以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
実施の形態1.
本発明に係る実施の形態1のレーザ加工ヘッドを適用したレーザ加工装置について、図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100を適用したレーザ加工装置900を示す斜視図である。また、図2の(A)は、レーザ加工ヘッド100の部品搭載板55a、図2の(B)は、レーザ加工ヘッド100のカバー1、図2の(C)は、部品搭載板55aに各種部品を搭載してカバー1を取り付けたレーザ加工ヘッド100を示す斜視図である。
以下、図1に示すように、Z方向が鉛直方向、XY面が水平面となるように、XYZ直交座標を規定する。また、方向に正負の符号を付ける場合は、例えば、+Z方向は鉛直方向のうち上方向、−Z方向は鉛直方向のうち下方向を指すものとして以下で説明する。
図1に示すように、レーザ加工装置900は、レーザ加工ヘッド100と、レーザ光線を出力するレーザ光源としてのレーザ発振器2と、レーザ発振器2から出力されたレーザ光線をレーザ加工ヘッド100に伝送する光ファイバケーブル3と、レーザ加工ヘッド100が移動可能に取り付けられたアーム4と、アーム4が移動可能に備え付けられたベースユニット5と、被加工物を載せるテーブル6と、レーザ加工ヘッド100に窒素ガスを供給するコンプレッサー7と、窒素ガスを清浄化するフィルター8と、窒素ガスを伝送する配管9とを有する。
レーザ加工装置900において、レーザ加工ヘッド100は、そのレーザ光軸が鉛直方向すなわちZ方向を向くように、アーム4に取り付けられている。なお、レーザ光線は、レーザ加工ヘッド100からテーブル6に載せられた被加工物に向かって−Z方向に照射される。また、レーザ加工装置900は、鉛直方向すなわちZ方向と、水平方向すなわちXY面内の方向とに、レーザ加工ヘッド100が移動するための送り機構を有する。
レーザ加工装置900の構成について、さらに詳細を以下に説明する。
レーザ加工ヘッド100は、図2の(A)に示す部品搭載板55aと、図2の(B)に示すカバー1とを備える。部品搭載板55aは、光学系を主として構成する各種部品を搭載する板状の部材であり、長孔17aが設けられる。カバー1は、直方体形状をしたレーザ加工ヘッド100の4面の側面のうち、3面を覆うように構成された部分である。部品搭載板55aに、天板50及び底板60を含む各種部品を搭載し、カバー1を取り付けたレーザ加工ヘッド100は、図2の(C)に示す構成となる。すなわち、レーザ加工ヘッド100は、部品搭載板55aの1面とカバー1の3面とで構成される4面の側壁55と、上面を塞ぐ天板50と、下面を塞ぐ底板60とで構成される筐体を有する。筐体は、部品搭載板55aに長孔17aを有するものの、筐体内部を正圧に保つことが可能な程度に内部が閉じた空間となっている。レーザ加工ヘッド100は、部品搭載板55aに各種部品を搭載してからカバー1を取り付けるようになっており、カバー1を取り外すだけで内部が露わとなるので、部品交換が容易である。なお、図2の(C)では、保護ガラス13、流入口21及び流出口23は示しているが、筐体の構成をわかりやすく示すために、レーザ加工ヘッド100の筐体の内部に備えられる部品は省略している。レーザ加工ヘッド100に搭載される各種部品の詳細については後述する。
図1に示されるレーザ加工装置900において、レーザ発振器2は、レーザ光線を出力するレーザ光源である。なお、本実施の形態では、レーザ発振器2はファイバーレーザ発振器であるとして、以下説明する。レーザ発振器2から出力されたレーザ光線は、光ファイバケーブル3を通ってレーザ加工ヘッド100へと伝送される。
レーザ光線の伝送手段としての光ファイバケーブル3は、レーザ発振器2で出力されたレーザ光線をレーザ加工ヘッド100へ伝送する。光ファイバケーブル3は、ケーブルの中に光ファイバが内蔵されたものである。
アーム4は、ベースユニット5上に備え付けられており、ベースユニット5上でテーブル6を跨ぐように配置される。アーム4には、レーザ加工ヘッド100が取り付けられており、レーザ加工ヘッド100をX方向とZ方向とに移動させる送り機構が内蔵されている。よって、レーザ加工ヘッド100をX方向とZ方向とに移動させることができる。
ベースユニット5は、レーザ加工装置900の土台となっており、ベースユニット5上にはアーム4とテーブル6とが設けられている。ベースユニット5には、アーム4をY方向に移動させる送り機構が内蔵されており、アーム4をY方向に高速で移動させることができる。
テーブル6は、ベースユニット5上に設けられ、テーブル6の水平な面上すなわちXY面上に、被加工物が載せられる。すなわち、レーザ加工ヘッド100は、水平に置かれた被加工物に上方から−Z方向へレーザ光線を照射し、被加工物を加工する。
上記のアーム4とベースユニット5とに内蔵されたレーザ加工ヘッドの送り機構により、レーザ加工ヘッド100をXYZの3軸方向に自由に移動することができる。また、テーブル6をY方向に移動可能に構成して、アーム4のY方向の移動とテーブル6のY方向の移動との協調により加工速度を高速化できるように送り機構を構成してもよい。
なお、レーザ加工ヘッド100は、テーブル6のXY面に載せられた被加工物に対して−Z方向にレーザ光線を照射するように構成されているが、−Z方向だけでなく、XY面内の方向にもレーザ光線を出射し、被加工物を立体的に加工できるようにしてもよい。また、上記したレーザ加工装置900の送り機構は、これに限られるものではなく、X、Y、Zのうち少なくとも1つの軸について移動する送り機構を有するものとしてもよい。
コンプレッサー7は、レーザ加工装置900を設置している工場の窒素ガス供給設備、又はレーザ加工装置の近くに設置した窒素ガスボンベ等の気体供給源としての窒素ガス供給源から、レーザ加工ヘッドに窒素ガスを供給する。なお、気体供給源からレーザ加工ヘッドに気体を供給する手段としては、必ずしもコンプレッサー7を用いなくてもよい。
なお、本実施の形態及び他の実施の形態において、レーザ加工ヘッドに供給される気体が窒素ガスである場合について説明するが、これに限られるものではない。レーザ加工ヘッド100の筐体内を外部雰囲気に比べて正圧かつ清浄に保つために流入する気体としては、窒素ガス(N2)の他に、乾燥空気を用いてもよいし、アルゴンガス(Ar)、ヘリウムガス(He)等の不活性ガスを用いることもできる。また、ヘリウム/アルゴン混合ガス(He/Ar)、窒素/アルゴン混合ガス(N2/Ar)等の混合ガス、アシストガスとしての機能も有する酸素ガス(O2)等を用いてもよい。
フィルター8は、窒素ガス供給源からコンプレッサー7に供給された窒素ガスが、配管9を介してレーザ加工ヘッド100へ供給するまでの間に設けられる。フィルター8は、ガス内に含まれる例えば水分のようなコンタミのトラップと粒子状の異物の除去とを行う機能を有する。コンプレッサー7に供給された窒素ガスは、フィルター8を通過することで清浄な窒素ガスとなる。清浄な窒素ガスは、レーザ加工ヘッド100の流入口21から、レーザ加工ヘッド100の筐体内へと導入される。
次に、本発明に係る実施の形態1のレーザ加工ヘッドについて図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100の構成を説明するための断面図であり、レーザ加工ヘッド100の構成と、レーザ加工ヘッド100の保護ガラス13に取り付けられた光ファイバ11と、レーザ加工される側のテーブル6とテーブル6上に載せられた被加工物80とが示されている。また、さらに図3には、筐体内を正圧かつ清浄に保つ窒素ガスの流れがガス流路G1として複数の矢印で模式的に示されている。
まず、レーザ加工ヘッド100の構成について図3を用いて説明する。
レーザ加工ヘッド100は、側壁55と天板50と底板60とで形成される筐体と、出射端面11aからレーザ光線を出射する光ファイバ11が取り付けられ、レーザ光線10をレーザ加工ヘッド100の筐体内へ入射させるとともに、光ファイバ11の出射端面11aを保護する保護ガラス13と、光ファイバ11から入射されたレーザ光線10をレーザ加工に適するように整形する光学部品15と、光学部品15の位置を移動させる駆動装置17と、筐体内に窒素ガスが流入する流入口21と、流入した窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を下げる流速低下手段としての拡散板31と、筐体内の窒素ガスが流出する流出口23とを有する。なお、流出口23は、被加工物に照射するために光学部品15で整形されたレーザ光線10をレーザ加工ヘッド100から出射する出射部としての出射口の機能を兼ねている。また、本明細書では、レーザ光線10の整形の意味は、レーザ光線10のビーム形状を変える場合だけでなく、集光によりビームサイズを変える場合も含むものとして説明する。
筐体は、部品搭載板55aとカバー1とで形成される側壁55と、天板50と、底板60とからなる。部品搭載板55aに長孔17aが設けられているため、筐体内は密閉空間ではないが、筐体内部を正圧に保つことが可能な程度に閉じた空間になっている。なお、光学部品15の位置を移動させる必要が無い場合は、部品搭載板55aに長孔17aを設けず、筐体内を密閉空間としてもよい。
図1で示したレーザ加工装置900の光ファイバケーブル3に内蔵された光ファイバは、図3で示した光ファイバ11そのものである。光ファイバ11は、レーザ加工ヘッド100の天板50側の保護ガラス13に取り付けられ、保護ガラス13がレーザ加工ヘッド100におけるレーザ光線の入射部となっている。レーザ光線を伝送する光ファイバケーブル3に内蔵された光ファイバ11は、レーザ光線を出射端面11aから出射し、出射されたレーザ光線は、保護ガラス13を介してレーザ加工ヘッド100の筐体内にレーザ光線10aとして入射される。
保護ガラス13は、レーザ光線の入射部であり、レーザ加工ヘッド100の天板50に設けられる。保護ガラス13は、光ファイバ11の出射端面11aと接して設けられており、光ファイバ11の出射端面11aから出射されたレーザ光線をレーザ加工ヘッド100の筐体内に入射するとともに、光ファイバ11の出射端面11aを保護する。
レーザ光線10を整形する光学部品15は、レーザ加工ヘッド100の筐体内において、レーザ光線10の光路の途中に設けられる。光学部品15によって、レーザ光線10の集光、ビーム幅、焦点深度等を可変させレーザ光線を整形する。
また、光学部品15は、本実施の形態の一例として、第1の光学部品15aと第2の光学部品15bとからなる。第1の光学部品15aは、光ファイバ11から出射されたレーザ光線10aを整形して、レーザ光線10bを出射する。例えば、第1の光学部品15aがコリメートレンズの場合、第1の光学部品15aに入射したレーザ光線10aは、第1の光学部品15aでコリメートされたレーザ光線10bとなるように整形される。第2の光学部品15bは、第1の光学部品15aから出射されたレーザ光線10bを整形して、レーザ光線10cを出射する。例えば、第2の光学部品15bが対物レンズの場合、コリメートされたレーザ光線10bは、対物レンズでレーザ加工に適するビームサイズに集光されたレーザ光線10cとなるように整形される。第2の光学部品15bから出射されたレーザ光線10cは、流出口23を通り、被加工物80に向かって、レーザ光線10cが示す矢印の方向すなわち−Z方向にレーザ加工ヘッド100から出射される。なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、光学部品15は第1の光学部品15aと第2の光学部品15bの2枚からなる場合について説明するが、これに限られるものではなく、レーザ光線10のビームサイズや焦点深度に応じて、光学部品を3枚以上使用してもよいし、光学部品を1枚使用してもよいし、光学部品として光学マスクを使用してビーム形状を整形するようにしてもよい。
