶融押出特性に優れ、均一な延伸加工特性に優れる。高密度ポリエチレンの重量平均分子量は1×10以上1×10未満が好ましい。高密度ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン微多孔膜100質量%に対して、下限は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは85%以上、上限は100質量%以下が好ましい。高密度ポリエチレンの含有量が上記範囲であると、機械強度や弾性が向上し、かつ熱収縮が低くなり、工程安定性と電池安全性を向上させることができる。
また、超高分子量ポリエチレンを含有すると、ポリオレフィン微多孔膜を薄膜にしても高い機械強度を得ることができる。超高分子量ポリエチレンは、重量平均分子量(Mw)が1×10以上が好ましく、より好ましくは1×10以上8×10以下である。超高分子量ポリエチレンのMwが上記範囲である場合、成形性が良好となる。超高分子量ポリエチレンは少なくとも1種を含むことができる。例えばMwの異なる二種以上の超高分子量ポリエチレンを混合して原料として用いてもよい。
超高分子量ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン微多孔膜100質量%に対して、0質量%以上40質量%未満、好ましくは0質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上15質量%以下含むことができる。超高分子量ポリエチレンの含有量が0質量%以上40質量%以下である場合、機械強度や弾性が向上し、かつ熱収縮が低くなり、工程安定性と電池安全性を向上させることができる。
必要に応じて、ポリエチレン及びポリプロピレン以外のその他の樹脂成分を含むことができる。その他の樹脂成分としては、例えば、耐熱性を付与する樹脂などを含有させることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤や充填剤、結晶造核剤、結晶化遅延剤等の各種添加剤を含有させてもよい。
2.ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、公知のポリオレフィン微多孔膜の製造方法の一部工程を用いることができる。ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、例えば、乾式の製膜方法及び湿式の製膜方法が挙げられる。本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、膜の構造及び物性の制御の観点から湿式と乾式を組み合わせた製膜方法が好ましい。
以下、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法について説明する。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、この方法に限定されるものではない。
まず、ポリオレフィンと成膜用溶剤とを溶融混練して樹脂溶液を調製する。溶融混練方法としては、例えば特公平6−104736号公報や特許第3347835号の明細書に記載の二軸押出機を用いる方法を利用することができる。溶融混練方法は公知であるので説明を省略する。
次いで、樹脂溶液を押出し、冷却してゲル状シートを形成する。例えば、上記で調整した樹脂溶液を押出機から1つのダイに送給し、シート状に押し出し、形成体を得る。得られた成形体を冷却することにより、ゲル状シートを形成する。
ゲル状シートの形成方法として、例えば特公平6−104736号公報や特許第3347835号公報に開示の方法を利用することができる。冷却は少なくともゲル化温度までは50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。冷却により、成膜用溶剤によって分離されたポリオレフィンのミクロ相を固定化することができる。冷却速度が上記範囲内であると結晶化度が適度な範囲に保たれ、延伸に適したゲル状シートとなる。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。
次いで、ゲル状シートを延伸する。ゲル状シートの延伸は、湿式延伸ともいう。ゲル状シートは溶剤を含むので、均一に延伸できる。ゲル状シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよいが、機械方向の延伸をロールで行い(第一の延伸)、幅方向の延伸をテンターで行う(第二の延伸)逐次二軸延伸が好ましい。こうすることで、機械方向の結晶配向が進み、機械方向の機械強度、弾性を向上させることができる。ロール延伸の延伸速度は100%/secから1000%/sec以下とすることが好ましく、100%/secから500%/sec以下とすることがより好ましい。前記ロール延伸の延伸速度が上記好ましい範囲内であると、ゲル状シートを延伸するときの機械方向と幅方向の応力が調整され、機械強度と弾性が向上し、かつ得られるポリオレフィン微多孔膜の融解ピーク温度上昇が抑制される。そのため、電池用セパレータとして用いた場合、工程安定性と電池安全性に優れる。
ロール延伸の延伸速度は以下のように算出される。延伸倍率は「延伸後の長さ(m)を延伸前の長さ(m)で除することにより算出される。
