JP2021001295A - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法、並びに、二色成形体 - Google Patents

ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法、並びに、二色成形体 Download PDF

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【課題】耐衝撃性に優れ、かつ、耐アルカリ性と優れた二色成形性を示すポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法、並びに、二色成形体。【解決手段】(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂50〜95質量部及び(A2)ポリカーボネート樹脂5〜50質量部を含む(A1)と(A2)の合計100質量部に対し、(B)エラストマー0〜30質量部、(C)エポキシ化合物0.3〜4質量部、(D)強化充填材15〜80質量部、及び(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチ1〜15質量部を含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関し、詳しくは、耐衝撃性に優れ、かつ、アルカリ性環境下で優れた耐性(以下、「耐アルカリ性」ともいう。)と優れた二色成形性を示すポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法、並びに、二色成形体に関する。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、加工の容易さ、機械的物性、耐熱性、その他物理的、化学的特性に優れているため、自動車用部品、電気電子機器用部品、建築資材部品、その他精密機器用部品等の分野に幅広く使用されている。例えば、自動車分野においてコネクター、ディストリビューター部品、イグニッションコイル部品等エンジン周りの部品、各種コントロールユニット、各種センサー、電気電子機器部品としてはコネクター類、スイッチ部品、リレー部品、コイル部品、建築資材部品としてはサニタリー部品、コンクリート埋め込みボルト等の広範な分野において、ポリブチレンテレフタレート樹脂が使用されている。
このような分野、特に自動車用の車載部品向けにおいては、耐湿熱性(耐加水分解性)が要求されていた。この要求に対しては、カルボキシル末端基量の少ないポリブチレンテレフタレート樹脂を用いたり、カルボキシル末端基と特定の化合物とを反応させてカルボキシル末端基をキャップしたりすることにより、耐加水分解性を向上させることができる。
しかし、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、耐アルカリ性、特にその長期耐久性が不十分であり、使用環境や使用用途が限られている。例えば、樹脂成形品の用途によっては、融雪剤、トイレ用洗浄剤、浴室用洗浄剤、漂白剤、セメント等の薬剤との接触下で使用される場合がある。特にガラス繊維強化品ではアルカリによる強度低下が著しく、アルカリ性環境下における劣化が問題視されている。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂製の部品にあってはアルカリ性の物質の作用によって、特に薄肉部分や歪みが残っている部位はクラックが発生したり、最終的には破壊したりする恐れがある。
また、二色成形法により、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、これとは異なる材質の樹脂を組み合わせて一体に成形し、ポリブチレンテレフタレート樹脂単一では実現できない特性の成形体を得ることが行われる。しかし、二色成形では、ポリブチレンテレフタレート樹脂と他の樹脂との密着強度が十分でない場合、密着面から他の樹脂が剥離し、成形体に十分な機能を付与することができなくなる。
特許文献1には、(A)熱可塑性ポリエステル樹脂、(B)耐衝撃性付与剤1〜25質量%、(C)シリコーン系化合物及び/又はフッ素系化合物0.1〜15質量%、(D)無機充填材1〜50質量%及び(E)ビスフェノールA型エポキシ樹脂、イソシアネート化合物及びカルボン酸二無水物等の多官能性化合物0.1〜10質量%を含む熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が、耐アルカリ性に優れていることが開示されている。しかし、このような樹脂組成物では、耐アルカリ性や二色成形性は十分満足できるレベルとはいえず、シリコーン系化合物やフッ素系化合物の染み出しに伴う表面外観が低下しやすい。
製品の軽量化及び高性能化が急速に進行しており、これら成形品が薄肉化、小型化されても、長期間に亘って十分な特性を発揮することが必要である。このため、薄肉部分や歪みが残っている部位でもクラックが発生せず、耐アルカリ性、二色成形性に優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が希求されているのが現状である。
国際公開WO00/078867号
特に近年は、耐アルカリ性や二色成形性へのスペックは非常に高いレベルのものが要求されるようになってきている。例えば、耐アルカリ性試験では、その詳細は後述するが、インサート成形品を10質量%濃度NaOH水溶液に浸漬させた際の、クラック発生までの時間が300時間以上というような、極めて厳しい基準をクリアすることも求められつつある。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、上記のような高度の耐アルカリ性と二色成形性を同時に改良し、耐衝撃性に優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法、並びに、二色成形体を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねてきた結果、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(A2)ポリカーボネート樹脂、(C)エポキシ化合物、(D)強化充填材、さらに特定のシリコーン化合物を含有する樹脂組成物が、耐アルカリ性と二色成形性が向上すること、特にシリコーン化合物を熱可塑性樹脂とのマスターバッチとして配合することで、シリコーン化合物の分散性が改良され、ブリードアウトや外観不良を抑制し、さらにヒートショック時の歪増大を抑制し大幅に耐ヒートショック性が向上することを見出し、本発明に到達した。
本発明は、以下のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその製造方法、並びに、二色成形体に関する。