ここで、図4を参照して、光学部品15と駆動装置17との関係について説明する。図4は、光学部品15と駆動装置17とをZ方向から見た平面図である。
図4の(A)において、第1の光学部品15aがコリメートレンズの場合は、第1の光学部品15aは、レンズ15aaと、レンズ15aaを固定するレンズ枠15abと、レンズ枠15abと駆動装置17とを繋ぐ駆動アーム15acとからなる。同様に、図4の(B)において、第2の光学部品15bが対物レンズの場合は、第2の光学部品15bは、レンズ15baと、レンズ15baを固定するレンズ枠15bbと、レンズ枠15bbと駆動装置17とを繋ぐ駆動アーム15bcとからなる。なお、光学部品15に備えられるレンズ15aa及びレンズ15baは、これに限られるものではなく、被加工物のレーザ加工に適するようにレーザ光線10を整形して出射する光学部材であればよい。
第1の光学部品15aについてさらに詳細に説明する。レンズ枠15abと駆動アーム15acとは、窒素ガスの流れの妨げにならないように、Z方向から見た面積が最小になるように構成される。また、駆動アーム15ac上に異物が付着していても、駆動アーム15acに窒素ガスが到達する前に、拡散板31によって窒素ガスの流速が異物を巻き上げない程度まで下がっているため、付着異物が駆動アーム15acから巻き上がって移動するようなことが困難となっている。さらに、駆動アーム15acから付着異物が剥がれ落ちたとしても、レーザ加工ヘッド100の筐体内において−Z方向の気流が生じているため、駆動アーム15ac上から剥がれ落ちた浮遊異物はレンズ15aa及び第2の光学部品15bのレンズ15baには向かわず、レーザ加工ヘッド100の底部へ落ちるようになっている。以上は、第2の光学部品15bについても同様である。
また、ここで、図2及び図3を参照して、レーザ加工ヘッド100の部品搭載板55aについて詳細を説明する。部品搭載板55aは、図2の(A)及び図3に示すように、直方体形状のレーザ加工ヘッド100の4面ある側面のうちの1面を構成し、レーザ加工ヘッド100の部品が搭載される板状の部材である。部品搭載板55aには、図2の(A)及び図3に示すように、駆動装置17が駆動する範囲でZ方向に長い長孔17aが設けられる。長孔17aは、筐体内部を容易に正圧に保てるように、駆動装置17が可動となる範囲において最小の面積で設けられることが望ましい。
光学部品15の位置を移動させる駆動装置17は、部品搭載板55aの長孔17aに光学部品15の駆動アーム15ac及び駆動アーム15bcを支持して、筐体の外部に設けられる。駆動装置17は、サーボモータによってボールねじを回転させることで、第1の光学部品15aと第2の光学部品15bとの位置をZ方向に移動させる。駆動装置17により光学部品15の位置を調整することで、被加工物80に合わせてレーザ光線10のビームサイズ、焦点距離等を可変させ、レーザ光線を整形する。これによって、加工スピードの高速化ができ、また、加工対象となる材料を多様化することができる。なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、駆動装置17が1つの場合について説明するが、これに限られるものではなく、第1の光学部品15a用の駆動装置と、第2の光学部品15b用の駆動装置とを別々に備える等、光学部品の枚数及び種類に応じて、複数の駆動装置を備えてもよい。
図3に示されるように、流入口21は、レーザ加工ヘッド100の天板50に、保護ガラス13が設けられる位置とは別の位置に設けられる。レーザ加工装置900に備えられたフィルター8によって清浄化された窒素ガスが、流入口21からレーザ加工ヘッド100の筐体の内部へと流入される。また、流出口23は、レーザ加工ヘッド100の底板60に設けられ、レーザ加工ヘッド100の筐体内に流入された窒素ガスは、流出口23から筐体の外部へと流出される。レーザ加工ヘッド100の筐体の天板50に流入口21が設けられ、底板60に流出口23が設けられることにより、筐体内の窒素ガスは全体として−Z方向のダウンフローを作り出す。なお、流入口21はレーザ加工ヘッド100の天板50に設けられることが望ましいが、十分なスペースがない場合には、側壁55に取り付けられてもよい。ただし、流入口21が側壁55に取り付けられる場合には、天板50に近い位置に取り付け、レーザ加工ヘッド100の筐体内において窒素ガスの流れが全体としてダウンフローとなるようにする必要がある。
また、レーザ加工ヘッド100の筐体の内部を正圧かつ清浄に保つための気体としての窒素ガスは、一定以上の流量が必要となるため、流入口21からは高速の窒素ガスが流入されることになる。
流出口23は、内側が空洞になっており、レーザ加工ヘッド100の筐体の内部に流入した窒素ガスは流出口23から流出される。また、流出口23は、光ファイバ11から筐体内へと入射されたレーザ光線10が第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bを通りレーザ加工ヘッド100の外部へ出射される出射口としての機能を兼ねている。流出口23のXY面の方向における面積は、レーザ光線10の通過を妨げない範囲で、レーザ加工ヘッド100の筐体の内部のXY面の方向における面積よりも狭められて構成される。これによりレーザ加工ヘッド100の筐体の内部が正圧に保たれ、レーザ加工装置900の動作時において発生するガスや、被加工物から生じるスパッタ等がレーザ加工ヘッド100の筐体内へ逆流することを防ぐ。
ここで、レーザ加工装置900の動作終了時又は停電の場合は、レーザ加工ヘッド100の筐体内に窒素ガスが供給されなくなることが想定される。そうなると、レーザ加工ヘッド100の筐体の内部を正圧に保つことができなくなる。このときに備えて、流出口23からの気体や異物が侵入することを防ぐために、流出口23には逆流防止弁(図示せず)が設けられている。流出口23に設けられた逆流防止弁は、レーザ加工装置900の動作時には開き、レーザ加工装置900の動作が停止している時には閉じることで、逆流を防ぐものである。構造としては、レーザ加工ヘッド100の筐体の内側から窒素ガスによる正圧で押されると開き、内側からの正圧が無くなると閉じるものとする。また、レーザ加工装置900の動作時すなわち電源が入っているときには開き、レーザ加工装置900の停止時すなわち電源が切れているときには閉じるように、電磁構造によって制御してもよい。
拡散板31は、ニッケルめっきアルミニウムで平板状に構成される。また、ステンレス等の金属材料、ガラス、プラスチック等を使用してもよい。拡散板31の平面形状は特に指定されないが、例えば、四角形、円形等としてもよい。
拡散板31は、流入口21から流入される窒素ガスの流れにおいて、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bよりも上流側に設けられ、光学部品15の駆動を妨げない範囲に設置される。
拡散板31の面積は、流入口21のXY面の方向における面積より大きい。拡散板31の面積が流入口21の面積よりも大きいことによって、流入口21からレーザ加工ヘッド100の筐体内に流入した高速の窒素ガスは、拡散板31による拡散により流速が下げられる。すなわち、流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板31に当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散されることにより、流入口21からの流入時よりも流速が低下する。
また、拡散板31と流入口21とは、Z方向の平面視で、流入口21が拡散板31に完全に覆われる位置関係にある。これにより、流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板31に当たり、流速を下げることができる。なお、拡散板31と流入口21とはZ方向の平面視で完全に重なることが望ましいが、少なくとも一部が重なる構成としてもよい。拡散板31と流入口21との少なくとも一部が重なることで、流入口21から流入される窒素ガスの少なくとも一部の流速を下げることができる。
次に、レーザ加工ヘッド100における窒素ガスの流れについて、図3を用いて説明する。
レーザ加工装置900のコンプレッサー7から供給された窒素ガスは、フィルター8と配管9とを介して、レーザ加工ヘッド100の流入口21からレーザ加工ヘッド100の筐体の内部へと導入され、供給される。
既に説明しているように、レーザ加工ヘッド100における窒素ガスの流れを、図3ではガス流路G1として複数の矢印で模式的に示している。流入口21からレーザ加工ヘッド100の筐体の内部へと流入された高速の窒素ガスは、拡散板31に向かって流れ、拡散板31に当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散される。これによって、流入口21からの流入時よりも窒素ガスの流速が低下する。
流速が低下した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド100の筐体を構成する側壁55の内面に当たることで流れる向きが曲げられ、第1の光学部品15aの外周部へ向かい、第1の光学部品15aの外周部を通過した後、第2の光学部品15bの外周部を通過する。この際、光ファイバ11から保護ガラス13を介して出射されたレーザ光線10と同一方向へ向けた−Z方向の窒素ガスの流れが主流となる。よって、第1の光学部品15aと第2の光学部品15bとを移動させる際に駆動装置17のボールねじ等の機構部から生じて浮遊する異物を、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bに対して、−Z方向に運んでいく。
第2の光学部品15bの外周部を通過してレーザ加工ヘッド100の筐体内の底付近に達した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド100の筐体内の底板60に当たることで流れる向きが曲げられ、流出口23へ向かう。
このように構成されたレーザ加工ヘッド100の効果について説明する。
レーザ加工ヘッド100において、被加工物80上に集光されたレーザ光線10cのエネルギー密度が被加工物80の加工しきい値よりも高くなるように、レーザ光線10は整形されている。光学部品15は、レーザ光線10に対して高い透過率を有するため通常はレーザ光線10によって焼損されないが、光学部品15上に異物が存在する場合、レーザ光線10の照射によって異物が高温になり、溶融或いは破裂して光学部品15への焼き付きが生じ、損傷することがある。光学部品15が焼損すると、レーザ光線10が焼損箇所で散乱又は吸収され、所望のレーザ光線を出力できなくなる。したがって、光学部品15上に異物が付着しないことが望ましい。
また、レーザ加工ヘッド100は、外部から筐体内への異物の侵入を防ぐ必要がある。そのため、レーザ加工ヘッド100の筐体の内部を正圧かつ清浄に保つための気体としての窒素ガスは、一定以上の流量が必要となり、流入口21から流入される窒素ガスの流速は高速である。窒素ガスの流速が速いままレーザ加工ヘッド100の筐体内に流入されると、気流の乱れが生じ、レーザ加工ヘッド100の製造時に発生してレーザ加工ヘッド100の筐体内の底板60、側壁55、駆動アーム15ac及び駆動アーム15bc等に残留し付着した異物又は駆動装置17によって光学部品15の位置が移動される摺動によって発生し付着した異物を巻き上げ移動させることで、光学部品上に付着させてしまう。
