JP2021012987A - ダイシング用基体フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ダイシングする際に切削屑の発生が良好に抑えられ、切削溝のサイドの変形(バンク)の発生が良好に抑えられたダイシング用基体フィルムを提供する。【解決手段】ダイシング用基体フィルムは、少なくとも、A層/B層の順に積層されており、A層はダイシングされる側であり、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなり、B層はポリオレフィン系樹脂及び/又はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含む樹脂組成物からなる。【選択図】なし

Description

本発明は、半導体ウェハ又は半導体パッケージをチップ状にダイシングする際に、それらに貼着して固定し使用される、ダイシング用基体フィルムに関する。
半導体チップを製造する方法として、半導体ウェハを予め大面積で製造し、次いでその半導体ウェハをチップ状にダイシング(切断分離)し、最後にダイシングされたチップをピックアッップする方法がある。
半導体パッケージ(チップ型パッケージ)は、半導体ウェハに、ポリイミドコート、配線形成、ポスト形成、レジン封止、レジン研磨、端子形成と順次パッケージ処理を施した後、最後に個々のチップに切り分けることにより作製される。半導体パッケージは、一般に、半導体チップをガラスエポキシ基板又はリードフレームにボンディングし、パッケージモールド樹脂にて一括モールドした後、硬化したものを、半導体加工用テープに貼り付け固定し、ダイシングブレードによりダイシングされる(特許文献1及び2)。
特開2012-119468 特許第5053455号
本発明は、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、及び、切削溝のサイドの変形(バンク)の発生が良好に抑えられたダイシング用基体フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。
本発明者は、特定のダイシング用基体フィルムが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記のダイシング用基体フィルムを提供する。
項1.
ダイシング用基体フィルムであって、
該ダイシング用基体フィルムは、少なくとも、A層/B層の順に積層されており、
前記A層は、ダイシングされる側であり、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS)樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
前記B層は、ポリオレフィン系樹脂及び/又はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含む樹脂組成物からなる、
ダイシング用基体フィルム。
項2.前記A層は、更にビニル芳香族系樹脂を含む、前記項1に記載のダイシング用基体フィルム。
項3.
表面に位置する層は、帯電防止剤を含む、前記項1又は2に記載のダイシング用基体フィルム。
項4.
半導体パッケージをダイシングする工程において使用される、前記項1〜3のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、及び、切削溝のサイドの変形(バンク)の発生が良好に抑えられたダイシング用基体フィルムである。
本発明は、ダイシング用基体フィルムに関する。
本発明は、更に、半導体パッケージをダイシングする工程において使用される、ダイシング用基体フィルムに関する。
(1)ダイシング用基体フィルム
本発明のダイシング用基体フィルムは、少なくとも、A層/B層の順に積層されている。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、前記A層は、ダイシングされる側である。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、前記A層は、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS)樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、前記A層は、更にビニル芳香族炭化水素系樹脂を含んでもよい。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、前記B層は、ポリオレフィン系樹脂及び/又はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、表面に位置する層は、帯電防止剤を含むことが好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムは、半導体パッケージをダイシングする工程において使用されることが好ましい。
以下、本発明のダイシング用基体フィルムを構成する各層について詳細に説明する。
(1-1)A層
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、A層は、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS)樹脂及びポリオレフィン(PO)系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、A層は、ダイシングされる側であり、ダイシングフィルムとした場合に、粘着剤層と接する層となる。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層が、MABS樹脂及びPO系樹脂を含む樹脂組成物からなることで、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、ダイシングした溝のサイドが変形(バンク)しないか、変形が良好に抑えられるという効果を発揮する。
メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS)樹脂
MABS(Methyl Methacrylate-Acrylonitrile-Butadiene-Styrene、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂は、透明ABS樹脂とも言われ、通常ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)にメチルメタクリレート成分が加わった樹脂である。
前記透明ABS樹脂は、メチルメタクリレートで変性され、特定のゴム粒径及びその割合によって透明性を達成したものである。かかる透明ABS樹脂は、メチルメタクリレートモノマーをアクリロニトリルやスチレンと共に共重合したもの、及び高ゴム含量のABS共重合体を、MAS共重合体(メチルメタクリレート・アクリロニトリル・スチレン共重合体)に均一に溶融混合したもの等を挙げることができる。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層(層を構成する樹脂組成物)が、MABS樹脂を含むことで、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、ダイシングした溝のサイドが変形(バンク)しないか、変形が良好に抑えられるという効果を発揮する。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、MABS樹脂は、メチルメタクリレート(M)単位が48重量%〜70重量%程度、アクリロニトリル(A)単位が1重量%〜5重量%程度、ブタジエン(B)単位が2重量%〜20重量%程度、及びスチレン(S)単位が25重量%〜50重量%程度からなることが好ましい。
MABSの密度は、1,000Kg/m3〜1,200Kg/m3程度が好ましく、1,050Kg/m3〜1,150Kg/m3程度がより好ましい。MABSの密度はISO 1183-1:2004に準拠して求めたものである。
MABSのISO 1133に準拠した温度200℃、荷重49Nで測定したMFR(メルトフローレート)は、1.0g/10分〜10.0g/10分程度が好ましく、1.5g/10分〜5.5g/10分程度がより好ましい。MABSのMFRを上記範囲とすることで、安定した製膜が可能となる。
ポリオレフィン(PO)系樹脂
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層(層を構成する樹脂組成物)が、PO系樹脂を含むことで、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、ダイシングした溝のサイドが変形(バンク)しないか、変形が良好に抑えられるという効果を発揮する。本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層が、PO系樹脂を含むことで、硬過ぎることなく、ダイシング工程時に、チップの欠けや飛びが発生しないという効果を発揮する。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層が、PO系樹脂を含むことで、ダイシング工程時に、半導体ウェハや半導体パッケージ(チップ)の欠けや飛びは発生しない、ダイシング工程が精度良く行われ、半導体ウェハや半導体パッケージウェハは割れないという効果を発揮する。
PO系樹脂としては、好ましくは、例えば、分岐鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン等のポリエチレン(PE)系樹脂、ポリプロピレン(PP)等のポリプロピレン(PP)系樹脂、プロピレン-α-オレフィン共重合体等が例示され、1種類を用いることや、又は2種類以上を適宜組合せて用いることができる。又はこれらの混合物を例示することができる。
前記α-オレフィンとしては、好ましくは、炭素数2以上(但し、炭素数3は除く)のα-オレフィンを挙げることができ、より好ましくは、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が例示できる。これらのα-オレフィンは、前記成分の中から、1種類を用いることや、又は2種類以上を適宜組合せて用いることができる。
PE系樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜8のオレフィン単量体との共重合体、又は、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体との共重合体である、ことが好ましい。
PE系樹脂は、ポリエチレン単位を主成分としてなる高分子であれば良く、例えば、エチレン単独重合体(エチレンホモポリマー)、エチレンと炭素数3〜8のオレフィン単量体との共重合体、又は、エチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体との共重合体等を好適に用いることができる。
PE系樹脂として共重合体を用いる時は、ポリエチレン単位を80重量%以上含有しているものが好ましく、90重量%以上含有しているものがより好ましい。
