JP2021011895A - 鉄道車両用のブレーキパッド - Google Patents
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Description
この種の鉄道車両用ディスクブレーキ装置には、ブレーキパッドの押圧を駆動機構であるピストンが直接行うキャリパ式ブレーキ装置と、ブレーキパッドの押圧を駆動機構がリンク機構やウェッジカムを介して行う梃子式ブレーキ装置がある。
そして、偏摩耗したブレーキディスクの摩擦面に対して、交換された新品のブレーキパッドのライニングが圧接されると、ライニング内周側にバリが生じるという問題があった。
(1) 鉄道車両用の輪軸に装着されたブレーキディスクを跨ぐように台車側に固定されたブレーキキャリパに装着され、前記ブレーキディスクに押圧される鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記ブレーキパッドのライニング内周側には、ライニング表面に向って前記ブレーキディスクの回転中心から離れる方向に傾斜する逃げ部が設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
即ち、中心から外径に向って断面厚さが半放物線状に薄くなるように摩擦面が偏摩耗したブレーキディスクに対して、新品のブレーキパッドのライニングが圧接されると、ライニング内周側がブレーキディスクの中心側の傾斜した摩擦面と最初に当たる。この際、ライニング内周側に逃げ部が設けられたライニング表面の内側端は、逃げ部が設けられていないライニング表面の内側端よりもディスク外径側でブレーキディスクの傾斜した摩擦面に当たることができ、摩擦面の傾斜が緩くなった分だけ当たりが弱められる。
従って、逃げ部が設けられてブレーキディスクの摩擦面との当たりが弱められたライニング内周側にはバリが生じ難くなり、ライニングのバリ発生を抑制できる。
前記逃げ部は、傾斜角度が、15°〜32°の範囲の斜面である
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
即ち、ライニング内周側に設けられる逃げ部が、32°より大きい傾斜角度の斜面で形成された場合、逃げ部が設けられていない従来のブレーキパッドに比べて、ライニング表面の面積が減少し摩擦特性が悪化してしまう。そのため、駆動機構の駆動力を高める必要が生じ、鉄道車両用ディスクブレーキ装置のコストアップや大型化を招く虞がある。
また、ライニング内周側に設けられる逃げ部が、15°未満の傾斜角度の斜面で形成された場合、ブレーキディスクの中心側の傾斜した摩擦面との当たりを十分に弱めることができず、ライニングのバリ発生を確実に抑制することができない虞がある。
前記逃げ部の表面と前記ライニング表面との角部には、面取りが設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
前記逃げ部は、前記ブレーキパッドのライニング摩耗限度位置まで設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
前記ブレーキパッドが、複数に分割された分割パッドにより構成されている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
前記ブレーキパッドのライニングが、合成樹脂系の摩擦材により構成されている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
前記ブレーキパッドにおけるライニング表面のロータ回入側及びロータ回出側には、面取りが設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
図1の(a)は本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用のブレーキパッド10の斜視図、図1の(b)は図1の(a)に示したブレーキパッド10を裏板側から見た分解斜視図である。図2は図1の(a)に示したブレーキパッド10の正面図である。図3は図1の(b)に示した裏板の斜視図である。図4の(a)は図2におけるA−A断面矢視図、図4の(b)は図4の(a)の要部拡大断面図である。
本第1実施形態のブレーキパッド10は、図1及び図2に示すように、2つに分割された分割パッド11,13により構成されている。2個の分割パッド11,13は、突合せ面43を境に、裏板19、アンカプレート25、固定部27、及びライニング17が、左右対称形状で形成されている。なお、2個の分割パッド11,13は、左右対称形状である以外は同一の構成を有するので、本明細書中では同一の構成部材には同符号を付して説明する。
裏板19は、プレス加工により一体に形成される。裏板19は、図3に示すように、アンカプレート25の一対の平行な長辺部の一方に、蟻ほぞ根元部37を介して凸状円弧片部51が張り出して形成される。裏板19は、アンカプレート25の一対の平行な長辺部の他方に、蟻ほぞ根元部37を介して凹状円弧片部53が張り出して形成される。また、アンカプレート25の突き合わせ側と反対側の一方の短辺部には、小片部55が張り出して形成される。これら凸状円弧片部51、凹状円弧片部53、及び小片部55は、アンカプレート側の面のみを表出させて、固着されるライニング17に埋入される。これにより、裏板19にライニング17が固着した分割パッド11,13が形成される。