そこで、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、流入口21からレーザ加工ヘッド100の筐体内へと流入された窒素ガスの流れは、流入口21から流入された後に拡散板31で拡散されることによって流速が下げられる。このとき、窒素ガスの流速は、レーザ加工ヘッド100の筐体内の底板60、側壁55、駆動アーム15ac及び駆動アーム15bc等に残留又は発生する異物を巻き上げるのに必要な流速よりも低下している。よって、窒素ガスの流れは、レーザ加工ヘッド100の筐体内に存在する異物を巻き上げず、光学部品15のレンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させることなく、流出口23からレーザ加工ヘッド100の外部へと流出される。同時に、窒素ガスの流れに乗った浮遊異物は、流出される窒素ガスと一緒にレーザ加工ヘッド100の外部へと排出される。
したがって、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、流入口21の下流に拡散板31を設けたことで、レーザ加工ヘッド100の筐体の内部を正圧かつ清浄にする窒素ガスの流速を下げることができ、レーザ加工ヘッド100の筐体内の異物を巻き上げず、レンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させないため、光学部品15に付着した異物にレーザ光線が当たることによって光学部品15が損傷することを防ぐという効果を奏する。
また、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、拡散板31によってレーザ加工ヘッド100の筐体内に流入された窒素ガスの流速を低下させ、流速が下げられた窒素ガスがレーザ加工ヘッド100の筐体内を通過していく。この結果、レーザ加工ヘッド100では、窒素ガスによって付着異物を巻き上げることなく、−Z方向の気流によって浮遊異物をレーザ加工ヘッド100の底部に落とす又はレーザ加工ヘッド100の外部に排出することができ、光学部品15及びその付近を清浄に保つことができるという効果を奏する。
さらに、レーザ加工ヘッド100の流出口23から排出される窒素ガスは、流出口23が狭められていることにより、その流速が速くなっている。このようにして、窒素ガスがレーザ加工ヘッド100の筐体内を通過するため、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド100を冷却することができるという効果を奏する。また、レーザ加工ヘッド100から排出される窒素ガスは流速が速くなっているため、流出口23の逆流防止弁が開いている場合であっても、流出口23から異物等がレーザ加工ヘッド100の筐体内へ侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。
なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、部品搭載板55aとカバー1とで側壁55が構成される場合について説明したが、これに限られるものではなく、筐体を備えたレーザ加工ヘッドであって、筐体の内部を正圧に保つことが可能な程度に閉じた空間となっていればよい。このとき、筐体の形状は直方体に限られず、例えば、円筒形であってもよい。
また、本実施の形態では、レーザ光源として、kW級のレーザ光線を出力することができる波長1μm帯のファイバーレーザを用いたファイバーレーザ加工装置のレーザ加工ヘッド100について説明したが、これに限られるものではなく、レーザ光源として、CO2(炭酸ガス)レーザ、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)レーザ、GaAs(ガリウムヒ素)レーザ、EUV(Extreme Ultraviolet・/極端紫外線)レーザ等の、波長12nmから15μmのレーザ光源を用いたレーザ加工装置に適用してもよい。
また、本実施の形態では、レーザ発振器2がファイバーレーザ発振器であるレーザ加工装置900にレーザ加工ヘッド100を適用する場合について説明したので、レーザ発振器2から出力されるレーザ光線をレーザ加工ヘッド100へ伝送する伝送手段として光ファイバ11を内蔵する光ファイバケーブル3を用いる構成を説明した。しかしながら、これらに限られるものではなく、レーザ加工ヘッドを適用するレーザ加工装置のレーザ光源に応じて、伝送手段及び入射部については、例えばミラー光学系等、異なる構成を用いてもよい。
このように構成されるレーザ加工装置900は、kW級のレーザ光線を出力できる構成では、板金部品(金属部品、自動車のパーツ、調理用の鉄板、フライパン等)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics/炭素繊維強化プラスチック)部品(自動車の軽量化部品、航空機部品等)、及び、樹脂部品の加工等に用いられる。また、W級のレーザ光線を出力できる構成では、プリント基板の穴あけ加工等に用いられる。
レーザ加工装置900を用いた製造工程の例として、板金部品の製造方法について図5を用いて工程を追って以下に説明する。図5は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100を適用したレーザ加工装置900を用いた板金部品の製造方法を示すフローチャートである。
まず、被加工物である金属板をレーザ加工装置900のテーブル6上に載置する(ステップS1)。加工データを入力し、金属板とレーザ加工ヘッド100との位置関係を設定する(ステップS2)。コンプレッサー7を動作させ、レーザ加工ヘッド100の流入口21に気体を流入する(ステップS3)。ステップS3では、流入された気体は、レーザ加工ヘッド100の流速低下手段である拡散板31によって筐体内に供給され、拡散されることで流速が低下する。ステップS3で筐体内に気体を供給してから待機時間が経過した後に、レーザ発振器2から光ファイバケーブル3を介してレーザ加工ヘッド100内にレーザ光線10を入射させ、レーザ加工ヘッド100からレーザ光線10を出射し、金属板の加工始点の1点を貫通する穴を開ける(ステップS4)。その後、入力された加工データに基づき、レーザ加工ヘッド100を可動させてレーザ光線10を出射して金属板を加工する(ステップS5)。加工終了後に、金属板を取り出す(ステップS6)。
このような板金部品の製造方法では、ステップS3において、流速低下手段である拡散板31を用いてレーザ加工ヘッド100の内部に気体を供給するようにしたので、レーザ加工ヘッド100の筐体内に異物が付着していても異物を巻き上げることが抑制される。また、レーザ加工ヘッド100に気体を導入した最初は気体の流れが乱れて、筐体内に存在する浮遊異物を流出口23から排出することができないことが懸念される。そこで、本実施の形態の板金部品の製造方法では、ステップS4において、気体の流れが安定する一定時間後までレーザ光線10を出射しないようにタイマー等を用いて制御することで、レーザ加工ヘッド100の筐体内の浮遊異物を安定した気体の流れに乗って速やかに流出口23から排出することができ、光学部品に異物を付着させ難くし、光学部品の損傷を低減することができる。これによって、レーザ加工ヘッド100の故障やレーザ光線の出力低下等を抑制できることから、効率的に板金部品を製造することができるという効果を奏する。
なお、レーザ加工装置900は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100が適用された場合について説明したが、これに限られるものではなく、レーザ加工装置900に本実施の形態のレーザ加工ヘッド100の変形例のレーザ加工ヘッドを適用してもよいし、他の実施の形態で説明するレーザ加工ヘッドを適用してもよい。また、板金部品の製造方法についても、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100を適用したレーザ加工装置900を用いた場合について説明したが、これに限られるものではなく、レーザ加工ヘッド100の変形例のレーザ加工ヘッドを適用してもよいし、他の実施の形態で説明するレーザ加工ヘッドを適用してもよい。
本発明に係る実施の形態1のレーザ加工ヘッドの第1の変形例について、図6を用いて説明する。図6の(A)は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100を変形したレーザ加工ヘッド101aの一部を示す要部断面図であり、図6の(B)は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100を変形したレーザ加工ヘッド101bの一部を示す要部断面図である。
本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、窒素ガスの流出口23がレーザ光線を出射する出射部としての出射口の機能を兼ねている、すなわち窒素ガスの流出口とレーザ光線の出射部とが同一に設けられる構成について説明したが、窒素ガスの流出口と別にレーザ光線を出射する出射部としての出射窓を設けてもよい。
一例として、図6の(A)に示すように、本実施の形態の第1の変形例であるレーザ加工ヘッド101aでは、レーザ光線10はレーザ加工ヘッド101aの底板60に設けられた出射窓43aから出射され、窒素ガスはレーザ加工ヘッド101aの底板60において出射窓43aの位置とは別の位置に設けられた流出口24aから排出される。
別の例として、図6の(B)に示すように、本実施の形態の第1の変形例の別の例であるレーザ加工ヘッド101bでは、レーザ光線10はレーザ加工ヘッド101bの底板60に設けられた出射窓43bから出射され、窒素ガスはレーザ加工ヘッド101bの側壁55に設けられた流出口24bから排出される。このとき、流出口24bは、レーザ加工ヘッド101b内に設けられた光学部品よりも気流の下流側に設けることで、窒素ガスによって光学部品を冷却することができる。
また、流出口24a及び流出口24bは、流出口23と同様に逆流防止弁の機能があり、レーザ加工ヘッド101a及びレーザ加工ヘッド101bの筐体内への外部からの異物やガス等の逆流を防いでいる。
なお、本実施の形態並びに本実施の形態の第1の変形例及び別の例では、それぞれ流出口23、流出口24a、流出口24bとして、レーザ加工ヘッドに流出口が1つ設けられる場合について説明したが、これに限られるものではなく、流出口23と流出口24aと流出口24bとを、任意の数で組み合わせて、2箇所以上設置してもよい。また、矛盾がない限りは、他の実施の形態で説明するレーザ加工ヘッドに上記の流出口を適用し、レーザ光線を出射する出射窓と窒素ガスの流出口とを別々に設けてもよいし、複数の流出口を有する構成としてもよい。
本発明に係る実施の形態1のレーザ加工ヘッドの第2の変形例について、図7を用いて説明する。図7は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100を変形したレーザ加工ヘッド102の構成を説明するための断面図である。
本実施の形態のレーザ加工ヘッド100では、窒素ガスの流入口21と拡散板31とがそれぞれ1つずつ設けられる構成について説明したが、流入口と拡散板とを複数設けてもよい。
図7に示すように、本実施の形態の第2の変形例であるレーザ加工ヘッド102では、天板50に、流入口21aと流入口21bとの2つの流入口を備え、さらに、筐体内の第1の光学部品15aよりも上流側に、拡散板31aと拡散板31bとの2つの拡散板を備えている。また、窒素ガスの流れをガス流路G1aとして複数の矢印で模式的に示すように、レーザ加工ヘッド100と同様に、流入口21aから流入される窒素ガスは拡散板31aにより拡散され、流入口21bから流入される窒素ガスは拡散板31bにより拡散される。
このように構成されたレーザ加工ヘッド102では、流入口を複数設けたことで、窒素ガスの全体としての流入量は変えずに、流入口21aと流入口21bとから流入される窒素ガスの流量をそれぞれ小さくできるため、流速をさらに下げることができ、異物の巻き上げを低減することができる効果を奏する。
