JP2021002141A - 保守支援方法、保守支援システム、保守支援装置及びコンピュータプログラム - Google Patents

保守支援方法、保守支援システム、保守支援装置及びコンピュータプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】蓄電素子を含むシステムを安定して継続運用できる保守支援方法、保守支援システム、保守支援装置及びコンピュータプログラムを提供する。【解決手段】保守支援方法は、記憶装置に逐次記憶してある蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品、の少なくともいずれかを決定し、前記保守作業の作業者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する。【選択図】図8

Description

本発明は、蓄電素子の保守管理作業を支援する保守支援方法、保守支援システム、保守支援装置及びコンピュータプログラムに関する。
蓄電素子は、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー源に接続された装置、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流又は交流電源装置等に広く使用されている。蓄電素子は、発電システムからの電力供給にトラブルがあった場合のバックアップ電源として利用される。電力供給のトラブルは社会活動に多大なる支障を及ぼすため、蓄電素子を用いた電力供給の常時安定化は非常に重要である。
バックアップ電源として利用される蓄電素子は特に、発電システムからの電力供給が正常な場合、即ち災害や電力系統のトラブルが発生していない場合には待機状態にある。蓄電素子は、待機状態にあって充放電が頻繁に行なわれなくとも製造された時点から劣化が少しずつ進み、実際に稼働が必要になった場合に適切な充放電ができない状態となる可能性がある。蓄電素子の個々の特性や使用環境によって、製造時に想定されているパフォーマンスを発揮できず、想定されない異常状態になる可能性がある。
特許文献1には、電力系統に異常事態が発生した場合に、自動的に途中経過をキャプチャした情報を含む報告書を作成して電力系統の運用者の負担を軽減させ、報告書を検証して適切な対処を行なうことを可能とする監視制御装置が開示されている。
特開2010−206985号公報
蓄電素子には、劣化の進行具合の観察を含む保守点検を行ない、想定されるモデルよりも劣化が進行している場合には適切に交換するなど予防保全が必須である。ただし保守点検時に蓄電素子の異常状態が発見された場合や、監視制御装置によって自動的に異常が検知された場合、異常が検知された後では、異常の検証、検証結果に基づく顧客への修理実施の確認、修理の手配、及び実際の修理作業を行なって正常状態へ戻す間に停止を余儀なくされる。社会活動に支障をきたさないために電力供給は24時間、365日の常時安定状態が求められるから、待機状態にある蓄電素子に対しても停止期間はできる限り短く、可能であればゼロに抑えることが求められる。
停止期間を短くするためには、保守点検の頻繁な実施により、トラブルを未然に防ぐことが期待される。しかしながら、保守点検を頻繁に実施するには多大な人的資源が必要であって実現が困難である。保守点検者の負荷を軽減し、できるだけ少ない人的資源によって蓄電素子を含むシステムの効率的且つ確実な保守を実現し、予測困難な非常事態が発生しても安定した電力を継続して供給することが求められる。
本発明は、蓄電素子を含むシステムを安定して継続運用できる保守支援方法、保守支援システム、保守支援装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
本開示の保守支援方法は、記憶装置に逐次記憶してある蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、必要人数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品のうち少なくともいずれかを決定し、前記保守作業の担当者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する。
保守支援システムの概要を示す。 保守支援システムが含む装置の内部構成を示すブロック図である。 保守用機器の内部構成を示すブロック図である。 遠隔監視システムにおける第2フェーズの異常の予兆を検知する処理手順の一例を示すフローチャートである。 判定モデルの概要を示す。 遠隔監視システムにおける第2フェーズの異常の予兆を検知する処理手順の他の一例を示すフローチャートである。 異常予兆に使用される画像判定モデルの概要を示す。 保守支援システムにおける第3フェーズでの処理手順の一例を示すフローチャートである。
保守支援方法は、記憶装置に逐次記憶してある蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、必要人数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品のうち少なくともいずれかを決定し、前記保守作業の担当者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する。
上記構成により、記憶してある測定データに基づいて異常の予兆が自動的に検知されるので、保守点検担当者の作業負担が軽減される。測定データが逐次記憶されることで、その測定データを用いてコンピュータによって異常の予兆の段階での検知、及び必要な保守作業の決定が可能になり、異常が現れてから保守点検者が実際に蓄電素子を検査して原因を究明するという作業を不要とする。原因究明に要する時間を短縮し、蓄電素子を含む装置の停止期間をできる限り短くすることができる。
前記蓄電素子は複数の蓄電素子を含んで構成されている場合、前記異常の予兆の検知は、前記複数の蓄電素子夫々又はグループに対して行なわれる。予兆が検知された蓄電素子又は蓄電素子のグループに対し、他の蓄電素子の運用を継続できるように工期、必要人数又は物品と、担当者及び実施日時が決定される。
複数の蓄電素子を含む構成で用いられている場合、一部の蓄電素子群に異常があったとしても全体としての運用を継続させるような対処が可能である。上記構成により、異常の予兆が検知されていない他の蓄電素子での運用が継続され、期待される24時間、365日の常時安定状態を維持できる。
前記蓄電素子毎、又は、複数の前記蓄電素子をグループ分けした蓄電素子群毎に測定された測定データが入力された場合に、前記測定データに異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアを出力するように学習された判定モデルが用いられてもよい。判定モデルによって出力されたスコアに基づいて、異質な蓄電素子の測定データが含まれていると判断される場合、異質性が判別され、判別された異質性に基づいて前記蓄電素子の異常の予兆が検知される。
上記構成により、人間の手作業による測定データの解析・分析よりも高精度且つ迅速な異常の予兆の検知が可能になる。異質度を用いることにより、製造時の想定モデルに合致しない異質な蓄電素子を異常の要因として交換対象とすることによって、蓄電素子を全体として想定モデルに合致させ、異常検知、寿命予測の精度を向上させることが期待できる。
前記保守支援方法は、前記蓄電素子群の測定データの入力に応じて前記判定モデルから出力されたスコアの時間分布を作成し、作成された時間分布に基づいて異質性を、緊急性を区別して判別する処理を含んでよい。
上記構成により、時間に対する異質性のスコアの変化に応じて蓄電素子の異常の予兆を、緊急的なのか否かを区別して判別でき、緊急性に応じた保守作業を効率的に実施できる。
前記保守支援方法は、作成された時間分布を画像化した画像が入力された場合に、前記時間分布に対応する蓄電素子又は蓄電素子群の測定データに、異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアを出力するように学習された画像判定モデルを用い、作成した時間分布を画像化して前記画像判定モデルに入力し、前記画像判定モデルから出力されるスコアに基づいて前記蓄電素子群の異質性を判別する処理を含んでよい。
上記構成により、人間の手作業による測定データの解析・分析よりも高精度且つ迅速な異常の予兆の検知、異質性の判別が可能になる。異質性の判別が可能になることで、正確な準備に基づく迅速な保守作業が可能になる。
前記保守支援方法は、前記保守作業を実施可能な担当者一覧及び前記担当者夫々のスケジュールデータに基づいて前記保守作業の担当者及び実施日時が決定し、決定された前記担当者へ前記保守作業の実施が通知する処理を含んでよい。
上記構成により、スケジュールデータによって自動的に、異常の予兆に応じた必要な工期での作業が可能な担当者が決定される。適切なスケジュールでの作業の割り振りが実現する。
前記保守支援方法は、前記保守作業の実施承認を前記蓄電素子の所有者から受け付け、前記実施承認が受け付けられた場合に、前記保守作業の実施を通知してもよい。
顧客による保守点検の実施承認を受けてから保守作業が実施されるので、蓄電素子の所有者の同意を得た上での保守作業が実施されてスムーズに保守作業が実施可能になる。蓄電素子の異常の内容や保守作業の内容によっては、所有者が同意しない選択をすることができる。
前記保守支援方法は、前記実施承認が受け付けられた場合に、前記蓄電素子を使用する前記所有者から得られる装置の運用情報に基づいて実施日時を決定してもよい。
実施承認を受けてから、装置の運用情報に基づいて実際の実施日時が決定されるので、蓄電素子を含む装置の運用を継続させたまま、適切なスケジュールで保守作業の実施が可能になるような選択を所有者ができるため、システムの効率的な保守を実現することができる。
前記保守作業に対して実施承認された場合に、前記保守作業に必要な物品を該物品の販売者に対して自動的に発注がされてよい。発注された物品の識別データは前記担当者へ通知される。
上記構成により、発注作業も自動で行なわれ、保守担当者又は営業担当者の作業負担を軽減することができる。
決定された工期、作業者数、及び必要な物品に基づいて前記保守作業の見積書データが作成され、前記見積書データに基づき前記実施承認を受け付けられてよい。
上記構成により、見積書作成作業についても保守担当者又は営業担当者の作業負担を軽減することができる。実施承認は見積書を元に顧客から受け付け、顧客との保守点検実施の打ち合わせをスムーズにできる。
蓄電素子は、無停電電源装置に備えられている蓄電素子であってよい。上記構成によりバックアップ電源として利用される蓄電素子におけるトラブルを未然に防ぐための保守点検が効率的且つ確実に実施される。これによって電力供給の常時安定化に貢献できる。無停電電源装置は、停電時のバックアップに用いられる。そのため、停電が発生したときにバックアップできない事態は許されない。よって、トラブルを防ぐための異常の予兆が非常に重要である。
保守支援方法は、複数の装置を含むシステムによって実施できる。保守支援システムは、蓄電素子に関する測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置と、前記記憶装置と接続が可能な蓄電素子に対する保守担当者が用いる保守端末装置と、前記保守端末装置から通信接続が可能な保守支援装置とを含み、前記保守支援装置は、前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常又は異常の予兆が検知された場合に、検知された異常又は異常の予兆に関する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品を決定し、前記保守作業の担当者へ決定事項を含む実施指示を送信する。