[1](A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂50〜95質量部及び(A2)ポリカーボネート樹脂5〜50質量部を含む(A1)と(A2)の合計100質量部に対し、(B)エラストマー0〜30質量部、(C)エポキシ化合物0.3〜4質量部、(D)強化充填材15〜80質量部、及び(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチ1〜15質量部を含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[2](C)エポキシ化合物が、ノボラック型エポキシ化合物である上記[1]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[3](E)マスターバッチの熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂と非相溶である上記[1]または[2]に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[4](E)マスターバッチの熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である上記[1]ないし[3]のいずれか1に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[5](A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂50〜95質量部、(A2)ポリカーボネート樹脂5〜50質量部、(A1)と(A2)の合計100質量部に対し、(B)エラストマー5〜30質量部、(C)エポキシ化合物0.3〜4質量部、(D)強化充填材15〜80質量部、及び(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチ1〜15質量部を混合し、次いで溶融・混練することを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
[6]上記[1]ないし[4]のいずれか1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した部材(I)と、部材(I)を構成するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とは異なる樹脂組成物を成形した部材(II)とからなる、二色成形体。
[7]部材(II)を構成する樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物である、上記[6]に記載の二色成形体。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐アルカリ性と二色成形性(接着強度)の両者が著しく改善され、耐衝撃性にも優れている。
したがって、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、車両用分野(特に、自動車分野)、電気電子分野、建築資材分野等の広範囲の分野に適用が可能になる。特にコネクター、ディストリビューター部品、イグニッションコイル部品、コントロールユニット部品、センサー部品等の車載用部品の成形品として、優れた耐アルカリ性、二色成形性及び耐衝撃性を有している。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法によれば、耐アルカリ性と二色成形性の両者が著しく改善され、耐衝撃性にも優れたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明の二色成形体は、極めて高い耐アルカリ性と樹脂同士の高い密着強度を有する。
実施例における耐アルカリ性評価のために用いた直方体形状の鉄製インサート物の模式図である。 インサート物が支持ピンで支えられた金型キャビティーの断面説明図である。 支持ピン跡に2つのウエルドラインが発生しているインサート成形品の模式図である。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂50〜95質量部及び(A2)ポリカーボネート樹脂5〜50質量部を含む(A1)と(A2)の合計100質量部に対し、(B)エラストマー0〜30質量部、(C)エポキシ化合物0.3〜4質量部、(D)強化充填材15〜80質量部、及び(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチ1〜15質量部を含有することを特徴とする。
[(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよく、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよく、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、上記した通り、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上及び/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよく、ポリブチレンテレフタレート樹脂が、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂である場合、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類、特にはポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。
なお、これらの共重合体は、共重合量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2モル%以上50モル%未満、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。このような共重合割合とすることにより、流動性、靱性、耐トラッキング性が向上しやすい傾向にあり、好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、末端カルボキシル基量は、適宜選択して決定すればよいが、通常、60eq/ton以下であり、50eq/ton以下であることが好ましく、30eq/ton以下であることがさらに好ましい。50eq/tonを超えると、耐アルカリ性及び耐加水分解性が低下し、また樹脂組成物の溶融成形時にガスが発生しやすくなる。末端カルボキシル基量の下限値は特に定めるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂の製造の生産性を考慮し、通常、10eq/tonである。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、ベンジルアルコール25mLにポリアルキレンテレフタレート樹脂0.5gを溶解し、水酸化ナトリウムの0.01モル/lベンジルアルコール溶液を用いて滴定により測定する値である。末端カルボキシル基量を調整する方法としては、重合時の原料仕込み比、重合温度、減圧方法などの重合条件を調整する方法や、末端封鎖剤を反応させる方法等、従来公知の任意の方法により行えばよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分又はこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式又は連続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下又は減圧下固相重合させることにより、重合度(又は分子量)を所望の値まで高めることもできる。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