なお、図7ではレーザ加工ヘッド102として流入口と拡散板とがそれぞれ2つずつ設けられる場合について説明したが、これに限られるものではなく、流入口と拡散板とはそれぞれ3つ以上設けてもよいし、流入口又は拡散板のみを複数設ける等、それぞれ任意の数で設けてもよい。また、矛盾がない限りは、他の実施の形態のレーザ加工ヘッドに組み合わせてもよい。
本発明に係る実施の形態1のレーザ加工ヘッドの第3の変形例について、図8を用いて説明する。図8は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド100を変形したレーザ加工ヘッド103の構成を説明するための断面図である。
図8に示すように、本実施の形態の第3の変形例であるレーザ加工ヘッド103では、天板50に流入口21cを備え、カバー1によって構成される側壁55のうち、部品搭載板55aに対面する面に流入口21dと流入口21eとの2つの流入口を備える。窒素ガスの流れをガス流路G1bとして複数の矢印で模式的に示すように、レーザ加工ヘッド100と同様に、流入口21cから流入される窒素ガスは、拡散板31により拡散される。拡散板31により拡散された窒素ガスは、部品搭載板55aに対面する面に設けられた流入口21d及び流入口21eから流入される窒素ガスによって、長孔17aを有する部品搭載板55aに向かう水平方向の流れとなる。水平方向に流れた窒素ガスは、部品搭載板55aに当たることで流れる向きが変えられ、光学部品15の外周部を通過して流出口23へと向かう。
このように構成されたレーザ加工ヘッド103では、流入口を複数設けたことで、窒素ガスの全体としての流入量は変えずに、流入口21c、21d、21eから流入される窒素ガスの流量をそれぞれ小さくできるため、流速をさらに下げることができ、異物の巻き上げを低減することができる効果を奏する。また、部品搭載板55aに対面する面に設けられる流入口21d及び流入口21eから窒素ガスが流入し、水平方向に部品搭載板55aに向かう流れを作ることによって、長孔17aからの異物の侵入を防ぐことができる効果を奏する。
なお、図8ではレーザ加工ヘッド103として天板50に流入口が1つ、側壁55に流入口が2つ、拡散板が1つ、それぞれ設けられる場合について説明したが、これに限られるものではなく、流入口と拡散板とはそれぞれ任意の位置において、任意の数で設けてもよい。また、矛盾がない限りは、他の実施の形態のレーザ加工ヘッドに組み合わせてもよい。
実施の形態2.
本発明に係る実施の形態2のレーザ加工ヘッドについて、図9及び図10を用いて説明する。図9は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド200の構成を説明するための断面図である。また、図10は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド200の拡散板32aを示す斜視図である。
本実施の形態のレーザ加工ヘッド200は、側壁55と天板50と底板60とで形成される筐体と、出射端面11aからレーザ光線10を出射する光ファイバ11が取り付けられ、レーザ光線10をレーザ加工ヘッド200の筐体内に入射させるとともに、光ファイバ11の出射端面11aを保護する保護ガラス13と、光ファイバ11から出射されたレーザ光線10をレーザ加工に適するように整形する光学部品15と、光学部品15の位置を移動させる駆動装置17と、筐体内に窒素ガスが流入する流入口21と、筐体内の窒素ガスが流出する流出口23とを有することは、実施の形態1で説明したレーザ加工ヘッド100と同様である。本実施の形態のレーザ加工ヘッド200は、流入した窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を下げる流速低下手段としての拡散板32aを有し、拡散板32aの形状が、実施の形態1で説明した拡散板31と異なる。なお、図9には、筐体内を正圧かつ清浄に保つ窒素ガスの流れがガス流路G2aとして複数の矢印で模式的に示されている。
まず、拡散板32aの構成について説明する。
拡散板32aは、ニッケルめっきアルミニウムで構成される。また、ステンレスなどの金属材料、ガラス、プラスチック等を使用してもよい。拡散板32aの平面形状は、図10に示すように、四角形である。なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド200では、拡散板32aの平面形状が四角形の場合について説明するが、これに限られるものではなく、例えば略四角形で角を丸くした形状であってもよいし、円形等としてもよい。
拡散板32aは、流入口21から流入される窒素ガスの流れにおいて、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bよりも上流側に設けられ、光学部品15の駆動を妨げない範囲に設置される。
拡散板32aは、図10に示すように、レーザ光線10のビーム径よりも十分大きい円形の光路孔32aaと、拡散面32abとを有しており、レーザ光線10の光路上に光路孔32aaが位置するように配置される。拡散板32aが光路孔32aaを有することによって、レーザ光線10を妨げることなく、窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を低下させることができる。なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド200では、光路孔32aaが円形の場合について説明するが、これに限られるものではなく、例えばビーム径よりも十分大きい四角形であってもよい。
拡散板32aの面積は、流入口21の面積より大きく、かつ、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bの面積よりも大きい。また、拡散板32aとレーザ加工ヘッド200の側壁55との隙間は、流入口21の水平方向の面積よりも大きい。これらによって、流入口21からレーザ加工ヘッド200の筐体内に流入した高速の窒素ガスは、拡散板32aによる拡散により、流速を下げることができる。流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板32aに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散されることにより、流入口21からの流入時よりも流速が低下する。
また、拡散板32aと流入口21とは、Z方向の平面視で、流入口21が拡散板32aの光路孔32aaに重ならず、流入口21が拡散板32aの拡散面32abに完全に重なるような位置に設けられる。これにより、流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板32aの拡散面32abに当たり、流速が下げられる。なお、拡散面32abと流入口21とはZ方向の平面視で完全に重なることが望ましいが、流入口21の少なくとも一部が拡散面32abと重なり、残部が拡散板32aと重ならない又は光路孔32aaと重なる構成としてもよい。拡散面32abと流入口21との少なくとも一部が重なることで、流入口21から流入される窒素ガスの少なくとも一部の流速を下げることができる。
次に、レーザ加工ヘッド200における窒素ガスの流れについて図9を用いて説明する。
レーザ加工ヘッド200における窒素ガスの流れを、ガス流路G2aとして複数の矢印で模式的に示す。流入口21からレーザ加工ヘッド200の筐体内へと流入された高速の窒素ガスは、拡散板32aに向かって流れ、拡散板32aの拡散面32abに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散される。これによって、流入口21からの流入時よりも窒素ガスの流速が低下する。
流速が低下した窒素ガスは、主にレーザ加工ヘッド200の筐体内の側壁55まで拡散される。側壁55へと拡散された窒素ガスは、レーザ加工ヘッド200の筐体内の側壁55に当たることで流れる向きが曲げられ、拡散板32aと側壁55との間から、−Z方向に向けて流れる。拡散板32aと側壁55との間は、細長いスリット状になっているため、窒素ガスは層状となって流れる。層状となった窒素ガスは、光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように流れるため、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド200の筐体内へ侵入するのを妨げることができる。また、駆動装置17のボールねじ等の機構部から生じる異物が長孔17aから筐体内へ侵入したとしても、気流によって、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bに対して−Z方向に運んでいくことができる。
また、拡散板32aに当たって流速が低下した窒素ガスの一部は、拡散板32aの光路孔32aaへと流れ、レーザ光線10aと同じ−Z方向に流れる。光路孔32aaへと流れた窒素ガスは、流入口21から流入された後に拡散板32aで拡散されることによって流速が下げられている。このとき、窒素ガスの流速は、レーザ加工ヘッド200の第1の光学部品15a上若しくはその付近に残留又は発生する異物を巻き上げるのに必要な流速よりも低下している。よって、窒素ガスは、第1の光学部品15a又はその周辺に存在する異物を巻き上げず、第1の光学部品15aのレンズ15aaに異物を付着させることなく、第1の光学部品15aに当たることで曲げられ、第1の光学部品15aの周囲へと−Z方向に流れる。
光学部品15の外周部を通過してレーザ加工ヘッド200内部の底付近に達した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド200の筐体内の底板60に当たることで流れる向きが曲げられ、流出口23へ向かう。
レーザ加工ヘッド200の効果について説明する。
このように構成されたレーザ加工ヘッド200にあっても、流入口21の下流に拡散板32aを設けたことで、レーザ加工ヘッド200の筐体内を正圧かつ清浄にする窒素ガスの流速を下げることができ、レーザ加工ヘッド200の筐体内の異物を巻き上げず、レンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させないため、光学部品15に付着した異物にレーザ光線が当たることによって光学部品15が損傷することを防ぐという効果を奏する。
また、本実施の形態のレーザ加工ヘッド200では、拡散板32aによってレーザ加工ヘッド200の筐体内に流入された窒素ガスの流速を低下させ、流速が下げられた窒素ガスがレーザ加工ヘッド200の筐体内における光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように通過していく。この結果、レーザ加工ヘッド200では、窒素ガスによって異物を巻き上げることなく、−Z方向の気流によって異物をレーザ加工ヘッド200の底部に落とすことができる上、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド200の内部に侵入するのを妨げることができ、光学部品15及びその付近を清浄に保つことができるという効果を奏する。