保守支援装置は、蓄電素子を識別する識別データに対応付けて記憶装置に逐次記憶してある前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆が検知された場合に、検知された異常の予兆に関する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品のうち少なくともいずれかを決定する決定部と、前記保守作業の担当者へ決定事項を含む実施指示を送信する送信部とを備える。
保守支援方法は、コンピュータプログラムとして実現されてもよい。このコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子を識別する識別データに対応付けて記憶装置に逐次記憶してある前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品のうち少なくともいずれかを決定し、前記保守作業の担当者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する処理を実行させる。
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
図1は、保守支援システム100の概要を示す。保守支援システム100は、保守支援装置1及び保守担当者が用いる保守端末装置2を含む。保守支援システム100は、保守対象の蓄電素子50の状態を示すデータを収集し、ネットワークを介して収集されたデータに基づく遠隔からの状態閲覧を実現する遠隔監視システム300と通信接続可能である。保守支援システム100は、保守対象の蓄電素子を購入した顧客のデータを記憶する顧客データ管理システム400と通信接続可能である。本実施の形態においては、保守支援システム100、遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400はいずれも、保守対象の蓄電素子50の製造業者により管理され、相互に製造業者用のネットワークMN又は専用線を介して通信接続可能である。保守支援システム100は、蓄電素子50の製造管理システム(図示せず)と通信接続可能であってもよい。
ネットワークMNは、製造業者用のローカルネットワークである。ネットワークMNは例えば、Ethernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークMNは、VPN(Virtual Private Network)を含んで、ロケーションの異なるシステム100,300,400間をローカルネットワークとして接続させてもよい。保守支援システム100と遠隔監視システム300との間、保守支援システム100と顧客データ管理システム400との間は、ネットワークMNの一部でもよいし、専用線、又はVPNであってもよい。
保守端末装置2及び保守支援装置1は、通信網N又はネットワークMNを介して通信接続可能である。通信網Nは、所謂インターネットである。所定の移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークを含んでもよい。通信網Nは、一般光回線を含んでもよい。
顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客の氏名又は名称、顧客の連絡先、住所等の属性データを記憶している。顧客データ管理システム400は、顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、ロケーションを識別するロケIDに対応付けて所在地を記憶する。顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客が購入した蓄電素子50の製造番号を記憶している。顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、顧客データ管理システム400は、顧客ID及びロケIDと対応付けて設置されている蓄電素子50の製造番号を記憶する。
遠隔監視システム300は、蓄電素子50の製造番号に対応付けて蓄電素子50の状態データを逐次記憶する。遠隔監視システム300は、蓄電素子50の状態データを入力した場合に、異常の予兆に関するスコアを出力する判定モデル3Mを有し、蓄電素子50に対して異常の兆候があるか否かを判定する。遠隔監視システム300は、状態データに基づいて蓄電素子50毎のSOC(State Of Charge)、SOH(State Of Health)、及び予測寿命等を含む診断データを、蓄電素子50毎に導出してもよい。
製造管理システムは、蓄電素子50の製造番号に対応付けて製造時のロット番号、出荷日時を記憶しているとよい。
保守支援システム100による保守対象の蓄電素子50は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池のような二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子50の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。本実施の形態における蓄電素子50は夫々、鉛蓄電池である。蓄電素子50は他の例では、蓄電セルを複数接続した蓄電モジュールである。蓄電素子50は他の例では、蓄電セルそのもの又は蓄電モジュールを複数接続した蓄電モジュール群である。
蓄電装置5は、1又は複数の蓄電素子50を含む。蓄電装置5は一例では、単体で利用される。蓄電装置5は一例では、蓄電素子50の運用者(ユーザ)によって管理される運用者用のネットワークCNに通信接続する蓄電装置5群として利用される。同一の運用者によって管理される蓄電装置5群は、運用者のネットワークCNを介して運用者が管理する管理装置51へ蓄電素子50の状態データを送信する。状態データは少なくとも電圧値を含み、内部抵抗値、電流値、温度を含んでもよい。状態データは、鉛蓄電池である蓄電素子50の端子に接続されたユニットから、保守用通信機器6を介して送信される。状態データは他の例では、リチウムイオン電池である蓄電モジュールに備えられる電池管理装置(BMU)接続される保守用通信機器6によって送信されてもよい。保守用通信機器6から保守端末装置2に取得して送信する場合もある。複数の蓄電装置5から送信される状態データは、専用線N2又は通信網Nを介して遠隔監視システム300へ送信され、蓄電素子50を夫々識別する製造番号等の識別データと対応付けて状態履歴が記憶される。蓄電素子50を夫々識別する識別データは、蓄電装置5毎に、蓄電装置5を識別する識別データに対応付けて記憶される。
蓄電装置5には、ネットワークCNを介さずに、保守担当者が用いる保守端末装置2とデータをやり取りできる保守用通信機器6が設けられている。保守用通信機器6は、蓄電装置5の蓄電素子50夫々について状態データを取得するユニットと通信接続可能である。本実施の形態における保守用通信機器6は鉛蓄電池の端子に接続されたユニットと無線通信によって通信接続可能である。保守用通信機器6は他の例では、リチウムイオン電池の蓄電モジュールに備えられる電池管理装置(BMU)と通信接続可能である。保守用通信機器6は、蓄電装置5から管理装置51向けに送信される状態データと同一の状態データを取得して内蔵するメモリに記憶する。
ネットワークCNは、複数の蓄電装置5を運用する運用者用のローカルネットワークである。ネットワークCNは例えばEthernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークCNは、VPNを含んでもよい。ネットワークCNは、ECHONET /ECHONETLite 対応のネットワークであってもよい。専用線N2は、蓄電装置5の運用者と遠隔監視システム300との間を接続するプライベートネットワークである。専用線N2は、通信網Nであってもよい。専用線N2は、ECHONET /ECHONETLite 対応の専用ネットワークであってもよい。
本実施の形態の保守支援システム100は、蓄電素子50又は蓄電装置5の保守管理を、保守端末装置2又は顧客のネットワークCNを経由して取得した状態データ、顧客データ管理システム400から得られる顧客データ、遠隔監視システム300から得られる診断データを用いて保守活動を支援する。保守支援システム100は、集約された状態データから遠隔監視システム300にて異常の予兆を検知し、検知した異常又は異常の予兆に基づいて保守支援装置1がトラブル発生前に整備する作業を支援する。本実施の形態の保守支援システム100では、保守支援装置1は、検知された異常の予兆の内容に応じてトラブル発生前にトラブルを未然に防ぐための整備作業の手配を進め、顧客からの確認を取った上で計画的に顧客のシステムを停止させて整備作業を実施させる。保守担当者が状態データを手作業で解析・分析する必要もない。事前に予兆を捉え、トラブルが発生する前に対処するので事前に運用に支障がないように計画されたスケジュールで整備作業を実施することができ、結果的に顧客のシステムの停止時間も短くことができる。蓄電素子50は複数で用いられて蓄電装置5として運用されるところ、一部に異常の予兆を検知することで、蓄電装置5の運用を継続するように保守作業を計画することも可能である。保守担当者にとっても、事前に手配された整備作業を事前に計画されたスケジュールで実施すればよいから、何度も顧客のシステムへ赴く必要もない。
このような蓄電素子50の保守支援システム100を実現するための詳細な構成について説明する。
図2は、保守支援システム100が含む装置の内部構成を示すブロック図である。保守支援装置1は、サーバコンピュータを用い、制御部10、記憶部11、及び通信部12を備える。本実施の形態において保守支援装置1は、1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のサーバコンピュータで処理を分散させてもよい。
制御部10は、CPU(Central Processing Unit )又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサであり、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。制御部10は、記憶部21に記憶されている保守支援プログラム1Pに基づく処理を実行する。
記憶部11は、例えばハードディスク又はSSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリを用いる。記憶部11には、上述した保守支援プログラム1Pが記憶されている。記憶部11に記憶される保守支援プログラム1Pは、記録媒体7に記憶してある保守支援プログラム7Pを制御部10が読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。記憶部11には、保守担当者の担当者IDを含む担当者データが記憶される。担当者データは、担当者IDに対応付けて担当者名、電子メールアドレス等の連絡先情報を含む。
通信部12は、ネットワークMNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には通信部12はネットワークMNに対応したネットワークカードである。通信部12は、ネットワークMNに接続される図示しないルータ機器を介して通信網Nを介した通信を実現してもよい。制御部10は、通信部12によって遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400との間でデータを送受信する。