[(A2)ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と共に(A2)ポリカーボネート樹脂を含有する。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
原料のジヒドロキシ化合物は、実質的に臭素原子を含まないものであり、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましい。具体的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、13000以上であることが好ましく、より好ましくは13500以上、さらに好ましくは14000以上、中でも15000以上であることが好ましい。粘度平均分子量が13000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。またMvは60000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、35000以下であることがさらに好ましい。60000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、25℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10−4Mv0.83
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
(A2)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(A2)ポリカーボネート樹脂が5〜50質量部であり、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上であり、さらに好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部未満、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂が50〜95質量部であり、好ましくは50質量部超、より好ましくは55質量部以上であり、さらに好ましくは60質量部以上であり、また、好ましくは90質量部以下、より好ましくは85質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
(A2)ポリカーボネート樹脂の含有量が5質量部を下回ると、二色成形時の接合強度が十分には得られず、寸法安定性も低下する。また、50質量部を上回ると流動性が悪くなり耐アルカリ性も悪化する。
[(B)エラストマー]
本発明で用いる(B)エラストマーとしては、ポリエステル樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いることができる。
(B)エラストマーのガラス転移温度は0℃以下、特に−20℃以下であることが好ましい。
(B)エラストマーの具体例としては、例えば、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル−ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体(エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を意味する。
また(B)エラストマーの他の例としては、ゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
(B)エラストマーとしては、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が好ましく、エチレン−アルキルアクリレート共重合体が好ましく、特にエチレン−ブチルアクリレート共重合体等が好ましい。ブチルアクリレートの含有量は、耐衝撃性改良、耐ヒートショック性改良の点から、10質量%以上が好ましく、中でも20質量%以上がより好ましい。また、エチレン−ブチルアクリレート共重合体のMFRは、流動性改良の点から10g/10min以上が好ましく、中でも20g/min以上が好ましい。
このようなエラストマーを使用することにより、耐衝撃性、流動性、耐ヒートショック性が良好となる傾向にあり好ましい。
これらのエラストマーは、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(B)エラストマーの含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート系樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0〜30質量部である。(B)エラストマーの含有量が30質量部を超えると耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性が低下する。(B)エラストマーの含有量は、好ましくは25質量部以下、さらには20質量部以下である。
[(C)エポキシ化合物]
本発明において使用される(C)エポキシ化合物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂が加水分解を受け、分子量低下を起こすと同時に機械的強度等が低下することを抑制するためのもので、これを含有することにより、(B)エラストマー及び(E)シリコーン化合物と熱可塑性樹脂を含むマスターバッチとの相乗効果が促進され、耐アルカリ性と耐ヒートショック性を、一層向上させることができる。
(C)エポキシ化合物としては、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するものであればよく、通常はアルコール、フェノール類又はカルボン酸等とエピクロロヒドリンとの反応物であるグリシジル化合物や、オレフィン性二重結合をエポキシ化した化合物を用いればよい。
(C)エポキシ化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、エポキシ化ブタジエン重合体、レゾルシン型エポキシ化合物等が挙げられる。
ノボラック型エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等を例示できる。
ビスフェノールA型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル等が挙げられ、ビスフェノールF型エポキシ化合物としては、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
脂環式エポキシ化合物の例としては、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシル−3,4−シクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジルエーテル類の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のモノグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類が挙げられる。