延伸速度(%/sec)=(延伸倍率×100−100)/延伸の時間(sec)
湿式延伸における二軸延伸の場合、機械方向及び幅方向のいずれでも最終的な延伸倍率は3倍以上が好ましく、機械方向と幅方向での延伸倍率は、互いに同じでも異なってもよい。延伸倍率を5倍以上とすると、突刺強度の向上が期待できる。なお、湿式延伸倍率とは、湿式延伸前のゲル状シートを基準としたときの、湿式延伸倍後のゲル状シートの延伸倍率のことをいう。最終的な面積延伸倍率は9倍以上が好ましく、16倍以上がより好ましく、25倍以上がさらに好ましい。最終的な面積延伸倍率の上限は80倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。面積延伸倍率が上記好ましい範囲内であると機械強度と弾性が向上し、かつ得られるポリオレフィン微多孔膜の融解ピーク温度上昇が抑制される。そのため、電池用セパレータとして用いた場合、工程安定性と電池安全性に優れる。
延伸温度は、ポリオレフィンの結晶分散温度(Tcd)〜Tcd+30℃の範囲内にするのが好ましく、結晶分散温度(Tcd)+10℃〜結晶分散温度(Tcd)+28℃の範囲内にするのがより好ましく、Tcd+15℃〜Tcd+26℃の範囲内にするのが特に好ましい。特にロールとテンターを用いる逐次二軸延伸するときの延伸温度は、幅方向のテンター延伸の温度を機械方向のロール延伸温度よりも+3℃以上10℃以下とすることが好ましい。延伸温度が上記範囲内であるとゲル状シートを延伸するときの機械方向と幅方向の応力が調整され、機械強度と弾性が向上し、かつポリオレフィン微多孔膜の融解ピーク温度上昇が抑制される。そのため、電池用セパレータとして用いた場合、工程安定性と電池安全性に優れる。
ここで結晶分散温度(Tcd)とは、ASTM D4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求められる値をいう。上記の超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレン及びポリエチレン組成物は、約90〜100℃の結晶分散温度を有する。従って、原料としてポリエチレンを用いる場合の延伸温度は、例えば、90℃以上130℃以下、好ましくは115℃以上130℃以下とすることができる。
以上のような原料選択と延伸によりポリエチレンラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。次いで、上記延伸後のゲル状シートから成膜用溶剤を除去して微多孔膜(フィルム)とする。成膜用溶剤の除去は、洗浄溶媒を用いた洗浄により行う。ポリオレフィン相は成膜用溶剤相と相分離しているので、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば特公平6−104736号公報や特開2002−256099号公報に開示の方法を利用することができる。
次いで、成膜用溶剤を除去した微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィンの結晶分散温度(Tcd)以下であることが好ましく、特にTcdより5℃以上低いことが好ましい。乾燥は、微多孔膜フィルムを100質量%(乾燥重量)として、残存洗浄溶媒が5質量%以下になるまで行うことが好ましく、3質量%以下になるまで行うことがより好ましい。残存洗浄溶媒が上記範囲内であると、後段の微多孔膜フィルムの延伸工程及び熱処理工程を行ったときにポリオレフィン微多孔膜の空孔率が維持され、透過性の悪化が抑制される。
次いで、乾燥後の微多孔膜を延伸する(乾式延伸ともいう)。乾燥後の微多孔膜の延伸は第三の延伸、場合によっては、第四の延伸からなる。乾式延伸は乾燥後の微多孔膜フィルムを、少なくとも一軸方向に延伸する。二軸延伸の場合、同時二軸延伸及び逐次延伸のいずれでもよい。逐次延伸の場合、機械方向に延伸(第三の延伸)した後、連続して、幅方向に延伸(第四の延伸)することが好ましい(機械方向延伸を行わない場合、幅方向延伸が第三の延伸となる)。乾式延伸の方法は、加熱しながらテンター式延伸機やロール式延伸機などにより行うことができる。
乾式延伸の延伸倍率は、1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上9.0倍以下であることがより好ましい。面倍率を上記範囲とすることにより、突刺強度等を所望の範囲に容易に制御することができる。一軸延伸の場合、例えば、機械方向又は幅方向に1.2倍以上、好ましくは1.2倍以上3.0倍以下とする。二軸延伸の場合、機械方向及び幅方向の延伸倍率として各々1.0倍以上3.0倍以下とし、機械方向と幅方向での延伸倍率が互いに同じでも異なってもよいが、機械方向と幅方向での延伸倍率がほぼ同じであることが好ましい。乾式延伸は、機械方向に1.0倍超3.0倍以下で延伸(第三の延伸)した後、連続して、幅方向に1.0倍超3.0倍以下で延伸(第四の延伸)することが好ましい。なお、乾式延伸倍率とは、乾式延伸後前の微多孔膜を基準としたときの、乾式延伸後の微多孔膜の延伸倍率のことをいう。