保守端末装置2は、保守担当者が使用するコンピュータである。保守端末装置2は、デスクトップ型若しくはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、所謂スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。保守端末装置2は、制御部20、記憶部21、第1通信部22、第2通信部23、表示部24、及び操作部25を備える。保守端末装置2は図示するように撮像部26を備えてよいが、撮像部26は必須ではない。
制御部20は、CPU又はGPUを用いたプロセッサである。制御部20は、記憶部21に記憶されている保守端末用プログラム2Pに基づき、修理手順を表示部24に表示させる。制御部20は、保守用通信機器6から情報データを読み出す処理、及び、保守端末用プログラム2Pに含まれるWebブラウザによる保守支援装置1との間での情報処理を実行する。
記憶部21は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部21には、保守端末用プログラム2Pを含む各種プログラムが記憶されている。記憶部21には、保守端末用プログラム2Pに基づく画面データが記憶されている。保守端末用プログラム2Pは、記録媒体8に記憶してある保守端末用プログラム8Pを制御部20が読み出して記憶部21に複製したものであってもよい。
第1通信部22は、通信網N又はネットワークMNを介したデータ通信を実現するための通信デバイスである。第1通信部22は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイス、基地局BS(図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイス、又はアクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いる。
第2通信部23は、保守用通信機器6と通信接続してデータ通信を実現するための通信デバイスである。第2通信部23は一例では、Wifi又はBluetooth (登録商標)等の無線通信デバイスである。第2通信部23は一例では、USB(Universal Serial Bus )インタフェースである。
表示部24は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いる。表示部24は制御部20の保守端末用プログラム2Pに基づく操作画面、及び保守支援装置1で提供されるWebページのイメージを表示する。表示部24は、好ましくはタッチパネル内蔵型ディスプレイであるが、タッチパネル非内蔵型ディスプレイであってもよい。
操作部25は、制御部20との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイス、若しくは音声入力部等のユーザインタフェースである。操作部25は、表示部24のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部25は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
撮像部26は、撮像素子を用いて得られる撮像画像を出力する。制御部20は、任意のタイミングで撮像部26の撮像素子にて撮像される画像を取得できる。
図3は、保守用通信機器6の内部構成を示すブロック図である。保守用通信機器6は、制御部60、記憶部61、第1通信部62、第2通信部63、及び第3通信部64を備える。制御部60は、CPU又はマイクロプロセッサを用いる。記憶部61には予め規定されたプログラムが記憶されている。
記憶部61は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部61には上述のプログラムが記憶されていてもよい。記憶部61には、蓄電素子50から受信した状態データが記憶される。
第1通信部62は、蓄電素子50に接続されたユニットとの通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態では第1通信部62はBluetooth(登録商標)等の無線通信によって蓄電素子のユニットと通信接続する。
第2通信部63は、ネットワークCNを介した通信接続を実現する通信デバイスである。保守用通信機器6は、蓄電素子50から受信した状態データを第2通信部63によって管理装置51へ送信できる。蓄電素子50が通信機能を有する電池管理装置を備えている場合、第2通信部63は不要でよい。
第3通信部64は、保守用通信機器6と保守端末装置2との通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態において第3通信部64は、USBインタフェースである。第3通信部64は、第1通信部62とは異なる無線通信デバイスであってもよい。
保守用通信機器6の制御部60は、プログラムに基づき、第1通信部62によって定期的に蓄電素子50から状態データを取得し、取得した状態データを逐次記憶部61に記憶する。記憶の周期は蓄電素子50が鉛電池の場合、例えば1日に1回程度である。制御部60は、取得した日時を状態データに対応付けて記憶部61に記憶する。制御部60は、取得した状態データを第2通信部63から逐次管理装置51へ向けて送信する。制御部60はプログラムに基づき、第3通信部64によって保守端末装置2と通信接続した場合、保守端末装置2からの指示に応じて、記憶部61から状態データを読み出し、第3通信部64から送信する。
このように構成される保守支援システム100及び蓄電装置5に設けられた保守用通信機器6により、以下に説明するように保守管理が支援される。
第1に、保守用通信機器6によって、ネットワークCNを介して遠隔監視システム300へ送信されない状態データについても、遠隔監視システム300で集約することができる。保守用通信機器6に蓄積される状態データは、定期的な保守点検の実施時に保守点検者が所持する保守端末装置2によって取得され、保守端末装置2から遠隔監視システム300へ、ネットワークMN又は通信網Nを介して集約される。顧客のネットワークCNと、遠隔監視システム300との通信接続がセキュリティ上難しい場合であっても、定期点検時に状態データを遠隔監視システム300に集約させることができる。
第2に、状態データを集約させた遠隔監視システム300にて、対象となる蓄電素子50群、例えば複数の蓄電素子50を接続した蓄電装置5毎に、後述する処理を周期的に実行し、異常の予兆があるか否かを判断する。蓄電素子50が鉛蓄電池である場合、実行周期は3ヶ月、6ヶ月等である。実行周期は定期点検の周期よりも短い。蓄電素子50がリチウムイオン電池である場合も同程度であってよい。使用期間に応じて周期を更に短くしてもよい。
第3に、遠隔監視システム300の処理によって異常の予兆があると検知された場合、異常に対するトラブルが発生する前に、トラブルを防止するための保守作業の手配を保守支援装置1が実施する。手配された内容は保守作業者へ通知され、保守作業者は通知された作業内容に基づいて予兆が検知された蓄電装置5の設置場所へ赴いて作業を実施する。
以下第2フェーズ及び第3フェーズにおける処理について詳細に説明する。
図4は、遠隔監視システム300における第2フェーズの異常の予兆を検知する処理手順の一例を示すフローチャートである。遠隔監視システム300は、周期が到来する都度以下の処理を実行する。
遠隔監視システム300は、蓄電装置5に含まれる複数の蓄電素子50群の内の一部を選択する(ステップS101)。ステップS101において遠隔監視システム300は、蓄電素子50が所属する蓄電装置5の識別データに対応する蓄電素子50群の識別データを選択する。
遠隔監視システム300は、選択した蓄電素子50群の状態データを取得する(ステップS102)。ステップS102で取得する状態データは例えば、電圧値の最新データである。状態データは内部抵抗値であってもよい。
遠隔監視システム300は、取得した状態データを判定モデル3Mに入力し(ステップS103)、判定モデル3Mから出力される判定に関するスコアを取得する(ステップS104)。スコアは本実施の形態では、入力された状態データに、異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアである。
遠隔監視システム300は、判定モデル3Mから出力されたスコアに基づいて、異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否か判断する(ステップS105)。遠隔監視システム300は、ステップS105にて含まれていると判断された場合(S105:YES)、予兆があると判定された蓄電装置5に含まれる複数の蓄電素子50について取得した状態データに基づいて異質性を判別する(ステップS106)。判定モデル3Mについては後述する。
遠隔監視システム300は、対象の蓄電装置5に含まれる複数の蓄電素子50を全て選択したか否か判断し(ステップS107)、選択していないと判断された場合(S107:NO)、処理をステップS101へ戻す。
全て選択したと判断された場合(S107:YES)、遠隔監視システム300は、ステップS106で判別された異質性によって蓄電装置5に異常の予兆があるか否かを判定する(ステップS108)。異質性には、異常に関係しないもの例えば新品である、又は製造時の想定モデルに比較して高寿命であるといったものも含まれるため、ステップS108において遠隔監視システム300は、異常に短寿命であるという異質性の蓄電素子50が含まれている場合、異常の予兆を検知する。高寿命の蓄電素子50及び新品の蓄電素子50によって、他の蓄電素子50とアンバランスな状態となりトラブルを引き起こす可能性がゼロではないので、これらの異質性についても異常の予兆があると判定してもよい。判定モデル3Mにて異質性に関するスコアを出力するようにし、ステップS105からステップS108まではまとめて実行されてもよい。
遠隔監視システム300は、異常の予兆があると判定された場合(S108:YES)、選択されている蓄電装置5の識別データ、異質な蓄電素子50を含むと判定された蓄電素子50群の識別データ及び異質性を含む予兆検知のメッセージを保守支援装置1へ通知し(ステップS109)、処理を終了する。
ステップS105にて含まれていないと判断された場合(S105:NO)、及び、ステップS108にて異常の予兆がないと判定された場合(S108:NO)、遠隔監視システム300はそのまま処理を終了する。
図5は、判定モデル3Mの概要を示す。判定モデル3Mは一例では、畳み込みニューラルネットワークを用い、異質でない標準的な蓄電素子50を含む蓄電装置5と、それ以外の異質な蓄電素子50を含む蓄電装置5とを分類する分類器である。図5に示す一例では、判定モデル3Mは、選択された蓄電装置5に含まれる蓄電素子50ル夫々の電圧値を入力する入力層301と、入力された電圧値に基づく異質度に関するスコアを出力する出力層302と、畳み込み層又はプーリング層を含む中間層303とを含む。判定モデル3Mは、異質でない標準的な蓄電セルであるラベル(例えば「0」)を付した状態データと、異質なラベル(例えば「1」)を付した状態データとを含む教師データをニューラルネットワークへ与えて学習してある。図5の例では、蓄電素子50夫々に対し測定される電圧値を用いて学習されているが、内部抵抗値であってもよい。判定モデル3Mは、与えられた状態データに対して異質であると分類される異質度のスコア(0〜1の間の数値)を出力層302から出力する。
判定モデル3Mは分類器に限らず、特徴量を出力する畳み込みニューラルネットワークであってよい。判定モデル3Mは、同一の蓄電素子50の測定データの時系列データを入力して特徴量を出力するリカレントニューラルネットワーク、LSTM(Long Short-term Memory)等を用いたネットワークで構成されてもよい。