グリシジルエステル類としては、安息香酸グリシジルエステル、ソルビン酸グリシジルエステル等のモノグリシジルエステル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル類等が挙げられる。
エポキシ化ブタジエン重合体としては、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン−ブタジエン系共重合体、エポキシ化水素化スチレン−ブタジエン系共重合体等を例示できる。
レゾルシン型エポキシ化合物としてはレゾルシンジグリシジルエーテル等が例示できる。
また、(C)エポキシ化合物は、グリシジル基含有化合物を一方の成分とする共重合体であってもよい。例えばα,β−不飽和酸のグリシジルエステルと、α−オレフィン、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルからなる群より選ばれる一種または二種以上のモノマーとの共重合体が挙げられる。
また、(C)エポキシ化合物としては、エポキシ当量50〜10000g/eq、重量平均分子量8000以下のエポキシ化合物が好ましい。エポキシ当量が50g/eq未満のものは、エポキシ基の量が多すぎるため樹脂組成物の粘度が高くなり、逆にエポキシ当量が10000g/eqを超えるものは、エポキシ基の量が少なくなるため、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の耐アルカリ性、耐ヒートショック性、耐加水分解性を向上させる効果が十分に発現しにくい傾向にある。エポキシ当量は、より好ましくは100〜7000g/eqであり、さらに好ましくは100〜5000g/eqであり、最も好ましくは100〜3000g/eqである。また、重量平均分子量が8000を超えるものは、ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性が低下し、成形品の機械的強度が低下する傾向にある。重量平均分子量は、より好ましくは7000以下であり、さらに好ましくは6000以下である。
(C)エポキシ化合物としては、ビスフェノールAやノボラックとエピクロロヒドリンとの反応から得られる、ビスフェノールA型エポキシ化合物やノボラック型エポキシ化合物が好ましい。中でも、ノボラック型エポキシ化合物が、耐アルカリ性が向上しやく、また、耐加水分解性、耐ヒートショック性、成形品の表面外観の点から特に好ましい。
(C)エポキシ化合物の含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.3〜4質量部であり、0.4質量部以上が好ましく、より好ましく0.5質量部以上、さらには0.6質量部以上が好ましい。また、3.5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、さらには好ましくは2.5質量部以下、特に2.2質量部以下が好ましい。(C)エポキシ化合物の含有量が0.3質量部未満では、耐アルカリ性の低下や耐加水分解性の低下が発生しやすく、4質量部より多いと架橋化が進行し成形時の流動性が悪くなりやすい。
さらに、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端COOH基に対する(C)エポキシ化合物のエポキシ基の当量比(エポキシ基/COOH基)は、0.2〜2.7の範囲にあることが好ましい。当量比が0.2を下回ると耐加水分解性が悪くなりやすく、2.7を上回ると成形性が不安定となりやすい。エポキシ基/COOH基は、より好ましくは0.3以上であり、2.5以下である。
[(D)強化充填材]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、(D)強化充填材を、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、15〜80質量部の範囲で含有する。(D)強化充填材の含有量は、25質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、また75質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましい。
本発明において、強化充填材とは、樹脂成分に含有させて強度及び剛性を向上させるものをいい、繊維状、板状、粒状、無定形等いずれの形態ものであってもよい。
(D)強化充填材の形態が繊維状である場合、無機質、有機質のいずれであってもよい。例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維、ワラストナイト等の無機繊維、フッ素樹脂繊維、アラミド繊維等の有機繊維が含まれる。(D)強化充填材が繊維状の場合、好ましいのは無機質の繊維であり、その中でも特に好ましいのはガラス繊維である。(D)強化充填材は1種でも2種類の混合物であってもよい。
(D)強化充填材の形態が繊維状である場合、その平均繊維径や平均繊維長並びに断面形状は特に制限されないが、平均繊維径は例えば1〜100μmの範囲で選ぶのが好ましく、平均繊維長は例えば0.1〜20mmの範囲で選ぶのが好ましい。平均繊維径はさらに好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μm程度である。また平均繊維長は、好ましくは0.12〜10mm程度である。また、繊維断面が長円形、楕円形、繭形等の扁平形状である場合は、扁平率(長径/短径の比)が1.4〜10が好ましく、2〜6がより好ましく、2.5〜5がさらに好ましい。このような異形断面のガラス繊維を用いることにより、成形品の反り、収縮率の異方性等の寸法安定性が改善されやすいので好ましい。
上記した繊維状強化充填材以外に、板状、粒状又は無定形の他の強化充填材を含有することもできる。板状無機充填材は、異方性及びソリを低減させる機能を発揮するものであり、ガラスフレーク、タルク、マイカ、雲母、カオリン、金属箔等が挙げられる。板状無機充填材の中で好ましいのは、ガラスフレークである。
粒状又は無定形の他の無機充填材としては、セラミックビーズ、アスベスト、クレー、ゼオライト、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
なお、(D)強化充填材と樹脂成分との界面の密着性を向上させるために、(D)強化充填材の表面を集束剤等の表面処理剤によって処理するのが好ましい。表面処理剤として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂や、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物が挙げられる。
本発明においては、表面処理のために、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ化合物や、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂が好ましい。中でも、ノボラック型エポキシ化合物とビスフェノール型エポキシ樹脂を併用することが好ましく、フェノールノボラック型エポキシ化合物とビスフェノールA型エポキシ樹脂を併用することが、耐アルカリ性、耐加水分解性及び機械的特性の点から好ましい。