さらに、レーザ加工ヘッド200の流出口23から排出される窒素ガスは、流出口23が狭められていることにより、その流速が速くなっている。このようにして、窒素ガスがレーザ加工ヘッド200の筐体内を通過するため、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド200を冷却することができるという効果を奏する。特に、拡散板32aには光路孔32aaが設けられており、光路孔32aaから−Z方向に流れた窒素ガスが第1の光学部品15aに当たることから、レーザ加工ヘッド200は、レーザ光線10によって高温に加熱された光学部品15を効率的に冷却することができる効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド200から排出される窒素ガスは流速が速くなっているため、流出口23の逆流防止弁が開いている場合であっても、流出口23から異物等がレーザ加工ヘッド200の筐体内へ侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。
本実施の形態のレーザ加工ヘッドの変形例について、図11及び図12を用いて説明する。
図11は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド200の変形例として、レーザ加工ヘッド201の構成を説明するための断面図である。また、図12は、レーザ加工ヘッド201の拡散板32bを示す斜視図である。レーザ加工ヘッド201は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド200の拡散板32aに代えて、拡散板32bを用いたものである。なお、図11には、筐体内を正圧かつ清浄に保つ窒素ガスの流れがガス流路G2bとして複数の矢印で模式的に示されている。
まず、拡散板32bの構成について説明する。なお、以下では拡散板32bが拡散板32aと異なる点を主に説明し、共通する点については一部説明を省略する。
拡散板32bは、図12に示すように、レーザ光線10のビーム径よりも十分大きい光路孔32baを有しており、光路孔32baに、レーザ光線10の透過率が高い光学部品であるレーザ光線透過部品32bcが嵌められている。拡散板32bは、レーザ光線10の光路上にレーザ光線透過部品32bcが位置するように配置される。この光路孔32baに嵌められたレーザ光線透過部品32bcによって、レーザ光線10を妨げることなく、窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を低下させることができる。
拡散板32bの拡散面32bbは、ニッケルめっきアルミニウムで構成される。また、ステンレスなどの金属材料、ガラス、プラスチック等を使用してもよい。また、拡散板32bのレーザ光線透過部品32bcは、レーザ光線10を透過する光学部品によって構成される。
拡散板32bは、流入口21から流入される窒素ガスの流れにおいて、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bよりも上流側に設けられ、光学部品15の駆動を妨げない範囲に設置される。
拡散板32bの面積は、流入口21の面積より大きく、かつ、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bの面積よりも大きい。また、拡散板32bとレーザ加工ヘッド201の側壁との隙間は、流入口21の面積よりも大きい。これらによって、流入口21からレーザ加工ヘッド201の内部に流入した高速の窒素ガスは、拡散板32bによる拡散により、流速を下げることができる。流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板32bに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散されることにより、流入口21からの流入時よりも流速が低下する。
また、拡散板32bと流入口21とは、Z方向の平面視で、流入口21が拡散板32bに完全に重なるような位置に設けられる。これにより、流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板32bに当たり、流速が下げられる。なお、拡散板32bと流入口21とはZ方向の平面視で完全に重なることが望ましいが、流入口21の少なくとも一部が拡散板32bと重なる構成としてもよい。拡散板32bと流入口21との少なくとも一部が重なることで、流入口21から流入される窒素ガスの少なくとも一部の流速を下げることができる。
次に、レーザ加工ヘッド201における窒素ガスの流れについて図11を用いて説明する。
レーザ加工ヘッド201における窒素ガスの流れを、ガス流路G2bとして複数の矢印で模式的に示す。流入口21からレーザ加工ヘッド201の筐体内へと流入された高速の窒素ガスは、拡散板32bに向かって流れ、拡散板32bに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散される。これによって、流入口21からの流入時よりも窒素ガスの流速が低下する。
流速が低下した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド201の筐体内の側壁55まで拡散される。側壁55へと拡散された窒素ガスは、レーザ加工ヘッド201の筐体内の側壁55に当たることで流れる向きが曲げられ、拡散板32bと側壁55との間から、−Z方向に向けて流れる。このとき、窒素ガスの流速は、レーザ加工ヘッド201の内部に残留又は発生する異物を巻き上げるのに必要な流速よりも低下している。よって、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド201の筐体内に存在する異物を巻き上げず、光学部品15のレンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させることなく流れていく。
拡散板32bと側壁55との間は、細長いスリット状になっているため、窒素ガスは層状となって流れる。層状となった窒素ガスは、光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように流れるため、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド201の筐体内に侵入するのを妨げることができる。また、駆動装置17のボールねじ等の機構部から生じる異物が長孔17aから侵入したとしても、気流によって第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bに対して、−Z方向に運んでいくことができる。なお、拡散板32bの光路孔32baにはレーザ光線透過部品32bcが嵌められているため、レーザ加工ヘッド201では、レーザ加工ヘッド200とは異なり、窒素ガスは光路孔32baを通過しない。
光学部品15の外周部を通過してレーザ加工ヘッド201内部の底付近に達した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド201の筐体内の底板60に当たることで流れる向きが曲げられ、流出口23へ向かう。
レーザ加工ヘッド201の効果について説明する。
このように構成されたレーザ加工ヘッド201にあっても、レーザ加工ヘッド200と同様に、光学部品15に付着した異物にレーザ光線が当たることによって光学部品15が損傷することを防ぐという効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド201では、拡散板32bによってレーザ加工ヘッド201の筐体内に流入された窒素ガスの流速を低下させ、流速が下げられた窒素ガスがレーザ加工ヘッド201の筐体内における光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように通過していく。この結果、レーザ加工ヘッド201では、窒素ガスによって異物を巻き上げることなく、−Z方向の気流によって異物をレーザ加工ヘッド201の底部に落とすことができる上、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド201の筐体内に侵入するのを妨げることができ、光学部品15及びその付近を清浄に保つことができるという効果を奏する。特に、レーザ加工ヘッド201では、拡散板32bで拡散された窒素ガスは光学部品15と駆動装置17との間の流れが主流となるため、この効果が期待される。
さらに、レーザ加工ヘッド201の流出口23から排出される窒素ガスは、流出口23が狭められていることにより、その流速が速くなっている。このようにして、窒素ガスがレーザ加工ヘッド201の筐体内を通過するため、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド201を冷却することができるという効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド201から排出される窒素ガスは流速が速くなっているため、流出口23の逆流防止弁が開いている場合であっても、流出口23から異物等がレーザ加工ヘッド201の筐体内へ侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。
さらに、レーザ加工ヘッド201では、拡散板32bの光路孔32baにレーザ光線透過部品32bcが嵌められているため、Z方向の平面視で拡散板32bが光学部品15を完全に覆うように構成される。したがって、レーザ加工ヘッド201の保護ガラス13に、光ファイバケーブル3の光ファイバ11を取り付ける際に、光学部品15上に異物が落ちて付着することを防止することができる。ここで、拡散板32bのレーザ光線透過部品32bc上に異物が付着すると焼損が懸念されるが、拡散板32bは、駆動装置17に取付けられる光学部品15よりも簡単に着脱ができるため、異物が付着した場合は交換することが可能である。したがって、光学部品15への異物の付着を防止し、損傷することを防ぐことができるという効果を奏する。
実施の形態3.
本発明に係る実施の形態3のレーザ加工ヘッドについて、図13及び図14を用いて説明する。図13は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300の構成を説明するための断面図である。また、図14は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300の拡散板33を示す斜視図である。
本実施の形態のレーザ加工ヘッド300は、側壁55と天板50と底板60とで形成される筐体と、出射端面11aからレーザ光線10を出射する光ファイバ11が取り付けられ、レーザ光線10をレーザ加工ヘッド300の筐体内に入射させるとともに、光ファイバ11の出射端面11aを保護する保護ガラス13と、光ファイバ11から出射されたレーザ光線10をレーザ加工に適するように整形する光学部品15と、光学部品15の位置を移動させる駆動装置17と、筐体内に窒素ガスが流入する流入口21と、筐体内の窒素ガスが流出する流出口23とを有することは、実施の形態1で説明したレーザ加工ヘッド100と同様である。本実施の形態のレーザ加工ヘッド300は、流入した窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を下げる流速低下手段としての拡散板33を有し、拡散板33の構成は、実施の形態2で説明した拡散板32aと対応する。レーザ加工ヘッド300は、拡散板33がレーザ加工ヘッド300の内部において複数設けられる点が、実施の形態1及び実施の形態2で説明したレーザ加工ヘッドと異なる。なお、図13には、筐体内を正圧かつ清浄に保つ窒素ガスの流れがガス流路G3として複数の矢印で模式的に示されている。
まず、拡散板33の構成について説明する。
拡散板33は、窒素ガスの流入口21と第1の光学部品15aとの間に設けられる第1の拡散板33aと、第1の光学部品15aと第2の光学部品15bとの間に設けられる第2の拡散板33bとからなる。なお、第1の拡散板33a及び第2の拡散板33bの形状、材質、Z方向の平面視での位置については、実施の形態2で説明した拡散板32aと同じため、説明を一部省略する。