判定モデル3Mは他の一例では、電圧値又は内部抵抗値の平均、標準偏差、中央値等を用いて、外れ値が含まれているか否か、含まれている場合の外れ度合いを統計的に算出するモデルであってもよい。判定モデル3Mは他の一例では、状態データの時系列データによってトレンドを求め、トレンドの差異によって異質度を表すスコアを出力するモデルであってもよい。判定モデル3Mは他の一例では、k近傍法(k-nearest neighbor algorithm)を用い、遠隔監視システム300は対象の測定データに対し、予め教師データに基づき学習してある異質でないクラスと異質なクラスとのいずれに属するかを判定してもよい。他の例では、判定モデル3Mではk平均法又はEM法を用い、遠隔監視システム300は判定モデル3M(判定プログラム)に基づいてクラスタリングして判定してもよい。他の例では、判定モデル3M(判定プログラム)はPCA(Principal Component Analysis;主成分解析)を用い、対象の測定データに対して縮約して異質であるか否かを判定してもよい。
異質な蓄電素子50が蓄電素子50に含まれているか否かの判定は、出力される異質度の時間推移を用いることで精度が向上する。図6は、遠隔監視システム300における第2のフェーズの異常の予兆を検知する処理手順の他の一例を示すフローチャートである。図6のフローチャートに示す処理手順の内、図4のフローチャートに示した手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
遠隔監視システム300は、ステップS104で取得した異質度を、選択した蓄電装置5の識別データ及び時間情報に対応付けて記憶する(ステップS121)。
遠隔監視システム300は、ステップS101にて選択中の蓄電装置5について、記憶してある過去所定期間の異質度を読み出す(ステップS122)。遠隔監視システム300は、過去所定期間の異質度の時間分布を作成する(ステップS123)。
遠隔監視システム300は、ステップS122で読み出した異質度の値、ステップS123で作成した時間分布、及び/又は選択された蓄電装置5に含まれる蓄電素子50の状態データ自体に基づいて、蓄電素子50群が異質な蓄電セルを含んでいるか否かを判定する(S105)。ステップS105にて異質な蓄電セルを含んでいると判定された場合(S105:YES)、遠隔監視システム300は、ステップS106においてステップS123で作成された時間分布を用いて、緊急性を区別して判別してもよい。遠隔監視システム300は、1ヶ月又は3ヶ月以内にトラブルが発生する異質性であるか、6ヶ月程度は継続運用が見込める異質性であるかを判別するとよい。
時間分布に基づいて異常の予兆を検知することで、接続された蓄電素子50群は、時間の経過でその異質性がバランスし、正常化する可能性があるところ、これを誤って異常の予兆と検知しないように検知精度を高めることが可能である。
ステップS105の処理自体に深層学習を適用してもよい。異質度の時間分布を画像化して入力し、時間分布のパターンによって異質であるかいなか、及び異質性を判別してもよい。図7は、異常予兆に使用される画像判定モデル32Mの概要を示す。図7に示す異常予兆に使用される画像判定モデル32Mは、状態データが入力された場合に異質度を出力するように学習した判定モデル3Mモデルから出力された異質度の時間分布を入力し、異質なセルを含むか否かの確度を示すスコアを出力する。
画像判定モデル32Mは、特徴量を抽出する畳み込み層又はプーリング層を含む中間層を含むニューラルネットワークであり、時間分布の画像が入力された場合、前記時間分布に係る測定データに異質な蓄電セルの測定データを含む確度(スコア)を出力する。画像判定モデル32Mは、遠隔監視システム300に判定モデル3Mと共に記憶される。画像判定モデル32Mは、図7に示すように、時間分布を画像化したものと、オペレータによって判定された結果とのペアである教師データによって学習される。
画像判定モデル32Mは、教師データが収集できた場合には、異質な蓄電セルの異質性を判別するモデルとして学習されてもよい。例えば、図7におけるパターンA,パターンB,パターンCのいずれであるか、即ち異質性を判別してもよい。遠隔監視システム300は、図6のフローチャートにおけるステップS105の判定に用いられた異質度の値、ステップS123で作成した時間分布、及び/又は選択された蓄電装置5の状態データに基づいて、異質性を判別してもよい。遠隔監視システム300は、異質の度合い、即ちどれほどに標準的な蓄電素子50から外れているかを特定してもよい。他の例では、遠隔監視システム300は画像判定モデル32Mを用い、異質が「新品の蓄電セル」であるか、「標準的な蓄電素子よりも良質(長寿命)な蓄電素子」であるか、及び「標準的な蓄電素子よりも短寿命の蓄電素子」であるか等、異質性を判別してもよい。
判定モデル3Mは、上述したように異質度を出力するように学習された。異質度を用いるのは、製造時の想定モデルに合致しない異質な蓄電素子50をトラブルの起因となる交換対象とすることによって、蓄電装置5に含まれる蓄電素子50を製造時の想定モデルに合致するものとし、劣化度又は寿命予測の精度を向上させる効果が期待されるからである。異常の予兆の検知は、異質度を用いる方法には限定されない。
判定モデル3Mは異質度を用いず、異常の予兆の内容の判別ラベルと、確度を示すスコアとを出力するモデルとして学習されてもよい。この場合、過去に、異常が検知された蓄電素子50の状態データの時間分布と、製造時の想定モデルに合致する標準的な蓄電素子50が寿命を全うするまでの状態データの時間分布との蓄積データを既知の教師データとして学習されるとよい。
図8は、保守支援システム100における第3フェーズでの処理手順の一例を示すフローチャートである。保守支援装置1が遠隔監視システム300から予兆検知のメッセージを受信すると(ステップS201)、制御部10はメッセージに含まれる異質な蓄電素子50を含む蓄電素子50群の識別データ及び異質性に基づいて必要な保守作業を決定する(ステップS202)。保守作業の内容は、異質性と対応付けて記憶部11にテーブル化して記憶してあり、制御部10はこれを参照して決定してもよいし、異質性又は状態データの履歴が入力された場合に、保守作業の内容(後述の工期、作業者数、必要物品)を出力するように過去の保守作業履歴に基づいて機械学習された学習モデルによって決定してもよい。
異質性に対して緊急性が区別されている場合には、ステップS202において制御部10は、1ヶ月以内のトラブルが発生するような予兆であるのか、6ヶ月程度は通常運用が可能な予兆であるのか等の緊急性に応じて保守作業内容を適切に決定することが可能である。緊急性を区別して異質性と保守作業の内容との対応が記憶部11に記憶してあるとよい。
ステップS202において制御部10は、異質な蓄電素子50を含む蓄電素子50群に対し、他の蓄電素子50群の運用は継続して蓄電装置5全体としては運用を継続できるように保守作業を決定する。蓄電装置5は、複数の蓄電素子50を含んで一部に異常があったとしても全体としての運用を継続させるような対処が可能である。
制御部10は、決定された保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品を決定する(ステップS203)。ステップS203の決定も、上述したようにテーブルベースであってもよいし、機械学習ベースであってもよい。
制御部10は、決定された工期、作業者数、及び必要な物品に基づいて見積書データを作成する(ステップS204)。記憶部11には見積書データを作成するための工期、及び作業者に対する単価、作業量、並びに必要となる物品の費用が記憶してあり、制御部10はこれを参照して自動作成する。単価は作業者のスキルに応じて変えられていてもよい。
制御部10は、作成された見積書データ、又はデータへのリンク先を含む実施承認依頼を、対象となる蓄電装置5の営業担当者へ向けて通知する(ステップS205)。
営業担当者が用いる保守端末装置2では、保守作業の実施承認依頼を受信する(ステップS301)。営業担当者は、受信した実施承認依頼に含まれる見積書データに基づいて顧客へ見積書を提出し、保守作業を実施することの承認を受ける。承認が受けられた場合、保守端末装置2では制御部20が操作部25の操作に従って承認操作を受け付ける(ステップS302)。制御部20は、承認操作と共に、顧客との同意に基づくスケジュール候補の入力を操作部25によって受け付け(ステップS303)、受け付けた実施承認及びスケジュール候補を保守支援装置1へ送信する(ステップS304)。
保守支援装置1では、実施承認及びスケジュール候補を保守端末装置2から受信する(ステップS206)。制御部10は、ステップS206で受信したスケジュール、顧客データ管理システム400に基づく蓄電装置5の運用情報、保守作業の担当者一覧及び担当者夫々のスケジュールデータに基づいて保守作業の担当者及び実施日時を決定する(ステップS207)。ステップS207において制御部10は、緊急性に応じて実施日時を決定するとよい。ステップS207においても制御部10は、異質な蓄電素子50を含む蓄電素子50群を除いた他の蓄電素子50群を用いて蓄電装置5全体としての運用を継続させるように、運用情報及び顧客から承認されたスケジュールを元に担当者及び実施日時を決定できる。
制御部10は、決定された実施日時、必要な物品、作業内容を、決定された担当者向けに通知する(ステップS208)。制御部10は、必要な物品を発注し(ステップS209)、発注情報を担当者へ通知し(ステップS210)、処理を終了する。ステップS209における発注情報は、顧客データ管理システム400における顧客資産として登録されてもよい。
このように、人間には検知が難しい異常の予兆の段階で、トラブルを未然に防ぐための保守作業の内容が決定され、見積書まで作成されるから、保守担当者の作業負担が軽減する。
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
100 保守支援システム
1 保守支援装置
10 制御部
11 記憶部
1P 保守支援プログラム
2 保守端末装置
20 制御部
21 記憶部
2P 保守端末用プログラム
300 遠隔監視システム
3M 判定モデル
32M 画像判定モデル
400 顧客データ管理システム
6 保守用通信機器
本発明は、蓄電素子の保守管理作業を支援する保守支援方法、保守支援システム、保守支援装置及びコンピュータプログラムに関する。
蓄電素子は、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー源に接続された装置、無停電電源装置、安定化電源に含まれる直流又は交流電源装置等に広く使用されている。蓄電素子は、発電システムからの電力供給にトラブルがあった場合のバックアップ電源として利用される。電力供給のトラブルは社会活動に多大なる支障を及ぼすため、蓄電素子を用いた電力供給の安定化は非常に重要である。
バックアップ電源として利用される蓄電素子は、発電システムからの電力供給が正常な場合、即ち災害や電力系統のトラブルが発生していない場合には待機状態にある。蓄電素子は、待機状態にあって充放電が行なわれなくとも製造された時点から劣化が少しずつ進み、実際に稼働が必要になった場合に適切な充放電ができない可能性がある。蓄電素子の個々の特性や使用環境によって、製造時に想定されているパフォーマンスを発揮できない可能性がある。
特許文献1には、電力系統に異常事態が発生した場合に、自動的に途中経過をキャプチャした情報を含む報告書を作成して電力系統の運用者の負担を軽減、報告書を検証して適切な対処を行なうことを可能とする監視制御装置が開示されている。
特開2010−206985号公報