官能性化合物としては、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシランカップリング剤が好ましく、中でも、アミノシラン系化合物が好ましい。
アミノシラン系化合物としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく、中でも、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
本発明においては、いわゆる集束剤としてノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂とを用い、加えてカップリング剤としてアミノシラン系化合物で表面処理された強化充填材を用いることが、耐アルカリ性及び耐加水分解性の点から、特に好ましい。表面処理剤をこのような構成とすることにより、アミノシラン系化合物の無機官能基は(D)強化充填材表面と、アミノシランの有機官能基はエポキシ樹脂のグリシジル基とそれぞれ反応性に富み、また、エポキシ樹脂のグリシジル基は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂とそれぞれ適度に反応することにより、(D)強化充填材とエポキシ樹脂との界面密着力が向上する。この結果、本発明の樹脂組成物の耐アルカリ性、耐加水分解性、機械的特性が向上しやすくなる。
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、帯電防止剤、潤滑剤及び撥水剤等を表面処理剤中に含めることもでき、これらその他の成分を含める場合は、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。
(D)強化充填材の表面処理は、従来公知の方法により処理することができ、例えば、上記表面処理剤によって予め表面処理してもよく、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を調製する際に、未処理の(D)強化充填材とは別に表面処理剤を添加して表面処理してもよい。
(D)強化充填材に対する表面処理剤の付着量は、0.01〜5質量%が好ましく、0.05〜2質量%がさらに好ましい。0.01質量%以上とすることにより、機械的強度がより効果的に改善される傾向にあり、5質量%以下とすることにより、必要十分な効果が得られ、また、樹脂組成物の製造が容易になる傾向となり好ましい。
[(E)シリコーン化合物と熱可塑性樹脂を含むマスターバッチ]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチを配合する。具体的には、シリコーン化合物を熱可塑性樹脂に分散させたペレットの形態のマスターバッチとして配合する。
シリコーン化合物を液状で組成物に配合すると、成形体中に均一に微分散されることになるため、成形体表面でのシリコーン化合物の存在確率が低くなり、耐アルカリ性や耐加水分解性が低くなったり、表面にシリコーン化合物がブリードアウトしやすいため、表面外観が悪化するという問題が生じやすい。特には、表面外観の悪化やシリコーンのブリードアウトは二色成形時の接合強度を低下させることとなる。一方、本発明の如く、シリコーン化合物をマスターバッチとして組成物に配合することにより、ブリードアウトが抑制され、表面外観を損なうことなく均一に分散することが可能となる。
本発明においては、重量平均分子量(Mw)が10000〜80000のシリコーン化合物を使用するが、Mwが10000未満のものは、耐アルカリ性が悪くなり、80000を超えると耐ヒートショック性や成形品の表面外観が悪くなる。
シリコーン化合物のMwは、好ましくは20000以上、より好ましくは30000以上、さらに好ましくは40000以上であり、好ましくは75000以下、より好ましくは70000以下、さらに好ましくは65000以下である。
本発明のマスターバッチに使用されるシリコーン化合物は、シロキサン結合を骨格とし、そのケイ素に有機基などが直接結合した有機ケイ素化合物である。ケイ素に直接結合した有機基としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、トリフルオロプロピル基およびそれらを併用したものなどが知られているが、これらを有する公知のシロキサン化合物を特に制限なく使用できる。また有機基の一部がエポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基、カルボキシル基、メルカプト基、エステル基、クロロアルキル基、炭素数3個以上のアルキル基、ヒドロキシル基などを有する置換基で置換されたシロキサン化合物も使用可能である。シロキサン化合物は、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
シロキサン化合物は、シリコーンオイル、シリコーンエラストマー、シリコーンレジンに分類される(要すれば、「シリコーン材料ハンドブック」東レ・ダウコーニング社編、1993年8月発行を参照)が、本発明においては、上記いずれも使用可能であるが、シリコーンレジンやシリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪族エステル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイルなどのオイル状シリコーン類が挙げられる。
また、本発明のマスターバッチに使用される熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂と非相溶性の樹脂が好ましい。マスターバッチとしてポリブチレンテレフタレートと非相溶の樹脂を使用することで、ポリブチレンテレフタレート中に分散した非相溶樹脂の中に高濃度でシリコーン化合物が存在することで、耐アルカリ性等の効果がより発現しやすくなる。使用できる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂等が例示される。本発明の種々の効果を発現させるためには、上記の中でも特にポリオレフィン樹脂が好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、各種のポリオレフィン樹脂が使用できるが、中でも、エチレン又はプロピレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン又は酢酸ビニルとのエチレン系共重合体等のポリエチレン系樹脂、プロピレンと、ブテン、ヘキセン、又はオクテンとのプロピレン系共重合体等のポリプロピレン系樹脂が好ましく挙げられる。ポリエチレン系樹脂としては、具体的には高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が好ましく挙げられる。ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等が好ましく挙げられる。
これらの中では、ポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましく、特に低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