PE系樹脂の中でも、分岐鎖状低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体(EMMA)及びエチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)が好ましい。このうち、特に、LDPE、LLDPE等が好適である。PE系樹脂は、これら1種の成分を用いることができ、2種以上の成分を用いることもできる。
LDPEの密度は、915Kg/m3〜937Kg/m3程度が好ましく、917Kg/m3〜935Kg/m3程度がより好ましい。LDPEの密度はISO 1183-1:2004に準拠して求めたものである。
LDPEの融点は、100℃〜130℃程度が好ましい。
LDPEのISO 1133に準拠した温度190℃、荷重21.18Nで測定したMFR(メルトフローレート)は、0.3g/10分〜20g/10分程度が好ましく、0.5g/10分〜10g/10分程度がより好ましい。LDPEのMFRを上記範囲とすることで、安定した製膜が可能となる。
PP系樹脂としては、プロピレン単独重合体(ホモPP)、又はプロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体(ランダムコポリマーPP、ブロックコポリマーPP)を例示できる。
前記プロピレン以外のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数2〜20のプロピレン以外のα-オレフィンを挙げることができる。具体的には、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1-ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。この中、炭素数2〜4の、例えば、エチレン、ブテンが好ましく、エチレンがより好ましい。これらプロピレン以外のα-オレフィンは、1種であっても、2種以上の併用であってもよい。
プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体は、具体的には、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等を挙げることができる。この中、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
プロピレンとそれ以外のα-オレフィンとの共重合体として、プロピレンとエチレンとのランダムコポリマーPP、ホモポリプロピレン(ホモPP)及びポリエチレン(PE)を含むブロックコポリマーPP等が好ましい。
PPの密度は、850Kg/m3〜950Kg/cm3程度が好ましく、860Kg/m3〜920Kg/m3程度がより好ましい。PPの密度はISO 1183-1:2004に準拠して求めたものである。
PPの融点は、120℃〜160℃程度が好ましい。
PPのISO 1133に準拠した温度230℃、荷重21.18Nで測定したMFR(メルトフローレート)は、1.0g/10分〜15.0g/10分程度が好ましく、4.0g/10分〜13.0g/10分程度がより好ましい。PPのMFRを上記範囲とすることで、安定した製膜が可能となる。
ビニル芳香族炭化水素系樹脂
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層(層を構成する樹脂組成物)は、ビニル芳香族炭化水素系樹脂を含んでも良い。本発明のダイシング用基体フィルムでは、ビニル芳香族炭化水素系樹脂は、A層に含まれるMABS樹脂とPO系樹脂との間で、相溶化剤として機能する。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層は、ビニル芳香族炭化水素系樹脂ビニル芳香族炭化水素系樹脂として、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体、ビニル芳香族炭化水素と脂肪族不飽和カルボン酸エステルとの共重合体等を用いることが好ましく、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物を用いることが特に好ましい。
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン炭化水素との共重合体の水素添加物として、スチレン系単量体とジエン系単量体とのランダム共重合体の水素添加物や、スチレン系単量体とジエン系単量体とのブロック共重合体の水素添加物がある。これらを水添ランダム共重合体や水添ブロック共重合体とも呼ぶ。本発明のダイシング用基体フィルムでは、柔軟性、透明性等の点から、ランダム共重合体が好適である。
水添ランダム共重合体は、具体例として、式:-CH(C6H5)CH2-で示されるスチレン系単量体単位と、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位と、式:-CH(C2H5)CH2-で示されるブチレン単位とがランダムに結合している。
水添ブロック共重合体は、該共重合体の一端又は両末端にビニル芳香族炭化水素由来のブロックセグメントを有し、更に共役ジエン炭化水素由来のブロックセグメントを有するもの、或いはこれらをブレンドしたものの水素添加物等が挙げられる。ブロック共重合体、或いは水添ブロック共重合体は、具体例として、該共重合体の一端に、式:-CH(C6H5)CH2-で示されるスチレン系単量体由来のブロックセグメントを有し、その中程に、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位、及び/又は、式:-CH(C2H5)CH2-で示されるブチレン単位を含むブロックセグメントを有する。ブロック共重合体、或いは水添ブロック共重合体は、具体例として、該共重合体の他端に、式:-CH2CH2CH2CH2-で示されるエチレン単位を含むセグメントを有する。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、A層は、ビニル芳香族炭化水素系樹脂ビニル芳香族炭化水素系樹脂として、水添ブロック共重合体として、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶のブロックコポリマー(SEBC)やスチレン・エチレンブチレン・スチレンのブロックコポリマー(SEBS)を用いることが特に好ましい。