乾式延伸温度は、延伸応力制御の観点から、通常90〜135℃であり、より好ましくは100〜135℃、さらに好ましくは105℃〜135℃である。上記範囲とすることで、ポリオレフィン延伸時の機械方向と幅方向の応力が調整され、機械強度と弾性が向上し、かつポリオレフィン微多孔膜の融解ピーク温度上昇が抑制されるため、電池用セパレータとして用いた場合、工程安定性と電池安全性に優れる。
また、乾燥後の微多孔膜は、熱処理が行われてもよい。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理及び熱緩和処理の少なくとも一方を用いることができる。熱固定処理とは、膜の幅方向の寸法が変わらないように幅方向における両端部を保持しながら加熱する熱処理である。熱固定処理は、テンター方式またはロール方式により行うのが好ましい。熱緩和処理とは、膜を加熱中に機械方向や幅方向に熱収縮させる熱処理である。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002−256099号公報に開示の方法が挙げられる。熱処理温度は第2のポリオレフィンの(Tcd)〜(Tm:融点)の範囲内が好ましく、微多孔膜の延伸温度±5℃の範囲内がより好ましく、微多孔膜の第二の延伸温度±3℃の範囲内が特に好ましい。
例えば、第三、第四の延伸後に、熱緩和処理及び熱処理をしてもよい。熱緩和処理において、緩和温度は、例えば、80℃以上135℃以下、好ましくは90℃以上133℃以下である。また、熱緩和処理を行う場合、緩和率は、直前の長さを100%として30%以上100%以下とすることができる。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は複数の層からなる多層であってもよいし、単層であってもよい。単層であれば積層に比べ膜厚を薄くすることができるため高容量の電池にも対応することができるため、好ましい。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の少なくとも片面に多孔質層を積層して多層微多孔膜としてもよい。多孔質層としては、特に限定されないが、例えば、樹脂からなる多孔質層を積層してもよい。ここで用いる樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができ、アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。多孔質層はさらに無機粒子を含んでもよく、無機粒子としては、特に限定されず、公知の材料を用いることができ、アルミナ、ベーマイト、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ケイ素などが挙げられる。
(ポリオレフィン微多孔膜を形成する樹脂組成物の重量平均分子量)
ポリオレフィン微多孔膜を形成する樹脂組成物の重量平均分子量は、10万以上100万以下が好ましく、より好ましくは20万以上90万以下であり、さらに好ましくは30万以上80万以下である。ポリオレフィン微多孔膜を形成する樹脂組成物の重量平均分子量の下限を10万以上とすることで、結晶化度が減少して機械強度が低下するのを防ぐことができる。また、ポリオレフィン微多孔膜を形成する樹脂組成物の重量平均分子量の上限を100万以下とすることでポリオレフィン微多孔膜の重量平均分子量は後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。
ポリオレフィン微多孔膜の重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜を製造する工程において、例えば、2種のポリエチレンをブレンドしたり、酸化防止剤を含有させたり、混練条件(特に、温度、スクリュー回転数)を調整したりすることなどにより、上記範囲とすることができる。
(20μm換算突刺強度)
ポリオレフィン微多孔膜の20μm換算突刺強度の下限は、好ましくは3.0N以上であり、より好ましくは4.0N以上であり、さらに好ましくは5.0N以上である。20μm換算突刺強度の上限は、特に限定されないが、例えば、8.0N以下、より好ましくは7.0N以下である。20μm換算突刺強度が上記範囲である場合、ポリオレフィン微多孔膜の膜強度に優れ、機械強度や弾性が向上し、かつ熱収縮が低くなる。またポリオレフィン微多孔膜の融解ピーク温度上昇が抑制され、ホットボックス特性が向上するため、電池用セパレータとして用いた場合、工程安定性と電池安全性に優れる。
20μm換算突刺強度は、製造過程において、ポリオレフィンの構成成分の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
(MD/TD引張強度比)
ポリオレフィン微多孔膜の機械方向における引張強度の幅方向における引張強度に対する比率(MD/TD引張強度比)は、例えば、0.90以上2.00以下であることが好ましく、0.95以上1.50以下であることがより好ましく、1.0以上1.40以下であることがさらに好ましい。ポリオレフィン微多孔膜のMD/TD引張強度比が0.90以上であると、機械方向の弾性が幅方向より十分に高く、搬送性に優れる。また、2.00以下であると、機械方向への極端な配向が抑制され、融解ピーク温度上昇を抑制することができるため、電池安全性に優れる。ポリオレフィン微多孔膜のMD/TD引張強度比は後述する引張強度測定法より求めることができる。MD/TD引張強度比は、製造過程において、ポリオレフィンの構成成分の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