第1の拡散板33aは、流入口21から流入される窒素ガスの流れにおいて、第1の光学部品15aよりも上流側に設けられ、第1の光学部品15aの駆動を妨げない範囲に設置される。また、第2の拡散板33bは、第1の光学部品15aと第2の光学部品15bとの間において、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bの駆動を妨げない範囲に設置される。
第1の拡散板33a及び第2の拡散板33bは、実施の形態2で説明した拡散板32aと同様に、光路孔33aa、光路孔33baをそれぞれ有する。この光路孔33aaと光路孔33baによって、レーザ光線10を妨げることなく、窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を低下させることができる。
ここで、第1の拡散板33aと第2の拡散板33bとの水平方向での大きさについて、図15を用いて説明する。図15は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300の拡散板の大きさについて説明するために簡略化したレーザ加工ヘッド300の要部断面図である。
図15の(A)に示すように、第1の拡散板33aと第2の拡散板33bの大きさが同程度の場合は、第1の拡散板33aと側壁55との間を−Z方向に流れる気流は、ガス流路G3aで示すように、真下に向かって流れる気流となって、第2の拡散板33bと側壁55との間を通過していく。この場合は、ガス流路G3aがエアカーテンのように働くため、部品搭載板55aに設けられた長孔17aからレーザ加工ヘッド300の筐体内へと異物が侵入することを防ぐことができる。
また、図15の(B)に示すように、第1の拡散板33aが第2の拡散板33bよりも小さい場合は、第1の拡散板33aと側壁55との間を通過した窒素ガスは、ガス流路G3bで示すように、側壁55に向かって斜め外向きに−Z方向に流れる気流となる。この場合は、ガス流路G3bがエアカーテンのように働く上、部品搭載板55aに設けられた長孔17aからレーザ加工ヘッド300の筐体内へと異物が侵入することを押し返すような気流となっており、異物の侵入をさらに防ぐことができる。
一方で、図15の(C)に示すように、第1の拡散板33aが第2の拡散板33bよりも大きい場合は、第1の拡散板33aと側壁55との間を通過した窒素ガスは、ガス流路G3cで示すように、レーザ加工ヘッド300の筐体内へと斜め内向きに−Z方向に流れる気流となる。よってこの場合は、部品搭載板55aに設けられた長孔17aからレーザ加工ヘッド300の筐体内へ異物を吸い込む気流となってしまい、好ましくない。
以上より、第1の拡散板33aと第2の拡散板33bの大きさは、図15の(A)又は(B)のように構成されることが望ましく、すなわち、同等、又は、第2の拡散板33bの方が大きいことが望ましいといえる。なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300では、図13を参照して、第1の拡散板33aと第2の拡散板33bの大きさが同等の場合について説明する。
また、図14に示す第1の拡散板33aの中心軸A1と第2の拡散板33bとの中心軸A2とは、レーザ加工ヘッド300に設置する際に揃える必要がある。第1の拡散板33aと第2の拡散板33bとの中心軸が揃っていないと、乱気流が発生するためである。
次に、レーザ加工ヘッド300における窒素ガスの流れについて図13を用いて説明する。
レーザ加工ヘッド300における窒素ガスの流れを、ガス流路G3として複数の矢印で模式的に示す。流入口21からレーザ加工ヘッド300の筐体内へと流入された高速の窒素ガスは、第1の拡散板33aに向かって流れ、第1の拡散板33aに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散される。これによって、流入口21からの流入時よりも窒素ガスの流速が低下する。
流速が低下した窒素ガスは、主にレーザ加工ヘッド300の筐体内の側壁55まで拡散される。側壁55へと拡散された窒素ガスは、レーザ加工ヘッド300の筐体内の側壁55に当たることで流れる向きが曲げられ、第1の拡散板33aと側壁55との間から、−Z方向に向けて流れる。第1の拡散板33aと側壁55との間は、細長いスリット状になっているため、窒素ガスは層状となって流れる。層状となった窒素ガスは、第1の光学部品15aと駆動装置17との間をエアカーテンのように流れるため、駆動装置17の動作時に生じる異物がレーザ加工ヘッド300の筐体内へ侵入するのを妨げることができる。また、駆動装置17のボールねじ等の機構部から生じる異物が長孔17aから筐体内へと侵入したとしても、気流によって、光学部品に対して−Z方向に運んでいくことができる。
また、第1の拡散板33aに当たって流速が低下した窒素ガスの一部は、第1の拡散板33aの光路孔33aaへと流れ、レーザ光線10と同じ−Z方向に流れる。光路孔33aaへと流れた窒素ガスは、流入口21から流入された後に第1の拡散板33aで拡散されることによって流速が下げられている。このとき、窒素ガスの流速は、レーザ加工ヘッド300の第1の光学部品15a上又はその付近に残留又は発生する異物を巻き上げるのに必要な流速よりも低下している。よって、窒素ガスは、第1の光学部品15a又はその周辺に存在する異物を巻き上げず、第1の光学部品15aのレンズ15aaに異物を付着させることなく、第1の光学部品15aに当たることで曲げられ、第1の光学部品15aの周囲へと−Z方向に流れる。
第1の光学部品15aの外周部を通過した窒素ガスは、主に、第2の拡散板33bと側壁55との間から、−Z方向に向けて流れる。第2の拡散板33bと側壁55との間は、細長いスリット状になっているため、窒素ガスは層状となって流れる。層状となった窒素ガスは、第2の光学部品15bと駆動装置17との間をエアカーテンのように流れるため、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド300の筐体内へ侵入するのを妨げることができる。また、駆動装置17のボールねじ等の機構部から生じる異物が長孔17aから筐体内へ侵入したとしても、気流によって第2の光学部品15bに対して、−Z方向に運んでいくことができる。
また、一部の窒素ガスは、第2の拡散板33bの光路孔33baへと流れ、レーザ光線10と同じ−Z方向に流れる。光路孔33baへと流れた窒素ガスは、流速が下げられているため、第2の光学部品15b又はその周辺に存在する異物を巻き上げず、第2の光学部品15bのレンズ15baに異物を付着させることなく、第2の光学部品15bに当たることで曲げられ、第2の光学部品15bの周囲へと−Z方向に流れる。
以上のようにして光学部品15の外周部を通過してレーザ加工ヘッド300の筐体内の底付近に達した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド300の筐体内の底板60に当たることで流れる向きが曲げられ、流出口23へ向かう。
レーザ加工ヘッド300の効果について説明する。
このように構成されたレーザ加工ヘッド300にあっても、流入口21の下流に第1の拡散板33aを設けたことで、レーザ加工ヘッド300の筐体内を正圧かつ清浄にする窒素ガスの流速を下げることができ、レーザ加工ヘッド300の筐体内の異物を巻き上げず、レンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させないため、光学部品15に付着した異物にレーザ光線が当たることによって光学部品15が損傷することを防ぐという効果を奏する。
また、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300では、第1の拡散板33aによってレーザ加工ヘッド300の内部に流入された窒素ガスの流速を低下させ、流速が下げられた窒素ガスがレーザ加工ヘッド300の筐体内における光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように通過していく。この結果、レーザ加工ヘッド300では、窒素ガスによって異物を巻き上げることなく、−Z方向の気流によって異物をレーザ加工ヘッド300の底部に落とすことができる上、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド300の筐体内に侵入するのを妨げることができ、光学部品15及びその付近を清浄に保つことができるという効果を奏する。
特に、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300のでは、第1の拡散板33aに加え、第2の拡散板33bを設けたことにより、レーザ加工ヘッド300の底部まで、層状の流れを保ったまま窒素ガスが流れ、第2の光学部品15bの下方においても、エアカーテンのように流れることができる。したがって、駆動装置17の動作時に生じる異物等が長孔17aからレーザ加工ヘッド300の筐体内に侵入するのをより広い範囲で防ぐことができるという効果を奏する。
さらに、レーザ加工ヘッド300の流出口23から排出される窒素ガスは、流出口23が狭められていることにより、その流速が速くなっている。このようにして、窒素ガスがレーザ加工ヘッド300の筐体内を通過するため、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド300を冷却することができるという効果を奏する。特に、第1の拡散板33aには光路孔33aaが、第2の拡散板33bには光路孔33baが設けられており、光路孔33aaから−Z方向に流れた窒素ガスが第1の光学部品15aに当たり、光路孔33baから−Z方向に流れた窒素ガスが第2の光学部品15bに当たることから、レーザ加工ヘッド300は、レーザ光線10によって高温に加熱された光学部品15をさらに効率的に冷却することができる効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド300から排出される窒素ガスは流速が速くなっているため、流出口23の逆流防止弁が開いている場合であっても、流出口23から異物等がレーザ加工ヘッド300の筐体内へ侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。
なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300では、第1の拡散板33a及び第2の拡散板33bが、実施の形態2で説明したレーザ加工ヘッド200の拡散板32aに対応する場合について説明したが、これに限られるものではなく、第1の拡散板33aと第2の拡散板33bとの少なくとも1つが拡散板32bに対応する等、拡散板32aと拡散板32bとを自由に組み合わせることができる。例えば、第1の拡散板33aを実施の形態2で説明したレーザ加工ヘッド200の拡散板32bに対応するものとすれば、光ファイバ11の交換時に異物が第1の光学部品15a上に落ちることを防ぐことができる。さらに、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300は、拡散板を複数備える点で特徴があるため、矛盾がない限りは、他の実施の形態で説明した拡散板を拡散板33に適用し、拡散板を複数備える構成としてもよい。
また、本実施の形態のレーザ加工ヘッド300では、拡散板33が第1の拡散板33aと第2の拡散板33bとの2つからなる場合について説明したが、例えば光学部品を3つ以上設ける場合の光学部品の数、レーザ加工ヘッド300の大きさ等に応じて、拡散板33は3つ以上の拡散板からなるものとしてもよい。
実施の形態4.