ビニル芳香族炭化水素系樹脂(SEBS等)の密度は、850Kg/m3〜1,100Kg/m3程度が好ましく、900Kg/m3〜1,050Kg/m3程度がより好ましい。ビニル芳香族炭化水素系樹脂の密度はISO 1183-1:2004に準拠して求めたものである。
ビニル芳香族炭化水素系樹脂(SEBS等)のISO 1133に準拠した温度230℃、荷重21.18Nで測定したMFR(メルトフローレート)は、1.0g/10分〜20.0g/10分程度が好ましく、3.0g/10分〜15.0g/10分程度がより好ましい。ビニル芳香族炭化水素系樹脂のMFRを上記範囲とすることで、安定した製膜が可能となる。
帯電防止剤
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、例えばA層等、表面に位置する層(層を構成する樹脂組成物)は、帯電防止剤を含むことが好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、表面に位置する層は、帯電防止剤を含むので、半導体チップを剥離する際に、剥離帯電が生じず、チップの回路が破損しないという効果を発揮する。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、帯電防止剤として、ポリエーテルエステルアミド樹脂(PEEA樹脂)及び親水性ポリオレフィン樹脂(親水性PO樹脂)からなる群から選ばれる少なくとも1種の成分を用いることが好ましい。
帯電防止剤の含有量は、層中(層を構成する樹脂組成物中)に、MABS樹脂及びPO系樹脂100重量部に対して、又は、MABS樹脂、PO系樹脂及びビニル芳香族炭化水素系樹脂100重量部に対して、10重量部〜30重量部程度好ましく、15重量部〜25重量部程度がより好ましい。帯電防止剤を前記範囲で配合することにより、本発明のフィルムの特性を損なうことなく、有効に、発生する静電気を素早く除電することができる。
ポリエステルエーテルアミド樹脂(PEEA樹脂)
ポリエーテルエステルアミド樹脂(PEEA樹脂)は、親水性付与の主たるユニット成分であるポリエーテルエステルと、ポリアミドユニットとから構成されるポリマーである。PEEA樹脂は、市販されているものも用いることや、公知の方法で容易に製造することができる。PEEA樹脂として、例えば、三洋化成工業株式会社のペレスタットNC6321等が例示される。
PEEA樹脂は、例えば、主鎖中にエーテル基を有するポリジオール成分にジカルボン酸成分を反応させて末端エステルに変え、これにアミノカルボン酸又はラクタムを反応させて製造することできる。本発明のダイシング用基体フィルムでは、PEEA樹脂は、アクリル系樹脂との相溶性が良く、ブリードアウトするような現象は一切ないことから、好ましく用いることができる。
親水性ポリオレフィン樹脂(ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体)
本発明のダイシング用基体フィルムでは、親水性PO樹脂(ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体)として、例えば、親水性ポリエチレン(親水性PE)、親水性ポリプロピレン(親水性PP)等を、少なくとも1種の成分を、好ましく用いることができる。
親水性PE及び親水性PP樹脂は、基本的にはポリエチレン鎖又はポリプロピレン鎖とポリオキシアルキレン鎖とがブロック結合したものである。親水性PE及び親水性PPは、高い除電作用が発揮されるので、静電気の蓄積をなくすことができる。前記ブロック結合は、エステル基、アミド基、エーテル基、ウレタン基等によって行われている。本発明のダイシング用基体フィルムでは、フィルム樹脂との相溶性の点から、前記ブロック結合は、エステル基又はエーテル基であることが好ましい。
ポリエーテル/ポリオレフィンブロック共重合体として、例えば、三洋化成工業株式会社のペレスタット、ペレクトロン等が例示される。
A層の樹脂組成
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、A層の樹脂組成物は、MABS樹脂を含み、MABS樹脂を5重量%〜70重量%程度含むことが好ましく、10重量%〜50重量%程度含むことがより好ましく、15重量%〜30重量%程度含むことが更に好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、A層の樹脂組成物は、PO系樹脂を含み、PO系樹脂を95重量%〜30重量%程度含むことが好ましく、90重量%〜50重量%程度含むことがより好ましく、85重量%〜70重量%程度含むことが更に好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、A層に含まれるMABS樹脂及びPO系樹脂を、前記範囲の配合組成とすることにより、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、ダイシングした溝のサイドが変形(バンク)しないか、変形が良好に抑えられるという効果を発揮する。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、A層の樹脂組成物は、更にビニル芳香族炭化水素系樹脂(SEBS樹脂等)を含む場合、MABS樹脂5重量%〜70重量%、PO系樹脂10重量%〜90重量%、ビニル芳香族炭化水素系樹脂を5重量%〜20重量%程度含むことが好ましく、MABS樹脂10重量%〜50重量%、PO系樹脂35重量%〜83重量%、ビニル芳香族炭化水素系樹脂を7重量%〜15重量%程度含むことがより好ましく、MABS樹脂15重量%〜30重量%、PO系樹脂58重量%〜76重量%、ビニル芳香族炭化水素系樹脂を9重量%〜12重量%程度含むことが更に好ましい。