蓄電素子には、劣化の進行具合の観察を含む保守点検を行ない、想定されるモデルよりも劣化が進行している場合には適切に交換するなど予防保全が必須である。保守点検時に蓄電素子の異常が発見された場合や、監視制御装置によって自動的に異常が検知された場合、その後、異常の検証、検証結果に基づく顧客への修理実施の確認、修理の手配、及び実際の修理作業を行なって正常状態へ戻す間に、蓄電素子の停止を余儀なくされる。社会活動に支障をきたさないために電力供給は24時間、365日の常時安定状態が求められ、待機状態にある蓄電素子停止期間はできる限り短く、可能であればゼロに抑えることが求められる。
停止期間を短くするため、保守点検の頻繁な実施により、トラブルを未然に防ぐことが期待される。しかしながら、保守点検を頻繁に実施するには多大な人的資源が必要であって実現が困難である。保守作業者の負荷を軽減し、蓄電素子を含むシステムの効率的且つ確実な保守を実現し、予測困難な事態が発生しても電力を安定供給することが求められる。
本発明は、蓄電素子を含むシステムを安定して運するための保守支援方法、保守支援システム、保守支援装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
守支援方法は、記憶装置に逐次記憶してある蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品、の少なくともいずれかを決定し、前記保守作業の作業者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する。
保守支援システムの概要を示す。 保守支援システムが含む装置の内部構成を示すブロック図である。 保守用機器の内部構成を示すブロック図である。 遠隔監視システムにおける第2フェーズの異常の予兆を検知する処理手順の一例を示すフローチャートである。 判定モデルの概要を示す。 遠隔監視システムにおける第2フェーズの異常の予兆を検知する処理手順の他の一例を示すフローチャートである。 像判定モデルの概要を示す。 保守支援システムにおける第3フェーズでの処理手順の一例を示すフローチャートである。
保守支援方法は、記憶装置に逐次記憶してある蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品、の少なくともいずれかを決定し、前記保守作業の作業者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する。
上記構成により、記憶してある測定データに基づいて異常の予兆が自動的に検知されるので、保守作業の負担が軽減される。測定データが逐次記憶されることで、その測定データを用いてコンピュータによって異常の予兆の段階での検知、及び必要な保守作業の決定が可能になる。異常が現れてから保守作業者が実際に蓄電素子を検査して原因を究明する場合に比べて、原因究明に要する時間を短縮し、蓄電素子を含む装置の停止期間を短くすることができる。
前記蓄電素子は複数の蓄電素子を含んで構成されている場合、前記異常の予兆の検知は、前記複数の蓄電素子夫々又はグループに対して行なわれる。予兆が検知された蓄電素子又は蓄電素子グループに対し、他の蓄電素子の運用を継続できるように工期、作業者数又は物品と、作業者及び実施日時が決定される。
複数の蓄電素子を含む場合、一部の蓄電素子に異常があっても全体としての運用継続るような対処が可能である。上記構成により、異常の予兆が検知されていない他の蓄電素子での運用が継続され、24時間、365日の安定状態を維持できる。
前記蓄電素子毎、又は、複数の前記蓄電素子を含む蓄電素子グループ毎に測定された測定データが入力された場合に、前記測定データに異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアを出力するように学習された判定モデルが用いられてもよい。判定モデルによって出力されたスコアに基づいて、異質な蓄電素子の測定データが含まれていると判断される場合、異質性が判別され、判別された異質性に基づいて前記蓄電素子の異常の予兆が検知される。
上記構成により、人間の手作業による測定データの解析・分析よりも高精度且つ迅速な異常予兆の検知が可能になる。異質度を用い、製造時の想定モデルに合致しない異質な蓄電素子を異常の要因とすることによって、蓄電素子を全体として想定モデルに合致させ、異常検知、寿命予測の精度上が期待できる。
前記保守支援方法は、前記蓄電素子グループの測定データの入力に応じて前記判定モデルから出力されたスコアの時間分布を作成し、作成された時間分布に基づいて、緊急性を区別して異質性を判別する処理を含んでよい。
上記構成により、時間に対する異質性のスコアの変化に応じて、緊急的なのか否かを区別して蓄電素子の異質性を判別でき、緊急性に応じた保守作業を効率的に実施できる。
前記保守支援方法は、作成された時間分布を画像化した画像が入力された場合に、前記時間分布に対応する蓄電素子又は蓄電素子グループの測定データに、異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアを出力するように学習された画像判定モデルを用いる。保守支援方法は、作成した時間分布を画像化して前記画像判定モデルに入力し、前記画像判定モデルから出力されるスコアに基づいて前記蓄電素子グループの異質性を判別する処理を含んでよい。
上記構成により、人間の手作業による測定データの解析・分析よりも高精度且つ迅速な異常予兆の検知、異質性の判別が可能になる。異質性の判別が可能になることで、正確な準備に基づく迅速な保守作業が可能になる。
前記保守支援方法は、前記保守作業を実施可能な作業者一覧及び前記作業者夫々のスケジュールデータに基づいて前記保守作業の作業者及び実施日時決定し、決定た前記作業者へ前記保守作業の実施通知する処理を含んでよい。
上記構成により、スケジュールデータによって自動的に、必要な工期での作業が可能な作業者が決定される。適切なスケジュールでの作業の割り振りが実現する。
前記保守支援方法は、前記保守作業の実施承認を前記蓄電素子の所有者から受け付け、前記実施承認が受け付けられた場合に、前記保守作業の実施を通知してもよい。
これにより、蓄電素子の所有者の同意を得た上での保守作業がスムーズに実施される。蓄電素子の異常の内容や保守作業の内容によっては、所有者が同意しない選択をすることができる。
前記保守支援方法は、前記実施承認が受け付けられた場合に、前記所有者から得られる装置の運用情報に基づいて実施日時を決定してもよい。
置の運用情報に基づいて実際の実施日時が決定されるので、蓄電素子を含む装置の運用を継続させたまま保守作業の実施が可能な選択を所有者が行なえる
記実施承認が受け付けられた場合、前記保守作業に必要な物品該物品の販売者に対して自動的に発注されてよい。発注された物品の識別データは前記作業者へ通知される。
上記構成により、発注作業も自動で行なわれ、保守作業者又は営業担当者の負担を軽減することができる。
決定された工期、作業者数、及び必要な物品に基づいて前記保守作業の見積書データが作成され、前記見積書データに基づき前記実施承認受け付けられてよい。
上記構成により、見積書作成作業についても保守作業者又は営業担当者の負担を軽減することができる。顧客との保守点検実施の打ち合わせスムーズになる
蓄電素子は、無停電電源装置に備えられている蓄電素子であってよい。上記構成によりバックアップ電源として利用される蓄電素子におけるトラブルを未然に防ぐための保守点検が効率的且つ確実に実施される。これによって電力供給の安定化に貢献できる。無停電電源装置は、停電時のバックアップに用いられる。停電が発生したときにバックアップできない事態は許されないため、トラブルを防ぐための異常の予兆検知が非常に重要である。
保守支援方法は、複数の装置を含むシステムによって実施できる。保守支援システムは、蓄電素子に関する測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置と、前記記憶装置と接続が可能な保守端末装置と、前記保守端末装置から通信接続が可能な保守支援装置とを含む。前記保守支援装置は、前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常又は異常予兆が検知された場合に、検知された異常又は異常予兆に関する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品、の少なくともいずれかを決定する。前記保守支援装置は、前記保守作業の作業者へ決定事項を含む実施指示を送信する。
保守支援装置は、蓄電素子を識別する識別データに対応付けて記憶装置に逐次記憶してある前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常予兆が検知された場合に、検知された異常の予兆に関する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品、の少なくともいずれかを決定する決定部と、前記保守作業の作業者へ決定事項を含む実施指示を送信する送信部とを備える。
保守支援方法は、コンピュータプログラムとして実現されてもよい。このコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子を識別する識別データに対応付けて記憶装置に逐次記憶してある前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品、の少なくともいずれかを決定し、前記保守作業の作業者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する処理を実行させる。
本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
図1は、保守支援システム100の概要を示す。保守支援システム100は、保守支援装置1及び保守作業者が用いる保守端末装置2を含む。保守支援システム100は、遠隔監視システム300と通信接続可能である。保守支援システム100は、顧客データ管理システム400と通信接続可能である。本実施の形態において保守支援システム100、遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400は、保守対象の蓄電素子50の製造業者により管理され、製造業者用のネットワークMN又は専用線を介して相互に通信接続可能である。保守支援システム100は、蓄電素子50の製造管理システム(図示せず)と通信接続可能であってもよい。
ネットワークMNは、製造業者用のローカルネットワークである。ネットワークMNは例えば、Ethernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークMNは、VPN(Virtual Private Network)を含んで、ロケーションの異なるシステム100,300,400間をローカルネットワークとして接続てもよい。保守支援システム100と遠隔監視システム300との間、保守支援システム100と顧客データ管理システム400との間は、ネットワークMNの一部でもよいし、専用線、又はVPNであってもよい。
保守端末装置2及び保守支援装置1は、通信網N又はネットワークMNを介して通信接続可能である。通信網Nは、所謂インターネットである。通信網Nは、所定の移動通信規格による無線通信を実現するキャリアネットワークを含んでもよい。通信網Nは、一般光回線を含んでもよい。
顧客データ管理システム400は、保守対象の蓄電素子を購入した顧客のデータを記憶する。顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客の氏名又は名称、顧客の連絡先、住所等の属性データを記憶。顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、顧客データ管理システム400は、ロケーションを識別するロケーションIDに対応付けて所在地を記憶する。顧客データ管理システム400は、顧客IDに対応付けて、顧客が購入した蓄電素子50の製造番号を記憶る。顧客が複数の蓄電装置5を異なるロケーションに設置して管理している場合、顧客データ管理システム400は、顧客ID及びロケーションIDと対応付けて設置されている蓄電素子50の製造番号を記憶する。