これら凸状円弧14及び凹状円弧18の中心は、鉄道車両用ディスクブレーキ装置1に用いられるブレーキディスク80(図6参照)の中心と一致する。なお、ブレーキパッド10の外形状は、これに限定されない。
逃げ部20は、図4の(a)に示すように、傾斜角度θが、15°〜32°の範囲の斜面とされることが望ましい。更に、逃げ部20の表面20aとライニング表面17aとの角部21には、図4の(b)に示すように、丸み面からなる面取りが設けられている。なお、面取りは、45°面取りでもよいことは云うまでもない。
鉄道車両用ディスクブレーキ装置1は、車両の台車71に支持されたブレーキ本体73と、中間部がブレーキ本体73に軸支された一対のアーム77,77とを有するブレーキキャリパ75を備える。ブレーキディスク80の摩擦面81に対向するアーム77の各開放端には、キャリパホルダ47を介してブレーキパッド10が取り付けられる。開放端と反対側のアーム77の基端部には、一対のアーム77の基端部を拡開方向へ駆動する駆動機構の出力部材(図示せず)が接続される。
図7の(a)は偏摩耗したブレーキディスク80に対する本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用のブレーキパッド10を示す要部断面図であり、図7の(b)は参考例に係る鉄道車両用のブレーキパッド510を示す要部断面図である。
即ち、ライニング内周側16に設けられる逃げ部20が、32°より大きい傾斜角度θの斜面で形成された場合、逃げ部20が設けられていない従来のブレーキパッドに比べて、ライニング表面17aの面積が減少し摩擦特性が悪化してしまう。そのため、駆動機構の駆動力を高める必要が生じ、鉄道車両用ディスクブレーキ装置1のコストアップや大型化を招く虞がある。
また、ライニング内周側16に設けられる逃げ部20が、15°未満の傾斜角度θの斜面で形成された場合、ブレーキディスク80の中心側の傾斜した摩擦面81aとの当たりを十分に弱めることができず、ライニング17のバリ発生を確実に抑制することができない虞がある。
本第2実施形態に係る鉄道車両用のブレーキパッド10Aは、ライニング内周側16に設けられた逃げ部20に加え、ライニング表面17aのロータ回入側41及びロータ回出側42には、面取り50が設けられている。
本第3実施形態に係る鉄道車両用のブレーキパッド10Bは、1枚の裏板19Bの表面に3つのライニング17Bが固着されている。
ライニング17Bは、例えば合成樹脂に摩擦材を混入して重合した合成樹脂系の摩擦材である。この他、ライニング17Bは、裏板19Bの表面に金属粉などの摩擦材が焼結されてもよい。
これら凸状円弧14B及び凹状円弧18Bの中心は、ブレーキディスク80の中心と一致する。なお、各ライニング17Bの外形状は、これに限定されない。
逃げ部20Bは、上記第1実施形態に係る鉄道車両用のブレーキパッド10における逃げ部20と同様に、傾斜角度θが、15°〜32°の範囲の斜面とされることが望ましい。更に、逃げ部20Bの表面20aとライニング表面17aとの角部21には、丸み面からなる面取りが設けられている。
例えば、上記実施形態では、ブレーキディスク80が、輪軸100の車軸95に装着されたディスクロータとして構成された場合について説明したが、輪軸100に装着されるブレーキディスクは、車輪90の厚さ方向両側面位置に配設された一対のブレーキディスクで構成することもできる。
[1] 鉄道車両用の輪軸(100)に装着されたブレーキディスク(80)を跨ぐように台車(71)側に固定されたブレーキキャリパ(75)に装着され、前記ブレーキディスク(80)に押圧される鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)であって、
前記ブレーキパッド(10,10A,10B)のライニング内周側(16,16B)には、ライニング表面(17a)に向って前記ブレーキディスク(80)の回転中心から離れる方向に傾斜する逃げ部(20,20B)が設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)。
[2] 上記[1]に記載の鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)であって、
前記逃げ部(20,20B)は、傾斜角度(θ)が、15°〜32°の範囲の斜面である
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)。
[3] 上記[1]又は[2]に記載の鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A)であって、
前記逃げ部(20)の表面(20a)と前記ライニング表面(17a)との角部(21)には、面取りが設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A)。
[4] 上記[1]〜[3]の何れか1つに記載の鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)であって、
前記逃げ部(20,20B)は、前記ブレーキパッド(10,10A,10B)のライニング摩耗限度位置(23)まで設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)。
[5] 上記[1]〜[4]の何れか1つに記載の鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A)であって、