(膜厚)
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚の上限は、特に限定されないが、例えば、20μm以下が好ましく、より好ましくは12μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。膜厚の下限は、特に限定されないが、例えば、1μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上である。膜厚が上記範囲内であるとポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして使用する際、電池容量が向上する。
(空孔率)
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率の下限は、特に限定されないが、例えば、20%以上であり、さらに好ましくは30%以上である。空孔率の下限は、特に限定されないが、例えば、70%以下であり、60%以下であることが好ましい。空孔率が上記範囲であることにより、電解液の保持量を高め、高いイオン透過性を確保することができる。また、空孔率が上記範囲であると、レート特性が向上する。また、イオン透過性及びレート特性をより高めるという観点から、空孔率が20%以上であることが好ましい。空孔率は、製造過程において、ポリオレフィンの構成成分の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
(20μm換算透気抵抗度;ガーレー値)
ポリオレフィン微多孔膜の20μm換算透気抵抗度の上限は、例えば、1000sec/100cm以下が好ましく、500sec/100cm以下がより好ましく、300sec/100cm以下が更に好ましい。20μm換算透気抵抗度の下限は、特に限定されないが、例えば、50sec/100cm以上が好ましく、100sec/100cm以上がより好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の透気抵抗度が上記範囲である場合、高いイオン透過性を確保することができる。透気抵抗度は、製造過程において、ポリオレフィンの構成成分の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
(シャットダウン特性)
ポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン特性は昇温透気抵抗度測定から得られる透気抵抗度が検出限界である1×10秒/100cmAirに到達した温度をシャットダウン温度として、評価した。シャットダウン温度は110℃以上140℃未満であり、好ましくは110℃以上139℃以下、より好ましくは110℃以上138℃以下、さらにより好ましくは110℃以上137℃以下である。シャットダウン温度が140℃未満であると、高温時の電池熱暴走を抑制でき、電池安全性が向上する。また、シャットダウン温度が110℃未満の場合は、例えば、車載高温部近傍に配置された場合の熱的安定性懸念や熱固定時に透気抵抗度が急激に悪化する懸念がある。
(熱収縮率)
ポリオレフィン微多孔膜の120℃1時間における機械方向の熱収縮率は、例えば、10%以下であり、9%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。ポリオレフィン微多孔膜の120℃1時間における幅方向の熱収縮率は、例えば、10%以下であり、9%以下であることが好ましく、7%以下であることがより好ましい。機械方向の熱収縮率の下限、及び幅方向の熱収縮率の下限は、特に限定されないが、0.5%以上であるのが好ましい。機械方向の熱収縮率、及び幅方向の熱収縮率の上限が上記範囲内であるとき、電池内部での変形や端部での短絡のリスクを低減することができ、電池安全性が向上する。ポリオレフィン微多孔膜の120℃1時間における熱収縮は、製造過程において、ポリオレフィンの構成成分の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とすることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
1.測定方法と評価方法
[膜厚]
微多孔膜の50mm×50mmの範囲内における5点の膜厚を接触厚み計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック)により測定し、平均値を求めた。
[空孔率]
微多孔膜の質量wとそれと等価な空孔のないポリマーの質量w(幅、長さ、組成の同じポリマー)とを比較した、以下の式によって、測定した。
空孔率(%)=(w−w)/w×100
[20μm換算突刺強度]
20μm換算突刺強度は、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、ポリオレフィン微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重(N)を20μm換算した下記の式で求める値である。