遠隔監視システム300は、保守対象の蓄電素子50の状態を示すデータを収集し、ネットワークを介して収集されたデータに基づく遠隔からの状態閲覧を実現する。遠隔監視システム300は、蓄電素子50の製造番号に対応付けて蓄電素子50の状態データを逐次記憶する。遠隔監視システム300は、蓄電素子50の状態データを入力した場合に、異常の予兆に関するスコアを出力する判定モデル3Mを用いて蓄電素子50に対して異常の兆候があるか否かを判定する。遠隔監視システム300は、状態データに基づいて蓄電素子50毎のSOC(State Of Charge)、SOH(State Of Health)、及び予測寿命等を含む診断データを、蓄電素子50毎に導出してもよい。
製造管理システムは、蓄電素子50の製造番号に対応付けて製造時のロット番号、出荷日時を記憶しているとよい。
保守支援システム100保守対象の蓄電素子50は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池を含む二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子50の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。本実施の形態における蓄電素子50は夫々、鉛蓄電池である。蓄電素子50は、蓄電セルを複数接続した蓄電モジュールであってもよい。蓄電素子50は、蓄電セルそのもの又は蓄電モジュールを複数接続した蓄電モジュール群であってもよい
蓄電装置5は、1又は複数の蓄電素子50を含む。蓄電装置5は、単体で利用されてもよい。蓄電装置5は、蓄電素子50の顧客(ユーザ)によって管理される顧客のネットワークCNに通信接続する蓄電装置5群として利用されてもよい。同一の顧客によって管理される蓄電装置5群は、顧客のネットワークCNを介して、顧客が管理する管理装置51へ蓄電素子50の状態データを送信する。状態データは少なくとも電圧値を含み、内部抵抗値、電流値、温度を含んでもよい。状態データは、鉛蓄電池である蓄電素子50の端子に接続されたユニットから、保守用通信機器6を介して管理装置51へ送信される。状態データは、リチウムイオン電池を含む蓄電モジュールに備えられる電池管理装置(BMU)接続される保守用通信機器6によって送信されてもよい。状態データは、保守用通信機器6から保守端末装置2へ送される場合もある。複数の蓄電装置5から送信される状態データは、専用線N2又は通信網Nを介して遠隔監視システム300へ送信される。状態データは、蓄電素子50を夫々識別する製造番号等の識別データと対応付けて状態履歴として記憶される。蓄電素子50を夫々識別する識別データは、蓄電装置5毎に、蓄電装置5を識別する識別データに対応付けて記憶される。
保守用通信機器6が、蓄電装置5に設けられている。保守用通信機器6は、ネットワークCNを介さずに、保守作業者が用いる保守端末装置2とデータをやり取りできる保守用通信機器6は、蓄電装置5の蓄電素子50夫々について状態データを取得するユニットと通信接続可能である。本実施の形態における保守用通信機器6は鉛蓄電池の端子に接続されたユニットと無線通信によって通信接続可能である。保守用通信機器6はリチウムイオン電池の蓄電モジュールに備えられる電池管理装置(BMU)と通信接続可能であってもよい。保守用通信機器6は、蓄電装置5から管理装置51向けに送信される状態データと同一の状態データを内蔵するメモリに記憶する。
ネットワークCNは、複数の蓄電装置5を運用する顧客のローカルネットワークである。ネットワークCNは例えばEthernet(登録商標)であり、光回線であってもよい。ネットワークCNは、VPNを含んでもよい。ネットワークCNは、ECHONET (登録商標)/ECHONETLite (登録商標)対応のネットワークであってもよい。専用線N2は、蓄電装置5の顧客と遠隔監視システム300との間を接続するプライベートネットワークである。専用線N2は、通信網Nであってもよい。専用線N2は、ECHONET /ECHONETLite 対応の専用ネットワークであってもよい。
本実施の形態の保守支援システム100は、蓄電素子50又は蓄電装置5の保守管理を支援する。保守支援システム100は、保守管理の支援のために、保守端末装置2又は顧客のネットワークCNを経由して取得した状態データ、顧客データ管理システム400から得られる顧客データ、遠隔監視システム300から得られる診断データを用いる。保守支援システム100は、集約された状態データから遠隔監視システム300にて異常の予兆を検知し、検知した異常又は異常の予兆に基づいて保守支援装置1がトラブル発生前に作業を支援する。保守支援装置1は、検知された異常の予兆の内容に応じてトラブルを未然に防ぐための整備作業の手配を進め、顧客からの確認を取った上で計画的に顧客のシステムを停止させて整備作業を実施させる。保守作業者が状態データを手作業で解析・分析する必要もない。保守支援装置1は、トラブル発生前に対処するので事前に運用に支障がないように計画されたスケジュールで整備作業を実施でき、結果的に顧客のシステムの停止時間も短くできる。蓄電素子50複数で用いられて蓄電装置5として運用される場合保守支援装置1は、一部に異常予兆を検知することによって、蓄電装置5の運用を継続するように保守作業を計画できる。保守作業、事前に手配された整備作業を事前に計画されたスケジュールで実施すればよいから、何度も顧客のシステムへ赴く必要もない。
このような蓄電素子50の保守支援システム100を実現するための詳細な構成について説明する。
図2は、保守支援システム100が含む装置の内部構成を示すブロック図である。保守支援装置1は、サーバコンピュータを用い、制御部10、記憶部11、及び通信部12を備える。本実施の形態において保守支援装置1は、1台のサーバコンピュータとして説明するが、複数のサーバコンピュータで処理を分散させてもよい。
制御部10は、CPU(Central Processing Unit )又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサであり、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。制御部10は、記憶部21に記憶されている保守支援プログラム1Pに基づく処理を実行する。
記憶部11は、例えばハードディスク又はSSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリを用いる。記憶部11は、上述した保守支援プログラム1P記憶する。保守支援プログラム1Pは、記録媒体7に記憶してある保守支援プログラム7Pを制御部10が読み出して記憶部11に複製したものであってもよい。記憶部11には、保守作業者の作業者IDを含む作業者データが記憶される。作業者データは、作業者IDに対応付けて作業者名、電子メールアドレス等の連絡先情報を含む。
通信部12は、ネットワークMNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には通信部12はネットワークMNに対応したネットワークカードである。通信部12は、ネットワークMNに接続される図示しないルータ機器を介して通信網Nを介した通信を実現してもよい。制御部10は、通信部12によって遠隔監視システム300及び顧客データ管理システム400との間でデータを送受信する。
保守端末装置2は、保守作業者が使用するコンピュータである。保守端末装置2は、デスクトップ型若しくはラップトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、所謂スマートフォン又はタブレット型の通信端末であってもよい。保守端末装置2は、制御部20、記憶部21、第1通信部22、第2通信部23、表示部24、及び操作部25を備える。保守端末装置2は図示するように撮像部26を備えてよい
制御部20は、CPU又はGPUを用いたプロセッサである。制御部20は、記憶部21に記憶されている保守端末用プログラム2Pに基づき、修理手順を表示部24に表示させる。制御部20は、保守用通信機器6から情報データを読み出す処理を実行する。制御部20は、保守端末用プログラム2Pに含まれるWebブラウザによる保守支援装置1との間での情報処理を実行する。
記憶部21は、例えばハードディスク又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部21は、保守端末用プログラム2Pを含む各種プログラム記憶る。記憶部21は、保守端末用プログラム2Pに基づく画面データ記憶る。保守端末用プログラム2Pは、記録媒体8に記憶してある保守端末用プログラム8Pを制御部20が読み出して記憶部21に複製したものであってもよい。
第1通信部22は、通信網N又はネットワークMNを介したデータ通信を実現するための通信デバイスである。第1通信部22は、有線通信用のネットワークカード等の通信デバイスであってもよい。第1通信部22は、基地局BS(図1参照)に接続する移動通信用の無線通信デバイスであってもよい。第1通信部22は、アクセスポイントAPへの接続に対応する無線通信デバイスを用いてもよい
第2通信部23は、保守用通信機器6と通信接続してデータ通信を実現するための通信デバイスである。第2通信部23は、Wifi又はBluetooth (登録商標)等の無線通信デバイスでもよい。第2通信部23は、USB(Universal Serial Bus )インタフェースでもよい
表示部24は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを用いる。表示部24は制御部20の保守端末用プログラム2Pに基づく操作画面、及び保守支援装置1で提供されるWebページのイメージを表示する。表示部24は、好ましくはタッチパネル内蔵型ディスプレイである。表示部24は、タッチパネル非内蔵型ディスプレイでもよい。
操作部25は、制御部20との間で入出力が可能なキーボード及びポインティングデバイスである。操作部25は、音声入力部等のユーザインタフェースでもよい。操作部25は、表示部24のタッチパネル、又は筐体に設けられた物理ボタンを用いてもよい。操作部25は、ユーザによる操作情報を制御部20へ通知する。
撮像部26は、撮像素子を用いて得られる撮像画像を出力する。制御部20は、任意のタイミングで撮像部26の撮像素子にて撮像される画像を取得できる。
図3は、保守用通信機器6の内部構成を示すブロック図である。保守用通信機器6は、制御部60、記憶部61、第1通信部62、第2通信部63、及び第3通信部64を備える。制御部60は、CPU又はマイクロプロセッサを用いる。記憶部61は、予め規定されたプログラム記憶る。
記憶部61は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリを用いる。記憶部61には、蓄電素子50から受信した状態データが記憶される。
第1通信部62は、蓄電素子50に接続されたユニットとの通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態では第1通信部62はBluetooth(登録商標)等の無線通信によって蓄電素子のユニットと通信接続する。
第2通信部63は、ネットワークCNを介した通信接続を実現する通信デバイスである。保守用通信機器6は、蓄電素子50から受信した状態データを第2通信部63によって管理装置51へ送信できる。蓄電素子50が通信機能を有する電池管理装置を備えている場合、第2通信部63は不要である