ポリオレフィン樹脂の製造方法や重合触媒に制限はなく、溶液法、バルク法、気相、高圧法等の各種公知の製法、また、ラジカル開始剤やチーグラー触媒、クロム系触媒、メタロセン系触媒等のいずれによるものであってもよい。
また、ポリオレフィン樹脂は、1種を単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
マスターバッチの製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、短軸または多軸の押出機などを使用して混合する方法が挙げられるが、中でも、ヘンシェルミキサー、短軸または多軸の押出機を使用する方法が好ましく、特に、短軸または多軸の押出機を用い、溶融混練しペレット化する方法が好ましい。このようにマスターバッチ化した上で、製造時に溶融混練することで、成形品の機械的特性、摺動性がより良好になる傾向にある。
(E)シリコーン化合物と熱可塑性樹脂を含むマスターバッチは、市販のものを使用することもでき、例えば、東レ・ダウコーニング社製、商品名「シリコーンコンセントレート」のシリーズ等の中から選択して使用することもできる。
(E)シリコーン化合物と熱可塑性樹脂を含むマスターバッチ中の、シリコーン化合物の好ましい含有量は、10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは20〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。
(E)シリコーン化合物と熱可塑性樹脂を含むマスターバッチの含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、1〜15質量部であり、好ましくは2〜12質量部、更に好ましくは3〜10質量部である。含有量が1質量部未満では、耐アルカリ性の向上効果が十分に得られにくく、15質量部を超えると、樹脂組成物を溶融混練により製造する場合の押出性や、成形加工性が劣る他、機械的物性も低下する。
[(F)離型剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、ポリエステル樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、耐アルカリ性が良好な点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物が好ましく、特に、ポリオレフィン系化合物が好ましい。
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、重量平均分子量が、700〜10000、更には900〜8000のものが好ましい。
脂肪酸エステル系化合物としては、飽和又は不飽和の1価又は2価の脂肪族カルボン酸エステル類、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられる。中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸とアルコールで構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。
脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラリアコンタン酸、モンタン酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。また、脂肪酸は、脂環式であってもよい。
アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価又は多価アルコールを挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基などの置換基を有していてもよい。これらの中では、炭素数30以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコール又は多価アルコールが更に好ましい。ここで脂肪族とは、脂環式化合物も含有する。
かかるアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
なお、上記のエステル化合物は、不純物として脂肪族カルボン酸及び/又はアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
脂肪酸エステル系化合物の具体例としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート、ステアリルステアレート、エチレングリコールモンタン酸エステル等が挙げられる。
(F)離型剤の含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは0.1〜3質量部であるが、0.2〜2.5質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.5〜2質量部である。0.1質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面性が低下しやすく、一方、3質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下しやすく、また成形体表面に曇りが生じやすい。
[安定剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性や色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることができ、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
安定剤の含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜2質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、2質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.01〜1.5質量部であり、更に好ましくは、0.1〜1質量部である。
[難燃剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、難燃性を付与するために難燃剤を含有することができる。難燃剤としては、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、窒素化合物、その他有機、無機化合物等が挙げられる。有機ハロゲン化合物の具体例としては、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート等が挙げられる。
アンチモン化合物としては三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。リン化合物の難燃剤としては、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、ホスフィン酸金属塩、赤リン等が挙げられる。また、窒素系難燃剤としては、シアヌル酸メラミン、ホスファゼン等を挙げることができる。上記以外の有機難燃剤、無機難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物等の無機化合物が挙げられる。