(1-2)B層
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、B層は、ポリオレフィン(PO)系樹脂、アイオノマー樹脂、又はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含む樹脂組成物からなる。
上記アイオノマー樹脂は、オレフィンと不飽和カルボン酸とを構成単位とする共重合体である。オレフィンとしてはエチレン、プロピレン等が挙げられ、該不飽和カルボン酸として、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル等のメタクリル酸アルキルエステルを好ましく用いることができる。
アイオノマー樹脂は、エチレンと、前記(メタ)アクリル酸を構成単位とする二元共重合体や、エチレン、前記(メタ)アクリル酸及び前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルを構成単位とする三元共重合体が挙げられる。アイオノマー樹脂として、二元共重合体系アイオノマー樹脂、又は三元共重合体系アイオノマー樹脂中のカルボン酸の少なくとも一部を金属イオンで中和したものを好ましく用いることができる。
ここで用いられる金属イオンは、二価の金属イオン、三価の金属イオン等が挙げられる。二価の金属イオンとしてはMg2+、Ca2+、Ba2+、Ni2+、Zn2+、Fe2+、Co2+、Sn2+、Pb2+、Mn2+等が挙げられ、三価の金属イオンとしてはAl3+、Fe3+、Cr3+等が挙げられる。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、B層は、A層の隣に位置する層であり、チャックテーブル側に位置する層である。本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、B層は、チャックテーブルと良好に密着し、ダイシング用基体フィルムは動かないという効果を発揮する。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、B層が表面に位置する時は、帯電防止剤を含むことが好ましい。
本発明のダイシング用基体フィルムでは、更に、B層を挟んで、A層の反対面に位置する層(例えばC層)を設けても良い。C層は、B層で用いることができる樹脂組成物からなる。
本発明のダイシング用基体フィルムにおいて、C層が表面に位置する時は、帯電防止剤を含むことが好ましい。
本発明において、「表面に位置する層」とは、最外側の層のことをいう。
(1-3)ダイシング用基体フィルムの層構成
本発明のダイシング用基体フィルムは、少なくとも、A層/B層の順に積層されている。
本発明のダイシング用基体フィルムの全体の厚さとしては、50μm〜300μm程度が好ましく、80μm〜250μm程度がより好ましく、90μm〜220μm程度が更に好ましい。ダイシング用基体フィルムの全体の厚さを50μm以上に設定することにより、半導体ウェハ又は半導体パッケージをチップ状にダイシングする際に、半導体ウェハ又は半導体パッケージを衝撃から保護することが可能となる。
ダイシング用基体フィルムの具体例として、その全厚さが100μm〜200μm程度の場合を説明する。
A層の厚さは、50μm〜100μm程度が好ましく、60μm〜80μm程度がより好ましく、65μm〜75μm程度が更に好ましい。
B層の厚さは、10μm〜80μm程度が好ましく、20μm〜60μm程度がより好ましく、30μm〜50μm程度が更に好ましい。
(2)半導体パッケージ用のダイシング用基体フィルム
本発明のダイシング用基体フィルムは、半導体パッケージをダイシングする工程において使用されるダイシング用基体フィルムであることが好ましい。
半導体パッケージをダイシングする工程において、従来のダイシングフィルム(PP単膜等)を使用してダイシングを行うと、切り屑が発生し易く、パッケージを汚染する可能性が有った。例えば、ダイシングブレードで、半導体パッケージを乗せた状態で、従来のダイシングフィルムを用いてダイシングすると多くの切り屑が生じていた。また、切り屑が多いものには、ダイシングフィルムをダイシングした溝のサイドに大きな変形(バンク)が見られた。つまり、ダイシングフィルムをダイシングした溝のサイドが盛り上がる現象が生じていた。その切り屑は半導体パッケージを汚染してしまう可能性が有った。そして、半導体パッケージが汚染されると、通電不良や、屑が挟まること等により、ピックアップミスが起こる可能性が有った。
本発明のダイシング用基体フィルムは、半導体パッケージをダイシングする工程において用いても、切り屑が発生しない基体フィルムである。また、本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシングフィルムをダイシングした溝のサイドが変形(バンク)しないか、小さな変形で済み、切り屑が少ない基体フィルムである。
(3)ダイシング用基体フィルムの製法