式:突刺強度(20μm換算)=最大荷重(N)×20(μm)/ポリオレフィン微多孔膜の膜厚T(μm)
[引張強度]
各方向に対応する引張強度については、幅10mmの短冊状試験片を用いて、ASTM D882に準拠した方法により測定した。機械方向と幅方向で得られた値の比をMD/TD引張強度比とした。
[透気抵抗度;ガーレー値]
膜厚T(μm)の微多孔膜に対して、JIS P8117に準拠して、透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)で透気抵抗度P(sec/100cm)を測定した。また、式:P=(P×20)/Tにより、膜厚を20μmとしたときの透気抵抗度P(20μm換算)(sec/100cm/20μm)を算出した。
[熱収縮]
120℃1時間のMD熱収縮率およびTD熱収縮率は、次のようにして測定した。
(1)室温(25℃)におけるポリオレフィン微多孔膜の試験片の大きさを機械方向および幅方向の両方について測定する。
(2)ポリオレフィン微多孔膜の試験片を、荷重をかけずに1時間120℃の温度にて平衡化する。
(3)ポリオレフィン微多孔膜の大きさを機械方向および幅方向の両方について測定する。
(4)機械方向および幅方向への熱収縮について、上記(3)の測定結果(3)を上記(1)の測定結果(1)で除し、得られた値を1から差し引き、その値を百分率(%)で表して算出した。具体的な数式としては以下である。
熱収縮率(%)=(1−(測定結果(3))÷(測定結果(1)))×100
[ポリオレフィンの重量平均分子量]
ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Waters Corporation製GPC−150C
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 wt%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、ポリエチレンか換算係数(0.46)を用いて作成した。
[ポリオレフィン微多孔膜の重量平均分子量]
ポリオレフィン微多孔膜を形成する樹脂組成物の重量平均分子量(Mw)は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
・測定装置:Waters Corporation製GPC−150C
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o−ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 wt%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、ポリエチレンか換算係数(0.46)を用いて作成した。
[示差走査型熱量測定(DSC)]
ポリオレフィン微多孔膜のDSCで観測される昇温速度の自然対数に対する融解ピーク温度上昇の傾向を示す直線近似式の傾きについては、Perkin−Elmer社製のDSC 8500を用いて求めた。ポリオレフィン微多孔膜の幅方向の中心位置から無作為に5箇所を選び、各昇温速度で後述する所定の試料量となるようにサンプルをカットして重ねて、アルミニウム製標準容器に詰めたものを測定サンプルとした。1st heating時の測定温度範囲を0℃〜200℃、昇温速度は5℃/min、20℃/min、100℃/min、300℃/minとして、窒素雰囲気下(20mL/min)で測定を実施した。
試料量:約5mg[5℃/min]、約2mg[20℃/min]、約0.7mg[100℃/min]、約0.4mg[300℃/min]
各昇温速度で得られたDSC曲線から0℃と200℃を結ぶ直線をベースラインとし、融解吸熱ピーク時の温度を読み取り、微多孔膜の融解ピーク温度とした。(ピークが2山以上観測される場合は、最も吸熱している方のピークから微多孔膜の融解ピーク温度を読み取る。)。その融解ピーク温度を縦軸に、昇温速度を横軸にプロットしてグラフを作成した。(グラフの横軸は対数プロット)。その後、対数フィッティングを行い、近似直線の傾きを求め、DSCで観測される昇温速度の自然対数に対する融解ピーク温度上昇の傾向を示す直線近似式の傾きとした。
[動的粘弾性測定]
ポリオレフィン微多孔膜の機械方向/幅方向の貯蔵弾性率、および損失弾性率について、JIS−K7244−4(引張振動−非共振法)に従って、ティー・エイ・インスツルメント社製の動的粘弾性測定装置“RSA−G2”を用いて求めた。サンプルサイズは幅10mm×長さ50mmとして、微多孔膜の機械方向、もしくは幅方向が50mmとなるようにサンプルを整えチャック間距離が20mmとなるように、また各チャックに微多孔膜の機械方向、もしくは幅方向における両端部が各々保持されるように微多孔膜をセットし、チャックからはみ出した膜は取り除いた。そして、引張モードにて、駆動周波数は1Hz、チャック間距離は20mm、昇温速度は5℃/minの測定条件にて、各微多孔膜の貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”の温度依存性を測定した。