[その他成分]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、従来から知られている各種樹脂添加剤を含有することもできる。各種樹脂添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、滑剤、染顔料等の着色剤、触媒失活剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、結晶核剤、結晶化促進剤等が挙げられる。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物には、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲内で、前記した必須成分の樹脂以外の、他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を含有することができる。他の熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種でも2種類以上であってもよい。
ただし、前記した必須成分の樹脂以外の、他の樹脂を含有する場合の含有量は、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(A2)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、40質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは30質量部以下、さらには20質量部以下、中でも10質量部以下、特には5質量部以下、2質量部以下とすることが最も好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する方法は、特定の方法に限定されるものではないが、(A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂50〜95質量部、(A2)ポリカーボネート樹脂5〜45質量部、(A1)と(A2)の合計100質量部に対し、(B)エラストマー0〜30質量部、(C)エポキシ化合物0.3〜4質量部、(D)強化充填材15〜80質量部、及び(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチ1〜15質量部を、混合し、次いで溶融・混練する方法が挙げられる。溶融・混練方法は、熱可塑性樹脂について通常採用されている方法によることができる。なお、(A1)、(A2)、(B)〜(E)の各成分としては、前記したものを用いることができる。
溶融・混練方法としては、例えば、前記した必須成分、並びに、必要に応じて配合されるその他の成分をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、タンブラー等により均一に混合した後、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー、ラボプラストミル(ブラベンダー)等で溶融・混練する方法が挙げられる。要すれば(D)強化充填材を混錬押出機のサイドフィーダーより供給することにより、強化充填材の折損を抑制し、分散させることが可能になり好ましい。溶融・混練する際の温度と混練時間は、樹脂成分を構成する成分の種類、成分の割合、溶融・混練機の種類等により選ぶことができるが、溶融・混練する際の温度は200〜300℃の範囲が好ましい。300℃を超えると、各成分の熱劣化が問題となり、成形品の物性が低下したり、外観が悪化したりすることがある。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から、目的の成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について従来から採用されている成形法を採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられ、中でも射出成形法、二色成形法が好ましい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、特に、高い熱溶融接着力と低い変形量を有しているので、二色成形を異種樹脂と行なっても、密着強度の高い二色成形品を得ることができる。すなわち、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した部材(I)と、部材(I)のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とは異なる樹脂組成物を成形した部材(II)とからなる二色成形体を高い密着強度をもって可能とする。特に部材(II)を構成する樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物である場合には、極めて高度の密着性を有する二色成形体とすることができる。
そして、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物による耐アルカリ性試験では、インサート成形品を10質量%NaOH水溶液浸漬させた際のクラック発生までの時間が、好ましくは300時間以上、より好ましくは400時間以上、さらに好ましくは500時間以上というような、極めて高い耐アルカリ性を達成することができ、また、その接合強度も優れるので、特に車載用の部品に要求される特性に対して優れた特性を有する。
製造できる成形品としては、例えば、各種保存容器、電気電子部品、OA機器部品、家電機器部品、機械機構部品、建築資材部品、その他精密機器用部品、自動車機構部品、サニタリー部品等に適用できる。特に、食品用容器、薬品用容器、油脂製品容器、車両用中空部品、モーター部品、各種センサー部品、コネクター部品、スイッチ部品、ブレーカー部品、リレー部品、コイル部品、トランス部品、ランプ部品等に好適に用いることができる。中でも、自動車エンジン周りの車載部品用成形品、例えば、各種センサー、コネクター、ディストリビューター部品、イグニッションコイル部品並びにそのケースや筺体等の車載部品用の樹脂材料として好適である。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の記載例に限定して解釈されるものではない。
実施例及び比較例で使用した原料成分は、下記の表1の通りである。
〔実施例1〜3及び比較例1〜2〕
<ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造>
表1に記載のガラス繊維以外の各成分を、下記の表2に示される割合(全て質量部)にて、ブレンドし、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機TEX30α)を使用して、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、バレル温度270℃にて溶融混練し、ストランドに押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを得た。
<測定評価方法>