第3通信部64は、保守用通信機器6と保守端末装置2との通信接続を実現する通信デバイスである。本実施の形態において第3通信部64は、USBインタフェースである。第3通信部64は、第1通信部62とは異なる無線通信デバイスであってもよい。
保守用通信機器6の制御部60は、プログラムに基づき、第1通信部62によって定期的に蓄電素子50から状態データを取得する。制御部60は、取得した状態データを逐次記憶部61に記憶する。記憶の周期は蓄電素子50が鉛電池である場合、例えば1日に1回程度である。制御部60は、取得した日時を状態データに対応付けて記憶部61に記憶する。制御部60は、取得した状態データを第2通信部63から逐次管理装置51へ向けて送信する。制御部60はプログラムに基づき、第3通信部64によって保守端末装置2と通信接続した場合、保守端末装置2からの指示に応じて、記憶部61から状態データを読み出し、その状態データを第3通信部64から送信する。
このように構成される保守支援システム100及び蓄電装置5に設けられた保守用通信機器6により、以下に説明するように保守管理が支援される。
第1に、保守用通信機器6によって、ネットワークCNを介して遠隔監視システム300へ送信されない状態データについても、遠隔監視システム300で集約することができる。作業者が所持する保守端末装置2は、定期的な保守点検の実施時に、保守用通信機器6に蓄積される状態データを取得する。保守端末装置2は、ネットワークMN又は通信網Nを介して遠隔監視システム300へ状態データを送信し、遠隔監視システム300に状態データを集約させる。顧客のネットワークCNと、遠隔監視システム300との通信接続がセキュリティ上難しい場合であっても、定期点検時に状態データを遠隔監視システム300に集約させることができる。
第2に、状態データを集約させた遠隔監視システム300、対象となる蓄電素子50、例えば複数の蓄電素子50を接続した蓄電装置5毎に、後述する処理を周期的に実行し、異常の予兆があるか否かを判断する(第2フェーズ)。蓄電素子50が鉛蓄電池である場合、実行周期は3ヶ月、6ヶ月等である。実行周期は定期点検の周期よりも短い。蓄電素子50がリチウムイオン電池である場合、実行周期は同様に、3ヶ月、6ヶ月よい。実行周期は、使用期間に応じて、短くされてもよい。
第3に、遠隔監視システム300の処理によって異常の予兆があると検知された場合、保守支援装置1は、トラブルが発生する前に、トラブルを防止するための保守作業の手配を実施する(第3フェーズ)。手配された内容は保守作業者へ通知される。保守作業者は通知された作業内容に基づき、予兆が検知された蓄電装置5の設置場所へ赴いて作業を実施する。
以下第2フェーズ及び第3フェーズにおける処理について詳細に説明する。
図4は、遠隔監視システム300における第2フェーズの異常の予兆を検知する処理手順の一例を示すフローチャートである。遠隔監視システム300は、周期が到来する都度以下の処理を実行する。
遠隔監視システム300は、蓄電装置5に含まれる複数の蓄電素子50の一部を選択する(ステップS101)。ステップS101において遠隔監視システム300は、蓄電素子50が所属する蓄電装置5の識別データに対応する蓄電素子群(蓄電素子グループ)の識別データを選択する。
遠隔監視システム300は、選択した蓄電素子グループの状態データを取得する(ステップS102)。遠隔監視システム300は、ステップS102で状態データとして例えば、電圧値の最新データを取得する。状態データは内部抵抗値であってもよい。
遠隔監視システム300は、取得した状態データを判定モデル3Mに入力し(ステップS103)、判定モデル3Mから出力される判定に関するスコアを取得する(ステップS104)。本実施の形態のスコアは、入力された状態データに、異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアである。
遠隔監視システム300は、判定モデル3Mから出力されたスコアに基づいて、異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否か判断する(ステップS105)。遠隔監視システム300は、ステップS105にて含まれていると判断された場合(S105:YES)、異質性を判別する(ステップS106)。遠隔監視システム300は、ステップS106において、予兆があると判定された蓄電装置5に含まれる複数の蓄電素子50の状態データに基づいて異質性を判別する。判定モデル3Mについては後述する。
遠隔監視システム300は、対象の蓄電装置5に含まれる複数の蓄電素子50を全て選択したか否か判断する(ステップS107)。選択していないと判断された場合(S107:NO)、遠隔監視システム300は、処理をステップS101へ戻す。
全て選択したと判断された場合(S107:YES)、遠隔監視システム300は、ステップS106で判別された異質性によって蓄電装置5に異常の予兆があるか否かを判定する(ステップS108)。異質性には、異常に関係しないもの例えば新品である、又は製造時の想定モデルに比較して高寿命であるといったものも含まれるステップS108において遠隔監視システム300は、異常に短寿命であるという異質性の蓄電素子50が含まれている場合、異常の予兆を検知する。高寿命の蓄電素子50及び新品の蓄電素子50によって、他の蓄電素子50とアンバランスな状態となりトラブルを引き起こす可能性がゼロではないので、遠隔監視システム300は、これらの異質性についても異常の予兆があると判定してもよい。判定モデル3Mにて異質性に関するスコアを出力するようにし、遠隔監視システム300は、ステップS105からステップS108までを、まとめて実行してもよい。
遠隔監視システム300は、異常の予兆があると判定された場合(S108:YES)、選択されている蓄電装置5の識別データ、異質な蓄電素子50を含むと判定された蓄電素子群の識別データ及び異質性を含む予兆検知のメッセージを保守支援装置1へ通知する(ステップS109)。遠隔監視システム300は、処理を終了する。
ステップS105にて含まれていないと判断された場合(S105:NO)、及び、ステップS108にて異常の予兆がないと判定された場合(S108:NO)、遠隔監視システム300はそのまま処理を終了する。
図5は、判定モデル3Mの概要を示す。判定モデル3Mは一例では、畳み込みニューラルネットワークを用いる。判定モデル3Mは、異質でない標準的な蓄電素子50を含む蓄電装置5と、それ以外の異質な蓄電素子50を含む蓄電装置5とを分類する分類器である。判定モデル3Mは、選択された蓄電装置5に含まれる蓄電素子50ル夫々の電圧値を入力する入力層301を含む。判定モデル3Mは、入力された電圧値に基づく異質度に関するスコアを出力する出力層302を含む。判定モデル3Mは、畳み込み層又はプーリング層を含む中間層303を含む。判定モデル3Mは、異質でない標準的な蓄電セルであるラベル(例えば「0」)を付した状態データと、異質なラベル(例えば「1」)を付した状態データとを含む教師データをニューラルネットワークへ与えることによって、学習してある。判定モデル3Mは、蓄電素子50夫々に対し測定される電圧値を用いて学習されている。判定モデル3Mは、内部抵抗値を用いて学習されてもよい。判定モデル3Mは、与えられた状態データに対して異質度のスコア(0〜1の間の数値)を出力層302から出力する。
判定モデル3Mは分類器に限らず、特徴量を出力する畳み込みニューラルネットワークであってよい。判定モデル3Mは、同一の蓄電素子50の測定データの時系列データを入力して特徴量を出力するリカレントニューラルネットワーク、LSTM(Long Short-term Memory)等を用いたネットワークで構成されてもよい。
判定モデル3Mは、電圧値又は内部抵抗値の平均、標準偏差、中央値等を用いて、外れ値が含まれているか否か、含まれている場合の外れ度合いを統計的に算出するモデルであってもよい。判定モデル3Mは、状態データの時系列データによってトレンドを求め、トレンドの差異によって異質度を表すスコアを出力するモデルであってもよい。判定モデル3Mは、k近傍法(k-nearest neighbor algorithm)を用いてもよい。この判定モデル3Mを用い、遠隔監視システム300は対象の測定データに対し、予め教師データに基づき学習してある異質でないクラスと異質なクラスとのいずれに属するかを判定してもよい。遠隔監視システム300は、k平均法又はEM法を用いる判定モデル3M(判定プログラム)に基づき、クラスタリングして判定してもよい。遠隔監視システム300は、PCA(Principal Component Analysis;主成分解析)を用いた判定モデル3M(判定プログラム)に基づき、対象の測定データに対して縮約して異質であるか否かを判定してもよい。
異質な蓄電素子50が蓄電素子に含まれているか否かの判定は、出力される異質度の時間推移を用いることで精度が向上する。図6は、遠隔監視システム300における異常の予兆を検知する処理手順の他の一例を示すフローチャートである。図6に示した処理手順の内、図4に示した処理手順と共通する手順については同一のステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
遠隔監視システム300は、ステップS104で取得した異質度を、選択した蓄電装置5の識別データ及び時間情報に対応付けて記憶する(ステップS121)。
遠隔監視システム300は、ステップS101にて選択中の蓄電装置5について、記憶してある過去所定期間の異質度を読み出す(ステップS122)。遠隔監視システム300は、過去所定期間の異質度の時間分布を作成する(ステップS123)。
遠隔監視システム300は、ステップS122で読み出した異質度の値、ステップS123で作成した時間分布、及び/又は選択された蓄電装置5に含まれる蓄電素子50の状態データ自体に基づいて、蓄電素子群が異質な蓄電セルを含んでいるか否かを判定する(S105)。ステップS105にて異質な蓄電セルを含んでいると判定された場合(S105:YES)、遠隔監視システム300は、ステップS106においてステップS123で作成された時間分布を用いて、緊急性を区別してもよい。遠隔監視システム300は、1ヶ月又は3ヶ月以内にトラブルが発生する異質性であるか、6ヶ月程度は継続運用が見込める異質性であるかを判別するとよい。
時間分布に基づいて異常の予兆を検知することで、検知精度を高めることが可能である。接続された蓄電素子群は、時間の経過でその異質性がバランスし、正常化する可能性があるこれを誤って異常の予兆と検知しないように時間分布に基づいて異常の予兆を検知する
ステップS105の処理自体に深層学習を適用してもよい。異質度の時間分布を画像化して入力し、時間分布のパターンによって異質であるか否かと、異質性(種別)とを判別してもよい。図7は、異常予兆の検知に使用される画像判定モデル32Mの概要を示す。図7に示す画像判定モデル32Mは、状態データが入力された場合に異質度を出力するように学習された判定モデル3Mから出力された異質度の時間分布を入力し、異質なセルを含むか否かの確度を示すスコアを出力する。
画像判定モデル32Mは、特徴量を抽出する畳み込み層又はプーリング層を含む中間層を含むニューラルネットワークである。画像判定モデル32Mは、時間分布の画像が入力された場合、前記時間分布に係る測定データに異質な蓄電セルの測定データを含む確度(スコア)を出力する。画像判定モデル32Mは、遠隔監視システム300に判定モデル3Mと共に記憶される。画像判定モデル32Mは、図7に示すように、時間分布を画像化したものと、オペレータによって判定された結果とのペアである教師データによって学習される。