本発明に係る実施の形態4のレーザ加工ヘッドについて、図16及び図17を用いて説明する。図16は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド400の構成を説明するための断面図である。また、図17は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド400の拡散板34を示す斜視図である。
本実施の形態のレーザ加工ヘッド400は、側壁55と天板50と底板60とで形成される筐体と、出射端面11aからレーザ光線10を出射する光ファイバ11が取り付けられ、レーザ光線10をレーザ加工ヘッド400の筐体内に入射させるとともに、光ファイバ11の出射端面11aを保護する保護ガラス13と、光ファイバ11から出射されたレーザ光線10をレーザ加工に適するように整形する光学部品15と、光学部品15の位置を移動させる駆動装置17と、筐体内に窒素ガスが流入する流入口21と、筐体内の窒素ガスが流出する流出口23とを有することは、実施の形態1で説明したレーザ加工ヘッド100と同様である。本実施の形態のレーザ加工ヘッド400は、流入した窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を下げる流速低下手段としての拡散板34を有し、拡散板34の形状が、実施の形態1で説明した拡散板31と異なる。なお、図16には、筐体内を正圧かつ清浄に保つ窒素ガスの流れがガス流路G4として複数の矢印で模式的に示されている。
まず、拡散板34の構成について説明する。なお、拡散板34は実施の形態2で説明したレーザ加工ヘッド200の拡散板32aと共通する点があるため、以下では拡散板34が拡散板32aと異なる点を説明し、拡散板34の設けられる位置、材質、形状、大きさ等、拡散板32aと共通する点については説明を省略する。
拡散板34は、図17に示すように、実施の形態2で説明した拡散板32aの光路孔32aaに対応する光路孔34aと、拡散板32aの拡散面32abに対応する拡散面34bとの他に、窒素ガスを流すことのできるガス通過孔34cを複数有する。拡散板34は、拡散板32aと同様に、レーザ光線10の光路上に、レーザ光線10のビーム径より十分大きい光路孔34aを設けていることにより、レーザ光線10を妨げずに窒素ガスを拡散させることができる。
拡散板34の面積は、流入口21の面積より大きく、かつ、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bの面積よりも大きい。また、拡散板34とレーザ加工ヘッド400の側壁55との隙間は、流入口21の水平方向の面積よりも大きい。これらによって、流入口21からレーザ加工ヘッド400の筐体内に流入した高速の窒素ガスは、拡散板34による拡散により、流速を下げることができる。流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板34の拡散面34bに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散されることにより、流入口21からの流入時よりも流速が低下する。
また、拡散板34と流入口21とは、Z方向の平面視で、流入口21が拡散板34の光路孔34a及びガス通過孔34cに重ならず、流入口21が拡散板34の拡散面34bに完全に重なるような位置に設けられる。これにより、流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板34の拡散面34bに当たり、流速が下げられる。なお、拡散面34bと流入口21とはZ方向の平面視で完全に重なることが望ましいが、流入口21の少なくとも一部が拡散面34bと重なり、残部が拡散板34と重ならない又は光路孔34a若しくはガス通過孔34cと重なる構成としてもよい。拡散面34bと流入口21との少なくとも一部が重なることで、流入口21から流入される窒素ガスの少なくとも一部の流速を下げることができる。
次に、レーザ加工ヘッド400における窒素ガスの流れについて図16を用いて説明する。
レーザ加工ヘッド400における窒素ガスの流れを、ガス流路G4として複数の矢印で模式的に示す。流入口21からレーザ加工ヘッド400の内部へと流入された高速の窒素ガスは、拡散板34に向かって流れ、拡散板34の拡散面34bに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散される。これによって、流入口21からの流入時よりも窒素ガスの流速が低下する。
流速が低下した窒素ガスは、主にレーザ加工ヘッド400の筐体内の側壁55まで拡散される。側壁55へと拡散された窒素ガスは、レーザ加工ヘッド400の筐体内の側壁55に当たることで流れる向きが曲げられ、拡散板34と側壁55との間から、−Z方向に向けて流れる。拡散板34と側壁55との間は、細長いスリット状になっているため、窒素ガスは層状となって流れる。層状となった窒素ガスは、光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように流れるため、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド400の筐体内に侵入するのを妨げることができる。また、駆動装置17のボールねじ等の機構部から生じる異物が長孔17aから筐体内へ侵入したとしても、気流によって、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bに対して−Z方向に運んでいくことができる。
また、拡散板34に当たって流速が低下した窒素ガスの一部は、拡散板34の光路孔34aとガス通過孔34cとに流入し、レーザ光線10と同じ−Z方向に流れる。光路孔34a又はガス通過孔34cへと流れた窒素ガスは、流入口21から流入された後に拡散板34で拡散されることによって流速が下げられている。このとき、窒素ガスの流速は、レーザ加工ヘッド400の光学部品15上又はその付近に残留又は発生する異物を巻き上げるのに必要な流速よりも低下している。よって、窒素ガスは、光学部品15又はその周辺に存在する異物を巻き上げない。また、窒素ガスは、拡散板34の光路孔34aとガス通過孔34cとから流れることで、さらに流速が低下される。よって、窒素ガスによる異物の巻き上げをさらに抑制し、光学部品15のレンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させることなく、光学部品15に当たることで曲げられ、又は光学部品15の周囲を通過し、光学部品15の周囲を−Z方向に流れる。
光学部品15の外周部を通過してレーザ加工ヘッド400内部の底付近に達した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド400の筐体内の底板60に当たることで流れる向きが曲げられ、流出口23へ向かう。
レーザ加工ヘッド400の効果について説明する。
このように構成されたレーザ加工ヘッド400にあっても、流入口21の下流に拡散板34を設けたことで、レーザ加工ヘッド400の内部を正圧かつ清浄にする窒素ガスの流速を下げることができ、レーザ加工ヘッド400内の異物を巻き上げず、レンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させないため、光学部品15に付着した異物にレーザ光線が当たることによって光学部品15が損傷することを防ぐという効果を奏する。特に、レーザ加工ヘッド400では、拡散板34にガス通過孔34cを設けたことで、窒素ガスの流速がさらに低下され、異物の巻き上げをさらに低減する効果を奏する。
また、本実施の形態のレーザ加工ヘッド400では、拡散板34によってレーザ加工ヘッド400の筐体内に流入された窒素ガスの流速を低下させ、流速が下げられた窒素ガスがレーザ加工ヘッド400の筐体内における光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように通過していく。この結果、レーザ加工ヘッド400では、窒素ガスによって異物を巻き上げることなく、−Z方向の気流によって異物をレーザ加工ヘッド400の底部に落とすことができる上、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド400の筐体内に侵入するのを妨げることができ、光学部品15及びその付近を清浄に保つことができるという効果を奏する。
さらに、レーザ加工ヘッド400の流出口23から排出される窒素ガスは、流出口23が狭められていることにより、その流速が速くなっている。このようにして、窒素ガスがレーザ加工ヘッド400の筐体内を通過するため、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド400を冷却することができるという効果を奏する。特に、拡散板34には光路孔34aに加えてガス通過孔34cが複数設けられており、光路孔34aとガス通過孔34cとから−Z方向に流れた窒素ガスが第1の光学部品15aに当たることから、レーザ加工ヘッド400は、レーザ光線10によって高温に加熱された光学部品15をさらに効率的に冷却することができるという効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド400から排出される窒素ガスは流速が速くなっているため、流出口23の逆流防止弁が開いている場合であっても、流出口23から異物等がレーザ加工ヘッド400の筐体内へ侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。
なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド400では、拡散板34の光路孔34aが、実施の形態2で説明したレーザ加工ヘッド200の拡散板32aの光路孔32aaに対応する場合について説明したが、これに限られるものではなく、拡散板34が、実施の形態2でレーザ加工ヘッド200の変形例として説明したレーザ加工ヘッド201の拡散板32bに対応し、光路孔34aにレーザ光線透過部品を嵌めた構成としてもよい。このような構成によれば、光ファイバ11の交換時に異物が第1の光学部品15a上に落ちることを防ぐことができる上、レーザ加工ヘッド400内に流入した窒素ガスの一部がガス通過孔34cから第1の光学部品15aに当たり、光学部品15を冷却することができるという効果を奏する。
また、本実施の形態のレーザ加工ヘッド400では、拡散板34にガス通過孔34cが複数設けられる場合について説明したが、これに限られるものではなく、ガス通過孔34cは1つ以上の任意の数で設けられてもよい。
実施の形態5.
本発明に係る実施の形態5のレーザ加工ヘッドについて、図18及び図19を用いて説明する。図18は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド500の構成を説明するための断面図である。また、図19は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド500の拡散板35を示す斜視図である。
本実施の形態のレーザ加工ヘッド500は、側壁55と天板50と底板60とで形成される筐体と、出射端面11aからレーザ光線10を出射する光ファイバ11が取り付けられ、レーザ光線10をレーザ加工ヘッド500の筐体内に入射させるとともに、光ファイバ11の出射端面11aを保護する保護ガラス13と、光ファイバ11から出射されたレーザ光線10をレーザ加工に適するように整形する光学部品15と、光学部品15の位置を移動させる駆動装置17と、筐体内に窒素ガスが流入する流入口21と、筐体内の窒素ガスが流出する流出口23とを有することは、実施の形態1で説明したレーザ加工ヘッド100と同様である。本実施の形態のレーザ加工ヘッド500は、流入した窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を下げる流速低下手段としての拡散板35を有し、拡散板35の形状が、実施の形態1で説明した拡散板31と異なる。なお、図18には、筐体内を正圧かつ清浄に保つ窒素ガスの流れがガス流路G5として複数の矢印で模式的に示されている。
まず、拡散板35の構成について説明する。
拡散板35は、ニッケルめっきアルミニウムで構成される。また、ステンレスなどの金属材料、ガラス、プラスチック等を使用してもよい。拡散板35は、図19に示すように、窒素ガスを通過させることができる細長いスリットを複数有し、平面形状は、四角形に近い形状である。
拡散板35は、流入口21から流入される窒素ガスの流れにおいて、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bよりも上流側に設けられ、光学部品15の駆動を妨げない範囲に設置される。
拡散板35は、図19に示すように、任意の位置に設けられ、レーザ光線10のビーム径よりも十分大きい円形の光路孔35aと、複数の板状の部材からなる拡散部材35bと、拡散部材35b間に設けられたスリット部35cとを有する。拡散板35の光路孔35aは、レーザ光線10の光路上に位置するように配置される。拡散板35が光路孔35aを有することによって、レーザ光線10を妨げることなく、窒素ガスを拡散し、窒素ガスの流速を低下させることができる。なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド500では、光路孔35aが円形の場合について説明するが、これに限られるものではなく、例えばビーム径よりも十分大きい四角形であってもよいし、スリット部35cを広く設けてレーザ光線10を通過させてもよい。