実施例及び比較例における各種の物性・性能の測定評価は、以下の方法により実施した。
(a)シャルピー衝撃強度(単位:kJ/m
得られたペレットを120℃で6時間乾燥後、日精樹脂工業社製射出成形機「NEX80−9E」を使用して、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、シャルピー衝撃強度測定用ISO試験片を成形し、ISO179に準拠して、ノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。
(b)耐加水分解性評価:引張強度保持率(単位:%)
日精樹脂工業社製射出成形機「NEX80−9E」を使用し、シリンダー温度250℃、金型温度80℃にて、ISO試験片を作製し、ISO527に準拠し引張試験を行った。
さらに、上述のISO試験片を、温度121℃の飽和水蒸気中、圧力203kPaにて、100時間湿熱処理した。湿熱処理前後のISO試験片につき、ISO527に準拠し引張強度の測定を行った。
引張強度保持率(単位:%)を、以下の式から求めた。
引張強度保持率(%)=(処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100
(c)耐アルカリ性評価
得られたペレットを120℃で6時間乾燥後、日精樹脂工業社製の縦型射出成形機「TH60 R5VSE」を用いて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃で、図1に示す直方体形状の鉄(SUS)のインサート物1(縦16mm×横33mm×厚さ3mm)を、図2に示すように、支持ピン2にて金型キャビティー4内に仕込んでインサートした(インサート鉄片3)。インサート成形により、図3に示すインサート成形品(縦18mm×横35mm×厚さ5mm)を作製した。このインサート成形品の樹脂部の肉厚は1mmである。
インサート成形品には支持ピン跡5に2つのウエルドライン6が発生する。
このインサート成形品を、室温で、10質量%濃度のNaOH水溶液に浸漬した。浸漬後、定期的に目視でクラック発生の有無を確認し、クラックが発生するまでの時間(hr)を測定した。この時間が長いほど、耐アルカリ性に優れている。
(d)表面外観評価
日精樹脂工業社製射出成形機「NEX80−9E」を使用し、シリンダー温度250℃、金型温度80℃にて、縦100mm×横100mm×厚み3mmの平板を成形し、表面外観を目視で観察し、下記のとおり振り分けた。
○:良好
△:少し悪い
×:著しく悪い
(e)接合強度(単位:N)
接合強度測定用二色成形試験片の製造:
日本製鋼所社製の射出成形機「J180AD−2M(型締め力180t、スクリュウ径シリンダーA=46mm、B=40mm)」を用い、ISO−1A型突き当てタイプの二色成形試験片を成形した。金型温度を80℃とし、一次材として、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ポリカーボネート樹脂「ユーピロンS−3000R」をシリンダー温度300℃で成形し、2次材として各実施例、比較例で得られたペレットを用い、シリンダー温度260℃で成形した。
接合強度の測定:
得られた二色成形試験片を、23℃の室温下、速度5mm/min、チャック間距離115mmで、引張り試験を測定し、破壊する接合強度(単位:N)を確認した。
(f)総合評価
上記の結果を踏まえ、以下の3項目で、全てを満足する場合を1、2つを満足する場合を2、1つ以下の場合は3の3段階で、総合的に評価した。
1)耐アルカリ性が300時間以上、
2)表面外観良好が○
3)接合強度が1000N以上
結果を以下の表2に示す。
上記表2の結果から、実施例1〜3のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐衝撃性、耐加水分解性、耐アルカリ性、表面外観及び二色成形性を全てバランス良く達成することがわかる。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、耐衝撃性、耐加水分解性、耐アルカリ性、表面外観及び二色成形性の全てをバランス良く達成することができるので、自動車分野、特に自動車電装部品、センサー部品、エンジン周りや足回りの自動車用部品製造用に極めて有用な材料である。さらに電気電子部品、建築資材部品、機械部品等の広範囲な分野に有用である。
1.インサート鉄片
2.支持ピン
3.金型内にインサートされたインサート鉄片
4.キャビティー
5.支持ピン跡
6.ウエルドライン

Claims (7)

  1. (A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂50〜95質量部及び(A2)ポリカーボネート樹脂5〜50質量部を含む(A1)と(A2)の合計100質量部に対し、(B)エラストマー0〜30質量部、(C)エポキシ化合物0.3〜4質量部、(D)強化充填材15〜80質量部、及び(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチ1〜15質量部を含有することを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  2. (C)エポキシ化合物が、ノボラック型エポキシ化合物である請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  3. (E)マスターバッチの熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレート樹脂と非相溶である請求項1または2に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  4. (E)マスターバッチの熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂である請求項1ないし3のいずれか1に記載のレーザー溶着用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
  5. (A1)ポリブチレンテレフタレート樹脂50〜95質量部、(A2)ポリカーボネート樹脂5〜50質量部、(A1)と(A2)の合計100質量部に対し、(B)エラストマー0〜30質量部、(C)エポキシ化合物0.3〜4質量部、(D)強化充填材15〜80質量部、及び(E)重量平均分子量が10000〜80000のシリコーン化合物と、熱可塑性樹脂とを含むマスターバッチ1〜15質量部を混合し、次いで溶融・混練することを特徴とする、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項1ないし4のいずれか1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した部材(I)と、部材(I)を構成するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とは異なる樹脂組成物を成形した部材(II)とからなる、二色成形体。
  7. 部材(II)を構成する樹脂組成物が、ポリカーボネート樹脂を含有する樹脂組成物である、請求項6に記載の二色成形体。
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