機械方向および幅方向で得られた貯蔵弾性率E’、損失弾性率E”の曲線から、損失正接(tanδ=損失弾性率E”/貯蔵弾性率E’)を求めてtanδ曲線を得た。各方向のtanδ曲線から、観測されるピークトップ温度(最もtanδ値が高い部分の温度)での損失正接(tanδ)を読み取って機械方向/幅方向の比を求め、機械方向における損失正接の幅方向における損失正接に対する比率(MD/TDtanδ比)とした。
[昇温透気抵抗度測定]
微多孔膜を5℃/minの昇温速度で加熱しながら、透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)により透気抵抗度を測定し、透気抵抗度が検出限界である1×10秒/100cmAirに到達した温度を求め、シャットダウン温度(℃)(SDT)とした。
測定セルはアルミブロックで構成され、微多孔膜の直下に熱電対を有する構造とし、サンプルを5cm×5cm角に切り取り、周囲をОリングで固定しながら昇温測定した。
[搬送性]
フィルム幅300mmにスリットしたフィルムをサンプルとして、搬送張力1kgf/100mm幅でフィルムを搬送させ、直径100mmの金属ロールのロール中心間距離が300mmの区間でのフィルムの搬送状態を下記の基準で評価した。
A級:シワおよびタルミなくフィルムを搬送できた。
B級:シワまたはタルミが発生した。
[ホットボックス特性]
(1)電池作製
下記の手順に従って角型電池を作製した。
リチウムイオン二次電池は、正極と負極がセパレータを介して積層されており、セパレータが電解液(電解質)を含有している。正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物LiCoO、負極活物質として石墨、電解液としてジエチルカーボネート(DEC)/ジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒に調整した1mol/LのLiPFを使用した。電池の組立ては、正極、多層微多孔膜からなるセパレータ及び負極を積層した後、常法により巻回電極体を作製し、電池缶に挿入し、電解液を含浸させ、次いで安全弁を備えた正極端子を兼ねる電池蓋をガスケットを介してかしめる。
(2)電池試験 ホットボックス試験
上記(1)により組立てた電池を1Cの電流値で電圧4.2Vまで定電流充電した後、4.2Vの定電定圧充電行い、その後0.2Cの電流で3.0Vの終止電圧まで放電を行った。次に0.2Cの電流値で4.2Vまで定電流充電をした後に4.2Vの定電圧充電を行い前処理とした。前処理を行った電池をオーブンに投入し、室温から5℃/minで昇温した後150℃で30分間放置した。150℃到達後15分以内で発煙、発火したものを×、15分を超え30分以内で発火したものを△、発火せずに30分を超えたものを○とした。
2.実施例と比較例
(実施例1)
重量平均分子量が1×10の超高分子量ポリエチレン5質量%と重量平均分子量が5×10の高密度ポリエチレン95質量%を樹脂濃度30質量%となるように流動パラフィンと二軸押出機にて、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製した。ポリオレフィン溶液を、二軸押出機からTダイに供給し、押し出した押出し成形体を、冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。ゲル状シートを、ロール延伸機により115℃で機械方向に5倍延伸(第一の延伸)した後、テンター延伸機により125℃で幅方向に5倍延伸(第二の延伸)した。延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去した後、乾燥させ、乾燥後の微多孔膜を得た。乾燥後の微多孔膜を、バッチ式延伸機を用いて、127℃で幅方向に1.45倍で延伸(第三の延伸)した。さらに、同様の温度で幅方向の緩和率を20%にして、10分間熱固定を行った。得られたポリオレフィン微多孔膜の物性と評価結果を表1に示す。
(実施例2)
130℃で幅方向に1.60倍で延伸(第三の延伸)、幅方向の緩和率を10%にした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例3)
127℃で幅方向に1.60倍で延伸(第三の延伸)、幅方向の緩和率を10%にした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例4)
120℃で幅方向に5倍延伸(第二の延伸)、127℃で幅方向に1.60倍で延伸(第三の延伸)、幅方向の緩和率を10%にした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例5)
高密度ポリエチレンに重量平均分子量が3×10のものを用い、123℃で幅方向に5倍延伸(第二の延伸)、130℃で幅方向に1.30倍で延伸(第三の延伸)、幅方向の緩和率を4%にした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例6)
高密度ポリエチレンに重量平均分子量が3×10のものを用い、123℃で幅方向に5倍延伸(第二の延伸)、133℃で幅方向に1.70倍で延伸(第三の延伸)、幅方向の緩和率を4%にした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例1)