拡散板35の面積は、流入口21の面積より大きく、かつ、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bの面積よりも大きい。また、拡散板35とレーザ加工ヘッド500の側壁55との隙間と、スリット部35cによる隙間との和は、流入口21の面積よりも大きい。これらによって、流入口21からレーザ加工ヘッド500の内部に流入した高速の窒素ガスは、拡散板35による拡散により、流速を下げることができる。流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板35に当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散されることにより、流入口21からの流入時よりも流速が低下する。
また、拡散板35と流入口21とは、Z方向の平面視で、流入口21が拡散板35の光路孔35aに重ならず、流入口21が拡散板35の拡散部材35bとスリット部35cとに完全に重なるような位置に設けられる。これにより、流入口21から流入した窒素ガスは、拡散板35の拡散部材35bに当たり、複数のスリット部35cから流れ出ることで、流速が下げられる。なお、拡散部材35b及びスリット部35cと流入口21とはZ方向の平面視で完全に重なることが望ましいが、流入口21の少なくとも一部が拡散部材35b及びスリット部35cと重なり、残部が拡散板35と重ならない又は光路孔35aと重なる構成としてもよい。拡散部材35b及びスリット部35cと流入口21との少なくとも一部が重なることで、流入口21から流入される窒素ガスの少なくとも一部の流速を下げることができる。
次に、レーザ加工ヘッド500における窒素ガスの流れについて図18を用いて説明する。
レーザ加工ヘッド500における窒素ガスの流れを、ガス流路G5として複数の矢印で模式的に示す。流入口21からレーザ加工ヘッド500の筐体内へと流入された高速の窒素ガスは、拡散板35に向かって流れ、拡散板35の拡散部材35bに当たることで窒素ガスの流れる向きが曲げられるとともに、複数のスリット部35cから流れ出ることで拡散される。これによって、流入口21からの流入時よりも窒素ガスの流速が低下する。
流速が低下した窒素ガスは、拡散板35と側壁55との間及びスリット部35cを通過して、レーザ光線10と同じ−Z方向に流れる。拡散板35と側壁55との間は、細長いスリット状になっているため、窒素ガスは層状となって流れる。層状となった窒素ガスは、光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように流れるため、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド500の筐体内に侵入するのを妨げることができる。また、駆動装置17のボールねじ等の機構部から生じる異物が長孔17aから筐体内へ侵入したとしても、気流によって第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bに対して、−Z方向に運んでいくことができる。
また、スリット部35cを通過した窒素ガスは、流入口21から流入された後に拡散板35で拡散されることによって流速が下げられている。このとき、窒素ガスの流速は、レーザ加工ヘッド500の光学部品15上又はその付近に残留又は発生する異物を巻き上げるのに必要な流速よりも低下している。よって、窒素ガスは、光学部品15又はその周辺に存在する異物を巻き上げない。よって、窒素ガスによる異物の巻き上げを抑制し、光学部品15のレンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させることなく、光学部品15に当たることで曲げられ、又は光学部品15の周囲を通過し、光学部品15の周囲を−Z方向に流れる。
光学部品15の外周部を通過してレーザ加工ヘッド500の筐体内の底付近に達した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド500の筐体内の底板60に当たることで流れる向きが曲げられ、流出口23へ向かう。
レーザ加工ヘッド500の効果について説明する。
このように構成されたレーザ加工ヘッド500にあっても、流入口21の下流に拡散板35を設けたことで、レーザ加工ヘッド500の筐体内を正圧かつ清浄にする窒素ガスの流速を下げることができ、レーザ加工ヘッド500の筐体内の異物を巻き上げず、レンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させないため、光学部品15に付着した異物にレーザ光線が当たることによって光学部品15が損傷することを防ぐという効果を奏する。
また、本実施の形態のレーザ加工ヘッド500では、拡散板35によってレーザ加工ヘッド500の筐体内に流入された窒素ガスの流速を低下させ、流速が下げられた窒素ガスがレーザ加工ヘッド500の筐体内における光学部品15と駆動装置17との間をエアカーテンのように通過していく。この結果、レーザ加工ヘッド500では、窒素ガスによって異物を巻き上げることなく、−Z方向の気流によって異物をレーザ加工ヘッド500の底部に落とすことができる上、駆動装置17の動作時に生じる異物が長孔17aからレーザ加工ヘッド500の筐体内へ侵入するのを妨げることができ、光学部品15及びその付近を清浄に保つことができるという効果を奏する。
さらに、レーザ加工ヘッド500の流出口23から排出される窒素ガスは、流出口23が狭められていることにより、その流速が速くなっている。このようにして、窒素ガスがレーザ加工ヘッド500の筐体内を通過するため、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド500を冷却することができるという効果を奏する。特に、拡散板35には複数のスリット部35cが設けられており、スリット部35cから−Z方向に流れた窒素ガスが第1の光学部品15aに当たることから、レーザ加工ヘッド500は、レーザ光線10によって高温に加熱された光学部品15をさらに効率的に冷却することができるという効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド500から排出される窒素ガスは流速が速くなっているため、流出口23の逆流防止弁が開いている場合であっても、流出口23から異物等がレーザ加工ヘッド500の筐体内へ侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。
なお、本実施の形態のレーザ加工ヘッド500では、拡散板35の光路孔35aが、実施の形態2で説明したレーザ加工ヘッド200の拡散板32aの光路孔32aaと同様の孔である場合について説明したが、これに限られるものではなく、拡散板32bと同様に、光路孔35aにレーザ光線透過部品を嵌めた構成としてもよい。このような構成によれば、光ファイバ11の交換時に異物が第1の光学部品15a上に落ちることを防ぐことができる上、レーザ加工ヘッド500の筐体内に流入した窒素ガスがスリット部35cを通過して第1の光学部品15aに当たり、光学部品15を冷却することができるという効果を奏する。
実施の形態6.
本発明に係る実施の形態6のレーザ加工ヘッドについて、図20を用いて説明する。図20は、本実施の形態のレーザ加工ヘッド600の構成を説明するための断面図である。
本実施の形態のレーザ加工ヘッド600は、側壁55と天板50と底板60とで形成される筐体と、出射端面11aからレーザ光線10を出射する光ファイバ11が取り付けられ、レーザ光線10をレーザ加工ヘッド600の筐体内に入射させるとともに、光ファイバ11の出射端面11aを保護する保護ガラス13と、光ファイバ11から出射されたレーザ光線10をレーザ加工に適するように整形する光学部品15と、光学部品15の位置を移動させる駆動装置17と、筐体内の窒素ガスが流出する流出口23とを有することは、実施の形態1で説明したレーザ加工ヘッド100と同様である。本実施の形態のレーザ加工ヘッド600では、流入口22は、レーザ加工ヘッド600の筐体内に窒素ガスが流入する天板50に設けられた第1の流入口22aと、側壁55に設けられた第2の流入口22bとから構成される。レーザ加工ヘッド600は、流速低下手段として、流入した窒素ガスを拡散し窒素ガスの流速を下げる拡散板を備えず、第1の流入口22aから流入した第1の気体である窒素ガスの流れと、第2の流入口22bから流入した第2の気体である窒素ガスの流れとが交差するように配置されていることで流速低下手段となることが、実施の形態1〜5で説明したレーザ加工ヘッドと異なる。なお、図20には、筐体内を正圧かつ清浄に保つ窒素ガスの流れがガス流路G6として複数の矢印で模式的に示されている。
まず、第1の流入口22aと第2の流入口22bとの構成について説明する。
第1の流入口22aは、レーザ加工ヘッド600の天板50に、保護ガラス13が設けられる位置とは別の位置に設けられる。第1の流入口22aは、レーザ加工ヘッド600の筐体内に、第1の気体としての窒素ガスを−Z方向に流入する。
第2の流入口22bは、レーザ加工ヘッド600の側壁55の任意の面に設けられる。第2の流入口22bは、レーザ加工ヘッド600の筐体内に、第2の気体としての窒素ガスを水平方向に流入する。
レーザ加工装置900に備えられたフィルター8によって清浄化された窒素ガスは、第1の流入口22aと第2の流入口22bとからレーザ加工ヘッド600の筐体の内部へと流入される。第2の流入口22bは、第1の流入口22aから−Z方向に流入される窒素ガスの流れにおいて、第1の光学部品15a及び第2の光学部品15bよりも上流側に設けられ、筐体内に窒素ガスを水平方向に向けて流入する。
第1の流入口22aから流入される第1の気体としての窒素ガスの流れと、第2の流入口22bから流入される第2の気体としての窒素ガスの流れとが、交差するような位置に、第1の流入口22aと第2の流入口22bとがそれぞれ設けられることで、窒素ガスを拡散させることができる。すなわち、第1の流入口22aから筐体内に−Z方向に流入される第1の気体としての窒素ガスの流れと、第2の流入口22bから筐体内に水平方向に流入される第2の気体としての窒素ガスの流れとが交差し衝突することで拡散され、窒素ガスの流速を下げることができるため、第1の流入口22a及び第2の流入口22bが上記のように配置されることで流速低下手段となる。−Z方向と水平方向とからそれぞれ筐体内に流入された窒素ガスは、衝突することで流れる向きが変えられ、流入時よりも流速が低下する。
次に、レーザ加工ヘッド600における窒素ガスの流れについて図20を用いて説明する。
レーザ加工ヘッド600における窒素ガスの流れを、ガス流路G6として複数の矢印で模式的に示す。第1の流入口22aから−Z方向に、第2の流入口22bから水平方向に、それぞれレーザ加工ヘッド600の筐体内へと流入された高速の窒素ガスは、異なる方向からの窒素ガスの流れ同士が交差し衝突することで窒素ガスの流れる向きが曲げられ、拡散される。これによって、第1の流入口22a及び第2の流入口22bからの流入時よりも窒素ガスの流速が低下する。
流速が低下した窒素ガスは、主に第1の光学部品15aの上側を通過し、レーザ加工ヘッド600の筐体内の側壁55まで拡散される。側壁55へと拡散された窒素ガスは、レーザ加工ヘッド600の筐体内の側壁55に当たることで流れる向きが曲げられ、光学部品15の外周部を−Z方向に向けて流れる。また、衝突により流速が低下した窒素ガスの一部は、光学部品15の外周部を通過し、レーザ光線10aと同じ−Z方向に流れる。
光学部品15の外周部を通過してレーザ加工ヘッド600内部の底付近に達した窒素ガスは、レーザ加工ヘッド600の筐体における底板60の内面に当たることで流れる向きが曲げられ、流出口23へ向かう。
レーザ加工ヘッド600の効果について説明する。
このように構成されたレーザ加工ヘッド600にあっても、天板50に第1の流入口22a、側壁55に第2の流入口22bを設けたことで、レーザ加工ヘッド600の筐体内を正圧かつ清浄にする窒素ガスの流速を下げることができ、レーザ加工ヘッド600の筐体内の異物を巻き上げず、レンズ15aa及びレンズ15baに異物を付着させないため、光学部品15に付着した異物にレーザ光線が当たることによって光学部品15が損傷することを防ぐという効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド600では、流入口を複数設けたことで、窒素ガスの全体としての流入量は変えずに、第1の流入口22aと第2の流入口22bとから流入される窒素ガスの流量をそれぞれ小さくできるため、流速をさらに下げることができ、異物の巻き上げを低減することができる効果を奏する。
さらに、レーザ加工ヘッド600の流出口23から排出される窒素ガスは、流出口23が狭められていることにより、その流速が速くなっている。このようにして、窒素ガスがレーザ加工ヘッド600の筐体内を通過するため、窒素ガスは、レーザ加工ヘッド600を冷却することができるという効果を奏する。
また、レーザ加工ヘッド600から排出される窒素ガスは流速が速くなっているため、流出口23の逆流防止弁が開いている場合であっても、流出口23から異物等がレーザ加工ヘッド600の筐体内へ侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。