画像判定モデル32Mは、教師データが収集できた場合には、異質な蓄電セルの異質性を判別するモデルとして学習されてもよい。画像判定モデル32Mは、例えば、図7におけるパターンA,パターンB,パターンCのいずれであるか、即ち異質性を判別してもよい。遠隔監視システム300は、図6のフローチャートにおけるステップS105の判定に用いられた異質度の値、ステップS123で作成した時間分布、及び/又は選択された蓄電装置5の状態データに基づいて、異質性を判別してもよい。遠隔監視システム300は、異質の度合い、即ちどれほどに標準的な蓄電素子50から外れているかを特定してもよい。遠隔監視システム300は画像判定モデル32Mを用い、異質が「新品の蓄電セル」であるか、「標準的な蓄電素子よりも良質(長寿命)な蓄電素子」であるか、「標準的な蓄電素子よりも短寿命の蓄電素子」であるか等、異質性を判別してもよい。
判定モデル3Mは、上述したように異質度を出力するように学習された。製造時の想定モデルに合致しない異質な蓄電素子50を交換対象とすることによって、蓄電装置5に含まれる蓄電素子50を製造時の想定モデルに合致するものとし、劣化度又は寿命予測の精度を向上させる効果が期待される。異常の予兆の検知は、異質度を用いる方法には限定されない。
判定モデル3Mは異質度を用いず、異常の予兆の内容の判別ラベルと、確度を示すスコアとを出力するモデルとして学習されてもよい。判定モデル3Mは、過去に、異常が検知された蓄電素子50の状態データの時間分布と、製造時の想定モデルに合致する標準的な蓄電素子50が寿命を全うするまでの状態データの時間分布との蓄積データを既知の教師データとして学習される
図8は、保守支援システム100における第3フェーズでの処理手順の一例を示すフローチャートである。保守支援装置1が遠隔監視システム300から予兆検知のメッセージを受信する(ステップS201)制御部10はメッセージに含まれる異質な蓄電素子50を含む蓄電素子群の識別データ及び異質性に基づいて必要な保守作業を決定する(ステップS202)。制御部10は、異質性と対応付けて記憶部11にテーブル化した保守作業の内容を参照して、必要な保守作業を決定してもよい。制御部10は、異質性又は状態データの履歴が入力された場合に、保守作業の内容(後述の工期、作業者数、必要物品)を出力するように過去の保守作業履歴に基づいて機械学習された学習モデルによって、保守作業を決定してもよい。
ステップS202において制御部10は、異質性に対して緊急性が区別されている場合に、予兆の緊急性に応じて保守作業内容を適切に決定することが可能である。予兆の緊急性は、1ヶ月以内のトラブルが発生するような予兆であるのか、6ヶ月程度は通常運用が可能な予兆であるのか等に区別される。緊急性を区別して異質性と保守作業の内容との対応が記憶部11に記憶してあるとよい。
ステップS202において制御部10は、異質な蓄電素子50を含む蓄電素子群に対し、他の蓄電素子群の運用は継続して蓄電装置5全体としては運用を継続できるように保守作業を決定する。蓄電装置5は、複数の蓄電素子50を含んで一部に異常があったとしても全体としての運用を継続させるような対処が可能である。
制御部10は、決定された保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品を決定する(ステップS203)。ステップS203において制御部10は、上述したようにテーブルベースで決定してもよいし、機械学習ベースで決定してもよい。
制御部10は、決定された工期、作業者数、及び必要な物品に基づいて見積書データを作成する(ステップS204)。記憶部11には見積書データを作成するための工期、及び作業者に対する単価、作業量、並びに必要となる物品の費用が記憶してある。制御部10はこれを参照して見積書データを自動作成する。単価は作業者のスキルに応じて変えられていてもよい。
制御部10は、作成された見積書データ、又はデータへのリンク先を含む実施承認依頼を、対象となる蓄電装置5の営業担当者へ向けて通知する(ステップS205)。
営業担当者が用いる保守端末装置2では、保守作業の実施承認依頼を受信する(ステップS301)。営業担当者は、受信した実施承認依頼に含まれる見積書データに基づいて顧客へ見積書を提出し、保守作業を実施することの承認を受ける。承認が受けられた場合、保守端末装置2では制御部20が操作部25の操作に従って承認操作を受け付ける(ステップS302)。制御部20は、承認操作と共に、顧客との同意に基づくスケジュール候補の入力を操作部25によって受け付け(ステップS303)る。制御部20は、受け付けた実施承認及びスケジュール候補を保守支援装置1へ送信する(ステップS304)。
保守支援装置1は、実施承認及びスケジュール候補を保守端末装置2から受信する(ステップS206)。制御部10は、ステップS206で受信したスケジュール、顧客データ管理システム400に基づく蓄電装置5の運用情報、保守作業の作業者一覧及び作業者夫々のスケジュールデータに基づいて保守作業の作業者及び実施日時を決定する(ステップS207)。ステップS207において制御部10は、緊急性に応じて実施日時を決定するとよい。ステップS207において制御部10は、異質な蓄電素子50を含む蓄電素子群を除いた他の蓄電素子群を用いて蓄電装置5全体としての運用を継続させるように、運用情報及び顧客から承認されたスケジュールを元に作業者及び実施日時を決定できる。
制御部10は、決定された実施日時、必要な物品、作業内容を、決定された作業者向けに通知する(ステップS208)。制御部10は、必要な物品を発注し(ステップS209)、発注情報を作業者へ通知し(ステップS210)、処理を終了する。ステップS209における発注情報は、顧客データ管理システム400における顧客資産として登録されてもよい。
このように、人間には検知が難しい異常の予兆の段階で、トラブルを未然に防ぐための保守作業の内容が決定され、見積書まで作成される。このため、保守作業の負担が軽減する。
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
100 保守支援システム
1 保守支援装置
10 制御部
11 記憶部
1P 保守支援プログラム
2 保守端末装置
20 制御部
21 記憶部
2P 保守端末用プログラム
300 遠隔監視システム
3M 判定モデル
32M 画像判定モデル
400 顧客データ管理システム
6 保守用通信機器

Claims (14)

  1. 記憶装置に逐次記憶してある蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、
    検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、必要人数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品のうち少なくともいずれかを決定し、
    前記保守作業の担当者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する
    保守支援方法。
  2. 前記蓄電素子は複数の蓄電素子を含んで構成されており、
    前記異常の予兆の検知は、前記複数の蓄電素子夫々又はグループに対して行なわれ、
    予兆が検知された蓄電素子又は蓄電素子のグループに対し、他の蓄電素子の運用を継続できるように工期、必要人数又は物品と、担当者及び実施日時を決定する
    請求項1に記載の保守支援方法。
  3. 前記蓄電素子毎、又は、複数の前記蓄電素子をグループ分けした蓄電素子群毎に測定された測定データが入力された場合に、前記測定データに異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアを出力するように学習された判定モデルを用い、
    前記判定モデルによって出力されたスコアに基づいて、異質な蓄電素子の測定データが含まれていると判断される場合、異質性を判別し、
    判別された異質性に基づいて前記蓄電素子の異常の予兆を検知する
    請求項1又は2に記載の保守支援方法。
  4. 前記蓄電素子群の測定データの入力に応じて前記判定モデルから出力されたスコアの時間分布を作成し、
    作成された時間分布に基づいて異質性を、緊急性を区別して判別する
    請求項3に記載の保守支援方法。
  5. 作成された時間分布を画像化した画像が入力された場合に、前記時間分布に対応する蓄電素子又は蓄電素子群の測定データに、異質な蓄電素子の測定データが含まれているか否かに対応するスコアを出力するように学習された画像判定モデルを用い、
    作成した時間分布を画像化して前記画像判定モデルに入力し、
    前記画像判定モデルから出力されるスコアに基づいて前記蓄電素子群の異質性を判別する
    請求項4に記載の保守支援方法。
  6. 前記保守作業を実施可能な担当者一覧及び前記担当者夫々のスケジュールデータに基づいて前記保守作業の担当者及び実施日時を決定し、
    決定された前記担当者へ前記保守作業の実施を通知する
    請求項1から5のいずれか1項に記載の保守支援方法。
  7. 前記保守作業の実施承認を前記蓄電素子の所有者から受け付け、
    前記実施承認が受け付けられた場合に、前記保守作業の実施を通知する
    請求項1から6のいずれか1項に記載の保守支援方法。
  8. 前記実施承認が受け付けられた場合に、前記蓄電素子を使用する前記所有者から得られる装置の運用情報に基づいて実施日時を決定する
    請求項7に記載の保守支援方法。
  9. 前記保守作業に対して実施承認された場合に、前記保守作業に必要な物品を該物品の販売者に対し発注し、
    発注された物品の識別データを前記担当者へ通知する
    請求項7又は8に記載の保守支援方法。
  10. 決定された工期、作業者数、及び必要な物品に基づいて前記保守作業の見積書データを作成し、
    前記見積書データに基づき前記実施承認を受け付ける
    請求項7から9のいずれか1項に記載の保守支援方法。
  11. 前記蓄電素子は、無停電電源装置に備えられている
    請求項1から10のいずれか1項に記載の保守支援方法。
  12. 蓄電素子に関する測定データを定期的に取得し逐次記憶する記憶装置と、前記記憶装置と接続が可能な蓄電素子に対する保守担当者が用いる保守端末装置と、前記保守端末装置から通信接続が可能な保守支援装置とを含み、
    前記保守支援装置は、
    前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常又は異常の予兆が検知された場合に、検知された異常又は異常の予兆に関する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品を決定し、
    前記保守作業の担当者へ決定事項を含む実施指示を送信する
    保守支援システム。
  13. 蓄電素子を識別する識別データに対応付けて記憶装置に逐次記憶してある前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆が検知された場合に、検知された異常の予兆に関する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品のうち少なくともいずれかを決定する決定部と、
    前記保守作業の担当者へ決定事項を含む実施指示を送信する送信部と
    を備える保守支援装置。
  14. コンピュータに、
    蓄電素子を識別する識別データに対応付けて記憶装置に逐次記憶してある前記蓄電素子に関する測定データに基づき、前記蓄電素子の異常の予兆を検知し、
    検知された異常の予兆に対応する保守作業の工期、作業者数、及び、前記保守作業に必要な交換品又は工具を含む物品のうち少なくともいずれかを決定し、
    前記保守作業の担当者へ決定事項と対応する保守作業の実施を通知する
    処理を実行させるコンピュータプログラム。
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