重量平均分子量が1×10の超高分子量ポリエチレン40質量%と重量平均分子量が5×10の高密度ポリエチレン60質量%を樹脂濃度25質量%となるように流動パラフィンと二軸押出機にて、溶融混練し、ポリオレフィン溶液を調製した。ポリオレフィン溶液を、二軸押出機からTダイに供給し、押し出した押出し成形体を、冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。ゲル状シートを、ロール延伸機により115℃で機械方向に5倍延伸(第一の延伸)した後、テンター延伸機により123℃で幅方向に5倍延伸(第二の延伸)した。延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去した後、乾燥させ、乾燥後の微多孔膜を得た。乾燥後の微多孔膜を、バッチ式延伸機を用いて、129℃で幅方向に1.60倍で延伸(第三の延伸)した。さらに、同様の温度で幅方向の緩和率を11%にして、10分間熱固定を行った。
(比較例2)
ゲル状シートを、テンター延伸機により118℃で機械方向/幅方向に5×5倍で同時延伸(第一、第二の延伸)した。延伸したゲル状シートを塩化メチレン浴中に浸漬し、流動パラフィンを除去した後、乾燥させ、乾燥後の微多孔膜を得た。乾燥後の微多孔膜を、バッチ式延伸機を用いて、128℃で幅方向に1.20倍で延伸(第三の延伸)した。さらに、同様の温度で幅方向の緩和率を18%にして、10分間熱固定を行ったこと以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例3)
重量平均分子量が5×10の高密度ポリエチレン100質量%、第二の延伸を110℃で延伸、第三の延伸を125℃、1.60倍で延伸、第三の延伸後の幅方向の緩和率を9%とした以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例4)
高密度ポリエチレンに重量平均分子量が3×10のものを用い、ゲル状シートを、テンター延伸機により118℃で機械方向/幅方向に10×10倍で同時延伸したこと以外は、比較例2と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例5)
高密度ポリエチレンに重量平均分子量が3×10のものを用い、同時二軸延伸をテンター延伸機により118℃で機械方向/幅方向に10×10倍で逐次延伸(第一、第二の延伸)にしたこと以外は、比較例2と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を得た。
Figure 2021014572
(評価)
実施例1〜6のポリオレフィン微多孔膜は、示差走査型熱量測定で観測される融解ピーク温度をy軸とし、昇温速度の自然対数をx軸とするx−y平面上において、前記昇温速度を変えて観測された前記融解ピーク温度の値を最小二乗法により直線回帰して求められる近似式y=ax+bの傾きaが2.5以上3.2以下であり、MD/TDtanδ比が0.60以上0.85以下であり、搬送性とホットボックス特性が良好となり、搬送性と電池安全性に優れることが示された。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、電池用セパレータとして用いた場合、ホットボックス特性と機械方向の弾性に優れる。よって、搬送性と電池安全性が要求される二次電池用セパレータに好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 機械方向における損失正接の幅方向における損失正接に対する比率(MD/TDtanδ比)が0.60以上0.85以下であって、
    示差走査型熱量測定で観測される融解ピーク温度をy軸とし、昇温速度の自然対数をx軸とするx−y平面上において、前記昇温速度を5℃/min、20℃/min、100℃/min、300℃/minと変えて観測された前記融解ピーク温度の値を最小二乗法により直線回帰して求められる近似式y=ax+bの傾きaが2.5以上3.2以下であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
  2. 機械方向における引張強度の幅方向における引張強度に対する比率(MD/TD引張強度比)が0.90以上2.0以下である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  3. 幅方向の120℃、1時間における熱収縮率が10%以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  4. 重量平均分子量が30万以上80万以下のポリオレフィン樹脂組成物からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
  5. 前記ポリオレフィン樹脂組成物がポリエチレン樹脂組成物である、請求項4に記載のポリオレフィン微多孔膜。
  6. ポリオレフィン微多孔膜とは異なる多孔膜が表面に積層されている、請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を含むことを特徴とする電池用セパレータ。

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