本発明において、少なくともA層/B層の順に積層された3層構成のダイシング用基体フィルムは、A層及びB層の各層に用いる樹脂組成物を多層共押出成形して製造することができる。具体的には、各層を形成するための樹脂組成物を、A層/B層の順に積層されるよう共押出成形することにより製造することができる。
上記した各層用樹脂を、夫々この順でスクリュー式押出機に供給し、180〜240℃で多層Tダイからフィルム状に押出し、これを30〜70℃の冷却ロ−ルに通しながら冷却して、実質的に無延伸で引き取る。或いは、各層用樹脂を一旦ペレットとして取得した後、上記の様に押出成形しても良い。
引き取りの際に実質的に無延伸とするのは、ダイシング後に行うフィルムの拡張を有効
に行う利点がある為である。この実質的に無延伸とは、無延伸、或いは、ダイシングフィルムの拡張に悪影響を与えない程度の僅少の延伸を含むものである。通常、フィルム引き取りの際に、たるみの生じない程度の引っ張りであれば良い。
(4)ダイシングフィルムの製造
本発明のダイシングフィルムは、周知の技術に沿って製造することができる。例えば、粘着剤層を構成する粘着剤を有機溶剤等の溶媒に溶解させ、これをダイシング用基体フィルム上に塗布し、溶媒を除去することにより基体フィルム/粘着剤層の構成のフィルムを得ることができる。
以下に、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)ダイシング用基体フィルムの原料
表1にダイシング用基体フィルムの原料を示した。
Figure 2021012987
[略称の説明]
PP-1:ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂)
PP-2:ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂)
MABS:メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂
SEBS-1:ビニル芳香族炭化水素系樹脂(スチレン・エチレンブチレン・スチレンのブロックコポリマー)
SEBS-2:ビニル芳香族炭化水素系樹脂(スチレン・エチレンブチレン・スチレンのブロックコポリマー)
PE:ポリオレフィン系樹脂(分岐鎖状低密度ポリエチレン)
(2)A層/B層/C層のダイシング用基体フィルムの製造
表2に記載のA層/B層/C層(3層)となるように、各成分及び組成で樹脂組成物を配合し、ダイシング用基体フィルムを作製した。
各層を構成する樹脂組成物を、220℃に調整された夫々の押出機に投入しA層/B層/C層の順序になるように、220℃のTダイスにより押出し、積層し、30℃の冷却水が循環するチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層フィルムを得た。
Figure 2021012987
(3)ダイシング用基体フィルムの評価
(3-1)バンク高さ評価
<評価方法>
フィルムを、ダイシングを行うと形成された溝の脇にバンクが生じる。そのバンクの基材層表面からの平均高さを、計測手段として株式会社キーエンス製レーザー顕微鏡(VK-X100)を用いて測定し、以下の基準により評価した(表3)。
<評価基準>
〇:基材層表面からのバンク高さが45μm以下の高さである。バンク高さが低く、切り屑が発生していないか、切り屑の発生が抑えられている。
×:基材層表面からのバンク高さが45μmを超える高さである。バンク高さが高く、切り屑が発生している。
(3-2)切削屑評価
<評価方法>
フィルムを、株式会社ディスコ製のダイシング装置(DAD-2H/6)を用い、以下のブレードを用いてフィルム基材に、表面層から切り込み深さ40μm(A層への切り込み)の条件で切り込みを入れた。
ブレ−ド:ディスコ株式会社製
ブレ−ド:40,000rpm
カット速度:100mm/秒
カットサイズ:5mm角
カット深さ:40μm
<評価基準>
株式会社キーエンス製マイクロスコープ(VHX-100)用いて、目視で評価した(表3)。
〇:髭の様な切り屑が無い。
×:髭の様な切り屑が有る。
Figure 2021012987
本発明のダイシング用基体フィルムは、A層は、MABS樹脂及びPO系樹脂を含む樹脂組成物からなることで、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、ダイシングした溝のサイドが変形(バンク)しないか、変形が良好に抑えられるという効果を発揮した。
本発明のダイシング用基体フィルムは、ダイシングする際に、切削屑の発生が良好に抑えられ、ダイシングした溝のサイドが変形(バンク)しないか、変形が良好に抑えられると評価できる。

Claims (4)

  1. ダイシング用基体フィルムであって、
    該ダイシング用基体フィルムは、少なくとも、A層/B層の順に積層されており、
    前記A層は、ダイシングされる側であり、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(MABS)樹脂及びポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなり、
    前記B層は、ポリオレフィン系樹脂及び/又はビニル芳香族炭化水素系樹脂を含む樹脂組成物からなる、
    ダイシング用基体フィルム。
  2. 前記A層は、更にビニル芳香族系樹脂を含む、請求項1に記載のダイシング用基体フィルム。
  3. 表面に位置する層は、帯電防止剤を含む、請求項1又は2に記載のダイシング用基体フィルム。
  4. 半導体パッケージをダイシングする工程において使用される、請求項1〜3のいずれかに記載のダイシング用基体フィルム。
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