前記ブレーキパッド(10,10A)が、複数に分割された分割パッド(11;11A,13;13A)により構成されている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A)。
[6] 上記[1]〜[5]の何れか1つに記載の鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)であって、
前記ブレーキパッド(10,10A,10B)のライニング(17,17B)が、合成樹脂系の摩擦材により構成されている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド(10,10A,10B)。
[7] 上記[1]〜[6]の何れか1つに記載の鉄道車両用のブレーキパッド(10A)であって、
前記ブレーキパッド(10A)におけるライニング表面(17a)のロータ回入側(41)及びロータ回出側(42)には、面取り(50)が設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド(10A)。
本発明に係る鉄道車両用のブレーキパッドのバリ抑制効果を確認するため、ディスクブレーキ試験機(株式会社東京衡機製)を用いて偏摩耗したブレーキディスクに対するブレーキパッドのライニング摩耗試験を行った。その試験内容を以下に示す。
(試験方法)
1.中心から外径に向って断面厚さが半放物線状に薄くなるように摩擦面が偏摩耗したブレーキディスク(図7参照)と、逃げ部の傾斜角度θが異なる試料1〜5のブレーキパッド(各サンプル5個)とを使用し、下記試験条件のブレーキパッド摩耗試験を行う。
2.回収した資料1〜5毎の各サンプル5個のブレーキパッドのライニング内周側における「バリの有無」及び「フチカケの有無」を確認する。
3.上記ブレーキパッド摩耗試験による判定結果を下記表1に示す。
判定基準
○:各サンプル5個中に、「バリ」及び「フチカケ」が全く無し
△:各サンプル5個中に、「フチカケ」が有り
×:各サンプル5個中に、「バリ」及び「フチカケ」が全て有り
試験速度:40km/h(ブレーキディスク直径610mm換算)
パッド押付力:20kN × 2
フライホイール慣性モーメント:1226kg・m2
制動回数:200回
材質:合成ディスクライニング
外周R:296mm
内周R:212mm
逃げ部20の傾斜角度θ:0°、9°、15°、18°、23°
また、逃げ部の傾斜角度θが32°より大きい場合、ライニング表面の面積が、逃げ部が設けられていないブレーキパッドに比べて10%以上減少してしまい、摩擦特性が許容範囲を超えてしまうので望ましくない。
16…ライニング内周側
17…ライニング
17a…ライニング表面
20…逃げ部
71…台車
75…ブレーキキャリパ
80…ブレーキディスク
100…輪軸
Claims (7)
- 鉄道車両用の輪軸に装着されたブレーキディスクを跨ぐように台車側に固定されたブレーキキャリパに装着され、前記ブレーキディスクに押圧される鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記ブレーキパッドのライニング内周側には、ライニング表面に向って前記ブレーキディスクの回転中心から離れる方向に傾斜する逃げ部が設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。 - 請求項1に記載の鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記逃げ部は、傾斜角度が、15°〜32°の範囲の斜面である
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。 - 請求項1又は2に記載の鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記逃げ部の表面と前記ライニング表面との角部には、面取りが設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載の鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記逃げ部は、前記ブレーキパッドのライニング摩耗限度位置まで設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。 - 請求項1〜4の何れか1項に記載の鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記ブレーキパッドが、複数に分割された分割パッドにより構成されている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。 - 請求項1〜5の何れか1項に記載の鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記ブレーキパッドのライニングが、合成樹脂系の摩擦材により構成されている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。 - 請求項1〜6の何れか1項に記載の鉄道車両用のブレーキパッドであって、
前記ブレーキパッドにおけるライニング表面のロータ回入側及びロータ回出側には、面取りが設けられている
ことを特徴とする鉄道車両用のブレーキパッド。
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